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コンポスト技術用語解説 J-POWER グループ(株)ジェイペック若松環境研究所 0 コンポスト技術用語解説集 用語解説目次 用語 ページ 用語 ページ 表面・表層施用 1 デンプン 12 堆肥マルチ 1 グリコーゲン 12 ボカシ肥 1 デキストリン 12 完熟堆肥 2 ブドウ糖(グルコース) 12 中熟堆肥・未熟堆肥 2 脂肪酸 13 放線菌堆肥 2 卵の殻 13 戻し堆肥 3 一次発酵と二次発酵 14 土着菌・土着微生物 3 根焼け 14 C/N比(炭素率) 3 微生物の水分活性 14 微量要素 4 たんぱくの熱変性 14 根圏微生物 5 かに殻 14 こうじ菌 5 フザリウム菌 14 放線菌 5 米ぬか 15 納豆菌 5 石灰・石灰窒素 15 酵母菌 6 粉石けん 15 乳酸菌 6 うじ虫 15 光合成細菌 6 ミズアブ 15 好気性菌・嫌気性菌 7 ミミズ 7 団粒 8 腐食 9 発酵 9 腐敗 9 酵素 10 生ごみ 11 野菜類 11 肉・魚類 11 硝化作用 11 茶がらとコーヒーかす 11 食用油 11 馴化 11 タンパク質 12 アミノ酸 12 セルロース 12 ヘミセルロース 12 リグニン 12

コンポスト技術用語解説集 - JICAコンポスト技術用語解説 2 j-powerグループ(株)ジェイペック若松環境研究所 完熟堆肥(かんじゅくたいひ)

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コンポスト技術用語解説

J-POWERグループ(株)ジェイペック若松環境研究所 0

コンポスト技術用語解説集

用語解説目次

用語 ページ 用語 ページ

表面・表層施用 1 デンプン 12

堆肥マルチ 1 グリコーゲン 12

ボカシ肥 1 デキストリン 12

完熟堆肥 2 ブドウ糖(グルコース) 12

中熟堆肥・未熟堆肥 2 脂肪酸 13

放線菌堆肥 2 卵の殻 13

戻し堆肥 3 一次発酵と二次発酵 14

土着菌・土着微生物 3 根焼け 14

C/N比(炭素率) 3 微生物の水分活性 14

微量要素 4 たんぱくの熱変性 14

根圏微生物 5 かに殻 14

こうじ菌 5 フザリウム菌 14

放線菌 5 米ぬか 15

納豆菌 5 石灰・石灰窒素 15

酵母菌 6 粉石けん 15

乳酸菌 6 うじ虫 15

光合成細菌 6 ミズアブ 15

好気性菌・嫌気性菌 7

ミミズ 7

団粒 8

腐食 9

発酵 9

腐敗 9

酵素 10

生ごみ 11

野菜類 11

肉・魚類 11

硝化作用 11

茶がらとコーヒーかす 11

食用油 11

馴化 11

タンパク質 12

アミノ酸 12

セルロース 12

ヘミセルロース 12

リグニン 12

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コンポスト技術用語解説

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表面・表層施用(ひょうめん・ひょうそうせよう)

有機物を土へ深くすき込まず、土の表面に置くか表層の浅い部分に入れることをいう。

土をよくするには、有機物を土のなかにすき込むのが一般的。だが、考えてみれば、畑の全面に有

機物をすき込むようになったのは機械化以降。日本の伝統的な有機物利用は、落ち葉、作物の茎葉、

雑草などを、主に刈敷、敷ワラなどとして利用、つまり表面施用が中心だった。刈敷、敷ワラは作物

の株元のまわりに敷かれ、根を守る役目を果たす。そうして根を守るために使われた有機物はやがて

土に入り土を上からよくしていく。敷ワラはまた土の流亡を防ぎ、雑草の防止にもつながっていた。

土の表面や表層はたいへん通気性がよく、こうした環境でふえる微生物が、作物の生育にとって害

になることはあまりない。むしろ、有機物を分解しながら、作物の生育にとって有効な有機酸やアミ

ノ酸、ビタミンなどを生み出してくれる。土の団粒化がすすんで土がフカフカになる。土の表面や表

層では「土ごと発酵」が起こって、土の中のミネラルを作物に吸われやすい形に変えてくれる。微生

物が出す二酸化炭素は、作物の光合成を活発にするのにも役立つ。土の表面・表層を大事にするとい

うことの意味は深い。

堆肥マルチ(たいひまるち)

堆肥を土の上に敷いて根を覆うことをいう。

土をよくするために堆肥を土のなかにすき込むことがよく行なわれているが、たくさんの堆肥を入

れて土と混ぜるのは時間と労力がかかる。また、未熟な堆肥を使ったり、堆肥を深く入れすぎたりす

ると、かえって害がでる恐れがある。そこで堆肥を土に表面施用すれば、尐量ですむし、未熟なもの

でも害のでる心配が尐なくなる。しかも、堆肥により土壌水分が安定し、土の表層の、通気性のいい

環境でふえる微生物が土をフカフカにしたり、有機物を分解しながら作物の生育にとって有効なアミ

ノ酸などを生み出したりしてくれる。まさに土ごと発酵、有機物マルチ効果が生まれる。

良質な堆肥を使えば、さらに大きな土壌改良効果も期待できる。AML農業経営研究所の武田健氏

によれば、良質な堆肥マルチと土の接触面では、土壌の水分と酸素が一定に保たれる。微生物や小動

物がよく繁殖して静菌作用を高め、土の団粒化がすすみ、保肥力(塩基置換容量)の高い土ができる。

その結果、養分過剰のために生育不良をおこしているような土でも、根が伸びやすくなり、生育が一

変するという。事実、堆肥マルチを生かしている農家では、土の表層に白い細根がふえて作物がつく

りやすくなった、などの事例が生まれている。

ボカシ肥(ぼかしごえ)

