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キウイフルーツかいよう病の新系統 Psa3系統)について 平成28年6月

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キウイフルーツかいよう病の新系統(Psa3系統)について

平成28年6月

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目 次

Ⅰ キウイフルーツ及びキウイフルーツかいよう病について

Ⅱ 防除対策について

Ⅲ 経営支援対策について

‐1‐

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Ⅰ キウイフルーツ及びキウイフルーツかいよう病について

‐2‐

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Ⅰ‐1 キウイフルーツかいよう病

【系統及び発生状況】1 病原菌 Pseudomonas syringae pv. actinidiae Psa (細菌)2 本病原菌には、病原性の異なるPsa1~Psa5系統が存在している。

日本では、昭和59年に静岡県でPsa1系統、平成25年に佐賀県でPsa5系統の発生を確認しており、Psa3系統はこれまでに15都県で発生を確認している。※Psa3系統の発生国 : 中国、イタリア、フランス、ポルトガル、ニュージーランド、チリ、

スペイン、スイス、スロベニア、ギリシャ、韓国、日本

【特徴】(Psa1~3系統に共通)1 本病は、風雨や作業器具、接ぎ木等で伝染すると報告されている。2 生育に好適な温度は10~20℃程度であり、32℃以上の高温で多くの菌が死滅。3 せん定作業や風雨などにより葉や枝の傷口等から細菌が侵入し、葉の褐色斑点(写真1)、新梢の萎れ、

枝幹部からの菌液や樹液の漏出(写真2)などの被害が生じる。4 果実を食べても、人への影響はない。(Psa3系統)

既発生国では病原性が強い系統とされ、緑色果実品種より、黄色及び赤色果実品種に被害が大きく、適切な防除を講じないと樹木が枯死する場合があると報告されている。他のPsa系統同様に、葉の褐色斑点(写真3)、新梢の萎れ、枝幹部の細菌液の漏出などの被害が生じる。

(Psa5系統)病原性は、やや弱いと推察されている。

○ 細菌が、枝、新梢、葉、花蕾に感染して発生するキウイフルーツの病気。○ 日本国内では既にPsa1系統が発生していたが、平成26年5月に新たにPsa3系統の発生を確認。○ 既発生国ではPsa3系統は病原性が強い系統とされているが、Psa1系統との感染力の差等については現時点では

明確な知見はない。

【これまでの日本におけるPsa1系統の防除方法】1 感染した枝や葉は本病の伝染源となるため除去し、埋没又は焼却処分。また、病徴が著しい感染樹は伐採。2 傷口から感染するため、防風垣や防風ネットによる風対策を行い、せん定後は必ず傷口に癒合促進剤を塗布。3 薬剤防除は、細菌性病害に効果の高い銅水和剤や抗生物質(カスガマイシン、ストレプトマイシン等)を使用。

写真1 葉の病徴(Psa1系統)(褐色斑点と黄色ハロー)

写真2 枝幹部の病徴(褐変した細菌液)

写真3 葉の病徴(Psa3系統)(品種等によってはハローを生じる

場合もある)

【写真:愛媛県提供】 ‐3‐

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Ⅰ‐2 日本におけるキウイフルーツの生産状況

‐4‐【出典:農林水産省 平成27年耕地及び作付面積統計、平成26年産果樹生産出荷統計、平成26年生産農業所得統計及び2010年世界農林業センサス】

※赤字はPsa3の発生都県

○ キウイフルーツの平成26年産出額は全国で106億円となっており、果樹品目の中で第10位(果樹の産出額7,628億円)。

○ 栽培面積は全国で2,177 ha(平成27年)。上位3県は愛媛県、福岡県、和歌山県。

全国収穫量(平成26年)

31,600 (t)

全国産出額(平成26年)

106(億円)

平均単価(産出額/出荷量)

335(円/kg)

全国栽培農家数(平成22年)

8,784(⼾)

【果樹品目の産出額順位 (平成26年)】

果樹品⽬ 億円

1 りんご 1,470

2 みかん 1,394

3 ぶどう 1,098

4 ⽇本なし 788

5 もも 505

6 かき 409

7 おうとう 404

8 うめ 195

9 不知⽕(デコポン) 150

10 キウイフルーツ 106

11 くり 89

12 マンゴー 78

13 すもも 77

14 ⻄洋なし 75

15 いちじく 70

16 いよかん 63

【各都道府県の栽培面積順位(平成27年)】

都道府県 栽培面積(ha)

1 愛媛 414 2 福岡 305 3 和歌⼭ 152 4 神奈川 140 5 静岡 130 6 群⾺ 81 7 佐賀 77 8 栃⽊ 66 9 ⼭梨 56 10 ⾹川 55 10 千葉 49 12 茨城 46 13 ⼤分 46 13 愛知 39 15 広島 39 16 徳島 38 17 ⻑野 35 18 新潟 34 18 埼⽟ 33 20 ⼭⼝ 33 21 岐⾩ 28 22 福島 27 23 宮城 24 24 東京 23

都道府県 栽培面積(ha)

