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都市と廃棄物 Vol. 44. No. 11(2014) −31− ティンプー市生まれと地方出身者の違いは? 調査項目の検討に当たっては,今後処理システ ム改善案を計画し,的確なキャンペーンを実施す るために参考となる項目を設定するとともに,日 本における既存調査結果と比較することができる 項目も考慮した。対象者の属性については, 「性別」 「年齢」「職業」「収入」など型通りの項目のほかに, 首都ティンプー市生まれか,地方出身者であるか どうかも聞いている。これは,「地方出身者は十 分な教育を受けていないから環境マナーが不十分 である」というイメージがもたれているためであ る。日本では考えられないことであるが,教育に 力を入れ始めてから間もないブータンならではの 発想なのだろう。しかし,調査結果を見ると,ティ ンプー市生まれと地方出身者,さらにティンプー 市での居住年数を比較してみても,特に顕著な傾 向は認められなかったので,本稿では触れていな い。 年収は10万 Nu 以下が多い 調査対象者の年収はいずれの地区も10万Nu(調 査時点のレートで約17万円)以下が多く,30万Nu 以下が大半を占めた。3地区間で年収の大きな差 異は認められなかったが,低所得地域と目された Olakha地域では「無回答」が他の地域よりも多かっ た。 1.調査の背景 JICA草の根プロジェクトとして,「ブータン王 国ティンプー市における廃棄物に起因する環境汚 染対策に関する技術移転事業」(平成25~27年度) を実施している。大きく,既存の埋立処分場の改 善・延命対策を実施するとともに,処理システム の適正化を図ることが目的である。その中間報告 を本誌平成26年2月号に報告したところである が,本稿では,平成26年8月に実施した環境・ご み問題に係る世論調査結果について報告したい。 2.調査方法 調査対象者は住居ビルごとに選定 調査対象地域として,「商業地域」「高所得者地 域」「低所得者地域」の3カ所を選定した。また, ブータンは熱心な仏教国であり,環境教育の指導 者としての役割が期待されることから別途仏教大 学の学生をも対象とした。さらに,ティンプー市 環境部の要請により警察官官舎をも対象とした。 警察官は月収はさほど高くないが,食糧・光熱・ 水道など生活用品の大半を支給されるという特殊 な生活環境にあるからだが,普遍性があるとは思 えないので,本稿では詳しく触れないこととする。 対象者の抽出に当たっては,本来住民台帳から 無作為に抽出するべきではあるが,急激な都市化 が進む中で住民台帳の精度に疑問があること,共 稼ぎ率が高く留守家庭が多いと想定されたことな どから時間的な制約を考慮して,調査対象地域の 住居ビルを無作為に抽出して,在宅者に直接面接 調査を実施することとした。具体的な対象地域, 対象者数を図表1に示した。 ブータン王国ティンプー市における 環境・ごみ問題世論調査 (一財)日本環境衛生センター技術顧問  大澤 正明

ブータン王国ティンプー市における 環境・ごみ問題 …...−32− 都市と廃棄物 Vol. 44. No. 11(2014) 写真2 Tango大学 Tango大学。左の看板のある場所から1時間くらい登った場所にある。350人ほどの学生が敷地内の寄宿舎に寝泊ま

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ティンプー市生まれと地方出身者の違いは? 調査項目の検討に当たっては,今後処理システム改善案を計画し,的確なキャンペーンを実施するために参考となる項目を設定するとともに,日本における既存調査結果と比較することができる項目も考慮した。対象者の属性については,「性別」

「年齢」「職業」「収入」など型通りの項目のほかに,首都ティンプー市生まれか,地方出身者であるかどうかも聞いている。これは,「地方出身者は十分な教育を受けていないから環境マナーが不十分である」というイメージがもたれているためである。日本では考えられないことであるが,教育に力を入れ始めてから間もないブータンならではの発想なのだろう。しかし,調査結果を見ると,ティンプー市生まれと地方出身者,さらにティンプー市での居住年数を比較してみても,特に顕著な傾向は認められなかったので,本稿では触れていない。

年収は10万Nu以下が多い 調査対象者の年収はいずれの地区も10万Nu(調査時点のレートで約17万円)以下が多く,30万Nu以下が大半を占めた。3地区間で年収の大きな差異は認められなかったが,低所得地域と目されたOlakha地域では「無回答」が他の地域よりも多かった。

1.調査の背景

 JICA草の根プロジェクトとして,「ブータン王国ティンプー市における廃棄物に起因する環境汚染対策に関する技術移転事業」(平成25~27年度)を実施している。大きく,既存の埋立処分場の改善・延命対策を実施するとともに,処理システムの適正化を図ることが目的である。その中間報告を本誌平成26年2月号に報告したところであるが,本稿では,平成26年8月に実施した環境・ごみ問題に係る世論調査結果について報告したい。

2.調査方法

調査対象者は住居ビルごとに選定 調査対象地域として,「商業地域」「高所得者地域」「低所得者地域」の3カ所を選定した。また,ブータンは熱心な仏教国であり,環境教育の指導者としての役割が期待されることから別途仏教大学の学生をも対象とした。さらに,ティンプー市環境部の要請により警察官官舎をも対象とした。警察官は月収はさほど高くないが,食糧・光熱・水道など生活用品の大半を支給されるという特殊な生活環境にあるからだが,普遍性があるとは思えないので,本稿では詳しく触れないこととする。 対象者の抽出に当たっては,本来住民台帳から無作為に抽出するべきではあるが,急激な都市化が進む中で住民台帳の精度に疑問があること,共稼ぎ率が高く留守家庭が多いと想定されたことなどから時間的な制約を考慮して,調査対象地域の住居ビルを無作為に抽出して,在宅者に直接面接調査を実施することとした。具体的な対象地域,対象者数を図表1に示した。

