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TD K Power Electronics World TDK パワ エレクトロニクス製品 ガイドブック

スイッチング電源発展の歴史 NASA K Power Electronics · ac整流・平滑回路 ac-dc パワーサプライ dc-dcコンバータ dc-acインバータ dc-dcコンバータ

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Page 1: スイッチング電源発展の歴史 NASA K Power Electronics · ac整流・平滑回路 ac-dc パワーサプライ dc-dcコンバータ dc-acインバータ dc-dcコンバータ

TDKPower ElectronicsWorldTDKパワーエレクトロニクス製品 ガイドブック

1960年頃

1965年頃

1970年頃

1972年

1974年

1976年

1978年

1995年

2000年

2004年

2005年

2006年

2008年

この当時、真空管を利用した安定化電源が主流米国NASAが宇宙機器用にスイッチング電源の開発に着手

スイッチング電源向けの半導体素子が開発され始める

この頃、TDKおよび日本電子メモリ工業(ネミック・ラムダの前身)がスイッチング電源事業に着手

日本電子メモリ工業が日本初の標準スイッチング電源を製造・販売TDKがスイッチング電源を製造・発売

業務用テレビゲームに採用され、スイッチング電源市場が拡大

TDKがスイッチング電源用トランスを製造・発売

日本電子メモリ工業の営業を譲受し、ネミック・ラムダ(デンセイ・ラムダの前身)を設立

TDKがHEV用DC-DCコンバータの生産開始

TDKがスイッチング電源RKWシリーズ、JBWシリーズを発売

デンセイ・ラムダ(TDKラムダの前身)がスイッチング電源HWSシリーズを発売

TDKグループにデンセイ・ラムダが加わるリチウムイオン電池搭載UPS(完全鉛フリー)発売

TDK-Lambdaブランド製品の発売開始13シリーズ・234機種の電源用EMCフィルタ(全機種RoHS指令対応)を市場投入

TDKラムダ株式会社発足

TDKパワーエレクトロニクス・ワールド発行日 2009年 3月31日/発行者 TDK株式会社 広報部〒103-8272 東京都中央区日本橋1-13-1 Tel.03-5201-7102

スイッチング電源発展の歴史

< スイッチング電源の進化(ユニット型、150W比較)>

●RoHS指令などの 環境保全対応

●EMC規制、 CEマーキングなどへの対応

●グローバル仕様 への対応

次世 代

第 1世代

第 2世代

第 3世代

第 4世代

第 5世代

1970年頃 1980年 1990年 2000年 2010年

日本初の

標準スイッチング電源

◎電源の革新的な小型化 さらなる小型化 ・高効率化

4500cm3

3800cm3

1300cm3

1200cm3

550cm3

Cert no . SGS-COC-004380

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パワパワーエレクトロニクス・ワエレクトロニクス・ワールドへ、ルドへ、ようこそ。ようこそ。パワパワーエレクトロニクス・ワエレクトロニクス・ワールドへ、ルドへ、ようこそ。ようこそ。パワーエレクトロニクス・ワールドへ、ようこそ。

TDK Power Electronics World

1 2

FA・制御機器計測・試験機器

コンピュータ・OA機器

家電・民生機器自動車 ・交通制御機器

医療機器

通信・放送機器

基本編

●DC(直流)とは? AC(交流)とは?・・・・・

●完全な直流、完全な交流はない・・・・・・・

●安定化回路はなぜ必要か? ・・・・・・・・・・・・

●電源デバイスのさまざまな役割分担・・・・・

●整流とは? 平滑とは?・・・・・・・・・・・・・・・

●主要部品の機能を知る・・・・・・・・・・・・・・・

●最適な電源システムを構築する・・・・・・・・・

●分散電源システムとパワーモジュール・・・・・

3

4

5

6

7

8

9

10

技術編

●リニア電源のしくみ・・・・・・・・・・・・・・・

●スイッチング電源のしくみ・・・・・・・・・・・・

●非絶縁型DC-DCコンバータの基本回路 ・・  ・チョッパ方式(バックコンバータ、ブーストコンバータ)  ・チャージポンプ方式

●絶縁型DC-DCコンバータの基本回路・・・  ・フライバックコンバータ、フォワードコンバータ  ・RCC方式、プッシュプル方式、フルブリッジ方式

●さらなる高効率化のための技術・・・・・・・  ・スイッチング電源の損失箇所、ソフトスイッチング  ・同期整流方式、デジタル制御

●電源の性能を支えるキーパーツ・・・・・・・  ・コンデンサ、コイル、トランス

●スイッチング電源のノイズ対策・・・・・・・・

●UPS(無停電電源装置)の選び方・・・・・・・・

●新たな電源システムとバッテリ・・・・・・・・

●スイッチング電源発展の歴史      

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基本編

DC(直流)とは? AC(交流)とは?

直流と交流の違いは、パワーエレクトロニクスの基礎知識。 交流の電圧はトランス(変圧器)で容易に変換できる。

完全な直流、完全な交流はない

発電所(火力、水力、原子力など)

超高圧変電所

交流送電

数10万~100万V超

1次変電所

約6万~15万V

配電用変電所

大工場、鉄道など

6000V

ビル、中工場など

100V・200V

柱上変圧器 住宅

< 発電から送配電までの基本的な流れ >

< 商用交流の不安定要因>

3 4

電流には直流(DC)と交流(AC)があります。直流は乾電池のように、電流の向きや大きさ(電圧)が一定な電流。交流は時間ととともに、電流の向きと大きさが周期的に変化する電流です。昔は静電気(摩擦電気)しか知られていませんでしたが、電池が発明されて、まず直流が利用できるようになり、のちに発電機が発明されて、交流が利用されるようになりました。

