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1.はじめにレーザー核融合研究はレーザー技術,ターゲット技術,
プラズマ診断および理論・シミュレーションによって支え
られている.本論文では,ターゲット爆縮と燃料加熱実験
で最も大きな鍵を握る大出力レーザー技術について解説す
る.現在,核融合用のレーザーとして用いられているのは,
NdガラスレーザーとKrF エキシマーレーザーであり,我
が国では前者は大阪大学レーザーエネルギー学研究セン
ター,後者は産業技術総合研究所および電気通信大学レー
ザー新世代研究センターにおいて開発されてきた.レー
ザー核融合および流体力学あるいは輻射過程などの関連す
るプラズマ実験を行うには,kJ 級のレーザー出力が必要で
あり,そのような大出力レーザーの開発は,主として主増
幅器の高効率・コンパクト化と多様な実験から要求される
様々な機能の導入である.
本論文ではまず第2節で既存設備である激光XII 号ガラ
スレーザーに触れ,近未来の点火実証実験のためのガラス
レーザー開発の進展状況を述べる.次に第3節では,
Super-ASHURAにおける高効率化と高繰り返し化技術開
発をまとめ,炉用レーザーの候補としてのKrFレーザーの
可能性について述べる.近年の高速点火研究の進展によっ
て,核融合用レーザーには大エネルギーのみならず,ペタ
ワット(PW)級のピーク出力を有する超短パルス超高強度
レーザーが不可欠となっており,ガラスレーザーのチャー
プパルス増幅とパルス圧縮技術が大いに進展している.第
4節では,現在,激光XII 号レーザーと同期して燃料加熱
実験に活用されている PWレーザーについて述べる.第5
節では,大出力レーザーの多機能化の中でも最も重要な照
射均一性の改善技術について概要を述べる.第6節では,
世界における大出力レーザー建設の現状を紹介し,最後に
それらの大出力レーザーの核融合以外の分野への応用の可
能性にふれて本論文をまとめる.
2.爆縮用ガラスレーザーシステム2.1 大出力ガラスレーザーの歴史
ガラスレーザーはレーザーとしては古い部類に属し,
解説1.レーザー核融合研究の進展1.3 レーザー核融合技術の進展
大出力レーザー技術の進展
宮永憲明,金辺 忠1),奥田 功2),北川米喜*,中塚正大(大阪大学レーザーエネルギー学研究センター,福井大学大学院工学研究科1),産業技術総合研究所2))
Progress in High-Energy Laser Technology
MIYANAGA Noriaki, KANABE Tadashi1), OKUDA Isao2), KITAGAWA Yoneyoshi*
and NAKATSUKAMasahiro
Institute of Laser Engineering, Osaka University, Suita 565-0871, Japan1)Graduate School of Engineering, University of Fukui, Fukui 910-8507, Japan
2)National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba 305-8568, Japan
(Received 11 December 2004 / Revised 11 March 2005)
The technological development of high-energy lasers is one of the key issues in laser fusion research. This pa-per reviews several technologies on the Nd:glass laser and KrF excimer laser that are being used in the current la-ser fusion experiments and related plasma experiments. Based on the GEKKO laser technology, a new high-energyNd:glass laser system, which can deliver energy from 10 kJ (boad-band operation) to 20 kJ (narrow-band operation),is under construction. The key topics in KrF laser development are improved efficiency and repetitive operation,which aim at the development of a laser driver for fusion reactor. Ultra-intense-laser technology is also very impor-tant for fast ignition research. The key technology for obtaining the petawatt output with high beam quality is re-viewed. Regarding the uniform laser irradiation required for high-density compression, the beam-smoothingmeth-ods on the GEKKO XII laser are reviewed. Finally, we discuss the present status of MJ-class lasers throughout theworld, and summarize by presenting the feasibility of various applications of the high-energy lasers to awide rangeof scientific and technological fields.
Keywords:high-power laser, Nd: glass laser, KrF laser, PW laser, IFE driver
corresponding author’s e-mail: [email protected]
*現在の所属:光産業創成大学院大学 The Graduate School for the Creation of New Photonics Industries, Hamamatsu, Shizuoka 431-1202, Japan
J. Plasma Fusion Res. Vol.81, Suppl. (2005)48‐5848
1961年 Snitzer により開発に成功している[1].1970年以
降,大きなレーザーエネルギーを必要とするレーザー核融
合用[2‐4]として,固体レーザーの中でもガラスレーザー
[5‐6]は主要な役目を果たしている.当初の核融合用レー
ザーシステムでは主にケイ酸塩系ガラスが使用されていた
が,非線形屈折率が小さく,高いピークパワーにより適し,
利得の大きいリン酸塩系ガラスが使用されるようになっ
た.近年,製造面で通常の光学ガラスのような連続溶解技
術がレーザーガラス製造でも開発され.低コスト化に成功
している[7].