ブータン王国ティンプー市における環境・ごみ問題世論調査

(一財)日本環境衛生センター技術顧問 大澤 正明

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写真2 Tango大学Tango大学。左の看板のある場所から1時間くらい登った場所にある。350人ほどの学生が敷地内の寄宿舎に寝泊まりして勉強している。17世紀の高僧の生まれ変わりとされる僧もここで修行していたという。

写真1  OLAKHA地区ティンプー市内では一戸建て住宅は少なく,このような集合住宅に住んでいる人が多い。5~6階建てで10~20世帯が住んでいる。はっきりしたデータはないが,家賃はMain Town で13,000~16,000Nu,Motitthang 地 区 で13,000Nu,Olakha地区で10,000Nu程度であるという。

図表2 世論調査項目の概要

現状認識 環境問題で困っていること,ごみ問題で困っていること処理料金 処理料金徴収に関する周知度,料金徴収に対する考え方処理方式 埋立処分場の場所の周知度,焼却に関する考え方,プラスチック処理に関する考え方リサイクル リサイクル行動,分別収集に対する考え方情報の入手方法 ごみ処理施設やリサイクルに関する情報の入手方法環境対策への関心 日常生活の留意点,ブータンの地域性に関する考え方,環境と経済に関する考え方

図表1 調査対象地域

調査対象地域 特   徴 人 数

3地区(H26.8.6~7)

Main Town 商業地域,比較的高所得者の住居 142Motitthang 中心部に近い高台にあり,比較的高所得者層と目される 128Olakha 近年建設が進む住宅街で,比較的低所得者層と目される 105

僧侶 (H26.8.1) 仏教大学(Tango大学)の学生 19RBP colony (H26.8.8) 警察官のための官舎 30

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3.調査結果

 調査結果の概要を以下にまとめる。

3.1 現在の環境・ごみ問題に対する意識僧侶の環境問題に対する意識は高い 図表3は,「あなたの住んでいる地域で困っている環境問題はどのようなことですか」という質問に対する結果を示したものであるが,「ごみの散乱」が最も多く,「生活排水の放流」と「排水溝の汚れ」が次いで多い。「車による大気汚染」は比較的少ない。ティンプー市は人口10万人強の狭い地域に3,000台ともいわれるタクシーが走ってはいるが,ベトナムほどにはバイクは多くなく,タイほどには渋滞はひどくない。「ドマ」は,ビンロウの種子をキンマという葉でくるみわずかな石灰と一緒に噛むもので,ニコチンと似た興奮・刺激作用があり,特に寒さが厳しくなると好んで使用されるが,唾液を飲み込むと胃を痛めるということで,場所をかまわず吐き捨てるので,歩道には真っ赤な汁と白い石灰のあとが点々とみられる。外国人には非常な不快感をもたらすものだが,今回の調査でも多くの人が問題点として指摘している。 全体を通して,僧侶の問題意識が圧倒的に高い傾向が顕著である。地域別には,Motitthangが比較的高い傾向も見られるが,さほど大きな違いで

はない。 図表4は,ごみ問題,特にごみの収集で困っていることについて質問したものである。全体的に,環境問題で困っていることに比べて低い傾向があるが,いずれの地区も「収集回数が少ない」ことが最も高い。現在の収集回数はMain Townは6回/週,Motitthang地区は3回/週,Olakha地区は2回/週であるが,収集回数と不満の割合との相関は特に顕著ではない。「収集回数の問題」と

「臭気の問題」は日本と共通した反応であるが,その他の項目はティンプー市特有の問題である。本市では,収集車の到来を告げるクラクションやサイレンを合図に,市民がバケツや段ボールに入れたごみを持ち出し,自ら収集車の後部に直接投入する。収集補助員は持ち込まれたごみの中からペットボトルなど資源ごみを選り分け別途資源用袋に入れる方式をとっている。その間,5分から15分ほどその場にとどまり,排出者が来なくなった時点で次の地点に移る。日本のシステムと比べると,それは不潔であり,危険であり,場所によっては交通渋滞の要因にもなっているが,それらに対する不満はほぼ30%未満に止まっており,現在の方式が市民に行きわたっていることを感じさせる。また,僧侶の反応も環境問題ほど高くなく,地区によっても大きな差異は認められない。 以下では,図表5に示したように,「性別」「年齢」

図表3 地域で困っている環境問題

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「年収」別に比較してまとめることとする。

3.2 処理料金の徴収(図表5,Q4-1~4-4)有料であることを知らない人が圧倒的に多い  テ ィ ン プ ー 市 で は,BuildingsやHousesやHotelsなど建物の種類ごとに料金を設定しているが, 徴 収 率 は Building か ら は20% 程 度,Commercialからは5%程度であり,徴収率を上げることが喫緊の課題になっている。今回の調査で,その内容について知っている人はわずか21%であり,まったく知らない人は59%に達している。この徴収方法は1992年に決められたものであり,今後,徴収方法の見直し並びに適切な普及啓発活動を実施することが不可欠である。 料金の徴収方法については,現在のような戸別に定額料金とする方法が適当とする意見が69%に達し,従量制に対する理解はわずか19%にとどまっている。従量制にする意義を十分に説明しない中での質問なのでやむを得ない面はあるが,僧侶に関しては,67%が従量制を支持しているのは注目される。