コンセントから得られる商用交流も安定なものとはいえません。配電網につながれる負荷(接続機器類など)の状態によって、商用交流は不安定なものになります。たとえば真夏の昼時、近隣の家々がエアコンをいっせいに使い出したりすると電圧が低下します。このほか、瞬間的に送電がストップしたり(瞬停)、ノイズが加わって波形歪みが生じたりします。

バッテリ(乾電池・充電池)のパワーが落ちると、電気・電子機器が作動しなくなります。バッテリの電圧は時間とともに低下していくからです。近年、ICの駆動電圧は低くなっているので、わずかな電圧変動も問題になってきます。

交流電流の向きが、1秒間に何サイクル変わるかを交流の周波数という。単位はHz(ヘルツ)。商用交流の周波数は、東日本では50Hz、西日本では60Hz。

周波数が比較的小さな交流を低周波、大きな交流を高周波というが、一般に高周波とは、周波数が kHz、MHz以上の交流を意味する。

交流の周波数

低周波、高周波

0

電流

時間

直流 直流は電流の向きと大きさが一定。

電池・直流電源の図記号

鉛蓄電池

リチウムイオン電池

ニッカド電池

乾電池

ボタン電池

一次電池と二次電池 乾電池などの使い切りの電池を一次電池、充電して繰り返し使える電池を二次電池(充電池)という。

※交流電流はすべてサイン波とはかぎらない。 パルス状の波形の交流もある。

交流 交流は電流の向きと大きさが周期的に変化する。

0

電流

時間

1サイクル

交流電源の図記号

コンセント ACプラグ

電力会社から供給される商用交流のこの波形を、サイン波(正弦波)という。

コンセントの2つの穴から流れてくる電流の向きは、交互に変わる。

電池の電圧はしだいに降下する。放電曲線は、電池の種類によってさまざま。

バッテリの電圧低下

0

電圧

時間

電圧降下 瞬停 波形歪み

負荷

電源に接続されエネルギーを消費するものを総称して「負荷」という。具体的には、抵抗や回路、接続機器などのこと。

商用交流はさまざまな要因によって安定しない。

高周波の交流電流がノイズとして重なると、こうしたギザギザの波形となる。ポイント

高い電圧で送電するほうが電力ロス(電線の抵抗による発熱ロス)が少ない。

交流はトランス(変圧器)で容易に電圧変換できるのが利点(一部の送電ルートでは直流送電も採用されている)。

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基本編

安定化回路はなぜ必要か?

不安定な直流は電子機器の誤動作の原因となる。 直流を交流に変換する装置をインバータという。

電源デバイスのさまざまな役割分担

入力電圧 電圧変動

出力電圧

半導体素子の抵抗により、熱としてムダに捨てられる電力

安定化直流

< リニア電源 >電力カットした分がムダになる。

ポイント

リニア方式は、凹凸(電圧変動)を削り取って、ならすような方式。

5 6

バッテリの直流も、商用交流をACアダプタなどで変換して得られる直流も、不安定な電圧変動を残しています。これでは、電圧変動に敏感な電子機器などでは誤動作を起こすので、安定化回路によって定電圧の直流をつくります。その方式として、リニア方式(シリーズ方式、ドロッパ方式ともいう)とスイッチング方式があります。

ほとんどの電子機器は直流で動作します。そこで、商用交流を整流してから(まだ不安定な直流)、DC-DCコンバータにより電力変換(電圧や電流の変換)するとともに、安定化回路によって、きわめて安定化した直流を得ています。

たとえば、右図のような回路で、スイッチをすばやくON/OFFすると、電圧が降圧したのと同じ効果でランプの明るさが落ちる。この動作を半導体素子によって実現するのがスイッチング方式の電源。

リニア方式(シリーズ方式)

スイッチング方式 < スイッチング方式の考え方 >

電圧の降圧と同じ効果

入力電圧

出力電圧

電圧変動に応じてパルス幅を変える

パルス幅

OFFON

安定化直流

半導体素子のスイッチング(ON/OFF)で、電流を高周波のパルスにし、これをトランスに送って電圧変換する。

各パルスの面積が同じになるように制御するので、電圧が一定の安定化電流が得られる。

スイッチON

電圧(V)

平滑

0

ON

OFF

OFF

スイッチング周期

スイッチング方式は、電力を切り貼りするようなかたちで、安定化電流を得るので、ムダがなく、とても高効率。

これを PWM (Pulse Width Modulation : パルス幅制御) という。

ポイント

直流 直流

直流

AC整流・平滑回路

AC-DCパワーサプライ

DC-DCコンバータ

DC-ACインバータ

直流DC-DCコンバータ

直流DC-DCコンバータ

直流DC-DCコンバータ

< 電子機器内部の電力変換デバイス >

●DC入力機器

非安定な直流 電圧・電流の変換 安定化

した直流

電圧・電流の変換

電源ユニット

直流から交流への変換

● AC入力機器

電子機器では、多種多様な電源デバイスが活躍している。

交流

交流

回路の駆動電圧の違いにより、複数の小型 DC-DCコンバータが IC近くに分散配置される。

液晶テレビのバックライト点灯などには高圧が必要なので、交流に変換してトランスで昇圧する。

スイッチング方式が主流なので、スイッチング電源 とも呼ばれる。

スイッチング電源は、デスクトップパソコン、OA機器、FA機器などで電源ユニットとして搭載される。ケース型、オープンフレーム型、基板型など各種ある。

商用AC電源DC入力・DC出力

AC入力・DC出力

DC入力AC出力

電子機器には、回路の駆動電圧の違いにより、複数のDC-DCコンバータが搭載されている。

ポイント

スイッチング方式の電源の短所は、半導体素子の高速スイッチングにともなうスイッチングノイズが発生すること。このため、ノイズフィルタなどによるEMC対策(ノイズ対策)が不可欠となる。

ポイント

TDK Power Electronics World

リニア電源

効率 低い (30~ 60%)

放熱量 大

大きさ・重量 大型・重い

安定度 高い

放射ノイズ なし

スイッチング電源

高い (70~ 90% 以上)

小型・軽い

普通

あり (ノイズ対策が必要)

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基本編

整流とは? 平滑とは?

