41
主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 1 (1)中東・アフリカ経済 中東・アフリカ地域は、ユーラシア大陸の一部と広 大なアフリカ大陸に位置し、人口 12 4,453 万人 90 名目 GDP 2 8,630 億ドル 91 に上る広大な経済圏を 形成している。域内の所得水準をみると、国によりそ の水準は異なり、幅広い分布となっている(第 1-2-5-1 図)。域内の人口増加率は高く、各国ともおおむね年 23%程度で増加し続けている。 ①マクロ経済概況 中東・アフリカ経済 92 は、世界経済危機の影響を 受けて 2009 年に大幅に減速したものの、プラス成長 を維持した。中東・北アフリカ諸国の実質 GDP 成長 率は、20032008 年までの間に前年比 5%超の水準を 維持してきたが、石油価格の下落や直接投資の急減を 背景に、2009 年は前年比 2.4%と減速した。こうした 傾向はサブサハラ・アフリカ諸国も同様であり、2009 年の実質 GDP 成長率は同 2.1%の伸びにとどまった。 しかしながら、これは、世界経済が大幅に減速するな かにあって底堅い動きであった。中東アフリカ諸国の 一部は、近年の資源価格の高騰を背景に財政収支を改 善させ、大規模な景気対策を講じることができたこと などがその背景となっている。2010 年には、両地域 とも前年比 4%台の成長にまで回復する見込みである (第 1-2-5-2 図)。 (a)中東諸国のマクロ経済動向 中東諸国のうち、GCC 諸国の GDP 成長率を国別に 5 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済 第 1-2-5-1 表 中東アフリカ諸国の主な経済指標 国名 2009 年の 名目 GDP (十億ドル) 2009 年の 一人当たり 名目 GDP(ドル) 1 人当たり GDP 順位 (世界) 2010 年の 人口 (百万人) 2050 年の 人口予測 (百万人) 人口 増加率 (%) 中東産油諸国 サウジアラビア 369.7 14,486 42 26.2 43.7 2.61 UAE 230.0 46,857 8 4.7 8.3 4.24 クウェート 111.3 31,482 24 3.1 5.2 3.55 カタール 83.9 68,872 3 1.5 2.3 10.45 オマーン 53.4 18,013 37 2.9 4.9 2.13 バーレーン 20.2 19,455 34 0.8 1.3 2.43 アフリカ諸国 南アフリカ 287.2 5,824 74 50.5 56.8 1.32 エジプト 188.0 2,450 115 84.5 129.5 2.08 ナイジェリア 173.4 1,142 134 158.3 289.1 2.67 アルジェリア 140.8 4,027 92 35.4 49.6 1.67 モロッコ 90.8 2,865 107 32.4 42.6 1.30 アンゴラ 68.8 3,972 93 19.0 42.3 3.22 リビア 60.4 9,529 54 6.5 9.8 2.27 スーダン 54.7 1,398 127 43.2 75.9 2.40 チュニジア 40.2 3,852 96 10.4 12.7 1.04 ケニア 32.7 912 145 40.9 85.4 2.96 エチオピア 32.3 390 173 85.0 173.8 2.93 コートジボワール 22.5 1,052 139 21.6 43.4 2.49 タンザニア 22.3 551 159 45.0 109.5 3.13 カメルーン 22.2 1,115 135 20.0 36.7 2.58 ウガンダ 15.7 474 164 33.8 91.3 3.67 ガーナ 15.5 671 154 24.3 45.2 2.47 ザンビア 13.0 1,086 136 13.3 29.0 2.66 セネガル 12.7 994 142 12.9 26.1 2.95 赤道ギニア 12.2 9,580 53 0.7 1.4 3.05 ボツワナ 11.6 6,407 70 2.0 2.8 1.55 備考:1.GDP は IMF による見込み値を含む。 2.人口は国連による予測。 3.人口増加率は、2000 年から 2010 年までの平均伸び率。 資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2010」、国連「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。 90 2009 年。国連による見通し。国連「World Population ProspectsThe 2008 Revision」。 91 2009 年。IMFWorld Economic Outlook Database April 2010」。 92 IMF のデータでは、中東・北アフリカ諸国はアルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェー ト、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首 長国連邦、イエメンの 20 カ国で構成されている。また、サブサハラ・アフリカ諸国は計 47 カ国となっている。本稿では、特に断りの ない限り、IMF の統計データにおいてはこの定義に従っている。

中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 113

第1章

(1)中東・アフリカ経済中東・アフリカ地域は、ユーラシア大陸の一部と広大なアフリカ大陸に位置し、人口12億4,453万人 90、名目GDPは2兆8,630億ドル 91に上る広大な経済圏を形成している。域内の所得水準をみると、国によりその水準は異なり、幅広い分布となっている(第1-2-5-1

図)。域内の人口増加率は高く、各国ともおおむね年率2~3%程度で増加し続けている。

①マクロ経済概況中東・アフリカ経済 92は、世界経済危機の影響を受けて2009年に大幅に減速したものの、プラス成長を維持した。中東・北アフリカ諸国の実質GDP成長率は、2003~2008年までの間に前年比5%超の水準を

維持してきたが、石油価格の下落や直接投資の急減を背景に、2009年は前年比2.4%と減速した。こうした傾向はサブサハラ・アフリカ諸国も同様であり、2009

年の実質GDP成長率は同2.1%の伸びにとどまった。しかしながら、これは、世界経済が大幅に減速するなかにあって底堅い動きであった。中東アフリカ諸国の一部は、近年の資源価格の高騰を背景に財政収支を改善させ、大規模な景気対策を講じることができたことなどがその背景となっている。2010年には、両地域とも前年比4%台の成長にまで回復する見込みである(第1-2-5-2図)。

(a)中東諸国のマクロ経済動向中東諸国のうち、GCC諸国のGDP成長率を国別に

5 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済

第1-2-5-1表 中東アフリカ諸国の主な経済指標

国名2009年の名目GDP(十億ドル)

2009年の一人当たり

名目GDP(ドル)

1人当たりGDP順位(世界)

2010年の人口

(百万人)

2050年の人口予測(百万人)

人口増加率(%)

中東産油諸国

サウジアラビア 369.7 14,486 42 26.2 43.7 2.61UAE 230.0 46,857 8 4.7 8.3 4.24クウェート 111.3 31,482 24 3.1 5.2 3.55カタール 83.9 68,872 3 1.5 2.3 10.45オマーン 53.4 18,013 37 2.9 4.9 2.13バーレーン 20.2 19,455 34 0.8 1.3 2.43

アフリカ諸国

南アフリカ 287.2 5,824 74 50.5 56.8 1.32エジプト 188.0 2,450 115 84.5 129.5 2.08ナイジェリア 173.4 1,142 134 158.3 289.1 2.67アルジェリア 140.8 4,027 92 35.4 49.6 1.67モロッコ 90.8 2,865 107 32.4 42.6 1.30アンゴラ 68.8 3,972 93 19.0 42.3 3.22リビア 60.4 9,529 54 6.5 9.8 2.27スーダン 54.7 1,398 127 43.2 75.9 2.40チュニジア 40.2 3,852 96 10.4 12.7 1.04ケニア 32.7 912 145 40.9 85.4 2.96エチオピア 32.3 390 173 85.0 173.8 2.93コートジボワール 22.5 1,052 139 21.6 43.4 2.49タンザニア 22.3 551 159 45.0 109.5 3.13カメルーン 22.2 1,115 135 20.0 36.7 2.58ウガンダ 15.7 474 164 33.8 91.3 3.67ガーナ 15.5 671 154 24.3 45.2 2.47ザンビア 13.0 1,086 136 13.3 29.0 2.66セネガル 12.7 994 142 12.9 26.1 2.95赤道ギニア 12.2 9,580 53 0.7 1.4 3.05ボツワナ 11.6 6,407 70 2.0 2.8 1.55

備考:1.GDPはIMFによる見込み値を含む。2.人口は国連による予測。3.人口増加率は、2000年から2010年までの平均伸び率。

資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2010」、国連「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

90 2009年。国連による見通し。国連「World Population Prospects:The 2008 Revision」。91 2009年。IMF「World Economic Outlook Database April 2010」。92 IMFのデータでは、中東・北アフリカ諸国はアルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェー

ト、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメンの20カ国で構成されている。また、サブサハラ・アフリカ諸国は計47カ国となっている。本稿では、特に断りのない限り、IMFの統計データにおいてはこの定義に従っている。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade114

第 1章 主要国・地域の現状と今後

みると、液化天然ガス(LNG)の生産が倍増したカタールを除き大幅な低下がみられており、クウェートとUAEでは、2009年はマイナス成長となった(第1-2-

5-3図)。これら石油輸出国の経済成長の減速は、OPECの価格安定化努力による石油減産の影響を受けている。また、UAEでは、世界的な貿易・金融市場の縮小、不動産価格の下落により多大な影響を受けた。こうしたなかで、中東諸国は様々な経済危機対策が講じられた。例えば、金融セクターに対しては、中央銀行により金融機関に対する資本注入や貸付金による資金供給枠の設定などの流動性供給に向けた支援策が講じられ、クウェートやサウジアラビア、UAEでは、商業銀行の預金に対する保証の付与も行われた。また、中東諸国では、経済・金融の安定化にSWFが重要な役割を果たした(第1-2-5-4図)。例えば、クウェート投資庁(KIA)は、海外資産の一部を処分して資金を国内銀行に預金することで流動性の供給に貢献したほか、クウェートとオマーンではSWFの資金が株式市場に投資を行うファンドの設立に向けられた。さらに、カタール投資庁とKIAは、金融機関の株式の購入を通して市場の信頼回復に努めた 93。さらに、サウジアラビアやUAEは財政出動による

景気下支えも行い、特にサウジアラビアは、G20諸国のなかで最大規模の景気対策を実施し、5年間で総額4,000億ドルの投資計画を公表した。原油価格の高騰

を背景に財政収支が大幅な黒字になっていたことが背景としてあげられる 94。石油輸出国の多くは、景気減速下で歳入が落ち込みつつも、経済危機対策としての財政出動が可能な状況にあり、経済危機に直面した後も、石油化学関連、住宅建設、電気、上下水道、交通、医療などの分野で大規模な開発プロジェクトが進められている。後述の通り、2010年3月末時点で官民合わせて総額2兆ドルを超える投資プロジェクトが計画・進行しており、こうした政府による財政支出が景気を強く支えたと考えられる 95。直近では、最近の世界的な資金調達環境の改善や一次産品価格の上昇が経済活動の回復に寄与している。ただし、財政支出拡大や景気悪化の影響により、2009

第1-2-5-4図 �SWFの運用資産額の地域別シェア(2009年、単位:%)

中東42.6

アジア35.5

欧州17.6

アメリカ2.4 その他1.8

備考:2009年末時点の運用総額3兆8,000億ドルに占める割合。資料:IFSL「Sovereign Wealth Funds 2010」から作成。

第1-2-5-3図 �GCC諸国の実質GDP成長率の推移

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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

バーレーン クウェート オマーン

カタール サウジアラビア UAE(%)

備考:2010年はIMFによる見込み。資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2010」から作成。

第1-2-5-2図 �中東諸国及びアフリカ諸国の実質GDP成長率の推移

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2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

(%)

備考:2010年はIMFによる見込み。資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2010」から作成。

中東・北アフリカ サブサハラ・アフリカ

93 IMF「Regional Economic Outlook: Middle East and Central Asia, May2009」94 IMF「World Economic Outlook, Oct 2009」 p.88。95 開発プロジェクトにおける官民比率は国によって大きく異なるものの、GCC諸国平均でみれば約4割とされている(糠谷英輝「世界金

融危機後の中東湾岸諸国~経済多角化に向けた取り組みと投資の変化」(国際通貨研究所『Newsletter』2009.9.25)。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 115

第1章

年は財政収支が石油輸出国を中心に黒字幅が縮小する見込みである(第1-2-5-5図)。財政出動の余地が急速に縮小するなかで、原油価格の変動の影響を受けやすい構図になっているといえる。

(b)アフリカ諸国のマクロ経済動向アフリカ諸国経済は、世界経済危機による貿易の国際的な規模縮小、金融市場の混乱の影響を受け、大きく減速した。当初は、世界金融市場との一体化が進んだ南アフリカへの影響が強く、その後、世界的需要の収縮がアンゴラ、ナイジェリアなどの石油輸出国、更にはモロッコ、チュニジアなどの工業製品輸出国、ボツワナ等の一次産品輸出国に悪影響を及ぼした。南アフリカは、2009年の実質GDP成長率がマイナス1.8%と大きく落ち込み、特に、アンゴラは成長率を大きく低下させた(第1-2-5-6図)。しかしながら、近年の原油価格の高騰や対内直接投資の拡大等を背景に高成長を遂げてきた過程で、石油輸出国の多くは財政収支を改善させてきた。このため、社会保障制度等を通して景気悪化時に自動的に総

需要を刺激する「財政の自動安定化機能」を働かせることができたほか、一部諸国では景気刺激策を実施する余地もあった 96。高成長の過程で、サブサハラ・アフリカ全体をみた国内貯蓄の対GDP比も2003年の19.3%から2008年には22.7%にまで上昇し、また一人当たり実質GDPの拡大もみられるなど、過去に比べて景気の悪化に対する抵抗力は高まってきていた。また、その後の一次産品価格の回復は、経済回復の支えとなっており、2010年は景気の回復傾向を強める見込みである。

②中東・アフリカの成長を支える海外からの直接投資(a)海外からの対内直接投資の拡大中東・アフリカ 97ともに、2003~2004年以降、対内直接投資が急速に拡大した 98(第1-2-5-7図、第1-2-

5-8図)。両地域では、海外からの直接投資が総固定資本形成の2~3割程度を占め、経済成長の原資となっている。対内直接投資が拡大した一因として、近年、両地域で事業環境の改善が進みつつあることが考えられる。IFC99は各国の事業環境の整備状況をとりまとめた「Doing Business」報告書を公表している。2010年版の同報告書によれば、世界の主要地域のなかで、中

第1-2-5-5図 �中東諸国(石油輸出国・輸入国別)の財政収支の推移(対GDP比)

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石油輸入国

UAE

サウジアラビア

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石油輸出国

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200520062007200820092010

(%)

備考:1.「石油輸出国」は、GCC6カ国、アルジェリア、イラン、イラク、リビア、スーダン、イエメンの12カ国。「石油輸入国」は、アフガニスタン、ジブチ、エジプト、ヨルダン、レバノン、モーリタニア、モロッコ、パキスタン、シリア、チュニジアの10カ国。

   2.2009年、2010年はIMFによる見通し。資料:IMF「Regional Economic Outlook:Middle East and Central Asia,

Oct 2009」から作成。

第1-2-5-6図 �アフリカ主要国の実質GDP成長率の推移

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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

アンゴラ カメルーン コンゴ共和国 ナイジェリア 南アフリカ

備考:アンゴラ、カメルーン、コンゴ共和国、ナイジェリアは石油輸出国。2010年はIMFによる見込み。

資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2010」から作成。

(%)

96 IMF「Regional Economic Outlook: Sub-Sahara Africa, Oct2009」97 UNCTAD「World Investment Report」では、バーレーン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、オマーン、パレスチナ、カター

ル、サウジアラビア、シリア、トルコ、UAE、イエメンを「西アジア」としているが、ここでは便宜上「中東諸国」とした。また、アフリカ諸国は、北アフリカ地域(6カ国)、西アフリカ地域(17カ国)、中央アフリカ地域(10カ国)、東アフリカ地域(12カ国)、南アフリカ地域(10カ国)の計55カ国が対象となっている。

98 ただし、UNCTADの速報値によれば、2009年は金融危機の影響でクロスボーダーM& Aの中止・延期も発生し、対内直接投資の伸びはマイナスとなった(UNCTAD, “Global Investment Trends Monitor”, No. 2, Geneva: 19 January 2010)

99 Internatioal Finance Corporation - 国際金融公社

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade116

第 1章 主要国・地域の現状と今後

東・北アフリカ地域19か国中17か国が、会社設立における最低資本金の引下げや規定の撤廃、建築許可取得手続きの簡略化、起業諸手続の窓口の一本化等、事業制度等の改革を進めた。また、ルワンダ、リベリア、UAE、エジプトは、2009年に「世界で事業環境の改善を最も進めた10か国」に選出されている。

(b)中東の投資動向(ⅰ)GCC主要国投資概況

GCC諸国では、2008年まで6年連続で対内直接投資が拡大してきた。2008年の対内投資の拡大は、主にサウジアラビアへの投資の拡大によるものである。同国への対内直接投資は、2008年は前年比57.2%増の382.2億ドルに達し、GCC諸国合計の60.3%を占めた(第1-2-5-9図)。投資分野としては、石油化学及び石油精製が合計約120億ドルと大きな割合を占め、また、

不動産分野への投資も79億ドルに上った 100。他方、同地域への直接投資の第2の受入国である

UAEは、2008年は137億ドルと、2007年の141.8億ドルから3.4%減となった。世界経済危機の影響により、ドバイの観光、不動産、金融部門が悪影響を受けた。

UAEに次いで直接投資の受入額が大きいカタールへの投資は、液化天然ガス(LNG)、電力、水道、通信といった資源・インフラ分野を中心として、全体で前年比42.6%増の約67億ドルとなった。

(ⅱ)プロジェクト投資状況中東諸国への直接投資は、原油価格の上昇とそれに伴う力強い経済成長を背景として、2008年9月までは力強い拡大を続けた。GCC諸国は、原油価格の上昇で得た豊富な資金をもとに、石油精製、石油化学、電力、水道、通信、不動産、観光・レジャーといった

第1-2-5-9図 �GCC諸国への対内直接投資(国別)

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(年)

UAE サウジアラビアカタール オマーンバーレーン

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資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

第1-2-5-8図 �アフリカへの直接投資額の推移

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1000南部アフリカ中部アフリカ西アフリカ東アフリカ北アフリカアフリカ固定資本形成比率

(億ドル) (%)

(年)2008

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2004

2003

2002

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2000

1999

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1991

1990

備考:「アフリカ固定資本形成比率」は、対内直接投資がアフリカ諸国の固定資本形成に占める割合。

資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

第1-2-5-7図 �中東諸国への直接投資額の推移

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中東諸国固定資本形成比率(右軸)GCC諸国(左軸)その他中東諸国(左軸)

(億ドル) (%)

(年)1990

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2006

2008

備考:1.「その他中東諸国」は、イラク、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコ、イエメン。

   2.「中東諸国固定資本形成比率」は、対内直接投資が上記のGCC・その他中東諸国の固定資本形成に占める割合。

資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

100 UNCTAD「World Investment Report」

第1-2-5-10表 �中東諸国企業を対象とした国境を越えたM&A金額の推移(分野別)

(単位:億ドル)2007年 2008年 2009年

一次産業 1.44 0.03 -- 鉱工業、原油 1.40 -- --二次産業 24.49 52.24 0.39 食品、飲料、タバコ 5.81 17.20 -- コークス、石油・核燃料 -- 20.50 -- 化学・化学製品 7.81 -- 0.59 自動車・輸送機器 -- 0.27 --三次産業 203.83 94.51 13.52 電力、ガス、水道 4.79 0.51 11.45 貿易(商業) 0.38 18.61 -- 運輸・通信 96.34 29.00 0.06 金融 78.03 36.82 0.20 ビジネスサービス 8.10 2.06 1.04合 計 229.76 146.77 13.91

備考:1.「中東諸国」は、GCC諸国、イラク、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコ、イエメンの12カ国。

2.2009年は1~6月。資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 117

第1章

様々な分野で大規模な投資プロジェクトを立ち上げた。しかしながら、2008年第3四半期以降、原油価格の下落と世界経済の急激な冷え込みにより、それまでの好循環が一変した。石油・ガス、インフラ等の大規模プロジェクトは延期を余儀なくされることとなった。中東の調査会社MEEDによれば、2010年3月30日時点において、GCC諸国全体では、総額2兆2,728億ドルに上るプロジェクトが計画並びに進行中であるが、GCC6カ国全ての国でプロジェクト金額は1年前から減少しており、GCC全体では前年比で14.6%の規模縮小となっている。また、休止になっているプロジェクトの合計額も6,216億ドルに上っている。なお、イラクにおいては、GCC諸国が世界経済危

機の影響を受ける中、戦後復興への期待感もあり、大幅な拡大となっている(第1-2-5-11表)。

(c)アフリカへの直接投資動向 〜多様化をみせるアフリカへの投資〜アフリカ諸国への直接投資は、事業環境の改善が進んだこともあり、2008年に876.5億ドルと、世界経済

