ダビンチ的発想,－ 迅速な災害リカバリー(孤立化対策)のための、折り紙から伸びる橋の発想 －

広島大学大学院工学研究院社会基盤環境工学専攻

助教 有尾 一郎

広島夕学講座 ２０１０, 7/13,広島商工会議所にて

力学(楽)?

今 夕 の も く じ

予備知識 現代の橋の基本構造

第一章 オリガミ(折神?)と力学の話題

第二章 座屈(材料や構造の圧縮強さ)と構造の形による強さと

不安定挙動の話題

第三章 この座屈の原理を利用し，環境問題に適用できないか? ペットボトルがつぶれたら?? 2004年に発想!

第四章 この座屈原理を応用して橋も折畳んでは!!?2005年から，モバイルブリッジ研究開発

昨年佐用町の大雨被害 By natural disaster on 8.9.2009

昨年佐用町の大雨被害2

小千谷市浦柄 小千谷市浦柄

小千谷市木津国道17川西町

撮影有尾

2005年10月中越地震の被災現場 1/3

小千谷発電所国道117

栃尾市松尾国道290 栃尾市松尾国道290

小千谷市浦柄

中越地震の被災現場 2/3

撮影有尾

長岡市営スキー場

長岡市営スキー場 長岡市高町団地

長岡市高町団地坂道

中越地震の被災現場 3/3

撮影有尾

研究動機 ライフライン確保の応急橋の用途・目的の視点から

1) 橋を即時に、被災現場に架設させるには?

2) 本格的な応急橋による復旧までに、

緊急的な軽トラ程度のパイロット架設は?

->自主防災のためのツールは?

【常識/非常識】 まさか折り紙で橋は…!?

?

折り方で，かみ(材料)の曲がりにくさは…

力楽

橋の基本構造

けた橋

トラス系

アーチ系

ラーメン

斜張橋

吊橋

主ケーブル

緊張ケーブル

その他: 安定な複合系/連続径間

⇒もちろん，安定な構造で無ければならない

たわむことでok

いろいろな安定なトラス構造の形態

よく用いられるトラス

トラスの構造と名称

Moment

Mmax=PL/4=荷重が大きく，橋が長くなると，

負荷は大きくなる，(コストも高くなる)

実在するトラスの橋1

実在するトラス構造2

一方，ダビンチが構想した橋

ノルウェーで再現された

ダビンチが構想した「モバイルブリッジ」

片持ちはりの旋回可動橋

構造原理は斜張橋の構造に近い

第一章

• オリガミ(折神?)と力学の話題

ORIGAMI technology & sciences

3) この科学的スキルから他分野への応用と適用性

1) 世界が注目する，科学的視点でのORIGAMI テクノロジー

2) 古典的な折りスキルに基づく 現代 ORIGAMIと，古典的な構造問題との接点と共通点

おりがみ(origami)

Japanese origami’s skills in 1720

Origami スキル (1720-)

• オリガミによるアートは，科学の新しい分野になる.つまり，紙を折ることで形を作ることは，数学の新しい分野．

それは，MITとNASAも「オリガミ」に注目している．

・折り紙の実験と計算は25年前から試みられている．

・平面折り紙でさえ，幾何学的な数学的な解法はとても難しい．

最近のOrigami科学

第二章

• 力と折の関係

(座屈: 材料や構造の圧縮強さ)と構造の形による強さと不安定挙動の話題

【ところで，そもそも，工学では，長い物が曲がる/折れるとは?】

座屈(buckling)の話題

座屈の基礎編

形態変化の謎 例題

PEP

座屈現象真直ぐな棒

視点 : 左右対称性(共役元 / 共役類)

どっち選ぶのか?

⇒実は、曲げ剛性の小さい方向、この場合、左か右側にたわむ。

⇒単一である限り、決して左右同時にたわむことはない。

⇒ 自然はどちらかを選択する。

PPEPE

D2

実は、分岐点前後の対称性と漸近安定

P

x

対称面は無限に存在

対称面は1面のみ残る

PE

PEP

xU

nsta

b le

path

不安定対称分岐の場合

P

対称性が喪失する

P

Rigid bar

Linear spring x

x

Pinned

Stable path

ε

座屈の応用編

重ねた紙では

P PEPE

あるいは

2層からなる紙を両端から圧縮をかけると，2つのモードが存在する，対称性を考慮すると4つの変形モードが存在する．

積層状の紙シートの座屈(Giles W. Hunt)

実験モデル

積層紙の座屈(Giles W. Hunt)では

積層紙の座屈(Giles W. Hunt)では

ジグザグ模様

地質の巨視的な力学現象にもしゅう曲として座屈が現れる

Kink banding, common to many structures in nature and engineering, has several distinctive features.