整流回路ではダイオード、平滑回路ではコンデンサが重要な働きをする。 コンデンサは交流を通過させ、コイルは交流にブレーキをかける。

主要部品の機能を知る

順方向の電流だけ流す

ベース

コレクタ

エミッタ

ドレイン

ゲート

ソース

1方向にだけ電流を流す性質をもつ素子。整流回路などに使われる。

多数のトランジスタやダイオード、抵抗などを半導体基板(シリコンなど)に形成した集積回路。

増幅機能をもつ半導体素子。電源回路では、電流をON/OFFするスイッチング素子としても使われる。MOSFET(モスフェット)は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ。

ダイオード IC(集積回路)トランジスタ MOSFET

7 8

交流を直流に変換すること整流といいます。順方向の電流は通し、逆方向の電流は通さないダイオードを利用して整流します。ただし、整流しただけの直流には、交流の名残りのようなさざ波状の電圧変動(リップル)が残っています。そこで、これをコンデンサを利用してなだらかに平滑します。

電源のしくみを理解するためには、主要部品の機能を知っておく必要があります。回路記号にも慣れておくと、電源回路の骨格が読み解けるようになります。

このタイプのACアダプタやバッテリ充電器が重いのは、鉄心の電源トランスが使われているからだ。

電解コンデンサ

コイル 鉄心

トランス

シリコンダイオード(×4)

DCジャック

ダイオードで整流、コンデンサで平滑しただけでは、まだ安定した直流は得られない。

電圧変換 整 流 平 滑

整流方式には交互に流れる交流電流の片方を整流する半波整流と、両方の電流を整流する全波整流がある。上に示す回路はブリッジ型ダイオードを利用した全波整流。

充電 放電リップル

平滑化には大容量コンデンサの充電・放電が利用されている。

AC100V

ヒューズ トランス

シリコンダイオード(×4 ブリッジ型) 電解コンデンサ

DC出力(非安定化直流)

+

0脈流 非安定化直流

ポイント

電解コンデンサ(+は極性を表す) 1次巻線

2次巻線

チョークコイルなどのコア入りコイル

または

コンデンサ 抵 抗

SMD(表面実装部品)タイプのコンデンサは、積層セラミックコンデンサが主流。

大量の電荷を蓄えるのが、電源における平滑コンデンサの働き。瞬間的に充放電するバッテリのように機能する。交流を通過させる性質もある。

コイル (インダクタ)

コイルは直流をスムーズに通過させるが、交流に対しては抵抗のように振る舞い、電気エネルギーを蓄える。

1次側の電力はコアを通じて2次側に送られる。このときコアロスという損失(主に発熱ロス)が生じるので、コア材料の特性が電源の効率に大きく影響する。

点線(あるいは実線)はコア(磁心)を表す。

ポイント

トランス (変圧器)

電源トランスや高周波トランスなど

学校教科書などでは、この図記号が用いられる。

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基本編

最適な電源システムを構築する

非絶縁型DC-DCコンバータはオンボードタイプの小型電源。 POL(ポイント・オブ・ロード)とは「負荷(ICなど)のすぐ近くに」という意味。

分散電源システムとパワーモジュール

61m

m

116.8mm

(高さは12.7mm)フルブリック クォータ

(1/4)ブリック

エイス(1/8)ブリック

ハーフ(1/2)ブリック

シックスティーンス(1/16)ブリック

< 分散電源システムとAC-DCパワーモジュール >

コンパクトに一体化

商用交流

AC-DCパワーサプライ

《絶縁型》DC-DCコンバータ

AC-DCパワーモジュール 負荷

負荷DC-DCコンバータ

《非絶縁型》DC-DCコンバータ

■ブリックの種類とサイズ

パワーモジュールは、高効率化により冷却ファンが不要なコンダクションクーリング(伝導放熱)方式を採用。すべての電源デバイスを同じプリント基板に搭載できる。

ポイント

パワーモジュールはブリックという単位で規格化されている。

ユニット型 ユニット型(ラックマウント型)オープンフレーム型

PFEシリーズなど

9 10

スイッチング電源(ACーDCパワーサプライ)やDC-DCコンバータは、大きさ、容量、形状などにより、さまざまな種類があります。また、DC-DCコンバータは、絶縁型と非絶縁型に大別されます。絶縁型はトランスを用いたタイプ(感電防止の目的もある)、非絶縁型はトランスを用いていない小型タイプです。多数の部品を1つの基板にコンパクトに一体化したパワーモジュールも多用されています。

近年、ICの低電圧化・大電流化などにより、小型で高効率のDC-DCコンバータを IC近くに配置する分散電源システムへとシフトしています。

ACーDCコンバータ、DC-DCコンバータほか、PFHC(高調波抑制・力率改善)機能(→17頁)などの各種電源回路をまとめて一体化した製品をACーDCパワーモジュールといいます。さまざまな分散電源システムにフレキシブルに対応できます。

従来システムの問題点

分散電源システムの利点

商用交流

ACアダプタ(AC/DC変換)