危機の発生にもかかわらず前年比26.7%の拡大をみせた。このうち、北アフリカ諸国向けが全体の27.4%、サブサハラ・アフリカ47か国向けが72.6%を占めた。国別にみると、2008年はナイジェリアが202.8億ドルと、アフリカ諸国向け直接投資全体の23.1%を占め、最大の直接投資受入国となった。次いで、アンゴラが155.5億ドル(アフリカ全体の17.7%)であり、石油輸出国が上位1、2位を占めた。これに、エジプトが95.0億ドル(同10.8%)、南アフリカが90.1億ドル(同10.3%)と続いている。アフリカ諸国企業も含め、多くの多国籍企業が商品市場への投資による収益をアフリカ域内での事業展開の拡大に投入し、新規事業所の開設や新規投資を進めた。また、アフリカへの直接投資の近年の特徴としては、投資分野の多様化がみられることである。従来、商品・天然資源価格の高騰を背景として同分野への投資が中心であったが、国境を越えたM&Aの動向をみると、2008年には製造業やサービス業への直接投資も活発化している(第1-2-5-13表)。製造業のなかでは、非鉄金属が多いが、アルジェリアやナイジェリア、南アフリカでは、規模は小さいものの化学、化学製品、繊維、衣類・革製品、自動車・その他輸送機器などの分野で新規投資が行われた 101。また、サービス業では、2008年に中国商工銀行(ICBC)が56億ドルの投資により南アフリカのスタンダード銀行の株式の20%を取得し、金融分野での直接投資が大幅に拡大したほか、英ボーダフォングループが9億ドルでガーナテレコムの株式を70%取得するなどの動きもみられた(第1-2-5-14表)。アフリカ諸国の対外直接投資は、2008年では93.1

億ドルと規模は小さいが、アフリカ企業による域内投資も行われている。例えば、ナイジェリアの大手企業ダンゴート・グループ(Dangote Group)は、南アフ

第1-2-5-11表 �GCC・湾岸諸国のプロジェクト金額

(単位:100万ドル、%)

国名

計画並びに進行中のプロジェクト金額(2010年3月30日時点)

計画並びに進行 中 の プ ロジェクト金額(2009年3月30日時点)

前年比

休止中のプロジェクト(2010年3月30日)

バーレーン 675.69 680.49 -0.7% 140.43クウェート 2,895.32 3,084.82 -6.1% 248.13オマーン 1,049.34 1,089.43 -3.7% 69.70カタール 2,213.98 2,226.69 -0.6% 252.11サウジアラビア 6,226.24 6,448.41 -3.4% 715.37UAE 9,667.64 13,093.93 -26.2% 4,790.00GCC合計 22,728.21 26,623.77 -14.6% 6,215.74イラン 3,354.42 3,064.36 9.5% 48.00イラク 2,290.74 1,566.95 46.2% 210.00湾岸諸国合計 28,352.01 31,255.08 -9.3% 6,473.74

資料:MEED資料から作成。

第1-2-5-12表 GCC諸国で延期になったプロジェクト例

分野 国 投資家 金額アルミニウム精錬所 サウジアラビア Rio Tinto Alacan(カナダ)/Maaden(サウジアラビア) 100億ドル製油所 サウジアラビア Saudi Aramco(サウジアラビア)/ConocoPhillips(米国) 100億ドル製油所 サウジアラビア Saudi Aramco(サウジアラビア)/Total(フランス) 100億ドル水道・電力 サウジアラビア Sumitomo(日本)/Malakoff(マレーシア)/AI Jomaih(サウジアラビア) 55億ドル発電・脱塩 UAE ADWEA(UAE)(60%)/GDF Suez(フランス)(40%) 20億ドル電力・水道 バーレーン Gulf Investment Corporation(クウェート)/GDF Suez(フランス) 22億ドル

資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

101 UNCTAD,「World Investment Report 2009」

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade118

第 1章 主要国・地域の現状と今後

リカのセファクセメント(Sephaku Cement)に対し3.8億ドルの投資を行い、同社の一部株式を取得した。ダンゴート・グループはセメントや精糖、製塩、製粉、港湾・物流、不動産など多岐にわたる分野で事業を展開するコングロマリットである。また、南アフリカのアルテック・ストリーム(Altech Stream

Holdings)は、8,500万ドルでウガンダのインターネットサービスプロバイダーであるインフォコム(Infocom)の株式51%を取得した。

③中東アフリカの投資環境(事業活動を進める上での問題点)

(a)貿易コストの高さ貿易面についてみると、一般的に貿易障壁としては高い関税などが考えられるが、貿易手続きの煩雑さな

ども貿易コストとなる。この点について、UNCTAD

は、貿易手続きに要する書類数や日数等の水準を世界の主要国地域別に取りまとめており、サブサハラ・アフリカ地域でのコストの高さが浮き彫りになっている。例えば、サブサハラ・アフリカからの輸出の面では、輸出手続きに必要とされる書類数は、OECD加盟国平均が4.5種類であるのに対し、サブサハラ・アフリカには7.8種類と、先進国に比して多くの書類の準備・提出が必要である。輸出に要する日数も、先進国では平均10.7日であるのに対し、サブサハラ・アフリカでは同34.7日も要するという結果が示された。1コンテナ当たりの輸出コストも、サブサハラ・アフリカでは先進国の約1.8倍の1,878.8ドルとなっている。一方、中東・北アフリカ地域については、東アジアや東欧・中央アジアなどの他地域との比較においては遜色ない水準であり、1コンテナ当たりの輸出コストではOECD加盟国平均を下回る水準となっている(第1-2-5-15表)。

(b)現地での事業遂行における制約要因事業の制約要因としては、多くの機関が政治的安定性、汚職・腐敗、インフラ、融資へのアクセス、事業開始手続き、従業員雇用や教育水準といった様々な分野を指標化し、それらの総合ポイントで世界の国々のランキングを公表している 102。そうしたなかで、例えばインフラ面に注目すると、アフリカ諸国では、事業の制約要因として電力不足がしばしば指摘されている。1ヵ月当りで、多くの国で

第1-2-5-13表 �アフリカ諸国企業を対象とした国境を越えたM&A金額の推移(分野別)

(単位:億ドル)2007年 2008年 2009年

一次産業 38.37 -20.55 24.30 鉱工業、原油 38.37 -20.55 24.30二次産業 13.67 156.39 3.93 木材・木製品 -14.38 -- -- 非鉄金属 8.31 154.69 1.45 鉄・鉄製品 2.50 1.04 2.48三次産業 27.02 73.16 5.09 貿易(商業) -3.96 0.32 -- 運輸・通信 3.35 16.65 6.44 金融 25.95 56.13 0.06 ビジネスサービス 0.91 -1.57 -0.77 健康・社会サービス -- 1.52 0.05合 計 79.06 209.01 33.32

備考:2009年は1~6月。資料:UNCTAD「World Investment Report 2009」から作成。

第1-2-5-14表 アフリカへの直接投資案件(2008年、上位10件)

順位 買収額(億ドル)

被買収 分野 買収 株式取得割合(%)企業 国 企業 国

1 150.18 OCI Cement Group エジプト セメント Lafarge SA フランス 1002 56.17 Standard Bank Group Ltd 南アフリカ 金融 ICBC 中国 203 22.00 Devon Energy Corp 赤道ギニア 原油・天然ガス 非公開 赤道ギニア 1004 9.00 Ghana Telecommunications Co Ltd ガーナ 無線電話 Vodafone Group PLC 英国 705 7.32 DRC Resources Holdings Ltd コンゴ民主共和国 合金 Central African Mining & Expl 英国 506 7.00 Alstom SA(Pty) Ltd 南アフリカ 電力、配電 投資家グループ 英国 1007 6.70 Egyptian Container Handling Co エジプト 海上貨物操作 非公開 UAE 908 6.26 OML 125 ナイジェリア 原油・天然ガス Oando PLC ナイジェリア 509 5.13 Lafarge Titan Egypt エジプト セメント Titan Cement Co SA ギリシャ 50

10 4.75 Banco de Fomento Angola アンゴラ 金融 Unitel SA アンゴラ 50

備考:株式10%以上取得の案件が対象。買収と被買収の国が同一の案件は、本国企業による海外関連会社の買収資料:UNCTAD「cross-border M&A database」から作成。

102 例えば、World Bank, “Governance Matters”、Transparency International, “Corruption Perception Index”、IFC, “Doing Business” などがある。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 119

第1章

10回程度の停電が発生しており、一部の国では20~30回程度も停電が生じている(第1-2-5-16図)。これに伴い、国により程度の差はあるが、停電による損失が売上の4~5%程度に上っている。

(c)政治腐敗度政治腐敗度について、国際的に汚職・腐敗防止のために活動するNGOトランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)が毎年公表している腐敗認識指数(Corruption Perception Index)をみると、「中東」、「アフリカ」といっても国により状況は様々である。

2009年は、調査対象世界180国中、腐敗度の低い上位50位以内に位置づけられた中東アフリカ諸国はわずか9か国であり、逆に40か国が100位以降にランクされた。一方、腐敗度の低さで中東・北アフリカ地域でトップとなったカタールは、総合順位でも22位であり、米国や日本に比肩している。また、サブサハラ・アフリカ諸国でも、新興国として注目を集める中国やインド、ブラジルを上回る順位の国も多い(第1-2-5-17表)。

④市場としての中東・アフリカのポテンシャル(a)市場としての中東・アフリカの潜在性(中東アフリカの経済規模・所得水準)アフリカ大陸は広大である。アフリカ大陸の面積は世界の面積の約2割を占めており、中国、米国、インド、欧州、アルゼンチン、ニュージーランドの面積の合計よりも大きい(第1-2-5-18図)。人口の面では、国連によれば、アフリカ人口は

2010年で約10億人であり、2050年には東アジアを抜いて世界人口の2割強に達すると予測されている(第1-2-5-19図)。また、アフリカは、人口規模が大きいだけでなく、年齢階層別でも若年層が多く、2010年時点で19歳以下の人口が全体の50.7%を占めている(第1-2-5-20図)。中国(第1-2-5-21図)やインド(第1-2-5-

22図)、東南アジア(第1-2-5-23図)、中南米(第1-2-5-

24図)と比較しても、若年層になるほど人口がより多くなる人口構成となっている。経済水準をみても、アフリカ諸国の国民所得は世界でも大きなシェアを占めており、将来的に、現在の若年層がアフリカでの消

第1-2-5-15表 �輸出入に要する手続き、時間、�コスト(2009年)

輸出 輸入

必要書類数 所要日数

1コンテナ当り費用(ドル)

必要書類数 所要日数

1コンテナ当り費用(ドル)

OECD加盟国 4.5 10.7 1,069.10 5.1 11.4 1,132.70東アジア・太平洋 6.7 23.2 902.3 7.1 24.5 948.5中南米 6.9 19.7 1,229.80 7.4 22.3 1,384.30東欧・中央アジア 7.1 29.7 1,649.10 8.3 31.7 1,822.20中東・北アフリカ 6.5 23.3 1,024.40 7.6 26.7 1,204.80サブサハラ・アフリカ 7.8 34.7 1,878.80 8.8 41.1 2,278.70

資料:UNCTAD「Economic Development in Africa- Report 2009」から作成。

第1-2-5-16図 �アフリカ諸国における停電の頻度と売上への影響

0

5

10

15

20

25

01020304050607080

ボツワナ

ナミビア

南アフリカ

モロッコ

スワジランド

モザンビーク

モーリシャス

モーリタニア

ザンビア

マリコートジボワール

アルジェリア

エチオピア

リベリア

レソト

ケニア

アンゴラ

ガボン

エジプト

ギニアビサウ

ガーナ

ブルキナファソ

ウガンダ

セネガル

ブルンディ

タンザニア

カーボベルデ

カメルーン

マダガスカル

ルワンダ

シエラレオネ

コンゴ民主共和国

ニジェール

ガンビア

ナイジェリア

コンゴ共和国

ギニア

マラウイ

ベニン

月間停電回数(左軸)売上への影響(右軸)

(回数/月) (%)

備考:「売上への影響」は、停電による損失額の売上額に対する割合。資料:World Economic Forum「The Africa Competitiveness Report

2009」から作成。

第1-2-5-17表 �政治腐敗度に関する認知度ランキング

総合順位 地域内順位 国 CPIスコア

中東・北アフリカ

22 1 カタール 7.030 2 UAE 6.532 3 イスラエル 6.139 4 オマーン 5.546 5 バーレーン 5.149 6 ヨルダン 5.063 7 サウジアラビア 4.365 8 チュニジア 4.266 9 クウェート 4.189 10 モロッコ 3.3

サブサハラ・アフリカ

37 1 ボツワナ 5.642 2 モーリシャス 5.446 3 カーボヴェルデ 5.154 4 セイシェル 4.855 5 南アフリカ 4.756 6 ナミビア 4.569 7 ガーナ 3.979 8 ブルキナファソ 3.679 9 スワジランド 3.689 10 レソト 3.389 10 マラウイ 3.389 10 ルワンダ 3.3

アジア太平洋

1 1 ニュージーランド 9.43 2 シンガポール 9.2

17 5 日本 7.739 7 韓国 5.579 13 中国 3.684 14 インド 3.4

米州

8 1 カナダ 8.719 2 米国 7.575 12 ブラジル 3.7

備考:CPIスコアは数値が高いほど腐敗度が低い。最高スコアは10。資料:Transparency International「Corruption Perception Index 2009」

から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade120

第 1章 主要国・地域の現状と今後

費の中核を担うようになれば、消費拡大のポテンシャルは益々高まっていくと考えられる。中東アフリカ諸国の所得水準をみると、IMFによれば、購買力平価(PPP)ベースの一人当たりGDP

は、中東・北アフリカでは1990年に4,112ドル、2000

年に5,747ドルと拡大してきており、2015年には1万ドルを超えると見込まれている。また、サブサハラアフリカにおいても、1990年の1,185ドルから2015年には約2.4倍の2,842ドルにまで水準が高まる見通しである(第1-2-5-25図)。アフリカ諸国の一人当たり国民総所得の水準は、赤道ギニア、リビア、セイシェルでは1万ドルを超えており、これらの国はブラジル、ロシア、インド、中国(BRICs)よりも国民一人当たりの

第1-2-5-22図 �インド人口の年齢構成(2010年)0 15 30 45 60 75

01530456075

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80+

85-89

95-99

備考:国連による人口推計。資料:UN「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

(単位:百万人)

男性 女性

第1-2-5-21図 �中国人口の年齢構成(2010年)0 15 30 45 60 75

015304560750-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80+

85-89

95-99男性 女性

(単位:百万人)

備考:国連による人口推計。資料:UN「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

第1-2-5-20図 �アフリカ人口の年齢構成(2010年)

男性 女性

79.5 69.2

61.4 55.3

49.7 42.6

35.2 28.1

22.6 18.7 15.4 12.3

9.5 6.8 4.6 2.8 1.3 0.4 0.1 0.0 0.0

77.7 67.8

60.3 54.5

49.4 42.6

35.0 28.1

23.1 19.5

16.4 13.4

10.5 7.8 5.6 3.5 1.8 0.6 0.1 0.0 0.0

0 20 40 60 80

0204060800-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

100+

備考:国連による人口推計。資料:UN「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

(単位:百万人)

第1-2-5-19図 �世界の地域別人口の推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

19.9810.33

17.80

15.64

5.905.897.333.520.36

2.33

24.94

16.00

7.66

7.296.914.483.720.51

1950 1970 1990 2010 2030 2050

(億人)

備考:中位推計における各地域の人口推計。資料:UN「WorldPopulation Prospects」から作成。

オセアニア西アジア北アメリカヨーロッパラテンアメリカとカリブ海諸国東南アジア東アジア南アジアアフリカ

第1-2-5-18図 �アフリカ大陸とほかの諸国との面積比較

面積(平方マイル)中国 3,705,390米国 3,618,770インド 1,266,595欧州 1,905,000アルゼンチン 1,055,189ニュージーランド 103,736 11,664,680

アフリカ大陸 11,707,000

資料:W.Bediako Lamouse-Smith and Joseph School, Africa Interactive Maps, 1998(http://www.africamaps.com/afim_frame.htm)から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 121

第1章

所得水準が高い。また、中国よりも一人当たり国民総所得が高い水準にあるアフリカ諸国は11か国存在し、インドと比較した場合、その数は21か国に上る(第1-2-5-26表)。アフリカには最貧国も存在するが、このように中国やインドと比較して所得水準の高い国も多く存在する。また、中東アフリカ諸国では、他国・地域に比べれば絶対数は少ないものの、富裕層も存在する。コンサルティング会社のキャップジェミニとメリルリンチの

調査によれば、保有資産100万ドル以上の富裕層人口は、2008年では中東で約40万人、アフリカでも約10

万人に達している。これは、米国(同46.0万人)や我が国(同136.6万人)、ドイツ(同81.0万人)には及ばないものの、中東は中国(同36.4万人)を上回っており、アフリカはブラジル(同13.1万人)、オーストラリア(同12.9万人)、スペイン(同12.7万人)に比肩する規模である103。アフリカ経済については、近年、消費市場としての

発展も著しい。例えば、携帯電話の加入件数の推移をみると、2007年には約2億7千万件と米国を上回る水準となり、2008年には約3億6千万件にまで拡大した。これは、ASEAN10か国の合計やインドと比肩する水準である(第1-2-5-27図)。また、アフリカには人口百

第1-2-5-23図 �東南アジア人口の年齢構成�(2010年)

0 10 20 30 40

010203040

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

100+(単位:百万人)

備考:国連による人口推計。東南アジアはASEAN10と東ティモール。

資料:UN「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

男性 女性

第1-2-5-25図 �中東・北アフリカ及びサブサハラアフリカの一人当たりGDPの推移

4,1124,756

5,747

7,108

8,806

10,987

1,185 1,210 1,3651,792

2,2422,842

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1990 1995 2000 2005 2010 2015

中東・北アフリカ サブサハラアフリカ

(ドル)

備考:購買力平価(PPP)ベース。2010年、2015年はIMFによる見通し。資料:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database,

April 2010から作成。

第1-2-5-24図 �中南米カリブ海諸国人口の年齢構成(2010年)

0 10 20 30 40

0102030400-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

100+(単位:百万人)

備考:国連による人口推計。資料:UN「World Population Prospects:The 2008 Revision」から作成。

男性 女性

第1-2-5-26表 �アフリカ諸国の一人当たり国民総所得(2008年、ドル)

(単位:米ドル)赤道ギニア 14,980 エジプト 1,800 ルワンダ 440リビア 12,380 コンゴ共和国 1,790 タンザニア 440セイシェル 10,220 ナイジェリア 1,170 マダガスカル 420メキシコ 9,990 カメルーン 1,150 ウガンダ 420ロシア 9,660 ジブチ 1,130 中央アフリカ 410チリ 9,370 スーダン 1,100 トーゴ 410ガボン 7,320 レソト 1,060 ガンビア 400ブラジル 7,300 インド 1,040 モザンビーク 380モーリシャス 6,700 サントメ・プリンシペ 1,030 ギニア 350ボツワナ 6,640 コートジボワール 980 ニジェール 330南アフリカ 5,820 セネガル 980 シエラレオネ 320ナミビア 4,210 ザンビア 950 エリトリア 300アルジェリア 4,190 コモロ 750 エチオピア 280チュニジア 3,480 ケニア 730 マラウイ 280アンゴラ 3,340 ベナン 700 ギニアビサウ 250中国 2,940 ガーナ 630 リベリア 170カーボベルデ 2,800 マリ 580 コンゴ民主共和国 150スワジランド 2,600 チャド 540 ブルンジ 140モロッコ 2,520 ブルキナファソ 480

資料:World Bank「World Development Indicators」から作成。

103 Capgemini and Merrill Lynch, “World Wealth Report 2009”

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade122

第 1章 主要国・地域の現状と今後

万人超の都市・都市圏が51も存在する(第1-2-5-28

表)。今後の人口増加と更なる都市化の進展により、消費の拡大や多様化が予想される。さらに、アフリカ諸国は近年、複数の経済統合を進めている。これが実現すれば、巨大市場としてのアフ

リカの魅力は益々高まることになる(第1-2-5-29図、第1-2-5-30図)。

(b)中東諸国におけるビジネスチャンス中東諸国において、従来の資源エネルギー関連ビジネスだけでなく、新たなビジネスチャンスが生じている(第1-2-5-31表)。例えば、運輸分野では、UAEが連邦政府100%所有

の「イティハード鉄道社」の設立を決めた。UAE全土を連結する近代的鉄道網の建設を目指すもので、鉄道網の整備による全体的な輸送コストの低下に期待が寄せられている。また、ドバイでは空港と街の中心部、ジャバル・アリー・フリーゾーンをつなぐ無人運転の「ドバイ・メトロ」が2009年9月に開通したほか、サウジアラビアでもリヤド・メトロ建設計画が明らかにされた。湾岸諸国は鉄道建設ラッシュに沸いている104。また、GCC諸国では、健康・温泉(SPA)産業が成