25 ⼭形 22 25 熊本 22 27 三重 21 28 ⽯川 19 28 岡⼭ 18 30 ⻑崎 17 31 奈良 13 32 京都 11 32 兵庫 11 34 ⿃取 8 34 ⿅児島 8 34 秋⽥ 7 37 富⼭ 6 38 島根 5 38 ⼤阪 4 38 宮崎 4 41 福井 3 42 ⾼知 3 43 岩⼿ 2 43 滋賀 2 45 ⻘森 1 46 北海道 -47 沖縄 -

全国 2,177

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Ⅰ‐3 日本で生産されるキウイフルーツの品種・生育過程

○ 主な栽培品種は果実が緑色のヘイワードであるが、黄色及び赤色の品種も栽培されている。○ 人工授粉には、国内自家採取の他、輸入花粉を利用。○ 授粉作業は、地域や品種により異なるが、緑色果実品種(ヘイワード)の場合、5月中旬~下旬。

時期 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

管理作業せん定

誘引

追肥

芽かき・誘引

季節風対策

人工授粉

摘蕾

追肥

摘果

摘心・追肥

摘心・誘引

元肥

収穫

せん定

休眠期 発芽期 新梢伸長期

開花期 果実充実期

果実肥大最盛期

台風対策

生育過程

落葉期

果実肥大期

  いつ液期(※)

※「いつ液期」とは、樹液が流動を始め、枝を切ると流れ出るようになる時期。

【一般的な耕種作業及び生育過程 (ヘイワード 香川県)】

栽 培品 種

緑色果実品種(ヘイワード等)

黄色果実品種(Hort16A等)

赤色果実品種(レインボーレッド等)

作 付比 率 86% 8% 3%

【主な栽培品種及び品種別作付面積比率(平成23年度)】

‐5‐

【写真:駒沢女子大学 西山氏提供】

※「農林水産省 特産果樹生産動態等調査」(各都道府県で1ha以上栽培されている品種の品種別栽培面積)により推計。

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○ 平成26年5月2日に愛媛県において国内で初めての発生が確認された。

○ これまで、15都県において発生が確認されている(平成28年6月10日時点)。

○ 平成28年も、早期発見・早期防除に資するため、春季発生調査を実施している。

○ 発生が確認された園地では、感染樹の伐採、発症部位の切除、薬剤散布等による防除を実施。

Ⅰ‐4 Psa3系統の発生及び対応状況

‐6‐

【発生園地で確認された症状】感染が確認された樹では、・葉の褐色斑点・新梢の萎れ・花蕾の褐変・枝幹部からの菌液の漏出

などの症状が認められた。

【発生園地における防除】各都県において、・感染樹等の伐採・発症部位の切除・薬剤散布

等による防除を実施している。

これまでにPsa3系統の発生が確認された都県

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Ⅱ 防除対策について

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Ⅱ‐1 Psa3の防除対策方針

○ 平成27年8月3日に開催した「第3回キウイフルーツかいよう病のPsa3系統に関する防除対策

専門家会議」において、今後の防除対策については、輸入検疫措置及び国内防除措置を組み合

わせた強化対策を講ずることとした。

○ 国内に輸入される苗・穂木・花粉の清浄性を確保するため、ニュージーランドやチリと同様に、

Psa3の発生国に対し、輸出する苗・穂木や花粉について、無発生園地で生産され、かつ、輸出前

に遺伝子診断で陰性となったもののみを輸出させる「輸出国検査措置」を求めること。

輸入検疫措置

① Psa3の無発生園地への侵入・まん延を防止するため、国内で生産・出荷される苗・穂木や花粉

について、検査により、感染がないことが確認されたもののみの国内移動を認める「指定種苗検

疫」の対象とすること。

国内防除措置

‐8‐

② 国内の果実生産における被害を軽減するため、 Psa3の発生状況や気象等を調査し、生産者等

に適期防除を促す発生予察事業の対象となる「指定有害動植物」に指定すること。

③ これまでの試験研究や海外調査等の結果を踏まえ、発生調査や防除対策等に関する「 Psa3に関する防除対策マニュアル(暫定版)」を作成すること。

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Ⅱ‐2 国内におけるPsa3の防除対策

○ Psa3の防除対策方針に基づき、国内防除措置の1つとして「キウイフルーツかいよう病のPsa3系統の防除対策マニュアル(暫定版)」を定めた(平成27年12月25日)。

○ 本マニュアルにより、 国内の生産園地におけるPsa3の早期発見・早期防除を実施する。

‐9‐

情報収集及び調査・検定体制の整備

① 生産者の情報収集 ② 疑似症状等の情報収集 ③都道府県における調査・検定体制の整備

発生調査の実施

① 早期発見・早期防除のため、生産者に対し、定期的な発生調査を指導

② 春季(概ね4月下旬から5月頃まで)に都道府県による調査を実施

防除の実施

○ 感染植物の発症部位の切除、農薬散布、植物の移動自粛、改植などを実施

無発生園地への侵入防止

○ 清浄な苗・穂木・花粉の使用、剪定器具や靴等の消毒

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Ⅱ‐3 キウイフルーツかいよう病の発生予察調査

○ Psa3の防除対策方針に基づき、「キウイフルーツかいよう病」を指定有害動植物に指定(平成28年4月1日付け植物防疫法施行規則の一部改正)し、発生予察調査の対象とした。

