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Vol.7No.29 電波研究所季報 March 1961 研究 UDC621. 389 プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法 平尾邦雄* 宮崎 茂本 A N E WPROBEMETHOD FORTHEMEASUREMENTOFELECTRONDENSITYA N D ELECTRONTEMPERATURE IN A PLASMA By KunioHIRAOandShigeruMIYAZAKI Inthepreliminariesaredescribedthesubjectsofspaceplasma,especially the experimental investigationsoftheplasma. Moreover,thefutureofthismeasurementis looked into. And the processofthisstudyisstatedbriefly. Thisoutlinesofthisexperimentdescribedinthemainsubjectis as follows. A newprobe methodisproposedforthemeasurementoftheelectrondensityandtheelectrontemperaturein theionosphere. Whenradiofrequencyvoltagecomponentissuperposedona probein addition to the direct voltage component, itisobservedthatasteepmaximumind. c. electronprobecurrent appearsattheplasmafrequencyoftheelectron, fe= .;ez 刃可ITTn Theelectrondensitythus determinedhaslittleambiguitiesandcoincideswith that given by Langmuir probe method. By meansofthisnewprobe,itmaybepossibletomeasureasmall densityfluctuationintheionosphere. This ResonanceProbeMethod willbeveryusefulforthespaceresearch if further de- velopmentfollows. 1. 従来,電離層,超高層などを含めたいわゆる宇宙空聞 の研究は主として地上からの観測のみによっていた。し かるに科学技術の発達により,ロケット,人工衛星など による直接測定が可能になってきた。既にある部門にお いては,直接観測により著しい成果をあげている。また 人工衛星による宇宙通信,あるいは宇宙空間の構造及び 生成機構,更にその中における現象などの問題が急激に クローズアップされてきて,ここに改めて宇宙空間の直 接測定が更に必要となってきた。 一般に宇宙空聞はほとんど大部分がプラズマ状態にな っている。であるから宇宙空間の問題及び計測はとりも ’電離気体研究室 139 直さず,宇宙空間プラズマの問題であり計測である。プ ラズマを測定する場合,その対象,問題及び現象によっ て測定の方法も異なってくるのは当然である。しかしい かなる測定法によったとしても,最後に求めるプラズマ の基礎量といえば,プラズマの組成,電子及びイオンの エネルギ一分布,密度,移動度,拡散係数,電離係数, 付着係数,再結合係数,そして電界及び磁界などである。 またプラズマの状態にエネルギーの損失及び発生の関係 を明らかにするためには,プラズマから出る穏射線(電 波,光, X 線, r 線〉あるいは粒子線〈電子,各種荷電 粒子)の測定及びプラズマと編射線,粒子線との相互作 用を明らかにする必要がある。理想的な測定としては, 上述のこれらの諸量及び諸関係が位置及び時間の函数と して測定されることが要求される。 以上で問題点がほぼ明らかになったのであるが,現在

プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法 · The electron density thus determined has little ambiguities and coincides with that given by Langmuir probe

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Page 1: プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法 · The electron density thus determined has little ambiguities and coincides with that given by Langmuir probe

Vol. 7 No. 29 電波研究所季報 March 1961

研究

UDC 621. 389

プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法

平尾邦雄* 宮崎 茂本

A NEW PROBE METHOD FOR THE MEASUREMENT OF ELECTRON DENSITY AND

ELECTRON TEMPERATURE IN A PLASMA

By

Kunio HIRAO and Shigeru MIYAZAKI

In the preliminaries are described the subjects of space plasma, especially the experimental investigations of the plasma. Moreover, the future of this measurement is looked into. And the process of this study is stated briefly.

This outlines of this experiment described in the main subject is as follows. A new probe method is proposed for the measurement of the electron density and the electron temperature in the ionosphere. When radio frequency voltage component is superposed on a probe in addition to

the direct voltage component, it is observed that a steep maximum in d. c. electron probe current

appears at the plasma frequency of the electron, fe= .;ez刃可ITTnThe electron density thus determined has little ambiguities and coincides with that given by

Langmuir probe method. By means of this new probe, it may be possible to measure a small

density fluctuation in the ionosphere. This“Resonance Probe Method ”will be very useful for the space research if further de-

velopment follows.