有料化への理解は高い 料金を徴収することの是非を聞いたところ,55%が「当然のこと」と回答している。図表6は,内閣府が有料化に関して世論調査を実施した結果をまとめたものであるが,「有料化に賛成」(消極的賛成を含む)は43%にとどまっており,本調査結果の方が12ポイント高くなっている。 有料化とした場合の金額について,過去の調査では50Nu/月が提案されているが,この金額についても60%を超える者が「妥当である」と回答している。この金額について,以下の条件で比較してみると,ティンプー市の場合,収入に対して0.25%であるのに対し,日本は0.08%であり,ティンプー市の方が3倍以上負担が大きい。

(ティンプー市) 世帯収入 20,000Nu/月,処理料金 50Nu/月

(日本) 世帯収入 518,000円/月(H24:日本の統計),処理料金 400円/月(50円/袋,8袋/月として)

図表4 ごみ問題で困っていること

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3.3 処理施設の整備(図表5,Q5,Q6-1~6-2,Q9)埋立処分場の場所はよく知っている ティンプー市のごみ処理施設は,埋立処分場とコンポスト施設に限定される。埋立処分場は国道沿いに設置されているが,特に目立つ看板があるわけではない。コンポスト施設は国道からは遠く外れ,目立たない場所にある。 埋立処分場の場所を知っている人は60%を超えており,昭和63年に内閣府が実施した調査(図表7)と比較すると倍近くの周知度である。また,埋立処分場が満杯に近づいていることも約50%の者が知っており,後で述べるようにテレビや新聞による周知がよく行われていることによるものと思われる。

野焼きは駄目だけれど… ティンプー市は周囲を山に囲まれた地形であり,焼却施設を設置する場所が極めて限られている。また,環境問題には特に神経質な国の方針も

あり,将来的に焼却施設を建設することは非常な困難を伴うものと思われるが,人口が急激に伸びているにも関わらず,埋立処分場の候補地の確保が極めて困難であることや,未だに医療廃棄物が処理を施されることもなく埋め立てられている状況を勘案すると,いずれは焼却施設の設置についても検討することが必要になるものと思われる。そういう観点から,焼却処理の在り方についていくつか質問した。 図表5,Q5は,現在でも自家焼却を行っている家があることについて意見を聞いたものであるが,約半数が「焼却するべきでない」という回答であった。ただし,僧侶の58%が「焼却はやむを得ない」と答えていることは注目される。

プラスチックは使うべきではないけれど… ティンプー市に限らず,焼却施設を保有しない途上国の多くでは,プラスチックの処理が大きな問題になっている。ブータンにおいては,プラス

図表6 有料化に関する日本の調査結果

平成13年7月:循環型社会の形成に関する世論調査(内閣府調査)

現在,家庭から出るごみの処理費用については,一人当たり年間約2万円かかっており,これは地方公共団体の財源から支出されています。このことに対して,ごみの排出量に応じて各家庭がその処理費用の一部又は全額を負担する「ごみの有料化」を進めるべきという意見があります。このような意見に対して,あなたはどのように思いますか。この中から1つだけお答えください。

(1)賛成である 12.7→ ごみ減量につながる(62%),排出者責任が

明確になる(51%)など(2)どちらかというと賛成である 30.7(3)どちらかというと反対である 26.1

→ 不法投棄につながる(59%),排出者ではなく事業者に負担を求めるべき(32%)など(4)反対である 18.3

(5)どちらともいえない 9.7(6)わからない 2.6

図表7 ごみ処理施設設置場所の周知度(日本の事例)

昭和63年10月:ごみ処理に関する世論調査(内閣府調査)Q あなたは家庭から出たごみが処理される場所を知っていますか。この中からお答えください。

(1)ごみを燃やす清掃工場の場所も,灰を処分する埋立地の場所も知っている 24.3(2)清掃工場の場所は知っているが,灰を処分する場所は知らない 34.2(3)清掃工場で燃やされることは知っているが,工場の場所は知らない 16.3(4)この地域のごみは燃やさないで捨てていることは知っているが,捨てに行く場所は知らない 3.9(5)その他 0.6(6)知らない 20.8

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チック袋を使用しないようにという国からの通知がなされているが,多くのプラスチック袋が使用され,埋立処分場では軟質プラスチックが風に舞い周囲の樹木にぶら下がっている状態である。 プラスチックの使用について聞いたところ,「使用を控えるべきである」という意見が過半を占めるが,その利便性から「ある程度の使用は仕方がない」とする意見も31%を占めている。さらに,「仕方がない」と答えた者に,その対策方法を聞いたところ,図表8に示すように,「リサイクル」「焼却」がほぼ同数であった。

3.4 リサイクル(図表5,Q7-1~7~4,Q8)「リサイクルできる」という知識 「どのような品目がリサイクルされているか」を聞いたところ,「ペットボトル」と「ビールびん」に関しては,80%を超える者がリサイクルされていることを知っており,後で述べるようにその多くは「実際に回収されているところを見た」ことによって知識を得ている。次いで,「段ボール」「金属」「びん」が70%,「ノート・コピー紙」が55%となっている。総じて,リサイクルに関する知識は極めて高いということができると思われる。

「ペットボトル」のリサイクルは,収集車と学校で 「ペットボトル」をどのように処理しているかを聞いたところ,「収集車に持っていく」が最も多く,

次いで「学校に持っていく」の順になっている。これを図表9に示した資源化物の物質収支と比較すると,量的には若干異なるが傾向は一致している。学校回収が多いのは,市内のリサイクル会社が,学校に対して賞金を提供するなど回収に関する競争を奨励しているからである。

