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エネルギー学から見た持続可能な発展 平成25年5月16日 筑波大学 システム情報系教授 産学リエゾン共同研究センター長 内山 洋司

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エネルギー学から見た持続可能な発展

平成25年5月16日

筑波大学

システム情報系教授

産学リエゾン共同研究センター長

内山 洋司

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発表内容

● エネルギー学の概要①はじめに ②エネルギー学とは ③システムモデルについて

● 社会のエネルギー消費と安全保障①日本のエネルギー事情 ②エネルギー安全保障 ③燃料価格の変動

● エネルギー・電力の経済性①経済活動と電力消費 ②電力供給力 ③発電プラントの経済性

● エネルギー技術について①社会のエネルギー技術 ②密度が高いエネルギー③再生可能エネルギーへの期待

● エネルギー供給について①エネルギー供給の基本要件 ②エネルギー供給のリスク問題

● まとめ

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「エネルギー学」について

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世界のエネルギーフロー(2010年: World Energy Outlook 2012)

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学際的な教育の必要性

理学数理科学、情報科学、化学、地学、地球科学、

気象学、宇宙科学、海洋科学など

工学機械、電気・電子、建築、土木など

システム工学、都市工学、原子力・宇宙工学、環境工学など

生物科学医学、生物学、生態学、人口動態学、疫学、

薬学、農・水産・畜産・林学など

社会科学経済学、政治学、地政学、法学、社会学、

心理学、倫理学、教育学など

学際的教育“・・・学”

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エネルギー学とは

持続可能な社会構築を目標に資源、技術、環境、社会経済の視点からエネルギーシステムを分析、予測、評価する。

世界、国、地方、企業などにおいて様々な立場の人が直面している現在ならびに将来のエネルギー問題を解決する。

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エネルギー学の役割

(1)エネルギー政策・計画の支援

・世界、国、自治体、企業等の政策や計画を支援

・エネルギー安全保障の確立

・環境影響の最小化(地球温暖化の抑制)

・安全かつ安心できるエネルギー供給システム

・経済的かつ産業発展に寄与する最適な供給システム

(2)エネルギー技術選択と科学技術政策の支援

・対象範囲(世界、国、地域・地方、企業)

・規模(集中型と分散型の技術・システム)

・時期(短期と長期)

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持続可能な発展【国連「環境と開発に関する世界委員会(1986)」の行動指針】

①“永続的で安定した生活物資の供給を通じて、世界の貧しい人々を絶対的貧困から救うこと。

②基本的な資源の減耗と環境の悪化を最小にすること”、“広義な視点から、経済成長のみでなく社会的・文化的な発展を含む。

③あらゆるレベルでの意思決定において経済学と生態学の統一を要求する。

【国連会議でのブラントラント女史(Brundland, Gro Harlem)の発言】

①持続可能性は、永続的で安定した生活物資の供給を通じて、世界の貧しい人々を絶対的貧困から救うことである。

②それは、基本的な資源の減耗と環境の悪化を最小にする。

③また広義な視点から、経済成長のみでなく社会的・文化的な発展を含む。

④あらゆるレベルでの意思決定において経済学と生態学の統一を要求する。

【「持続可能な発展」に共通した概念】

①「環境性」:自然環境、人工的環境および文化的環境の価値を強調する。

②「未来性」:短・中期的未来と長期的未来の双方に配慮する。

③「公平性」:社会における最も恵まれない人々のニーズを満たすこと(世代内公平性)と共に、将来の世代を公平に扱うこと(世代間公平性)を強調する。

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持続可能な発展に向けた活動

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「エネルギー学」と関連学問分野

分野・学問 自然科学 人文社会科学

基盤分野 理学 工学 環境科学 生物学・

医学

心理学 経済学 政治学

主な

基礎学問

数量科学(統計学、推計学)・情報科学(OR、システム分析)

物理学

化学

生物学

地理学

地学

資源工学機械工学

電気・電子工学

化学工学

材料工学

土木工学建築学

環境学

気象学

生態学

実験生物学

疫学

社会心理学 社会経済学

厚生経済学

政策科学

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システムとシステムモデル●システム

複数の要素が有機的に関係し合い、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体(広辞苑第4版)

●システムモデル(意思決定モデル)・KJ(川喜田二郎)法:定性的記述から問題をシステムとして構造化する方法。

・AHP(analytic hierarchy process;階層化分析法):多数の項目の比較を一対比較に分割して人間の直観による判断を調査し、それを階層的に合理的に整理する。

・計量経済モデル、時系列モデル:統計データの解析手法で回帰分析や因子分析を基礎にモデル化する。

・PERT(program evaluation and review technique),GERT,CPM(critical path method):工程管理や開発計画に用いられているネットワーク手法。

・信頼性工学手法:機器やプラントの故障・事故診断手法で、やフォールトトリー、イベントトリー、FMEA(failure mode event analysis)などがある。

・マルコフモデル、待ち行列モデル:未来の状況に対する意思決定である不確実性分析手法

・ポートフォリオ理論:金融分野で発達したリスク分析モデル。

・ライフサイクル評価:製品や技術の効率性、環境性、経済性を寿命期間である製造、利用、廃棄のプロセスから分析、評価する手法。

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OR学会:OR事典wikihttp://www.orsj.or.jp/

線形計画 待ち行列

非線形計画 待ち行列ネットワーク

組合せ最適化 待ち行列の応用

グラフ・ネットワーク 信頼性・保全性

スケジューリング 経営・経済性工学

計算幾何 マーケティング

動的・確率・多目的計画 生産・在庫・ロジスティクス

近似・知能・感覚的手法 企画・開発・プロジェクト・品質・ヒューマン

ゲーム理論 ファイナンス

探索理論 公共システム

確率と確率過程 都市システム

統計 システム分析・意思決定支援・特許

予測 AHP(階層的意思決定法)

シミュレーション DEA(包絡分析法)

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線形計画 《最適化問題》 《線形計画》 《単体法》 《楕円体法》 《内点法》 《半正定値計画》

非線形計画 《非線形計画》 《最適性条件》 《双対性理論》 《制約なし最適化》 《制約付き最適化》 《大域的最適化》 《相補性問題》 《大規模問題の分解法》 《凸解析》 《高速微分法》 《多項式最適化問題》