1. 序 論

従来,電離層,超高層などを含めたいわゆる宇宙空聞

の研究は主として地上からの観測のみによっていた。し

かるに科学技術の発達により,ロケット,人工衛星など

による直接測定が可能になってきた。既にある部門にお

いては,直接観測により著しい成果をあげている。また

人工衛星による宇宙通信,あるいは宇宙空間の構造及び

生成機構,更にその中における現象などの問題が急激に

クローズアップされてきて,ここに改めて宇宙空間の直

接測定が更に必要となってきた。

一般に宇宙空聞はほとんど大部分がプラズマ状態にな

っている。であるから宇宙空間の問題及び計測はとりも

’電離気体研究室

139

直さず,宇宙空間プラズマの問題であり計測である。プ

ラズマを測定する場合,その対象,問題及び現象によっ

て測定の方法も異なってくるのは当然である。しかしい

かなる測定法によったとしても,最後に求めるプラズマ

の基礎量といえば,プラズマの組成,電子及びイオンの

エネルギ一分布,密度,移動度,拡散係数,電離係数,

付着係数,再結合係数,そして電界及び磁界などである。

またプラズマの状態にエネルギーの損失及び発生の関係

を明らかにするためには,プラズマから出る穏射線(電

波,光, X線, r線〉あるいは粒子線〈電子,各種荷電

粒子)の測定及びプラズマと編射線,粒子線との相互作

用を明らかにする必要がある。理想的な測定としては,

上述のこれらの諸量及び諸関係が位置及び時間の函数と

して測定されることが要求される。

以上で問題点がほぼ明らかになったのであるが,現在

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の段階における研究の状態を次に少しく述べる。プラズ

マといっても,宇宙空間の中に存在する低温低密度プラ

ズマから核融合における高温高密度プラズマに至るまで

存在し,同じプラズ?といっても,その取扱い方,その

状態,その中に起る現象などにはかなりの相違がある。

したがって,その測定法もそれを対象とするプラズマ

によって非常に変ってくる。そこでこれらのプラズ7測

定法を次のように大別することができる。

(1)探針測定法

これは簡単で‘あり,プラズマの測定に広く利用されて

いる。この方法は文字通り針のような探針または探極

(Probe)と称する補助電極を測定すべきプラズマの中に

掃入しこれと基準電極との聞に電圧をかける。そして

探針の電流電圧特性からプラズマの諸量を求める方法で

ある。この概要については付録を参照されたい。

(2) 電磁波測定法

その1つの方法は電磁波とプラズマの相互作用からプ

ラズマ諸量を測定するものである。すなわち,外部から

電磁波を入射dしてその反射率,透過率,透過波の位相差

などを求めることにより測定する。

電離層プラズマは低密度であるのでMcあるいほそれ

以上の波長の長い電離波を用いるが,高密度のプラズず

では波長の短かいマイクロ波あるいはミリ波を用いる。

他のもう 1つの方法はプラズマから穏射される電磁波

のスペクトルを測定するものである。実際には雑音,サ

イクロ卜ロン編射,シンクロトロン穏射,可視光線,紫

外線からX線, r線などの測定になる。

。) その他

その他の測定法として分光学的測定あるいは種種の測

定法があるが,ここでは省略する。

次に宇宙空間プラズマの測定の現状について少しく述

べる。上述(2)の電磁波による測定に関しては,(i)Vertical

Pulse Sounding (ii) DOVAP (iii) SEDON (iv)