座屈は、

ミクロなものからマクロなものを含めさまざまな自然の中に介在し、

科学的に大変意義深い。

薄肉円筒構造の座屈模様

Diamond pattern Echelon modeBy Harris et.al

Oblique modeBy Donnell

Wrickle patterns

阪神大震災(1995)のタンク構造物の被害

実際の構造物でも現れた模様

diamond pattern( Yoshimura )

oblique pattern

compression

torsion

薄肉円筒体の力学的特異性(座屈パターン)

experiments on thin polyestercylindrical shells of different lengths h under torsion.

radius R = 100 mm, thickness t = 0.247 mm,

Young's modulus E = 5.55 GPa, Poisson's ratio ν= 0.3

例題 Yamaki の実験に基づく古典円筒座屈実験研究との

検証

Condition of experimental specimens

t = 0.247 mm

R = 100 mm

h=22.9 and 160.8mmh

短い円筒の供試体 No.20-4 of Yamaki (1976)

トルク荷重

変位

Yamaki, N., Experiments on the post-buckling behaviour of circular cylindrical shells under torsion, IUTAM SYMPOSIUM 1976.

●上の輪郭はポストのつぶれる変形のパターンを示す。

PP

x

長い円筒の供試体 No.1000-4 of Yamaki (1976)

変位

Yamaki, N., Experiments on the post-buckling behaviour of circular cylindrical shells under torsion, IUTAM SYMPOSIUM 1976.

●長いシリンダは不安定に左右対称のつぶれることを示す。

トルク荷重

P

x

円筒の長さだけが異なるだけで波数が変化する!

実験結果から座屈模様の波数 n の違い

長い円筒短い円筒

b) Z=50a) Z=20(短い円筒) c) Z=100

d) Z=200 e) Z=500 f) Z=1000(長い円筒)

トルクと変形量の関係図

folding geom folding geom folding geom

folding geom folding geom

folding geom

折り紙による新しいデバイス・創造

This is wrinkle of twisting paper

この技術はIKAROSの展開方法にも

利用されている．イカロスはソーラーセイルを主推進として利用する世界初の惑星間航行宇宙機である。

大型膜面及び展開機構の開発

image

Ref. Guest et.al.(1994)

Ref. Nojima.T.(2000)

「円筒の立体折畳み方法を考案」

「折紙工学」と呼んでおられる

最近の折り紙による力学のアイデア

円筒ねじれ座屈のクレスリング折りに注目，これを座屈解析に応用する，

さらに展開構造としてひらめく，工学的価値を見出す，

折紙で対称性の破れの再現

(研究再現コストが安い)

• 実演

私の折紙の利用は

Yamaki (1976)

Kreslingパターン (2005)ポリエステル

Yamaki, N., Experiments on the post-buckling behaviour of circular cylindrical shells under torsion, IUTAM SYMPOSIUM 1976.

Giles W. Hunt & I.Ario, Twist buckling and foldable cylinder:An exercise in origami, Int. of Nonlinear Mechanics,40(6),833-843, 2005

クレスリング折りに注目

ねじりによって，幾何学的にどのように折畳まれるのか

Developmental plane

さらに，別の視点で，「目からうろこ」的な考察し発想する

この折り畳み機構を観察すると，局部的な座屈現象であることに気づくでしょう．

折れる(座屈)

コンパクトに収納

⇒トラス構造を形成できる，

⇒理にかなった伸縮可能なトラスになる

目からうろこが落ちる: 逆手の発想!!

Lift off

折れ線だけを抽出すると

発 想!

別の視点巨視的・地質学的類似性

San Andre fault in USA

⇒ ものが壊れる際には，共通の力学的応答が存在するので，

紹介した力学は，巨視的・微視的なレベルの両方に適用できる．

第三章

この座屈の原理を利用し，環境問題に適用できないか? ペットボトルがつぶれたら??

2004年に発想(2005年に東京リエゾンで発表)!

容器ゴミ類の散乱空き缶入れがすぐいっぱい…

容器ゴミの体積減量化へ

● 折り紙を板・シェルの古典的な力学問題に適用し，理想の変形パターンを見つけだし，それを製品のデザインに活用する．

思い出して，ロール紙をひねると，

発 想!

たばこの空き箱のひねり 雑巾絞り

製品に

ストレスを発散する

そのような変形パターンが発現するには何らかの理由がある。

適当なサイズの円筒容器をひねった座屈変形パターン

初期形状

最終フォールディング段階の形状

体積減少

共同研究: クラッシャブルペットボトルの開発(日本山村硝子株式会社)

容器の体積減量化

MFM

衝突・衝撃問題に折紙スキルを適用

・乗物などの衝突による衝撃力・地震による衝撃力・洋上構造物と船の衝突など

衝撃力の緩和技術

・重要構造物を守るが，一般に衝撃緩和材は再利用しにくい

Impact crushing

段階的に，衝撃エネルギー吸収が可能

想定される用途

・ビル，橋などの構造物の免震装置，・大型重要構造物の衝突に対する緩衝装置として，・ 船舶衝突回避のための洋上風力発電の支柱や橋脚のプロテクターなど，・車両系の衝突やヘリコプター墜落時の衝撃プロテクター

⇒耐衝撃緩和機能を持たせたスマート構造

要するに，衝突する前に手を突く，アイデア

手を突かない場合:体重60kgf胸への衝撃力650kgf手を事前に突きクラッシャブルクリアランスを確保するのがこの技術

転倒

折り畳む技術を応用(特許申請中)

発 想!