○ キウイフルーツかいよう病の発生予察調査実施基準を作成し、調査を開始。

○ 調査実施基準は必要に応じて見直すこともある。

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発生予察事業と指定有害動植物

○「発生予察事業」とは、有害動物又は有害植物の繁植、気象、農作物の生育等の状況を調査して、農作物の損害の発生を予察し、それに基づく情報を関係者に提供する事業

○発生予察事業の対象とする「指定有害動植物」は、国内における分布が局地的でなく、かつ、急激にまん延して

農作物に重大な損害を与える傾向がある有害動物又は有害植物(国(農林水産省)が最新の発生動向等を踏まえて指定)

発生予察調査実施基準の概要

○ 定点調査: 次のア~ウを調査し、今後の発生を予測。

ア 枝及び主幹部の樹液漏出の調査

5樹の枝及び主幹部において、病原菌を含む白色又は暗赤色の樹液の漏出の有無を調査。

イ 新梢の萎凋・枯死の調査

5樹の全新梢について、感染枝の有無を調査。

ウ 葉の褐色斑点の調査

新梢を任意に選び、基部から10葉における褐色斑点の有無から発病葉率を調査。

○ 巡回調査: 発病葉率を調査して、発生程度を判定。

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○ 国内の果実生産の安定のため、輸入検疫措置の強化対策として、Psa3の発生国に対し、輸出前にPsa3がないことを確認した穂木(苗)・花粉のみを輸出するように要求。

・ 平成28年11月23日まで : ニュージーランドやチリについては、輸出前の検査等の実施。

それ以外の発生国については、輸入時の検疫を強化。

・ 平成28年11月24日以降 : 全てのPsa3発生国については、「輸出国における検査措置」の実施。

○ 授粉用花粉の確保に向けた取組を実施。

○ Psa3発生国から輸入される穂木(苗)・花粉については、輸入時の検査抽出数量を従来の倍量にして検査(PCR検定を含む。)。

○ 穂木(苗) : Psa3の発生していない地域で生産されたもののみ

を輸出○ 花粉 : Psa3の発生していない園地で生産されたものであって、

精密検定により検出結果が陰性になったもののみを輸出

ニュージーランド(穂木、花粉)、チリ(花粉)

ニュージーランド・チリ以外のPsa3発生国

○ 産地の花粉採取専用園地の整備や開葯器等機器の導入等を支援(産地リスク軽減技術総合対策事業のうち園芸作物資材緊急安定確保対策事業(平成28年度新規:237百万円の内数))

○ 国内の果実生産地における授粉用花粉の確保を図るため、輸入の状況から必要に応じ、都道府県における過不足を調査し、都道府県内における需給調整を実施した上で、花粉が不足する場合には都道府県間で供給斡旋を実施。

授粉用花粉の確保に向けた取組

現在の輸入強化体制と輸出国検査措置

○ 穂木(苗) : Psa3の発生してい

ない地域で生産されたもののみを輸出

○ 花粉 : Psa3の発生していない

園地で生産されたものであって、精密検定により検出結果が陰性になったもののみを輸出

全てのPsa3発生国

平成28年11月24日以降の輸出国検査措置

Ⅱ‐4 輸入植物検疫の強化対策・授粉用花粉の確保

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Ⅲ 経営支援対策等について

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Ⅲ 経営支援対策等

○ Psa3の発生による被害を受けた果樹農家に対して、その経営の再建に向け、補助事業の活用や融資による支援を行う。

○ Psa3による樹体の損失を補填するため、平成27年度の加入から樹体共済を実施。

① 樹体の伐採・撤去、改植に必要な苗木代等の経費(キウイフルーツ等の主要落葉果樹等について、17万円/10aを定額助成)

改植等の支援を行う「果樹経営支援対策事業」において、自然災害と同様に位置づけ、同一品種の改植を支援対象とする。※すでに伐採済となっている園地も支援対象。

※改植に先立ち、産地協議会が同一品種等の罹病性品種への改植を行う場合のガイドライン(発生園地から一定の距離を置く等の措置)を作成

② 改植後の未収益期間の苗木の養成に必要な肥料代や農薬代等の経費

改植後の未収益期間(5年程度)のうち、改植初年度を除いた4年分の育成経費を支援。

○ 果樹棚や防風ネット等の整備に対し、スー

パーL資金、経営体育成強化資金、農業近代

化資金等の制度資金等の利用。

○ 償還の猶予について、関係金融機関に依頼。

改植・未収益期間に対する支援

制度資金の活用等

○ キウイフルーツの収穫共済に加え、平成27

年度の加入から樹体共済を実施。

果樹共済での対応

Psa3の発生を受け、果樹農業好循環形成総合対策事業(平成28年度予算額:56億円)により支援。

5.5万円/10a×改植の翌年から4年分=22万円/10a※改植完了後、4年分を一括で交付 -13-