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Session 2 SMAの治療 ― 新時代の幕開け ― Session 3 特別講演 SMAの臨床症状と早期診断の重要性 演者 齋藤 加代子 先生 東京女子医科大学附属 遺伝子医療センター特任教授・所長 東京女子医科大学名誉教授 司会 齊藤 利雄 先生 国立病院機構刀根山病院神経内科医長 SMAの診断と遺伝学的検査 演者 西尾 久英 先生 神戸大学大学院医学研究科 地域社会医学・健康科学講座疫学分野教授 スピンラザ:特性と臨床成績 演者 竹島 泰弘 先生 兵庫医科大学小児科学教室主任教授 スピンラザ:髄腔内投与の実際 東京女子医科大学における経験 ―人工呼吸器患者への投与 ― 演者 衞藤 薫 先生 東京女子医科大学小児科 スピンラザ:髄腔内投与の実際 兵庫医科大学における経験 ― 側弯患者への投与 ― 演者 下村 英毅 先生 兵庫医科大学小児科 司会 小牧 宏文 先生 国立精神・神経医療研究センター小児神経科医長 スピンラザ新発売学術講演会 新たな治療薬を患者さんに届けるために 開催 2017年10月28日 会場 ベルサール神田 2階 ホールA/B SMA Forum 2017 主催: イタリアにおけるⅠ型SMA症例に対するスピンラザの使用経験 演者 Adele D’Amico 先生 Senior Researcher, Unit of Neuromuscular and Neurodegenerative Disorders, Bambino Gesù Children’s Hospital Session 1 SMAの臨床 ― 症状発現から診断まで ― 司会 埜中 征哉 先生 国立精神・神経医療研究センター病院名誉院長

スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017...スピンラザ新発学術講演会 SMA Forum2017 る。しかし、SMAでは外反足、X脚、反張膝等の特徴が異

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Session 2 ● SMAの治療 ―新時代の幕開け―

Session 3 ● 特別講演

SMAの臨床症状と早期診断の重要性 演者 齋藤 加代子 先生東京女子医科大学附属遺伝子医療センター特任教授・所長東京女子医科大学名誉教授

司会 齊藤 利雄 先生国立病院機構刀根山病院神経内科医長

SMAの診断と遺伝学的検査 演者 西尾 久英 先生神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野教授

スピンラザ:特性と臨床成績 演者 竹島 泰弘 先生兵庫医科大学小児科学教室主任教授

スピンラザ:髄腔内投与の実際東京女子医科大学における経験―人工呼吸器患者への投与― 演者 衞藤 薫 先生 東京女子医科大学小児科

スピンラザ:髄腔内投与の実際兵庫医科大学における経験―側弯患者への投与― 演者 下村 英毅 先生 兵庫医科大学小児科

司会 小牧 宏文 先生国立精神・神経医療研究センター小児神経科医長

スピンラザ新発売学術講演会

ー 新たな治療薬を患者さんに届けるために ー

開催 2017年10月28日 会場 ベルサール神田 2階 ホールA/B

SMA Forum 2017

主催:

イタリアにおけるⅠ型SMA症例に対するスピンラザの使用経験 演者 Adele D’Amico 先生Senior Researcher, Unit of Neuromuscular and Neurodegenerative Disorders, Bambino Gesù Children’s Hospital

Session 1 ● SMAの臨床 ―症状発現から診断まで―

司会 埜中 征哉 先生国立精神・神経医療研究センター病院名誉院長

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

はじめに 本日は、SMA*(脊髄性筋萎縮症)の臨床症状と早期診断の重要性をテーマに講演する。� *spinal�muscular�atrophy

SMAの研究と臨床の歴史 SMAに関する最初の言及は、神経科医のWerdnig(1891)によるものである。その後Hoffmann(1893)が本疾患を論文としてまとめた。これにちなみ、Ⅰ型SMAはWerdnig-Hoffmann病とも呼ばれている。1956年にはⅢ型SMA(Kugelberg-Welander病)が記載され、1991年にⅠ型~Ⅲ型の分類が提唱された。1995年にLefebvreとMelkiがSMN(survival motor neuron)遺伝子を同定した。そして2007年にSMAの標準的ケアに関するコンセンサスステートメントが公表された1。 SMAの研究については、SMN2遺伝子RNAを治療標的とした研究と、SMN2遺伝子の低分子研究が並行して進められ、さらに遺伝子治療に関する臨床研究が進んでいる。この中で、スピンラザが最初に臨床応用された1。

SMAの病型と臨床的特徴 SMAは、発症年齢と重症度によって0型~Ⅳ型の5病型に分類される。さらにⅠ型をⅠa、Ⅰb、Ⅱ型をⅡa、Ⅱb、Ⅲ型を

Ⅲa、Ⅲbに分ける場合がある。病型ごとの発症時期は0型が胎児期、Ⅰ型が0~6ヵ月齢、Ⅱ型が18ヵ月齢未満、Ⅲ型が18ヵ月齢超、Ⅳ型が20歳超となっている2-4。病型別の最高到達運動機能は、Ⅰ型がnever�sit、Ⅱ型がnever�stand、Ⅲ型がstand�&�walk�aloneと表現される(表1)。 Ⅰ型SMAに特徴的な臨床症状として、floppy� infantがある。両手を持って引き起こしても頭がついてこず、四肢が屈曲しないという状態を示す。胸郭はベル様の形状(bell-shaped)で奇異呼吸を示し、手首が垂れ下がったような形状

(wrist�drop)が観察される(図1)。 Ⅰ型SMA患者では、仰臥位で寝かせると、上肢を挙上せず、水差しの取手様の形状(jug-handle�position)を示す。また、下肢も床にべたっと床につけていることが多い状態

(frog�leg�posture)を示す。口腔症状として線維束性収縮と呼ばれる細かい舌の動きがみられる。 Hoffmannが報告したⅡ型SMA症例では、単独で座位が可能であったものが病勢の進行に伴い、次第に座位がとれなくなり、関節拘縮や脊柱側弯もみられるようになることが示されている。 Ⅲ型SMA患者は、立位では腰椎前弯、下肢を開いて起立し、Duchenne型筋ジストロフィー患者と類似した姿勢であ

SMAの臨床症状と早期診断の重要性

Session 1 ● SMAの臨床 ― 症状発現から診断まで―

SMAの病型分類

Zerres K, et al.:Arch Neurol. 1995;52(5):518-523. Munsat TL.:Neuromuscl Disord. 1992;2(5-6):423-428.