油カス、魚カスなどの有機質肥料を発酵させてつくる肥料。

その限りでは有機発酵肥料だが、山土や粘土、ゼオライトなどを混ぜ、根回りに施用するなどの工

夫がみられる。有機物を分解させることで初期のチッソを効きやすくし、土を混ぜることでアンモニ

アなどの肥料分を保持し肥効が長持ちする。微生物がつくるアミノ酸やビタミンなども豊富。これを

根の回りに施すことで、根圏の通気性をよくするとともに、根圏微生物相を豊かにし土壌病害を抑え

る効果も期待できる。ボカシ肥は、土の化学性、物理性、生物性をよくする総合的な肥料だ。

ボカシ肥の歴史は古いが、近年、米ヌカと土着菌の利用によって、ボカシ肥は「農家がつくる肥料」

として急速に広がった。米ヌカは、水を加えるだけでも発酵してボカシができるが、この時EM菌な

どの微生物資材を使う人も多い。土にすき込んでも害はでにくく、リン酸、ミネラルが豊富な発酵肥

料だから作物は病気に強くなり味もよくなる。発酵を進める微生物の固まりでもあり、作物残渣など

田畑にある有機物を土ごと発酵へ向かわせるリード役にもなる。

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完熟堆肥(かんじゅくたいひ)

素材の有機物がよく分解・発酵した堆肥のこと。

未熟有機物を施用すると、土の中で急激に増殖する微生物がチッソ分を奪って作物にチッソ飢餓を

招いたり、根いたみする物質を出したりすることがある。また、家畜糞中に混じっている雑草の種子

を広げてしまうなどの可能性があるため、有機物を発酵させて堆肥にする方法が昔から広く行なわれ

ている。購入肥料が尐ない時代には、よく分解させてチッソなどの肥効が表れやすい堆肥にする必要

もあった。

何をもって完熟堆肥と呼ぶのか、意見が分かれるが、完熟は完全に分解しつくしたという意味では

なく、土に施しても急激に分解することなく、土壌施用後もゆるやかに分解が続くていどに腐熟させ

たもの、という解釈が一般的。堆肥の温度が下がり、切り返しをしても温度がさほど上がらず、成分

的には、有機物のチッソの大部分が微生物の菌体またはその遺体となり、C/N比が一五~二〇にな

ったものをいう。

完熟堆肥は通常、長期間堆積し、その間何度か切り返しを行なってつくられるが、水分や空気、堆

肥素材のC/N比の調整などに充分留意し、積み込み初期に一気に八〇度ぐらいまで温度を上げる高

温発酵で、四五日で完熟堆肥をつくる方法もある。これに対し、五〇~七〇度に抑える中温発酵とい

う考え方もある。また、完熟堆肥をつくったり入手することが難しいなかで、中熟堆肥を空気が多い

表層に施用する農家も多い。完熟堆肥とちがい、微生物のエサがある程度含まれており、土の微生物

を活性化する力が強く、団粒化など土をよくする効果は大きい。完熟堆肥は安全に使え、肥料的な効

果は期待できるが、微生物による土の改良(菌耕)をめざすなら中熟堆肥がよいといえそうである。

中熟堆肥・未熟堆肥(ちゅうじゅくたいひ・みじゅくたいひ)

中熟堆肥は、雑草の種子を殺すなど、未熟の害を除くために、一度は高温発酵させるが、まだまだ

微生物のエサが多い状態の堆肥。

未熟堆肥はほとんど発酵していないもの。大分の西文正さんは、完熟堆肥より中熟堆肥のほうがエ

サが残っているぶん微生物がよく働き、畑にいろんなキノコが生え、キノコが生えた年ほどナスやト

マトがよくできる、という。西さんが使う堆肥は牛糞にバークを混ぜて三カ月ぐらい積んだもので堆

肥はまだ熱い状態。これを空気が多い表層一〇cmのところに表層施用しすき込む。未熟堆肥を使う場

合も、米ヌカボカシと未熟堆肥をいっしょに畑にふり、浅く一〇cmに耕し、三週間から一カ月おいて

いい菌をじっくり殖やして、つまり土ごと発酵させてから定植する。

土ごと発酵という新しい着想によって、害ばかりが指摘されてきた未熟堆肥や、未分解の有機物の

価値を見直す動きが広がっている。

放線菌堆肥(ほうせんきんたいひ)

放線菌を豊富に含み、耕地に施して病気を防ぐ力が強い堆肥。

ジャパンバイオファームの小祝政明氏が開発。放線菌が生産するキチナーゼは、根腐萎ちょう病や

青枯病などを引き起こすフザリウム菌の細胞壁のキチンを分解するので、これらの病気を抑制するほ

か、有機物分解能力に優れ、作物の生育促進にも働く。

発酵過程の最初から最後まで中温発酵で、放線菌が優勢となる六〇度前後の中温に保つ。病気を引

き起こす低温菌を死滅させつつ、高温にしないことで発酵が長時間持続し、有機物の分解を促す。

耕地にはそこによく馴染んだ微生物がせめぎあって暮らしており、よその微生物が入り込む余地が

尐ない。放線菌堆肥は、堆肥自体が放線菌の馴染んだ専用の住処とエサでもあるので、耕地に定着し

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て効果を発揮する。

なお、この堆肥には同じく中温菌の枯草菌や酵母菌なども多く含まれ、放線菌と同様に働いている

と考えられる。

戻し堆肥(もどしたいひ)

出来上がった堆肥をタネ堆肥として、これから発酵させる素材に混ぜ、堆肥づくりに利用する方法。

完成した堆肥を戻すことで水分調整がやりやすくなり、有用な微生物が入れられるので堆肥の発酵

も速くすすむ。水分調整などに利用するオガクズの使用量を減らせるので、堆肥づくりの経費を安く

することもできる。鶏糞を活用した放線菌堆肥では、完成した堆肥を戻すことにより、堆肥中に大量

にいる放線菌が鶏糞を覆って、悪臭の発生を防ぎ、病害抑制効果の高い堆肥にしている。

畜舎の床の敷料および水分調整材として堆肥を戻す方法も、戻し堆肥と呼ばれている。家畜の感染

症を抑制し、糞尿処理量を減らし、敷料や水分調整材の購入費を削減し、悪臭を防止し、さらにはい

い堆肥ができるなど、多くのメリットがあり、これに土着菌を活かせばさらに大きな効果が得られる。

土着菌・土着微生物(どちゃくきん・どちゃくびせいぶつ)