「段ボール」のリサイクルはまだ不十分 「段ボール」については,子供が学校に持参するのは困難な面があるので,図表9に示したように市中回収業者の小規模な回収に委ねられており,回収量も低調である。今回の調査でも「収集車に持っていく」者が過半を占めている。

残飯は犬に与えるから「生ごみ」は出ないという人も 本市では,一部の地域で「生ごみ」のリサイクルを実施しているが,今回の調査では,「分けて出す」「分けずに出す」と「生ごみは出ない」がほぼ3分の1ずつになっている。ブータンでは宗教的な理由から動物を大切にする習慣があり,街中の至る所に主に野犬のためのご飯やおかずの残り物が置かれている。そのため,「生ごみは出ない」とする者も多い。

半数を超える者が分別収集の必要性を感じている 「資源化物を分別収集する」べきかどうかを聞いたところ,40%が既存のシステム(混合収集して,収集後に収集補助員が分別資源化)を踏襲したうえで,収集補助員の分別に協力するべきと答えているが,分別収集に関しても,消極的な意見も含めれば過半数が分別に賛意を示している。 このうち,積極的に分別するべきと答えた者に,分別するべき品目を聞いたところ,図表10に示したように,「ペットボトル」や「びん」など現在積極的に実施されている品目を中心に多くの品目をあげており,「生ごみ」についても63%の者が分別項目として指摘していることは注目される。

焼却技術を開発する,42%

リサイクルを推進する,47%

無回答,5%分からない,7%

図表8 プラスチックの処理はどうするべきか(プラスチックの使用はある程度仕方がないと答えた者に対し)

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3.5 情報の把握 本調査では,「埋立処分場の場所をどのようにして知ったか」「埋立処分場が満杯に近づいていることをどのようにして知ったか」「リサイクル可能物に関する情報をどのようにして知ったか」という3項目について,その情報源を聞いている。その結果を図表11にまとめた。

マスメディアの影響力は非常に強い いずれの項目についても,「テレビやラジオ」の媒体からの情報がもっとも多く,次いで「新聞」が多い。特に「埋立地が満杯に近づいている」という行政にとって切実な情報については「テレビやラジオ」の情報発信力が図抜けている。

「行政」からの発信力は非常に弱い 行政から情報を入手した者は,いずれの項目で

も20%前後であり,特に「行政」から積極的に情報を発信するべきである「埋立地が満杯に近づいている」ことに関しては,15%と極めて低い。また,

「埋立地の場所」や「リサイクルに関する情報」は学校教育の場でも触れられているのに対し,「満杯に近づいている」件についてはほとんど触れられていないことからも,今後の行政からのアナウンスの在り方について,メディアや学校教育との連携の方法も含め,大きな課題を残している。

リサイクルに関してはリサイクル企業からの情報力が優れている リサイクルに関しては,実際に回収されているところを見たことによって知った者が多いが,他の項目と同様にマスメディアからの情報が多く,次いでリサイクル企業からの情報提供も積極的に行われていることが特徴である。

図表9 資源化物の物質収支(推計)

ペットボトル(t/月)

資源化 学校回収 619収集車,埋立地回収 4

その他の回収 9埋立処分 4

段ボール(t/月)

資源化 学校回収 218.9収集車,埋立地回収 0.9

その他の回収 16埋立処分 41

出典:大澤,「ブータン王国ティンプー市のごみ処理」,都市と廃棄物,Vol.44,No.2,p36(2014)

図表10 どのような品目を分別するべきだと思うか(積極的に分別するべきと答えた者)

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 なお,図表12に,日本における情報の入手についてまとめた。日本でマスメディアと連携したキャンペーンが本格的に行われたのは,平成元年の「TOKYO SLIM‘89」が最初であると思われるが,その前年に行われた「ごみ処理に関する世論

調査」では「テレビ・ラジオ・新聞」からの情報はわずかに15%であったのに対し,平成17年の「環境問題に関する世論調査」では,「テレビ・ラジオ」で89%に達している。

図表12 情報の入手方法(日本の事例)

情報の入手方法 ごみが処理される場所(S63.10)1)

環境に関する情報・知識(H17.9)2)

テレビやラジオ15.2

88.6新聞 67.6市からの情報や広報 43.4 30.5リサイクル企業 − −知人 14.3 21.6学校の授業 2.8 −家の近くに施設がある 33.9施設を見たことがある 13.6本で読んだ 1.0 22.4回収されているところを見たインターネット − 13.9講演会 − 5.2民間団体,町内会,サークル − 15.7職場の機関紙,掲示板,パンフレット − 14.5

1)ごみ処理に関する世論調査2)環境問題に関する世論調査

図表11 情報の入手方法

情報の入手方法 埋立地の場所に関する情報

埋立地が満杯に近づいているという情報

リサイクル可能物に関する情報

テレビやラジオ 65.0 78.2 53.2新聞 38.7 39.8 37.8市からの情報や広報 24.5 15.0 21.9リサイクル企業 16.3 5.3 22.6知人 19.3 8.3 20.6学校の授業 7.4 4.4 17.4家の近くに施設がある 6.7施設を見たことがある 37.4回収されているところを見た 57.0

*全調査結果の平均(知っていると答えた人に対する割合)

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3.6 環境対策自然に恵まれた伝統文化の国(図表5 Q10) ブータンという国の特徴を考慮した場合,どのような観点から環境問題に留意するべきかという質問をしたところ,「自然に恵まれた伝統的な文化を持った国であること」を重視するべきとの意見が最も多く,他に「観光産業に対応する」という意見も過半数を超え,「きれいであることは気持ちを豊かにする」という環境対策に関する根源的な動機に対しても過半数を超えている。