Faraday Rotationなどによる測定があり,また空電に

よる測定も行なわれている。これらの電磁波による測定

によってかなり電離層,宇宙空間の様子が判ってきたが,

しかしとれらの測定法は空間的分解能が低いので,定量

的に考慮するためにはどうしても局部的な直接測定が必

要とされる。

とれにづいては第二次大戦の直後 1946~7年 V2号

ロケットを用いてイオン密度を測定したのが最初であ

るCl\その後電子密度及び電子温度が測定されたゆ。最

近になってはソ連のスプートニク 3号にのせたイオント

ラップによってイオン密度と電子温度が測定された∞。

また l959年 NASAの AEROBEE-HIBOCKET に

のせた R.F. Impedance Probeによって電子密度を測

電波研究所季報

定しているゆ。またロケットに Benett型の質量分析君事

をのせて,上層大気中に存在するイオンの種類及びそれ

らの相対量が測定されたくの。日本においても 1960年 9

月に KAPPA-8型3号, 4号によって高度 SOkm-190>

kmの電離層の正イオン密度の測定を初めて行なった。

特に4号は夜間観測を行なった=

このように最近になって次第に多くの測定がなされる

ようになってきた。特に 1957~8年の I.G. Y. (Inter-

national Geophysical Year)になってから一段と直接観

測が発達してきた。しかしながらこれらの観測はまだ日

が浅いために,個個別別には測定されるがまだ電波観測L

のように組織的,計画的には測定されていない。また測

定の内容もはじめに述べた基礎量のうちの密度が主であー

ってすべての基礎量を総合的にほかったものはまだ1つ

もない。 SpaceResearchのためにもできるだけ早く宇

宙空間プラズ7 を総合的,組織的,計画的に測定するこ

とが痛感される。

次に以上の諸問題について,われわれのとってきたと

ころを述べる。

第一に電離層あるいは超高層プラズ?を実験室におい

て作ることが最初の問題となる。プラズマ左作る問題に

関しては,比較的安定なのは気体放電によって作られる

プラズマでその密度の範聞は大体 lQB/cma~101a/cmaで

ある。これより低い密度で安定しかも一様な静かなプラ

ズマを作ることは非常に困難になる。しかしながらこのa

ような非常に低密度のプラズマを広い空間内に作ること

が是非とも必要である。これに関してわれわれは大型放

電管を用いて 106/cm3程度までの一様なプラズマを作る

ことができたω。

第二に低密度プラズマの主主礎量の測定についてで‘ある

が,従来探針法による方法においては lQB/cma以下のh

密度のプラズマを測定することはかなり困難であるとい

われている(7)。この原因は色色あるが,その1つの理由

として実験室内に低密度の安定で一様なプラズマができ

なかったことが挙げられるであろう。しかしながらわれ

われは従来の探針法を低密度のプラズマ測定まで・開発し

て現に 106/cm3程度を測定し,実際に前に述べたよラ

に,電離層観測を行なって,地上の電波観測とかなりよ

い一致を示す結果を得た。しかしながら低密度プラズ7

の測定には多くの困難点があり,今後考察すべき問題点

が多く存在する。例えば,従来の探針法においては電子

密度及び電子温度を決定する場合密度が小さくなればな

るほど唆昧性が大きくなってくる。また実験室内の測定

と違って,これらの測定を超音速で走る飛潟体上で行な

う場合新たに解析上の問題が生ずる。

第三として低密度プラズマの性質を探針を使って究明

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Vol. 7 No. 29 March 1961

するうち,最近,電子のプラズマ娠動に対応する周波数

で,共療現象があることを見出した。この現象を利用し

て,プラズマの屯子密度や電子?lill.度を直接かっ紡官官に測

定することができる。

2 実 験

通常の傑主,.測定回路において係主Hこ,直流ffi庄:こ重畳:

して交流分を加えたとき,採針の特性1111線はどのように

変化するか,特に電子のプラズ" t震動数程度の高周波屯

圧を重E’させたとき,探針に対するプラズマの応答がど

うなるかを翻へたa この実験に関連する,通常のf家主|測

定については付録を参照されたい。

•( 1)放屯管及び探針

実験に用いた放電;管は直径 30cm の球11~で, モリブ

デンガラスで作られて二、て,その南側に相対し,それぞ

れプラズ 7源となる傍熱砲の|塗駆と|場部をもっ熱陰極放

電管である。まずこの放電管を排気装世で,中の圧力が

l x 10-G mrnHg 以下:二排気して, しかるのち水銀を封

入した。水銀の飽和蒸気圧は O。C,20℃においてそれ

ぞれ l.85×10→口imHg, l. 20 x 10-3 mrnHgである。

j来事|‘は各放ffi管によってそれぞ.;j-i.,Ji.~なる J I~状,大きさ

のものを使用した。 No.lの放'ili:管は中心に固定した直

径 5mmの球探極である。 No.2の放屯管は中心に固

写点 1 排気装置と球*放;ul'.i'c中央)

141

/~沈滞

, .ノ

争奪、“‘ιH、。,SCllAl,.-E’ru11F.’ l” ヱ”丸f’C.¥l

2f~ 2. No. 1紋氾竹,球探極〈直径 5mm〕中心固定

1114ポし

@ 二r.=--=~謝

frotl,UCl.11、0・'5{:11AI≪'区、"'" ・’'" '” :UJ C¥1

写真 3 No . 2 放•lltr , 平面探極(直径 30mm〕中心固定

乙f

、千

~

~·· tf' r 」こ九 γ 巧 十

写真 4.No. 3放Hi'i'.i',平面操指(抱径 30mm)左が可動採極,右が固定採極

定した直径 30mmの円形平面探極である。 No.3の放

屯径は 2つの直径 30111111の円形平商探極があり,一方

は中心から 30mm管墜によったところに固定しており ,

他方は磁石によ って中心から管~まで任意の位躍に移動

できるものである。

(幻放也管の放屯状態

相対する 2組の放電電極はそれぞれ独立な電池によっ

て放電注せる。 放電電流が大体 30mA より大きいとき

は管全体が一様に光ったグロ ー状態で,そのと き電子密

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J1fは 10s/cm3以上,寛子温度は 7000。Kを超える。 放屯