長を続けており、エポック・メッセ・フランクフルト社が「健康と温泉の中東(Wellness and Spas Middle

第1-2-5-27図 �世界の携帯電話加入件数の推移

0

100

200

300

400

500

600

700

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

中国ASEAN10アフリカインド米国ロシア中東ブラジル日本ドイツ英国フランス韓国

(百万件)

ASEAN10やインドとともにアフリカは米国を抜いている。

備考:携帯電話加入件数。資料:World Bank「World Development Indicators」から作成。

第1-2-5-28表 アフリカの人口百万人以上の都市圏(2010年1月1日時点)(単位:千人)

国名 都市名 人口 国名 都市名 人口◎ エジプト カイロ 15,200 ◎ モロッコ ラバト 1,890

ナイジェリア ラゴス 11,800 ◎ マダガスカル アンタナナリボ 1,860◎ コンゴ民主共和国 キンシャサ 8,900 ◎ ザンビア ルサカ 1,830

南アフリカ ヨハネスブルグ 7,550 ◎ カメルーン ヤウンデ 1,750◎ スーダン ハルツーム 4,975 ◎ ブルキナファソ ワガドゥグー 1,700

エジプト アレキサンドリア 4,575 ◎ ギニア コナクリ 1,690コートジボワール アビジャン 4,400 ナイジェリア カドゥナ 1,670モロッコ カサブランカ 3,975 ガーナ クマシ 1,630南アフリカ ケープタウン 3,775 コンゴ民主共和国 ルブンバシ 1,570南アフリカ ダーバン 3,650 トーゴ ロメ 1,520

◎ ガーナ アクラ 3,575 コンゴ民主共和国 ムジマイ 1,520◎ ケニア ナイロビ 3,500 ◎ ソマリア モガディシュ 1,500

ナイジェリア イバダン 3,375 ◎ コンゴ共和国 ブラザビル 1,430ナイジェリア カノ 3,375 アルジェリア オラン 1,260

● タンザニア ダルエスサラーム 3,225 ナイジェリア ベニンシティ 1,240◎ アルジェリア アルジェ 3,175 ナイジェリア ポートハーコート 1,230◎ エチオピア アディスアベバ 3,100 ◎ リビア トリポリ 1,210◎ アンゴラ ルアンダ 3,100 ◎ シエラレオネ フリータウン 1,200◎ セネガル ダカール 2,675 ベナン コトヌ 1,150◎ 南アフリカ プレトリア 2,525 モロッコ フェズ 1,110◎ チュニジア チュニス 2,325 ナイジェリア マイドゥグリ 1,100◎ ジンバブエ ハラレ 2,300 ◎ リベリア モンロビア 1,080

カメルーン ドゥアラ 2,200 南アフリカ ポートエリザベス 1,070◎ ウガンダ カンパラ 1,970 ナイジェリア ザリア 1,030◎ マリ バマコ 1,920 ◎ チャド ンジャメナ 1,020◎ モザンビーク マプト 1,910

備考:1.◎は首都であることを示す。2.タンザニア(●)は、法律上の首都はドドマであるが、ダルエスサラームは、政府官庁が存在するなど事実上の首都機能を有し、経済面でも中心

となっている。3.近隣の都市との合算値の場合もある。

資料:Thomas Brinkhoff「The Principal Agglomerations of the World」(http://www.citypopulation.de)から作成。

104 辻上奈美江、「ドバイ・メトロ開通の社会的インパクトと湾岸諸国における鉄道建設ラッシュ」(財団法人中東協力センター、『中東協力センターニュース:中東情勢分析』2010年2/3月号)

Page 11: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 123

第1章

East)」を主催している(第1-2-5-31表)。同社によれば、SPA事業における2008年の総売上は23億ディル

ハム(約6億2630万ドル)に達し、なかでもUAEが突出している105。このほか、中東諸国では、糖尿病や肥満の増加を背景に、保健医療産業が新たな成長部門として注目されている。サウジアラビアでは、国民の25~27%が糖尿病を患っているとされ、また、UAEでは成人の70%が体重オーバーである。こうしたなかで、GCC

諸国は「健康リスクと食生活」を見直す啓発プログラムを立ち上げている。データベース会社プロリーズ(Proleads)によれば、GCC諸国の民間・公的機関が進めている病院・保険関連施設の事業は総額541億ディルハム(約148億ドル)に上るという106。

(c)活発化するアフリカビジネス(ⅰ)BOP市場としてのアフリカ一人当たり年間所得が3,000ドル以下のいわゆる

「BOP(Base of the Economic Pyramid)」層は、IFC

第1-2-5-29図 �アフリカの地域経済共同体別経済規模

02,000

CEMA

C(中部)

UEMO

A(西部)

EAC(

東部)

ECCA

S(中部)

IGAD

(東部)

ECOW

AS(西部)

SACU

(南部)

UMA/AM

U(北部)

SADC

(南部)

COME

SA(東部・南部)

COME

SSA(

北部・中部・東部)

4,0006,0008,000

10,00012,00014,00016,000

(億ドル)

備考:1.購買力平価(PPP)ベースのGDP。2.複数加盟国は複数回カウント。3.括弧内は構成国のアフリカ大陸におけるおおまかな地域を示す。

資料:IMF「WEO Database April 2010」から作成。

第1-2-5-30図 �アフリカの主な地域経済共同体

南アフリカ

ボツワナナミビア

レソトスワジランド

ジンバブエモザンビーク

アンゴラ

マダガスカル

ザンビア

タンザニア

ケニアウガンダ

ソマリアエチオピア

スーダン

エジプトリビア

モロッコアルジェリア

西サハラ

モーリタニアマリ

セネガル

カーボヴェルデロ

ガンビア

ギニアギニアビサウ

シエラレオネコートジボワール

リベリアガーナ

ブルキナファソベナン

トーゴ

ナイジェリア

カメルーン

中央アフリカ

チャド

ニジェール

赤道ギニアガボン

コンゴ共和国コンゴ民主共和国

ルワンダブルンジ

ジブチ

エリトリア

マラウイ

チュニジア

コモロ

セーシェルサオトメ・プリンシペ

SADC

SACU

ECCAS

ECOWAS

COMESA

COMESSAUMA/AMU

EAC

資料:田中秀和(2009)「2025年のアフリカ経済:今後アフリカはどう変化するか?」から作成。

105 畑中美樹、「意外に豊富な中東・湾岸諸国における新たなビジネス・チャンス」(財団法人中東協力センター、『中東協力センターニュース:中東情勢分析』2009年8/9月号)

106 畑中美樹、「新たな成長部門として急浮上する保健・医療産業」(中東協力センター、『中東協力センターニュース:中東情勢分析』2009年6/7月号)

Page 12: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade124

第 1章 主要国・地域の現状と今後

の報告書によれば、アフリカには4億8,600万人存在し、アフリカのBOP市場は4,290億ドルと推計されている(第1-2-5-32表)。これに対し、アジアのBOP市場規模は3兆4,700億ドル、中南米は5,090億ドル、東欧は4,580億ドルとなっており、アフリカは中南米や東欧と比べて遜色ない規模である(第1-2-5-33図)。市場分野としては、保険医療、情報通信技術、水

道、運輸、住宅、エネルギー、食品といった分野が推計されている。IFCによれば、アフリカのBOP市場では、食品市場が2,150億ドルと最も規模が大きく、次いで住宅(429億ドル)、エネルギー(266億ドル)、運輸(245億ドル)、保健医療(180億ドル)となっている(第1-2-5-34図)。

(ⅱ)アフリカにビジネスチャンスを見出し積極的に事業を展開する企業アフリカでは様々な分野でビジネスが活発化しており、大規模な事業を展開する企業も多い(第1-2-5-35

表)。例えば、ネットケア社が医療サービス事業の拡大を図っている。同社は、南アフリカで私立病院の運営をはじめ、緊急医療、緊急移送サービスなど幅広い医療サービスを提供し、近年の中間層拡大による需要増を背景に急成長している。1996年に上場した当初は6つの病院を経営していたが、その後、病院の買収を進め、現在では南アフリカ国内に52の私立病院を経営するに至っている。

第1-2-5-31表 中東諸国における新事業・産業

国名 企業・事業名 事業分野 概要UAE イティハード鉄道 鉄道網整備 ・資本金:10億ディルハム(約2億7230万ドル)(UAE連邦政府100%所有、新規設

立)・事業内容:旅客輸送、車両のリース・賃貸・購入・売却、車両の維持・補修等

オマーン ハヤ・ウオーター 下水道・汚水処理施設建設

・マスカット下水道プロジェクトで5件の工事を発注、契約。・推定総投資額:130億オマーン・リヤル(約340億ドル)・事業内容:新下水処理プラントの設計、下水道管敷設工事、集水システム建設、浄化・

汚泥処理プラント建設等サウジアラビア リヤド・メトロ メトロ建設 ・2009年11月10日、リヤド市内を走るライト・レイルウェイ、リヤド・メトロの建

設計画の着工が具体案とともに発表。・リヤド・メトロは、リヤド開発局の管轄下に置かれており、スペインの会社から車両を

買い取る予定。・車両調達:6億1,200万リヤル(1億6320万ドル)

UAE ヒューレット・パッカード(HP)

リサイクル ・中東において、「HP地球パートナーズ・プログラム」と呼ばれる印刷用カートリッジのリサイクルを開始。

UAE・湾岸諸国 エポック・メッセ・フランクフルト

健康・温泉 ・湾岸諸国において、健康・温泉(SPA)事業を展開。

資料:「中東協力センターニュース」各号から作成。

第1-2-5-32表 アフリカのBOP人口と所得

BOP人口(100万人)

全人口に占めるBOPの割合(%)

BOP所得(100万) 総所得に占めるBOPの割合(%)PPP ドル

アフリカ全体 486.0 95.1 429,000.0 120,000.0 70.5カメルーン 14.7 95.0 15,354.1 4,710.1 75.6コートジボワール 15.6 95.0 14,242.9 6,536.1 75.9エジプト 65.6 95.0 83,544.1 10,151.1 85.8マリ 12.6 100.0 9,202.7 2,769.2 100.0モザンビーク 17.6 95.0 12,917.6 2,408.3 71.1ナイジェリア 121.0 100.0 74,419.2 27,572.1 100.0セネガル 9.3 95.0 9,303.8 2,942.6 72.6南アフリカ 33.6 75.0 43,511.1 10,072.7 30.9タンザニア 36.2 100.0 11,318.0 5,408.2 100.0ウガンダ 23.8 95.0 22,303.5 3,696.5 76.8ザンビア 18.5 100.0 9,315.3 4,008.3 100.0

資料:IFC「The Next 4 Billion(2007年)」から作成。

第1-2-5-34図 �アフリカのBOP市場規模�(分野別)

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200

保健医療

情報通信技術

水道

運輸

住宅

エネルギー

食品

(億ドル)

資料:IFC「The Next 4 Billion(2007年)」から作成。

第1-2-5-33図 �BOP市場の地域別シェア

アジア71.3%

東欧9.4%

アフリカ8.8%

資料:IFC「The Next 4 Billion(2007年)」から作成。

中南米カリブ海10.5%

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 125

第1章

また、南アフリカの大手小売のショップライト社は、南アフリカを含む17カ国でスーパーマーケットや家具専門店、日用品量販店など、1,240店舗を展開している。同社の中核事業であるスーパーマーケット「ショップライト」は低所得者向けであるが、南アフリカ国内では高所得者向けのスーパーマーケットも展開している。外国資本傘下の企業では、スウェーデンに本社を持つオリフレーム化粧品の子会社であるオリフレーム東アフリカが、モロッコやエジプト、ケニアで事業を展開している。同社は、世界61カ国で事業を展開し、商品数1,500アイテムを扱うが、2008年に進出したケニアでは400品目を販売している。サブサハラ・アフリカでは、ケニアが初の進出先である。ケニアを進出先として選定したのは、市場規模は小さいが競争がなく、今後のアフリカ展開を考える上で市場から教訓を得るのにちょうど良い市場との考えからであり 107、戦略的にアフリカ市場を捉えている姿勢が伺える。インフラ面では、デンマークに本拠を持つ

Grundfos A/S社の傘下企業であるグルンドフォス・

ライフリンク社が、太陽光パネルと携帯電話を利用した送金システムを組み合わせることで、コミュニティでの水供給に、環境負荷が小さく、透明性が高く、維持管理コストを最小化したシステムを導入している。

(d)我が国企業による貿易・投資と事業展開(ⅰ)中東諸国との貿易・投資状況中東アフリカ諸国に対する我が国の貿易・投資動向をみると、まず、中東諸国向け輸出は、2009年は232.6億ドルと、過去10年で倍増している。輸出品目は、輸送機械、機械機器、電機品が3大品目であり、これら3品目で中東向け輸出総額の7割強を占めている(第1-2-5-36表)。他方、中東からの輸入は、鉱物性燃料、原油等が全体の9割以上を占めている(第1-2-

5-37表)。また、中東向けの対外直接投資額は、2007年、

2008年と2年連続で1,000億円台の規模となったが、2009年は570億円と規模が縮小した 108(第1-2-5-38

図)。2008年は、サウジアラビア(化学・医薬、金融・保険など)やUAE(建設、卸・小売など)といっ

107 JETRO、「サブサハラ・アフリカ主要国の消費市場」(2010年3月)。108 財務省対外直接投資統計(国際収支ベース、ネット、フロー)。

第1-2-5-35表 サブサハラ・アフリカ諸国で事業を展開する企業

国名 企業名 分野 概要南アフリカ ネットケア 医療サービス ・JSE上場年:2008年

・売上高:217億3,500ランド(2008年)・病院数:108(南アフリカ52、英国56)

南アフリカ タイガーブランズ 食品 ・設立年:1921年・従業員数:10,417名・年間総売上高:204億3,040万ランド(2009年9月末期)・南アフリカ最大の総合食品メーカー。缶詰、冷凍食品、レトルト食品、調味料、菓子類、

ベビー食品などを中心に約30種類のブランドを展開。南アフリカ ショップライトホールディ

ングス小売 ・設立年:1936年

・従業員数:66,000人・年間売上高:593億1,856万ランド(2009年6月末)・年間営業利益:20億1,864万ランド(2009年6月末)

ケニア オリフレーム東アフリカ 化粧品 ・設立:2008年(スウェーデン本社は1967年)・売上高:非開示(本社13億2,910万ユーロ)・収益:不明(本社9億2,610万ユーロ)・従業員:75人(グループ全体7,500人)・販売員:2万5,000人(グループ全体290万人)

ケニア グルンドフォス・ライフリンク

インフラ ・設立:2008年10月・売上高:1,879.2万ケニア・シリング(09年ジェトロ推計)・従業員:7人

ケニア イッサール・テレコム 携帯電話 ・設立:2008年(親会社はインドの「Essar Global Limited」1の通信分野の子会社「Essar Communications Holdings Limited (ECHL)」)

・売上高:非開示・従業員:250人

ナイジェリア フラワー・ミル・オブ・ナイジェリア

食品 ・設立:1960年・売上高:1,474億ナイラ(2008年)・純利益:103億ナイラ(2008年)・従業員:約1,221人(グループ企業を含めると3,644人)・製粉、パスタ製造、港湾運営、セメント製造と国際取引、肥料の混合、袋詰めなど、多

岐に渡る業務を展開するナイジェリアの財閥企業。

資料:JETRO「サブサハラ・アフリカ主要国の消費市場(2010年3月)」から作成。

Page 14: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade126

第 1章 主要国・地域の現状と今後

たプロジェクト金額の大きい国への投資が目立った。

(ⅱ)アフリカ諸国との貿易・投資状況次に、サブサハラ・アフリカ諸国については、2009

年の輸出は94.9億ドルとなり、品目では自動車、一般機械類、船舶が上位となった(第1-2-5-39表)。輸入については、従来から宝石・貴金属及び鉱物性燃料・原油等が上位を占めている(第1-2-5-40表)。また、直接投資については、2006年から2008年に

かけて3年連続で1,000億円の大台に乗ったが、2009

年は258億円の投資引き上げとなった。

(ⅲ)我が国企業の事業展開状況我が国企業の事業展開についてみると、三菱重工業が、南アフリカ共和国のPBMR社と、将来的なプラントの建設、市場開拓などでの協力も視野に入れつつ、ペブルベッドモジュール型高温ガス炉(PBMR:Pebble Bed Modular Reactor、球状燃料要素炉)を共同で開発することを検討していくことで合意し、2010

年2月3日、そのための覚書(MOU)を締結した 109。また、モロッコでは、タンジール・フリーゾーンの各種優遇税制などを背景に、自動車部品を中心に日系企業の進出が相次いでいる。具体的には、2008年に住

第1-2-5-36表 我が国の中東への輸出品上位10品目の推移(単位:億ドル)

1995年 2000年 2005年 2009年輸送機械 32.6 輸送機械 48.0 輸送機械 89.2 輸送機械 101.3機械機器 19.0 機械機器 20.2 機械機器 32.0 機械機器 44.9電機品 14.9 電機品 12.8 電機品 18.4 電機品 24.0ゴム 4.3 ゴム 4.3 鉄鋼製品 9.6 ゴム 12.8光学機器 3.0 鉄鋼製品 3.4 ゴム 8.0 鉄鋼製品 10.4鉄 3.0 光学機器 3.1 鉄 4.6 鉄 6.3鉄鋼製品 2.8 鉄 2.8 光学機器 4.5 光学機器 4.5手工織物 2.4 再輸出品 2.5 再輸出品 3.0 再輸出品 3.7再輸出品 1.9 手工織物 1.5 プラスチック 1.8 プラスチック 3.6手工繊維 1.7 手工繊維 1.2 手工織物 1.5 鉄道信号機器 2.6中東総額 95.9 中東総額 109.1 中東総額 186.7 中東総額 232.3

資料:World Trade Atlasから作成。

第1-2-5-37表 我が国の中東からの輸入品上位10品目の推移(単位:億ドル)

1995年 2000年 2005年 2009年鉱物性燃料、原油等 291.5 鉱物性燃料、原油等 474.3 鉱物性燃料、原油等 852.8 鉱物性燃料、原油等 909.6宝石、貴金属 8.9 宝石、貴金属 3.4 有機化学 4.1 有機化学 4.2有機化学 4.5 有機化学 3.0 アルミ 3.3 電機・機械 3.2アルミ 3.6 アルミ 2.7 光学機器 2.0 アルミ 1.6機械機器 1.0 電機・機械 1.1 宝石、貴金属 1.9 科学肥料 1.4鉄 0.9 機械機器 1.1 機械機器 1.4 水産物 1.4果物、ナッツ 0.7 光学機器 1.0 電機・機械 1.2 光学機器 1.4銅、銅条 0.7 科学肥料 1.0 科学肥料 1.1 機械機器 1.2じゅうたん 0.6 保存食品 0.6 再輸入品 1.1 塩、硫黄、土壌、岩石 1.0保存食品 0.6 鉱石、スラグ、灰 0.5 水産物 0.9 宝石、貴金属 0.8中東総額 318.1 中東総額 493.6 中東総額 875.4 中東総額 931.7

資料:World Trade Atlasから作成。

109 三菱重工ニュース「小型高温ガス炉PBMRの開発でMOUを締結:将来的にはプラント建設や市場開拓でも協力を検討」(2010年2月4日発行、第4902号)。

第1-2-5-38図 �我が国の中東への直接投資

-200

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

2005 2006 2007 2008 2009

その他中東UAEサウジアラビア

(億円)

(年)資料:日本銀行「国際収支統計」から作成。

Page 15: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 127

第1章

友電装がラバト近郊、また、マキタがタンジールに進出したほか、2009年にはフジクラがタンジールに、双日がカサブランカに、2010年3月にはデンソーがタンジールに進出している 110。現地情勢に合わせて事業を積極的に展開している企業もある。例えば、味の素は、うまみ調味料「AJI-NO-

MOTO」をナイジェリアのウェストアフリカシーズニング株式会社で袋詰めし、コートジボワールをはじめ、近隣のブルキナファソ、マリ、ギニア、リベリアなどへの輸出を行っている 111。味の素は、貧困層でも買える低価格・小分け販売戦略で、順調に売上を伸ばしている。消費者にはその生活スタイルと収入所得によって「買いやすい」価格があるところ、ナイジェリアでは、うまみ調味料を含めた食品一般を多くの消費者が最大流通紙幣である5ナイラで購入していることに着目した。そこで定価5ナイラ(15g)の個袋を2000年に市場に投入し、以後、2008年までにナイジェ

