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131
課題 7
光のスペクトルと太陽電池
Section 7.1
はじめに
太陽電池は,太陽の光エネルギーを半導体の光電効果を利用して直接電気エネルギーに変換するものであり,CO2 を排出しないため,化石燃料にかわる新しいエネルギー源の一つとして注目されている.一方,光が波動性と粒子性の二重性を持つことは,現代の物理学を理解する上で大変重要な真理の一つである.この課題では,光エネルギーのスペクトル分布を観察することや,太陽電池にも利用されている半導体の光電効果の体験を通して,光エネルギーや太陽光発電に関する理解を深め,光の波動性と量子性に関する考察を行う.なお,本実験では,テキストの巻末に学習支援資料として背景知識やレポート必要要件等を収録した
講義やその資料を ISTUに掲載して提供している.利用方法についてはテキスト後半に記載されている「学習支援講義について」を参考にし,予習,レポート作成に利用すること.
(i) 光の波動性と量子性光は波である (波動性)と最初に唱えたのは,イギリスのフック(Hooke)やオランダのホイヘンス
(Huygens)等であった.これに対して,イギリスのニュートン(Newton)は光は光素と呼ばれる微粒子の集まりであるという光の古典的粒子説を唱えた.しばらくの論争の後,イギリスのヤング(Young)が光の干渉実験を行い光の波動性を実証した.光は波であるということで論争は一応決着しかに見えた.ところが,1900年にドイツのプランク(Planck)は,エネルギーは連続量ではなく非常に小さなあるエネルギーの素量(エネルギー量子)から成り立っているという概念を使って,古典力学では説明できなかった熱放射実験の説明に成功した.さらに,ドイツのアインシュタイン(Einstein)は,νという振動数をもつ光が伝搬することを hν(h:プランク定数)なるエネルギーを持つ粒子が空間を飛んでいくと考えるという光の粒子性を提唱し,金属に光を当てるとその表面から電子が放出される光電効果の現象を見事に説明した.アインシュタインが唱えた光の粒子性は,ニュートンが唱えた古典力学に従う質点のような粒子とは異なり,光の振動数に比例したエネルギーの粒子であって波動の概念がなければ表せないものである.すなわち,光は波動性と粒子性の二重性を持っていることになる.
(ii) 太陽電池太陽電池は電卓や腕時計等の日用電化製品や家庭用省エネ機器として一般家屋の屋根や屋上に取り付
けられるなど,今日では広く一般に普及している.これらの製品に組み込まれている太陽電池は板状の半導体を幾重にも重ね合わせた太陽電池セルを複数つなぎ合わせることで目的の電力を得ている.太陽電池による発電メカニズムは光の粒子性を示す代表例である光電効果を利用したものである.
132 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
Section 7.2
実験の目的
この課題では,光エネルギーのスペクトル分布を観察することや,太陽電池にも利用されている半導体の光電効果の体験を通して,光エネルギーや太陽光発電に関する理解を深め,光の波動性と量子性に関する考察を行う.本実験では2つの小実験に分かれており,実験1ではプリズム分光器を用いて原子スペクトルを観測
し,その規則性について調べ,光の放出機構についての理解を深める.また実験2では,太陽電池に用いられている半導体フォトダイオードを用い,光がその振動数に比例したエネルギーの粒子であるため,光のエネルギー hνがフォトダイオードを構成する半導体の禁制帯の幅(バンドギャップ)より大きいとき,半導体内で光電効果が起こる事を観測し,光の粒子性(光量子)について理解を深める.