「ごみになるものを買わない」より「掃除・清掃活動」を(図表5 Q11) 「身近な環境問題を解決するために気をつけること」という質問に対しては,「無駄なものを買わない」「包装材をもらわない」という主に消費行動に留意するということに関しては40%程度であるのに対し,「清掃活動を実施する」といういわゆる対症療法に関しては60%と高い関心を示している。また,外国から輸入された商品を使うようになってから環境問題が深刻になったという面があるが,これに対してはわずかに26%が「伝統的な商品を使うべきである」と答えるにとどまり,すでに新しい商品からの後戻りが困難であるという認識に傾いているように見える。

環境教育は「マスメディア」→「学校」→「僧侶」の順(図表5 Q11) 環境教育の方法としては,マスメディア(61%),学校(50%),寺院(27%)であった。ただし,僧侶においては,全員が環境対策に対する自らの貢献が必要であるという認識であった。

「環境対策優先」か「経済優先か」…迷う心 環境対策を優先するか経済の発展を優先するかという,わが国の環境世論調査では定番と言っていいような質問項目がある。その変遷を図表13にまとめた。時代によって質問項目も変わってきており,近年では「環境保護と経済の発展は両立する」という方向に変わってきている。本調査では,昭和46年の調査項目をベースとした質問をしているが,「どちらとも言えない」という意見が過半を占め,極端な志向は見られない。

GNH=身の回りの清潔や美観 GNH(国民総幸福)というブータンの国是と環境対策との関係を聞いたところ,85%がGNHと身の回りの清潔や美観が結びつくと答えており,環境対策がGNHの向上に不可欠な要素であるということが国民に深くいきわたっているものと思われる。

図表13 「環境か経済か」に関する世論調査結果の推移(日本の事例)

昭和41年8月:公害に関する世論調査

Q産業発展のためには,公害の発生は,適当な保障さえあれば,ある程度やむを得ないことだと思いますか。それともどんなに産業の発展のためといっても,公害の発生は絶対にゆるせないことだと思いますか。

(1)やむを得ないことだ 29.3

(2)絶対にゆるせない 27.4

(3)被害の程度による 37.7

(4)不明 5.6

昭和46年11月:環境問題に関する世論調査

経済発展と環境の保護の関係について,「多少公害が出たり,自然が失なわれても,経済活動が盛んになり収入が増加し,生活が便利になる方がよい」という意見と「経済発展が多少犠牲になっても,公害をなくし自然を守るようにした方がよい」という意見がありますが,あなたの意見はどちらに近いでしょうか。

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(1)経済発展重視 10.5

(2)環境保護重視 51.2

(3)一概にいえない 30.0

(4)不明 8.2

昭和63年1月:環境問題に関する世論調査

Q 経済の発展と環境や自然資源の保護について,次のような意見のうちあなたのお考えに最も近いものはどれですか。

(1)経済の発展は,環境の保護や自然資源の保全より優先する 6.9

(2)経済の発展と環境の保護や自然資源の保全とを十分に比較・検討した上で,慎重に決めなければならない 51.8

(3)環境の保護や自然資源の保全は,経済発展のための必要条件である 27.7

(4)わからない 13.7

平成17年9月:環境問題に関する世論調査

Q 環境保全と経済の関係について,あなたの考えに最も近いものはどれですか。この中から1つだけお答えください。

(1)環境保全の取組を進めることは,経済発展につながる 31.8

(2)環境保全の取組を進めることは,必ずしも経済発展を阻害するものではない 22.0

(3)経済発展に多少の悪影響が出ても,環境保全の取組を積極的に進めるべき 23.2

(4)環境保全は後回しにしても,経済発展を優先するべき 3.2

(5)環境保全と経済発展は,あまり関係がない 6.8

(6)わからない 13.0

平成21年6月:環境問題に関する世論調査

Q大量生産,大量消費,大量廃棄型の社会から脱却し,循環型社会を形成する施策を進めていくことについて,あなたはどのように思いますか。あなたの考え方に近いものをこの中から1つだけお答えください。

(1)現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)を落とすことであり,循環型社会への移行は受け入れられない 1.8

(2)現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)を落とさず,大量生産,大量消費は維持しながら,廃棄物の再利用(リユース)や再生利用(リサイクル)を積極的に進めるなど,できる部分から循環型社会に移行するべきである

39.1

(3)廃棄物の処理場や天然資源がなくなってくるのであれば,現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)が多少落ちることになっても,循環型社会への移行はやむを得ない 38.1

(4)現在の生活水準(物質的な豊かさや便利さ)が落ちることになっても,循環型社会に移行するべきである 14.8

(5)その他 0.2

(6)わからない 6.1

Page 11: ブータン王国ティンプー市における 環境・ごみ問題 …...−32− 都市と廃棄物 Vol. 44. No. 11(2014) 写真2 Tango大学 Tango大学。左の看板のある場所から1時間くらい登った場所にある。350人ほどの学生が敷地内の寄宿舎に寝泊ま

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図表5 属性別集計結果

3地区全体

僧侶計

性 別 年 齢 年  収

男 女 20~29

30~39 >40 <10万

Nu10~20万Nu

>20万Nu

対  象  者  数     (N) 375 168 204 168 129 58 142 118 83 19Q1:あなたの住んでいる地域で困っている環境問題はどのようなことですか。(複数可)