リアでの売上を2000年対比で10倍程度に伸ばしたのである 112。また、三洋電機は、太陽光で充電して使えるLED

ランタン(第1-2-5-41図)の販売をウガンダで開始した。ウガンダでは電化率が都市部で20%、地方ではわずか4%にとどまる 113。先に見たとおり、アフリカ

第1-2-5-39表 我が国のアフリカへの輸出品上位10品目の推移(単位:億ドル)

1995年 2000年 2005年 2009年輸送機械 24.6 輸送機械 18.2 輸送機械 37.2 輸送機械 35.6船舶 17.9 機械機器 9.2 機械機器 13.4 機械機器 17.4機械機器 11.7 船舶 7.2 船舶 10.9 船舶 14.7電機品 5.8 電機品 3.8 電機品 4.9 電機品 5.9鉄 2.5 ゴム 2.0 ゴム 3.0 鉄鋼製品 3.5光学機器 2.3 鉄 1.7 鉄鋼製品 2.1 ゴム 3.2ゴム 2.0 光学機器 1.2 鉄 2.0 鉄 3.0鉄鋼製品 1.6 再輸出品 0.9 光学機器 1.6 再輸出品 1.8鉄道信号機器 1.2 鉄道信号機器 0.9 再輸出品 0.9 光学機器 1.8プラスチック 0.6 鉄鋼製品 0.8 手工繊維 0.7 プラスチック 1.6アフリカ総額 75.2 アフリカ総額 50.5 アフリカ総額 82.1 アフリカ総額 94.9

資料:World Trade Atlasから作成。

第1-2-5-40表 我が国のアフリカからの輸入品上位10品目の推移(単位:億ドル)

1995年 2000年 2005年 2009年宝石、貴金属 8.3 宝石、貴金属 13.5 鉱物性燃料、原油等 31.5 鉱物性燃料、原油等 28.6水産物 7.8 鉱物性燃料、原油等 6.9 宝石、貴金属 20.1 宝石、貴金属 24.9鉱物性燃料、原油等 6.3 水産物 6.0 輸送機械 9.9 鉱石、スラグ、灰 7.9鉄鋼 4.0 鉄鋼 3.0 鉄鋼 6.9 鉄鋼 4.6鉱石、スラグ、灰 3.1 鉱石、スラグ、灰 3.0 鉱石、スラグ、灰 5.4 水産物 4.4木材 2.9 木材 2.6 木材 4.8 木材 2.9銅と銅製品 2.4 アルミ 2.3 水産物 4.3 輸送機械 2.8その他の卑金属類 1.4 ニッケル 1.4 アルミ 3.1 アルミ 2.7スパイス、コーヒー、茶 1.1 輸送機械 1.2 ニッケル 1.8 ココア 1.4塩、硫黄、土壌、岩石 1.1 その他の卑金属類 1.0 スパイス、コーヒー、茶 1.1 種、果実等 0.9アフリカ総額 47.1 アフリカ総額 49.6 アフリカ総額 98.9 アフリカ総額 90.9

資料:World Trade Atlasから作成。

第1-2-5-41図 �三洋電機製LEDランタン�(同社提供写真)

110 ジェトロ「通商弘報」(2010年4月19日)。111 ジェトロ「サブサハラアフリカの消費市場(本編)2010年3月」。(http://www.jetro.go.jp/j�le/report/07000211/honbun.pdf)112 味の素「開発途上国におけるうま味調味料「味の素」のビジネス」(2009年3月10日)113 2009年11月20日付朝日新聞。

Page 16: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade128

第 1章 主要国・地域の現状と今後

では停電も多く、将来大きな家電市場になる可能性を踏まえ、ブランド作りに乗り出している。また、我が国の商社が、ガーナやガボン、リビア、エジプトの油田開発、アンゴラでのセメント工場建設、マダガスカルのニッケル生産、モザンビークでのアルミ精錬、木材チップ加工など、豊富な鉱物資源を狙い、進出を活発化させている。背景には、進出を加速する中国の存在がある。資源開発や社会基盤整備を進める中国系企業は、大量の資金と労働者を現地に送り込んでおり、アフリカの中国系移住者は100万人を超えたとされ、日本の約7,700人(08年)を圧倒している114。このほか、サウジアラビアでは、クボタが2009年3

月に石油化学プラントで使用される耐熱鋳鋼チューブの製造販売会社の設立を発表した。また、同年4月にはジェイ・パワーシステムズと丸紅メタルがサウジアラビア沖合油田・ガス田の開発・生産用の海底電力ケーブル製造販売会社の設立を発表した。

(e)躍進が目立つ中韓企業中東アフリカ諸国においては、近年、中国や韓国企業の躍進が目立っている。例えば、南アフリカの家電市場では、幅広い価格帯の商品が取り扱われており、所得格差が大きいことから売れ筋商品も二極化しているなか、白物家電では洗濯機、冷蔵庫、掃除機などを中心にLG、サムスン(Samsung)などの韓国メーカーが市場を席巻している。家電メーカー関係者は、「韓国は南ア市場にまだ誰も目を向けていなかった10年以上前にいち早く参入し、長い期間をかけてブランドを構築させてきた」と指摘する115。また、ケニアにおいても、家電では韓国メーカーの強さが目立つほか、二輪車では中国

メーカーが躍進している。中国メーカーの二輪車1台あたりの価格は5~8万ケニア・シリングであるのに対し、日本メーカーは9~12万ケニア・シリングであり、低価格を武器に消費者を惹きつけている。また、サウジアラビアへの韓国・中国企業の進出がここ数年加速している。韓国企業は、1970年代に中東で建設ブームが生じた際に大手建設企業が進出の先陣を切り、近年は建設のみならず、製造、通信の分野でも進出がみられている。また、中国も資源、建設分野で国営企業が進出を果たしている(第1-2-5-42表、第1-2-5-43表)。

114 2010年1月11日付読売新聞。115 JETRO、「サブサハラ・アフリカ主要国の消費市場」(2010年3月)

第1-2-5-42表 �サウジアラビアに進出している韓国企業

企業名 業種 投資額(万ドル)

投資比率(%) 進出年

LG電子 製造 485.3 49 2006現代建設 建設 266.6 49 1979GS建設 建設 213.3 49 1981大林建設 建設 133.3 50 1974第一エンテク 製造 93.3 50 2003三星エンジニアリング 建設 80.0 100 2000ハンファ建設 建設 66.0 95 2006テチャン建設 建設 53.3 100 2002斗三重工業 建設 53.3 100 2005サムフン情報通信 通信 35.3 100 2005

資料:ジェトロセンサー(2008年8月)から作成。

第1-2-5-43表 �サウジアラビアに進出している中国企業

企業名 業種CNPC東方地球物理探査公司 石油中原石油探査公司(ZPEB) 石油遼偉化学工業 石油化学中国土木工程集団 建設シノペック第五建設公司 建設シノペック第二建設公司 建設中国化学工程 建設中国鉄道工程総公司第七局集団 建設中国鉄道工程総公司第十八局集団 建設中国材料集団中材国際工程 建設

資料:ジェトロセンサー(2008年8月)から作成。

中国による対アフリカ投資の活発化コラム11

近年、中国企業によるアフリカへの投資が急速に活発化している。中国の対アフリカ直接投資額の推移みる

と、2006年には5億ドル程度であったのが、2年後の2008年にはその10倍以上の約55億ドルに上った(コラム

第11-1図)。

Page 17: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 129

第1章

2008年には、中国商工銀行(ICBC)が56億ドルの

投資 116により南アフリカのスタンダード銀行の株式

の20%を取得した。これは、近年の対南アフリカ投

資のなかでは最大規模の案件である。スタンダード銀

行はアフリカ最大の銀行で、アフリカのビジネス情報

の厚みと、低所得層、BOP市場のビジネスに長けて

いるといわれる。アフリカの有力銀行は独自の通信網

を構築して地方にもATMを設置し、小口口座を広く

集めて送金手数料などの収入を得ている。スタンダー

ド銀行の買収は、そうしたノウハウの取得も含めての

ものだ117。

このほか、中国海洋石油総公司(CNOOC)は、

2006年に23億ドルを投資したナイジェリアのオフショ

ア油田に追加的に45%の出資を行った118。こうした

大型投資案件もあり、中国の対外直接投資において、

アフリカはアジアに次いで第2位の投資先となってい

る(コラム第11-2表)。

中国政府自身もアフリカ諸国との関係強化を図って

いる。石油・鉄・銅・アルミ・ニッケルといった社会資本整備に欠かせない重要資源が国内で賄えないため、

中国政府は首脳による鉱物資源外交を2005 年から積極的に進めている。胡錦濤国家主席は2009年2月10日から

17日にかけて、サウジアラビア、マリ、セネガル、タンザニア、モーリシャスの5か国を公式訪問した。また、

2009年11月8日、エジプトのシャルムエルシェイクにて、第4回中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)閣僚

級会議が開催され、中国側からは温家宝総理ほかが、アフリカ側からは49か国の首脳・閣僚が出席した。

FOCACは、2000年10月に第1回会合が開催され、以後、債務削減、人材育成、医療分野、貿易投資などの分野

で中国がアフリカ諸国に協力内容を提案し、アフリカ側の意見を集約しつつ、政治、経済、文化を包括したア

フリカ協力の体制構築を中国は進めている。第4回会議は、「中国とアフリカの新しいタイプの戦略パートナー

シップを深め、持続可能な発展を図る」というテーマのもとで行われ、「シャルムエルシェイク宣言」と「シャ

ルムエルシェイク行動計画(2010-12年)」が採択され、政治・経済面において協力関係を強化することで双方が

合意した。このほか、2010年1月には楊外相をはじめとする閣僚級の3人がアフリカ諸国を歴訪した。中国外相

によるアフリカ歴訪は20年連続である。

我が国も、1993年以降、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)及び世界銀行等と共同でアフリ

カ開発会議(TICAD)を開催している。TICADは、Tokyo International Conference on African Developmentの略

であり、アフリカの開発をテーマとする国際会議である。5年に1回の首脳級会合に加えて、閣僚級会合等を開

催しており、2008年5月には、横浜において4回目となるTICAD IV(第四回アフリカ開発会議)を開催した。

最終成果物として、今後のアフリカ開発の取組・方向性に関する政治的意思を示す「横浜宣言」、同宣言に基づ

き今後のTICADプロセスの具体的取組を示すロードマップである「横浜行動計画」、TICADプロセスの実施状

況の検証を行うための「TICADフォローアップ・メカニズム」の三つの文書が発出された。

コラム第11-1図 �中国の対アフリカ直接投資動向

2003 2004 2005 2006 2007 2008資料:CEIC Databaseから作成。

0

10

20

30

40

50

60(億ドル)

コラム第11-2表 �中国の対外直接投資動向�(地域別)

(単位:億ドル)アジア アフリカ 欧州 中南米 北米 オセアニア

2003 15.1 0.7 1.5 10.4 0.6 0.32004 30.0 3.2 1.6 17.6 1.3 1.22005 43.7 3.9 4.0 64.7 3.2 2.02006 76.6 5.2 6.0 84.7 2.6 1.32007 165.9 15.7 15.4 49.0 11.3 7.72008 435.5 54.9 8.8 36.8 3.6 19.5

資料:CEIC Databaseから作成。

116 前掲第1-2-5-14表。117 平野克己(2009)「南アフリカの衝撃」。118 UNCTAD, 「World Investment Report 2009」。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade130

第 1章 主要国・地域の現状と今後

119 HSBCレポート情報120 The GCC Banking Sector:Topography and Analysis / IMF Working Paper / Apr 2010

ドバイの行方コラム12

2003年のイラク戦争終結によりもたらされる和

平によりイラク市場を中心とした中東が再度、花

開くことになるであろうとの期待感をベースに、

ドバイが中東の進出拠点として注目を浴びること

となった。更に、新興国の石油需要の拡大等を背

景とした原油価格の高騰(2008年7月に1バレル

当たり147ドルを記録)も中東市場への期待感を

あおり、一層、ドバイへの注目を集めた。

その理由として、ドバイは、アラビア湾の奥に

位置するイラク国境から700kmも離れているため

イラク戦争の影響は受けないであろうとの予測と、

湾岸産油国にあってはいわゆる西洋式生活が出来

ると言う点で最も住み心地が良く、かつ地域のハ

ブとなりえる空港、港湾等、事務所進出のための

経済インフラが整っている点であった。

実際、在ドバイ日本企業の事務所数を見てみる

と、2000年から2003年にかけては約100社であっ

たところ、2005年には約140社、2009年には約

280社に急増している(コラム第12-1図)。

こうした流れの中で、2008年9月のリーマン

ショックを契機にいわゆる「ドバイ・バブル」が

崩壊した。「ドバイ・バブル」とは、ドバイの不

動産バブルであり、当時の中古不動産市場(セカ

ンドハンド市場)に出されている物件の6割が完

成前のものであったとも言われている 119。

バブルに拍車をかけたのは、UAE通貨の対ドル

切り上げ期待に基づきUAE通貨を購入していた

ドル資金の流出が、2007年末から2008年初めに

生じていた 120ことである(コラム第12-3図)。す

なわち、UAE通貨の対ドル切り上げに期待をかけ

たGCC域外通貨が大量にUAE通貨を買い込んだ

結果、UAE国内の銀行における金融資産が膨れ上

がっていた。その金融資産をUAEの各銀行は非

常に積極的に貸し出してしまい、その後に外国資

産の流出が生じ、結果としてリーマンショック以前に既に銀行内の流動性が枯渇していた。そこにリーマン

ショックが来たことから、ドバイのみならずUAE全体の金融業界の流動性枯渇は極端に厳しい状況となったの

である。

コラム第12-1図 �ドバイの日系企業事業所数

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

78 84100 102 105 103 109 104

124144

170

229

257277

0

50

100

150

200

250

300(事業所数)

備考:1.進出事業所数は2001年まで9~ 11月時点、以後は5月時点。

2.算出方法を随時変更しているため、差分は必ずしも実際の増加を示さない。

資料:進出事業所数はジェトロ・ドバイ調べ。

コラム第12-2図 �ドバイ鳥かん写真

備考:2009年9月 ALOSAVNIR-2 撮影。資料:石油資源開発株式会社ドバイ事務所提供。

コラム第12-3図 �GCCの対外債務比率推移

0

5

10

15

20

25

30

08/07

08/01

07/07

07/01

06/07

06/01

05/07

05/01

04/07

04/01

03/07

03/01

(%)

資料:CEIC Databaseから作成。

オマーンサウジアラビア

クウェートカタールUAE

Page 19: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 131

第1章

実体経済面で今回のドバイショック及びドバイ政府系企業のリストラが必要になった最大の要因は、ドバイ

の海上開発とそれに必要となった資金繰りである。海上開発部分の半分以上が人工島の土台だけを作って上モ

ノが立っていないという状況の中で、その開発費用は短期的借り入れで行ってきた。完成しない事業によって

利益は生み出しえず、その返済に窮してしまうのは当然のことであった。

こういう中で、11月25日にいわゆる「ドバイショック」と言われた世界にショックを与えてしまった声明が

ドバイ政府及び政府系企業から出された。声明は、海上開発を一手に手掛けているナキール社及びナキール社

を傘下に抱える親会社ドバイ・ワールド社に関するもので、内容は、2010年5月末までの間、両社が有する当座

の支払い期限を延長させること、およびリストラ計画を策定するというものであった。

そのリストラ計画が明るみにされたのが2010年3月25日であった。計画の主な部分は両社が抱える債務等を

どうするかという点に絞られる。具体的には、①予定通りの返済、②リファイナンス(債務の繰り延べ)、③債

務の株式転換、④要引き渡し物件のスワップ(代替物件による引き渡し)、に分けられる。課題としては、これ

ら具体的方針に関し、債権者との間で合意が成立するか、リストラ計画を遂行するのに必要となる資金のうち、

今後ドバイ政府が肩代わりして拠出しなければならない部分が本当に工面できるのか、などである。

リストラ計画が出されるまでドバイ政府の対応に懐疑的であった債権者らは、とりあえず方向性が示された

ことに対しておおむね評価していると言えそうだが、一方、上記の課題に対する対応の可否が未確定であるこ

とから、業況を厳しく見る必要のある格付け会社や、今後の厳しい交渉が予想される銀行団などはリストラ計

画に対しては未だに懐疑的なところがあるようだ。

他方で、リーマンショック以降人口減少が見られたドバイではあったが、2009年秋頃以降、ドバイの実体経

済は着実に発展してきている。

特に、航空、物流のハブ機能は着実に成長しており、ドバイ国際空港の利用旅客数は世界の国際空港の中で

も第6位に位置し(コラム第12-4表)、かつコンテナ取扱量も3位に上昇している(コラム第12-5表)。他の空港

が前年比に対して大きくマイナス傾向を示しているところ、ドバイ国際空港だけが突出して良い状況にあるこ

とが数値から見て取れる。

コラム第12-4表 �世界の空港 国際線旅客数ランキング(2008年-2009年、単位:人)

順位 空港 2009年 2008年 増減率1 ロンドン(ヒースロー) 60,651,349 61,318,514 -1.1%2 パリ(シャルル・ド・ゴール)53,012,513 55,663,139 -5.0%3 香港 44,984,571 47,053,861 -4.6%4 フランクフルト 44,520,661 46,613,132 -4.7%5 アムステルダム 43,519,833 47,044,939 -8.1%6 ドバイ 40,104,149 36,254,151 9.6%7 シンガポール 36,088,996 36,269,441 -0.5%8 東京(成田) 30,894,531 32,253,890 -4.4%9 マドリッド 29,184,360 30,118,260 -3.2%

10 バンコク 28,834,668 30,045,724 -4.2%

資料:Airports Council International Webサイト(http://www.airports.org/cda/aci_common/display/main/aci_content07_banners.jsp?zn=aci&cp=1-5_725_2__)から作成。

コラム第12-5表 �世界の空港 国際航空貨物取扱量ランキング(2008年-2009年、単位:トン)

順位 空港 2009年 2008年 増減率1 香港 3,349,981 3,604,580 -7.6%2 ソウル(仁川) 2,267,551 2,380,929 -5.0%3 ドバイ 1,846,249 1,733,628 6.1%4 東京(成田) 1,810,448 2,029,512 -12.1%5 上海(浦東) 1,775,045 1,902,848 -7.2%6 フランクフルト 1,757,558 1,942,102 -10.5%7 シンガポール 1,633,794 1,829,849 -12.0%8 台北 1,345,333 1,467,758 -9.1%9 マイアミ 1,332,196 1,514,707 -13.7%

10 アンカレッジ 1,307,410 1,406,773 -7.6%

19 大阪(関西) 545,858 695,969 -27.5%27 アブダビ 378,739 352,227 7.0%28 バーレーン 342,734 366,383 -6.9%29 イスタンブール 339,078 314,325 7.3%

備考:アンカレッジはトランジット貨物も含む。資料:Airports Council International Webサイト(http://www.airports.

org/cda/aci_common/display/main/aci_content07_banners.jsp?zn=aci&cp=1-5_725_2__)から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade132

第 1章 主要国・地域の現状と今後

また、報道ベース 121ではあるが、ドバイの居住人

口は2009年で160万人(昼間人口は240万人)だった

ところ、2010年に入って180万人に増えているとのこ

とである。ドバイよりも比較的生活コストの低い、隣

のシャルジャ首長国(UAE)からの流入が主な要因と

考えられる。

ドバイ政府観光・商務局の国別ホテル滞在客統計資

料によると、2009年にドバイのホテルに滞在した日

本人客は2008年比マイナス40%と大幅に減少してい

るが、ショッピングモールは大賑わいを見せている。

ヨーロッパPGAツアー、テニスのドバイオープン、

競馬のドバイG1レース、エルトン・ジョンやスティ

ングの登場等、華やかな催し物はひっきりなしであ

る。こうした取り組みを絶やさない逞しさもドバイ経

済の特長と言えるのではなかろうか。

ドバイは、中東及びアフリカの物流・航空ハブ機能として着実に発展してきている。いわゆる地域のハブ機

能は、その地域の経済情勢に大きく左右されるのは当然である。例えばエミレーツ航空などは自助努力により

路線拡張122することによって未だに拡大を続けてきているが、今後は一層、世界の経済情勢にも大きく左右さ

れるであろう。世界経済が復活すれば、ドバイ経済の上昇スピードもまた飛躍的に高まると期待される。

コラム第12-6表 �世界の港 国際コンテナ貨物 取扱量ランキング�(2008年、単位:20フィートコンテナ単位(TEU))

順位 港 年間取扱量 前年比1 シンガポール 2,992万 7.1%2 上海(中国) 2,798万 7.0%3 香港(中国) 2,449万 2.1%4 深圳(中国) 2,141万 1.5%5 釜山(韓国) 1,435万 8.2%6 ドバイ(UAE) 1,183万 9.6%7 寧波(中国) 1,123万 5.4%8 広州(中国) 1,100万 7.3%9 ロッテルダム(オランダ) 1,080万 9.1%