核融合研究用レーザーとして,1970年代から急速に高出
力ガラスレーザーの建設が開始された.10 J,1 GWクラス
から出発し,高出力化のために大口径ディスク増幅器
[8,9]の開発,高性能レーザーガラス[10]の開発,スペー
シャルフィルター[11],像転送方式[12,13]等の数多くの
目覚しい技術開発がなされた.15年後には 100 kJ,100 TW
のガラスレーザー[14]が出現するようになり,米国ローレ
ンスリバモア国立研究所(LLNL)では 100 kJ の Nova[15‐
18]が建設された.現在,米国LLNLではパルス出力1.8 MJ
の National Ignition Facility(NIF)の建設が進んでいる
[19,20].またフランスの LMJの建設計画[21]など,各国
で核融合点火・燃焼を目標とする動きが活発である[22].
我が国では阪大レーザー研で,1975年から次々と大型化が
進み,世界初のリン酸塩ガラスレーザーシステム激光Ⅳ号
[23]を経て激光MⅡ号[24]が建設され,1983年には 20 kJ
激光 XII 号[25‐27]が完成し,現在でも安定に稼動してい
る.
2.2 激光 XII 号レーザー装置
激光ⅩⅡ号レーザー(波長 1.053 μm)は発振器部,前置増幅器列,および12ビ-ムの主増幅器列より構成され,最
終ビ-ム口径は 350 mm�である.主増幅器列は2台の 50
mm�ロッド増幅器,2台の100 mm�ディスク増幅器,3台
の 200 mm�ディスク増幅器より構成されている(Fig. 1).
レーザーシステムとしては,主発振器とパワー増幅器から
なるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システム
である.
激光ⅩⅡ号は1983年11月より高出力増幅試験を経て,25
kJ 出力(当時世界最大)でのターゲット照射試験が開始さ
れた.その後,レーザーの自動運転,レーザー波形整形器,
高耐力無反射光学素子などが導入され,1985年には直径 38
cmの単結晶KDP(当時世界最大)を用いた第2高調波変
換が行われ,最大変換効率86%で 0.53 μm光(グリーン光)が供給できるようになった.また1988年には第2ターゲッ
トチャンバーに第3高調波変換素子が設置され,ブルー光
照射実験が開始された.その後,ターゲットへの均一照射
技術が開発され,レーザー発振部には多種のレーザー照射
モードに対応するようにモード同期パルス,単一縦モード
Qスイッチパルス,広帯域レーザーパルス,部分コヒレン
ト光の発生システムが装備されている.Fig. 2 に激光XII
号のパルス幅に対する出力実績を示す.
この装置は,現在世界最長寿の大型レーザー装置であ
り,稼働開始から21年後の現在も年間スケジュールに基づ
き安定に出力を供給しており,2004年暮れには通算3万
ショットを超える見込みである.この激光XII 号に付随し
て,1996年には,激光ⅩⅡ号レーザーに高速点火基礎実験
装置としてペタワット(PW)ビームが増設された.ま
た,2003年から,大出力レーザーの多目的利用のために以
下に述べる LFEXレーザー(出力>10 kJ)の建設が開始さ
れた.
2.3 アレイ型多重パスガラスレーザー装置
高速点火原理実証実験計画FIREX(Fast Ignition Reali-
zation Experiment)は第Ⅰ期と第Ⅱ期に分かれており,第
1期では立ち上り時間 1~2 ps,パルス幅~10 ps で,出力
エネルギー 10 kJ が必要とされている.LFEXレーザー
(Fig. 1 の写真の左側のビーム列)は広帯域チャープパルス
増幅モード(詳細は第4節参照)でFIREX I 期に必要なエ
ネルギーを出すことが可能であり,パルス圧縮器を付加す
ることによって,2007年度までに最大パワー10 PW級の高
エネルギー超高強度レーザーの完成を目指している[28].
レーザーシステムは,高効率化と低コスト化のために
40 cm×40 cmの角型ビームの 2×2セグメント増幅器を
採用し,新規に考案した4回往復光路を有した増幅を行う
Fig. 2 Pulse length dependences of output power (▲) andpulse energy (●) on GEKKO XII laser.
Fig. 1 Photograph of GEKKO XII laser system (right side) and10-kJ PW laser system (LFEX, leftmost truss) under theconstruction.
Commentary Progress in High-Energy Laser Technology N. Miyanaga et al.
49
方式である.ビーム数は増幅器部では4ビーム構成であ
る.Table 1 に激光ⅩⅡ号,PWレーザー(第4節参照),
LFEX,FIREX II 期のレーザー性能比較を示す.