直流

:DC-DCコンバータ

LCDLCD

CD/DVDCD/DVDドライドライブ

I /O

HDDHDDCPUCPU

LCD

CD/DVDドライブ

I /O

HDDCPU

DC-DCコンバータ

トランスを用いて電気的に絶縁。小型化や低価格化に難がある。

絶縁型

絶縁型の後段に用いて回路動作に必要な電圧に変換。小型で低価格。

非絶縁型

非絶縁型DC-DCコンバータは、小型のSMD(表面実装部品)タイプが多い。出力は1W未満~数百W程度。

ノートパソコン内部にも、複数の小型DC-DCコンバータが搭載され、必要な電圧に変換して供給されている。

出力は10W未満~3000W以上。ワイド入力、マルチ出力など各種ある。

ACーDCコンバータとDC-DCコンバータをコンパクトに一体化。冷却ファン不要のコンダクション・クーリング(伝導放熱)方式。出力は50~1000W程度。

< 従来の電源システム >

商用交流 ユニット型・基板型

スイッチング電源など

直流

48Vなど

《絶縁型》

5V

POL(Point of Load)

●負荷(IC)の直近に小型 DC-DCコンバータを配置。

中間電圧

12V、5Vなど

《非絶縁型》

1.8V、1.5V、1.3V、0.8V…など

AC-DCパワーサプライ

DC-DCコンバータ 負荷

3.3VDC-DCコンバータ 負荷

2.5VなどDC-DCコンバータ 負荷

< 分散電源システム >

商用交流

直流

48Vなど

《絶縁型》AC-DC

パワーサプライDC-DCコンバータ 負荷

負荷DC-DCコンバータ

DC-DCコンバータ 負荷

DC-DCコンバータ 負荷

●絶縁型DC-DCコンバータ は1つですむ。

中継バスコンバータ

POLとは?

●複数の絶縁型DC-DCコンバータを使用するのはコスト面や省スペースに難がある。

●ICの低駆動電圧化が進んでいるが、いきなり低電圧に下げるのは効率がよくない。

●高周波になると負荷までの配線の抵抗やインダクタンス成分の影響が大きくなる。

高効率の非絶縁型DC-DCコンバータは、発熱が少なくヒートシンクが不要なので、プリント基板の ICの直近に実装できる。

ポイント

TDK Power Electronics World

出力は1W程度~数10W。

非絶縁型DC-DCコンバータ

DC入力DC出力

AC入力DC出力

絶縁型DC-DCコンバータ

AC-DCパワーモジュール

AC-DCパワーサプライ

DC-DCコンバータ 負荷

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技術編

リニア電源のしくみ

リニア電源は原理的に低効率で発熱ロスが大きい。 小型・軽量・高効率はスイッチング方式ならではの特長。

スイッチング電源のしくみ

11 12

商用交流を整流・平滑しただけでは、まだ非安定な直流です(→7頁参照)。これを電圧変動の少ない直流にするのが安定化回路です。まずは、かつての主流であったリニア方式の安定化回路を読み解いてみましょう。

いったん整流された非安定な直流電力をスイッチング素子(トランジスタやMOSFET)による高速スイッチングで高周波のパルスにしてトランスに送ります。そして、その出力電圧を検出・比較してフィードバックし、パルス幅を制御することで、安定した直流を得ます。リニア電源とくらべて小型・軽量・高効率ですが、回路が複雑になること、また、高速スイッチングなどによるノイズが発生するのでノイズ対策が不可欠となります。

スイッチング素子により一定周期で電流をON/OFFし、パルス波にしてトランスに送る。ON状態とOFF状態の時間の比(デューティ比、デューティサイクル)により、出力電圧を調整する。入力電圧の変動に対しては、デューティ比(パルス幅)を制御することで、出力電圧の安定化を図る(PWM方式)。

スイッチングレギュレータの原理

< 三端子ICを用いたリニア電源 >

三端子ICは、トランジスタやツェナーダイオードなどからなる集積回路。発熱するのでヒートシンクに取り付ける。

入力電圧の変動を可変抵抗によって調整することで安定した出力電圧が得られる。

交流電源

電圧変動のある非安定な直流

負荷

安定化した直流

●シリーズ方式の安定化回路 (シリーズレギュレータ)の原理

可変抵抗

非安定な直流

●三端子 ICを用いた 安定化回路(三端子レギュレータ)

三端子 IC

三端子 ICが可変抵抗のような役割を果たす。

ヒートシンク(放熱板)

三端子IC

INGND

OUT

電流

一定電圧

+

リニア電源

非安定化電源部 安定化電源部

三端子レギュレータなど

++

安定化した直流

ツェナーダイオード(逆方向に電流を流すと、一定電圧が得られる)

シリーズ方式の安定化回路は、トランジスタの抵抗で安定化した直流を得る。このため、発熱が多く低効率。

《電源トランス》 《整流》 《平滑》

電源トランスは重く大きい

ポイント

発熱するのでヒートシンク(放熱板)が必要。

ポイント

リニア電源は、抵抗を直列(シリーズ)に入れて制御にするので、シリーズ電源ともいう。抵抗によって電圧を落とすことからドロッパ、シリーズドロッパなどとも呼ばれる。

ポイント

交流電源

負荷

+ + 検出

スイッチング

パルス幅制御 フォトカプラ

整流・平滑回路 整流・平滑回路高周波トランス

《整流》 《平滑》

《トランジスタ》 《MOS FET》

方形波の電圧のハイ&ローでON/OFFする。

スイッチON

スイッチOFF

< 半導体素子によるスイッチング >

最初に整流するところがリニア電源との違い。

出力電圧を検出・比較してフィードバックする。

ポイント

トランス、チョークコイル、コンデンサを小型化できる。

ポイント※高周波ではトランスコアを小さくできる。コア材として、高周波損失が小さいフェライトなどが使われる。

スイッチングレギュレータ部

パルス幅制御(PWM)の原理は(→5頁)。

TDK Power Electronics World

ON ON ON

OFF OFF OFF

スイッチング周期

デューティ比

ON時間スイッチング周期

1次側・2次側を電気的に絶縁して信号を送る。

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技術編

非絶縁型DC-DCコンバータの基本回路

チョッパ方式ではチョークコイルが重要な働きをする。 コイルもコンデンサもエネルギーを蓄える機能をもつ。

電流起電力の向き

スイッチONすると、コイルは流れ込む電流を阻止する方向に起電力を生む。

スイッチON

スイッチOFFすると、コイルは電流を維持しようとする方向に起電力を生む。

スイッチOFF

< スイッチングとコイルの働き >

入力電圧>出力電圧

スイッチング素子 チョークコイル

直流入力

(制御回路に接続) ダイオード

直流出力

コンデンサ

+

+

スイッチON

スイッチOFF

バックコンバータ(降圧)