10 青島(中国) 1,032万 9.1%

24 東京(日本) 416万 0.8%29 横浜(日本) 348万 2.0%

原出所:Contenarization International資料。資料:The International Association of Ports and Harbors(IAPH)

Webサイト(http://www.iaphworldports.org/world_port_info/statistics/container-4.pdf)から作成。

121 UAE Interact Webサイト(http://www.uaeinteract.com/docs/10,000_new_residents_arrive_in_Dubai_per_month/40354.htm)。122 世界100都市以上へ就航している。2010年3月28日、成田空港の年間発着枠増加に伴い、エミレーツ航空が週5便、就航決定した。

中東からは、ほかにもアブダビのエティハド航空が週5便、カタール航空が週7便、就航決定した。123 ジェトロセンサー(2009年11月)。

イスラム18億人市場獲得に向けて〜ハラル認証の獲得・イスラムへの入り口マレーシア〜コラム13

世界のイスラム教徒は、マレーシア政府によると、約18億人に上るといわれている123。イスラム圏は、人口

増加、経済発展が見込まれ、新たなマーケットとして大きく注目を集めているが、こうした新興市場へのビジ

ネス展開には、異なる文化、習慣への深い理解が重要なポイントとなる。ここでは、イスラムマーケットへの

アプローチとして、イスラムの教えに従った食品等の規格「ハラル認証制度」を活用し、世界のハラル産業ハ

ブを目指すマレーシアの取組を紹介したい。

1.ハラル認証制度

ハラルとはイスラムの教えで、合法と認められたものや行為を示す。イスラムの教えにおいては、豚肉・ア

ルコールのみならず、犬肉、牙を持つ動物、肉食性鳥類、ワニ、遺伝子組み換え食品なども禁止される食材と

される。また、禁止されない食材についても、イスラム教徒の検査員が加工内容をチェックすることなどが要

される。保管・加工・流通手法などについても、非ハラル食品と接触してはならないなどが必要となる。ハラ

ル認証は、こうしたイスラム教の教えに従った安全な食品等の規格を定め、原材料、製造工程、製品品質を審

査し、適合製品を認証し、表示を行うものである。ハラル認証の対象となるのは、食品のみならず、食品添加

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 133

第1章

124 財団法人食品産業センター「マレーシアHalal制度の概要」(2008年3月)及び、財団法人自治体国際化協会Webサイト(http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/sp_jimu/226_2/index.html)。

125 JETRO通商弘報(2008年6月27日)。126 前掲財団法人食品産業センター「マレーシアHalal制度の概要」(2008年3月)及び、財団法人自治体国際化協会Webサイト(http://

www.clair.or.jp/j/forum/forum/sp_jimu/226_2/index.html)。127 JETRO通商弘報(2008年6月27日)及び、ハラル産業開発公社(HDC)Webサイト(http://www.hdcglobal.com/portal/)。

物、サプリメント、食品を提供する場所(レストランなど)にも及ぶ124。

ハラル規格は任意規格ではあるものの、ハラルマーク表示は、イスラム教徒の消費者にとって、その商品選

択に大きな影響を与えている。イスラム圏市場に進出する外資系企業にとって、ハラル規格への理解はビジネ

スチャンス獲得における重要な要素とされる。

2.マレーシアにおけるハラル認証制度

ハラル規格は、現時点国際的に統一された規格は存在せず、各国においてそれぞれ独自に規定が設けられて

いるところ、ある国でハラル規格認証を受けた食品等が他の国で非ハラルとされた事例も少なくない。また、

多くの国のハラル規格・審査方法は体系化されていないことから、非イスラム企業にとっては理解が困難であ

るとの指摘もある。

こうした中、世界のハラル産業ハブを目指すマレーシアでは、ハラル規格を法令に基づく国家規格として体

系化するとともに、マレーシアにおいてハラル認証を受けた商品がどの国においても認められるよう、その内

容を厳格なものとして定めている。具体的には、首相府傘下のイスラム開発局(JAKIM)がハラル規格の審査

を、マレーシア国際貿易産業省(Ministry of International Trade & Industry(MITI))傘下の組織であるハラル

産業開発公社(HDC)(2006年設立)がハラル規格の審査・ハラル産業の振興(海外への情報発信や、裾野育成、

教育など)を担当し(他のイスラム諸国では宗教団体がハラル認証制度を管理・運用することが多い)、規格自

体も法令に基づいて規定されている 125。

イスラム教を国教とし多くの教徒を抱えるマレーシ

アは、先進的なイスラム国としての位置付けを活かし

て、同国をハラル・ハブ化することを方針(第3次工

業化マスタープラン(2006-2020))として掲げてい

る。世界に約18億人の教徒を抱えるイスラム圏の経

済発展は著しく、マレーシア政府によるとハラル市場

は年間2.1兆ドル規模にも上るとされており、同政府

は、マレーシアのハラル認証を世界のイスラム市場に

認められる規格として推進すべく様々な施策展開を

行っている 126(コラム第13-1表)。

こうしたことから、マクドナルド、ネスレなど多く

の世界的食品企業がマレーシアのハラル規格を取得し

ている。味の素、ヤクルト、大正製薬ほか、日系企業もマレーシア国内市場のみならず、将来的には世界のイ

スラム市場を視野にいれ、マレーシアハラル規格を取得しているがその数は多くない(10年2月現在12社)127。

新興市場で成功するためには、異なる文化、生活習慣を乗り越え現地に根付かせるための努力が不可欠であ

る。マレーシアを拠点としてハラルについての理解を深めることで、世界18億人イスラム市場へのアクセスを

目指す企業に注目が集まる。

コラム第13-1表 �マレーシアのハラル産業振興策

マレーシアのハラル産業振興策 内容ハラル企業に対する優遇税制 設備投資に対する税額控除、原材

料、製造機械の輸入に対する輸入税免除

ハラル見本市の開催 毎年マレーシア貿易開発公社主催で 国 際 ハ ラ ル 見 本 市 を 開 催。2009年は、3万人が参加、30億リンギの成約高。

ハラルパーク ハラル産業工業団地。非ハラル製品や材料との接触を避けることが可能。マレーシア全土に20パーク。

資料:財団法人食品産業センター「マレーシアHalal制度の概要」(2008年3月)、財団法人自治体国際化協会Webサイト(http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/sp_jimu/226_2/index.html)から作成。

Page 22: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade134

第 1章 主要国・地域の現状と今後

(2)中南米経済①マクロ経済動向(a)中南米経済の概観中南米諸国は、主要国の人口約4億9,280万人、名

目GDP3兆7,348億ドルの広大な経済圏を形成している 128。各国の経済規模では、ブラジルが最も規模が大きく、次いでメキシコ、ベネズエラ、アルゼンチンの順となっている。一人当たり名目GDPの水準をみると、1万ドルを超えるベネズエラから、2,000ドルに満たないボリビアまで、その分布は幅広い(第1-2-5-44表)。

(b)概況(ⅰ)減速する中南米経済中南米経済は、世界経済危機の余波を受け、2009

年にその成長を大きく減速させた。実質GDP成長率の推移を見ると、中南米カリブ海諸国全体では、2000

年代後半以降前年比5%前後の成長を遂げてきたが、2009年には同4.0%の伸びとなった(第1-2-5-45図)。国別では、成長率を大幅に低下させつつもプラスの成長を維持したのはウルグアイ、ボリビア、ペルーの3

か国に止まり、その他諸国は軒並みマイナス成長に陥った(第1-2-5-46図)。なかでも、メキシコは前年比マイナス6.5%と急速な景気後退がみられた。

IMFによれば、こうした経済成長率の低下は、世界経済危機の発生による海外からの資金流入の減少等の対外資金調達環境の悪化や海外需要の後退、及び、中南米から米国等の海外に出向いている労働者・移民による本国宛の送金(郷里送金)が減少し、消費、投資、輸出が落ち込んだことによる。実際、貿易動向をみると、中南米カリブ海諸国全体では、2009年は財・サービスの輸出が前年比マイナス8.3%の伸びとなった(第1-2-5-47図)。また、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の見通しによれば、2009年は特に原油輸出国の貿易の伸

128 ここでは、中南米諸国はメルコスール加盟5か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ)、準加盟国5か国(チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア)及びメキシコの11か国を対象とした。(ただし、ベネズエラのメルコスール正式加盟は、パラグアイ議会の批准待ちの状態にあり、ベネズエラは現在、投票権なしで会議に参加中。)

第1-2-5-44表 �中南米各国の規模(人口、名目/実質GDP、一人当たり名目GDP)

(2009年)人口

(百万人)名目GDP

(10億ドル)実質GDP成長率(%)

一人当たり名目GDP(ドル)

アルゼンチン 40.1 310.1 0.9 7,725.66ブラジル 191.5 1574.0 -0.2 8,220.36ウルグアイ 3.3 31.5 2.9 9,425.53ベネズエラ 28.6 337.3 -3.3 11,789.00パラグアイ 6.3 14.7 -4.5 2,336.89

メルコスール加盟国計 269.8 2267.6 − −

チリ 17.0 161.8 -1.5 9,525.37ボリビア 10.2 17.6 3.3 1,723.51ペルー 29.1 126.8 0.9 4,356.03エクアドル 14.1 57.3 0.4 4,059.26コロンビア 45.0 228.8 0.1 5,087.43メキシコ 107.6 874.9 -6.5 8,134.75

合計 492.8 3734.8 − −

資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

第1-2-5-45図 �メルコスール加盟国及びメキシコの実質GDP成長率の推移(対前年比)

-15

-10

-5

0

5

10

15

20予測

中南米カリブ アルゼンチン ブラジル ウルグアイベネズエラ パラグアイ メキシコ

(%)

(年)

備考:2010年はIMFによる見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

20092010

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

第1-2-5-46図 �メルコスール準加盟国の実質GDP成長率の推移(対前年比)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

12

チリ ボリビア ペルー コロンビア エクアドル

(%)

(年)

備考:2010年はIMFによる見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

20092010

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

予測

Page 23: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 135

第1章

びが大幅に落ち込んだ(第1-2-5-48図)。出稼ぎ労働者・移民からの郷里送金については、

ECLACの見通しによれば、2009年は前年比伸び率(第1-2-5-49図)が大幅なマイナスとなっている。中南米諸国では、郷里送金は直接投資やODAと並ぶ先進国からの資金フローとして、近年注目を集めてきた。その背景には、資金フローの規模が大きいということが指摘されている。国によっては、海外からの直接投資やODAを凌ぐ規模となっている131。実際、中南米諸国の郷里送金の規模をみると、グアテマラ、ニカラグアなどではその規模はGDP比10%を超え、ハイチやホンジュラスでは実にGDPの20%に相当する規模となっている。また、メキシコは、郷里送金のGDP比は2.5%であるが、GDPの規模が大きいため、中南米地域への郷里送金の総額の約4割を占めるに至っている(第1-2-5-50図)。

各国経済において重要性をもつ郷里送金が縮小したのは、世界経済危機により、出稼ぎ労働者の渡航先の経済が低迷したことによると考えられる。OECDによれば、中南米諸国の海外への出稼ぎ労働者・移民の数は2,000万人を超え、人口の4~5%に相当する 132。そして、出稼ぎ労働者全体の7割強が米国に向かっている(第1-2-5-51図)。今般の世界経済危機で米国経済が大きく減速したことで、中南米諸国への郷里送金が大幅に縮小したと考えられる。

(ⅱ)回復に向かう中南米経済世界経済危機の影響を受けて減速した中南米経済であるが、2009年第1~2四半期を底として、回復へと転じた(第1-2-5-52図)。中南米経済が回復に向かっている背景には、各国政府による政策対応や世界経済の緩やかな回復による影響だけでなく、後述の通り、中

第1-2-5-49図 �中南米諸国への郷里送金額の対前年比伸び率(2008年、2009年)

-8.3

10.6

-3.5

8.5

3.8

2.2

2.5

4.6

-12.6

-6.2

-14.8

-17.9

-13.2

-3.7

-8.8

-7.9

-25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15

エクアドルニカラグアメキシコ

コロンビアジャマイカドミニカ

エルサルバドルグアテマラ 2009年

2008年

(%)

備考:2009年はECLACによる見通し。資料:ECLAC(2009年12月)「Preliminary Overview of the Economies

of Latin America and the Caribbean 2009」から作成。

第1-2-5-48図 �中南米地域経済の輸出の伸び(2009年、対前年比)130

-40 -30 -20 -10 0

メルコスール

鉱物資源国

原油輸出国

中米

南米金額数量

(%)

-34.4

-25.5

-21.7

-21.8

-4.9

-8.6-6.4

-7.1

-6.6

-4.6

備考:2009年はECLACによる見通し。資料:ECLAC(2009年12月)「Preliminary Overview of the

Economies of Latin America and the Caribbean 2009」から作成。

第1-2-5-47図 �中南米地域経済の財、サービス輸出の推移 129

予測

-15

-10

-5

0

5

10

15

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

財・サービス輸出 財輸出

(%)

(年)

備考:2010年はIMFによる見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から

作成。

129 中南米:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、コスタリカ、エル・サルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ、メキシコと15のカリブ海諸国を含む。

130 南米:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、中米:コスタリカ、エル・サルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマを含む。

131 松井謙一郎(2009年3月1日)「中南米地域の郷里送金とオランダ病」(『国際金融』1198号)。132 2000年。資料:OECD, Latin American Economic Outlook 2010。

第1-2-5-50図 �中南米諸国への郷里送金の規模

中南米地域への郷里送金総額に占める割合郷里送金額(対GDP比)

05

1015202530354045

(%)

チリ

アルゼンチン

ウルグアイ

パナマ

コロンビア

メキシコ

ベリーズ

エクアドル

グアテマラ

ジャマイカ

ハイチ

ガイアナ

資料:OECD(2009年)「Latin America Economic Outlook 2010」から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade136

第 1章 主要国・地域の現状と今後

南米経済のファンダメンタルズが過去と比べて健全性を高めていたことなどがある。

(国際機関と各国政府の迅速な対応が奏功)まず、世界経済危機への対応として、IMFや世界銀行による融資枠(流動性供給枠)拡大の動きがみられた。また、中南米域内においても、地域機関が金融混乱への対応策を迅速に講じた。具体的には、2008

年10月13日、IDB(米州開発銀行)、CAF(アンデス開発公社)、FLAR(ラテンアメリカ準備基金)の3機関が、域内諸国への流動性供給枠の確保として、総額93億ドルの融資枠を設定する旨を発表した。その内訳は、IDBが60億ドル、CAFが15億ドル、FLARが18億ドルである。地域機関がリーマンショックの発生後にこうした融資枠設定を迅速に行ったことは、域内諸国の結束を高めたとして評価されている 133。各国政府も対策を講じた(第1-2-5-53表)。例えば、

ブラジル政府は、世界経済危機発生直後の2008年10

月、中小金融機関向けの支援策を発表した。銀行が世界経済危機の影響で資金不足に陥った際、当該銀行が株式を発行し、それを政府系金融機関が取得するというものである。家計向けとしては、2008年10~12月にかけて、オートバイ購入ローンに掛かる金融取引税率の引下げや個人所得税減税、農務省が農業部門に対して50億レアルの信用保証を設定する旨を発表した。企業向けでは、自動車産業における工業製品税率の引下げを実施した。また、メキシコ政府も、2008年10月に「成長・雇用促進プログラム」を発表した。財政支出651億ペソ、融資・保証1,743億ペソに及ぶもので、企業向けでは、中小企業・農業向けの融資・保証枠の拡大、インフラ関連融資枠の拡大などが実施された。家計に対する支援としては、ガソリン価格の凍結、液化石油ガスの

第1-2-5-51図 �中南米諸国からの海外出稼ぎ労働者・移民の渡航先シェア(2000年)

アルゼンチン4.4%

ベネズエラ4.1%

コスタリカ1.0% その他中南米

諸国 3.4%

米国 73.9%スペイン 3.3%カナダ 2.7%

その他OECD諸国 7.1%

資料:OECD(2009年11月)「Latin America Economic Outlook 2010」から作成。

133 松井謙一郎「グローバル金融危機の中南米経済への影響~世界同時不況の中で経済パフォーマンスの格差が広がるか?~」(国際通貨研究所『Newsletter』2009.1.16)。

第1-2-5-53表 中南米諸国の経済危機への対策

アルゼンチン ボリビア ブラジル チリ コロンビア エクアドル メキシコ パラグアイ ペルー ウルグアイ ベネズエラ減税 法人税 ※ ※ ※

個人所得税 ※ ※関税 ※物品・サービス税 ※社会貢献 ※

財政出動 インフラ投資住宅 ※中小企業・農家支援戦略分野への支援家計への現金給付 ※ ※

備考:網掛けは対策が講じられた分野。※は実施期限が明示的に定められている(期間限定の)措置を含むもの。資料:ECLAC「Economic Survey of Latin America and the Caribbean 2008-2009」から作成。

第1-2-5-52図 �中南米主要国の実質GDP成長率の推移(対前年同期比)

-15

-10

-5

0

5

10

15

I II III IV I II III IV I II III IV I II III

2006年 2007年 2008年 2009年

(年/四半期)

アルゼンチン ブラジル チリ コロンビア

メキシコ ペルー ベネズエラ

(%)

資料:各国統計局、各中央銀行から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 137

第1章

10%値下げ、省エネ商品・省エネ住宅への買い換え支援、住宅金融の拡充などが盛り込まれた。

(食料・資源価格の高騰による影響)中南米諸国は、農産品と天然資源が重要な産業と

なっている。例えばブラジルでは、農業は就労人口の約2割、輸出総額の4割を占めている。主な農産品の輸出国上位10か国をみると、とうもろこしでは米国に次ぐ第2位の輸出国となっており、また砂糖については世界の輸出量の5割弱を占めトップとなっている。このほか、アルゼンチンやパラグアイ、ウルグアイなども輸出国の上位に位置づけられている(第1-2-5-54

表)。鉱物資源については、鉄鉱石やボーキサイト、ニッケル等でブラジルが生産国の上位10か国に位置づけられているほか、銅ではチリが世界の生産量のシェア36.1%と第1位になっている(第1-2-5-55表)。このほか、原油については、中南米諸国は世界の原油の埋蔵量の10.7%を保有している。中南米域内では、世界有数の埋蔵量をもつとされるオノリコ油田 134を有するベネズエラの産出量が最も多く、メキシコが域内第2

位の産油国である 135。また、ブラジルでは深海油田の開発による生産量の大幅な増加が期待されている。このような特徴を持つ中南米諸国は、近年の資源・食料品価格の高騰による利得を享受してきた。世界経済危機直後には食料・資源価格の下落がみられ、同国地域経済に悪影響を及ぼしたものの、その後の食料・資源価格の回復は、中南米諸国の経済成長にプラスの

影響を与えるとみられる(第1-2-5-56図)。

(過去と比較した経済のファンダメンタルズの改善)中南米経済は、近年の経済ファンダメンタルズの改善を背景として、過去と比較して対外的な脆弱性は低下している。中南米経済は、かつて、対外債務危機や通貨危機などに頻繁に見舞われてきた。1994年にはメキシコで通貨危機が発生し、これがアルゼンチンに飛び火し、通貨切下げ懸念からアルゼンチンでは多額の預金流出が発生した。また、1999年にはブラジルでも通貨危機が発生した。経常収支の恒常的な赤字を対外借入により賄う構造のなかで、外貨繰りに窮すると市場の警戒感が高まり、資本流入が激減する問題がしばしば生じた。また、2000年代前半には、ブラジルで大統領選挙が実施され、労働者党のルーラ政権が誕生した。同政権の誕生に伴う政策転換の可能性を嫌気して、通貨下落、カントリーリスクプレミアムの上昇、株式下落等の事態が生じた 136。こうした様々な混乱が生じる中で、中南米地域全体のセンチメントは低迷し、成長率が落ち込んだ。しかしながら、ブラジルでは、そうした混乱を回避するため、ルーラ大統領は就任後に方針転換し、前政権以来の財政均衡や経済開放などの基本路線を踏襲し、国際社会からの信頼も回復した。2000年代半ば以降は、多くの中南米諸国が堅調な経済成長を遂げ、地域全体で年率5%前後の成長を維持してきた。

134 オノリコ油田の可採埋蔵量は、2,350億バレルとされている(石油天然ガス・金属鉱物資源機構「ベネズエラ:PDVSA、オノリコベルト超重質油プロジェクトを始め全ての石油プロジェクトの河畔を取得へ」(2007/6/15)

135 2008年のシェア。世界の埋蔵量に占める割合は、ベネズエラが7.9%、メキシコは0.9%である(British Petroleumウェブサイト「Statistical Review of World Energy June 2009」)。

