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分 収クマリン120分子の吸収スペクトルと蛍光スペクトルにおける溶媒効果と蛍光ス クトルにおける溶媒効果
先駆的科学計算に関するフ ラム先駆的科学計算に関するフォーラム2011
3/17/2011
九大高等研究機構 川島 雪生
1
本講演の概要
1 研究の背景1. 研究の背景
2. QM/MM MDシミュレーションをQ シ ションを用いた吸収スペクトルの構築
シ シ を3. QM/MM MDシミュレーションを用いた蛍光スペクトルの構築
4. 結論
電子状態計算 と 分子シミュレーション
溶液中や生体中など環境中分子の
2
溶液中や生体中など環境中分子の電子励起状態を効率よく記述すること
電 状態 論 分 軌道法電子状態理論 ab initio 分子軌道法
ΦΦΗ
N M N N M M
BAAMN ZZZH 22 111
ΦΦΗ
10-10 10-9 10-8 m
i A i ij A AB AB
BA
ijiA
AA
A Aii RrrM
H1 1 1 1
2
11
2
22
10-10
1 102 104
10 10-8 m
ab initio
3 実際の環境中分子の電子状態
大規模分子系の電子状態計算大規模分子系の電子状態計算
原子数5500以上!
“大規模分子系”
視覚の初期過程における光反応は電子励起状態を経視覚の初期過程における光反応は電子励起状態を経由するため、量子効果を取り込むことが必要不可欠。4
有限温度中の分子のゆらぎ
1 50
2.00
1.00
1.50
0.50 “ゆらぎ”
0.00 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00
5
環境中分子の電子状態
1.大規模系の電子状態をいかに効率よく記述するか大規模系の電子状態を かに効率よく記述するか
2.有限温度中の分子のゆらぎをいかに効率よく記述するか
6
電子状態計算:大規模分子系へのアプローチ電子状態計算:大規模分子系へのアプローチ
1. “分子全体の量子効果”
全体を小さい領域に分割し 領域 つ全体を小さい領域に分割し、領域一つ一つの電子状態計算を実行し、全系をビルドアップ
Fragment MO法やDivide & Conquer法
2. “分子の局所的な量子効果”
全系の一部分のみ電子状態計算を実行その他の領域を大胆に近似
7
大規模分子系の電子励起状態大規模分子系の電子励起状態
環境の効果 計算コスト 小
光反応等の化学反応は局所的光反応等の化学反応は局所的
量子効果が重要な領域の状態 を 扱う電子状態のみを取り扱う
精度を損なわず、大規模分子の精度を損なわず、大規模分子の電子励起状態の記述を目指す
電子状態計算
計算コスト 大精度 高
8
Quantum Mechanics /Molecular Mechanics 法(QM/MM) 法
Ariel & Warshel
MM領域:古典力学
計算コスト 小
q, q, 計算 スト 小
QM領域/MM領域
QM(Z,)
Q 領域 領域相互作用
QM領域: 量子力学
計算コスト 大 精度 高9
分子のゆらぎを考慮するための手法溶液の場合
1. Average → Calculate
溶液を平均場で表現(PCM, RISM-SCF)モデル化が難しい
平均値を求めるのに適している
2 C l l t A
デル化が難しい
2. Calculate → Average
さまざまな溶媒配置を発生させ、計算量が多くなる
さまざまな溶媒配置を発生させ、それぞれの溶媒配置から物理量を求め、最後に平均をとる。
10
分子のゆらぎを考慮するための手法溶液の場合: Average → Calculate
Dielectric Continuum
1 Average → Calculate
+
1. Average → Calculate
溶液を平均場で表現
+
+
PCM, RISM-SCF
平均値を求めるのに
+
平均値を求めるのに適している
モデル化が難しい
11
モデル化が難しい
溶質と溶媒分子の描像がとらえにくい