組合せ最適化 《整数計画》 《組合せ最適化問題》 《多面体理論》 《アルゴリズム》 《データ構造》 《計算の複雑さ》 《パーフェクトグラフ》 《グレブナー基底》

グラフ・ネットワーク 《グラフ・ネットワーク》 《グラフの連結度》 《最短路問題》 《最小木問題》 《巡回セールスマン問題》 《ネットワーク・フロー問題》 《マッチング問題》 《マトロイド》 《劣モジュラ最適化》 《離散凸解析》 《複雑ネットワーク》

スケジューリング 《スケジューリング理論》 《スケジューリング問題》 《スケジューリングアルゴリズム》

計算幾何 《凸多面体》 《アレンジメント》 《ボロノイ図》 《三角形分割》 《幾何グラフ》 《バケット法》 《双対変換》 《木》 《ランダマイゼーション》 《ロバスト化技術》 《計算幾何学》

動的・確率・多目的計画 《動的計画》 《両的計画》 《多段確率決定樹表(ツリーテーブル)》 《不変埋没原理》 《多目的計画》《最適停止》 《確率計画》

近似・知能・感覚的手法 《近似アルゴリズム(ヒューリスティックアルゴリズム)》 《メタヒューリスティクス》 《ファジイ理論》 《ソフトコンピューティング》 《ラフ集合》 《ファジィランダム変数》 《ニューラルネットワーク》 《制約充足問題》 《人工知能》 《論理プログラミング》 《サポート・ベクター・マシン》

ゲーム理論 《ゲーム理論》 《非協力ゲーム理論》 《戦略形ゲーム》 《展開形ゲーム》 《進化と学習のゲーム理論》 《協力ゲーム理論》 《交渉ゲーム》 《提携形ゲーム》 《ゲームと実験》 《ゲーム理論の応用》 《ゲームの解の計算》 《生物学における進化ゲーム理論》

確率と確率過程 《確率論》 《確率過程》 《マルコフ連鎖》 《ポアソン過程と出生死滅過程》 《ランダム・ウォークとブラウン運動》 《マルコフ決定過程》 《マルコフ連鎖の数値解法》

統計 《回帰分析》 《クラスター分析》 《判別関数》 《多次元尺度構成法》 《数量化法》 《多変量解析》

予測 《予測》 《指数平滑法》 《季節調整法》 《自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデル》 《カルマンフィルター》 《非集計行動モデル》 《生態学モデル》 《バス(Bass)モデル》 《複雑系による予測モデル》

シミュレーション 《シミュレーション》 《離散型シミュレーション》 《モンテカルロ法》 《一様乱数》 《非一様乱数》 《離散型シミュレーションの統計的側面》 《シミュレーションソフトウェア》 《シミュレーションモデルの検証》 《ペトリネット》

待ち行列 《待ち行列》 《待ち行列モデルの標準形》 《待ち行列の各種モデル》 《待ち行列モデルM/M/c》 《待ち行列における関係式》 《待ち行列モデル M/G/1》 《待ち行列に対するアルゴリズム的解法》 《待ち行列のバケーションサーバモデル》 《待ち行列における近似》 《待ち行列における希少事象の評価》 《待ち行列の極限モデル(流体近似と拡散近似)》

待ち行列ネットワーク 《待ち行列ネットワーク》 《待ち行列ネットワーク(ジャクソン型とその応用)》 《待ち行列ネットワーク(BCMP型とその応用)》 《積形式解ネットワークとなるための条件》 《待ち行列ネットワークの近似解析》 《待ち行列ネットワークの安定性》

待ち行列の応用 《待ち行列の通信への応用》 《待ち行列のコンピュータへの応用》 《待ち行列の生産システムへの応用》

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信頼性・保全性 《信頼性》 《寿命分布》 《保全性》 《予防保全》 《システムの安全性》 《故障データ解析》 《ベイズ信頼性》 《システムの信頼性》 《フォールトトレランス》 《ソフトウェア信頼性》

探索理論 《探索理論》 《目標存在分布の推定》 《センサーの探知論》 《探索モデルと探索の運動学》 《静止目標物の最適探索》 《移動目標物の最適探索》 《探索ゲーム》 《ランデブー探索》 《探索理論の応用と実例》

経営・経済性工学 《経営戦略》 《経営モデル》 《分権管理》 《経営意思決定》 《利益計画》 《経営分析》 《間接費管理》 《経済計算》 《投資案件の評価》 《財務管理》 《企業価値評価》

マーケティング 《マーケティング概説》 《マーケティングモデル》 《マーケティング・リサーチ》

生産・在庫・ロジスティクス 《生産管理》 《JIT生産システム》 《ラインバランシング》 《在庫管理》 《経済発注量モデル(EOQモデル)》 《動的ロットサイズ決定問題》 《ロットスケジューリング》 《ロジスティクス》 《運搬経路問題(配送計画問題, トラック配送問題, 配送問題, 輸送経路問題)》 《施設配置問題》 《ロジスティクスネットワーク設計問題》 《APS》

企画・開発・プロジェクト・品質・ヒューマン 《製品企画開発》 《研究開発》 《プロジェクト管理》 《総合的品質管理》《QC手法》 《人的資源管理》 《勤務スケジューリング》

ファイナンス 《モダンポートフォリオ理論(概論)》 《資産評価理論》 《企業財務》 《資産運用モデル》 《株価変動モデル》 《証券市場モデル》 《金利変動モデルと債券価格》 《金融派生証券(デリバティブ)(概論)》 《デリバティブ評価モデル》 《行動ファイナンス》 《証券化》 《倒産確率の推計》 《リアルオプション》 《CAPM》 《無裁定価格理論》

公共システム 《選挙制度》 《議員定数配分問題》 《投票理論》 《公共政策OR-I》 《公共政策OR-II》 《産業連関分析》 《エネルギー・環境政策》 《軍事モデル》

都市システム 《積分幾何学》 《都市構造分析》 《地理的最適化》 《ウォードロップの原理》 《地域間相互作用モデル》 《ODの調査》 《地理情報システム》

システム分析・意思決定支援・特許 《システム分析》 《リエンジニアリング》 《意思決定支援システム》 《効用関数》《データマイニング》 《過程決定計画図》 《発想法》 《モデル管理》 《アルゴリズム特許》 《モデリング》

AHP(階層的意思決定法) 《AHP》 《AHP一対比較法》 《AHP重要度算出法》 《AHP整合性尺度》 《拡張型AHP》 《AHP重要度評価法》 《グループAHP》 《ANP》 《AHPの諸問題》 《大規模AHP》 《AHPの誤差》 《AHPの理論的解釈》