136 財団法人国際金融情報センター「基礎レポート:ブラジル」。

第1-2-5-54表 主要農産品の輸出国上位10か国(千トン、%)

順位 とうもろこし 小麦 砂糖 大豆油 牛肉 豚肉国名 輸出量 シェア 国名 輸出量 シェア 国名 輸出量 シェア 国名 輸出量 シェア 国名 輸出量 シェア 国名 輸出量 シェア

1 米国 52,072 62.0 米国 23,814 19.1 ブラジル 23,850 46.5 アルゼンチン 5,220 55.0 ブラジル 1,555 21.9 米国 1,887 34.52 ブラジル 9,000 10.7 EU27 19,000 15.2 タイ 5,800 11.3 ブラジル 1,500 15.8 豪州 1,390 19.5 EU27 1,250 22.9 3 アルゼンチン 8,000 9.5 カナダ 18,500 14.8 豪州 3,700 7.2 米国 1,474 15.5 米国 785 11.0 カナダ 1,130 20.74 ウクライナ 5,000 6.0 ロシア 18,000 14.4 UAE 1,700 3.3 パラグアイ 250 2.6 インド 675 9.5 ブラジル 645 11.8 5 南アフリカ 1,500 1.8 豪州 15,000 12.0 グアテマラ 1,515 3.0 ボリビア 229 2.4 アルゼンチン 560 7.9 中国 230 4.2

6 セルビア 1,500 1.8 ウクライナ 9,000 7.2 EU27 1,475 2.9 EU-27 190 2.0 ニュージーランド 525 7.4 チリ 142 2.6

7 EU27 1,500 1.8 カザフスタン 7,500 6.0 コロンビア 1,035 2.0 ロシア 110 1.2 カナダ 475 6.7 メキシコ 86 1.6 8 パラグアイ 1,000 1.2 アルゼンチン 2,500 2.0 南アフリカ 900 1.8 中国 100 1.1 ウルグアイ 310 4.4 豪州 45 0.89 インド 1,000 1.2 トルコ 2,300 1.8 キューバ 800 1.6 マレーシア 80 0.8 パラグアイ 210 3.0 韓国 20 0.4

10 タイ 750 0.9 ウルグアイ 1,200 1.0 メキシコ 690 1.3 ノルウェー 68 0.7 コロンビア 180 2.5 ベトナム 10 0.2その他 2,635 その他 7,859 その他 9,812 その他 263 その他 445 その他 20合計 83,957 合計 124,673 合計 51,277 合計 9,484 合計 7,110 合計 5,465

資料:U.S. Department of Agriculture(2009年)「Production, Supply and Distribution Online Database」から作成。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade138

第 1章 主要国・地域の現状と今後

こうしたなかで、中南米各国の経常収支も改善がみられた。1990年代から2000年代初頭までは慢性的に赤字であったが、世界経済の好景気や資源価格の高騰もあり、その後は、赤字幅の縮小もしくは黒字基調となっていた(第1-2-5-57図)。また、中南米諸国の多くは過去に年率100%のイン

フレを経験しており、アルゼンチンやブラジル、ペルーに至っては年率1,000%を超えるハイパーインフレを経験してきた。しかしながら、現在は機動的な金融政策の運営により物価はコントロールされてきてお

第1-2-5-55表 主要資源の生産国上位10か国(千トン、%)

順位 鉄鉱石 ボーキサイト 銅国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア

1 中国 707,000 38.4 豪州 61,389 29.9 チリ 5,557 36.12 ブラジル 354,674 19.3 中国 35,000 17.1 ペルー 1,190 7.73 豪州 299,009 16.2 ブラジル 22,000 10.7 米国 1,170 7.64 インド 180,000 9.8 インド 21,210 10.3 中国 946 6.15 ロシア 105,000 5.7 ギニア 18,500 9.0 豪州 871 5.76 南アフリカ 42,083 2.3 ジャマイカ 14,000 6.8 インドネシア 773 5.07 カナダ 32,834 1.8 ロシア 6,300 3.1 ロシア 740 4.88 イラン 31,538 1.7 ベネズエラ 5,500 2.7 カナダ 589 3.89 カザフスタン 23,834 1.3 スリナム 5,230 2.6 ザンビア 528 3.4

10 メキシコ 12,205 0.7 カザフスタン 4,900 2.4 ポーランド 452 2.9世界計 1,841,971 世界計 205,000 世界計 15,400

順位 鉛 亜鉛 錫国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア

1 中国 1,500 39.1 中国 2,900 26.6 中国 135 41.42 豪州 645 16.8 豪州 1,518 13.9 インドネシア 102 31.33 米国 410 10.7 ペルー 1,444 13.3 ペルー 39 12.04 ペルー 345 9.0 米国 803 7.4 ボリビア 18 5.45 メキシコ 101 2.6 カナダ 623 5.7 ブラジル 10 2.96 カナダ 99 2.6 インド 572 5.3 コンゴ 4 1.17 インド 87 2.3 メキシコ 427 3.9 ベトナム 4 1.18 ボリビア 82 2.1 アイルランド 401 3.7 ニジェール 3 1.09 ポーランド 62 1.6 カザフスタン 386 3.5 ルワンダ 3 0.8

10 ロシア 60 1.6 スウェーデン 215 2.0 マレーシア 3 0.8世界計 3,840 世界計 10,900 世界計 326

順位 銀 ニッケル モリブデン国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア 国名 生産量 シェア

1 ペルー 3 16.6 ロシア 280 16.9 中国 81 37.22 メキシコ 3 14.2 カナダ 255 15.3 米国 56 25.63 中国 3 12.8 インドネシア 229 13.8 チリ 34 15.54 チリ 2 9.2 豪州 160 9.7 ペルー 17 7.75 豪州 2 8.9 ニューカレドニア 125 7.5 メキシコ 8 3.66 ポーランド 1 6.2 コロンビア 101 6.1 カナダ 8 3.57 米国 1 6.0 中国 85 5.1 アルメニア 4 1.98 ロシア 1 5.7 フィリピン 78 4.7 イラン 4 1.79 カナダ 1 4.1 キューバ 75 4.5 ロシア 4 1.7

10 カザフスタン 1 3.8 ブラジル 58 3.5 モンゴル 2 0.9世界計 21 世界計 1,660 世界計 218

備考:ボーキサイト、鉛、錫、モリブデンは2008年、他は2007年の値。資料:US Geological Survey 「Minerals Yearbook 2007」、「Minerals Yearbook 2008」から作成。

第1-2-5-57図 �中南米カリブ海諸国の経常収支の対GDP比

予測中南米カリブ アルゼンチン

ブラジル メキシコ

(%)

-10(年)

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

2010

2008

2006

2004

2002

2000

1998

1996

1994

1992

1990

1988

1986

1984

1982

1980

備考:2010年はIMFの見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

第1-2-5-56図 �商品価格指数、原油価格指数の推移

020406080

100120140160180200

(年)1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

(2005年=100とした指数)

備考:2009年はIMFの見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

商品価格指数

商品価格指数(除く原油)

原油価格指数

予測

Page 27: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 139

第1章

り、そうしたハイパーインフレは過去のものとなっている(第1-2-5-58図、第1-2-5-59図)。さらに、ブラジル、メキシコ、ベネズエラ、ペルーなどの諸国は、資源高で得た富を国内の貧困政策に投入し、貧困家庭への直接手当支給や最低賃金の引上げ措置を積極的に講じた。例えば、ブラジルでは2003年に「ボルサ・ファミリア」計画を実施した。同計画は、低所得層への補助金給付プログラムで、15歳までの子供がいる貧困家庭に対して、学齢期の子供は学校に通わせ、乳幼児は定期健診や予防接種を受けさせることを条件に、生活費として現金を給付するというものである。2006年には、1,110万世帯(4,400万人)が対象となり、さらに、2008年には対象年齢及び給付最高額の引き上げが行われた。貧困家庭の生活を政府が現金を支給することで直接的に支える一方、援助の対象となる家庭では、親が子供の教育と健康に責任を持つことが求められ、単なる金銭支援を超えて中長期的

に国内の所得格差を改善していくことが目指された。こうした取り組みの成果もあり、中南米では近年、貧困率が着実に低下してきている(第1-2-5-60図)。OECDによれば、1992年に47.0%まで上昇した貧困率は、2008年には33.2%に低下した。

(c)各国地域別動向以上にみたように、中南米経済はファンダメンタルズの改善等を背景に経済の外的ショックに対する耐性を強め、世界経済危機の発生後も総じて大きな経済的混乱は回避してきている。以下では、中南米の主要国について、その経済的な特徴を踏まえつつ、今後のリスク要因を整理する。

(ⅰ)米国との関係が強いメキシコ経済今回の世界経済危機により、中南米諸国のなかでも特にメキシコは実質GDP成長率の下落幅が大きく、深刻な打撃を受けた。実質GDP成長率の推移を需要項目別にみると、個人消費、設備投資が成長率を大きく押し下げた(第1-2-5-61図)。

第1-2-5-60図 �中南米における貧困率の推移

0

10

20

30

40

50

60 (%)

備考:中南米人口に占める貧困者数の割合。貧困は、基本的な食生活を営むのに要する費用を所得が下回る状況。

資料:OECD(2009年)「Latin America Economic Outlook 2010」から作成。

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2004

2002

2006

2008(年)第1-2-5-59図 �中南米諸国のインフレ率の推移

(メキシコ、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ)

0

20

40

60

80

100

120

140メキシコチリコロンビアエクアドルパラグアイウルグアイベネズエラ

(%)

(年)2010

2007

2004

2001

1998

1995

1992

1989

1986

1983

1980

備考:2010 年は IMFによる見通し。資料:IMF(2010年 4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

予測

第1-2-5-58図 �中南米諸国のインフレ率(アルゼンチン、ブラジル、ペルー)

-1,000

2010

2007

2004

2001

1998

1995

1992

1989

1986

1983

1980

01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,000

アルゼンチンブラジルペルー

(%)

(年)

備考:2010年はIMFによる見通し。資料:IMF(2010年4月)「World Economic Outlook April 2010」から作成。

予測

第1-2-5-61図 �メキシコの実質GDP成長率需要項目別寄与度(対前年同期比)

純輸出在庫等総固定資本形成政府消費個人消費実質GDP

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

2006 2007 2008 2009 (年/四半期)

資料:CEIC Databaseから作成。

-15

-10

-5

0

5

10 (%)

Page 28: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade140

第 1章 主要国・地域の現状と今後

こうした景気の急速な悪化は、他の中南米諸国に比べて、メキシコはNAFTA発効以降、米国経済との一体化が進んでいるためと考えられる。まず、メキシコの鉱工業生産指数(第1-2-5-62図)は、米国の指数と同様の動きを示すようになっている。メキシコの対米輸出額は、輸出額全体の8割を占め(第1-2-5-63表)、GDPの約4分の1に相当する。また、メキシコへの対内直接投資についても、1999~2009年のストックベースでみると、米国が全体の54.1%を占め、最大の投資国となっている。メキシコは、地理的な優位性から、米国向け輸出・生産拠点として、米国からの直接投資を高水準で引きつけてきた(第1-2-5-64図)。

米国経済の減速により需要が大幅に縮小したことで、メキシコの輸出は急速に悪化し、生産も低迷した。対内直接投資をみても製造業が低下してる(第1-2-5-65図)。先述の通り、出稼ぎ労働者の郷里送金も急減したことから、個人消費も大きく落ち込んだ 137。しかしその後は、政府による景気対策の実施や米国経済の緩やかな回復により、メキシコ経済は底離れが進んだ。一体化の進んだ米国経済は、メキシコ経済に大きな影響を与える存在であり、今後の米国経済の動向がメキシコ経済の回復度合いを大きく左右すると考えられる。

(ⅱ)商品輸出と内需がカギとなるブラジル・アルゼンチン(ブラジル経済の動向:経済概況)他方、近年のブラジルは、輸出と内需が同国経済を牽引してきた。2004年以降、利下げなどの影響もあり民間消費や固定資本形成が堅調に拡大したほか(第1-2-5-66図)、米国や中国を中心とする海外需要の拡大や一次産品価格の上昇により、輸出が大幅に拡大した。その後、ブラジルの資源や成長性に注目が集まり、海外からの直接投資や証券投資が拡大した。海外からの資金流入によりレアル高が進み、輸出企業の生産縮小などがみられたものの、輸出や直接投資の拡大による好景気を背景に、失業率の低下や実質賃金の上

137 このほか、景気後退をもたらした要因として、新型インフルエンザの流行によって経済活動が一部で制限されたこと、近年の農産物の輸入が拡大しているなかの穀物価格の上昇や通貨ペソの下落により輸入物価が押しあがり、インフレ率が高止まりしたことがある。

第1-2-5-63表 メキシコの主要国・地域別輸出入構成比の推移(%)

地域・国輸出(備考1) 輸入(備考1)

1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009北米 84.6 90.2 87.7 86.8 84.5 82.6 84.2 76.2 75.4 56.2 53.8 52.4 52.3 51.1 米国 82.0 88.0 85.7 84.7 82.1 80.2 80.5 74.3 73.1 53.4 50.9 49.6 49.2 48.0 カナダ 2.6 2.1 2.0 2.1 2.4 2.4 3.6 1.9 2.3 2.8 2.9 2.8 3.0 3.1中米(備考2) 1.0 0.9 1.1 1.1 1.3 1.4 1.3 0.1 0.2 0.6 0.6 0.5 0.6 0.8ALADI(備考3) 4.5 2.0 2.8 3.3 4.1 4.8 4.4 2.0 2.3 4.8 4.9 4.4 3.9 3.5EU 4.7 3.5 4.3 4.4 5.1 5.8 4.9 9.4 8.6 11.6 11.3 11.9 12.6 11.6EFTA(備考4) 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.6 0.5 0.6 0.5 0.5 0.5 0.6NIES(備考5) 1.0 0.5 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 3.0 4.0 6.0 7.1 7.5 7.3 7.3日本 1.3 0.7 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 5.5 3.7 5.9 6.0 5.8 5.3 4.9パナマ 0.3 0.2 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0中国 0.3 0.2 0.5 0.7 0.7 0.7 1.0 0.7 1.7 8.0 9.5 10.5 11.2 13.9イスラエル 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.1 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2その他 2.1 1.7 2.1 2.2 2.6 2.8 2.3 2.6 3.4 6.0 6.2 6.1 6.2 6.2合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

備考:1.輸出は運賃・保険料込み、輸入は通関統計、2.ベリーズ、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、3.アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、チリ、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、キューバ(1999年8月25日加盟)、4.アイスランド、ノルウェー、スイス、5.韓国、台湾、香港、シンガポール。

資料:CEIC Databaseから作成。

第1-2-5-62図 �メキシコと米国の鉱工業生産指数の推移

-15

-10

-5

0

5

10

2005 2006 2007 2008 2009(年月)

備考:メキシコは2003年を100、米国は2002年を100とした指数。資料:CEIC Databaseから作成。

(対前年同月比、後方3ヶ月移動平均、%)

メキシコ米国

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

Page 29: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 141

第1章

昇などが進んだ(第1-2-5-67図)。これにより、個人消費が拡大し、国内市場向けに生産を高める目的から企業による設備投資も拡大するなど、経済の好循環がみられた。

2014年のサッカーワールドカップ及び、2016年のリオデジャネイロオリンピック開催を控え、社会資本整備として高速鉄道建設計画が進められている。リオデジャネイロ、サンパウロ、カンピーナスを結ぶ全長

約500kmの鉄道計画の初期投資費用は約1兆7000億円 138とも言われている。また、高速鉄道が完成すれば、主要3都市が最高時速約300km、2時間半以内で結ばれ、利便性が高まる。海外からの投資がますます活発化する可能性もある。世界経済危機の影響により、企業の設備投資は大きく落ち込んだが、個人消費は伸び率が低下しつつもGDP成長率を押し上げた。その後、政府による自動車(第1-2-5-68図)等耐久消費財に関する減税の効果や、2009年1月以降に政策金利を累計500bp引き下げてきたことにより、個人消費が回復し、景気の牽引役を果たしている。また、欧州向けや中国向けを中心に、輸出も順調に回復している。消費と輸出の回復で国内生産も急速に拡大し、再び内外需の好循環による成長へと戻りつつある。もっとも、景気拡大への期待が高く、また、大規模な利下げを行ってもその水準は世界的に高いことから、ブラジルへの海外資金の流入が拡大している。マネーサプライが押し上げられ、流動性資金の一部が株式や不動産に向かい、株式市場では世界経済危機前の最高値に近い水準にまで株価が上昇している(第1-2-

5-69図)。また、通貨レアルについても、対ドルにおいて高い水準で推移している。こうした状況を受けて、2010年2月24日に金融当局は預金準備率の引き上げを決定しており、金融緩和の見直しを進めている(第1-2-5-70図)。

(ブラジル経済の動向:貿易動向)ブラジルの輸出をみると、ブラジルは大豆、コー

138 2009年8月26日読売新聞オンライン。

第1-2-5-64図 �メキシコの対内直接投資(国別)

-50

0

50

100

150

200

250

300

350

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(億ドル)

資料:CEIC Databaseから作成。

(年)

米国

カナダ

英国

ドイツ

日本

フランス

スペイン

オランダ

その他

第1-2-5-65図 �メキシコの対内直接投資(産業別)

-50

0

50

100

150

200

250

300

350

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

その他サービス

運輸・通信

商業

建設

電力・水道

鉱業

農林水産業

金融

製造業

(億ドル)

資料:CEIC Databaseから作成。(年)

第1-2-5-67図 �ブラジルの失業率と実質賃金上昇率の推移

-10

2010年1月

(年/月)2009年7月

2009年1月

2008年7月

2008年1月

2007年7月

2007年1月

2006年7月

2006年1月

2005年7月

2005年1月

2004年7月

2004年1月

2003年7月

2003年1月

2002年7月

2002年1月

-5

0

5

10

15

失業率実質賃金上昇率(対前年同月比)

(%)

資料:CEIC Databaseから作成。

第1-2-5-66図 �ブラジルの実質GDP成長率の需要項目別寄与度(対前年同期比)

-6 -4 -2 0 2 4 6 8

10 12

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

2006 2007 2008 2009

資料:CEIC Databaseから作成。

(%)

(年/四半期)

純輸出在庫等固定資本形成政府消費家計消費

Page 30: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade142

第 1章 主要国・地域の現状と今後

第1-2-5-68図 �ブラジルの自動車販売台数の推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

50

2005 2006 2007 2008 2009 2010(年/月)

自動車販売台数(右目盛)

伸び率(3ヶ月移動平均)(左目盛)

(対前年同月比、%) (万台)

資料:ANFAVEA(ブラジル自動車工業会)から作成。

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

12月

11月

10月

9月

8月

7月

6月

5月

4月

3月

2月

1月

3月

2月

1月

第1-2-5-69図 �ブラジルの資本収支と株価指数の推移

-150

-100

-50

0

50

100

150

200

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

2006

/01/

3120

06/0

2/28

2006

/03/

3120

06/0

4/30

2006

/05/

3120

06/0

6/30

2006

/07/

3120

06/0

8/31

2006

/09/

3020

06/1

0/31

2006

/11/

3020

06/1

2/31

2007

/01/

3120

07/0

2/28

2007

/03/

3120

07/0

4/30

2007

/05/

3120

07/0

6/30

2007

/07/

3120

07/0

8/31

2007

/09/

3020

07/1

0/31

2007

/11/

3020

07/1

2/31

2008

/01/

3120

08/0

2/29

2008

/03/

3120

08/0

4/30

2008

/05/

3120

08/0

6/30

2008

/07/

3120

08/0

8/31

2008

/09/

3020

08/1

0/31

2008

/11/

3020

08/1

2/31

2009

/01/

3120

09/0

2/28

2009

/03/

3120

09/0

4/30

2009

/05/

3120

09/0

6/30

2009

/07/

3120

09/0

8/31

2009

/09/

3020

09/1

0/31

2009

/11/

3020

09/1

2/31

2010

/01/

3120

10/0

2/28

2010

/03/

3120

10/0

4/30

ボベスパ指数(左目盛)資本収支(右目盛)

(ポイント) (億ドル)

備考:ボベスパ指数は月平均の値。資料:CEIC Database(資本収支)、Bloomberg(ボベスパ指数)から作成。

(年月日)

Page 31: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 143

第1章

ヒー、オレンジジュース、カカオ、鉄鉱石などの一次産品の輸出に強く、近年、輸出全体に占める一次産品の占める割合が高まっている。2009年では、一次産品が輸出全体の40.5%を占め、半製品は13.4%、工業製品44.0%となっている(第1-2-5-71表)。先進国や中南米諸国の半製品・工業製品に対する需要が低迷する一方で、中国等の一部の国で資源需要の回復が進んだことから、一次産品のシェアが拡大した。また、ブラジルの輸出を貿易相手国別にみると、