分子のゆらぎを考慮するための手法溶液の場合: Calculate → Average
MM Region
Dielectric Continuum
分子シミ レ シ ンでQMRegion
分子シミュレーションで様々な溶媒配置を発生させ、それぞれの溶媒配置から
それぞれの溶媒配置から物理量を求め、最後に平均をとる。
計算量が多くなる
スナップショット描像が見える
12
スナップショット描像が見える溶質と溶媒分子の描像がとらえやすい
溶液中分子の電子状態計算と分子シミュレーション
溶液内の問題をリアルに取り扱いたい
クリアすべき問題
・溶液内の分子の平均的描像を記述するためには、様々な溶質・溶媒分子の構造の集団平均をとらないといけないとらないといけない。
・分子シミュレーションを用いて集団を発生させ、標本を抽出する(サンプリング)。標本を抽出する(サンプリング)。
・サンプリング効率が鍵。
環境中分子の電子状態を考慮した分子シミュレーション
周りの分子のゆらぎの効果を取り込周りの分子のゆらぎの効果を取り込むため分子シミュレーションを用いて様々な配置を発生
量子効果が重要な領域は量子力学で取り扱いたいで取り扱いたい
14
分子動力学シミ レ ション分子動力学シミュレーション
時間スケール時間スケ ルにおける困難
古典力学に基づく 電子状態計算を用いた古典力学に基 く分子シミュレーション4000原子 2 ns
電子状態計算を用いた分子シミュレーション18原子 2ps
15
QM/MM法を用いた溶液中分子の分子シミュレーションの実行
MM ・QM領域のシミュレーションは電子状態計算を用いたい
QM・様々な配置を発生させたい。
QM
QM/MM法を用いたシミュレーション 計算コスト 高QM/MM法を用いたシミ レ ション 計算 スト 高量子効果 有
古典 学を 計算古典力学を用いたシミュレーション 計算コスト 低量子効果 無16
研究の狙い
QM/MM法と分子シミ レ ションを用いてQM/MM法と分子シミュレーションを用いて時間と空間のスケールのギャップをどのようにして埋めるか?埋めるか?
17
水中C120の電子励起状態水中C120の電子励起状態・溶媒によるシフト溶媒によるシフト・ブロードな吸収ピーク
C120分子の吸収スペクトルに及ぼす溶媒効果の詳細を明らかにする明らかにする
様々な溶質・溶媒構造を用い
溶媒中クマリン分子の吸収スペクトル
様々な溶質 溶媒構造を用いないとスペクトルは得られない。
Kitamura et al. J. Photophys. Photochem. A, 188, 377 (2007)
18 吸収スペクトルの第一ピーク:π→π*励起
アミノク リ7-アミノクマリンC120
青−緑領域のレーザー色素
酵素反応プローブ
ソルバトクロミズム研究の際のプローブ
蛍光スペクトルにおける量子収率が無極性溶媒中に比べ無極性溶媒中に比べ極性溶媒中で大きく増加
溶媒中のクマリン分子の電子励起状態
19
サンプリング手法
QM/MM MDシミュレーション溶質分子の構造をサンプリング溶質分子の構造をサンプリング
QM/MM MDシミュレ ション
QM溶質原子の構造を入手溶媒配
溶媒配
各点においてQM領域を固定し、古典MD
配置のサン
配置のサン
各溶質構造について溶媒配置を抽出し、励起エネルギーの計算
ンプリング
ンプリング励起エネルギ の計算。 ググ
溶質と溶媒を分けてサンプリング
20
スペクトルの構築法
1. QM/MM法を用いて水中クマリン分子のMDシミュレーションを実行
2 溶質の構造をランダムに抽出2. 溶質の構造をランダムに抽出
3. 抽出した溶質クマリン分子を水分子が入った箱に挿入
4. 溶質クマリン分子を固定し、古典力学に基づくMDシミュレーションを実行。このシミュレーションで様々な溶媒配置を発生させる。
5. 4のシミュレーションより溶質・溶媒分子構造をランダムに抽出
6. 抽出した溶質・溶媒構造を用いて電子励起状態計算を実行
7 6の計算結果をまとめてスペクトルを構築
21
7. 6の計算結果をまとめてスペクトルを構築
溶媒効果(励起エネルギーシフト)の分割