世の中は菌であふれている。身のまわりの自然――山林や竹林、田んぼなどから菌はいくらでも採

取できる。たとえば林の落ち葉や笹をどかすと真っ白な菌糸のかたまり(これを「ハンペン」とよぶ)

が採取できるので、これを種菌として利用する。かつて、さまざまな市販微生物資材が一世を風靡し

た時代があったが、最近では、その地域に昔からあり、その地域環境に強く、しかも特定なものでな

く多様な土着菌こそが大切であるという考え方が広がっている。

土着菌は、採取する場所によって、あるいは季節によって、培養した時の発酵のしかたや、仕上が

ったボカシ肥がちがい、その活用には観察眼と技術がいるが、それがまた土着菌のおもしろさでもあ

る。事実、土着菌を生かしている農家では、市販の微生物資材にはないパワーを感じたり、青草やわ

き芽などを黒砂糖漬けにして土着菌を培養するのに漬物感覚の楽しさを感じたりしている。もちろん

土着菌はお金もかからない。

採り方は、その地域の山へ行き、落ち葉の下に菌糸が見つかれば、それを集める。見つからない時

は腐葉土の中へ硬めのご飯を入れた杉の弁当箱を置き、五、六日間すると周囲の菌を集めることがで

きる。秋、イネを刈り取ったあとの稲株の上に、同じように硬めのご飯をつめた杉の弁当箱を伏せて

置いてもよい。

土着菌に黒砂糖や自然塩、にがりなど海のミネラルを加えてパワーアップさせたり、家畜の発酵飼

料に使って糞尿の臭いをなくしたり糞出しを減らしたり、農家の土着菌利用はますます深みと広がり

をみせている。

地球上で自分の土地にしかいない菌をわが手で採取・培養・活用できるのが、土着菌の醍醐味であ

る。

C/N比(炭素率)(しー/えぬひ(たんそりつ))

有機物などに含まれている炭素(C)量とチッソ(N)量の比率で、炭素率ともいう。C/N比(炭

素率)がおおむね二〇を境として、それより小さい(つまりチッソが多い)と、微生物による有機物

分解の際にチッソが放出され(無機化)、C/N比が大きいと反対に土の中のチッソが微生物に取り込

まれる(有機化)といわれている。そのため、C/N比の大きな有機物を土に施すと、チッソが微生

物に取り込まれ、作物の利用できるチッソが尐なくなってチッソ飢餓に陥る。ちなみに、イナワラの

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C/N比は五〇~六〇、モミガラは七〇~八〇、落ち葉は三〇~五〇、生ゴミは一〇~二〇。C/N

比は堆肥つくりや堆肥の品質診断にも重要で、材料のC/N比を二〇~四〇に調整し、仕上がった堆

肥が一五~二〇になるのがベスト。良質の牛糞堆肥のC/N比はやはり一五~二〇である。

作物診断にも役立ち、樹液のC/N比が高いときには未消化チッソが尐なく健全生育で収穫物も日

持ちがいい。追肥の診断などの目安にもなる。

微量要素(びりょうようそ)

植物の必須元素といわれている二三元素のうち、微量元素といわれているのは、モリブデン、銅、

亜鉛、マンガン、鉄、ホウ素、塩素の七元素。これらの微量要素は、微量ではあるが、体内で光合成

や硝酸還元などの代謝に重要な役割を果たしているため、不足するとチッソ代謝を狂わせて、チッソ

過多の農産物の原因になり、病気に弱い体質をつくったり、味を悪くしたり、日持ちを悪くしたりす

るといわれている。

収穫物に含まれたこれらの微量要素は食事を通じて人間にも影響する。最新「五訂日本食品標準成

分表」で新たに加わった亜鉛の場合、不足すると生殖機能不全、精子の減尐、前立腺肥大、動脈硬化

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や高血圧などの生活習慣病、さらには味覚障害などの症状があらわれるという。

微量要素はもともと土にあり、堆肥などから供給されるからあえて施用する必要はないという考え

がある一方、土壌分析にもとづいて積極的に施用するやり方もある。微量要素は過剰害もでやすく注

意が必要。また、その吸収は pHの影響を受け、とくにアルカリ化すると鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛

などが効きにくくなる。米ヌカなどを活用した土ごと発酵は、土や有機物の微量要素を引き出す方法

ともいえる。

根圏微生物(こんけいびせいぶつ)

根の周り(根圏)に生息する微生物のこと。根圏では、根酸その他根からの分泌物などをエサに微

生物が繁殖し、その微生物が土の養分を作物が吸収しやすい形態に変えたり、微生物が分泌する養分

を作物が受け取るなど、作物と微生物が共生する活性の高い場となっている。チッソ固定菌、リン溶

解菌、糸状菌、細菌、菌根菌など多様な微生物がおり、(1)養分吸収、(2)根の形態、(3)生理活性

物質生産、に対する働きを通して、直接植物の生育に影響を及ぼしている。

見逃せないのが、(4)根圏微生物が根圏環境を保護し病原菌の植物根への感染の防除に役立ってい

るという点である。根まわり堆肥は、良質の微生物が豊富に存在する堆肥で根を守り、病害虫にかか

りにくい環境をつくっていることになる。落ち葉の踏込み床なども最高である。

こうじ菌(こうじきん)

糸状菌(カビ)の仲間で、酵母菌とともに子のう菌類の一つ。味噌づくりはもちろん、ボカシ肥や

発酵肥料つくりも、土ごと発酵もこうじ菌から始まるので「発酵のスターター」といわれる。大きな

特徴は炭水化物=デンプンを微酸性下でブドウ糖や果糖などの単糖類に分解すること。この糖類は乳

酸菌や酵母菌など微生物のエサとなり、微生物の活動を活性化する。二五~三〇度くらいが適温の低・

中温性菌。だから酒も味噌も寒造りがよく、ボカシも冬がつくりやすい。四五度から五〇度で死滅す

るが、六〇度くらいまではこうじ菌が残した酵素で糖化作用は続く。水分は五〇%ぐらいが最適なの

でボカシ肥の水分も五〇%前後に設定される。冬から春に落ち葉の下からとる土着菌のハンペンには

このこうじ菌が多い。

放線菌(ほうせんきん)