2009年は中国が全体の13.2%を占め、米国が10.3%、

EUが22.2%、中南米が23.3%、その他の地域が3割強となっている。2003年から2009年にかけて、米国のシェアが大きく低下する一方で、中国や中南米のシェアが大幅に上昇している。中国は、09年、米国に代わり、最大の輸出相手国となった(第1-2-5-72表)。メキシコと異なり貿易相手国のウェイトが分散して

いる状況のなかで、品目では一産品価格の動向、輸出先では先進国はもとより中国や中南米諸国の需要の動向が、今後のブラジル経済の動向に影響を与えると考えられる。

(ⅲ)アルゼンチン経済の動向アルゼンチンにおいても、輸出と内需が経済を牽引している状況がみられる。アルゼンチン経済は、2002

年の通貨危機の際に変動相場制に移行し、為替相場が切り下げられたことで、輸出競争力が回復し生産活動が拡大した。国内での生産の拡大は雇用環境の改善をもたらし(第1-2-5-73図)、これが個人消費の拡大に結びついてきた。個人消費はアルゼンチンのGDPの65%程度を占め、経済成長を強く押し上げてきた。また、輸出全体の4分の1を占める大豆関連を中心とした農産物輸出も(第1-2-5-74図)、中国での需要増加等

第1-2-5-71表 �ブラジルの輸出構造(一次産品、半製品、工業製品)(百万ドル)

2000年 (構成比) 2001年 (構成比) 2002年 (構成比) 2003年 (構成比) 2004年 (構成比) 2005年 (構成比) 2006年 (構成比) 2007年 (構成比) 2008年 (構成比) 2009年 (構成比)一次産品 12,564 22.8% 15,349 26.3% 16,959 28.1% 21,186 28.9% 28,529 29.5% 34,732 29.3% 40,285 29.2% 51,596 32.1% 73,028 36.9% 61,969 40.5% 鉄鉱石 3,048 5.5% 2,932 5.0% 3,049 5.0% 3,456 4.7% 4,759 4.9% 7,297 6.2% 8,949 6.5% 10,558 6.6% 16,539 8.4% 13,247 8.7% コーヒー 1,559 2.8% 1,208 2.1% 1,195 2.0% 1,302 1.8% 1,750 1.8% 2,516 2.1% 2,928 2.1% 3,378 2.1% 4,131 2.1% 3,761 2.5% 大豆 2,188 4.0% 2,726 4.7% 3,032 5.0% 4,290 5.9% 5,395 5.6% 5,345 4.5% 5,663 4.1% 6,709 4.2% 10,952 5.5% 11,424 7.5%半製品 8,499 15.4% 8,244 14.1% 8,965 14.8% 10,945 15.0% 13,433 13.9% 15,963 13.5% 19,523 14.2% 21,800 13.6% 27,073 13.7% 20,499 13.4% パルプ 1,601 2.9% 1,246 2.1% 1,160 1.9% 1,744 2.4% 1,722 1.8% 2,034 1.7% 2,479 1.8% 3,012 1.9% 3,901 2.0% 3,309 2.2% 粗糖 761 1.4% 1,401 2.4% 1,111 1.8% 1,350 1.8% 1,511 1.6% 2,382 2.0% 3,936 2.9% 3,130 1.9% 3,650 1.8% 5,979 3.9% 半加工鉄鋼 1,360 2.5% 1,082 1.9% 1,410 2.3% 1,619 2.2% 2,124 2.2% 2,304 1.9% 2,277 1.7% 2,340 1.5% 4,002 2.0% 1,734 1.1%工業製品 32,559 59.1% 32,957 56.5% 33,068 54.7% 39,764 54.3% 53,137 55.0% 65,353 55.1% 75,018 54.4% 83,943 52.3% 92,683 46.8% 67,349 44.0% 航空機 3,054 5.5% 2,839 4.9% 2,335 3.9% 1,939 2.6% 3,269 3.4% 3,168 2.7% 3,241 2.4% 4,719 2.9% 5,495 2.8% 3,860 2.5% 自動車 1,768 3.2% 1,951 3.3% 2,005 3.3% 2,656 3.6% 3,352 3.5% 4,395 3.7% 4,597 3.3% 4,653 2.9% 4,916 2.5% 3,245 2.1% オレンジジュース 1,019 1.8% 813 1.4% 869 1.4% 910 1.2% 790 0.8% 796 0.7% 1,043 0.8% 1,543 1.0% 1,145 0.6% 706 0.5%輸出計 55,119 100.0% 58,287 100.0% 60,439 100.0% 73,203 100.0% 96,678 100.0% 118,529 100.0% 137,807 100.0% 160,649 100.0% 197,942 100.0% 152,995 100.0%

資料:CEIC Databaseから作成。

第1-2-5-72表 �ブラジルの輸出構造(輸出相手先)(%)

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009中南米 17.7 20.4 21.5 22.9 22.9 25.9 23.3 アルゼンチン 6.2 7.6 8.4 8.5 8.5 8.9 8.4EU 24.8 25.0 22.4 22.5 22.5 23.4 22.2米国 23.1 21.1 19.2 18.0 18.0 14.0 10.3日本 3.2 2.9 2.9 2.8 2.8 3.1 2.8中国 6.4 5.6 5.8 6.1 6.1 8.3 13.2東欧(含むロシア) 3.1 2.6 3.3 2.8 2.8 2.8 2.2中東 3.9 3.8 3.6 4.2 4.2 4.1 4.9アフリカ 3.9 4.4 5.1 5.4 5.4 5.1 5.7輸出計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

資料:ブラジル中央銀行から作成。

第1-2-5-73図 �アルゼンチンの失業率の推移

0

5

10

15

20

25(%)

資料:CEIC Databaseから作成。

2009

年12

2009

年09

2009

年06

2009

年03

2008

年12

2008

年09

2008

年06

2008

年03

2007

年12

2007

年09

2007

年06

2007

年03

2006

年12

2006

年09

2006

年06

2006

年03

2005

年12

2005

年09

2005

年06

2005

年03

2004

年12

2004

年09

2004

年06

2004

年03

2003

年12

2003

年09

2003

年06

2003

年03

(年/月)

第1-2-5-70図 �主要通貨の対ドル為替レート変化率

対ドル増価

対ドル減価

-30

-20

-10

0

10

20

30

ユーロ 円 ルピー ルーブル レアル

(%)

備考:2009年1月3日の1ドルあたりの為替レートを基準とした変化率。資料:Bloombergから作成。

2009

/01/

0320

09/0

1/17

2009

/01/

3120

09/0

2/14

2009

/02/

2820

09/0

3/14

2009

/03/

2820

09/0

4/11

2009

/04/

2520

09/0

5/09

2009

/05/

2320

09/0

6/06

2009

/06/

2020

09/0

7/04

2009

/07/

1820

09/0

8/01

2009

/08/

1520

09/0

8/29

2009

/09/

1220

09/0

9/26

2009

/10/

1020

09/1

0/24

2009

/11/

0720

09/1

1/21

2009

/12/

0520

09/1

2/19

2010

/01/

0220

10/0

1/16

2010

/01/

3020

10/0

2/13

2010

/02/

2720

10/0

3/13

2010

/03/

27

(年/月/日)

Page 32: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade144

第 1章 主要国・地域の現状と今後

を背景に拡大した 139。世界経済危機の影響により、アルゼンチン経済はマイナス成長を余儀なくされたものの、その後は徐々に回復がみられている(第1-2-5-75図)。貿易面では、輸出は2008年11月から2009年10月まで12か月連続で前年比マイナスの伸びとなったが、その後は緩やかな回復の兆しが見えてきている。経常収支については、アルゼンチンは近年黒字を維持してきた(第1-2-5-76図)。今後は、世界経済の回復に伴い輸出が拡大する一方、内需拡大のペースが高くないことから輸入が抑制され、経常黒字が維持される可能性がある。

(ⅳ)石油資源に依存するベネズエラベネズエラ経済は、石油部門への依存度が高い構造

になっている。2000年代に入り、石油部門の投資不足や政情不安などを背景に生産量が減少したため、GDPに占める比率は低下してきている。しかしながら、それでも同国のGDPの10%強を占め、輸出においては80~90%を占めている。石油部門への依存が高いことから、2008年夏以降の原油価格および世界経済の減速が、ベネズエラの石油輸出額を低迷させ、ベネズエラ経済を減速させる要因となった(第1-2-5-77図)。世界経済が危機後に回復過程にあるなかで、ベネズエラ経済は2009年第4四半期も実質GDP成長率が前年同期比マイナス5.8%と、3四半期連続のマイナス成長となっている(第1-2-5-78

図)。2008年前半までの石油価格の高騰は、ベネズエラ

経済の高成長をもたらしたが、輸出産品の多様化には必ずしも結びついていない(第1-2-5-79表)。産業構造の転換が進まず、資源依存型の成長は、資源価格の動

第1-2-5-74図 �アルゼンチンの品目別輸出額の推移

原油・エネルギー工業製品農業加工品農産物

0

1,000

2000年1

月2001年1

月2002年1

月2003年1

月2004年1

月2005年1

月2006年1

月2007年1

月2008年1

月2009年1

月2010年1

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

資料:CEIC Databaseから作成。

(百万ドル)

(年/月)

139 堀江正人「アルゼンチン経済の現状と今後の展望」(『国際金融』1198号(2009.3.1))。

第1-2-5-77図 �ベネズエラの原油輸出額と経常収支の推移

-100-50

050

100150200250300350

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

2006 2007 2008 2009

(億ドル)

(年/四半期)

資料:ベネズエラ中央銀行から作成。

原油輸出経常収支

第1-2-5-76図 �アルゼンチンの経常収支の推移

-200(年)

-150

-100

-50

0

50

100

150

200

250(億ドル)

資料:CEIC Databaseから作成。1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

移転収支所得収支サービス財経常収支

第1-2-5-75図 �アルゼンチンの実質GDP成長率需要項目別寄与度(対前年同期比)

-8-6-4-202468

1012

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

2006 2007 2008 2009

純輸出在庫投資等総固定資本形成政府消費個人消費実質GDP成長率

(%)

資料:CEIC Databaseから作成。

(年/四半期)

Page 33: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 145

第1章

向に大きな影響を受けるという脆弱性があり、今後の安定的な発展に向けては、石油収入を他産業の育成に向けていくなどの中長期的な取り組みが必要であると考えられる。

②中南米域内における経済交流の深まりと我が国企業(a)域内経済交流の深まり中南米では、1991年にアスンシオン条約が署名され、1995年1月1日、対外共通関税を設けた関税同盟として南米南部共通市場(メルコスール)が発足した。原則として域内関税が撤廃され、域内貿易の自由化が進められた(第1-2-5-80表)。メルコスールの発足を通して、域内貿易の活発化が進んでいる。例えば、アルゼンチンは、1990年にはメルコスール加盟国向けの輸出は全体の14.7%を占めていたが、2000年には31.9%にまで拡大した。2001

年以降、中国をはじめとする新興国向け輸出のシェアが高まったことから、2000年代半ばはメルコスール向け輸出のシェアは19~20%前後に低下したが、その後はブラジルの景気拡大等の影響もあり、再びシェアが拡大している(第1-2-5-81表)。また、メルコスール加盟国間の輸出入動向を2003

年と2008年で比較してみると、パラグアイやウルグ

第1-2-5-79表 �ベネズエラの実質GDP成長率の推移(部門別)(%)

2008/Q1 2008/Q2 2008/Q3 2008/Q4 2009/Q1 2009/Q2 2009/Q3 2009/Q4実質GDP成長率 4.9 7.2 3.8 3.5 0.5 -2.6 -4.6 -5.8 石油部門 1.8 2.1 4.4 1.5 -5.0 -3.9 -9.6 -10.2 非石油部門 5.0 8.0 3.9 3.8 1.4 -2.0 -3.1 -4.0  鉱業 -3.2 2.5 0.9 -15.3 -11.1 -9.8 -18.3 -4.8  製造業 1.3 4.7 -0.3 0.1 -0.6 -8.3 -9.1 -6.9  電気・水道 -1.2 7.9 9.5 6.2 3.6 3.9 4.0 5.5  建設 -1.1 9.5 3.7 2.2 2.7 0.5 1.8 -3.5  商業 5.9 7.7 1.9 3.9 0.7 -6.8 -11.0 -13.9  運輸・倉庫 5.5 6.7 0.5 3.3 1.2 -4.9 -10.7 -16.9  通信 18.5 27.2 13.9 12.9 9.8 7.6 11.8 10.5  金融・保険 -3.9 -9.4 -5.1 -0.1 -2.8 1.9 -3.6 -4.7  不動産、賃貸サービス 3.4 3.8 1.6 1.8 -0.2 -2.1 -2.9 -2.8  地域・社会・個人サービス 10.1 9.9 9.6 8.7 4.2 4.4 3.8 0.6  政府サービス 6.4 6.6 4.1 4.6 1.0 3.3 2.4 2.8

資料:CEIC Databaseから作成。

第1-2-5-80表 �メルコスールの目的・原則

(1)域内の関税及び非関税障壁の撤廃等による財、サービス、生産要素の自由な流通

(2)対外共通関税の創設、共通貿易政策の採択及び地域的、国際的経済・貿易面での立場の協調

(3)マクロ経済政策の協調及び対外貿易、農業、工業、財政・金融、外国為替・資本、サービス、税関、交通・通信などのセクター別経済政策の協調

(4)統合過程強化のための関連分野における法制度の調和

資料:外務省ウェブページから作成。

第1-2-5-81表 �アルゼンチンの貿易相手国、地域の構成比

(%)【輸出】 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

メルコスール 18.9 19.7 19.1 21.4 22.3 23.1 24.9NAFTA 14.6 14.3 14.7 13.1 11 10.5 9EU 20.2 18 17 17.2 17.7 18.7 18.5その他 46.3 48.1 49.2 48.3 49 47.8 47.7

合 計 100 100 100 100 100 100 100【輸入】 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

メルコスール 37.3 36.6 38.4 37.1 36.2 35.4 33.9NAFTA 18.7 19.2 17.4 16.4 15.6 15.6 17EU 19.7 18.9 16.8 17 16.7 15.7 16.5その他 24.3 25.3 27.4 29.4 31.5 33.3 32.6

合 計 100 100 100 100 100 100 100

資料:INDEC(Instituto Nacional de Estadística y Censos, www.indec.gov.ar)から作成。

第1-2-5-78図 �ベネズエラの実質GDP成長率需要項目別寄与度(対前年同期比)

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

2006 2007 2008 2009

純輸出

在庫投資

総固定資本形成

政府消費

個人消費

実質GDP成長率

(年/四半期)

資料:ベネズエラ中央銀行から作成。

(%)

Page 34: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade146

第 1章 主要国・地域の現状と今後

アイでは輸出入に占める加盟国のシェアが大幅に拡大している。域内貿易比率が高いEUには及ばないものの、関税同盟の発足を背景に、貿易面では域内比率が高まりつつある(第1-2-5-82表)。また、域内企業による事業協力・投資も活発化している。

例えば、ブラジルの国営石油公社ペトロブラスとベネズエラの石油公社PDVSAは、2009年10月30日、重質油向けの製油所、アブレウ・イ・リマを両社が共同出資して建設することについて、最終合意に達したと発表した。ペトロブラスは、2012年中に稼働を開始するとしている 140。また、2008年には、中南米企

第1-2-5-82表 メルコスール加盟国間の輸出入額とシェア(2008年と2003年)メルコスール加盟国間の輸出入額(2008年)

(百万ドル、%)輸出

アルゼンチン ブラジル パラグアイ ウルグアイ ベネズエラ 加盟国計 全世界

アルゼンチン16,551.0 889.0 1,376.0 1,486.0 20,302.0 70,588.0

23.4 1.3 1.9 2.1 28.8

ブラジル16,943.0 1,984.0 1,491.0 5,654.0 26,072.0 197,942.0

8.6 1.0 0.8 2.9 13.2

パラグアイ1,096.4 810.7 595.4 10.2 2,512.7 4,336.0

25.3 18.7 13.7 0.2 58.0

ウルグアイ485.5 1,248.7 83.7 229.4 2,047.3 6,420.8

7.6 19.4 1.3 3.6 31.9

ベネズエラ28.0 626.0 1.0 5.0 660.0 93,242.0

0.0 0.7 0.0 0.0 0.7輸入

アルゼンチン ブラジル パラグアイ ウルグアイ ベネズエラ 加盟国計 全世界

アルゼンチン17,670.0 1,206.0 534.0 31.0 19,441.0 57,413.0

30.8 2.1 0.9 0.1 33.9

ブラジル16,551.0 811.0 1,249.0 626.0 19,237.0 173,107.0

9.6 0.5 0.7 0.4 11.1

パラグアイ889.0 1,984.2 83.7 221.9 3,178.7 8,303.7

10.7 23.9 1.0 2.7 38.3

ウルグアイ1,513.1 1,639.8 654.9 6.0 3,813.8 8,943.4

16.9 18.3 7.3 0.1 42.6

ベネズエラ1,806.0 5,435.0 11.0 252.0 7,504.0 49,602.0

3.6 11.0 0.0 0.5 15.1

備考:下段は当該国の全世界向け総額に占めるシェア。資料:IMF「Direction of Trade Statistics」から作成。

メルコスール加盟国間の輸出入額(2003年)(百万ドル、%)

輸出アルゼンチン ブラジル パラグアイ ウルグアイ ベネズエラ 加盟国計 全世界

アルゼンチン4,663.0 445.0 543.0 140.0 5,791.0 29,566.0

6.6 0.6 0.8 0.2 8.2

ブラジル4,561.0 707.0 404.0 606.0 6,278.0 73,084.0

2.3 0.4 0.2 0.3 3.2

パラグアイ66.4 424.9 243.1 6.5 740.8 1,241.5

1.5 9.8 5.6 0.1 17.1

ウルグアイ154.9 470.8 47.8 3.9 677.5 2,770.7

2.4 7.3 0.7 0.1 10.6

ベネズエラ8.0 276.0 3.0 1.0 288.0 23,990.00.0 0.3 0.0 0.0 0.3

輸入アルゼンチン ブラジル パラグアイ ウルグアイ ベネズエラ 加盟国計 全世界

アルゼンチン4,708.0 295.0 164.0 9.0 5,176.0 13,834.0

8.2 0.5 0.3 0.0 9.0

ブラジル4,673.0 475.0 538.0 276.0 5,962.0 48,291.0

2.7 0.3 0.3 0.2 3.4

パラグアイ402.7 605.1 59.2 2.9 1,069.8 1,865.3

4.8 7.3 0.7 0.0 12.9

ウルグアイ571.7 459.8 10.7 1.1 1,043.2 2,205.9

6.4 5.1 0.1 0.0 11.7

ベネズエラ154.0 666.0 7.0 4.0 831.0 9,256.0

0.3 1.3 0.0 0.0 1.7

備考:下段は当該国の全世界向け総額に占めるシェア。資料:IMF「Direction of Trade Statistics 」から作成。

140 独立行政法人日本貿易振興機構(2009年11月6日)通商弘報「PDVSAとの共同製油所建設に正式合意(ブラジル)」。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 147

第1章

業同士の大型M&Aも行われている。ペルーの産金企業のCia de Minas Buenaventure SAAが、ブラジルの金属鉱石開発企業Mineracao Taboca SAを4億4,700

万ドルで買収した。また、アルゼンチンの穀物加工企業Grupo Los Grobo SAがブラジルの大豆生産企業Sementes Selectaを4億5,500万ドルで買収している。

(b)我が国企業の進出動向我が国企業による中南米諸国への投資動向をみると、その水準は決して高いものではない。しかしながら、中南米諸国の持つ資源や市場性に着目し、積極的に進出を果たしている企業がある。日本企業による直接投資の動向をみると、例えば、アルゼンチンへの直接投資の2003~2008年末時点の投資残高は4億9,400万ドルと、アルゼンチンへの直接投資全体の僅か0.6%を占めるに過ぎない水準である。この間、中国は投資残高が9億7,900万ドルと依然として規模は小さいが、日本のほぼ倍の規模に達している。また、メキシコへの直接投資も同様であり、メキシコの対内直接投資は、1999年から2009年9月末までの累計が2,266億ドルの流入超であったが、このうち日本からの投資額は19.9億ドルと、全体の0.9%を占めるに止まっている。独立行政法人日本貿易振興機構の調べによれば、中南米に進出している我が国企業が直面している経営上の課題として、為替変動や労働コストの上昇、税制問題、通関・物流などが指摘されており 141、こうした問題が我が国からの直接投資が低い水準に止まっている一因と考えられる。また、我が国企業は、例えば「中国プラス1」または「ASEANプラス1」など、アジアへの投資では周辺諸国への投資をパッケージにしている場合が多いが、例えばブラジルでは、一部例外として自動車と自動車部品メーカーがメルコスールやメキシコ市場を前提とした投資を展開しているが、基