Darras BT, et al.:Pediatr Clin North Am. 2015;62(3):743-766.より作表

表1

最高到達運動機能発症年齢型

0型 超重症 胎児期

Werdnig-Hoffmann病Ⅰ型 重症 0~6ヵ月 never sit

Dubowitz病Ⅱ型 中間 <18ヵ月 never stand

Kugelberg-Welander病Ⅲ型 軽症 18ヵ月< stand & walk

alone

Ⅳ型 成人型 20歳<

Ⅰ型SMAの特徴❶

齋藤先生ご提供

図1

3ヵ月齢

bell-shaped wrist drop

齋藤 加代子 先生 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター特任教授・所長東京女子医科大学名誉教授

2

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

る。しかし、SMAでは外反足、X脚、反張膝等の特徴が異なっている。一般的に知能は正常で、聡明な表情が経験的に観察される。

SMAの早期診断・早期治療の重要性 スピンラザが臨床応用された現在では、SMAの早期診断・早期治療が重要である。特にⅠ型SMAについて、従来の診断手順では、何らかの神経あるいは筋疾患が疑われる場合、まず染色体検査、筋生検などを行うことが多く、その後ようやく遺伝学的検査が行われるという傾向があったのではないかと思われる。しかし、このような対応では、遺伝学的検査が行われてSMAと診断される頃には、呼吸機能障害が進行した状態に至ってしまっている場合が大半ではないだろうか(図2)。 体重の増えが悪い、飲みが悪い、吸いが弱い、おとなしいといった保護者からの訴えや、前述のSMAの臨床的徴候がみられた場合には、Ⅰ型SMAを疑い、早期に遺伝学的検査を実施することが重要である(表2)。 SMAの臨床的な診断基準に、1992年の国際SMA協会の診断基準3がある。筋力低下と脱神経の徴候を見逃さないことがポイントであるが、SMAでは知覚障害がない点、関節拘縮がほとんどみられない点、外眼筋及び横隔膜の障害は認められない点などにより他疾患を除外する。ただし、0型SMAの場合には、関節拘縮や知的障害がみられることがあり、必ずしもこの診断基準に当てはまらない症例もある。

SMAのケア SMAでは学際的・多職種による包括的なケアが必要であり、適切な栄養管理や呼吸管理が求められる。特にⅠ型における気管切開については、保護者と十分に話し合いをしながら進める必要がある。保護者が緩和ケアのみを望む場合もあるが、その場合、気管切開を回避するために非侵襲的な呼吸ケアも選択肢の一つとなる。日本人SMA患者の自然歴に関する調査結果によれば、Ⅰa型SMAの約90%が気管切開下陽圧換気療法(TPPV)であった。Ⅰb型SMAでは約70%が呼吸ケアなし又は非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を受けていた。Ⅱ型SMAでは呼吸ケアなし又は夜間のみのNPPV施行例が多く、順調な経過をたどっていることがうかがえた5。 SMAの薬物治療では、国際共同第Ⅲ相臨床試験であるENDEAR試験において、スピンラザが運動マイルストーンを

Ⅰ型SMAの特徴❷

齋藤先生ご提供

表2

訴え 体重の増えが悪い、飲みが悪い、吸いが弱い、おとなしい

聴く 声、泣き声がか細い

触る 筋肉がやわらかい(ふにゃふにゃ)

引っ張る 引き起こし反応でhead lag、上肢伸展、下肢無動

Moro反射 出ない

視る bell-shaped(胸郭はベル様の形状)wrist dropjug-handle position(分娩麻痺と疑われる)frog leg posture(大腿、膝を動かさない)奇異呼吸/シーソー呼吸線維束性収縮(舌にみられる)

SMAの診断

齋藤先生ご提供

図2

● SMAが疑われる臨床症状や経過が認められた際に、筋電図や筋生検などの侵襲的な検査に先立ち、遺伝学的検査を行う

● SMN1遺伝子のホモ欠失が検出された場合は、SMAと確定診断される

●1コピーのみの欠失が確認された場合は、残存している1コピーのSMN1遺伝子の塩基配列解析を行う

SMAは、臨床症状や経過からSMAの可能性がある場合に、遺伝学的検査を行い、確定診断される

改善することが示されている6。

おわりに 米国では、新生児マススクリーニングにSMAを追加しようとする動きが出ている。わが国でも早期診断のために新生児マススクリーニングへのSMAの追加を検討する必要があるのではないかと考えられる。 本講演のまとめとして、(1)臨床所見からSMAを疑おう、

(2)遺伝学的検査により確定診断をしよう、(3)早期診断により治療に向かおう、(4)新生児マススクリーニングでintact�survivalをめざそう、の4点を強調したい。

【文献】1.�Kolb�SJ,�et�al.:Arch�Neurol.�2011;68(8):979-984.2.�Zerres�K,�et�al.:Arch�Neurol.�1995;52(5):518-523.�3.�Munsat�TL.:Neuromuscl�Disord.�1992;2(5-6):423-428.4.�Darras�BT,�et�al.:Pediatr�Clin�North�Am.�2015;62(3):743-766.5.�Kaneko�K,�et�al.:Brain�Dev.�2017;39(9):763-773.�6.�Finkel�RS,�et�al.:N�Engl�J�Med.�2017;377(18):1723-1732.�

【効能・効果】脊髄性筋萎縮症 〈 効能・効果に関連する使用上の注意〉1.�遺伝子検査により、SMN1遺伝子の欠失又は変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与すること。 2.�SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、本剤投与のリスクとベネフィットを考慮した上で投与を開始し、患者の状態

を慎重に観察すること。 3.�永続的な人工呼吸が導入された患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、患者の状態を慎重に観察し、定期的に有効性を評価し投与継続の可否を判断すること。効果が認められない場合には投与を中止すること。 【使用上の注意】(抜粋)6. 小児等への投与 早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

3

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

はじめに 1995年にSMA*(脊髄性筋萎縮症)の関連遺伝子としてSMN1遺伝子、SMN2遺伝子がクローニングされた1ことを受けて、われわれは、翌1996年からSMAの遺伝学的検査を開始した。現在、SMN1遺伝子はSMAの責任遺伝子、SMN2遺伝子はSMAの修飾遺伝子と考えられている。今回の講演では、われわれの検査データを紹介し、SMA医療の問題点を明らかにしたい。� *spinal�muscular�atrophy

SMN1遺伝子欠失・非欠失患者  SMN1遺伝子欠失は、van�der�Steegeらが開発したPCR/RFLP法により容易に診断できるようになった2。われわれは、このPCR/RFLP法を用いて遺伝学的検査を行い、1996年から2013年までの間に、112人の紹介患者をSMAと診断した3。 SMA病型別にSMN1遺伝子の欠失状況を解析したところ、Ⅰ型SMA患者では51例中48例(94%)、Ⅱ型SMA患者では36例中35例(97%)、Ⅲ型SMA患者では21例中19例