LFEXの増幅システムのコンポーネントは,2003年春か
ら設計・開発されてきた.このレーザー増幅器は,米国で
現在建設中の世界最大のレーザーNIFと同等の40 cm×40
cmの角の開口である.因に,激光ⅩⅡ号の最終増幅器は
直径20 cm,PWレーザーは35 cmであり,ともに円形開口
である.新規増幅器には幅 81 cm,高さ 46 cm,厚み 4 cm
の角型のレーザーガラスを採用した.Fig. 3 に LFEXに使
用されているレーザーガラスを示す.励起光源には大エネ
ルギーで高効率の発光を可能にするために,激光XII 号,
PWレーザーのフラッシュランプは内径が16 mmであるの
に対し,42 mmの大口径のもの開発した. LFEX増幅シ
ステムのレーザーガラスの総数は32枚であり,フラッシュ
ランプの総使用本数は216本である.総蓄積電気エネル
ギーは,激光XII 号では 22 MJ であるが,LFEXでは 6 MJ
まで低減させた.長パルスモードでは,4ビーム合計で激
光XII号並みの20 kJの出力エネルギーが得られる設計であ
る.
LFEXレーザー増幅器は,効率を高めるために従来型の
単独増幅器を並べた構造ではなく,上下2枚組みで横2列
のレーザーガラスを3列のフラッシュランプ群で挟み込
GEKKO XII PW LFEX FIREX-II
1983 1996 2004 Planed
System characteristics
Number of beams 12 1 4 24
Diameter of final amplifier cm 35 35 40×40 40×40
Output beam size cm 20 35 40×40 40×40
Total output energy kJ 20 4 24 (12) 144
Energy/beam kJ 1.6 4 6 (3) 6
Capacitor bank energy MJ 22 1.6 5.4 32.4
Amplifier system MOPA 3 pass 4 pass 4 pass
Laser efficiency % 0.09 0.25 0.44 0.44
Amplifier efficiency % 0.52 1.17 2.00 2.00
Extraction efficiency % 17.5 21.4 22.2 22.2
Laser glass
Type LHG 8 LHG 80 LHG 8 LHG 8
Nd doping wt% 2 2.9 4.2 4.2
Dimension 21×40×3.2 38×69×4.5 46×81×4 46×81×4
Number of slabs 1/chain 8 8 8
Total number of slabs 8 32 192
Flash lamp
Dimension cm 180×1.6 180×1.6 90×4.3 180×4.3
Input energy kJ 13.7 13.7 37.5 37.5
Energy density J/cc 37.9 37.9 17.8 17.8
Shot life 10,000 10,000 30,000 30,000
Current density kA/cm2 4.3 4.3 1.9 1.9
Total number of lamps pieces 1536 120 216 720
Amplification characteristics
Input energy density J/cc 81 26 15 15
Stored energy density J/cc 0.42 0.24 0.25 0.25
Gain coefficient %/cm 8.9 5.36 5.52 5.52
Table 1 Detailed performance of high-power Nd:glass laser systems at Osaka University.
(broad-band operation)
Fig. 3 Structure of 2×2 arrayed amplifier (a) and glass slab of46×81×4 cm3 being used in LFEX system.
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.81, Suppl. 2005
50
み,開口が2列2段の4ビーム集積型のセグメント構造と
した.レーザーガラスの冷却速度と温度均一化による
ショットレート向上のために新考案の可動型ガスノズルを
装着している.また光路中には,集光特性を回折限界近く
にまで高めるために個々のビームに2個の可変型鏡を設置
する.
さらに,この装置の特筆すべき光学コンポーネントとし
てファラデー回転子がある.口径が大きくなるとファラ
デー回転子は膨大な電源設備(コンデンサーと充電電源)と
それに伴うコスト増大を招く.そのために,Fig. 4に示すよ
うにファラデー回転子に超伝導磁石を世界で始めて採用し
た.この超伝導磁石は直径 1.3 mの空間にわたって 1.6 T
の均一磁場を作ることができ,磁場中に 2×2アレイの
ファラデーガラスを設置して45度の旋光角を得る.
2004年の春には,すべてのコンポーネントの開発・製造
と,システムの設置を終えている.コンポーネントの最終
調整と光軸調整を経て,2004年度末までに高出力増幅試験
が終了する予定である.
3.KrF レーザーシステム産総研では,KrF レーザードライバー技術の確立を目的
として,電子ビーム励起KrFレーザーの高繰り返し動作技
術の開発を進めている.この節では,高繰り返しレーザー
装置の開発状況,および実用炉用ドライバーへの技術的見
通しについて述べる.
3.1KrF レーザーの高繰り返し化技術開発
KrFレーザーはガス媒質であるため高繰り返し動作にお
いて本質的な困難さがなく,高い内部効率を有し,大面積
電子ビームによる大容積レーザーガスの高効率励起が可能
なので,大口径化,大出力化が容易である.さらに燃料球
へのエネルギー投入に有利な紫外域の波長を有し,広い波
長幅によりレーザー光強度分布の平滑化,標的の一様照射
が容易である等,エネルギードライバーとして優れた能力
を有している.産総研ではこれまで開発した大口径KrF
レーザー“Super-ASHURA”(60 cm径,レーザー出力約 3
kJ[29])の成果を基に,レーザードライバーで必須な連続
動作技術の確立を目的として,電子ビーム励起KrF レー
Fig. 4 1.6-T superconducting magnet of 130-cm bore diameterdeveloped for Faraday rotator.