DEA(包絡分析法) 《DEA(包絡分析法)》 《CCRモデル》 《BCCモデル》 《効率性》 《規模の収穫》 《SBMモデル》

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OR事典wiki:事例編

●適用分野一覧マーケティング・流通・需要予測 製品企画・研究開発 生産販売計画 調達・生産・在庫 物流・配送・輸送 検査・性能評価 設備計画・管理・保全 経営企画・経営戦略 財務・金融 組織・人事・教育 オフィス事務管理 情報通信ネットワーク 省資源・環境保全 政策・行政 医療・福祉 教育 交通 防災資源・環境 土地利用・地域開発 工学解析・設計 建築・土木 農業・食料社会 スポーツ 娯楽 その他

● 適用手法一覧図式化・モデル化 数理計画法 待ち行列 信頼性・取り替え 確率モデル一般 経済性工学 スケジューリング シミュレーション 予測手法 ヒューリスティックス データマイニング 意思決定法(含む AHP) ゲーム 分類・評価法(含む DEA) 統計手法 情報技術・システム化 その他

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システム数理モデル

●シミュレーション型

モデルの利用者が初期値を設定すれば、後はモデルが表現するシステム構造に従っていもづる式に結果が導かれる。

●最適化型

ある目的関数を設定して、それを最大化あるいは最小化するように、計画変数(または制御変数)を最適化のアルゴリズムによって決定して結果を導く。

●ゲーミングシミュレーション(マルチエージェントモデル)

複数の意思決定者を想定し、それぞれを最適化型や学習型の数理モデルで表現してモデル化する。

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エネルギーシステム

●エネルギー資源資源探査、資源採掘、資源評価

●エネルギー経済:資源経済、需給分析、技術経済、環境経済

●エネルギー技術採掘、輸送、貯蔵、転換、利用

●エネルギー環境土壌・水質・大気汚染、地球温暖化、放射線影響

●エネルギーリスクエネルギーセキュリティ、環境リスク、事故リスク

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エネルギーシステムのモデル群

(前提条件) (要素評価) (解析モデル) (総合評価)

経済社会予測 セキュリティ 解析モデル

燃料価格予測 経済性 政策判断

資源制約 波及効果 経済指標

市場予測 研究開発 多目的評価

技術予測 技術特性 経済外指標

立地環境制約 立地・環境 評価結果

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日本のエネルギー事情

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日本社会の発展

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日本のエネルギー・電力需要の推移

発電電力量

GDP

一次エネルギー総供給

CO2排出量

人口

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部門別最終エネルギー消費量の推移 日本の一次エネルギー供給の推移

最終エネルギー消費と一次エネルギー供給

近年、我が国の民生部門、運輸部門のエネルギー消費の伸びが顕著

であり、今後とも引き続き増加の見込み。

現在、エネルギーの5割弱を石油に依存している。

新エネ2.7%水力3.6%原子力10.8%天然ガス14.6%石炭21.7%

石油46.0%

資料:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」

(注)「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている。

0

5

10

15

20

25

65 70 75 80 85 90 95 00 04年度

(1018J)新エネルギー・地熱等水力原子力天然ガス石炭石油

(注)1..J(ジュール)=エネルギーの大きさを示す指標の一つで、1MJ=0.0258×10-3

原油換算kl 2.「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている。

資料:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、内閣府「国民経済計算年報」、(財)日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」

1.2倍

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

65 70 73 75 7980 85 90 95 00 04(年度)

(1018J)

産業部門約45%

民生部門約31%

運輸部門約24%第一次

石油危機第二次

石油危機

伸び(1990 → 2004年度)

1.4倍

1.0倍

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日本のエネルギー安全保障

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エネルギー安全保障概念の歴史的変遷

時期区分 エネルギー事情 解決課題 安全保障の概念

1961-72石油需要急増(先進国)

安価なエネルギー価格

輸入石油の安定確保

国内炭の安定供給

「安定供給」の一部ではあるものの未定義

1973-82石油危機

需要の伸び率が鈍化

緊急時体制の整備

長期的安定供給

輸入エネルギーの不意の供給削減・中断への対応

1983-88OPEC原油価格引き下げ

需要の増加(石油需要横這い)

長期的安定供給

エネルギーコスト削減

緊急時対応+長期的安定供給確保

1989-97湾岸危機

需要の増加(石油需要増)

地球環境問題

エネルギー資源制約

長期的安定供給+地球環境保全

1998-新興国の需要が急増

エネルギー価格の高騰

資源の抱え込み

エネルギー資源制約

地球環境問題

持続可能な発展

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過去の石油危機の概況

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石油危機の特性

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燃料価格の変動

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化石燃料輸入価格の推移

0

1

2

3

4

5

6

7

8

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005

単価

[円/M

cal]

石炭

原油

天然ガス

出所:日本貿易月表(1970.1-2006.3)日本関税協会

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最近の原油価格高騰(紛争無きオイルショック)

● 2007年から2008年にかけて2倍以上

(史上最高値の147ドル/バレル、現在、60~120ドルで推移)

● 世界的なインフレ現象はない。

石油資源の枯渇不安もない。

中東など産油国における紛争や戦争も起きていない。

テロ組織によるパイプラインの破壊行為もない。

● 原油の生産コストは“10~15ドル/バレル”程度

何故、原油価格は高騰しているのか

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価格高騰の真犯人は誰か?● 膨大な投機マネー:40を超える国富ファンドと中国やロシアなど新興スーパー・ヘッジファンドの投資活動(投機マネー規模、1京7000兆円と推定)

● アメリカの低金利政策:サブプライムローン危機以降、高リターンが期待される金融市場と先物取引へ投機マネーが流出

● 欧米資本(エクソン、シェル、BPなど)による影響力の低下:

原油シェアでみると10%程度

● 新興産油国(ロシア、イラン、サウジアラビア、中国など)の政府系石油会社:反米的な傾向が強く、需要と供給の価格メカニズムを平気で無視。アフリカの産油国に対し、資金援助やインフラ整備、そして時には軍需援助を行う見返りに油田開発の利権を次々に取得。

● 新興産油国の政治的メカニズム:世界の原油市場の半分は安価な価格、中にはバレル10ドル程度で取引。日本など一部の国がババを掴まされている。

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経済活動と電力消費

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経済成長と電力消費量

出典:Sustainable energy without hot air(2009)