屯流が lOmA~25mA のときは電子組度は放屯屯流と

共に増加する。しかし放電電疏が lOmA以下のときは

千五子/Jill.I立は大体 2000。K一定になり, 電子密度は 106/

cm3程度あるいはそれより小さい。 このとき放屯の状

態は,管i¥のlffH!k'.が約 20。Cにおいては,陰極と|場極と

の問に僅かにグローができるだけで他は全く路プラズマ

(dark plasma)の状態である。管内に屯界はなく,管

内のプラズマは2つのプラズマ源から拡散によって形成

される。 放電電流が lOmA 以上のと き,管内のプラズ

?の密度はー織で,その変動は 3%以内である。 特に中

心部は一様である。しかし 0.5mA以下になると変動は

大きくなり, 40%にも達する。またこの放屯管は常に雑

音的振動があり,陰極|窃極関において周波数1~lOMc/s,

振幅 01~o. 2 vのものが存在する。しかしこの放電管

のプラズマ屯l立が陰極の電位に近いので,陰極を基準に

した探針特性が雑音的振動によって受ける影響は小さ

し、e

(3)測定装置及び回路

mu定回路は第 l図に示した通常’の Langmuir 採剣測

定回路であり,高周波屯圧は直流分と シリ ーズに印加し

た。発援擦は YEW の無線周波発振撚 OH201 (30 kc

~30Mc)を用いた。 そして探針の直流m圧に対する直

流電流すなわち係長|特性は Potentiometerまたは X-Y

Recorderで測定した。

仏) 測定結果

放電電流 5mAのとき平面探極で測定した例を示す。

まず周波数を一定にして振i~ffiの大きさだけを変えて測定

したのが第2区|で,下の太い線が高周波を豆位させない

ときの特性Llil線て、ある。この Standardの次のrU1線が振

幅が 0.2 vのとき,あとは順次に o.4, 0. 6, o. 8 vを

第l図測定回路

電波研究所季報

2

2.0 -l5 。JJ;l ~十電圧 !Volts!

百> 2図 刈fl.Ji止n:.圧を10:位したときの採H特i'i'周波数一定 (1Mc/s〕, !J<:G:Umt5 mA, 'l'i日探板

-2.0 -J.5

探査十電圧 !Vo/t.11

第3関 1::i周波•E圧を震位したときの探H特性

f百軒-:;i;'.(O.~V (p-p〕),放n.;;日記l5rnA,平而探/.Ii

重畳したときである。 高周波のi震帽を増すとともに屯VIE

が増加lしている。

次に振*illを一定にして周波数を変えて測定したのが.

第3図である。ある周波数までは周波数には 無関係に

写ns.測定装 ii'i.

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Vol. 7 No. 29 March 1961

Standardからの増加は一定のままで,常に Standardの

次の曲線に一致する。ところが周波数を更に増してゆく

と,ある周波数から急に増加を始め,周波数を増すととも

に電流も増加し,プラズマ援動数震度の周波数で電流が

最大に達する。更に周波数を高くすると,今度は急激に減

少を始め,終りには高周波を全然加えないときのStand-

ardの値と同じになる。そしてもはやそれ以上は変化せ

ず,常に Standardに一致したままである。

次にこの様子を見やすくするために,探針の電位を一

定にして,周波数と電子電流の関係を測定したのが第4,

5, 6図である。探針の電位を変えるとピークの相対的な

大きさは変化するが,ピークの位置の周波数は変化しな

い。〈第4図〉重畳する高周波の振l閣を変えても同様で

ある。〈第5図〉次に放電電流を増して密度を増すとピ

ークの周波数は高い方に移る。逆に密度を減少させると

ピークの周波数は低い方に移動する。 f第6図〕

Q2

3聞E JUD 岡山云 徴

第4図探針匂圧をパラメーターにした測定

放電電流 5mA,高周波電圧 0.4V(p-p)

u電子電

r

5hm143 高周波電圧

皇霊主ニ主主主主主O<V

~ ----一 戸 一一一-------一一一一一一一一ム__,

1白百- IMC 10 周波数

第5図 高周波電圧をパラメーターにした測定

放電m流5mA

皇室霊童.-'!Im A

J

O

H

8

6

1伊

a

a:5m.』

'mA

1面舵 IMC 開放数

第6図周波数と放電宵E流と白関係,高周波電圧 0.4V(p-p)

