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1 マイクロ流体デバイスを駆使する 細胞の高度培養・選抜・操作技術 千葉大学 大学院工学研究院 共生応用化学コース 准教授 山田 真澄 平成31年2月19日

マイクロ流体デバイスを駆使する 細胞の高度培養・選抜・操作技術 · 2 グループの基盤技術:マイクロ流体デバイス 大きさのそろった

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マイクロ流体デバイスを駆使する細胞の高度培養・選抜・操作技術

千葉大学 大学院工学研究院

共生応用化学コース

准教授 山田 真澄

平成31年2月19日

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グループの基盤技術:マイクロ流体デバイス

大きさのそろった液滴の形成・操作

層流の形成

100 um

・微細加工技術を用いて作製した直径数100 μm程度以下の流路構造・物理、化学、バイオ研究分野における様々な応用・サイズの制御性、デザインの可変性

・微粒子やファイバーの作製・加工・細胞培養用バイオマテリアルの作製と応用・微粒子や細胞の分離・選抜システムの開発

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当グループの主要な研究テーマ

バイオマテリアルの微細加工:人工的に生体組織を再構築する!

微小マテリアルを合成する!微小な対象物を正確に操作する!

マイクロ流路を用いた高機能ハイドロゲル材料の作製

粒子・細胞の分離(大きさ・比重等)血球分離・細胞選抜

細胞の瞬間的処理(ミリ秒~数秒)細胞核の単離

他にも、形状による細胞の選抜、細胞培養デバイスなど

血管 肝臓 神経 すい臓

微小空間に細胞を集積化し、臓器の構造を再現!再生医療・創薬支援のためのツール

液滴・粒子・リポソーム・ベシクルの生成

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血液細胞分離用デバイス

細胞分離用マイクロ流体デバイスの例

約70 mm角:単球分離用

5

1 cm

出口1 2 3

1 mm

出口1

出口2

出口3

血液

血液細胞分離用マイクロ流路

出口2

ほぼ白血球

出口3

100%赤血球

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➡出口1・2へ

⇓出口3へ

細胞分離用マイクロ流路

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マイクロ流路を用いた細胞/粒子の分離

・特定の流路構造に懸濁液を導入するだけ

・連続かつ精密な分離

・主にサイズを用いた分離

・微粒子径の差10%程度でも分級可能

・粒子の表面マーカー、変形能なども利用可能

・閉塞しにくい格子状流路構造も提案

・様々な細胞分離の実績あり

・並列化することで、最大毎分20 mL程度まで処理可能

・サブミクロン~数百ミクロンの対象も分離可能

・粒子や細胞のキャリア液交換も可能

・使い捨ての流路構造(PDMS製)

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バイオマテリアルの微細加工と応用

研究例① 異方的ファイバーを用いた肝細胞の共培養

研究例② コラーゲン微粒子を用いた肝組織工学

研究例③ 断片化コラーゲンファイバーの作製

研究例④ コラーゲンマイクロチューブの作製

Yamada, Lab Chip, 2015; Yajima, ACS Biomater Sci Eng, 2017Yamada, Biomaterials, 2012

Manuscript in preparation 特願2018-093710

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肝臓の微細環境を再現する

肝臓の構造

① 肝細胞はひも状に配列している② 肝細胞はコラーゲンによって囲まれている③ その周囲はほかの細胞によって囲まれている④ 全体に血管網がはりめぐらされている

肝細胞(ひも状)

肝小葉(100万個)直径1 mm

肝臓1.5 kg

薬の代謝など500以上の機能

「生体の化学工場」

内皮細胞コラーゲン(タンパク質)を含むマトリックス成分

血管網

http://studiom2.main.jp

これらを生体外において再現 ➡ 体外での肝細胞機能維持 ➡ 創薬支援ツール

重要な要素

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①異方的ハイドロゲルファイバーを利用した高密度共培養

微小なハイドロゲルファイバーの内部に、肝細胞と非実質細胞を導入→ 肝臓組織用構造体の形成

異方的アルギン酸ファイバー(サンドイッチ状)

マイクロ流路(平面型)

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作製の様子

ファイバーを高速に作製可能

流路内の様子回収(~5 m/min, 肝細胞6 x 105個/分)

3T3

肝細胞(ラット)

3T3

細胞包埋ファイバーの作製

ファイバー

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肝細胞-3T3複合組織体の形成 培養7日目

肝細胞のみ 肝細胞 + 3T3

複合型肝組織体

200 mm

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肝機能機能評価:アルブミン・尿素合成能

アルブミン合成(ELISA) 尿素合成(比色定量)

Hep + 3T3Hep onlyHep (plate)

通常では2週間程度で肝機能が低下→ファイバー内高密度共培養によって、3か月程度機能が維持された!

Fiber (Hep + 3T3) Fiber (Hep + 3T3)

生物学的環境の模倣!

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細胞が凝集し,3次元的なヘテロ細胞集塊を形成

細胞非接着性基板(アガロースゲル)

回収

ウェル内の様子

緑: コラーゲン粒子(FITC標識)

ラット初代肝細胞を、コラーゲン粒子とともに、微小ウェル内に播種

100 mm

Day 1Cells : particles = 1 : 4

50 mm

②コラーゲン微粒子を用いる肝細胞培養系

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培養14日目

100 um

100 um 100 um

細胞 : 粒子 = 1 : 1 細胞 : 粒子 = 1 : 4

緑: FITC-コラーゲン微粒子(平均直径10 μm)

コラーゲン粒子ナシ

初代肝細胞のヘテロ集塊の形成

50 um

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RT-PCR 解析相

対的

遺伝

子発

現量

Day7

Day14

コラーゲン粒子を含むヘテロ細胞集塊において細胞機能が向上

→ 適切なマトリックス導入量が存在

ALB OTC CYP3A相

対的

遺伝

子発

現量

ALB OTC CYP3A

Yamada, Lab Chip, 2015

ヘテロ肝細胞集塊の機能評価(粒子:細胞=1:1 or 4:1)

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・ ワンステップの播種操作によって3次元組織を作製可能

・ コラーゲン微粒子が積み重なることで組織内に導管構造が形成

・ 粒子が細胞のバインダーとして機能することで,組織の形状を維持

・ 細胞-ECM/細胞-細胞間相互作用によって,細胞機能が向上?