(1)家庭から出る生活排水が汚れたまま放流されている。 46 46 45 42 50 47 50 49 35 95(2)多くの人たちがごみを道に捨てており,道路や家の周

りがごみで汚れている。 65 61 68 60 67 69 72 68 55 100

(3)排水溝がごみでいっぱいになり汚水が溢れている。 54 57 52 52 57 53 56 53 57 100(4)車による大気汚染が深刻である。 25 23 26 23 27 28 30 26 20 79(5)ドマの食べかすが道に捨てられていて街が汚い。 61 58 63 63 57 62 66 69 43 95(6)その他 2 4 0 2 1 5 1 3 4 16(7)特にない 6 5 6 6 6 7 1 8 11 0Q2:ごみ問題で困っていることはありますか。(複数可)

(1)ごみ収集の回数が少ない。 48 47 49 52 47 34 52 53 36 95(2)収集作業員がペットボトル等の資源を取り除いている

ので不潔である。 34 31 36 29 37 38 36 38 25 63

(3)臭いにおいが気持ち悪い。 42 42 42 40 47 34 42 47 37 26(4)ごみ収集作業が交通渋滞の原因になっている。 25 23 26 20 33 19 28 28 20 84(5)ごみを直接収集車に入れなければならないので危険だ。 29 29 29 28 32 28 32 26 30 58(6)収集車の到着を知らせる警笛等の合図がうるさい。 14 16 12 11 19 10 13 9 20 0(7)家の中にごみを保管するスペースがない。 33 35 31 31 35 33 33 31 39 58(8)その他 4 2 5 3 3 9 4 3 7 11(9)特にない 12 10 13 11 11 16 11 13 14 0Q3:あなたの家庭で主にごみ出し作業を行うのは,誰ですか。

(1)男性 10 15 5 11 9 10 14 7 5 5(2)女性 35 21 46 28 43 34 35 41 31 11(3)特に決まっていない 53 61 48 61 43 52 48 52 63 79Q4−1: 現在,ビルディングや商業施設毎に月いくらというように収集料金を設定されていますが,そのことを知ってい

ましたか。(1)知っている。 21 21 20 20 20 21 20 25 20 0(2)金額の内容までは知らないが,有料であることは知っ

ている。 19 24 16 21 19 17 15 21 24 32

(3)知らなかった。 59 54 64 58 60 60 65 54 55 63Q4−2: その料金の設定方法について,あなたはどう思いますか。この中から1つだけお答えください。     (Q4−1で(1)(2)と回答した人へ)

(1)適当だと思う。 69 68 71 71 87 68 80 63 62 17(2)ごみを多く出した人は多く負担し,少なく出した人は

少なく負担するような方法がいい。 19 23 12 16 22 23 18 20 19 67

(3)わからない。 10 8 12 13 8 5 0 15 14 17Q4−3:料金を徴収することについて,あなたはどう思いますか。

(1)私たちが出すごみなので,料金を取るのは当然だと思う。 55 55 56 59 54 50 52 64 53 32(2)税金で対応するべきだと思う。 20 23 18 17 26 17 18 17 27 37(3)わからない。 14 13 15 11 12 22 16 8 17 16Q4−4: 別の調査では「月に1世帯50Nuなら負担してもよいという人が多い」という結果が得られています。     それについてどう思いますか。

(1)適当な結果だと思う。 63 68 58 60 64 62 60 65 69 58(2)もう少し多く負担するべきだと思う。 12 12 12 13 16 3 12 12 13 21(3)もう少し少ない方がいい。 10 10 10 13 9 10 12 13 2 16

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3地区全体

僧侶計

性 別 年 齢 年  収

男 女 20~29

30~39 >40 <10万

Nu10~20万Nu

>20万Nu

対  象  者  数     (N) 375 168 204 168 129 58 142 118 83 19(4)わからない。 13 8 17 12 9 22 15 10 12 5Q5:一部の家庭で野焼きをしていますが,そのことについて,あなたはどう思いますか。

(1)煙害になるので,野焼きはするべきではない。 48 48 48 56 40 50 55 51 37 16(2)山間にも家があるなどごみ収集車が回りにくい地形な

ので,ある程度の野焼きはやむを得ない。公害を出さない焼却施設を指導するべき。

27 29 26 24 29 29 22 24 33 58

(3)わからない。 22 21 24 20 26 17 20 24 28 11Q6−1:あなたは家庭から出たごみが処理される場所を知っていますか。

(1)埋立地の場所も,コンポスト施設の場所も知っている。 25 29 22 22 32 22 23 28 29 16(2)埋立地の場所は知っているが,コンポスト施設の場所

は知らない。 38 41 35 40 36 38 35 42 35 47

(3)埋め立て処分されていることは知っているが,埋立地の場所は知らない。 13 14 12 16 12 5 17 8 12 26

(4)全く知らない。 24 16 30 21 19 33 25 21 22 0Q6−2:あなたは一般ごみの埋立地が満杯に近づいていることを知っていますか。

(1)知っている。 49 53 46 57 40 52 43 54 55 32(2)知らない。 40 36 44 36 44 40 47 36 36 37Q7−1:あなたは家庭から出たごみの中から,リサイクルが可能なものが回収されていることを知っていますか。(複数可)

(1)ペットボトルが回収されていることは知っている。 83 85 81 86 79 81 82 89 78 100(2)段ボールが回収されていることは知っている。 69 67 70 64 74 69 70 79 63 89(3)ノートやコピー紙が回収されていることは知っている。 55 55 55 54 56 55 58 56 57 47(4)金属が回収されていることは知っている。 70 72 70 70 71 66 72 75 72 95(5)びんが回収されていることは知っている。 71 70 73 70 69 74 76 73 69 100(6)ビールびんが回収されていることは知っている。 80 79 82 80 81 74 81 85 78 95(7)全く知らない。 3 3 3 2 5 2 1 4 5 0Q7−2:あなたはペットボトルをどのように処理していますか。