❶スイッチON:入力から出力へ流れる電流により、チョークコイルにエネルギーが蓄えられる。

❷スイッチOFF:チョークコイルは電流を保とうとして起電力を発生させ、ダイオードを通じて電流が流れて出力する。(スイッチング素子が回路に直列接続されている。デューティ・サイクルの設定により必要な電圧に降下できる)

チョッパとは、電流をスイッチングで、「チョップ(Chop)する=切る」ようにして送るしくみであることからのネーミン

< チャージポンプ式のDC-DCコンバータ(昇圧型)の基本原理 >

入力S1 S3

出力

C1 C2

S2 S4

V

入力S1 S3

出力

C1 C2

S2 S4

V 2V

S1・S4を ONにして、C1を充電する(実際のスイッチングは IC動作による)。

S1・S4を OFF、S2・S3を ONにすると、C1の電荷が C2に運ばれ、2倍の電圧となって出力される。

充電したコンデンサを直列に接続するようにスイッチングして昇圧する。

ポイント

チョークコイル

コ ア巻 線

ダイオード、コンデンサ、制御 ICなど

< 小型オンボードタイプのDC-DCコンバータ(チョッパ方式)の部品実装の例 >

チョークコイル

コイルは電流変化を妨げて、抵抗のように振る舞う(レンツの法則)。「チョーク」とは、電流の“息が詰ま る(Choke)”と いう意味。

13 14

非絶縁型のDC-DCコンバータにも、いくつかの方式があります。出力1W未満~数W程度の小型オンボードタイプなどに採用されているのはチョッパ方式と呼ばれるものです。これには降圧型(ステップダウン)のバックコンバータ、昇圧型(ステップアップ)のブーストコンバータなどがあります。いずれも少ない部品点数で小型・ローコストなローカル電源がつくれます。より簡便なチャージポンプ方式は、コンデンサを活用し、コイルやトランスを用いていないのが特長です。

コンデンサは蓄電器と呼ばれるように、電荷を蓄えるのが基本機能です。これを利用したのがチャージポンプ方式。トランスやコイルを用いず、コンデンサだけ電圧変換する小型・簡易なDC-DCコンバータです。コンデンサに蓄えた電荷を、スイッチングによりバケツリレーのように運んで昇圧します。

入力電圧<出力電圧

(制御回路に接続)

+

+スイッチON

スイッチOFF

ブーストコンバータ(昇圧)

❶スイッチON:流れ込む電流により、チョークコイルはエネルギーを蓄える。

❷スイッチOFF:チョークコイルは電流を維持しようとして、蓄えたエネルギーを放出する。

※バックコンバータとブーストコンバータの機能をあわせもつバックブーストコンバータという方式もある。極性を反転できるのが特長。

チョークコイルが蓄えていたエネルギーが、スイッチOFF時に、“増強・上積み(ブースト)”されるかたちで昇圧する。

ポイント

スイッチング素子が並列に接続されているところも降圧型との違い。

小出力の小型オンボードタイプ

コンデンサを用いた小出力タイプ

TDK Power Electronics World

チョークコイルが、かなりの面積を占めている。

ポイント コイルはエネルギーを蓄える。

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技術編

絶縁型DC-DCコンバータの基本回路

絶縁型DC-DCコンバータの主役はトランス。 鉄心は高周波領域では損失(発熱ロス)が多くなるので使えない。

RCC方式(自励式フライバックコンバータ)

< トランスの原理と起電力の方向 >

1次巻線の巻き始めを表す印

1次巻線からの磁束

2次巻線の反作用磁束

電流

誘導起電力

コア

逆起電力負荷

スイッチON

2次巻線の巻き始めを表す印

スイッチONすると、1次巻線から磁束が発生するが、このとき磁束増加を妨げるように起電力(逆起電力)が生まれる。コアを通じた1次巻線の磁束は、2次巻線に反作用磁束を生み、起電力(誘導起電力)が生じて電流(誘導電流)が流れる。スイッチOFFのときは、電流の向きは逆になる。

1次・2 次巻線の起電力(逆起電力、誘導起電力)の向きは、●印に対して同じ方向になる。

ポイント

トランス

(制御回路に接続)

+

+

スイッチON

スイッチOFF

❶スイッチONすると、1次巻線に電流が流れ(→→)、発生する磁束によりコアが磁化される(エネルギーの蓄積)。ダイオードの向きが逆なので、2次巻線には誘導電流が流れない。

❷スイッチOFFすると、コアに蓄積されたエネルギーが開放されて、ダイオードを通じて電流が流れる(→)。トランスのコイルがチョークコイルの役割を果たしているともみなせる。

トランスコアがエネルギーを蓄えるので、チョークコイルが不要。

ポイント

チョークコイルD1

D2

逆起電力

誘導起電力

(制御回路に接続)

+

+

スイッチON

スイッチOFF

❶スイッチONすると、トランスの原理により1次巻線・2次巻線に起電力(逆起電力、誘導起電力)が発生して、ダイオード(D1)を通じて電流が流れる(→)。このとき、チョークコイルにエネルギーが蓄えられる。

❷スイッチOFFすると、電流変化を妨げるようにチョークコイルに起電力が生まれ、蓄えられたエネルギーが放出されて、転流ダイオード(D2)を通じて電流が流れる(→)。