(90%)、Ⅳ型SMA患者では4例中4例(100%)、また、患者全体では112例中106例(95%)に欠失がみられた(表1、図1)3。このように、どの病型においても、SMN1遺伝子欠失例が大多数を占めていた。このことは、SMN1遺伝子欠失の有無により、SMAをスクリーニングできる可能性を示している。 また、5%(6/112例)のSMN1遺伝子非欠失患者においては、SMN1遺伝子は1コピーが欠失し、残りの1コピーに遺伝子内変異を同定した3。すなわち、これらの患者は、SMN1遺伝子欠失/SMN1遺伝子内変異の複合ヘテロ接合体であるといえる。 なお、特筆すべきは、どのSMA患者においてもSMN2遺伝子欠失は認められなかったことである。このことは諸外国の研究でも同様である。モデルマウスを用いた研究で、SMN1遺伝子とSMN2遺伝子が同時に欠失すれば、胎生致死(発生時期に分化の異常が生じ生まれてこない)となることが確認されている。

SMA病型別のSMN2遺伝子コピー数 1996年以降、SMAの臨床症状とSMN2遺伝子コピー数の関連が議論されるようになった。そこで、われわれもSMN1遺伝子欠失患者(1996~2013年、106例)を対象に、SMN2遺伝子

コピー数を病型別に統計解析した。実際には、Ⅰ型とⅡ型の中間に位置する重症度、及びⅡ型とⅢ型の中間に位置する重症度の患者もいるため、病型を決定することは必ずしも容易でないが、今回は、担当医の病型判断に基づいて解析することにした。 Ⅰ型SMAでは2コピー有する患者が最も多く(平均2.18コピー)、Ⅱ型SMAでは3コピー有する患者が最も多く(平均2.97コピー)、Ⅲ型SMAでも3コピー有する患者が最も多く

(平均3.18コピー)、Ⅳ型SMAでは4コピー有する患者が最も多かった(平均3.80コピー)(表2)3。図2に各型のSMN2遺伝子の平均コピー数を示したが、SMAの臨床的重症度とSMN2遺伝子の平均コピー数の間に相関が示された3。 ただし、SMN1遺伝子「非」欠失患者については、SMAの臨床的重症度とSMN2遺伝子の平均コピー数の間に相関は示されなかった3。

SMAの統計・疫学 2006年から2016年にかけて、われわれの研究室で遺伝学的検査を行ったSMA患者について検討した(未発表デー

(n=112、1996~2013)

SMN1遺伝子欠失試験結果

Yamamoto T, et al.:Brain Dev. 2014;36(10):914-920.(一部改変)

欠失非欠失合計

48351

SMN1 Ⅰ型35136

Ⅱ型19221

Ⅲ型404

Ⅳ型1066112

合計

表1

対象・方法:国際SMA協会による診断基準を満たす日本人SMA患者112例を対象に、患者の血液を3mL採取し、そこからPCR法にてDNAを取り出し、SMN1遺伝子欠失を確認した。

SMN1遺伝子欠失試験結果

Yamamoto T, et al.:Brain Dev. 2014;36(10):914-920.より作図

図1

SMN1遺伝子欠失

95%(n=112、1996~2013)

SMAの診断と遺伝学的検査

西尾 久英 先生 神戸大学大学院医学研究科 地域社会医学・健康科学講座疫学分野教授

Session 1 ● SMAの臨床 ― 症状発現から診断まで―

4

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

タ)。2006年というのは、SMN1遺伝子が発表されて10年が経過したことになる年である。この期間にわれわれが検査したSMN1遺伝子欠失患者は118例であった。 遺伝学的検査依頼件数については、大阪府から30件、兵庫県から27件、京都府から7件、奈良県から7件、岡山県から5件であり、残りは北海道、中部、四国、九州の各県から�1~4件の依頼となっていた。これは、「SMAの発生は大阪府、兵庫県で多い」ことを示しているのではない。われわれの研究室は神戸にあるため、立地上、近畿圏からの検査依頼が多くなっているのである。 患者の病型については、Ⅰ型SMA患者が59例(50%)、Ⅱ型SMA患者が33例(28%)、Ⅲ型及びⅣ型SMA患者が26例(22%)であった。このような病型の分布は、諸外国の疫学研究結果と大きく矛盾するものではない。しかし、実際には、Ⅲ型及びⅣ型SMAの発生頻度はもっと高いのではないだろうか。なぜならば、Ⅲ型及びⅣ型SMA患者では、疾患の進行が緩徐で、生命予後も良好であるため、確定診断に至っていない例(未診断例)も多いのではないかと予想されるからである。なお、大阪府、兵庫県からの依頼検体は、すべてⅠ型及びⅡ型SMA患者のものであった。 患者の遺伝学的検査時の年齢については、Ⅰ型SMA患者(59例)の平均月齢は19.4ヵ月であった。10ヵ月齢を超えてから検査した患者は16例(27%)いたことより、診断の遅れが懸念される。新生児期に検査した10例(17%)のうち7例は、呼吸不全症状を示していた。このことは、新生児の呼吸不全を認めた場合、SMAを疑うことの重要性を示唆している。また、Ⅱ型SMA患者(33例)の平均年齢は16.3歳であった。10歳を超えてから検査した患者は17例(52%)いたことより、Ⅱ型SMA患者の診断は非常に遅れる傾向がある

(n=106、1996~2013)

Yamamoto T, et al.:Brain Dev. 2014;36(10):914-920.(抜粋)

表2

対象・方法:国際SMA協会による診断基準を満たす日本人SMA患者112例を対象に、リアルタイムPCR法にて、SMN2遺伝子コピー数を確認した。

Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型Ⅳ型合計

10001

3711039

103413158

00538

2.182.973.183.80

病型 1コピー 2コピー 3コピー 4コピー 平均値

SMN1遺伝子欠失患者の病型及びSMN2遺伝子コピー数

Yamamoto T, et al.:Brain Dev. 2014;36(10):914-920.(抜粋)