本的には国内での生産・販売を目的とする投資が多く、アジアと同じような投資パターンを実現している例はあまりみられない 142。生産ネットワークの深化が進むアジアと比べ、中南米経済の一体化の度合いが低いとの認識が、中南米への投資の低迷の背景になっているとも考えられる。しかしながら、我が国企業はこれまで、中南米諸国に着実に進出している。例えば、メキシコでは、自動車分野で日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、トヨタ自動車株式会社は完成車の現地生産を行っている。自動車販売では、三菱自動車工業株式会社はクライスラーのディーラー通じて2003年に、マツダ株式会社は2005年に開始している。スズキ株式会社、いすゞ自動車株式会社等は、日墨EPA発効後に現地法人を設立している。また、アルゼンチンには、三洋電機株式会社、日本電気株式会社、YKK株式会社等が進出しているほか、豊田通商株式会社がリチウムの供給源としてアルゼンチンのオラロス塩湖に着目し、2010年1月にはオーストラリアのオロコブレ社とリチウム資源開発のための事業化調査を約する覚書を締結した。リチウムはハイブリッド車や電気自動車の普及に不可欠であり、同社は今後、事業化調査の結果をもとに共同出資会社を設立し、2012年より生産を開始する予定である 143。このほか、ブラジルにおいては、2009年12月に武田薬品工業株式会社が100%出資の販売子会社を設立することを決定したほか 144、日立アプライアンス株式会社が日本の家電メーカーで初めて家庭用エアコンの生産に乗り出し、都市部の富裕層を対象として2010年秋までに省エネ性能に優れた20機種を投入する方針を示している 145。今後の成長と域内経済交流の深まりが期待されるなか、我が国企業による事業活動の積極的な展開が望まれる。

141 独立行政法人日本貿易振興機構(2010年1月)「第10回在中南米日系進出企業の経営実態調査」。142 独立行政法人日本貿易振興機構(2010年3月26日)通商弘報「日本企業の対ブラジル投資パターンが多様化」。143 2010年1月20日付け同社プレスリリース。144 2009年12月2日付同社プレスリリース。145 2009年10月29日付日本経済新聞。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade148

第 1章 主要国・地域の現状と今後

中南米で活発化するマイクロファイナンスコラム14

中南米ではここ数年、マイクロファイナンスへの注目が急速に高まっている。「マイクロファイナンス」とは、

貧困層・低所得者向けの小口融資等の金融サービスである。1970年代に開始された当初は、NPOが貧困層の女

性に対して小額の融資を行っていたが、その後、サービスの多様化と専門化が進められてきた 146。現在では、

小口融資としての「マイクロクレジット」から、貯蓄や保険、年金、送金サービスなども含めた「マイクロファ

イナンス」に発展してきており、貧困層・低所得層に属する個人・起業家や小規模企業がビジネスを行う上で、

また、サービスを提供する金融機関にとって、新たな融資のあり方として重要性を高めている。

実際、中南米におけるマイクロファイナンス産業の成長は著しい。米州開発銀行(Inter-American Development

Bank:IDB)の多国間投資基金(The Multilateral

Investment Fund:MIF)によれば、中南米には、

マイクロファイナンスを提供する金融機関

(Micro�nance Institutions:MFIs)は2008年末時

点で636機関に上っている。融資総額は2001年の

12億ドルから2008年には109億ドルに拡大し、

同期間における借手数も180万人(社)から950

万人(社)へと拡大している(コラム第14-1図)。

中南米におけるマイクロファイナンス産業の発

展は、需要があることに加え、各国政府による政

策的な後押しの影響も大きいようである。EIU147

による調査によれば 148、中南米は世界の他地域

に比べ、マイクロファイナンスのビジネス環境の

整備が進んでいる。同調査は、「マイクロファイ

ナンスに関する法的枠組み」、「投資環境」、「マイ

クロファイナンス産業の発展度合い」の3分野に

ついて、合計13の指標を用いて評価を行ってい

るが 149、中南米は総合スコアで最も高い評価を

得ている(コラム第14-2表)。国別にみても、ペ

ルーやボリビア、エクアドルなど、上位10以内

に中南米諸国が6か国も入っている(コラム第

14-3表)。EIUによれば、上位にランクインする

国の共通点の一つとして、法律や規制の整備を通

してマイクロファイナンス産業の育成・発展を

図っていることが指摘されている。

コラム第14-2表 �マイクロファイナンスのビジネス環境総合評価ランキング�(地域別、2009年)

順位 地域 スコア1 中南米カリブ海 46.42 南アジア 46.33 全地域平均 434 サブサハラアフリカ 42.15 全アジア平均 41.46 東欧・中央アジア 41.17 東アジア 37.88 中東/北アフリカ 33.9

備考:EIUが世界55か国を対象に行った調査結果。マイクロファイナスに関する13指標を0~4の5段階で評価し、各項目をウェイト付けして算出したスコア。スコアの最高は100。

資料:EIU「Global microscope on the microfinance business environment, 2009」から作成。

コラム第14-1図 �中南米におけるマイクロファイナンスの融資額、借手数の推移

12

59

92

109

180

630 800

950

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2001 2005 2007 20080

20

40

60

80

100

120

融資額(億ドル)(右軸)借手数(万人)(左軸)

(万人) (億ドル)

(年)

資料:The Multilateral Investment Fund「Microfinanzas en América Latina y el Caribe : Datos 2008」、桑原小百合・成田哲朗「ラテンアメリカのマイクロファイナンス」(財団法人外国為替貿易研究会『国際金融』1207号(2009年12月1日))から作成。

146 Inter-American Development Bank(IDB)プレスリリース(2009年10月1日)「IDB urges microfinance industry to reach out to millions of underserved people in Latin America and the Caribbean」。

147 Economist Intelligence Unit。1946年設立の世界の国、産業、経営等を分析する企業。148 IDB、アンデス開発公社(CFA)、国際金融公社(IFC)の委託を受けて、EIUが中南米諸国も含めた55カ国を対象に実施した調査

(EIU「Global microscope on the micro�nance business environment, 2009」)。149 具体的には、「マイクロファイナンスに関する法的枠組み」の指標として、①規制、②規制・監督下にあるMFIsの設立・業務、③規

制・監督下にないMFIsの設立・業務、④規制・監督当局の能力、「投資環境」の指標として、⑤政治的安定性、⑥資本市場の安定性、⑦司法手続き、⑧会計基準、⑨ガバナンス基準、⑩マイクロファイナンス機関の透明性、「産業の発展度合い」の指標として、⑪マイクロファイナンスのサービスの多様性、⑫個人信用情報機関、⑬競争の度合い、となっている。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 149

第1章

近年の世界経済危機の影響を受け、マイクロ

ファイナンスも発展の減速を余儀なくされてい

る。マイクロファイナンスに関する格付け会社で

あるMicroRateがマイクロファイナンス機関42社

に対して行った調査によれば、42社のマイクロ

ファイナンス融資総額の伸び率は、2002~2007

年の間は前年比40%前後であったが、2008年は

同20%、2009年は同10%にまで低下するとされ

た。これは、金融市場のタイト化を受けて、マイ

クロファイナンス機関が与信基準を厳格化した

り、1件当りの与信枠の規模を縮小していること

による。近年、マイクロファイナンスが急速に発

展し市場競争が激しくなってきたなかで、マイク

ロファイナンス機関の一部は、融資基準を引き下げることで顧客を獲得し、市場シェアの拡大を図っていたこ

とも背景に挙げられる 150。

しかしながら、マイクロファイナンスの特徴として、経済環境が悪化しているときこそ、その強みが発揮さ

れるという点も、しばしば指摘されることである。景気の悪化で失業者が増えたり、事業環境が悪化すれば、

職を失った人や零細企業の多くは一般の商業銀行からの融資が受けられなくなり、マイクロファイナンスに対

する需要が拡大するからだ。

IDBのモレノ総裁は、2009年9月30日、小規模事業に関する米州地域フォーラム(the Inter-American Forum

on Microenterprise:Foromic)の開会に際し、マイクロファイナンス市場では「今なお数百万人規模の潜在的な

需要が存在し、我々のこれまでの努力にもかかわらず、マイクロファイナンスは需要の15%しか充たしていな

い」と発言した。また、IDBのMFIは、基本的な金融サービスを受けることが出来ていない人々は6,000万人に

及んでいると試算している151。

先述の通り、世界経済危機の発生以降、中南米では一部のマイクロファイナンス機関により融資基準の見直

しなどが進められてきた。今後、マイクロファイナンス機関がより健全な融資を強化していくことで、貧困層・

低所得層がビジネスの糸口をつかみ、中南米経済の底上げが進んでいくことが期待される。

コラム第14-3表 �マイクロファイナンスのビジネス環境総合評価ランキング�(上位10か国、2009年)

順位 国 スコア1 ペルー 73.82 ボリビア 71.73 フィリピン 68.44 インド 62.15 ガーナ 60.96 エクアドル 59.77 コロンビア 58.78 ニカラグア 58.69 エルサルバドル 57.59 ウガンダ 57.5

備考:EIUが世界55カ国を対象に行った調査結果。マイクロファイナスに関する13指標を0~4の5段階で評価し、各項目をウェイト付けして算出したスコア。スコアの最高は100。

資料:EIU「Global microscope on the microfinance business environment, 2009」から作成。

150 MicroRate(March 2009)「Cautious Resilience: The Impact of the Global Financial Crisis on Latin American & Caribbean Micro�nance Institutions」。

151 IDBプレスリリース(2009年10月1日)。

(3)ロシア経済①回復が遅れるロシア経済

2008年の資源価格の下落とそれに引き続き起こった世界経済危機で、ロシア経済は大きく後退し、2009

年の実質GDP成長率は前年比-7.9%と1998年以来のマイナス成長となった。中国やインドなど他の新興国と比べ、ロシアにおける景気後退の規模は大きく、その後の回復も遅れている(第1-2-5-83図)。財政基盤の悪化も著しく、資源価格の下落による原油・天然ガス輸出税の大幅減少や減税により歳入が減少する一方、景気浮揚策の実施により歳出が拡大した

第1-2-5-83図 �BRICsの実質GDP成長率

ブラジル、4.3

ロシア、-3.8

インド、5.9

中国、10.7

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ2007 2008 2009

(前年同期比、%)

資料:内閣府「海外経済データ」等から作成。

Page 38: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade150

第 1章 主要国・地域の現状と今後

ため、2000年以来黒字を維持してきた財政収支は2009年には対GDP比-6.0%の赤字に転落した(第1-2-5-84図)。引き続き雇用情勢は厳しいものの、足元では資源価格及び資源需要の回復や政府による消費刺激の効果が出始めたこともあり国内の生産は底離れが進んでいる。個人消費にも回復の動きが見られており、2010

年1月の小売売上高は12か月ぶりにプラスに転じた(第1-2-5-85図)。ロシアでは2010年に入っても政策金利引き下げに

よる金融緩和を実施している他、3月には、新車販売促進政策の一環として、政府による自動車買い替え奨励措置である自動車スクラップ・インセンティブ制度が発効するなど対策が講じられており、今後、どの程度の効果が現れるか注視していく必要がある。

②ぜい弱な経済構造と経済対策の問題(a)資源と海外資本に大きく依存した経済ロシア経済は2000年から2008年まで年平均6.5%の高成長を遂げてきたが、景気拡大は原油価格の高騰と海外からの資本流入という外的要因に下支えされて実現したものであった。しかし、世界経済危機ではこれまでロシアの経済成長を支えてきた原油価格が下落したことと海外資本の急激な流出が、ロシア経済の景気悪化を後押しした。ロシアは原油や天然ガスなどの天然資源に恵まれており、ロシア経済は1998年のロシア金融危機の収束以降、原油価格の上昇とともに2008年夏頃まで目覚ましい成長を遂げてきた(第1-2-5-86図)。また原油価格の上昇と併せてロシア経済は資源依存度を高めてきており、2008年の輸出総額の65.8%、ロシア連邦予算の歳入の47.3%152が石油ガス関連で占められるに至っている(第1-2-5-87図)。

第1-2-5-87図 �ロシアの財輸出に占める石油・天然ガス関連比率の推移

50.3 51.2 52.4 54.2 54.7

61.1 62.8 61.765.8

62.9

0

10

20

30

40

50

60

70

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

資料:ロシア中央銀行「国際収支統計」から作成。

(%)

第1-2-5-86図 �原油価格とロシアの名目GDP

0

20

40

60

80

100

120

140

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

名目GDPウラル原油価格(右目盛り)

(10億ルーブル) (ドル/バレル)

備考:原油価格は各期末時点。資料:ロシア連邦国家統計庁、米国エネルギー情報局から作成。

第1-2-5-85図 �ロシアの小売売上高の推移

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2

2007 2008 2009 2010

資料:ロシア中央銀行Webサイトから作成。

(前年同月比、%)

第1-2-5-84図 �ロシアの対GDP比財政収支

1.43.0

1.4 1.74.3

7.5 7.45.4 4.1

-6.0

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(10億ルーブル) (%)

資料:Bloombergから作成。

対GDP比財政収支(右目盛り)

財政支出財政収入

152 ロシア連邦国家統計庁。2008年のロシア連邦予算の歳入総額は9.3兆ルーブル、うち石油ガス関連収入は4.4兆ルーブル。2009年は歳入総額7.3兆ルーブル、うち石油ガス関連収入3.0兆ルーブルであり、石油ガス関連比率は40.7%まで低下。

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転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 151

第1章

一方、ロシア民間部門における海外資本の流れを見てみると、2006年頃から急速に海外資本が流入し始めているが、これは2006年7月に外貨管理法の大幅な改正が行われ、資本取引に関する諸規制が撤廃されたことが起因していると考えられる。これ以後、ロシアでは外国からの資金の流出入がしやすい環境となり、2008年第4四半期には約1,300億ドルという巨額の資本が流出してしまった(第1-2-5-88図)。

(b)経済対策とその効果こうした状況を受けて、ロシアにおいても各種対

策 153が実施されたが、ロシア政府及び金融当局は、世界経済危機の発生当初、ロシア経済への影響は軽微との見方を示しており、その結果、対策の実施が遅れてしまった、あるいは実施されたものの効果が限定的であったため、景気悪化が深刻化したものと考えられる。例えば、銀行融資に対する政府保証スキームは、銀行にとって信用リスクが高い(企業による債務返済義務の不履行があっても、政府保証が執行されるまでに要する期間が長い、全額保証ではない)ため、ロシアの銀行は政府保証の利用に消極的であった。また、政府による自動車産業支援策は、対象車種が純国産モデル中心であったこと、対象となるローンの条件が厳しかったことから、その利用率は低かった。実際、2000年代半ばから急拡大していたロシア乗

用車販売台数は、2009年に前年比55%減の約140万台にまで落ち込み、特に輸入車の販売台数が著しく低下

した(第1-2-5-89図)。

③我が国との関係(a)貿易関係近年、拡大を続けてきた日ロ貿易は、2009年に輸出入ともに大きく落ち込んでいる。輸入について見てみると、原油輸入数量の増加や、

2009年春以降の液化天然ガス輸入開始にもかかわらず、2008年と比べた資源価格の低迷により、2009年の鉱物性燃料の輸入額は前年比3割減となった。また、アルミニウムや、関税が引き上げられた木材などの原材料別製品の輸入も大きく落ち込み、2009年の輸入額は前年比4割減となった(第1-2-5-90図)。他方、我が国からロシアへの輸出の約8割を占める輸送用機器は、世界経済危機の影響を受けたロシア国内需要の急激な冷え込み、2009年1月のロシア政府による大幅な関税引き上げや国産車優遇の経済対策の実

153 ロシア中央銀行は、金融緩和、銀行向け無担保融資、中銀、劣後ローン、企業・銀行による対外債務返済支援融資、預金保護額引き上げなどの対策を実施。また、ロシア政府も、減税措置、財政支援等を実施。

第1-2-5-89図 �ロシア乗用車販売台数の推移

162.2 161.1 171.4

210.3

274.6

312.6

140.5

0

50

100

150

200

250

300

350

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(万台)

輸入中古車輸入新車ロシア製外国ブランド車純国産車

資料:ロシアNIS貿易会「ロシアNIS調査月報2010年4月号」から作成。原出所:ASMホールディング。

第1-2-5-88図 ロシア�民間部門の資本流出入

-150

-100

-50

0

50

100

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

2005 2006 2007 2008 2009 2010

うち非銀行部門

うち銀行部門

民間部門の資本収支

(十億ドル)

資料:ロシア中央銀行Web サイトから作成。

第1-2-5-90図 �ロシアからの輸入品目の推移

0.5 0.5 0.4 0.5

0.6 0.7

0.8

1.2 1.4

0.8

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

食料品原料品鉱物性燃料化学製品原料別製品一般機械電気機器輸送用機器その他

(兆円)

資料:財務省「貿易統計」から作成。

Page 40: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後

2010 White Paper on International Economy and Trade152

第 1章 主要国・地域の現状と今後

施などにより激減し、2009年の我が国からロシアへの輸出額は全体で前年比8割減となった(第1-2-5-91

図)。

(b)投資関係近年の我が国からの投資は、輸送機械、食料品、ゴム、卸売・小売業など非製造業を含む幅広い業種で行われてきている(第1-2-5-92図)。

2009年6月には、日産自動車がサンクトペテルブルクに新たな車両組み立て工場を稼働させた他、2010

年4月にユニクロがモスクワに1号店をオープンさせるなど、新興国ロシアの今後の成長に期待した投資が行われている。

154 ここでは HSコード3303~3307を指す。155 ロシアNIS貿易会(2008)「ロシアの化粧・香水文化」(ロシアNIS調査月報2008年8月号)。156 Euromonitor「Emerging Consumer Market」。

第1-2-5-92図 �ロシアへの業種別直接投資残高�(2008年)

木材・パルプ5%

輸送機械器具21%

その他製造業18%

卸売・小売業37%

金融・保険業10%

不動産業2%

サービス業2%

その他非製造業5%

資料:日銀「国際収支統計」から作成。

第1-2-5-91図 �ロシアへの輸出品目の推移

0.1 0.1 0.1 0.2

0.3 0.5

0.8

1.3

1.7

0.3

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1.8

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

食料品原料品鉱物性燃料化学製品原料別製品一般機械電気機器輸送用機器その他

(兆円)

資料:財務省「貿易統計」から作成。

ロシアの化粧品市場コラム15

世界経済危機後、他の新興国と比べてロシア経済の低迷ぶりが目立っているが、化粧品の輸入ではBRICsの

中でロシアが突出した伸びを見せている。

2009年には若干の落込みが見られるものの、ロシアにおける化粧品 154の輸入額は2000年から2008年の間に

およそ10倍にまで拡大した。中国、ブラジル、インドとは桁違いの伸びである。

ソ連時代からロシア人女性の美容への関心は高

く、2000年代の経済成長に併せて化粧品市場も

急速に拡大してきた。

ロシア化粧品市場の約60~70%を輸入化粧品

が占めていると言われている 155。その中でも欧

州ブランドが圧倒的な強さを見せており、2009

年のロシアの化粧品輸入先を見ると、フランス、

ドイツ、ポーランドなど欧州諸国が上位を占めて

いる。我が国からの輸入は1%にも満たないが、

 将来的には欧州ブランドだけでなく、我が国や

米国のブランドも伸びてくるだろうとの予測もあ

る 156。

コラム第15-1図 �BRICsの化粧品輸入額の推移

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(百万ドル)

ロシア

中国

ブラジル

インド

備考:ここでの化粧品とはHSコード3303 ~ 3307。資料:「World Trade Atlas」から作成。

Page 41: 中東・アフリカ・中南米・ロシア経済...転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節 通商白書 2010 113 第

転換期にあるグローバル経済の現状と今後 主要国・地域の現状と今後 第2節

通商白書 2010 153

第1章

2007年にはポーラが現地法人を設立し、モスク

ワ高級百貨店にカウンセリングブースを設置した

他、資生堂が現地子会社を設立した。我が国の化

粧品も徐々にロシア市場に浸透していくことが期

待される。

コラム第15-2図 �ロシアの化粧品の輸入相手国(2009年)

フランス28.1%フランス28.1%

ドイツ14.0%ドイツ14.0%

ポーランド10.2%

ポーランド10.2%

イタリア7.2%

イタリア7.2%日本

0.7%日本0.7%

その他39.8%その他39.8%

資料:「World Trade Atlas」から作成。