細胞およびコラーゲン粒子の播種

コラーゲン粒子は①細胞間のバインダー,②組織形状を維持する足場として機能

細胞非接着性培養チャンバー

多孔性3次元組織コラーゲン

微粒子細胞

培養

Yajima, ACS Biomater. Sci. Eng., 2017

厚みのある3次元シート状組織の作製

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2 mm

播種直後 Day 1 Day 2

粒子有り粒子/細胞比

10 : 1

Control粒子/細胞比

0 : 1

シート状の3次元組織の形成を確認円形の組織形状は培養期間中安定に維持

2 mm

粒子を導入しなかった組織は培養とともに激しく収縮し,微小な球状集塊を形成

粒子:5ミクロン

厚みのあるシート状組織の作製(3T3細胞)

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・ 細胞種: NIH-3T3・ 粒子サイズ:5 µm

・ 初期細胞密度= 1.0×106 cells/cm2

・ 粒子/細胞比 = 0 : 1 (Control), 4 : 1, 10 : 1,

0 : 1 (control)

50 µm

細胞:緑(Fast green)、コラーゲン粒子:赤(シリウスレッド)

4 : 1 10 : 1

細胞/粒子は組織全体にわたって均一に分散

50 µm

細胞は高密度にパッキング

細胞と粒子によって組織内部に導管様構造が形成

⇒粒子/細胞比を変更することによって組織内の細胞密度および多孔性を制御できる

組織断面(Day 2)

管腔構造

組織断面の観察

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Day 5 粒子なし(Control)

GA

5日間の培養において組織形状は安定に維持された

粒子の有無に関わらず,比較的均一なシート状組織が形成

2 mm

・ 細胞種: HepG2・ 粒子サイズ:5 µm・ 初期細胞密度:

5.0×105 cells/cm2 (fixed)

・ 粒子/細胞比 = 4 : 1 (fixed)

・ 安定化プロセス:

(1) GA架橋(2) GP架橋(3) MA処理

GP MA

粒子あり

肝細胞(HepG2)からなるシート状組織

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*p<0.05, **p<0.01Day 5

Rela

tive e

xp

ress

ion

[-]

細胞周囲の環境が低酸素的ではない

(1) 効果的な酸素や栄養分の供給(2) 細胞-ECM間相互作用

ALB APOA1 OTC VEGF

コラーゲン粒子の存在によって、「内部が詰まり過ぎない」状態を実現

肝細胞特異的な遺伝子発現の評価 RT-qPCR

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①コラーゲンファイバーの形成 ②ファイバーの断片化 ③細胞培養系への応用

「断片化」コラーゲンファイバーの作製

➡コラーゲン微粒子とは異なる機能発現!?

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〇肝細胞がひも状に配列

〇異種細胞を周囲に播種できる!

〇肝細胞がコラーゲンに囲まれている!

細胞を内腔に導入可能なコラーゲンチューブの作製

ひも状に配列

肝細胞異種細胞

コラーゲンチューブ

肝細胞を導入したコラーゲンチューブの作製

特願2018-093710 平成30年5月15日「コラーゲンチューブの作製方法」

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おまけ:機能性微粒子の調製

RSC Adv 2013

脂質微粒子

20 µm

多糖類ゲル粒子 CNT粒子

タンパク質微粒子

100 mm

ポリマー微粒子

Langmuir 2015

Biomicrofluidics 2013 RSC Adv 2017

Lab Chip 2015ACS Biomater Sci Eng 2017

主にマイクロ流路を用いた単分散微粒子調製法場合によって膜乳化を利用

非平衡状態の液滴を利用(溶媒乾燥)W/O, O/Wどちらの液滴も形成可能

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マイクロ流路を用いたバイオマテリアル作製

・コラーゲンなどのタンパク質成分を自在に加工

・アルギン酸の場合は様々な培養実績あり

・特に肝細胞をターゲットとした培養系

・そのほかにも血管・筋肉・神経などの培養

・がん細胞のアッセイ系への適用実績も

・Organs-on-a-chipシステム、かん流培養系

・再生医療、創薬支援ツールとしての応用

・粒子、ファイバー、膜、多孔性スポンジ、など

・マイクロ流路以外の作製方法も多数開発

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良くある技術相談・技術移転の例

・マイクロ流路作製法の開発

・バイオ応用を目指したポリマー材料の微細加工

・細胞培養用材料の開発

・再生医療用バイオマテリアル開発

・コラーゲン・ゼラチンなどの材料加工

・創薬支援のための肝細胞培養ツール開発

・疾病診断のための細胞分離装置

・特に血液診断のための血液分離装置の開発

・単分散ポリマー粒子の調製

企業の皆様との連携・共同研究・技術移転

研究室のHPもご確認ください

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千葉大学 産業連携研究推進ステーション産学官連携コーディネーター 山中 功TEL:043-290-3833FAX:043-290-3519e-mail: [email protected]

お問い合わせ先

千葉大学 大学院工学研究院 共生応用化学コース准教授 山田真澄e-mail: [email protected]&Fax: 043-290-3398http://chem.tf.chiba-u.jp/gacb01/