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コンクリートとは?
• 骨材 : 砂と石(細骨材と粗骨材)
• 接着剤 : セメント 石灰石を焼成
これらを練混ぜて自然硬化させる
↓
コンクリート・コンクリートは様々な材料を混ぜ合わせることができる → 工業材料としては異質
・誰が作っても(一応は)できる → 自由度の多さ
セメント中のカルシウム-シリカ系化合物と反応して↓
CH(Ca(OH)2) と CSH(3CaO・2SiO2・3H2O)
なる化合物を作る↓
セメント硬化体
コンクリートはどのような材料か?
水酸化カルシウム:水溶性 カルシウムシリケート化合物:難溶性
・セメント硬化体はポーラス・骨材との接着はあまりよくない
骨材とセメントの間には遷移帯と呼ばれる粗な領域
コンクリートの劣化
初期の劣化
水和固化時の発熱と冷却における各材料の膨張収縮比の差→ ひび割れの発生
気中構造物
水中構造物
① 乾燥収縮ひび割れ② 炭酸化② 鉄筋腐食
① 表面劣化② 炭酸化(溶脱の抑制)③ 鉄筋腐食④ ひび割れ
水分の蒸散(乾燥)CO2の侵入飛来塩分(Cl-)の浸透
Ca2+の溶脱CO3
-の浸透Cl-の浸透SO4
2-の浸透
中長期的な劣化
長期的な劣化
カルシウム溶脱:カルシウム成分を地下水に溶出させポーラスに変化する →放射性廃棄物処分場
本研究の目的
・細孔構造や骨材との界面・力学的性質と空隙・化学変化のモデル化
コンクリートの耐久性能を精密に評価・予測する
既存の実験では観察不可能であった
コンクリートの空隙構造・力学的性質・物質移行経路
コンクリート内細孔構造・ひび割れを捉える
モルタル(メゾモデル)
×10-3m
コンクリート(マクロモデル)
m
劣化した領域
この部分の何がどのように変化したか?
力学性能と拡散性能との関係は?
コンクリートは階層構造をもつ
セメント硬化体(ミクロモデル)
×10-6m
マルチスケールアナリシスが必要
コンクリートの内部構造を見る
1.輪切りにして観察する
2.非破壊で観察する
微小厚さを研磨除去し,平滑面を出し,表面観察を行う.この繰り返し
問題点:像からどうやって空隙を判別するか?微小研磨や観察面を精度良くそろえられるか?
試験体にCT撮影を施す
問題点:線源に何を使うか試験体の大きさは?そもそもそのような装置はどこに
X線CT撮影 − SPring-8
X線CT撮影SPring-8で実験を行うことの利点1.最適なエネルギーを選択できる2.高分解能である
試料の撮影
0°〜180°まで,1500枚の透過像(レントゲン写真)を撮影し,そこから断面図を再構成する
・視野:500um× 500um →1000×1000ピクセル 0.5um/1ピクセル・最小径1.5umの細孔まで識別可能 (3ピクセル分)
W/C40%モルタル W/C60%モルタルW/C50%モルタル
X線CT撮影例
試料:電気化学的促進試験で作成
変質モルタルW/C 50%変質モルタルW/C 40%
1.新しい解析手法複雑境界条件や移流を考慮FEMや差分法でない解析法
2.劣化状態把握の高精度化劣化状態に応じた物性の把握X線CTによる空隙の把握(従来法は1cm以上の幅)
コンクリート内細孔構造・ひび割れを扱う
モルタルとしての拡散係数
ペーストとしての拡散係数
モルタル
(メゾモデル)
セメントペースト(ミクロモデル)
コンクリート(マクロモデル)
溶脱した領域
この部分の拡散係数は?
溶脱・変化の状況
溶脱・変化の状況
コンクリートの劣化・溶脱の解析
細孔中のイオンの移動から正確な拡散係数を求める
格子ボルツマン法(LBM)+X線CT+マルチスケール解析による
耐久設計・耐久性予測システム
・物質の移行解析:格子ボルツマン法
・真の拡散係数:SPring-8 のX線CT像からの細孔モデル
X線CTの成果の活用
イオンの浸透度合いの定量評価
LBM → 複雑境界中の拡散解析を可能に
コンクリート中の物質移動解析には拡散係数など物性値が必要↑これまでは,マクロな実験より定めた(誤差が多い)
マイクロ構造中の拡散を解きイオンの浸透度合いを評価
500ピクセル分 500立方立体格子 空隙中の拡散 拡散係数の近似
0
5
10
15
20
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25
溶脱
標準養生
Ca濃
度 [mmol/l]
深さ方向 [mm]
その例として 溶脱によるセメント硬化体の変化を考察
解析結果 ー イオンの浸透しやすさ
0
5
10
15
20
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25
溶脱
標準養生
Ca濃度 [mmol/l]
深さ方向 [mm]
0
5
10
15
20
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25
溶脱
標準養生
Ca濃度
[mmol/l
]
深さ方向 [mm]
普通ポルトランドセメント 低熱ポルトランドセメント+フライアッシュ
普通ポルトランドセメント;溶脱によって,浸透しやすくなる
低熱ポルトランドセメント+フライアッシュ;溶脱での変化は少ない,
もともと浸透しやすさは大きい
更なる試み ー 化学成分の空間分布
X線吸収係数による画素数のヒストグラム(縦軸対数表示)
この部分の違いは?
セメントの硬化過程で成分が変わる
空隙
青黒 緑 白
X線吸収係数
画素数
ケイ素成分やエトリンガイドなど
CSH(I,II) 未水和セメント
CH
空隙
青黒 緑 赤 白
画素
数
これらの構成物割合の差がピークとなって現れるのでは?
セメントペースト中の水和物分布(推定)
材齢28日材齢2日
・未水和セメントと思われる領域が材齢経過で減少
・CHは未水和セメントに接して存在
しきい値を設け物質ごとに着色表示
S・エトリンガイドなど: 青CSH: 緑CH: 赤
未水和セメント: 白
まとめ
SPring-8においてコンクリートのX線CT観察を行った.
1.非破壊でのモルタル内部の観察が可能
2.3次元での内部構造の検討が可能
3.CT像より空隙の径のヒストグラムの分布がわかる
4.空隙には連続するものと独立したもの(気泡状)のものが混在
→ X線CT観察のみが得られる多くの有用な知見
応用として
5.CT像より,拡散係数などの物性値を算出できる
6.高精度なコンクリート劣化の評価・予測に有益
7.成分分析にも応用可能の可能性が