Section 7.3
実験の原理
(i) 光のスペクトル(学習支援講義の「Section2:基礎知識と実験原理 Subsection2-1:光の姿,Subsection2-2:光の発光機構」では,本節の内容について詳しく説明している.)水素や希ガスなどを高電圧等の印加により励起状態にするとそれらの物質は光を放出してよりエネル
ギーの低い励起状態や基底状態に遷移する.この時放出された光をプリズム分光器を用いて分光し,放出された光の強度を各波長に対して測定したものが発光スペクトルである.物質の発光過程は電子状態の変化に対応しているため,発光スペクトルを測定することにより,物質の電子エネルギー準位間隔を求めることができる.気体原子の発光スペクトルは,図 7.1に水素の例を示すように,気体原子のもつとびとびのエネル
ギー準位間の遷移によって輝線スペクトルとなって現れる.これに対して数個の原子から成っている分子の場合には,非常に多くの線スペクトルが密集して観測されるので,分子スペクトルの帯スペクトルとも呼ぶ.これは,分子の場合には定常状態が原子の状態ばかりではなく,分子の振動や回転などの状態にも依存するので,エネルギー準位が原子よりも密になっているからである.また,固体や液体のような凝集物質では一般にエネルギー準位は無数に多くなり,また,エネルギー準位の間隔も非常に小さくなり,連続的な準位となって現れる.タングステンランプの光で見られるように,各波長にわたって連続的ないわゆる連続スペクトルとして現れる.連続スペクトルは分光器のスリット幅をせばめたり,分解能の良い分光器を使用しても,分離したスペクトル線は見られない.
(ii) 太陽電池(学習支援講義の「Section2:基礎知識と実験原理 Subsection2-3:光電効果」では,本節の内容について詳しく説明している.)太陽電池セルには半導体が用いられている.半導体とは,電気伝導度が伝導体と絶縁体の中間値を持
7.4. 実験 133
図 7.1: 水素原子エネルギー準位模式図(nは量子数)
つものである.ある元素がその集合体を作るとき,エネルギー準位が少しずつ重なり合ってエネルギーバンド(エネルギー準位の帯)を形成する.その模式図を図 7.2に示す.この中の禁制帯(バンドギャ
図 7.2: 導体,半導体,絶縁体における電子エネルギーの模式図
プ:∆E)には電子が存在することができず,物質の電気伝導性は価電子帯に存在する電子が禁制帯を飛び越えることによって生ずる.従って,禁制帯幅が電子が飛び越えることができないほど大きい物質は伝導性の電子がなく,絶縁体となる.半導体とは通常では電子が禁制帯を飛び越えられず絶縁体としての性質を示すが,光等のエネルギーを吸収することで禁制帯を飛び越えることが可能となり伝導性を示すようになる物のことである.
134 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
Section 7.4
実験
実験 1原子の放出スペクトル
●● 7.4.1分光器による原子放出スペクトルの観察 ●●プリズム分光器の目盛対波長の校正曲線を作り,これを用いて,水素放電管,希ガス放電管,蛍光灯
などの放出スペクトル(発光または発輝スペクトル)の波長を測定する.
図 7.3: 校正用実験装置
7.4. 実験 135
図 7.4: 測定用実験装置
◆◆ 実験装置 ◆◆プリズム分光器 (島津製スペクトロスコープ KB- 2型),Na,Cd,Hg,Hおよび希ガス(He,Ne,
Ar,Krおよび Xe)放電管,光源起動装置,ネオン・トランス,尺度投影用電灯,蛍光灯.
(a) プリズム分光器プリズム分光器は,図 7.5に示すようにコリメータ (C),プリズム (P),望遠鏡 (T),および尺度投影
管 (A)よりなっており,光源からの光はスリットを通り,コリメータレンズによって平行光線になる.これがプリズムによって分散され,各波長の平行光線として望遠鏡の対物レンズに入り,その焦点面上に各波長のスリット像を作る(スペクトルを作る).このとき同時に尺度目盛の像がその焦点面にできるように調節されている.
(b) 光源起動装置電源スイッチを ONにし,起動スイッチを長押ししてフィラメントが赤熱した所で起動スイッチから
手を離すと放電が開始する.放電しない場合はもう一度起動スイッチ長押しして赤熱するようにして繰り返す.使用後は,電源スイッチを OFFにすればよい.
◆◆ 実験方法および手順 ◆◆(a) プリズム分光器のスリットの調整
136 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
図 7.5: プリズム分光器の概念図
• 光源起動装置,プリズム分光器,放電管ボックス,尺度投影用ランプを図 7.3のように設置する.
• スリット調整は Hg放電管を用いて行う.