細菌、糸状菌と並ぶ三大微生物の一つ。抗生物質を出して糸状菌の菌糸を溶かしたり、伸びるのを

抑えたりなど、その抗菌作用が注目される。結核菌に効くストレプトマイシンなど医療用抗生物質は

ほとんどこの菌のおかげ。その抗菌作用はリンゴのモンパ病やイネのイモチ病をも抑制する。また、

家畜糞の悪臭のもとである低級脂肪酸の分解酵素をもつので悪臭を消し去り、しかもハエの卵も食べ

る。だから放線菌堆肥は悪臭がない。

キチン質を好むため、キチン質を含むネコブセンチュウの卵を食べてしまう。フザリウム菌やピシ

ウム菌などの土壌病原菌の細胞壁はキチン質でできており、土の中に放線菌が多ければ、発病が抑え

られる。カニガラはキチン質の宝庫で、これを素材に放線菌が豊富なボカシ肥ができる。昆虫もキチ

ン質でできており、放線菌はその死骸を好む。農薬散布などで昆虫が減ったことと土壌病害がふえた

こととは関係あり、という指摘もある。

納豆菌(なっとうきん)

糖分とタンパクをエサにする好気性菌。細菌の一種で、田んぼや湿地を好んで棲む。納豆をつくる

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ときに働く菌で、ネバネバの分解酵素を出して、大豆のタンパクをアミノ酸に変える。脂肪・炭水化

物も分解、植物の細胞壁を構成するセルロースも分解する。

薄上秀男氏によると、極上のボカシ肥、発酵肥料をつくるには、最初に糸状菌(こうじ菌)による

糖化作用、続いて納豆菌によるタンパク質やアミノ酸などの分解作用、最後に酵母菌によるアミノ酸

やタンパクなどの合成作用という三段階の発酵作用を必要とし、その中で納豆菌による分解作用が十

分に行なわれたかどうかがいいボカシ肥になるかどうかのカギを握っているという。新しい無農薬の

イナワラ、ヨシやカヤには活力の高い納豆菌が多い。市販の納豆を水で溶いて米ヌカ納豆ボカシをつ

くる工夫も広がっている。発酵させたモミガラも納豆菌パワーが強い。また、大豆の発酵飼料の納豆

菌が下痢を抑えるという養鶏農家もいる。

酵母菌(こうぼきん)

自然界では熟した果実(特にブドウ)の表面などに多く、糖をエサに様々なものを合成する力が強

い。糸状菌(カビ)の仲間だが、カビ特有の長い菌糸はつくらず、カビの胞子が独立したような丸い

形で、カビと細菌の中間的な性質をもつ。酸素があってもなくても生活でき、酸素のない状態では糖

からアルコールをつくり、酸素があると糖を分解して各種のアミノ酸、有機酸を合成する。

ボカシ肥・発酵肥料づくりでは仕上げに働く菌で、こうじ菌や納豆菌が有機物を分解してつくった

糖などをエサに、アミノ酸、ホルモン、ビタミンなどをつくる。良質の発酵肥料は全体が酵母菌の固

まり、田畑に入れると土の微生物が一斉に活性化し、土が肥沃になる。化学肥料をも分解し、酵母菌

の活躍で良質の化学肥料ボカシができる。

また、酵母菌がだす酵素は殺菌力が強く、酵母菌資材を活用した種モミ処理も注目されている。廃

液は、倍に薄めて野菜の根元へかけてやれば、野菜も元気になる。

乳酸菌(にゅうさんきん)

糖をエサに乳酸などの有機酸を多くつくり出すのが特徴。条件的嫌気性菌で、嫌気的な条件で乳酸

をつくるが、酸素があっても平気。桿菌と球菌があり、桿菌にはヨーグルトや乳酸菌飲料をつくるラ

クトバチルス、球菌にはチーズやヨーグルトをつくるストレプトコッカスなどがいる。

ボカシ肥・発酵肥料づくりでは、こうじ菌や納豆菌がつくった糖をエサに増殖、乳酸は強酸性なの

でボカシ肥の pHが下がり、酸性を好む酵母菌が次に増殖しやすくなる。

米ヌカを葉面に散布して病害虫を防除(米ヌカ防除)している薄上秀男さんは、米ヌカで乳酸菌が

繁殖し、つくられた乳酸で葉面の pHが四・五以下の酸性に変わり、病原菌はほとんど活動できなくな

るという。また、乳酸菌がつくる有機酸は土の中のミネラルを溶かしたり、キレート化したりして、

植物に吸いやすくする。

乳酸菌をメインにした微生物資材も市販されているが、米のとぎ汁と牛乳を混ぜて発酵させた手づ

くり乳酸菌や、キムチの漬け汁(乳酸菌のかたまり)に木酢や海水などを混ぜて防除に使うなどの工

夫もある。

光合成細菌(こうごうせいさいきん)

湛水状態にある有機物の多いところを好む嫌気性菌。水田土壌やレンコン栽培土壌には非常に多く、

イネの根腐れを起こす硫化水素や悪臭のもとになるメルカプタンなど、作物に有害な物質をエサに、

高等植物なみに光合成を行なう異色の細菌。環境を浄化する働きとともに、空中チッソを固定し、プ

ロリンなどのアミノ酸をつくり、土の肥沃化に貢献する。アゾトバクターや乳酸菌などの好気性微生

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物と共生すると、相互に働きが活性化される。ダイズの根につく根粒菌も光合成細菌と共生すると、

活性が長く維持される。

不耕起栽培を推進してきた岩澤信夫さんは、光合成細菌の施用で、中期のイネの根の環境を改善し、

穂肥・実肥を減らし食味を向上させられる可能性に注目している。

好気性菌・嫌気性菌(こうきせいきん・きんきせいきん)