Fig. 5 High-repetition-rate electron-beam-pumped KrF laser at AIST.
Commentary Progress in High-Energy Laser Technology N. Miyanaga et al.
51
ザーの高繰返し動作技術の開発に着手した[30].開発中の
高繰り返しKrF レーザー装置(20 J,1 Hz)を Fig. 5 に示
す.高繰り返し動作のための課題はレーザー装置各部の高
耐力化であり,電子ビーム発生部(ダイオード)の長寿命
化,ダイオード真空部とレーザーガスを隔てる電子ビーム
透過膜(圧力フォイル)の冷却等の技術開発を進めている.
高繰り返しレーザー装置の電源部では,高電圧スイッチ
の長寿命化を目的として磁気スイッチをベースとした回路
を整備した(Fig. 5)[30].放電式スイッチによる初段蓄積
コンデンサーC0(30 kV,8台)の放電後,昇圧トランスお
よび1段の磁気圧縮を経てパルス成形線路 PFLを充電し
(300 kV,0.2 μs),さらに磁気スイッチで PFLを駆動している(300 kV,80 ns).電子ビームは真空中の陰極(平面状
電界放出板 65×8 cm2)と陽極フォイルの間で生成し(~7
Ω),陽極フォイルおよび圧力フォイルを通してレーザーガス(~1気圧)に打込む(Fig. 5).圧力フォイルでは電子
ビーム透過時の加熱による張力低下が問題になるので,高
張力(1410 MPa,800 K),耐フッ素性を有するコバルト合
金(Havar[31])を用い,レーザーガスの対流,熱放射,お
よびフォイル支持リブ中の冷却水循環によって冷却する.
圧力フォイルでは高張力に基づく薄膜化(<12 μm)により電子ビーム蓄積を減らし(23 μm厚Ti相当),また両フォイル間には冷却ガスを流さずHibachi の開口率も大きいので
(84%),既存装置と同程度の電子ビーム透過率で圧力フォ
イルの冷却が可能である.陰極には従来のベルベットとと
もに高耐力材料を用いた鋸歯状電界放出板も使用し,電子
ビーム源の長寿命化を進めている[32].
このレーザー装置において電子ビームが 1 Hz で安定に
得られており(ジッター<10 ns[33]),レーザーガス励起実
験等を進めている[34].レーザーガス圧力の時間変化を蓄
積パルスエネルギーとともにFig. 6 に示す.同装置では前
述の高耐力電子ビーム源を用いて,1 Hz の繰返し頻度で約
1時間の連続動作を達成しており,また低出力ながら 2 Hz
動作を開始している[32].圧力フォイルの寿命に関して
は,これまで同一のフォイルで合計約 8,000 ショットの電
子ビーム打込みを確認しているが,まだ耐久性に問題は見
られていない.電子ビームエネルギーは最大580 J/パルス
が得られており,レーザーガス中の蓄積エネルギーはFig.
6 の圧力パルス波高から 280 J/パルスと計算される[35].
1 Hz 動作での飽和レーザー増幅は未着手であるが,この結
果は全ガス断面積(19×29 cm2)で十分な飽和増幅を行った
場合(内部効率9%/60 cm径増幅器[36]),パルスあたり
25 Jのレーザー光を1 Hzの繰返し頻度で連続的に取り出す
ことに相当する.
圧力フォイルについては,1 Hz 動作でフォイル冷却性能
の評価を進めている.冷却水循環およびレーザーガス自然
対流の下で行ったフォイル温度の赤外線計測結果を計算結
果とともにFig. 7 に示す[37].横軸は圧力フォイルにおけ
る電子ビームの平均蓄積パワー Pdep(単位面積パルス蓄積
エネルギー×繰返し頻度),縦軸は電子ビーム注入口(4.2
×11 cm2)の中央における圧力フォイルの温度��(1 Hz
での上下限)である.実験結果は計算結果(定常熱計算)で
ほぼ説明されており,2 Hz 程度までは自然対流でもフォイ
ル温度が張力を考慮した許容範囲(~800 K[31])に納まる
見通しである.現在�����0.1~0.2 W/cm2,���500~700
K の範囲で実験しているがフォイルの劣化は見られてい
ない.電子ビーム注入口の中央(��最大)における圧力フォ
イルの冷却機構は,フォイル両面からの熱放射とレーザー
ガス中の自然対流がともに50%程度と概算される[37].他
方,炉用ドライバー条件下でさらに高繰り返し化した場合
(����~1.0 W/cm2,~5 Hz)には,レーザーガスの循環に
よって対流冷却を増強しフォイル温度を現状に維持するこ
とになる.既に強制対流の下でレーザーガス流を機械的に
乱流と層流に切り替え,フォイル冷却とレーザー増幅を交
互に行う方式が実験されている[38].現在,冷却システム
の簡素化のためにフォイルおよびレーザーガス容器の放射
率増加による放射冷却の促進,および高����領域での冷却
性能評価のための 2 Hz 定格動作実験を進めている.