• 尺度投影用ランプを点灯し (電源をコンセントに差し込むと点灯する),光源起動装置のコネクタを Hg放電管ボックスのソケットに挿して,電源スイッチを入れ,スターターを 5秒程度押し続け Hgランプを点灯させる.プラグのピンは 4本あり,太さが異なるので,太さの違いに注意し,向きを間違えないようにすること.
• 色のついた線と目盛が見えることを確認する(図 7.7).目盛しか見えない場合はスリット調節ネジ(図 7.3,図 7.6)を少し動かしてスリットを開く.ネジを回す方向を間違えないように注意すること.図 7.6の V字型くさびを左右に移動することにより,スペクトルの長さを調整できる.スペクトルを測定しやすい長さに調節すること.
S B E DF
図 7.6: スリット(S:スリット調節ネジ,回してスリットの幅を調節する,F:V字型くさび,左右に移動させてスリットの長さを調節する.)
7.4. 実験 137
図 7.7: 望遠鏡から見た尺度板の投影と分光スペクトル
• ネジを微量に回すと線の太さが変わる,また,接眼レンズを前後に動かし望遠鏡のピントを調整し,一番左側に見える黄色の線を細い 2本に分離する.黄色の線が視野にない場合には,望遠鏡回転ハンドルを回し,視野に入るようにする.
なお,Hgランプで調整を行ったスリット調節ネジは実験1がすべて終了するまでは触れないこと.
(b) 線スペクトル(Hg,Cd,Na,He)の観察と校正曲線の作成Hgの線スペクトルにおいて,「輝線スペクトルの目盛の値」と「線の色」,「線の相対強度」を記録
する.
• 見えた「線の色」に対応する「波長」を表 7.1から調べて記録する.
• 残りの Cd, Na, Heの 3種類について,同様の作業を行う(観察対象は TAの指示に従うこと).
Hgは黄色 2本を含む 4本以上,Cdは 3本以上,Naは 1本以上,Heは 4本以上の線を観測すればよい.なお,放電管には少量の Arが混入されているので,Arのスペクトルが見える場合には表 7.1中の該当データを記入する.
(表の作成については学習支援講義「Section3:実験 1目的・装置・方法 スライド 34 表 1」を参照のこと.)
• 目盛の値を縦軸に,波長の値を横軸にとったデータをプロットする(図 7.8).
• プロットが一次直線で近似可能であることを確認する.実験中は直線を結ばなくても良い.
• 光源起動装置の電源や,接続コネクタを抜いて次の実験に支障の無いように整理する.
なお,レポート作成時は,最小二乗法(テキスト巻末付録参照)を用いて正確に校正曲線を作成する.
(c) 水素原子のバルマー系列線の観察
• 水素放電管について,図 7.4のようにセットし,光源起動用誘導コイルの電源スイッチを ONにすることにより点灯させる(誘導コイルの電極に触れると感電するので注意すること).なお,水素放電管の取り付け・取り外しは教員もしくは TAが行う.
• 校正曲線作成時 (Hg,Cd,Na,He放電管)と同様に,「輝線の目盛の値」と「線の色」,「相対強度」を記録する.なお,輝線は最低 3本観測すればよい.
(データの記録について,学習支援講義「Section3:実験 1目的・装置・方法 スライド 38 表2」を参照のこと.)
138 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
表 7.1: 原子の主な放出スペクトル
Hgスペクトル Cdスペクトル Naスペクトル Heスペクトル Arスペクトル ∗1
色 波長 相対 色 波長 相対 色 波長 相対 色 波長 相対 色 波長 相対(nm) 強度 (nm) 強度 (nm) 強度 (nm) 強度 (nm) 強度
黄 579.1 中 赤 643.8 大 赤 616.1 小 橙 667.8 中 赤 706.7 大 黄 577.0 中 緑 515.5 小 黄 589.3∗2 大 黄 587.6 中 赤 696.5 大 緑 546.1 大 青緑 508.6 中 黄緑 568.8 小 青緑 501.6 小 赤 641.6 小 青 491.6 小 青 480.0 大 青緑 492.2 小 橙 604.3 大 青紫 435.8 大 青 467.8 大 青 471.3 小 · · ·紫 407.8 大 紫 441.5 中 青紫 447.1 小 青紫 451.1 中 紫 404.7 中 · · · 紫 419.1 中
· · · 紫 415.9 中 · · ·
∗1 放電管には,管保護のために Ar ガスが封入されているので,Ar のスペクトルも現れる.∗2 D1(589.592 nm),D2(588.995 nm) の 2 本のスペクトル.