溶媒分子の存在による励起 ネ
溶媒中における溶質分子構造の変
溶媒配置の変化(分極の変化)に+による励起エネル
ギーのシフト質分子構造の変化によるシフト⊿E1
(分極の変化)によるシフト⊿E2
= +
{Gas(平衡構造) - Water} = {Gas(平衡) - Gas(QM/MM)}+ {Gas(QM/MM) - Water}
⊿E = Gas(平衡構造) - Water⇒ ⊿E ⊿E + ⊿E⊿E1 = Gas(平衡) - Gas(QM/MM)
⊿E2 = Gas(QM/MM) - Water⇒ ⊿E = ⊿E1 + ⊿E2
QM/MM MDQM/MM MD
Gas(平衡構造)
Gas(QM/MM)
Water
22 古典MD古典MD
Water
起 ギ 割励起エネルギーシフトの分割
⊿E1 ⊿E21
気相中の平衡構造 シミュレーションで得られた構造 シ シ
気相中の平衡構造得られた構造溶質分子のみ
シミュレーションで得られた構造溶質+溶媒分子
23
溶質+溶媒分子
水中のC120の吸収スペクトルho
ts 平均値 標準偏差
水中のC120の吸収ス クトルof
Sna
psh
ΔE全体
+ 0.03(3.86eV) 0.27
Num
ber o
体 (3.86eV)
ΔE1溶質
± 0.00 0.26
N
Excitation Energy [ eV ]ΔE2溶媒
+ 0.03 0.12
極性溶媒中における吸収スペクトルのレッドシフトを再現
溶媒分子による溶媒効果 がレ ドシ トの要因溶媒分子による溶媒効果ΔE2がレッドシフトの要因
励起エネルギーシフトのゆらぎ幅励起エネルギ シフトのゆらぎ幅溶質による溶媒効果ΔE1>溶媒分子による溶媒効果ΔE224
エネルギーシフトΔE ΔE とΔE ΔE溶質 溶媒ΔE vs ΔE1 とΔE vs ΔE2
ΔE ΔE
溶質 溶媒
0.30
0.50ΔE1 ΔE20.30
0.50
-0.10
0.10
-0.70 -0.50 -0.30 -0.10 0.10 0.30 0.50 0.70
ΔE[eV]-0.10
0.10
-0.70 -0.50 -0.30 -0.10 0.10 0.30 0.50 0.70
-0.30 -0.30ΔE[eV]
-0.50
吸収スペクトルのブロード化をもたらすΔEのゆらぎは
-0.50
吸収スペクトルのブロ ド化をもたらすΔEのゆらぎは、溶質によるシフトΔE1のゆらぎが支配的である。
溶媒分子によるシフトΔE2はゆらぎ幅そのものは小さいものの、吸収スペクトルのレッドシフトをもたらす重要な要因。25
溶 来溶質分子からの寄与ΔE1の由来
ΔE1 増大
ΔE1との相関係数が最大のゆらぎ:ベ ゼ 環 結合交替 増加 ピ 環 結合交替 減少ベンゼン環の結合交替の増加・ピロン環の結合交替の減少
π 共役ネットワークを変化させ π→π*励起に影響を及ぼすπ 共役ネットワ クを変化させ、π→π*励起に影響を及ぼす
溶 来溶媒分子からの寄与ΔE2の由来
N (C120)-H(Water)の動径分布関数の第一ピークへ
1 50
2.00 の距離がΔE2と正の相関
1.00
1.50
g(r)
0.50
g
0.00 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00
År(N (C120)-H(Water)) Å
スナップショット構造のエネルギーシフトスナップショット構造のエネルギーシフト
PlanarPyramidal
P id l PlPyramidal Planar
ΔE2 [eV] 0.00 0.11
Dipole Moment (Gas/Ground State) 5 42 5 35Dipole Moment (Gas/Ground State) 5.42 5.35
Dipole Moment (Gas/Excited State) 5.47 5.46
Dipole Moment (Water/Ground State) 6.45 7.06
28
p ( )
Dipole Moment (Water/Excited State) 6.50 7.92