日本

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10.1 10.6

12.2

14.916

17.418.4 18.7 世界, 19.1

14.7 15.3

19

21.5 22.323.6 24.3 24.5

25.4

0

5

10

15

20

25

30

1971 1973 1980 1990 1995 2000 2005 2006 2007

電力化率[

%]

電力化率の推移(最終エネルギー消費)

出典:(財)省エネルギーセンター「エネルルギー・経済統計要覧」2010年

日本

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電力供給力

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http://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/juyou/index.html

設備容量

供給力

最大負荷

予備力

適正予備率は10%程度

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供給予備率について

出典:需給検証委員会報告書(平成24年5月)

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予備率低下への対応策

段階 発動基準(予備率) 対応策

ステージ1 7%未満 需要家への節電呼びかけ

ステージ2 5%未満 供給遮断契約者への遮断

ステージ3 1%未満 計画停電(輪番停電)

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電力供給への原子力発電の役割

●原子力発電の設備容量(事故前)4,896万kW(日本の総設備容量28,650万kWの17%)

●原子力発電の発電電力量(事故前:年設備利用率80%で計算)3,420億kWh(日本の発電電力量の約35%)

●ベース(基幹)電源としての位置づけ・設備容量あたりの発電電力量が大きい

(高い年設備利用率)・・・供給力の確保が主でない。・可変費(燃料費)が安価である。・設備容量が大きい揚水発電(供給力が大)との組み合わせで安価な電力供給が確保できる。

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供給力内訳 2011年夏実績 原子力ゼロの想定

原子力発電 1,177 0

火力発電 12,511 13,783

水力発電 1,380 1,270

揚水発電 2,059 1,967

地熱・太陽光発電 30 65

融通 65 0

新電力への供給等 ▲82 ▲51

供給力 計 17,141 17,032

2012年夏の供給力の検証需給検証委員会報告書(平成24年5月)

電力最大負荷17,006万kWに対しての予備率+0.15%

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発電プラントの経済性

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発電プラントの建設単価原子力 石油火力 LNG複合 石炭火力 水力 太陽光 風力

発電出力[MW]

1,330 800 800 800 10 1 1

建設単価[万円/kW]

25 18 15.5 26 55 60 30

【スケール効果】一般に、プラント出力が大きくなるほど出力あたりの建設単価は安くなる。

ここで、

αはスケール係数である。表わされる。

【習熟効果】台数がn基のコストCnは次式で表わされる。

βnCCn 1C1は、1基目のコストでβはコスト低減係数( )である。また、σは習熟係数と呼ばれ、生産台数が2倍になったときのコスト削減率である。

σβ 2log

n1基とn2基のコストを、それぞれC1とC2とすると、 となる。β)/(/ 2121 nnCC

α)/)(()( 1212 PPPCPC1P )( 1PCはプラント1の出力規模 [kW]、 は出力 のプラントの建設単価 [万円/kW]、

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電力量当たりの建設費(=kWh当たりの資本費)は設備利用率に影響される

原子力 石油火力 LNG複合 石炭火力 水力 太陽光 風力

発電出力[MW] 1,330 800 800 800 10 1 1設備利用率[%] 80 75 75 75 55 15 20

設備容量1,000[MW]の原子力発電が1年間稼働して得られる発電量と同じ電気を他の電源で供給するのに

必要な設備容量と建設費は?

原子力 石油火力 LNG複合 石炭火力 水力 太陽光 風力

発電出力[MW] 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000設備利用率[%] 80 75 75 75 55 15 20必要な設備容量[MW] 1,000 1,067 1,067 1,067 1,455 5,333 4,000必要な建設費用[億円] 2,500 1,921 1,654 2,774 8,003 31,998 12,000等価な建設単価[万円/kW] 25 19 17 28 80 320 120

上の計算には、原子力と火力の燃料費や耐用年数の違いが考慮されていない。

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発電プラントの建設:OECD/NEA,2005

プラント 正味発電容量 [MWe]

熱効率[%] 建設費(除建中利子)

MNCU USD/kWe

フランス

微粉炭火力 900×1 47.1 1,096 1,393

流動床石炭 600×1 46.1 666 1,270

天然ガス複合 900×1 59.1 471 599

原子力(PWR) 1,590×1 36.1 2,163 1,556

日本

微粉炭火力 800×1 42.1 223,500 2,347

LNG複合発電 1,600 52 246,100 1,292

原子力(ABWR) 1,330×1 34.5 397,400 2,510

119¥/$

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発電プラントの発電コスト見積もり(OECD/NEA ,discount rate: 5%)

資本コスト

[$/MWh]運転保守[$/MWh]

燃料

[$/MWh]合計

[$/MWh]フランス

微粉炭火力 11.9 7.7 13.7 33.3

流動床石炭 10.9 6.9 14.0 31.7

天然ガス複合 6.0 5.2 28.0 39.2

原子力(PWR) 13.91 6.45 5.0 25.36

日本

微粉炭火力 20.6 8.8 20.0 49.5

LNG複合発電 14.5 4.9 32.8 52.1

原子力(ABWR) 21.8 14.5 11.8 48.0

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各種電源の発電コスト試算

5.2 5.46.1

10.50.7

10.6

0

2

4

6

8

10

12

原子力 石炭 LNG 石油 水力

発電

コス

ト [

円/kW

h]

7 9 9

46

73

24

12

21

0

10

20

30

40

50

60

70

80

バイ

オマ

廃棄

物発

風力

発電

太陽

光発

電発

電コ

スト

[円

/kW

h]

最良値

割引率:2%, 設備利用率:80%,45%(水力)

出典:電気事業連合会(2004) 出典:資源エネルギー庁(2001)

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主要電源の発電コスト2004 年試算/2010 年・2030 年モデルプラント

出典:エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会報告書(平成23年12月)

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コスト等検証委員会の検証ポイント● 原子力発電:事故が発生しない場合、発電コストは電源の中で最も安価であるが、事故

により相当程度の社会的な費用が発生する。

● 石炭やLNG:CO2 対策費用や燃料費上昇を加味すれば今まで以上にコスト高になるが、

社会的な費用を加味した原子力発電とのコスト比較において、ベース電源としての競争的な地位を保ちうる。

● 風力や地熱:立地制約や系統安定・増強といった課題はあるが、これらの課題を解決す

ることにより、条件がよい場所については、原子力、石炭などと対抗しうるコスト水準にあり、一定の役割を担う可能性がある。

● 太陽光:大量導入に当たっては、電力システム全体としての、系統安定化などの課題は

あるものの、世界市場の拡大に伴う量産効果によりコストの低下が見込まれ、石油火力よりもコスト面で優位となり、ピーク時の需給の逼迫の改善に資する電源として期待される。