(d) 蛍光灯のスペクトル観察
• 蛍光灯を点灯させる.分光したスペクトルがどの様な様子か観察し,スケッチしなさい.
• 観察される輝線スペクトルに関して,「目盛の値」と「線の色」,「相対強度」を記録する.なお,輝線スペクトルは 5本程度観察できればよい.
(e) 希ガスのスペクトル観察 (任意課題)時間に余裕がある場合,さらに希ガスの放電管を一種選んで,水素放電管と同様の実験を行う.
●● 7.4.2結果のまとめと考察 ●●(a) 校正曲線について
• 校正曲線のプロットは実験時間内に全員必ず作成すること.
• プロットを直線で結ぶ際は誤差を考慮し,最小 2乗法を用いたデータ整理を行うこと.最小 2乗法は(学習支援講義「Section3:実験 1目的・装置・方法」のスライド 35・36・37か巻末の付録を参考にすること.)
(b) 水素の Balmer系列について
• 水素の Balmer系列とは何か(意味と内容)を調べ,レポートにまとめなさい.
• Rydberg定数の定義と内容について調べ,レポートにまとめなさい.
• 上記をまとめる際,参考にした文献については出典を明確に記すこと.
7.4. 実験 139
図 7.8: 校正曲線の実測例
• 調べた Rydberg定数の文献値と測定したバルマー系列スペクトルの波長から計算した計算値を比較し,誤差の要因を考察しなさい.なお,波長と Rydberg定数 (R∞)との関係は以下の式 (7.1)を参考にすること.また,バルマー系列の場合,n = 2となり,n’は赤の場合 3,青緑の場合 4,青紫の場合 5,紫の場合 6となることに注意すること.またすべてのスペクトルが観察されるとは限らないため,観察されるスペクトルの本数が赤,青緑の2本,赤,青緑,青紫の3本になることも考えられる.詳しくは学習講義「Section2:基礎知識と実験原理 Subsection2-2:光の発光機構 スライド 20・21・22」を参照のこと.
1λ= ν =
ν
c= R∞
(1n2 −
1n′2
)(7.1)
(c) 希ガスと蛍光灯のスペクトルについて
• 希ガスおよび蛍光灯の輝線スペクトルについては測定データと校正曲線から読み取った波長を表にまとめること.
• 蛍光灯のスペクトルに関して, 観察される様子をスケッチしなさい. 輝線スペクトルについては,文献値(理科年表等)を参考に物質の同定を行うこと.また,蛍光灯の放電および発光のしくみについて文献を調べ,レポートにまとめなさい.
140 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
実験 2内部光電効果によるフォトダイオードの光起電力
●● 7.4.3白色光の分光とフォトダイオードの光起電力 ●●
◆◆ 実験装置 ◆◆白色光源(ハロゲンランプ),三角プリズム,Siフォトダイオード,GaPフォトダイオード,デジタ
ルマルチメーター
拡大
方眼紙鉄棒
上下移動
図 7.9: 実験 2で用いる装置概要
7.4. 実験 141
◆◆ 実験方法および手順 ◆◆(a) 白色光の分光
• ハロゲンランプの電源スイッチを入れ点灯させる.
• ハロゲンランプと三角プリズムの位置や角度を調整し,壁に分光した光 (虹)を当てる.
きれいな虹が出来ない場合は光源とプリズムの距離を調整すること.
壁に貼った方眼紙の下から 1/3付近に光が当るように位置を調整する.
調整終了後は,実験終了までハロゲンランプとプリズムは動かさないこと.
(b) 分光の様子の模式図
• 白色光の分光の様子の模式図を描きなさい.
「模式図」なので,装置の形状や大きさ,距離などを詳細にスケッチする必要はないが, プリズム内の光の屈折は正しく考慮し,表現されているか注意すること.