小~中出力タイプ

小出力タイプ

プッシュプル方式 中~大出力タイプ

フルブリッジ方式 中~大出力タイプ

中出力タイプ

Q1が ON:

ベース巻線Q1

Q1

Q2

DC出力

DC出力

Q1が ON:Q2が ON:

数100W以上の高効率・大出力電源に採用される。

Q1 Q3

Q2 Q4

Q2・Q3が ON:Q1・Q4が ON:

ベース巻線のベース電流によりQ1がONしてコレクタ電流が流れる。ベース電流が不足するとOFFとなり、2次側に電流が流れる。この動作を繰り返す自励式。部品点数が少なくてすみ、簡易な小出力電源に用いられる。

DC-DCコンバータには、スイッチング素子がONのときエネルギーを出力するON/ON方式と、スイッチング素子がOFFのとき出力するON/OFF方式がある。

Q1・Q 2を交互に切り替える。出力300W程度までの電源によく使われる。

ハーフブリッジ方式は、Q1・Q2を2つのコンデンサで置き換えた方式。

OFF:

※磁気飽和を防ぐためトランスコアにはギャップを入れる(→19頁)*RCC : Ringing Choke Converter 出力電圧

(V)

1000

100

10

00 10 100 1000 電力(W)

ON/OFFタイプ(RCC式、フライバック式など)

ON/OFFタイプ&ON/ONタイプ(1石フォワード式など)

ON/ONタイプ(多石式:プッシュプル、ハーフブリッジ、フルブリッジ式など)

B:磁束密度

飽和磁束密度励磁過程透磁率が高いほど傾 きが大きくなる。

透磁率

H:磁界

曲線の幅が狭いほど、損失が小さい。

ケイ素鋼 フェライト アモルファス

透磁率 △ ○ ◎

飽和磁化 ◎ △ △

鉄損 × ◎ ◎

製造コスト △ ◎ ×

出力電圧・電力別のタイプ

ON/ON方式とON/OFF方式

磁性体コアの B-H曲線

各種コア材の性能比較

15 16

絶縁型DC-DCコンバータと呼ばれるのは、トランスを積極的に用い、大出力にも対応した本格的なタイプです。基本的な原理や骨格となる回路を知っておくと理解も深まります。

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中~大出力タイプは複数のスイッチング素子を用いる多石式となり、回路は複雑になりますが、高効率化や低ノイズ化、高機能化が図れます。

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技術編

さらなる高効率化のための技術

商用交流に含まれる高調波は力率を低下させる。 電源はアナログ制御からデジタル制御の時代を迎えている。

*ZVS: Zero Voltage Switching ZCS: Zero Current Switching

1%弱~数%程度の小さな損失が集まって、トータルでは20%程度の損失となる。

スイッチング部 高周波整流回路

比較検出回路制御回路

高周波トランス

< AC-DCスイッチング電源の主な損失(発熱ロス)箇所 >

は損失(発熱ロス)をもたらす主な部品。

ブリッジダイオード

AC入力

平滑コンデンサ トランジスタ MOSFET

高周波トランス

DC出力

ICIC

平滑コンデンサ

整流ダイオード

整流平滑回路

ターンオフ時間

OFF

電圧波形

ON

OFF OFF

ON

OFF

ON

重なり合う部分がスイッチング損失(電圧×電流)となる。

重なり合う部分を少なくしたり、デッドタイムを設けたりして、スイッチング損失を低減する。

電圧波形電流波形 電流波形

効率=出力電力(W) / 入力電力(W)力率=有効電力(W) / 皮相電力(VA)

(皮相電力とは電圧計と電流計で得られる数値の積。見かけの電力のこと)。

半導体素子の損失が大きいので、さまざまな回路が考案されている。

トランスのコア材の特性が効率に大きく影響する。蓄積したフェライト技術をもつのが TDKの強み。

さらなる高周波化への対応として、コイルとコンデンサの共振でスイッチングする共振型電源という技術も実用化され始めています。

PFHC搭載AC-DCコンバー タとDC-DCコ ンバータを一体化させたパワーモジュール

ポイント

通常のスイッチング(ハードスイッチング) ソフトスイッチング

電源ではコイルやコンデンサがエネルギーを蓄えたり、入力側に戻したりするので、力率は1未満となる。

ポイント

電源の「効率」と「力率」

< 絶縁型DC-DCコンバータの簡易な同期整流回路例 >

高周波トランス 高周波トランスダイオード

DC入力

(制御回路に接続)

(制御回路に接続)

パワートランジスタ

DC出力 DC

入力

DC出力

補助巻線

パワーMOSFET(Q1)

パワーMOSFET(Q2)

補助巻線に誘起される電圧でQ2のゲートをドライブする。

通信

通信

通信機能をデジタル制御にして高機能化。

PWMはアナログ制御

エラーアンプ

基準電圧発振器

アナログコントローラ

デジタルインタフェース

DC入力 DC出力スイッチング回路 平滑回路

DC入力 DC出力スイッチング回路 平滑回路

フルデジタル化

DSP(デジタルシグナルプロセッサ)