143

tE\EE七ω一山

zzd

探針澗定がら求のた電子密度

ーー一司平面探極 o・c一一一球 Ill 也 2o"~

I --一環探極 !fc10 I

2 3 4 s a 10 20 4 o ;f<MCJ

第7図電子密度と周波数と白関係 ピークの位置の周波数

ui51

以上の実験は陰極を基準電極として, SingleProbe

で行なったのであるが,陽極を基準電極として行なって

も全く同様である。また No.3放電管を使用して放電電

極から全然独立な2つの探針のみを用いる Double

Probeで同様な高周波重畳特性を測定しでも同様な結果

が得られる。

次に放電電流を色色変えて,ピークの位置の周波数と,

そのとき同時に行なった探針測定から求めた電子密度

との関係をプロットしたのが第7図である。

智子電流

5

4

3

a4

日2

探針電淀川町。

球 j軍』量

敏電電波 2mA

OJJI,

d 十 ,----- E一一一 3 棟計篭圧(VO/ts)

第8図低密度プラズマの探針特性曲線

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一定の周波数に対して密度の値の方に幅があるのは次

の理由による。一般に密度が小さいときの探針特性は,

密度が大きいときのようにはっきりした曲りの部分がな

く第8図のようになる。

これに関して,前に行なった実験によると,低密度の

場合には従来の直線部を延長した交点よりも,曲り始め

る点が正しい電子密度を与えるということが判っている。

との曲り始める点から求めた電子密度が大きな丸印の点

である。参考のため従来の方法で求めた密度が上の点、で

示しである。また直線は電子のプラズマ振動数と電子密

度の関係を示す理論式 fe=、/e2Ne/πm を画いたもので

ある。

l5} まとめ

以上の測定結果を整理してまとめると次のようになる。

第4,5, 6図に示されるごとく,一定振舗の高周波電圧

を重畳したとき,採針に流れる電子電流の応答の模様は

3つの特徴的領域に分けることができる。

c i)第1領域

比較的低い周波数の範囲において,探針に流れる電子

電流の増加が周波数によらず一定である領域。高周波の

振帽を大きくすると,電子電流の培加は大となる。

(ii)第2領域

この実験において非常に顕著であり,かつ興味のある

ところのプラズマ振動数付近において共振現象を示す領

域。同じ密度のプラズ7では高周波電圧の振幅を変えて

もピークは常に一定位置に現われる。プラズマの密度を

減少させるとピークは周波数の低い方にずれ,逆に増加

させると高い方にずれる。プラズマ密度を変えて,高周

波重畳特性と同時に行なった Langmuir探針測定法に

よって求めた電子密度とピークの周波数の関係は

fe= ./-ezNJ雨量7なる式によく合っている。

(iii)第3領域

周波数が高くなって探針の電子電流が重畳した高周波

によって全く影響を受けない領域。すなわち電子電流は

高周波を重畳しでもしなくても全然変化のない領域。

3. 理論的考察

以上の実験に対して次に理論的考察を試みる。説明の

都合上,最初に第l領域,次に第3領域,最後に第2領

域の順に考察を進める。

(1}第1領域

との領域では周波数が比較的低いから,プラズマ中の

電子は採針の高周波電界に応答すると考えられる。

電波研究所季報

今,探針とプラズマとの電位差が Voのとき,探針の

単位表面積に流れる電子電流 inは,

io=Nee~票田P(一長)

である。〈付錬2)参照〉

次に探針に正弦波 asin mtを重畳させたときの電子電

流 jは Vo→V0+asin曲t として

;=N-" I宣&.. vnf-e(九十asin mt) l d ・v2π加---r l kTe J

=N8eJ事叫(一長)叫t ea ・,¥

=Joexp1一一一一smmi1¥ kT8 ソ

ここで指数函数の部分をベッセル函数における Hansen

の公式仰を用いてフーリェ級数に展開すると,

j=J{ん(奇)-211(長)sinmt

-2J.(三土)cos2mt+2l.( ea l 2¥ kT8ノヘkT8)

+2l(ヱι)cos4mt+・H ・..-1 ヘkT8I 」ここで I,.(担=0,1,2,…〉は変形ペッセル函数である。

よって高周波電圧を重畳させたときの電子電流の直流分

ia・c・ = iolo(長) (1)