図2 SMN1遺伝子欠失患者のSMN2遺伝子コピー数

4

1.5

2

2.5

3

3.5

Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型

(n=106、1996~2013)平均値

SMN2遺伝子コピー数

のではないかと疑われる。なお、大阪府、兵庫県からの依頼検体は、すべて、3歳未満の患者のものであった。 最後に、SMAの発生率について、大阪府と兵庫県のデータを基にして検討すると、SMA(Ⅰ型及びⅡ型)の発生率は大阪府で1:2万5,000、兵庫県で1:1万7,000であった。このことから、日本では、SMA(Ⅰ型及びⅡ型)は、1年間に2万出生当たり1人の頻度で発生しているものと推定される。この場合、保因者の頻度は70人に1人ということになる。

おわりに ― 早期診断に向けて― これまでの医学部教育では、鑑別診断の順序として、3つのCということが教えられてきた。3つのCの教えとは、

「common�disease(頻度の高い病気)を考えなさい。critical�disease(緊急の治療が必要な病気)を考えなさい。curable�disease(治療可能な病気)を考えなさい。」ということである。ここには、治療できない病気は後回しになってもやむを得ないという諦めがある。 しかし、状況は変わった。スピンラザによる治療が可能になり、SMAは、いまや、診断の遅れや未診断が許されない病気になったのだ。さらに、SMAは早期治療が重要であることもわかってきた。治療開始が早ければ早いほど、治療効果が期待できるのである。 SMAの早期診断はますます重要になる。SMA早期診断・早期治療の実現をめざして、われわれはすでに新生児を対象とするSMAスクリーニング・システムを立ち上げる準備を進めているところであり、SMAの医療に関わっておられる関係各位のご支援とご協力を乞い願う次第である。

【文献】1.�Lefebvre�S,�et�al.:Cell.�1995;80(1):155-165.2.�van�der�Steege�G,�et�al.:Lancet.�1995;345(8955):985-986.3.�Yamamoto�T,�et�al.:Brain�Dev.�2014;36(10):914-920.

【効能・効果】脊髄性筋萎縮症 〈 効能・効果に関連する使用上の注意〉(抜粋)1.�遺伝子検査により、SMN1遺伝子の欠失又は変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与すること。 2.�SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与

する場合には、本剤投与のリスクとベネフィットを考慮した上で投与を開始し、患者の状態を慎重に観察すること。 【使用上の注意】(抜粋)6. 小児等への投与 早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

5

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

はじめに 本日は、スピンラザの特性と臨床成績について紹介する。

スピンラザの特性 SMA*(脊髄性筋萎縮症)は、SMN1遺伝子の欠失又は変異による機能性SMNタンパク質の不足により引き起こされる。SMN2遺伝子では、mRNAのスプライシング時に90%のエクソン7がスキップされるため、SMNタンパク質の多くは非機能性となる。スピンラザは、SMN2遺伝子のスプライシングの制御により、SMN2�mRNAへのエクソン7の含有を促進することで、機能性SMNタンパク質を増加させる薬剤である1。� *spinal�muscular�atrophy

スピンラザの主な臨床成績1)ENDEAR(CS3B)試験(日本及び海外のデータ) ENDEAR試験2,3は、乳児型(主にⅠ型)SMA患者を対象とした第Ⅲ相試験である。患者の発症年齢中央値は約2ヵ月齢で、スピンラザは生後6ヵ月弱から投与が開始された。 運動マイルストーン改善例の割合は、スピンラザ群で中間解析時41% 、最終解析時51%と、対照群(それぞれ0%、0%)に比べ有意に高かった(いずれもp<0.0001、Fisherの正確確率検定)。さらに、特定の運動マイルストーン改善例の割合は、スピンラザ群/対照群でそれぞれ、

「首が完全に座る」では22%/0%、「横に転がる」「腹這いから仰向け」「仰向けから腹這い」の達成では34%/3%、

「安定して座る」「座った姿勢から旋回できる」では8%/�0% 、「支えると立つ」「補助なしで立つ」では1%/0%であった。 無イベント生存率は、スピンラザ群61% 、対照群32%�

[HR:0.53(95%信頼区間:0.3156-0.8902)、p=0.0046、�層別log-rank検定]、CHOP�INTEND(Children’s�Hospital�of�Philadelphia�Infant�Test�of�Neuromuscular�Disorders)総スコアがベースラインから4点以上改善した患者割合は、スピンラザ群71%、対照群3%と、スピンラザ群で有意に高かった(p<0.0001、Fisherの正確確率検定)。

 副作用発現率は、スピンラザ群11.3%、対照群14.6%で、主な副作用として発熱がスピンラザ群2例(2.5%)、対照群2例(4.9%)に認められた。重篤な副作用はみられなかった。死亡はスピンラザ群13例(16.3%)、対照群16例(39.0%)であった。本試験で投与中止に至った有害事象はすべて死亡によるものであった。2)CS3A試験(海外データ) CS3A試験は、ENDEAR試験に先行して開始された乳児型(主にⅠ型)SMA患者を対象とした第Ⅱ相試験である。スピンラザ投与回数中央値は7回、治療期間中央値は628日であった。検討の結果、特定の運動マイルストーン改善例の割合は、「座る(支えなし)」で40%、「立つ(補助あり又は補助なし)」で25%、「歩く(補助あり又は補助なし)」で10%であった4。 有害事象は20例中20例に認められた。重篤な有害事象は16例(80.0%)で、死亡は4例、その内訳は、呼吸不全が2例、偶発的な窒息及びウイルス性下気道感染であった。投与中止に至った有害事象はすべて死亡によるものであった。3)CHERISH(CS4)試験(日本及び海外のデータ) Ⅱ型又はⅢ型SMA患者では、運動機能の経時的な低下がみられ、Ⅱ型SMA患者では座位保持の喪失、Ⅲ型SMA患者では歩行機能の喪失、座位保持の喪失の報告もされている5。CHERISH試験は、主にⅡ型又はⅢ型SMA患者を対象とした第Ⅲ相試験である6。患者の発症年齢中央値は約11ヵ月齢で、スピンラザは発症から約2年後(3歳)に投与が開始された。 検討の結果、投与開始後15ヵ月目のHammersmith運動機能評価スケール(HFMSE)スコアのベースラインからの平均変化量は、中間解析時にはスピンラザ群 4.0点増加、対照群1.9点減少、最終解析時には、それぞれ3.9点増加、1.0点減少となり群間に有意差がみられた(それぞれp=0.0000002、p=0.0000001:共分散分析モデルに基づく推定値、多重代入法)。 副作用発現率は、スピンラザ群28.6%、対照群9.5%で、主な副作用として頭痛がスピンラザ群8例(9.5%)、対照群1