A-Dコンバータ

従来方式のフライバックコンバータ 同期整流方式のフライバックコンバータ

ダイオードにかわり、低 抵 抗 の パ ワ ーMOSFETを利用。Q1とQ2の連携(同期整流)で高効率化を実現する。

ダイオードの抵抗による損失が大きい。

2つのパワーMOSFETで電流の交通整理をする。

ポイント

デジタル制御によって電源の多機能化・高機能化が可能。

ポイント

アナログ制御部を A - DコンバータとDSPで置換。

ポイント

ポイント

基準電圧

デジタルインタフェース

通信機能をデジタル制御にしたDC-DCコンバータの回路

フ ル デ ジ タ ル 制 御 のDC-DCコンバータの回路ブロック例

フルデジタル化のメリット

●入出力電圧、出力電流、温度などの 電源情報が、リアルタイムでパソコ ンに表示できる。

●きめ細かな出力制御による省エネ。

●突入電流による半導体素子の破損 を防ぐためのソフトスタート機能な ども容易に実現する。

●複数のDC-DCコンバータを分散 配置するPOLのパワーマネジメン トにも有利。

●部品点数を少なくできる。

※2005年、DSP(Digi ta l S ignal Processing)を用いたフルデジタル制御DC-DCコンバータの開発を開始し、現在ではデジタル制御を活かしたAC-DC電源の製品化も進めています。

17 18

電源が1%効率化されるだけでも、社会全体では莫大な省エネ効果を生み出します。さらなる高効率化ための新技術をいくつかご紹介します。

スイッチング電源において損失が大きいのは半導体素子です。また、小型化するために、スイッチング動作の周波数を上げれば、損失も大きくなります。電源の技術最前線では、こうした問題の解決に向けて研究が進められています。

ソフトスイッチングとは、ON/OFFのタイミングを高度に制御することで、スイッチング損失を減らす技術。電圧ゼロの状態でスイッチングするZVS方式や、電流ゼロの状態でスイッチングするZCS方式などがあります。

商用交流に含まれる高調波(基本周波数の整数倍の成分)を抑制することで波形を整えて力率を改善する技術。

電源のデジタル制御は、通信系から始まり、制御回路を含めたフルデジタル制御へと発展を遂げています。

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PFEシリーズ

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技術編

電源の性能を支えるキーパーツ

平滑用に大容量の積層セラミックチップコンデンサも使われる。 TDKが推進するのが、“トータルEMCソリューション”。

スイッチング電源のノイズ対策

19 20

スイッチング電源において、ダイオード、トランジスタ、MOSFET、ICといった半導体素子とともに、大きな役割を担っているのが、コンデンサ、コイル、トランスなどの受動部品です。

スイッチング電源の弱点はノイズを発生することです。TDKは、各種のEMC対策部品(ノイズ対策部品)から電波暗室によるノイズ測定まで、EM C 対 策の入口から出口までをすべてサポートするトータルEMCソリューションを提供しています。

積層セラミックチップコンデンサは小型で信頼性が高く長寿命。フィルムコンデンサや電解コンデンサ領域に迫る大容量タイプもある。EMC対策部品(ノイズ対策部品)としても重要。

スイッチング電源には、メイントランス以外にも、各種トランスやコイルが多用されている。また、携帯電話などにはSMD(表面実装部品)タイプの小型パワーコイルが搭載されている。コア材の特性は電源の高効率化とともに、小型・薄型・軽量化にも大きく関係する。

ただし、ギャップからの漏れ磁束はノイズなどの原因になるのでシールドが必要。

●EIコアギャップの調整により、特性を制御できる。ただし、ギャップからの漏れ磁束対策として磁気シールドが必要となる。

●EEコアセンターポールにギャップを設けると、漏れ磁束による影響は小さくなる。

巻線用ボビン、トランス外観、フェライトコア(EEコア、EIコアなど、各種形状がある)。

巻線 コア

コアギャップ漏れ磁束

コアギャップ

漏れ磁束

アクティブフィルタ用チョークコイル

メイントランス 平滑チョークコイル

カレントトランス補助電源用トランス スイッチング素子ドライブ用トランス

コモンモードチョークコイル

アルミ電解コンデンサ

小型・高信頼性・長寿命が持ち味。高周波特性にもすぐれる。

大容量のため、平滑コンデンサに使われる。

トランスチョークコイル

磁気飽和を防ぐためには、コアにギャップが入れられる。

AC入力

DC出力

スイッチング電源には、多数のトランス、コイル類が使われている。

ポイント

EMCフィルタ PFHC回路 出力整流平滑回路

補助電源回路 制御回路パワースイッチ回路

積層セラミックチップコンデンサ

チョークコイルのコア例(トロイダルコア)

●理想的な直流 ●AC-DCスイッチング 電源の出力波形

商用交流の周期

スイッチング周期

リップルノイズ

スパイクノイズ

電圧

0

電圧

0

< スイッチング電源(AC入力)のEMC対策例 >

< スイッチング電源(AC入力)に特有のノイズ >

AC入力

DC入力

《 電源ライン用EMCフィルタ 》

電源用EMCフィルタ

フレキシールド

フェライトコア

クランプフィルタ

コモンモードフィルタ

制御回路 比較検出回路

CRスナバ

●トランジスタやダイオードの発生ノイズが、放熱用ヒートシンクから放射される。●トランスやチョークコイルからの漏れ磁束が、金属ケースなどに渦電流を発生さ せてノイズの原因となる。●大電流がON/OFFする箇所の配線や部品。導線のインダクタ成分も影響するので、配線の引き回しや部品のリード線を短くする。

その他のノイズ発生源 高度な回路設計技術やシミュレーション技術なども要求される。

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コンデンサと抵抗の働きで、トランジスタやダイオードのスイッチングノイズやスパイクノイズを抑制。