● 省エネやコジェネ等の分散型電源:大規模集中電源と並びうる潜在力がある。また、需要

家から見た場合、電気料金の節約というメリットもある。小水力やバイオマス等は、地域資源の有効活用による新しいエネルギーシステムの構築に貢献しうる可能性がある。需要家や地域による主体的な選択によって新たなエネルギーミックスの一翼を担いうる。

* 原子力は、社会的な費用を含めても、他電源に比べ、相応のコスト優位性を有するケースも存在するという意見があった。一方、現在試算されている損害額5.8 兆円については、今後、廃炉や除染などの費用が大きく膨らむ可能性を指摘する意見もあった。

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エネルギー技術問題

● 社会のエネルギー技術

● 密度が高いエネルギー

● 再生可能エネルギーへの期待

● 原子力発電の今後は

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社会のエネルギー技術

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世界のエネルギーシステム

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エネルギー・動力変換

化石燃料 ウラン 重水素 太陽エネルギー

バイオマス トリウム トリチウム 地熱 潮汐

太陽熱 水力 風力 波力

海洋温度差 潮流

〔一次エネルギー〕 濃度差

〔二次エネルギー〕

化学反応 核分裂 核融合

直接利用 高温ガス 蒸気

ガスタービン・内燃機関 蒸気タービン

動力 タービン

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電気への変換

化学物質 化石燃料、 高温 熱 動力 太陽光

バイオマス プラズマ

電池 燃料電池 MHD 熱電素子 発電機 太陽電池

(交流・直流)

(直流) (直流)

電気

【光・放射線】 【動力・制御】 【熱】 【化学】 【磁気】

照明 モータ プロセスヒート 二次電池 メモリー

レーザ 家電製品 給湯 電解 情報機器

アーク 制御機器 冷暖房 電気浸透 通信機器

X線 厨房

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密度が高いエネルギー

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【問題】容器に入った質量m[kg]の水を5度だけ上昇させるために必要な熱と等価な仕事を、水を持ち上げたときの高さで計算せよ。

ただし、容器の熱容量と重量、水を運動させるときの抵抗は無視する。重力加速度は9.81[m/s2]とする。【答】 ①100m ②1,000m ③2,000m

5度上昇 =熱 位置エネルギー

高さ?

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【解答】

m[㎏]の水を5度だけ上昇させるために必要なエネルギーQは、

Q=4.1868m⊿T=4.1868×5m=20.934m[kJ]

(ただし、1[cal]=4.1868[J])これを重力仕事に変換し、高さHを求めると、

H=Q/(mg)=2,134 [メートル]となる。

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パワー(KW)とエネルギー(kWh) パワー(出力) 出力発生時間 エネルギー [kWh]

隕石の衝突(アリゾナクレータ)

地震(マグニチュード8)

大規模火山爆発

世界の化石燃料消費の平均出力

第二次大戦の空襲

最大級の原子力発電所1基

ボーイング 747 のエンジン 4 基

100m のダッシュ

1 馬力

洗濯機

CD プレーヤー

ハチドリの飛ぶ力

700 PW

1.6 PW

100 TW

10 TW

20 GW

1.36 GW

60 MW

1.3 kW

735 W

500 W

25 W

0.7 W

1 s

30 s

10 h

8,760 h

1 h

7,000 h

10 h

10 s

10 h

20 min

1 h

3 min

1.9×1011 (3)

1.3×1010 (4)

1.0×1012 (2)

8.8×1013 (1)

2.0×107 (6)

9.5×109 (5)

6.0×105

3.6×10-3

7.4

1.7×10-1

2.5×10-2

3.5×10-5

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風力、水力、水蒸気の出力密度

エネルギー源 比重量[kg/m3]

流体速度[m/s]

出力密度[kW/m2] (倍率)

風力(風速毎秒20m)

1.29 20 5.16 (1)

水力(有効落差100m)

1,000 44.3 43,500 (8,400)

水蒸気(超々臨界圧)

74 400 2,370,000 (460,000)

参考

太陽光 ― ― 0.947 (0.18)

地熱 ― ― 0.017 (0.003)

注)太陽光と地熱は、地表面積あたりの出力密度3

21 AvP

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発電のエネルギー源

原子力発電 火力発電

風力発電

水力発電

太陽光発電

バイオマス発電

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再生可能エネルギーの電力効率

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

水力発電 バイオマス 風力 太陽熱 太陽光 波力 海洋温度差

~90%

~35%~30%

~25%

~4%~3%

原子力33%

~15%

火力43~55%

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正味のエネルギー供給量(導入設備容量:1,000MW)

0 5000 10000 15000 20000 25000

太陽光(地上設置)

太陽光(屋根設置)

風力

水力

バイオマスガス化

石油

LNG複合

LNG汽力

石炭ガス化複合

微粉炭

原子力

Energy [GWh]

発電(使用端)

送配変電損失

間接損失

変換損失

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化学反応と核反応の違い

【化学反応】

● 炭素の燃焼反応

:405 [kJ/mol]=4.20 [eV/個]

● 水素の燃焼反応

:228 [kJ/mol]=2.37 [eV/個]

【核反応】 :E:エネルギー、m:質量、c:光速度(3×1010cm/s)

● 核融合反応(D-T反応)

● 核分裂反応(ウランの分裂)

][20043.2 1021

*23692

10

23592

2

2

1

1MeVnFFUnU A

ZAZ

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発電プラントの燃料消費量(発電出力100万kW、設備利用率80%)

114

148

239

0.003

0 100 200 300

原子力発電

LNG火力

石油火力

石炭火力

万トン

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各種電源のエネルギー密度・・・発電所敷地面積あたりの発電電力量・・・

対象 敷地面積あたりの電力密度[kWh/m2・年]

備考

家庭の電力需要 35 一戸建(敷地50坪、契約40A)

事務所の電力需要 400 8階建て(延床面積3,000m2)

バイオマス発電 2 ポプラプランテーション(6年サイクル)、発電効率34%

風力発電 21 米国テハチャピWF、C.F.20%

太陽光発電 24 家庭屋根(50坪、3kW,設備利用率15%)