となる。ん(x)は1より大きな{直をとる単調増加函数で

ある。この最後の式によると電子電流の大きさは周波数

ωには関係せず,正弦波の振幅の大きさ aだけで定ま

る。実験事実はまさにこれを示している。またんの中

には電子温度 Teが含まれているから電流の増加率から

電子温度を求めるととができる。

(2)第3領域

(1)式の基礎である電子のボルツマン分布は me-1(叫

=2π'fe)に比し十分長い時間平均としてのみ意味をもつ

ものであり, (JJ >Weなる領域では(1)式が適用されない。

かつプラズマ中の電子が応答しうる周波数上限はプラズ

マ振動数的であるから,第3領域においては高周波重

畳による効果は見られない。

(3}第2領域

この部分の共振現象はプラズマとビームの相互作用に

よって説明できる。(9)ー(11)すなわち探針に高周波電圧を

重畳したとき,高周波電界の半周期で探針周辺のイオン

シース〈鞘〉内部から電子をプラズマの中へ押し出す。

しかしながら次の半周期ではプラズマの Shieldingの

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Vol. 7 No. 29 March 1961

ために押し出された電子は戻らない。よってこれらの押

し出された電子は振動電界の周波数で密度変調を受けた

電子ビームと見倣すことができる。そうすれば周知のご

とくビームの速度がプラズマ中の電子の熱運動速度より

大きいときは,このビームはプラズマ中に

五=nexp[rzo+i(kzーwt)]

rpAl

1.0

2毘

145

.bdl]

三;;0exp(-iwt) (判的

の進行増大密度波を励起する(10〕。 ここに rは増大率で

ある。

さてビームの速度 Ub=、;-ze可否"i:, 密度 11b=1V6exp

{一長) として, M プラズマ中の逗子の平均熱運

動速度より十分大きい場合に,これらは互いに次の分散

式で結ばれる。

(~/=11十 _l__ _(b立配e L ~~2 (1-X)2

+ユ~lCl_:±)!_:_二主主ム .. 1 4♂ (1ーχ)4 '」

十σ(1-X2)(X2ーε2〕(X2十ε勺Z (3)

ただし, a=11b/N6, ~2 =(勺fur〕2=ev/kT6, ε=7/K,

X=lーCw/Kub)

.(3)式の内容をよく見るために最も簡単な場合について考

えてみよう。 5→oo, X=Oの場合,すなわちビームの速

度が進行密度波の位相速度に等しい場合には,

(r含/=話寸、αJノ

Jはw8=wにおいて特異点をもつことが判る(JO〕(11)' こ

のようなプラズマの密度変動を考慮した場合,五の位相

反転を仮定して電子電流の直流成分を求めると,

] ("T !7?!1'; j= Jim剖 (Ne十五)eA/てア

T-回~ JO V acm

p{一王子;(九十asinw }

lγ1 ea、I ea ¥I n明 ---;;;rI i

=iol, (一一lI 1ー(-1 )"' ___:(!__ -」ー乙|ヘkT8ll ‘ Ns U三乙1 | I . "¥ kT8) j

(m=守=以3,・)この jは(2)(3)式からも容易に判るように ω=何で鋭い

共振的特性を示す。 (ピークの高さを特微づける量l立

母xprzoであり, Zoは適当な境界条件を与えることによ

って定められる。〉最後に第9図は2' 3の放電電流につ

いて高周波電圧の振幅とピークの高さくh)との関係を示

した。この場合の電子の熱運動エネルギーは 0.17 eV

である。この場合,高周波電界から電子ビームに供給さ

れるエネルギーが電子の熱運動エネルギーと同じ程変あ

。。 0.5 1.0 高間液中高巾(Volts>

第 9 図

たりでピークがなくなっている。すなわち共振現象の機

構をビームとプラズマの相互作用で説明することは,第

9図によって妥当であることを示すように思われる。

4 論 議

ここで実験の結果と理論的考察についての検討をする。

第1領域と第3領域については実験の結果も浬論とよく

一致し,理論もはっきりしているので議論する余地はな

、。ここで第1領域において電子温度を求める場合.電

子温度 Teは直流分の他に交流の基本波成分 ω,第2高

調波成分 2w,……などにも含まれているから,これら

各成分の 1つを計れば電子温度を求めることができる 3

次に第2領域の検討であるが,この部分の説明はビー

ムとプラズマの相互作用の他にプラズマ中の電子がプラ

ズマ振動数 α・.2=4πe2N6/m で自由振動していて, これ

に探針から強制振動 ωが加わって, ω=αeのとき共援

を起すとしても説明できる。またプラズマを誘電体とし

て扱っても説明されるであろう。しかしこれらの説明の

うちで,物理的イメ- :;>が比較的はっきIりしているのは

本論の解釈であると思う。しかしながら最後の断定は更

に今後の実験を要する。例えばプラズマに磁場をかけた

場合とかけない場合からも推測されるであろうし,また

熱陰極放電管ではなく,高周波放電を用いれば電極の影

響を全くなくすことができるであろう。以上第2領域の

ピークについては定性的な説明であるが定量的に論ずる

場合,例えばピークの高さと他のパラメーター,例えは

電子の衝突回数との関係などの問題を論ずる場合,更に

今後,進んだ実験をする必要がある。しかしながらし・ず

れの場合でもプラズマは高周波に対してプラズマ振動数

のとき特異点をもつことは明らかである。

5. 結 論

Page 8: プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法 · The electron density thus determined has little ambiguities and coincides with that given by Langmuir probe