(1)子どもが学校に持っていく。 27 26 29 23 29 29 29 32 23 0(2)その他のごみと分けずに一緒に収集車に持っていく。 43 41 46 43 47 36 52 36 40 58(3)地域の資源ごみ回収に出す。 20 22 19 22 19 21 13 24 25 11(4)リサイクル企業に直接持っていく。 2 1 1 2 1 2 2 2 0 0(5)その他 6 7 4 7 4 9 4 5 10 5Q7−3:あなたは段ボールをどのように処理していますか。

(1)子どもが学校に持っていく。 9 10 8 8 9 5 11 8 6 0(2)その他のごみと分けずに一緒に収集車に持っていく。 51 48 53 49 55 47 55 53 45 68(3)地域の資源ごみ回収に出す。 29 29 28 30 26 31 25 31 30 21(4)リサイクル企業に直接持っていく。 4 2 5 5 2 7 4 3 4 0(5)その他 6 8 4 5 6 7 4 5 11 0Q7−4:あなたは生ごみをどのように処理していますか。

(1)その他のごみと分けずに一緒に出す。 29 27 30 23 36 29 32 26 31 21(2)その他のごみと分けて出している。 38 42 34 40 38 31 31 45 37 21(3)生ごみは犬などの動物に与えるのでほとんど出ない。 30 29 32 32 24 36 35 24 29 37(4)その他 2 1 3 4 1 0 2 3 1 0Q8:ごみを出す時にリサイクルが可能なものを分けることについて,あなたはどう思いますか。

(1)収集車の作業員がペットボトルやガラスびんを分けてくれるので,極力作業がしやすい状態で出すべきだ。 40 38 42 33 46 40 35 44 46 21

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3地区全体

僧侶計

性 別 年 齢 年  収

男 女 20~29

30~39 >40 <10万

Nu10~20万Nu

>20万Nu

対  象  者  数     (N) 375 168 204 168 129 58 142 118 83 19(2)リサイクルが可能なものはできるだけ分別収集するべ

きだと思う。 31 35 28 35 27 34 32 33 29 21

(3)どちらかといえば分別を進めるべきだと思う。 22 24 20 23 23 17 26 16 19 37(4)わからない。 6 3 9 8 3 7 6 6 6 0Q9:プラスチックの使用について,あなたはどのように考えますか。(複数可)

(1)埋立地で分解しないので,その使用と廃棄は極力控えるべきである。 59 61 59 63 61 55 66 55 47 95

(2)リサイクルが難しいので,その使用は極力控えるべきである。 33 33 32 32 36 29 37 31 31 32

(3)価格も安く,持ち運びにも便利なので,ある程度の使用は仕方がない。 31 31 31 29 31 31 26 39 37 68

(4)わからない。 5 3 6 2 4 9 4 6 5 0Q10:環境問題やごみ問題について,あなたの考えに最も近いものはどれですか。(複数可)

(1)ブータンは自然に恵まれた伝統的な文化を持った国なので,きれいなまま保存するべき。 68 69 69 67 67 72 66 74 67 95

(2)ブータンの主要産業の一つは観光であるので,観光客に気持ち良く帰ってもらえるよう,きれいな状態を維持するべき。

59 66 53 57 64 59 63 62 55 79

(3)環境がきれいだと,私たちの気持ちも豊かになる。 54 54 54 57 48 55 54 58 51 89Q11:あなたは身近な環境問題を解決するために,どのようなことに気をつけるべきだと思いますか。(複数可)

(1)買い物をするとき無駄なものを買わない。 40 39 40 40 36 43 42 51 29 89(2)買い物をするときプラスチック袋や包装紙をもらわな

いように気をつける。 44 47 41 42 47 41 45 41 40 37

(3)外国から輸入された日用品を買うよりも,私たちの伝統的な環境にやさしい商品を買うように努めるべき。 26 27 25 21 31 26 28 24 28 37

(4)私たちの身の回りの掃除を自主的に実施する。 60 67 54 56 60 72 58 60 65 100(5)地区の人たちが団結して,清掃活動を実施する。 60 63 57 60 61 59 61 58 64 89(6)学校における環境教育を充実させる。 50 50 49 50 52 41 39 55 61 84(7)寺院の僧侶が率先して環境に気を付けた生活をし,私

たちの見本になるようにする。 27 27 26 21 36 26 19 31 34 100

(8)テレビやラジオや新聞が環境問題を積極的に取り上げる。 61 64 59 63 61 53 61 67 57 100

(9)特にない 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0Q12:環境の保護と経済の発展の関係について,あなたの考え方に近いものをこの中から1つだけお答えください。

(1)環境が悪化したり,自然が失われても,生活水準が向上し,生活が便利になる方がよい(経済発展を優先)。 17 15 18 15 17 22 23 15 12 5

(2)生活水準が低下し,生活が不便になっても,環境の悪化を防止し,自然を保護した方がよい(環境保護を優先)。 19 24 15 21 19 16 18 13 25 11

(3)どちらとも言えない。 58 57 58 58 54 59 55 64 59 79(4)わからない。 4 1 6 5 3 2 3 5 2 0Q13:ブータンはGNHを大切にする国として世界的に知られていますが,そのことと環境問題の解決についてどのように