水力発電 100 日本の水力発電所約100箇所の平均値

石炭火力 9,560 碧南石炭火力(210万kW)

原子力発電 12,400 柏崎刈羽(821.2万kW)

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再生可能エネルギーへの期待

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再生可能エネルギーの資源量膨大な太陽エネルギー

太陽表面の放射エネルギー(核融合反応)

1.1×1031[kJ]

地球へ降り注ぐ太陽エネルギー

5.46×1021[kJ]

70% 30%

地球表面へ入射 宇宙へ直接反射

3.82×1021[kJ] 1.64×1021[kJ]

47% 23% 0.3% 0.03%

地表で直接熱へ 海水や氷の潜熱と顕熱 風、波、海流 光合成

2.55×1021[kJ] 1.26×1021[kJ] 0.012×1021[kJ] 0.0013×1021[kJ]

【下記の計算をせよ】 [太陽の年平均放出エネルギー]=[地球に降り注ぐエネルギーの22億倍]

[地球に降り注ぐ太陽エネルギー]=[世界のエネルギー消費量の1.4万倍]

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再生可能エネルギーは、すべて太陽エネルギー?

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再生可能エネルギーの資源評価水力の理論・技術・経済的な資源(World Atlas, 1998)

地域

包蔵水力 [109kWh/年] 実際の発電量

(1997 年)[109kWh/年] 理論的 技術的 経済的

北米 5,817 1,510 912 697

中南米 7,533 2,868 1,199 519

アフリカ 3,294 1,822 809 48

中東 195 216 128 27

西欧 3,258 1,235 770 498

旧ソ連・東欧 3,892 2,163 1,416 291

アジア計画経済 6,511 2,159 1,302 226

他のアジア 9,155 1,762 245 146

太平洋先進国 1,134 211 184 129

合計 40,784 13,945 6,964 2,582

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再生可能エネルギーの長所

● エネルギー安定供給・ 自給率を高めれる・ 化石燃料のような資源制約はない・ 石油依存度の低下に資する石油代替エネルギー

● クリーンなエネルギー・大気汚染や温室効果ガスの排出が少ない・需要サイドでの環境改善・環境・省エネ意識の高揚

● 分散型エネルギーシステム・自立型エネルギー供給システムとしての防災対応・送電施設と送電損失の軽減

● 電力負荷の平準化・風力発電を除く発電技術はピークカットに貢献

● 新規産業・雇用創出・国内産業の育成と雇用確保・国際的な技術競争力

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太陽光発電の累積導入量(総出力:67,350MW[2011年])

24,700

12,5004,700

4,200

4,200

2,900

2,5001,5001,200

750

8,300ドイツ

イタリア

日本

アメリカ

スペイン

中国

フランス

ベルギー

オーストラリア

イギリス

その他

出典:EPIA

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風力発電の普及状況

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

累積

単年

単位:万kW

国名(順位) 累積導入規模(2009)[万kW] 累積導入規模(2009)[万kW]

アメリカ(1) 3,506 2,507

中国(2) 2,581 1,202

ドイツ(3) 2,578 2,390

スぺイン(4) 1,915 1,669

インド(5) 1,093 966

日本(13) 206 188

出典:2009年GWEC

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新エネルギーの導入実績

新エネルギー

2010年度(青字は実績)

石油換算(万kl)

設備規模(万kW)

太陽光発電 63 (3.5%) 254

風力発電 100 (5.5%) 245

廃棄物発電(バイオマス発電)

586 (32.2%) 450

バイオマス熱利用 308【*1】(16.9%) -

その他(*2) 764 (42.0%) -

総合計(一次エネルギー総供給比)

1,821(3%程度)

*1:輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料(50万kl)を含む。*2:「その他」には、「太陽熱利用」、「廃棄物熱利用」、「未利用エネルギー」、「黒液・廃材等」が含まれる。出典:総合資源エネルギー調査会、第22回新エネルギー部会資料(2008年2月1日)

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太陽電池生産の状況(国内)

出典:JPEAホームページ

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1,600,000

国内生産 輸入 国内出荷 輸出

2011年度実績

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出典:(一社)日本風力発電協会

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日本の一次エネルギー総供給の推移

0

5

10

15

20

25

30

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

石油

天然ガス

石炭

原子力

水力その他再生可能エネルギー

EJ

46.0%

21.4%

21.4%4.0%3.3%3.8%

【2011年】

総合エネルギー統計から作成

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再生可能エネルギー特措法(2012年7月)

77『再生可能エネルギーの固定価格買取制度について』(平成24年7月資源エネルギー庁資料より作成)

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再エネ特措法による都道府県別にみたPV普及量(出典:北海道経済産業局)

都道府県別認定出力 [kW]:11月末

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再エネ特措法による普及量

太陽光(10kW未満)

太陽光(10kW以上)

風力 水力(1,000kW未満)

地熱(15,000kW未満)

バイオマス 合計

全国 727,127 2,535,156 343,450 1,897 48 24,425 3,648,054

新潟県 4,729(0.65%)

8,345(0.33%)

20,000(5.8%)

0(0%)

0(0%)

25(0.10%)

33,099(0.91%)

単位:kW

期間:2012年7月~11月末

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再生可能エネルギーの課題

●地域性が高い資源

・資源賦存量が地域により大きく異なる

●エネルギー密度が低い

・「規模の経済」が得にくい(建設単価が高くなる)

●年間の稼働率が低い

・発電量が少ない(発電コストが高くなる)

●供給に変動がある

・安定供給が難しい(蓄電池や燃料貯蔵が必要)

●送電線へのアクセスが難しい

・送電コストが追加される(屋根置きPVを除く)

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地域性が高い資源(林地残材の分布)

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供給に変動がある

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(2013年3月末推計)

風力発電の普及量

(出典:北海道経済産業局)

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風力発電の導入要件

●風況が良い(年平均風速5m以上の安定した横風)

●土地が広く立地制約が無い

●資材搬入用道路がある

●既設送電線への接続が容易である

●環境影響評価が要求される(景観、騒音、高調波、渡り鳥、生態系など)

●地方自治体・住民の協力が得られる

●経済的である(15円/kWh以下)

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再生可能エネルギーの普及見通し

●エネルギーの理論的ポテンシャルは膨大

●経済的ポテンシャルになると限定される

●場所により立地制約と経済性の違いが大きい

●地域ごとに、導入可能量を正確に分析する必要がある

●将来、どの程度まで導入できるか、現時点での見通しは難しい。不確実性が大きく、過大評価は危険。

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原子力発電の今後について

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主要国の発電電力量に占める原子力発電の割合(2002年)