好気性菌は、酸素呼吸しながら有機物を分解するタイプの菌で、酸素がないと生育できない。反対

に酸素がなくても生きていける菌を嫌気性菌という。有機物発酵にかかわる好気性菌の代表はこうじ

菌と納豆菌、さらに酢酸菌も好気性菌。

一方、嫌気性菌には、酸素があると生育できない絶対的嫌気性菌と、酸素があっても好気性菌なみ

に生育する条件的嫌気性菌がいる。ボカシ肥で活躍する乳酸菌や酵母菌は条件的嫌気性菌。腐敗した

サイレージにすむ酪酸菌は絶対的嫌気性菌。湛水状態の水田にいる菌の大部分が好気・嫌気の両刀使

いの条件的嫌気性菌で、水の駆け引きのある水田向きだ。畑では、表層は好気性菌が多いが、下層は

嫌気性菌が主になる。

良質のボカシ肥や堆肥づくりでは、好気性菌と嫌気性菌の連携プレーが重要で、はじめこうじ菌と

納豆菌などの好気性菌が活躍し、こうしてつくられた糖などをエサに条件的嫌気性菌である乳酸菌や

酵母菌が活躍し、アミノ酸などが豊富なボカシ肥や堆肥ができる。

空気が尐なく好気性菌が働かない状態では有機物は悪臭を放って腐敗するが、ラクトバチルスやカ

ルスNC‐Rなどの微生物資材を活用し、嫌気的な条件で乳酸菌を優先させて腐敗を防ぐ堆肥やボカ

シ肥のつくり方もあり、このほうが有機物のもつ成分をムダにしないという見方もある。ただしこの

場合も完全な嫌気状態ではなく、好気性菌は働いている。また、嫌気状態で発生する硫化水素などの

有害物質をエサに光合成細菌が増えるという具合に、腐敗の結果つくられた成分も微生物は無害化し

たり有用なものに変えてくれる。

地球ができて酸素がない条件に生きた嫌気性菌は有害物質を浄化し、酸素や各種の有機成分を合成

し、生命進化の土台をつくった。酸素が豊富になり植物が繁栄するなかで、好気性菌は有機物の分解

者の役目を担い、こうして地球の有機物循環は保たれている。

主に分解型の好気性菌と、主に浄化型、合成型の嫌気性菌を、どう組み合わせ、リードするかが、

農家の発酵技術の腕のみせどころである。

ミミズ(みみず)

畑でよく目にするのは主にフトミミズ。未熟有機物が好きで、堆肥や生ゴミの分解に活躍するのは

主にシマミミズ。米ヌカをふった田んぼでトロトロ層つくりに働いているのはイトミミズ。

ミミズは豊かな土壌を作る最高の立役者だ。というのも「食べる・糞をする・尿を出す・動きまわ

る・死亡する」というミミズの何気ない毎日の活動そのものが、すべて土や作物に多大な好影響を与

えているからだ。

ミミズは大量の土や有機物を食べ、細かく分解しながら土中を進む。通った道はヌルヌルの尿に塗

り固められてしっかりとした空隙になり、土壌の通気性をよくする。しかもその尿にはアンモニアと

多種類の酵素が含まれていて、通り道は植物の根や微生物にとって理想的なすみかとなる。糞は水を

よく吸収し、しかも水に浸かっても崩れにくく、良質の団粒そのものである。また、不溶性だった土

中のミネラルもミミズの体を通ることで水溶性に変わり、作物は吸収しやすくなる。そしてミミズの

体そのものもタンパク質とアミノ酸、酵素、ビタミンの塊なので、その死がいもまた最高の速効性肥

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コンポスト技術用語解説

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料となるのだ。

不耕起や有機物マルチは、ミミズがすみやすい環境づくりでもある。

団粒(だんりゅう)

土壌粒子が陽イオンや粘土鉱物、有機物(腐植)などのはたらきによって結合し、小粒の集合体と

なったもので、そうした状態を団粒構造という。これに対して、土壌粒子がばらばらの状態にあるも

のは単粒〈単粒構造〉という。作物栽培上では水の中でも壊れない団粒(耐水性団粒)が重要である。

団粒構造が発達した土は、団粒内部に微細な団粒内間隙(毛管孔隙)ができ、団粒外部には団粒間間

隙(非毛管孔隙)ができるため、保水性と同時に通気性や通水性にもすぐれ、作物の生育に好適な状

態になる。

団粒を発達させるためには、有機物の施用や根量・茎葉量の多い作物の導入などが有効だが、とく

に根量の多いイネ科牧草は団粒を発達させる大きな効果があり、その場合、生きた根(活性根)も重

要なはたらきをしている、という。有機物のなかでは、土の微生物活性を高める分解されやすいもの

が団粒形成能力が高いとされている。その点では、未熟堆肥、未熟有機物のほうが有利で、堆肥化の

ように土壌外で微生物産生物をつくってから土壌に加えるのは、土壌の団粒化だけの目的からは不利

である、という研究者の指摘もある。有機物マルチや土ごと発酵の価値を考えるうえで興味深い。本

誌にでてくる「根耕」「菌耕」の一つの側面は、根と微生物による団粒形成にある。

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腐植(ふしょく)

土壌有機物と同じ意味で用いられることもあるが、とくに土壌中で動植物遺体が土壌生物によって

分解・再合成された暗色無定形(コロイド状)の高分子化合物(腐植物質)をさすことが多い。腐植

は機能的な面からは、栄養腐植(土壌微生物に分解されやすく養分供給源となる)と、耐久腐植(土

壌微生物に分解されにくく土壌の物理性を良好に保つとともに陽イオンを保持する)に大別される。

化学的(溶解性)な面から腐植酸、フルボ酸などにも分けられる。

腐植の役割としては、栄養腐植による作物や土壌微生物への養分供給、耐久腐植による団粒の形成、

腐植酸によるCEC(塩基置換容量、陽イオン交換容量ともいう)や緩衝能の増大、フルボ酸による

鉄・アルミニウムのキレート化など、じつに多岐にわたり、作物の生育に適した土をつくっていくう

えで、きわめて重要なものである。土壌中の腐植を維持・増加させるためには、有機物の施用や緑肥

作物の導入などが有効である。

なお、最近では有機物を多用している畑で、肥料の効きが悪いという現象がみられている。そんな

畑では、土壌微生物の活性を高める必要がありそうだ。

発酵(発酵)