スピンラザ:特性と臨床成績

竹島 泰弘 先生 兵庫医科大学小児科学教室主任教授

Session 2 ● SMAの治療 ― 新時代の幕開け―

6

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

例(2.4%)に認められた。死亡及び重篤な副作用、投与中止に至った副作用は認められなかった。4)罹患期間に基づくサブグループ解析結果 ENDEAR試験及びCHERISH試験において、運動マイルストーンについて背景因子別の層別解析を行った。その結果、いずれの試験においても、罹患期間が短い集団において運動マイルストーンの改善が大きい傾向がみられた(図1、2)2, 6。

おわりに SMAでは、早期に診断・治療することでより高い効果が期待できるため、疾患啓発が重要であると考えられる。今後、実臨床での実績の蓄積が求められる(図3)。

Take Home Message図3

● 早期に診断し、早期に治療することでより高い効果が期待される●早期診断されるための疾患啓発が重要である●今後、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型SMAともに早期治療例の実臨床での実績の蓄積が重要である

●Ⅰ型SMAの気管切開例に対する治療効果、Ⅱ型SMAの重度側弯例に対するアプローチなどの新たな知見も急がれる

竹島先生ご提供

【文献】1.�Corey�DR.:Nat�Neurosci.�2017;20(4):497-499.2.�社内資料(承認時評価資料):日本を含む国際共同試験(CS3B)3.�Finkel�RS,�et�al.:N�Engl�J�Med.�2017:377(18):1723-1732.�4.�社内資料(承認時評価資料):外国臨床試験(CS3A)5.�Kaufmann�P,�et�al.:Neurology.�2012;79(18):1889-1897.6.�社内資料(承認時評価資料):日本を含む国際共同試験(CS4)

【効能・効果】脊髄性筋萎縮症 〈 効能・効果に関連する使用上の注意〉(抜粋)1.�遺伝子検査により、SMN1遺伝子の欠失又は変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与すること。 2.�SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与

する場合には、本剤投与のリスクとベネフィットを考慮した上で投与を開始し、患者の状態を慎重に観察すること。 【使用上の注意】(抜粋)6. 小児等への投与 早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

HFMSEスコアの変化量a投与群 群間差

[95%信頼区間]a

図2 主にⅡ型又はⅢ型SMAにおける罹患期間に層別した運動機能改善例の割合(中間解析時)(国際共同第Ⅲ相臨床試験[CHERISH(CS4)試験]サブグループ解析※)(日本及び海外のデータ) ※照会事項に対する回答として提出し、評価されたサブグループ解析を含む。

社内資料(承認時評価資料):日本を含む国際共同試験(CS4)調整済平均値±標準誤差(評価例数)a:罹患期間:投与群を因子、年齢及びベースライン値を共変量としたANCOVAモデルに基づく

目的:主にⅡ型又はⅢ型SMA患者へのスピンラザ反復髄腔内(IT)投与時の有効性、安全性、忍容性、薬物動態を検討する。対象:スクリーニング時に年齢が2~12歳の主にⅡ型又はⅢ型SMA患者126例(日本人被験者8例)方法:対象をスピンラザ群又は対照群に2:1に無作為に割り付け、スピンラザ1回12mg(薬液量5mL)の腰椎穿刺によるITボーラス投与(1~3分)、又は対照シャム処置のいずれかを行った。スピンラザは負荷投与(1、29、及び85日目)した後、6ヵ月後

(274日目)に維持投与を行った。最長482日間追跡評価した。主要評価項目:15ヵ月目におけるHFMSEスコアのベースラインからの変化量副次評価項目:HFMSEスコアが15ヵ月でベースラインから3点以上増加した被験者の割合、15ヵ月目に新たなWHO運動マイルストーンを達成した被験者の割合、上肢モジュール改訂版(Revised Upper Limb Module:RULM)スコアの15ヵ月目におけるベースラインからの変化量など解析計画:2016年8月31日をデータカットオフ日として中間解析を実施した。有効性について、中間解析では、主要評価項目のみを、共分散分析(ANCOVA)モデルを用いてα=0.025で検定した。中間解析では、主要評価項目が統計的に有意であった場合に、副次及び三次評価項目を記述的に報告し、正式な統計学的検定は実施しなかった。副次及び三次評価項目は、最終解析においてα=0.05で検定した。中間解析により確認された効果に基づき、試験は早期に終了した。最終投与/シャム処置から2週間以内に最終来院/評価を求め、windowing approachを用いて456日目の来院で評価を受ける機会を有した100例が最終解析の有効性解析対象集団に含まれた。WHO運動マイルストーンを除く主要・副次評価項目はITT集団で主解析を行い、欠測値は多重代入法を用いて補完した。また、地域、スクリーニング時の年齢、罹患期間に基づき、サブグループ解析を計画し行った。

罹患期間

25ヵ月未満

25ヵ月以上44ヵ月未満

44ヵ月以上

対照群

スピンラザ群

対照群

スピンラザ群

対照群

スピンラザ群

-1.7±1.88(10)

8.1±1.88(10)

0.6±1.72(6)

3.2±1.05(15)

-7.7±1.61(3)

2.5±0.75(10)

-10 0 10 20 30

9.8

3.8 15.8

2.6

-1.8 6.9

10.2

5.9 14.6

ITT集団、OC

罹患期間

13.1週以下d

13.1週超d

対照群

スピンラザ群

対照群

スピンラザ群

0(0/19)

70.3(26/37)

0(0/18)

30.6(11/36)

社内資料(承認時評価資料):日本を含む国際共同試験(CS3B)

図1

目的:乳児型(主にⅠ型)SMA患者へのスピンラザ反復髄腔内(IT)投与時の有効性、安全性、忍容性、薬物動態を検討する。対象:SMN2遺伝子を2コピー有し、スクリーニング時に生後7ヵ月齢以下の乳児型

(主にⅠ型)SMA患者121例(日本人被験者3例)方法:対象をスピンラザ群又は対照群に2:1に無作為に割り付け、スピンラザ1回12mg相当量(脳脊髄液推定量に基づき、2歳以上の小児に対する12mgに相当するよう乳児の年齢で調節した投与量)の腰椎穿刺によるITボーラス投与(1~3分)、又は対照シャム処置のいずれかを行った。スピンラザは負荷投与(1、15、29、及び64日目)した後、4ヵ月ごとに維持投与を行った(183及び302日目)。最長394日間追跡評価した。主要評価項目:運動マイルストーン(HINEのセクション2による)、死亡又は永続的換気補助※までの期間 ※急性可逆性疾患を認めない、気管切開又は1日当たり16時間以上の換気が連続21日間を超えて行われると定義)副次評価項目:CHOP INTEND、生存率など解析計画:2016年6月15日をデータカットオフ日として中間解析を実施した。無作為割り付けされ、スピンラザ投与又はシャム処置を少なくとも1回受けた121例(ITT集団)のうち、183日目の来院で評価を受ける機会を有した78例が、中間解析における有効性解析対象集団に含まれた。中間解析により確認された効果に基づき、試験は早 期 に 終了した。本 試 験の 早 期 終了に伴う最 終 解 析 のための 最 終 来 院日にwindowing approachを用い、183日目の来院で評価を受ける機会を有した110例が最終解析の有効性解析対象集団に含まれた。また、罹患期間、SMAの発症年齢、地域に基づき、サブグループ解析を計画し行った。割合(%)(該当例数/評価例数)

a: 有効性解析対象集団 b: ITT集団c: 割合の差の正確な信頼区間 d: 運動マイルストーン(最終解析時)のみ12.9週以下、12.9週超

-20 0 20 40 60 80 100

改善例の割合

66.7(14/21)