(c) フォトダイオードに入射するスペクトルの調整
• フォトダイオードのボックス (図 7.10)を動かして,フォトダイオードの位置が赤色光の下側 2 cm程度になるようにし,その位置をスタート位置とする.
• ボックスのスタート位置を決めたら,ボックスの上にある定規の位置を0(原点)とする.壁の方眼紙に原点の位置を鉛筆で書き込み,実験終了まで変えないこと(実験終了後消すこと).
• フォトダイオード選択器の切り替えスイッチのツマミを「OFF」から「ダイオード 1」または「ダイオード 2」にする.
• デジタルマルチメーターのツマミを「OFF」から「DCV(直流電圧)」に切り替え,0.001 Vが測定できるようにレンジを設定する.
デジタルマルチメーターは実験台によって機種が異なるので,わからない場合は教員および TAに確認すること.
(d) 光起電力の測定
• ボックスを 5mmずつ動かし,原点からの移動距離と,その時のフォトダイオード 1,2の起電力(電圧の値)を計測する.同時に,スペクトル表(各実験台に設置)を見ながら,「移動距離」とそのときフォトダイオードに当たっている光の「色」,「波長」を対応させ,ノートに記録しておくこと.
(表の作成については学習支援講義「Section4:実験 2目的・装置・方法 スライド 42 表 3」を参照のこと.)
実験時間に余裕がある場合は, 電圧の値が大きく変化している付近について,より正確なデータが得られるように, 1mm間隔の計測を行う.
142 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
図 7.10: フォトダイオードボックス
• フォトダイオードの位置が紫色の外側 2 cm程度になるまで,データを取り続ける.
• ダイオード 1, 2の起電力測定結果を縦軸に起電力,横軸に移動距離として一枚のグラフ用紙中に同時に描くこと.
●● 7.4.4結果のまとめと考察 ●●(a) 分光の様子白色光が明確に分光されたとき,白色光が三角プリズムのどの面に入射し,どの面からどの様に分光
されているかを観察し,その分光の様子を模式的に図示せよ.その際,プリズムの中での赤,黄,青の光の光路を違いが明確になるように屈折率の違いを考慮に入れて示すこと. (分光の様子については学習支援講義「Section2:基礎知識と実験原理 Sebsection2-4:分光と屈折率」の内容を参照のこと.)
(b) バンドギャップに相当する波長の計算とダイオードの同定
• フォトダイオード 1,2について(1,2両方とも),位置と光起電力の関係をグラフに図示せよ.位置と光起電力の関係のグラフは実験時間内に全員必ず作成すること.
• フォトダイオード 1,2について(1,2両方とも),波長と光起電力の関係をグラフに図示せよ.ここでは波長を求めることができた部分について示せばよい.
• 上で作成したグラフからフォトダイオード 1,2が Siと GaPのいずれであるか同定しなさい.なお,Siと GaPのバンドギャップは,Si:1.12 eV,GaP:2.25 eVである.考察にあたっては,まず
7.4. 実験 143
光のエネルギー(E)と波長(λ)との関係を表す (7.2)式から,バンドギャップを超えるために必要な波長(限界波長)を計算し,その結果を用いて考察せよ.
E =hcλ
(7.2)
• 波長と光起電力の関係を示すグラフでフォトダイオード 1,2についての特徴を述べ,その原因について考察しなさい.
レポートを作成する時には,学習講義の「Section5:実験 1と 2の関係,レポート自己チェックポイント」を参照し,実験 1と実験 2の関係を理解し,レポート提出前に,必要事項の記載漏れについて自己チェックを行うこと.)
144 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
Section 7.5
学習支援講義について
●● 7.5.1学習支援講義の対象・利用方法 ●●(a) 講義の対象すべての自然科学総合実験課題 7履修者を対象としている.特に,高校で物理を履修していなかったり,履修したが理解度に自信がなかったり,本実験の内容と
高校で履修した物理との関係が結びつかないような場合は是非一度目をとおすこと.