有機物が微生物の作用によって分解され、アミノ酸や乳酸、有機酸、アルコール類、二酸化炭素な

どが生成される現象で、一般には人間や動植物の活動にとって都合がよく役立つもの(有用物質)が

生産される場合をさし、有害物質が生産されたり悪臭を発したりする「腐敗」と対比的に用いられる。

好気性微生物(カビ〈糸状菌〉、細菌、放線菌など)による好気発酵と、嫌気性微生物(酵母、細菌

〈乳酸菌、光合成細菌〉など)による嫌気発酵とがあり、有機物の堆肥化(コンポスト化)やボカシ

肥づくりはおもに前者を、発酵食品やサイレージの製造は後者を利用したものである。

微生物のはたらきを高め発酵を順調に進めるには、栄養源(有機物)、温度、水分、酸素、pH など

が適正な条件にあることが大切で、たとえば堆肥化で発酵を促すためのポイントは素材の含水率六

〇%、C/N比(有機物中の全チッソと全炭素の比率)二〇~四〇%とされている。また、発酵をよ

り効率的に進めるために、有用な微生物を添加することもある。

発酵を利用した有機物の農業利用としては、堆肥やボカシ肥があり、最近では田畑の中で発酵を行

なわせる「土ごと発酵」が注目されている。 有機物が微生物の作用によって分解され、アミノ酸や

乳酸、有機酸、アルコール類、二酸化炭素などが生成される現象で、一般には人間や動植物の活動に

とって都合がよく役立つもの(有用物質)が生産される場合をさし、有害物質が生産されたり悪臭を

発したりする「腐敗」と対比的に用いられる。

好気性微生物(カビ〈糸状菌〉、細菌、放線菌など)による好気発酵と、嫌気性微生物(酵母、細菌

〈乳酸菌、光合成細菌〉など)による嫌気発酵とがあり、有機物の堆肥化(コンポスト化)やボカシ

肥づくりはおもに前者を、発酵食品やサイレージの製造は後者を利用したものである。

微生物のはたらきを高め発酵を順調に進めるには、栄養源(有機物)、温度、水分、酸素、pH など

が適正な条件にあることが大切で、たとえば堆肥化で発酵を促すためのポイントは素材の含水率六

〇%、C/N比(有機物中の全チッソと全炭素の比率)二〇~四〇%とされている。また、発酵をよ

り効率的に進めるために、有用な微生物を添加することもある。

腐敗(ふはい)

有機物(有機チッソを含む物質)が微生物の作用によっておもに嫌気的に分解され、有害な物質が

生成されたり悪臭が発生したりする現象で、変敗、腐朽、酸敗も同義的に用いられる。一般には、食

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品や農畜産物などが微生物の作用によって変質することをさす場合が多いが、農業関係では土や畑の

状態をさすことも尐なくない。

水口文夫さんは、土壌中にすき込む有機物(緑肥など)の水分の多尐が、畑の土が発酵型になるか

腐敗型になるかの分かれ道になるという。水分が多くて(酸素の供給が不十分で)腐敗菌を繁殖させ

てしまうと、その畑は病気が蔓延しやすい圃場になってしまう。腐敗菌が優占して住み着いているの

で、ちょっと条件が悪いとすぐ病気が出て、薬ばかりかけるような畑になるというのだ。また、比嘉

照夫氏は、土壌を発酵合成型と腐敗分解型に区分し、作物の健全な生育には発酵合成型の土壌にして

いくことが重要であると指摘している。

酵素(こうそ)

味噌や醤油、日本酒などが微生物の発酵の力を借りた食品だが、その作用が微生物の体内にある物

質によるものだとわかったのは一〇〇年ちょっと前。その物質に「酵素」の名がつけられた。今では、

酵素は生き物の体の中でつくりだされた物質(タンパク質)で、生き物ではないが、体内に取り込ん

ださまざまな養分の代謝(分解・合成)にかかわり、その速度をコントロールしていることがわかっ

ている。

体内での物質の酸化・還元にかかわる「酸化還元酵素」、糖やタンパク質や脂肪の代謝にかかわる「加

水分解酵素」など、自然界には酵素の数は二万五〇〇〇種、その働きが明らかになっているものだけ

でも四〇〇〇種といわれ、農業の場面でも、果実や野草を発酵させてつくった手作り酵素液が工夫さ

れている。この酵素の働きをサポートしているのがビタミンやミネラルで、酵素と併せて注目されて

いる。

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How to success your composting 用語解説