22.0(9/41)

70.0(14/20)

56.4(22/39)

イベント発現例の割合

群間差[95%信頼区間]c

群間差[95%信頼区間]c

運動マイルストーンa

(最終解析時)投与群

死亡又は永続的換気補助(最終解析時)b

70.3

45.3 87.4

56.8

30.6

1.0

-80 -60 -40 -20 0 20 40

-44.7

-66.2 -18.8

14.3

-13.6

-38.6

乳児型(主にⅠ型)SMAにおける罹患期間に層別した改善例の割合(最終解析時) (国際共同第Ⅲ相臨床試験[ENDEAR(CS3B)試験]サブグループ解析※)(日本及び海外のデータ)※照会事項に対する回答として提出し、評価されたサブグループ解析を含む。

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はじめに 神経疾患の治療法は、対症療法と根本療法とに大きく分かれるが、従来、SMA*(脊髄性筋萎縮症)に対しては、対症療法である呼吸管理、栄養管理、拘縮予防などが行われてきた。疾患修飾薬であるスピンラザが、2017年8月から臨床の場で使用可能になった。当院で経験したSMAの人工呼吸器患者へのスピンラザ髄腔内投与の実際を中心に紹介する。

*spinal�muscular�atrophy

当院におけるスピンラザ髄腔内投与の実際 髄腔内投与は、小児科で施行している髄液検査に準じ、施行している。処置室でマスクと帽子を装着し、穿刺して脳脊髄液の採取後、スピンラザを充填したスクリュータイプのシリンジを用いて、空気が混入しないようスパイナル針に取り付け、胸の動きやバイタルサインを確認しながら、30秒ごとにコールして、2分間を目標にして投与している。終了後は、1時間安静にして、1時間後に試飲して問題なければ、通常通りに飲水、摂食とする。投与に際して人員の確保が重要である。当院では、医師3人(処置医師、体位介助医師、モニター・呼吸管理医師)と医師又は看護師1人(処置前後のバイタルサイン測定)の4人で施行していた。Ⅰ型SMAにおいては呼吸が不安定ということもあり、局所麻酔や表面麻酔のみ、Ⅱ型及びⅢ型SMAでは状況に応じて血管からの静脈麻酔を施行している。

人工呼吸器患者への投与経験及び投与の注意点 われわれが経験した症例を提示する。症例は女児で、生後

2ヵ月より吸気性の喘鳴があり、4ヵ月健診時に未定頸、筋緊張低下を指摘され、SMAと確定診断後、5ヵ月齢で当院を受診した(図1)。身体所見は、SpO2�96~97%、定頸なし、frog�leg�posture及び啼泣時の奇異呼吸を認めた。抗重力運動は手関節・足関節のみ、舌の線維束性収縮がみられ、深部腱反射は消失していた。6ヵ月齢でスピンラザの臨床試験に参加した(キーオープン後シャム処置群と判明)が、呼吸状態が急激に悪化したため非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を導入し、その後、気管切開人工呼吸器導入となった。2歳時に胃瘻造設、噴門形成術を施行した。現在、経管栄養を施行中で、治療開始から2年が経過した。 人工呼吸器患者のスピンラザ髄腔内投与では、以下の準備と注意が必要である。(1)体位を整えて手技を行う、(2)体位調整では、膝屈曲位で、気道カニューレの事故抜去に注意のうえ、患者の呼吸状態を確認しながら無理のない体勢をとる、

(3)呼吸・循環管理が重要であるため、酸素吸入や吸引など呼吸補助の準備をする、(4)感染防止のため清潔操作に留意する、などである(図2)。また、鎮静に関しては、患児の呼吸状態を確認してから、必要があれば鎮痛・鎮静薬を使用している。

おわりに スピンラザ髄注の際には、病型に応じて処置時に注意すべきポイントが変わることも考慮する必要がある。Ⅰ型SMA患者では呼吸不全の程度により、気道確保・頻回の吸引や髄注時の体位の調整が必要であり、Ⅱ型及びⅢ型SMA患者では脊柱側弯、拘縮により手技が困難になる点に留意が必要である。

症例:生後5ヵ月、女児

衞藤先生ご提供

図1

【主  訴】 筋緊張低下【家 族 歴】 神経筋疾患なし、兄(5歳)-健康【周産期歴】 在胎38週2日、経腟分娩で出生、仮死なし、出生体重

2,792g【発 達 歴】 定頸-未、追視-1ヵ月、あやし笑い-2ヵ月【現 病 歴】 周産期に特記事項なし。生後2ヵ月より吸気性の喘鳴

あり、近医で経過観察されていた。4ヵ月健診時に未定頸、筋緊張低下を指摘され、他院紹介された。脊髄性筋萎縮症を疑い、SMN遺伝子検査にて確定診断した。5ヵ月時に、スピンラザ治験目的で当科紹介受診した。

人工呼吸器児における髄注処置

衞藤先生ご提供

図2

呼吸・循環管理

体位調整

外回り医師もしくは看護師

● 事故抜去のリスクを常に考慮し、吸引、ジャクソンリースやバッグバルブマスク、予備のカニューレを必ず手元に置いておく。

●処置の際の鎮静に関しては、事前に児の呼吸状態を確認してから鎮痛・鎮静薬を使用する。

●体位調整の際、膝屈曲位は児の呼吸状態を確認しながら、無理のない体勢で行う。

処置

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

スピンラザ:髄腔内投与の実際東京女子医科大学における経験 ―人工呼吸器患者への投与―

衞藤 薫 先生 東京女子医科大学小児科

Session 2 ● SMAの治療 ― 新時代の幕開け―

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はじめに 本日は、側弯を伴うSMA*(脊髄性筋萎縮症)患者に対するスピンラザ髄腔内投与の実際について解説する。