78.0

57.3

45.8 45.739.5 38.6

34.529.9

25.822.4 20.3

16.012.3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

フラ

ンス

ベル

ギー

スウ

ェー

デン

ウク

ライ

スイ

韓国

ドイ

スペ

イン

イギ

リス

アメ

リカ

ロシ

カナ

(%)

(出所)IAEA資料

日本

暮らしの中のエネルギー、p.19

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エネルギー・電力需要の動向● 大震災と円高による経済活動の低迷

回復するまで、産業部門のエネルギー需要は減少

● 円高の影響で産業活動が海外に移転

産業部門のエネルギー需要は減少

● 地球温暖化対策の目標達成

省エネルギーが進展

● 原発停止以降の節電対策

産業部門と民生部門で省電力化が進展

● エネルギー需要はマイナス成長

● 電力需要は横這い、またはマイナス成長

● 企業による供給設備の投資減退

● ゼロサム市場での分散型技術導入 89

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エネルギー政策の今後の課題● エネルギー政策の基本方針

エネルギー安全保障、原子力発電の位置づけ、地球温暖化対策

● エネルギーの安定供給の確保エネルギー安全保障を考えた化石燃料供給

● 放射性物質の除染と事故炉の安全な解体避難者の早期帰宅と地元関係者への補償事故炉からの燃料取り出しとその後の廃炉措置

● 災害に強いエネルギー供給基盤の整備危機管理と防災対策、電力融通システム、非常用電源、分散型エネルギー供給

● 省エネ型社会への転換省エネ製品・省エネ技術の普及、導入促進策、自治体など関連組織の役割

● 再生可能エネルギー等の導入拡大固定価格買取制度の適切な運用、系統連携に係る環境整備、コスト低減、地域特性に

応じた導入支援

● エネルギー産業の活動強化国内外で市場競争力があるエネルギー利用製品と供給技術の開発

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事故前の原子力発電の役割

原子力発電の役割

供給コストへの貢献地球温暖化対策自給率の向上

脱化石燃料 安価かつ安定したな電力コスト国内産業の育成

エコ製品の開発 製品コストの抑制

付加価値製品の国際競争力国の経済成長と雇用確保

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発電所認可出力(2012年2月)

水力 火力 原子力 再生可能エネ 合計

一般電気事業者

3,560(1,183カ所)

12,574(110カ所)

4,634(15カ所)

58.0 20,827

(東京電力) 898(163カ所)

4,040(25カ所)

1,731(3カ所)

25.5 6,672

(関西電力) 820(150カ所)

1,691(12カ所)

977(3カ所)

1.0 3,488

(中部電力) 522(183カ所)

2,397(11カ所)

362(1カ所)

3.1 3,284

その他電気事業者*

857(61カ所)

1,065(20カ所)

262(2カ所)

6.8 2,191

自家発 457(447カ所)

4,938(2,504カ所)

0 238.0 5,632

合計 4,874(1,691カ所)

18,577(2,634カ所)

4,896(17カ所)

302.8 28,650

92

単位:万kW

*卸電気事業者、特定電気事業者、特定規模電気事業者 出典:経産省資源エネ庁電力統計から作成

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原子力発電の供給能力

●原子力発電の電力量供給能力(事故前)

4,896万kWを年設備利用率80%で計算

3,431億kWh(日本の電力量の約35%)

●福島県の原子力発電設備能力

(福島第一)470万kW (福島第二)440万kW

日本全体の原子力設備の18.6%である

●定期検査後、関西電力大飯発電所以外の運転再開に目途が立っていない

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再生可能エネルギーで代替すると● 風力発電(1)福島原子力発電:910万kW相当・風力発電容量:4,853万kW, 4万8,530基(平均出力1MW/基、設備利用率15%)・設備費:14兆4,600億円(風力建設単価30万円/kW)・増分費用(20年間):約7兆円

(風力発電耐用年数20年、原子力発電コスト6円/kWh、割引率0%)(2)日本の原子力発電:4,896万kW相当・2億6,112万kW;26万530基(平均出力1MW/基、設備利用率15%)・増分費用(20年間) :約38兆円● 太陽光発電(1)福島原子力発電:910万kW相当・家庭屋根設置: 6,067万kW,;1,700万軒(1軒平均3.5kW, 年設備利用率12%)・設備費:36兆4,000億円(建設単価60万円/kW)・増分費用(20年間) :約29兆円

(PV耐用年数20年, 原子力発電コスト6円/kWh, 割引率0%)(2)日本の原子力発電:4,896万kW相当・PV設置容量:3億2,640万kW(年設備利用率12%)・増分費用(20年間) :約156兆円(PV建設単価60万円/kW)

注)原子力発電の発電コスト試算には、福島原子力発電所の原子力損害賠償法による費用負担と事故プラントの処理と廃炉費用を含めていない。また、太陽光発電と風力発電の大量導入に伴う系統安定化対策費や習熟効果は考慮していない。

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火力発電で代替すると● 代替電源

(1)短期的:既設火力発電設備の稼働率向上、ガスタービン発電の導入

(2)中期的:LNG複合発電と超々臨界圧石炭火力

(3)長期的:石炭ガス化複合発電やCCSの導入

● 費用負担(火力燃料費の変動が大きいために正確な計算が難しい)

火力と原子力との発電コスト差は小(火力:6.5円/kWh、原子力:6円/kWh)

(1)福島原子力発電:910万kW相当(638億kWh/年)

①燃料費年間負担額(概算)

約2,040億~2,550億円(燃料単価の差4~5円/kWh)

②炭素クレジット年間負担額(概算)・・・石炭:LNG=1:1

石炭火力:約200億円(0.9kgCO2/kWh,0.287億トン,0.07万円/CO2トン)

LNG複合発電:約110億円(0.5kgCO2/kWh,0.160億トン,0.07万円/CO2トン)

(2)日本全体の半分:2,440万kW(1,700億kWh/年)

①燃料費年間負担額(概算)

約6,800億~8,550億円(燃料単価の差4~5円/kWh)

②炭素クレジット年間負担額(概算)・・・石炭:LNG=1:1

石炭火力:約550億円(0.9kgCO2/kWh,0.780億トン,0.07万円/CO2トン)

LNG複合発電:約300億円(0.5kgCO2/kWh,0.430億トン,0.07万円/CO2トン)

2012年度火力燃料焚き増し費

用見積もり約3.5兆円

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原子力問題のまとめ

リスクの相対比較

安全・安心問題①事故は(運転ミス、地震・津波など)?②経年化の影響は?③一極集中の危険は?④放射性物質の汚染は?⑤管理体制への不信感?⑥核テロは?