コンポストにできるものできないもの

生ごみ

生ごみの肥料効果は高く、使い方によっては化学肥料の代わりとして使えるが、生ごみは製品

のばらつきが多くなる可能性があることに注意しなくてはならない。肉や魚のくずが多い生ごみ

堆肥は肥料効果が高く、野菜くずの多い生ごみ堆肥は肥料効果が尐なくなる傾向がある。この問

題を改良するためには、多種類の生ごみを混合することや、家畜ふんなどのほかの堆肥と混合す

ることが挙げられる。

野菜類

野菜には繊維成分が多く含まれ、繊維質はセルロースやヘミセルロース、リグニンで構成され

ている。微生物による繊維質分解は、ヘミセルロースが最も分解されやすく、リグニンはきわめ

て分解されにくい。セルロースは一部の微生物ではなかなか分解しないが、細菌や糸状菌の中に

は徐々に分解できるものがいる。同じ多糖類のでんぷんは分解されやすい構造なので、でんぷん

を多く含む野菜は繊維質の多い野菜と比較して分解されやすい。

肉・魚類

たんぱく質が多く、微生物に分解されやすい。特に魚の内臓は分解が早く、微生物環境によっ

ては腐敗の方向へ進む場合もあるので注意が必要である。またたんぱく質の構造は窒素成分が多

く、この窒素が分解する過程でアンモニアを生じる。肉や魚を入れると悪臭がでやすいのはこの

原因によるものである。

硝化作用

硝化作用は微生物がアンモニアから亜硝酸や硝酸を生ずる作用を指す。アンモニアを酸化し亜硝

酸を生ずるアンモニア酸化細菌・アンモニア酸化古細菌、亜硝酸を酸化し硝酸を生ずる亜硝酸酸化

細菌により反応が進む。これらの細菌は好気性なので、コンポストに空気を沢山含ませるとアンモ

ニアが硝酸に変わり、アンモニア臭の発生を抑えられる。

茶がらとコーヒーかす

毎日飲むお茶の葉やコーヒーのかすは、生ごみ堆肥の原料として利用できる。茶がらやコーヒ

ーかすに含まれるタンニンなどのフェノール性物質は悪臭を押さえる働きがあるので、生ごみと

して入れると消臭効果がある。

食用油

油は微生物が分解することができカロリーも高く、コンポストに入れると発熱して温度が上が

る効果が期待できる。ただ一度に沢山投入するとコンポスト内に油膜が張り、嫌気状態になる危

険性があるので、入れる際は尐しずつ入れる。また、毎日油を入れ続けると、コンポスト内の微

生物が徐々に油を分解しやすいものに変わっていく。これを微生物の馴化という。

馴化

異なる環境に置かれた生物が、次第にその環境になれてその環境に適応した性質をもつように

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なること。

タンパク質

L-アミノ酸が多数連結してできた高分子化合物であり、生物の重要な構成成分のひ

とつである。

アミノ酸

1 分子中にアミノ基-NH2 とカルボキシル基-COOH とをふくむ有機化合物のことで、生

物が生きていくうえで不可欠なタンパク質はアミノ酸からできている。アラニン、ア

ルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、

グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルア

ラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの

20 種類がある。

セルロース

分子式(C6H10O5)n で表される炭水化物(多糖類)である。植物細胞の細胞壁および繊

維の主成分で、天然の植物質の 1/3 を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物であ

る。

ヘミセルロース

植物細胞壁に含まれ、セルロースを除く、水に対して不溶性の多糖類の総称。セル

ロースとリグニンを結びつける働きをする。

リグニン

細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンの 3 成分からなっており、それぞ

れの構成割合は 50%、20~30%、20~30%とされる。針葉樹はリグニンが多く、ヘミセ

ルロースが尐ないのに対し、広葉樹は逆である。細胞壁では、糸状のセルロースの束

の隙間をリグニンとヘミセルロースが埋める。細胞と細胞との間はリグニンによって

しっかりと接着されている。

デンプン

分子式(C6H10O5)n であらわされる炭水化物で、穀類の種や球根、塊茎に多くふくまれ

ている。白色、無味無臭で粒状のものと粉状のものがある。分子式の n の値は約 50 か

ら数千までの値をとるが、それに対応して数千から数万の原子からなる分子となる。

デンプンは緑色植物の光合成によってつくられ、細胞壁やかたい植物繊維に蓄積され

る。デンプンを酸化して二酸化炭素と水にすると、エネルギーが放出されるので、デ

ンプンは植物のエネルギー貯蔵庫ともいえる。植物中にみられるデンプン粒の大きさ、

形、特徴は植物種によってちがっている。

グリコーゲン

動物の肝臓や筋肉の細胞中にふくまれている多糖類(→ 糖質)の一種。ブドウ糖の重合

体で、必要に応じてアミラーゼによってデキストリン、麦芽糖、ブドウ糖に加水分解

され、水にとけてエネルギー源としてつかわれる。グリコーゲンは酵母や細菌にふく

まれることもある。

デキストリン

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分子式(C6H10O5)n で表される数個の α-グルコース(ブドウ糖)が多数連結した物質

の総称で、かつては糊精(こせい)と呼ばれ、糊として使われる。食物繊維の一種で

あり、デンプンの加水分解により得られる。白っぽい炭水化物で、デンプンとマルト

ースの中間にあたる。

ブドウ糖(グルコース)

分子式 C6H12O6 で表される、代表的な単糖のひとつ。筋肉や身体の各部は、おもにグ

ルコースを燃料として消費し、エネルギーを生成する。

脂肪酸

動物の場合、皮下や筋肉、骨髄、内臓の表面などに脂肪組織として蓄積されているが、

植物の場合は種子に集中して存在している。脂肪はエネルギーなどの貯蔵組織として機

能しており、食物としてとりいれられ、体内で酸化されると、1g につき 9kcal のエネル

ギーを発生する

発酵段階 作用 菌種 働き 適温 環境

第一段階

糖化作用 コウジカビ デキストリン・ブドウ糖・アミノ酸を作る。 中温 33~38℃ 微酸

セルロース分解 納豆菌 セルロースなどを分解。 高温 70℃位 アルカリ

第二段階

タンパク質分解 納豆菌 こうじ菌の作った糖を食べ、蛋白質を分解

してアミノ酸を作る。 中温 40~50℃

アルカリ

清掃・ 消毒 乳酸菌

糖分を食べ、温度が下がって来ると、糖類

から乳酸を作り、後片付けと消毒の働きを

する。

中温 30~45℃ 酸性

段三段階

アミノ酸等合成 酵母菌

糖分を食べ、温度が下がって来ると、嫌気

的条件ではアルコール、好気的条件では、

乳酸菌と共同でアミノ酸、タンパク質、ビ

タミン、有機酸などを作る。

低温 26~27℃ 酸性

抗生物質生産 放線菌

抗生物質を作り病原菌を殺す。強いアルカ

リの分解酵素を出し、分解力は納豆菌並み

に強く、殺菌力も強い。

常温 アルカリ

卵の殻

卵のカラは貝と同じく天然の石灰質資材として利用できる。

主な成分は炭酸カルシウムで、肥料として売られている炭カルや貝化石(リン酸カルシウム)に近

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い効果がある。炭カルよりマグネシウムやナトリウム、鉄などの微量要素を多く含み、粗タンパク