*spinal�muscular�atrophy

脊髄性筋萎縮症に伴う側弯症 SMA患者では、その50~67%に側弯症を伴い1、特にⅡ型及びⅢ型SMAでは呼吸障害との関連が指摘されており、進行性脊柱変形に対しては外科的治療も考慮する必要がある2。 重度の側弯症では、胸郭コンプライアンスの低下、胸郭容積の低下、肺実質の圧迫などにより、拘束性肺機能障害を呈する。

側弯患者の腰椎穿刺に際して注意すること 腰椎穿刺に際しては、腰椎の側弯症が最も問題となる。腰椎に捻れが生じた場合に、棘突起が正中からどの程度ずれているかを、あらかじめ検討することが重要になる。背側からみた場合、捻れによって棘突起が体の中心側に向いており、髄腔が外側に向いているという点がポイントになる。また、前弯が強くなり、椎弓の間隔も狭くなる。 King分類の特発性側弯症の分類では、弯曲の型は5型に分けられる。TypeⅠ、Ⅱ、Ⅴは胸腰椎とも弯曲するダブルカーブ型、TypeⅢは胸椎カーブ型、TypeⅣはロング胸椎カーブ型である1。神経筋原性側弯症ではTypeⅣが特徴的で、ダブルカーブ型は腰椎の捻れが小さい。 腰椎穿刺には正中法と傍正中法がある(図1)。Cobb角24度の右に凸の側弯患者を、左側臥位にすると背骨が曲

がってしまう。椎弓に対して真っすぐに刺す正中法を行う場合、本症例では斜め上方向に刺すことになる。傍正中法は正中から5mm~2cm程度外側、15~30度の角度をつけて刺入するという方法で、本症例では背中に対して垂直に刺すと、椎体に対しては傍正中の方向から刺入する角度となる。正中法と傍正中法の角度の範囲内で適切な刺入方向を検討することになる。

当院で穿刺に難渋した側弯症例 当院では、Ⅰ型及びⅡ型SMAの側弯症例にスピンラザ髄腔内投与の施行経験があるが、穿刺に慣れた医師であっても、処置が難しい症例もあり、X線像で側弯の程度を何度か確認しながら穿刺している。 当院で処置に難渋した側弯症例を紹介する。症例は、Ⅰ型SMAの8歳女児で、側弯の程度は34度、気管切開、人工呼吸器装着症例である。股関節脱臼のため側臥位がとりにくかったため、自宅で側臥位の練習をしてきてもらい、右側臥位での施行となった。腰椎前弯が強く、前屈位がとりにくく、側弯により棘突起が左側脊柱起立筋に重なるため触れにくかった。本症例ではスピンラザ投与に、処置医師、頭部保定医師、足部保定医師、麻酔科医師各1人、看護師2人の計6人を要した。刺入前に椎弓の位置と脊柱起立筋の位置関係などより正中から脊椎がどの程度ずれているかを総合的に判断して刺入したところ、問題なく投与を終了できた。

おわりに 側弯症を伴うSMA患者では、髄注処置に際して側弯、股関節脱臼などの整形外科的合併症を想定する必要があり、また、棘突起の位置、脊柱の捻れは側弯の方向、側臥位の向きから総合的に判断する必要がある。さらに、患者に応じた処置の方法を事前に検討することが肝要である。

【文献】1.��Weinstein�SL.:The�Pediatric�Spine:Principles�and�Practice,�Second�

Edition,�Lippincott�Williams�&�Wilkins,�New�York,�20012.��SMA診療マニュアル編集委員会(編).�脊髄性筋萎縮症診療マニュアル.��

金芳堂,�京都,�2012

側弯患者への穿刺方法

下村先生ご提供

図1

傍正中法正中法

※傍正中法正中から5mm~2cm程度外側、15~30度の角度をつけて刺入する

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

スピンラザ:髄腔内投与の実際兵庫医科大学における経験 ― 側弯患者への投与―

下村 英毅 先生 兵庫医科大学小児科

Session 2 ● SMAの治療 ― 新時代の幕開け―

〈 効能・効果に関連する使用上の注意〉(抜粋)3.�永続的な人工呼吸が導入された患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、患者の状態を慎重に観察し、定期的に有効性を評価し投与継続の可否を判断すること。効果が認められない場合には投与を中止すること。

【使用上の注意】(抜粋)2. 重要な基本的注意� �(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。7. 適用上の注意 (2)投与時��1)重度の脊柱変形を生じている患者では、確実に髄腔内に刺入できるよう、超音波画像等の利用を考慮すること。

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

はじめに 本日は、スピンラザのExpanded�Access�Program

(EAP)とそこでわれわれが経験したⅠ型SMA*(脊髄性筋萎縮症)に対するスピンラザ投与症例について紹介する。

*spinal�muscular�atrophy

進行中のスピンラザのExpanded Access Program 欧州では、他に有効な治療法がない重篤な疾患等に対して製薬企業が開発中の医薬品を臨床試験以外の患者に供給するEAPがある。スピンラザの臨床試験における有効性が示された後、われわれは2016年11月にⅠ型SMA患者に対するスピンラザのEAPを開始した1。 本プログラムの開始に先立ち、医師、患児の保護者、支援団体の代表者、倫理学者、法律家から成るNational�Committeeを設立した。本Committeeは、組入れ基準に合致する症例の検討、組入れの優先事項の検討、実施施設のサポート、家族への説明などの役割を担い、医師の負担軽減と透明性確保に貢献した。組入れ基準の優先事項は、新規症例、低年齢、呼吸状態とした。患者は居住地をもとに5つの実施施設に割り振られた。受診の度に、バイタルサイン、呼吸ケアの状態、呼吸器感染症、カロリー摂取量、有害事象を評価し、さらに、ベースライン、投与開始後180日及び365日の各時点でCHOP�INTEND(Children’s�Hospital�of�Philadelphia�Infant�Test�of� �Neuromuscular�Disorders)、HINE

(Hammersmith�Infant�Neurological�Examination)のセクション2により運動機能を評価した。 スピンラザの髄腔内投与は、静かな部屋で保護者の付き添いのもと、局所麻酔(リドカイン・プロピトカイン配合クリーム)塗布後に実施した。全身鎮静が必要な場合には、保護者と相談のうえ、半減期が短いミダゾラム又はセボフルランを使用した。 髄腔内投与を施行した全120例中96例では、投与手技に大きな支障は生じなかったが、重度の側弯症例24例では、初回の手技に失敗した1。その後、これらの側弯症例に対して画像によるガイド下での投与が施行された。デバイスは施設によって異なり、CT(4例)、超音波(5例)、ビデオ透視検査