装置を大型化した場合に関しては,電源部における PFL
Fig. 6 Temporalevolutionof the laser-gaspressureanddepos-ited electron-beam energy per pulse in the gas.
Fig. 7 Pressure-foil temperature (Tp) vs. average depositedelectron-beam power per area in the pressure foil (Pdep).Measured peak and valley temperatures are shown assolid dots and open circles, respectively. Calculated val-ues shown as solid lines correspond to two anode-foiltemperatures (Ta)assumed to be Ta = 300 K and Ta =Tp.
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.81, Suppl. 2005
52
充電回路の簡素化により高いドライバー効率が得られると
見積もられる.磁気パルス圧縮では磁気スイッチのエネル
ギー損失を考慮し一般に圧縮比を5程度とするため,大型
装置では PFL充電側で圧縮段数が増加しエネルギー転送
効率が著しく低下する.しかし電子ビームダイオードに供
給するエネルギーを多数のPFLに分割し,また高速大電流
スイッチの使用により縮小された各PFLの容量を��から
直接短時間で充電することが可能になる[39].この回路構
成をFig. 8 に示す.この回路では��と PFLを線形誘導電
圧重畳器(LIVA)で直接接続し,圧縮段数の削減によりエ
ネルギー転送効率を向上させ,また昇圧トランス(漏れリ
アクタンス)の排除も PFL充電時間の短縮を容易にしてい
る.この回路構成により��からダイオードまで80%以上の
エネルギー転送効率,レーザー光出力まで 5.5%以上の
レーザー装置総合効率が試算されている[39].
3.2 炉用レーザードライバーとしての技術的見通し
以上,高繰り返しKrF レーザーの概要を述べた.パルス
パワーに関しては磁気スイッチをベースとした回路で高繰
り返し化,高耐力化が可能であり,初段スイッチの固体化
[40]により一層の長寿命化が見込まれる.また多数の小容
量PFLを通してエネルギーを並列転送することにより,大
出力,高繰り返し回路においても高効率化が可能である.
電子ビーム源に関しても高耐力化が図られており,電界放
出等,電子放出板の加工技術は多数あるので[41‐43],大面
積電子ビーム源の長寿命化は可能であろう.圧力フォイル
に関してはドライバーで想定される温度領域において高張
力フォイルの耐久性が確認されつつあり,またドライバー
の熱負荷条件においてもレーザーガスの強制対流あるいは
放射冷却により温度管理が可能と予測される.その他光学
窓の高耐力化等,レーザーシステム全体の長寿命化を図る
必要があるが,現在進行中の各種技術開発を通してレー
ザードライバーで要求される大エネルギー,長寿命,高効
率,高繰り返し動作が可能な核融合用KrFレーザーの基礎
技術が確立されるものと期待される.
4.加熱用ペタワットレーザーシステム世界最高出力のプリパルスのないPWレーザーシステム
が2002年に阪大レーザー研で完成し,稼働している.出力
0.9 PWのNdガラスレーザーであり,高密度プラズマ加熱,
粒子加速,超高強度電磁波と物質相互作用などの基礎研究
に利用されている[44].その特徴の第1は,光パラメト
リックチャープ増幅法(OPCPA)を大強度レーザーシステ
ムに初めて導入し,プリパルスを主パルスの 1.5×10-8 以
下に抑えたことである[45].直径 94 cmの平面回折格子対
を用いてダブルパス圧縮法によって,口径 50 cmのレー
ザービームを 470 fs に圧縮し,それによって 0.9 PWを得
た.そして,軸外し誘電体多層膜反射放物面鏡により 2.5
×1019 W/cm2にまで集光される.第2の特徴は,ペレット
ターゲットを爆縮する激光XII 号レーザーと完全同期して
動くことである.これによって,ターゲット爆縮直後の停
留相(stagnation phase)のタイミングに合わせて,正確に
PWレーザーを照射できるようになった.
最初にPWレーザーを完成させたのは,米国LLNLのM.
Perry らである[46].パルス幅 440 fs,エネルギー 660 J
で1.5 PWであったが,ノバビームの1ビームを借用したも
ので,かえってノバレザーそのものと協同はできず,単独
運転しかできない.その後,NIF 建設のためにシャットダ
ウンされた.一方,阪大では60 TWの激光MII号レーザー
(GMII[47])に引き続き,100 TWレーザー PWモジュール
[48]の成果を基に PWレーザーを完成させて,高速点火方
式の可能性を初めて実験的に示した[49‐51].なお,英国ラ
ザフォードアップルトン研究所にも2003年にPWレーザー
が完成している.