146

プラズマ測定に用いられる Langmuir探針法におい

て直流電圧の上に小振幅の高周波電圧を重畳させると,

プラズマのインピーダンスの非線型性のために電子電流

が潜加する。そして高周波の周波数が電子のプラズマ振

動数に等しいとき,電子電流は著しく増加しピークを呈

する。すなわちプラズマ振動において電子の共振現象が

存在する。そしてこれらの現象を利用してプラズマの電

子密度及び電子温度を直接かっ精密に測定できる。すな

わち低い周波数の部分における電子電流の増加量から電

子温度が求められ,またピークの位置の周波数から電子

密度が決定される。この新しい測定法はプラズマ内の電

子の共鳴が主なる役割であるので ResonanceProbe法

と名づける。そしてこの新しい方法は高周波を重畳させ

るから,密度の高いプラズマよりむしろ電離層のような,

低密度プラズマの測定に適し,また適当な回路により電

子温度,電子密度の連続測定もできるから SpaceRe-

searchに役立つと思われる。

次に序論において述べたごとく,電離層を含む宇宙空

間の測定は個個の基礎量を別別に測定するのではなく,

できる限りすべての基礎量を総合的に計測することが必

要であり,その意味でも総合測定法の開発が必要である

ことをここに再び強調したい。今回はその関発の第一歩

として新しい測定法である“ResonanceProbe Method” について述べた。

謝 辞

当電波研究所次長青野雄一郎民に対して,この研究の

端緒を聞き,日頃の教示と激励を受けたことにつきここ

に厚く感謝の意を表する。

なお,この研究は電気通信研究所で行なったもので,

電気通信研究所次長一宮虎男氏の御教示及び研究の便宜

を与えられたことに対して,また研究主任高山一男氏の

研究に対する御教示と実験の細部にわたる御指導に対し

てさらに,池上英雄氏の理論に関する説明を与えられた

ことに対して深甚なる感謝の意を表する。また研究室の

他の方方の実験遂行上多くの便宜を与えられたことに対

して,また生産技術研究所の石井和重君の一部の実験の

助力に対して感謝の意を表する。

参 者女献

(1) G. Hok, N. W. Spencer, A. Reifman and W. G.

Dow;“Dyr即日icProbe Measurements in the Io-

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Ionosphere by Means of a Langmuir-Probe Tech-

nique ”, Rocket Exploration of the Upper Atmos-

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of Atmospheric and Terrestrial Physics, (Pergamon

Press Ltd. London) p. 240 (1954).

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A. Reifman and W. G. Dow.,“Dynamic Probe

Measurements in the Ionosphere ぺPhys.Rev.,

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(1956). J.R. Pierce and L.R. Walker; Phys. Rev.,

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付録

(1)プラズマの探針測定法の解説

探針測定法は Langmuir と Mott-Smith によって

1923年に発表されて以来,その短所を補うべく種種の改

良や考案がなされている。現在広く利用されている探針

測定法は次の 3種に分類される。

( i) Langmuir-Mott-Smith の探針法(電子補集

法)C12)

この探針法は本実験の基礎となっているから少しく述

べる。まず,プラズマの中に探針または探極(Probe)と

称する電極を掃入し,これと基準電極との聞に電圧を加

え,その電流電圧特性を測る。その探針特性の解析から,

電子密度,電子温度,プラズマの空間電位が決定されるe

この基準電極は例えば放電管ならば放電電極のいずれか

一方,また電離層ならば飛灘体の Bodyなどである。

第10図の回路を用いて,探針と陰極聞の電圧 V と探

針を流れる電流Iとの関係を計ると,第11図のような特

147

性曲線が得られる。電圧が低いときは,プラズマの電位

に対して探針電圧が負であるから,プラズマの中の陽イ

オンによる電流が探針に流れ込む。探針電圧を増してあ

る電圧を越えると,電流は滅りはじめる。そして電流が

Oになる。これより更に電圧を増すと電子による電流が

増し,陽イオンによる電流は減る。電圧が Vpになると,

曲線はまがる。これはプラズマに対して負の電位にある

探針に流れ込む電子電流が飽和に達するためであって

Vpはプラズマの電位を与えるc 飽和する点の電流らは

I kT6 is=SeNムI~v zπ聞

ここで Sは探針の表面積, eは電子の電荷, Neは電

子密度, hはポルツマン常数, Teは電子温度, m は電

子の質量である。次に傾斜の部分すなわち飽和する前の

電子電流 iは

I kT6 1 eV ¥ 1 eV ¥ '=SeN.. I P.xn( - ¥=i.exn( ¥ •v 2πm "'-"-!.-'¥ kT6) •"'-"-!.-'\ kT;)