必要性①エネルギー安全保障②地球温暖化③化石燃料の代替エネルギー④エネルギーの安定供給⑤長期で安定かつ安価な価格

100%のリスク削減は不可能

環境・安全保障・経済的リスクの軽減 事故・政治的リスクへの不安

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原子力発電の展望

● 安全性への対応

(1)原子力規制委員会への対応(活断層・耐震性・津波対策)

(2)信頼性をより高めた原子力発電技術

(3)原子力技術の海外輸出

● 運転停止中の原子力発電所の再稼働

(1)国民や企業の電気料金の負担軽減

(2)化石燃料購入による国富流出を防ぐ

● 長期的に見た原子力発電の役割

(1)ベース電源として電力の安定供給

(2)安価で安定した発電コスト

(3)エネルギー安全保障の確立

(4)地球温暖化対策

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まとめ

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エネルギー政策様々なリスク要因の影響を受ける

エネルギー政策

原油価格高騰

原子力事故

地球環境問題

円高

停電

燃料供給途絶

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エネルギー・電力需要の動向● 大震災と政局の混乱で経済活動が低迷

産業部門のエネルギー需要は横這い

● 円高などの影響による産業活動の海外展開

産業、運輸、業務部門のエネルギー需要は減少

● 政府が掲げた積極的な地球温暖化対策

省エネルギーによるエネルギー需要の減少

● 原発停止による節電対策

省電力化によって電力需要の伸びが低迷

● エネルギー需要は年率1~2%のマイナス成長

● 電力需要はほぼ横這い

● 企業による供給設備への投資減退

● ゼロサム市場での分散型技術導入 100

短期(5年程度)見通し

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社会のエネルギー消費

【増加要因】大量生産ロボット自動化大型化高速化情報化

加工食品快適な居住・社会空間

レジャーランド

【低減要因】少量生産

節約高効率化長寿命化

リサイクル・リユース建物の断熱化

人・物の移動削減再生可能エネルギー利用

【現状】トレード・オフ関係

環境の外部性

社会のエネルギー消費

【新政策】関係の改善(環境外部コストの内部化)

ライフサイクルコストによる評価ライフスタイルの変革

環境重視のシステム開発と技術革新

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中長期のエネルギー政策●電力需要⇒需要は横這い、新設電源の建設は国民のコスト負担増。

停止中の既設原子力発電を代替する新設電源の導入。

●原子力安全行政⇒原子力規制庁と原子力安全調査委員会の設立(国民の不安解消?)

●供給コストの最小化⇒火力発電と再生可能エネへの依存は電気料金の値上げになる(企業と国民がどこまで容認できるか?)

(1)定期検査中の原子力発電所の再稼働(大飯3・4号機の再稼働⇒残る発電所の再稼働は活断層評価とストレステストの結果、それに地元合意に依存(早期の運転開始が火力の代替燃料負担を軽減)

(2)原子力発電所の耐用年数を40年(技術的に60年間は可能)

⇒火力発電所(LNG複合発電と石炭火力)の導入量に影響する。

(3)核燃料サイクル(再処理、中間貯蔵、直接処分)の見直し

⇒プルトニウムの長期利用計画と高速増殖炉開発に影響する。

(4)固定価格買取制度による再生可能エネルギー導入

⇒国民負担と産業競争力を考えて、制度の継続期間を判断する。

●地球温暖化対策⇒政策的優先順位の低下。ポスト京都議定書の日本の削減目標の下方修正と、国内の削減計画の見直し。

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エネルギー問題の基本(まとめ)

●経済活動と生活の快適さはエネルギーによって支えられている。

●エネルギーは空気や水のようには得られない。

(採掘、輸送、貯蔵、変換など供給インフラ施設の整備が不可欠)

●現代社会は、化石燃料の大量消費で成り立っている。

●化石燃料には資源枯渇と環境問題がある。

●良質資源から消費する市場経済では、資源問題と環境問題は解決できない。新しい社会システムとライフスタイルが必要になる。

●原子力の核不拡散問題と保障措置は重要な課題になっている。

●「持続可能な発展」に向けて、世界が取り組む時期に来ている。

●日本の省エネルギー技術と環境技術を世界に普及していく仕組みづくりが求められている。

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省庁横断の総合エネルギー政策

●省エネ・環境重視のインフラ整備(国土交通省、経済産業省)

●都市のエネルギー・環境政策(環境省、国土交通省、経済産業省、地方自治体)

●地球規模のエネルギー・環境政策(環境省、外務省、農水省、国土交通省、経済産業省)

●エネルギー・環境関連税制の見直し(財務省、国土交通省、経済産業省)

●エネルギー教育(文部科学省、環境省、経済産業省)

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情勢変化に求められる国・企業の対応

持続可能な発展(新成長領域、

持続的価値の創出)

国・企業

エティオ・マンティーニ“Strategic Designモデル”を参考に作成

環境・資源制約

社会制約

国連・EU・日本など法規制」・条約の変化

グローバル視点からのCSR経営への要求温室効果ガスの排出削減

家電リサイクル法NGO/NPOの要求

市民による抗議活動やボイコット運動

公害・廃棄物問題

化学物質リスク

資源価格の高騰地球温暖化による気候変化

生態系の変化

鉱物資源の需給逼迫

【持続可能な発展】現世代のニーズを満たしながらも、将来世代の

可能性を脅かさない発展である。

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求められる人材学際研究 求められる

人材社会経済の変化

第Ⅰ期

(戦後~1960年代)

理学と工学の融合(理工学) I 型

高度経済成長(重厚長大型産業)

公害問題

安定したエネルギー供給

第Ⅱ期

(1970~2000年)

工学分野の融合

(総合工学)T 型

Π 型

経済の安定成長(ソフト産業)

多様な価値観

地域環境問題

石油危機

第Ⅲ期

(2000年以降)

総合工学と社会・人文科学との融合

(エネルギー学、環境学など)

X型

マトリックス型

ゼロ成長(不動産・金融バブルとその崩壊)から新成長

グローバル化

地球規模環境問題

持続可能な発展

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ご清聴ありがとうございました。

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