も6%ほど含むので、微生物の繁殖を促進する。 このほか、卵の殻は徐々に溶け出してアルカリ

化してくれる特性から、堆肥の材料にも適している。通常堆肥をつくると熱をだす過程で主に細菌

類(乳酸菌など)が生成する酸により、堆肥全体が酸性になってくる。このとき卵の殻や貝化石の

ような有機石灰があると徐々に溶け出して堆肥の酸性化を防いでくれ、放線菌など有用微生物の繁

殖を助けてくれる。 また卵の殻の破片はちくちくするので、野菜苗を植えたあと根本にぱらぱら

とまいておくと、ネキリムシを予防してくれる効果もある。

一次発酵と二次発酵

一次発酵は、糖やアミノ酸のような分解しやすい物質を、微生物の力で速やかに分解することで

ある。十分に空気を供給し、急激に微生物を増加させることにより、分解しやすい有機物を急激に

分解する。一次発酵の終わった状態では、未分解の有機物がまだ沢山残っているため、このまま土

壌に入れると作物に障害が出る可能性がある。

二次発酵は、一次発酵をおえたものを 1ヶ月以上の長い時間をかけ、さらに安定化させる熟成期

間のことである。この時期は一次発酵で残った分解しにくい有機物の分解がゆっくりと進む。

根焼け

肥料の与えすぎ、または濃度が濃すぎて、植物に悪影響を及ぼすこと。

濃すぎる肥料は塩害と同じで、浸透圧で根の水分を奪う。酷い場合は根が傷んで枯れてしまうので、

与え過ぎないように気をつける。

肥料負け(こえまけ・ひりょうまけ)・肥やけ(ひやけ)・肥料障害(ひりょうしょうがい)ともい

う。

微生物の水分活性

微生物にはそれぞれ生育可能な水分活性範囲があり、ある水分活性以下では生育できなくなる。

その水分活性は生育最低水分活性と呼ばれ、食品の微生物的変敗を防止する上で重要な指標となる

ほか、どの微生物が食品変敗の原因となりうるか予測することが可能になる。

たんぱくの熱変性

熱したフライパンの上に生卵を落とすと、

熱により透明でトロッとしていたタンパク質

が白くなって固まる。

これがタンパク質の変性と呼ばれる反応で、

科学的に表現すると分子の立体構造が変化し

て、性質が変わるという化学反応が起こって

いる。また、低温でも変性を起こすが、通常

のタンパク質が低温変性を起こす温度は 0 ℃以下である。

かに殻

かにの殻で、粉砕して肥料にする。チッソやりん酸とともに、カルシウム、マグネシウムなど海

のミネラルも豊富だが、それとともに特徴的なのはキチン質を豊富に含むこと。かに殻を構成する

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キチン質は、土壌中で根粒菌を増殖させるとともに、他の成分の肥効も高める。また、キチン質を

好む放線菌の急速な繁殖を促し、その放線菌はキチナーゼという酵素を分泌して、キチン質ででき

ている病原菌の表皮細胞壁を分解する。こうしてフザリウム病などの土壌病害を抑制し、イチゴ萎

黄病、キュウリなどウリ類のツルワレ病、ダイコンのイオウ病、トマトのイチョウ病などで成果が

あがっている。米ヌカなどと混ぜて発酵させれば放線菌の多いボカシができる。

フザリウム病

病原菌はフザリウムと呼ばれるカビの仲間で、病原菌は根から侵入し、その根はあまり腐敗せ

ずに導管部を褐変させる。そのため、水分や養分の転流が阻害されて、やがて生育不良、下葉から

上へ黄変、萎れが起こり、やがて枯死などの症状が現れる。普通、根や茎の変色は、初め一部だけ

に起こることが多いので、病株の片側あるいは地上部分の一部だけに病徴が現れる。葉の主脈を境

に片側だけが侵されると奇形になる。

米ぬか

玄米を精米した時にでるヌカ。イネの種子は表皮部、胚芽部、胚乳部と、それらを保護するも

み殻からできているが、このうち胚芽と表皮部を合わせたものが米ヌカである。米ヌカはリン酸

やミネラル、ビタミンなどに富み、昔からスイカなどの味のせ肥料として重宝されてきた。そし

て、米ヌカの最大の魅力は、発酵を進める力が大変強いこと。おいしい糠漬けができるのは、米

ヌカによって酵母菌や乳酸菌などの有用微生物が増殖するからだ。田んぼにまけば表層の微生物

が繁殖、土ごと発酵で「トロトロ層」ができ、畑にまけば土の団粒化が進む。米ヌカで元気にな

った微生物は土のミネラルなどを有効化し、米ヌカの成分と合わさって作物の生育を健全にし、

病原菌の繁殖を抑え(米ヌカ防除)、味・品質をよくする。

石灰・石灰窒素

土壌改良資材の石灰を使うとアルカリ効果によって虫を防ぐことができる。石灰は土壌の

酸性改良財として園芸店にあるが、これを生ごみの上にふりかけることで虫が抑制できる。た

だ、あまり多く入れすぎると窒素がアンモニアとなって出て行き、悪臭が強くなることがある。

また、石灰窒素は分解過程で毒性のあるシアナミドを作るため殺虫効果が期待できる。このシ

アナミドはその後アンモニアに変化するので毒性が残ることはないが、かなり刺激的な臭いを

出すので、取り扱いには注意する必要がある。

粉石けん

粉石けんのような洗剤をまくと、界面活性剤の作用で水が虫の体に入り、窒息死させることが

できる。

うじ虫

うじ、あるいはうじ虫というのは、ハエである。一般には、腐肉や汚物などに発生するものを対

象としてそう呼んでいる。ハエの一生は卵で1日、幼虫で 1週間、さなぎ 4~5日、成虫になると

20 日(オス)、1~2ヶ月(メス)程度である。

ミズアブ

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ミズアブは、体長 10mm~20mmの黒いアブである。アブという名前だが、人を刺したりしない。

帰化昆虫だが、各地に広く分布している。有機物(生ごみ、人畜の糞、腐葉土など)が豊富なとこ

ろに発生する。一度に平均 900 個の卵を塊状で産卵し、その卵は 24℃では 4日で孵化後、2週間ま

たはそれ以上かけて 5齢幼虫まで発育する。さなぎの段階は 2週間かまたはそれ以上継続する。ラ

イフサイクル(卵~成虫)は 29℃で 38日間、20℃では 60日間を要し、ライフサイクルが長いため、

繁殖場所では様々な大きさの幼虫が大量に集まっている。