両辺の対数をとると

logi=logi,-~ kT6

よって Semilog用紙に探針の特性曲線を描けば直線に

なり,その傾斜から電子温度が求まり,更に前述の飽和

する点の電流の値から電子密度が求められる。第11図に

おいてプラズマ電位 Vpより大きいときの電流が探針の

形状で異なるのは, Vpより大なるときは探針のまわり

に負の空間電荷層すなわち電子シース(Sheath)ができ

て,その形と大きさが探針の形状によって変化するから

である。

この Langmuir-Mott-Smithの探針法は比較的簡単で

あること,またプラズマ諸量がすべて求められるという

点で優れいる。がしかしこの方法の欠点は i)電子電流

飽和点の決定に暖昧性が多いこと, ii)正イオン電流の

電子電流に対する補正を必要とすること。この補正を正

確に行なわないと電子温度の決定に誤差が生ずる。

(ii) Schultz-Brawn の探針法〈イオン捕集法)C13)

(i)の Langmuir探針法において特性曲線の全部を測

ると大きな電子電流をとることになり,プラズマを乱す

,球 ことが大きい。それに対して大きな電流を||||

/_-:.--円筒 とらない正イオン飽和領域からプラズマ

ls ~一一一一一一一一?f乙ι一一平面の空間電位,イオン密度を求める方法がi Schultz-Brawnによって始められ研究され

! た。この測定法の長所はプラズマに大きな

Yr

第11悶探針特性曲線

←第10図! .暑

擾乱を与えないこと, したがって微弱なプ

ラズ7が測定できる可能性がある。欠点と

v しては i)空間電位の決定が困難な場合は

正確に密度が求まらない。 ii)測定値の取

扱いが複雑である。 iii)探針電圧のプラズ

Page 10: プラズマ内の電子密度及び電子温度の新しい測定法 · The electron density thus determined has little ambiguities and coincides with that given by Langmuir probe

148

7 の中への侵透電界を考慮する必要があること。

(iii) Johnson-Malter の複探針法〈ω

これは前の 2つの方法と違って, 2つの探針を用い

る。この複探針法はプラズマから流れ込む電流が正イオ

ン飽和電流値により制限されるため(ii)と同様 (i)の

Langmuir探針法に比し擾乱が少ないという利点と,空

間電位の変化にあまり影響されないという利点をもち,

電極のないプラズマや放電電流を切った後の過渡プラズ

マの測定に多く利用されている。

またこれは電子温度の決定にあまり電疏をとらずに比

較的正確に求められるという長所もあるが欠点としては

i)密度を求める場合イオンシースと称する空間電荷層

の大きさを求める必要があること。 ii)空間電位の決定

が本質的に不可能であることである。

以上は主として,それぞ、れの方法に対する長所短所で

あるが,採量I・測定においては採針の挿入ということがら

自体が擾乱を起すことはまぬがれない。また磁場がある

場合とか,負イオンが混在する場合の探針測定法はまだ

確立されていない。しかしながら,探針法は他の測定法

では非常に閤難な局部的測定が容易であるという大きな

利点をもっている。

(2)探針に流れる電子電流について

簡単のため平面探極について述べる。電子電流密度 1

電波研究所季報

はプラズマ中の電子の速度分布が Maxwell分布である

として次のように計算できる。探極の電位がプラズマの

空間電位に対して-V,すなわち電子に対して減速電界

のとき,その逆電界に打ちかつて探極表面に到達する電

子は次の式に示す'!,'"'以上の速度をもっているものであ

る。

tmv.,2孟eV

よって単位時間に探極の単位表面積に来る電子の数%

は,探極に向う速度が旬以上の電子の数に相当する。

しかるに, z方向く探極にと重直な方向とする〉における

速度分布は

・=.Iー竺-exo(-.!!!.生:_\・N.dv'V 2rrkT8 -"¥ 2kT6 J 0

で示され, neはこの速度分布のうち h が、(2efl[n2か

ら∞のものに等しい。よって

胃6=¥1 v.,d116 •2mv.,2言ev

.~~exp1ー eV2πm ¥ kT6

・ 1=n8e=N6e,/~exp1- eV) 。,y2πm "¥ kT6 J

なおこの結果は円筒探極,球探極でも全く同じである。