Fig. 9(a)はPWレーザー装置のブロック図である.フロン
トエンドはNdガラスモード同期発振器,パルスストレッ
チャー,2段OPCPAからなり,ガラスレーザー増幅部は
ロッド増幅器,カセグレイン型ディスク増幅器,スペー
シャルフィルター SF350,ファラデー回転器FR200から構
成されている.出力ビームはビーム伝搬部に設置した可変
鏡で波面補正処理をした後に,パルス圧縮部,集光部へと
導かれる.増幅部では PWの出力を得るためにスペクトル
狭帯域化を抑え,また,集光性能を確保するためにB積分
値を抑えることを目標とした.パルス圧縮用回折格子は世
界最大の直径 94 cmである.表面の光学損傷閾値 400 mJ/
cm2によって圧縮器出力は 500 J に制限される.激光XII
号ターゲット I室内に配置された圧縮容器,集光容器の写
Fig. 8 Conceptual design of a high-efficiency, high-repetition-rate pulsed power system for a 65 kJ KrF laser module of a multi-megajoule laser-driver system.
Commentary Progress in High-Energy Laser Technology N. Miyanaga et al.
53
真をFig. 9(b)に示す.
Fig. 10(a)は PWレーザーの主増福器である.カセグレイ
ン望遠鏡の主鏡と副鏡の間に口径35 cmのディスク増幅器
が4台直列に並べられている.Fig. 10(b)は増幅ビームの断
面像であり,鋸歯状開口と空間周波数フィルタリング(5
節参照)によってエッジ付近の回折リングが抑制されてい
る.また,増幅部,圧縮部での波面歪みを補正して集光性
能を向上させるために,Fig. 11 に示す直径 40 cmの可変鏡
をパルス圧縮部の直前に導入した.
高速点火の原理を実証するには,爆縮相,停留相のどの
タイミングでPWレーザーを照射すべきかが重要な鍵とな
る.停留相は約100 ps続くので,爆縮用のGXIIレーザーと
PWレーザーの同期精度は10 ps以下でなければならない.
これを実現するため,PWレーザーのフロントエンドから
チャープパルス光の一部取り出し,GXIIレーザーの種光と
した.これにより完全同期システムが構築可能となった.
Fig. 12 は PWレーザーの集光性能をX線ピンホール像に
よって観測したものである.焦点深度はレーリー長(400
μm)に一致し,最高輝度の集光位置は-1.4 mmのところであった.
以下に,PWレーザーの主要達成値を上げる.
� チャープパルス増幅出力:1.1 kJ� プリパルス比:1.5×10-8(フロントエンドのOPCPAによる)
� 出力スペクトル幅:>3.6 nm,B積分値:<1.4 rad� フィリングファクター:0.62(鋸歯状開口とギャッシュロッドガラスの導入による)
� 圧縮パルス幅:470 fs,集光エネルギー:420 J� エンサークルドエネルギー:20%(直径 30 μm),集光
強度:2.5 ×1019W/cm2
� PWレーザーと激光XII 号ビームとの同期ジッター:<10 ps
5.レーザービームの均一化制御技術レーザー核融合では爆縮用レーザーの照射不均一性を
1%以下に抑える必要があり,この節では照射均一性改善
Fig. 9 (a): Diagram of the PW Laser configuration. (b): Compression chamber of PW laser of which dimension is 11.5 m in length and2.7 m in diameter.
Fig. 10 (a) Four modules of the 350-mm disk amplifier in the PW main amplifier. (b) Near field pattern measured at 567-J output en-ergy.
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のためのビーム制御技術に関して述べる.均一照射の要素
技術は,個々のビームの強度分布および波面一様性の改善
と多ビーム照射におけるランダム干渉スペックルの低減に
大別できる.
5.1 ビーム一様性の改善
核融合用レーザーのように大口径で多数の光学素子を用
いる多ビームシステムでは,コスト低減のために光学素子
の波面性能に過度の要求はできず,ビームの一様性,すな
わちコヒーレンスの確保には空間周波数フィルタリング
[52]と能動光学素子(可変形鏡)が用いられる.大まかな
役割分担は,前者が高空間周波数の擾乱の除去であり,後
者が低周波の位相擾乱の除去である(可変形鏡の詳細は4
節を参照).高空間周波数成分には,光学素子のレーザー損
傷によって発生するもののほかに,レーザービーム自身が
有する成分がある.一般の産業用レーザーではガウス型
ビームが多く用いられるのに対して,核融合用レーザーで
は増幅器口径を有効利用するためにスーパーガウス型ビー
ムを伝搬させる.空間周波数フィルターは2枚の凸レンズ
を無焦点系に組んだものであり,レンズの焦点面(フーリ
エ変換面)に置いたピンホールによって高空間周波数成分
を除去する.ピンホールサイズは回折限界の40倍程度であ
る.したがって,スーパーガウス型ビームエッジの強度分
布が傾斜する幅はビーム直径の1/40程度となる.このよう
なスーパーガウス型ビームを得る方法として,Fig. 13 に示
すような鋸歯状アパーチャがあり,これを空間周波数フィ
ルターの入射側に置く.鋸歯状構造の半径方向のサイズ
�に対応する空間周波数成分はピンホールを通過可能と
し,周方向の周期�に対応する空間周波数成分はピンホー
ルをで遮断するように設計する.単純なハードアパーチャ
では同図(c)のように回折リングが発生するのに対して,鋸
歯状アパーチャでは同図(d)のように強度擾乱が抑制され
る.