(b) 利用方法講義動画は ISTU(東北大学インターネットスクール)に掲載している.受講科目の「自然科学総合
実験」を選択して,「課題7ビデオ講義」で視聴できる.講義はサブセクションを含めて全部で八つの章から構成されている.理解度をより向上させるためには,セクション 1からセクション 8まで全部見ることを勧めるが,状況によっては,必要なものを選択して見てもよい.例えば予習時には,実験の目的・原理・方法を把握し,実験全体をイメージするための情報が利用でき,レポートを書く際には,データの整理・考察・まとめに必要な情報が利用できる.
●● 7.5.2学習支援講義の内容 ●●Section1: はじめに(スライド:4枚,時間:7分)
• スライド 1:実験課題タイトル
• スライド 2:実験目的
• スライド 3:身近なスペクトル,虹
• スライド 4:環境問題と太陽電池
Section2: 基礎知識と実験原理
Subsection2-1: 光の姿(スライド:10枚,時間:17分)
• スライド 5:光と電磁波
• スライド 6:光のエネルギー
• スライド 7:波の性質:干渉
• スライド 8:ヤングの干渉実験(光の波動性)
• スライド 9:箔検電器による光電効果の実験 1
7.5. 学習支援講義について 145
• スライド 10:箔検電器による光電効果の実験 2
• スライド 11:箔検電器による光電効果の実験 3
• スライド 12:光電効果の説明(光の波動性だけでは不十分)
• スライド 13:光は粒子でもある
• スライド 14:光は波動性と粒子性の 2重性質を持つ
Subsection2-2: 光の発光機構(スライド:8枚,時間:14分)
• スライド 15:電子の発見
• スライド 16:ラザフォードの α線の散乱実験
• スライド 17:ラザフォードの原子模型
• スライド 18:ラザフォードの原子模型の欠点
• スライド 19:電子の波動性と電子の軌道
• スライド 20:電子軌道とエネルギー準位(ボーアの理論)
• スライド 21:水素原子の電子軌道とエネルギー準位
• スライド 22:光の発光機構(バルマー系列)
Subsection2-3: 光電効果(スライド:3枚,時間:7分)
• スライド 23:結晶:バンド(帯)構造
• スライド 24:導体,絶縁体,半導体の電子エネルギーの模式図
• スライド 25:光電効果が起こる限界振動数(限界波長)
Sebsection2-4: 分光と屈折率(スライド:3枚,時間:5分)
• スライド 26:プリズム分光の仕組み(光の分散)
• スライド 27:波長と屈折率の関係(光の分散)
• スライド 28:屈折の法則(スネルの法則)について
146 課題 7 光のスペクトルと太陽電池
Section3: 実験 1:目的,装置,方法(スライド:10枚,時間:12分)
• スライド 29:実験目的(実験 1)
• スライド 30:実験 1「光のスペクトル」の装置(測定用)
• スライド 31:実験 1「光のスペクトル」の装置(校正用)
• スライド 32:本実験の校正について
• スライド 33:校正について
• スライド 34:目盛対波長の校正曲線の作成
• スライド 35:最小二乗法について(データ処理)
• スライド 36:最小二乗法の意味
• スライド 37:最小二乗法の計算方法
• スライド 38:水素、希ガス原子スペクトル及び蛍光灯の発光スペクトルの測定
Section4: 実験 2:目的,装置,方法(スライド:5枚,時間:7分)
• スライド 39:実験目的(実験 2)
• スライド 40:フォトダイオードと太陽電池
• スライド 41:実験 2「白色光の分光とフォトダイオードの光起電力」の装置
• スライド 42:実験 2の実験方法
• スライド 43:実験 2の実験方法 2
Section5: 実験 1と実験 2の関係,レポート自己チェックポイント(スライド:3枚,時間:3分)
• スライド 44:光の発光機構と光電効果
• スライド 45:レポート自己チェック 実験1
• スライド 46:レポート自己チェック 実験 2
●● 7.5.3注意事項 ●●1. 講義は実験(レポートを書くことを含め)の遂行を助けるための学習資料(ヒント)であり,レポート考察の答えそのものではない.
2. 実験操作を行う際には,操作自体の意味を理解し,観察した現象の後に潜んでいる原理も考えてみること.