(2例)が用いられた1。これらの側弯症例のうち13例は、初回投与が困難であった1。

症例紹介 以下にわれわれがスピンラザを投与した2症例を紹介する。

1)症例1:気管切開された2歳の男児 症例1は男児で、4ヵ月齢でⅠ型SMA(SMN2遺伝子2コピー)であると診断された。9ヵ月齢の時に気管切開術と胃瘻造設が施行されていた。2歳でスピンラザ投与が開始された。投与開始時には24時間人工呼吸器を装着していた。CHOP�INTEND総スコアは投与前14点であったが、投与開始後180日目には24点になり、運動機能が改善した(図1)。また、呼吸機能は安定しており、発声が強くなった。有害事象はみられなかった。 治療前には座位をとることができなかったが、治療後は、補助具による座位保持が可能となったほか、手首が動かせるようになり、ペンの使用やタブレット端末の操作も可能になった。また、治療前には全く動かせなかった足を、治療後には動かせるようになった。これらは、スピンラザによる治療が患児の日常生活の改善に寄与していることを示すものと思われる。2)症例2:新規に診断された5ヵ月齢の女児 症例2は女児で、4ヵ月齢の時に両親が下肢の動きがほとんどみられないことに気づき、5ヵ月齢でⅠ型SMA(SMN2遺伝子2コピー)と診断された。確定診断後22日という短期間でスピンラザ投与を開始できた。投与開始時に、奇異呼吸以外の呼吸機能の異常はみられなかった。CHOP�INTEND 総スコアは投与前 24点であったが、投与開始後302日目には53点になり、運動機能が大きく改善した�

(図2)。また、呼吸パラメーター及び成長パラメーターは正常で、座位保持が可能となり、完全ではないが腕の挙上もできるようになった。早期治療が高い治療効果をもたらしたといえるだろう。

スピンラザ使用経験からの考察 現在までの臨床経験において、虚弱な小児症例にスピンラザを投与しても忍容性が示された。運動機能の改善は、低年

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

イタリアにおけるⅠ型SMA症例に対するスピンラザの使用経験

Adele D’Amico 先生  Senior Researcher, Unit of Neuromuscular and Neurodegenerative Disorders, Bambino Gesù Children’s Hospital

Session 3 ● 特別講演

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スピンラザ新発売学術講演会 SMA Forum 2017

齢の症例で明らかであったが、高年齢のⅠ型SMA症例でも、いくらかの改善がみられた症例も経験した。また、わずかな改善であっても患児の日常生活動作やコミュニケーションの改善につながった。 多くの患者が投与開始時に人工呼吸器を装着していたが、それらの患者においても運動機能の改善がみられ、6ヵ月の治療期間中、呼吸機能は安定していた。治療の継続可否を判断するために、スピンラザを少なくとも1年間投与することが妥当であると考えられた。ただし、人工呼吸器患者に対する臨床経験は多くないため、有効性の結論を得るには、臨床経

気管切開された2歳の男児

D’Amico先生ご提供

図1

<経過及び転帰>▲

投与開始後180日目● 運動機能は改善(右表)●呼吸機能は安定●補助具使用で座位保持可能になり、発声が強くなった

●有害事象はみられなかった

<現病歴・現症>● 4ヵ月齢:Ⅰ型SMAと診断(SMN2遺伝子2コピー)● 9ヵ月齢:気管切開術施行、胃瘻造設● 2歳:スピンラザ治療開始、24時間人工呼吸器装着

1 自発運動(上肢) 2 自発運動(下肢) 3 手の握り 4 頭部の正中復帰 5 股関節内転筋群 6 下肢の捻りで誘発される寝返り 7 上肢の捻りで誘発される寝返り 8 肩関節の屈曲および肘関節の屈曲並びに水平伸展 9 肩関節屈曲および肘関節屈曲 10 膝関節伸展11 股関節屈曲および足関節背屈12 頭部のコントロール 13 肘関節屈曲(第14項目と併せて採点)14 頸部屈曲(第13項目と併せて採点)15 頭/頸部伸展(ランドウ反射) 16 背反射(ギャラン反射)総スコア

303241001000000014

333242121100200024

投与前CHOP INTEND 180日目

新規に診断された5ヵ月齢の女児

D’Amico先生ご提供

図2

<経過及び転帰>▲

投与開始後302日目(1歳3ヵ月)● 運動機能が大きく改善(右表)●呼吸パラメーター正常●成長パラメーター正常

<現病歴・現症>● 4ヵ月齢:両親が下肢の動きが鈍いことに気づく● 5ヵ月齢:Ⅰ型SMAと診断(SMN2遺伝子2コピー)● 診断後22日目:スピンラザ治療開始

1 自発運動(上肢) 2 自発運動(下肢) 3 手の握り 4 頭部の正中復帰 5 股関節内転筋群 6 下肢の捻りで誘発される寝返り 7 上肢の捻りで誘発される寝返り 8 肩関節の屈曲および肘関節の屈曲並びに水平伸展 9 肩関節屈曲および肘関節屈曲 10 膝関節伸展11 股関節屈曲および足関節背屈12 頭部のコントロール 13 肘関節屈曲(第14項目と併せて採点)14 頸部屈曲(第13項目と併せて採点)15 頭/頸部伸展(ランドウ反射) 16 背反射(ギャラン反射)総スコア

413422021023000024

434443244434440253

投与前CHOP INTEND 302日目

験の蓄積が必要である。

おわりに SMAへのスピンラザ治療では早期発見・早期治療が重要であり、罹患期間が短い方がより高い治療効果が期待できる。そこで、早期治療を確実に行えるようにするために診断能力を高める必要がある。

【文献】1.��Messina�S,�et�al.:Neuromuscul�Disord.�2017;27(12):1084-1086.

【効能・効果】脊髄性筋萎縮症 〈 効能・効果に関連する使用上の注意〉1.�遺伝子検査により、SMN1遺伝子の欠失又は変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与すること。 2.�SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、本剤投与のリスクとベネフィットを考慮した上で投与を開始し、患者の状態を慎重に観察すること。 3.�永続的な人工呼吸が導入された患者における有効性及び安

全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、患者の状態を慎重に観察し、定期的に有効性を評価し投与継続の可否を判断すること。効果が認められない場合には投与を中止すること。 【使用上の注意】(抜粋)2. 重要な基本的注意 (1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。6. 小児等への投与 早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

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2018年1月作成SPI-JPN-358SPI041MA01