5.2 干渉スペックルの低減
多ビームによるターゲット照射では,ビーム間干渉とい
う本質的な問題が存在する.特に球ターゲットの表面で
は,多ビームのランダム干渉によってランダムスペックル
パターンが必ず発生する.このとき,隣接ビームのなす角
度が大きいために,スペックルパターンの空間強度分布に
は,低周波から極めて高周波までの広範囲の空間周波数ス
ペクトルが存在する.そのために,必然的にスペックルの
平滑化が不可欠となり,レーザービームの時間周波数領域
での広帯域化(以下単に広帯域と記す)が必要となる.つ
まり,2つの相反する性能であるのコヒーレントと広帯域
化のバランスをとりながら,増幅・伝搬と高調波変換を行
う必要がある.ターゲット爆縮ではそのごく初期段階での
照射不均一性インプリントの低減が不可欠であり,加速段
階では比較的低空間周波数の照射不均一性に起因する流体
不安定性の低減が重要である.この観点から,激光XII 号
ではレーザー整形パルスのフット部にはインコヒーレント
に近い部分コヒーレント光(PCL :PartiallyCoherentLight)
[53‐55]を利用し,主パルス部ではスペクトル分散レー
ザー光(SSD : Smoothing by Spectral Dispersion)[56‐58]を
用いている.
5.3 部分コヒーレント光 PCL
PCLは広帯域レーザーの空間コヒーレンスを低下させる
Fig. 11 40-cm deformable mirror. Silica plate is 7 mm in thick-ness and 40 cm in diameter and is driven by 37 actua-tors connected to a personal computer.
Fig. 12 X-ray pinhole photographs of high power shots. Dis-tance between the parabola mirror and target ischanged from 2.2 to 0.7 mm before the calculated fo-cal point. The best point was -1.4 mm.
Fig. 13 Serrated aperture (a), zoom-in picture of aperture edge(b), beam pattern with hard aperture (c), and beam pat-tern with serrated aperture (d).
Commentary Progress in High-Energy Laser Technology N. Miyanaga et al.
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ことによって得られる.まず,短パルスレーザー光(パル
ス幅 100 ps 程度)を単一モード光ファイバーに注入し自己
位相変調する.100 ps パルスの場合,ファイバー中での非
線形相互作用は自己位相変調とラマン散乱が競合し,得ら
れるスペクトル幅の上限は 1 nm以下である.スペクトル
幅 0.6 nm程度のチャープパルスを回折格子対で10 ps程度
に圧縮した後,ビーム口径を広げて回折格子に入射し,回
折光の空間的スキューを利用して 50 ps の矩形パルスを発
生させる.これを階段屈折率型の多モード光ファイバーに
入射して空間的スキューの情報を消すことによって,パル
スのどの時刻においても同じスペクトル幅と統計的性質を
もたせることができる.さらに光ファイバーからの出射パ
ルスを導波路で分岐し,個々に強度を調整するとともに 50
ps ステップの遅延時間をつけて合成することによっ
て,2~3 ns 程度の整形パルスを得ることができる(Fig.
14(a)参照).こうして得られたパルスをさらに回折限界の
80倍の発散角をもつ階段屈折率型の多モード光ファイバー
を通過させ,その出射ビームの中央部(60倍の発散角に相
当)を抜き出して増幅する.激光XII 号の最終増幅器の出
射パルスは飽和増幅の影響を受けて矩形パルスとなる.
Fig. 14(b)はそのようにして発生させた PCLを第2高調波
に変換し,ランダム位相板[59]を通して集光したときのパ
ターンを示している.この例では,1ビームの集光不均一
性は時間の 1/2 乗に反比例して減少し(標準偏差�∝(コ
ヒーレンス時間/積分時間)-1/2),パルス幅 1.6 ns の間に�=3.5%に達する.なお,Fig. 14(b)で���������(第2高調
波の波長����0.527 μm,集光F値��������)は約700 μm(激光XII 号爆縮実験での標準ターゲット直径)に相当す
る.