配線ループはアンテナとなってノイズを放射するので、このループ面積をできるだけ小さくする。

フェライトでノイズを吸収して放射ノイズを抑制。

フレキシブルな電磁シールド材。放射ノイズを吸収し、熱に変えて除去する。

コモンモードとディファレンシャルモード双方のノイズの侵入・流出を防ぐ。

出力ラインにコモンモードノイズが流出するのを防ぐ。

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技術編

UPS(無停電電源装置)の選び方

UPSは整流器、バッテリ、インバータで構成される。 省エネや地球環境保全にパワーエレクトロニクスの役割は大きい。

新たな電源システムとバッテリ

< 電源障害の種類およびTDK-Lambda UPSの区分 >

フロアマウントタイプ

キャスター付可動タイプ

大容量据付けタイプ

●常時インバータ方式

●ラインインタラクティブ方式

容量:数100W~   1000W 程度

据え置きタイプ

●常時商用給電方式

容量:数10W~   数100W 程度

小型・軽量タイプ

商用電源ノイズ 周波数変動 スイッチングノイズ 高調波歪み

電圧低下 過電圧

停電 電圧サグ サージ

レベル 9

レベル 5

レベル 3

保護できる電源障害の数によるレベル分けと、それに対応した給電方式。

ラックマウントタイプ

電源障害の種類と必要な容量で最適機種を選ぶ。

ポイント

21 22

停電や電圧低下、商用交流の波形歪みなど、さまざな電源障害による不測のシステムダウンを防ぐのがUPS(無停電電源装置)。用途に応じた機種が豊富にラインナップされています。

近年、UPSのバッテリは従来の鉛蓄電池からリチウムイオン電池への置換が進み、UPSの小型・軽量・長寿命化が急速に進んでいます。ハイブリッドカー(HEV)などの電気自動車の普及の鍵となるのもバッテリです。

< UPS容量の算定方法 >

●総容量(VA) = VA表記機器の合計容量

W表記機器の合計容量÷0.6

V、Aで表記されている場合は双方の数値を掛ける(例:100V、1.8A→180VA)* 力率は接続機種により異なるので注意。一般的に 0.6~ 0.8。

●総容量(W) = VA表記機器の合計容量×力率*

W表記機器の合計容量

停電

UPS作動

通常時

AC出力

停電時

インバータ(DC/AC変換)

整流器(AC/DC変換)

バッテリ

AC入力 波形歪みやノイズの

ない高品質なサイン波として出力。

常時インバータ方式の給電のしくみ

算出した双方の数値より、大きい容量のUPSを選定する。バックアップ時間も余裕をもたせる。

総容量(VA)と総容量(W)の双方に10~30%の余裕率を上乗せする。

UPSの主な給電方式

●常時商用方式 (矩形波出力)

●ラインインタラクティブ方式 (サイン波出力)

●常時インバータ方式 (サイン波出力。無瞬間で接続 するので、波形の途切れがない)

< HEV(パラレル方式の例)の基本メカニズムとDC-DCコンバータ >

リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などをスタック。約200~300Vの高圧。

TDKのHEV用DC-DCコンバータ。メインバッテリの高圧を低圧に変換する。

補機バッテリ ジェネレータ

モータ

エンジン

高圧バッテリ

インバータモータジェネレータエアコン用

DC-DCコンバータ

ランプ、ワイパなど

< 各種二次電池のエネルギー密度 >

300

200

100

00 40 80 120 160体

積エネルギー密度(

Wh

/ℓ)

ニッケル水素電池

リチウムイオン電池

ニカド電池

重量エネルギー密度(Wh/kg)

バッテリの節約に、高効率の車載DC-DCコンバータが求められている。

ポイント

< パワーエレクトロニクスの未来モデル >

発電所 /変電所

交流送電直流配電

直流配電

太陽光発電

風力発電、ミニ水力発電など

プラグイン電気自動車 燃料電池

大容量バッテリ

家電機器制御盤

電力ルータAC/DC変換

電子機器はDC駆動なので、オフィスや家庭へ直流配電する構想もある。

風力や太陽光で発電したエネルギーをリチウムイオン電池に蓄える。

コンセントから充電できるプラグイン・ハイブリッドカーも登場している。

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TDKPower ElectronicsWorldTDKパワーエレクトロニクス製品 ガイドブック

1960年頃

1965年頃

1970年頃

1972年

1974年

1976年

1978年

1995年

2000年

2004年

2005年

2006年

2008年

この当時、真空管を利用した安定化電源が主流米国NASAが宇宙機器用にスイッチング電源の開発に着手

スイッチング電源向けの半導体素子が開発され始める

この頃、TDKおよび日本電子メモリ工業(ネミック・ラムダの前身)がスイッチング電源事業に着手

日本電子メモリ工業が日本初の標準スイッチング電源を製造・販売TDKがスイッチング電源を製造・発売

業務用テレビゲームに採用され、スイッチング電源市場が拡大

TDKがスイッチング電源用トランスを製造・発売

日本電子メモリ工業の営業を譲受し、ネミック・ラムダ(デンセイ・ラムダの前身)を設立

TDKがHEV用DC-DCコンバータの生産開始

TDKがスイッチング電源RKWシリーズ、JBWシリーズを発売

デンセイ・ラムダ(TDKラムダの前身)がスイッチング電源HWSシリーズを発売

TDKグループにデンセイ・ラムダが加わるリチウムイオン電池搭載UPS(完全鉛フリー)発売

TDK-Lambdaブランド製品の発売開始13シリーズ・234機種の電源用EMCフィルタ(全機種RoHS指令対応)を市場投入

TDKラムダ株式会社発足

TDKパワーエレクトロニクス・ワールド発行日 2009年 3月31日/発行者 TDK株式会社 広報部〒103-8272 東京都中央区日本橋1-13-1 Tel.03-5201-7102

スイッチング電源発展の歴史

< スイッチング電源の進化(ユニット型、150W比較)>

●RoHS指令などの 環境保全対応

●EMC規制、 CEマーキングなどへの対応

●グローバル仕様 への対応

次世 代

第 1世代

第 2世代

第 3世代

第 4世代

第 5世代

1970年頃 1980年 1990年 2000年 2010年

日本初の

標準スイッチング電源

◎電源の革新的な小型化 さらなる小型化 ・高効率化

4500cm3

3800cm3

1300cm3

1200cm3

550cm3

Cert no . SGS-COC-004380