第四章

この座屈原理を応用して橋も折畳んでしまえ!!?

2005年から，モバイルブリッジ研究開発

今年度から下記共同研究契約体制

Examples of damage of infrastructure

By natural disaster on 8.9.2009

Damage of bridges by heavy & strong rain last summer in Japan

既往の応急組立橋の設計例

既存の応急組立橋の架設例

現状の応急橋の課題と問題点

大きなヤード必要

1) 橋の重量の問題2) 施工スピード「速く渡す」要素技術が不足3) 現場に左右される

建設機械を用いずに速く渡橋する架設技術が必要:

(a) 解析モデル

(b) Topological optimum analysis by E.Ramm et. al.

(a) Domain of design（20×80mesh, 6520 elements）

step1

step3

step4

step30Process(EAmax=10EA0, P/EA0=0.0005)

独自開発最適化構造プログラムを用いて，

（ｂ）Result of Shape optimization（step 30）

(a) Domain of design（20×80mesh, 6520 elements）

（ｃ） Mobile bridgeTM

Patent license 2006: structuresEntry No. 2006-037668，Open 2007-107369, Ichiro Ario,

Actually, it is possible to assemble a new bridge

アイデア!が生まれる

発 想!

積層材の座屈(Giles W. Hunt)では

ジグザグ模様

Experimental results under human loadings

Scissors structure

Load - displcement Load - strain

Experimental Stress Results by human loading

Scissors structure

Relationship between stress and location of pivots.

Stress Results of FEM by human loading

We have considered two cases; one is a cantilever model and the other one is simple beam state with human loading.

Demonstration of Mobile BridgeTM

Completed bridgeMoving a bridge

このプロトタイプの成功から，より大型化/実用化へ

Look at this URL page:

http://home.hiroshima-u.ac.jp/bridge2/

「モバイルブリッジ開発」研究会を発足

組立ヤード必要なし

アタッチメント化

障害物等

完成予想図 迅速な災害対策で本格的な復旧までの超軽量応急仮橋

モバイルブリッジのコンセプト橋が自走橋が自走--展開展開--収納システムを完備収納システムを完備

既存の橋の種類から類のない橋構造

橋は固定しなければ強くないという概念を，取り去って創造する．->固定概念からの脱却:観察・洞察力に基づいた

非常識的な発想創造力．

現存する橋として，一体として運べて迅速に伸縮できる橋は類のない橋，「モバイルブリッジ」

最期に

・この「モバイルブリッジ」の発想は広島大学オリジナル．産学共同研究進行中

広島大学学校工場の開発スタッフをはじめ，

共同研究先の施工技術総合研究所，協力関係者に感謝します．

おりがみ付

新しいものを発想!Look at this URL page:

http://home.hiroshima-u.ac.jp/bridge2/

Appendix 参考まで

• コラム 最近 「モバイル- ****」

という言葉をよく聞くようになった

KAIST(韓国産業総合大学)で国家戦略プロジェクト

KAIST-developed Mobile Harbor Program has attracted investments from Korea's two big-name industrial corporations, university authorities said on Monday (Oct. 19).KAIST has recently signed an agreement with Hyundai Wia Corp., a machine parts supplier, to collaborate in the researches of the mobile harbor programs and commercialization. Under the agreement, Hyundai WIA will invest a total of 7.5 billion won in the program for two years starting from January 2010.KAIST has also received a letter of intent from the Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering Co. on investing 20 billion won in the commercialization of the project.The Mobile Harbor Program is designed to create mobile units that can go out to the ship which are anchored off-shore and unload the cargo and take it to where it is needed. It is aimed at overcoming the shortcomings of the current maritime container transportation systems. Container ships are getting larger and larger, requiring deep waters, large and complex loading and unloading systems, and major investments in facilities.Prof. Byung-Man Kwak, leader of the program's R&D team, said: "With the investment from two global industrial companies, the program has gained a crucial momentum. The development of the program is expected to help Korea to become a global leader in marine transportation and maintain its supremacy in shipbuilding." KAIST URLより出典

「モバイル・ハーバー(Mobile harbor)」

Proceeding of CJKより

【参考】モバイルハーバー構想