思いますか。(1)私たちの幸福感と身の回りの清潔や美観は密接に結び

つくこと 85 90 80 88 84 76 86 85 84 89

(2)私たちの幸福感と身の回りの清潔や美観は直接関係がない。 4 2 5 2 4 10 3 3 6 11

(3)わからない。 9 6 12 10 6 12 10 11 8 0*「わからない」「無回答」については原則的に表中に記載していない。(回答数が多い場合は記載している)

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4.世論調査を終えて

 GNHを国是とする国ブータンの首都ティンプー市で環境・ごみ問題に関する世論調査を実施した。その結果,いくつか興味深い傾向を把握することができた。たとえば,現在はほぼすべてのごみを混合収集し,一部を除きその多くを埋立処分している地域であるにも関わらず,ごみ問題・リサイクルに対する関心が非常に高いという傾向が顕著である。これは,急速な都市化によりごみ問題が深刻な課題として捉えられていることの現れであろうと思われる。 また,ブータンでは,1999年にインターネットやテレビが全面的に解禁されたばかりであり,現時点でまだ10数年しか経過していないが,その影響力は非常に大きく,環境・ごみ対策でも情報源としての役割は非常に大きいことも把握できた。一方では,行政側からの発信力は未だに脆弱であることも感じさせられた。 チベット仏教の流れを汲む熱心な仏教国であるため,環境教育に対する貢献を期待して仏教大学の学生にも調査を行ったが,僧侶の環境問題への関心が非常に高いことが明らかになった。今後の連携の在り方について,検討することが必要であろうと思われた。 一方,ブータンは,長く鎖国状態が続いたために,極端な理想主義,環境保護主義,あるいは頑なな伝統文化への傾倒があるのではないかとも想定されたが,プラスチックの使用や焼却施設に対する考え方などに関しても柔軟な面が見られた。

 今後は,大きく以下の点について,抜本的な取り組みが必要ではないかと思われた。

① 行政とマスメディア・学校教育との連携の在り方を構築することが必要であること。

② 「捨てられたごみを掃除する」あるいは「不要になったごみをリサイクルする」という発想から,「ごみを捨てないマナーの育成」や「ごみを出さない生活スタイル」への転換が必要であること。

③ 地形的な制約から埋立処分場の新設には大きな困難が予測されるので,焼却やマテリアルリサイクルを含む抜本的中間処理施設が必要であること。

④ ごみ処理手数料の徴収率の向上が望まれるため,減量化が可能な方式として,チケット制への転換を提案しているところであるが,今回の調査の過程で共稼ぎの家庭が多く,昼間は不在の家が非常に多いことが明らかになった。そのため,チケット制では十分機能しない可能性があり,日本と同様の有料プラスチック袋への転換が望まれるところであるが,その前提として,プラスチックの減量・再利用技術の確立が不可欠である。

 また,調査を実施する過程で,ブータン国民の優位な特徴がいくつか明らかになった。それを写真とともにご紹介することとするが,大きく以下の3点が筆者自身の驚いた点であり,今後はこの

TANGO大学の学生。英語の時間を割いて,調査に協力していただいた。こういう調査は不慣れだと思われるが,熱心に取り組んでくれた。

日本では,こういう調査にはなかなか協力してもらえない。協力してくれた場合でも,玄関口で時間を急かされた中で調査というのが常だろうが,この国ではほとんど断る人はいない。そして,ほぼ例外なく家に上げて答えてくれる。このようにジュースをふるまってくれる家も少なくない。

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優位性を生かした環境・ごみ対策を提案することが肝要であろうと思われた。 ① 人と人の付き合いの中で壁を作らないこと。

  多くの家庭が初対面の調査員を怪しむことなく招き入れ,気さくに調査に応じてくれた。

 ② 卓越した語学能力  ゾンカという国語は存在するが,若い人は

英語に堪能であり,年配者は地方によって,あるいは民族によって,さまざまな言語を話す。公務員であるカウンターパートは,それらのさまざまな言語を相手によって巧みに使い分ける。その対応能力には何度も驚かされた。

 ③ 理解力  環境・ごみ問題に関する世論調査は,イン

タビューをする者にとってもされる者にとっても,初めての試みであると思われるが,短時間で調査内容を理解し,的を外さない質問をし,当を得た答えを寄越した。

 なお,本稿ではブータンと日本の調査結果を比較検討したが,今後他のアジア諸国における類似調査が進むことによって,アジア諸国に対する技術移転の方向を検討する際の参考資料となることが期待されるし,また,わが国における環境教育

の見直しを図る際にも有効な資料となることが期待される。

インタビューアーとして,日本語学校で学ぶ学生に参加してもらった。たった2時間半説明しただけなのに,A4版7枚の調査項目をスムーズにこなしていく。店のご主人も気さくに協力してくれる。

若い方は英語に抵抗がない。スラスラ読んで,当を得た答えを次々に寄越し,早い人で7・8分で終わらせる。この地域は低所得街に位置付けられていたが,家の様子はそれを感じさせない。

この事業にカウンターパートとして参加してくれた環境部の若いスタッフ。新しい事業を楽しんで取り組んでいる様子がよくわかる。

右の女性はインタビューアー。初めての調査であるにも関わらず,要領よく聞いていく。この国はいろいろな民族が混在しているので,国語(ゾンカ),ネパール語,ヒンズー語など様ざまな言語が使われている。インタビューアーは相手に合わせて,言葉を使い分けていく。この方はネパール系なので,英語で書かれた調査項目をネパール語に翻訳して問いかけている。