5.4 スペクトル分散レーザー光 SSD
SSDは増幅・伝搬と波長変換まではコヒーレントであ
り,集光パターンはインコヒーレントに近い特性を有する
レーザー光である.SSDレーザー光の概念はFig. 15(a)に示
すようなものであり,数GHz~20 GHz で位相変調された
ビームを回折格子で回折させることによって得られる.こ
のとき,スペクトル分散方向に時間遅れ(ビーム断面の傾
斜)が生じるので,回折ビーム断面には異なった波長の光
が配列する.この色配列の空間周期は位相変調の時間周期
とスペクトル分散方向の時間遅れで決まる.また,SSD
レーザー光のスペクトル角度分散をKDP(KH2PO4)などの
波長変換素子の位相整合条件に合わせることによって,広
帯域でも高効率の波長変換が可能となる.Fig. 15(a)では2
段変調の直交2方向スペクトル分散の例を示しており,出
力ビームの遠視野パターンは正方形の領域に位相変調に伴
うサイドバンド周波数成分が碁盤目状に並ぶ.したがっ
て,この2方向SSDビームをランダム位相板あるいはキノ
フォルム位相板[60,61]を通して集光すると,遠視野パ
ターンにはサイドバンド配列に起因する周期性が発生し,
特定の空間周波数における流体安定性を生起する恐れがあ
る.この周期性を低減するには,変調器の段数を3段に拡
張し,3つの変調器の変調周期の最小公倍数ができるだけ
大きくなるようにし,各々の変調周波数に対応するスペクFig. 14 Example of shaped PCL pulse (a) and irradiancepattern
observed with an RPP (b).
Fig. 15 Principle of one directional SSD (a), far-field patternwithout RPP (b) and far-field pattern with RPP (c).
Fig. 16 Full scope of NIF system (a) and beam staging of NIFbeam line (b).
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トル分散の方向を120°ずつ回すことによって,Fig. 15(b)
のように6角形の領域内に比較的不規則にサイドバンド成
分を配列させることができる.このような3方向SSDビー
ムをランダム位相板を通して集光すると,Fig. 15(c)のよう
に一様な集光パターンを得ることができる[62,58].
6.海外における開発動向1990年代までに核融合反応の点火に必要なプラズマ温
度,密度はそれぞれ独立にではあるが,阪大レーザー研に
おいて達成された.その結果を受け,間接照射型の核融合
方式で,核融合パラメータの同時達成と10-20の中程度の
核融合利得実証に向けて,出力2MJ級の超大型ガラスレー
ザーが米国 LLNL(NIF: National Ignition Facility,196ビー
ム,1.8 MJ)[63]とフランス,ボルドーの原子力研究所
(LMJ: Laser Mega Joule,240ビーム,2.4 MJ)[64]で建設さ
れつつある.中国においても60ビームシステム(神光 III
号,60ビーム,120 kJ)が成都近辺の綿陽市の国立レーザー
核融合研究所に建設中である.
NIF レーザーは口径 35 cmの矩形ビームシステムであ
り,ディスク増幅器は4段2列のアレイ構造を有してい
る.照射均一性を高めるため,僅かに波長の異なる4ビー
ム(2×2アレイ)を単位として48クワッド(quad)で構
成されている.主増幅部は多重パス増幅部とその後のブー
スター増幅部からなる.2004年までのビームライン試験で
は,基本波で 21 kJ(192ビーム換算で 4MJ),緑色変換後で
11.4 kJ(同 2.2 MJ),青色変換後では 10.4 kJ(2 MJ)と基本
仕様を達成している.2007年から実験に入り,2010-13年
の核融合利得実験を目指す.Fig. 16 に全景図と主増幅器部
以降のビームライン構成を,Fig. 17 には増幅器ヘッド構造
と出力ビームパターンを示す.
7.まとめ2000年代に入り,阪大の直接照射型研究でピコ秒パルス
による高速点火方式が提案され,実験結果もこの方式によ
る高効率,高利得の優位性を示しつつある.高速点火実験
に必要な高エネルギーPWレーザーの建設も,阪大の10 kJ
/10 ps システムに続いて,世界各国(米国ロチェスター大
学,中国上海光機所等)で同様の計画が進展しつつある.こ
のようなガラスレーザーの大出力化開発と並行して,KrF
レーザーでは主として高効率・高繰り返し化技術に主眼を
おいて着実な成果が上がっている.
核融合研究用レーザーシステムの開発は,その当初より
高出力レーザー開発の牽引車と言われてきた.パルス幅が
ピコ秒以下の超強度レーザーを含めて応用範囲を考えてみ
ると,MJ級のレーザーは未だ他に比類を見ないものであ
る.Fig. 18 に将来における高出力レーザーの応用範囲を
レーザーパラメーターマップにして示し,核融合研究用
レーザーの位置を併せて示した.科学課題,技術課題共に
現在のレーザーでは実行できないものであり,パワーフォ
トニクスが新しい高密度レーザーエネルギー学を開拓する
道を先導することが期待される.
謝 辞KrF レーザーの研究は,原子力委員会の評価に基づ
き,文部科学省原子力試験研究費により実施されたもので
ある.
参 考 文 献[1]E. Snitzer, Phys. Rev. Lett. 7, 444 (1961).[2]D.C. Brown, High-Peak-Power Nd: Glass Laser Systems
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Fig. 17 (a): 4×2 arrayed amplifier head, (b): assembled 4×1 laser slabs, and (c): 35-cm beam pattern of green (second harmonic, left)and blue (third harmonic, right) beams.
Fig. 18 Application map of ultra-high-power laser.
Commentary Progress in High-Energy Laser Technology N. Miyanaga et al.
57
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