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データセンターの運用効率のベスト・プラクティス データセンターの効率性を向上させることにより、新規プロジェクトの支出の増加を 可能にする IBM Global Technolog] Services 調査レポート IBM Global Data Center Study による調査結果

データセンターの運用効率のベスト・プラクティス...IBM Global Data Center Study iii エグゼクティブ・サマリー 現在のデータセンターは急速に変化しています。多くの企業

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データセンターの運用効率のベスト・プラクティスデータセンターの効率性を向上させることにより、新規プロジェクトの支出の増加を可能にする

IBM Global Technolog] Services調査レポート

IBM Global Data Center Study による調査結果

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ii データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

データセンターの運用効率のベスト・プラクティス : データセンターの効率性を向上させることにより、新規プロジェクトの支出の増加を可能にする は、今日のデータセンターの能力レベルを評価できるデータセンター運用効率モデルを作成した IBM の調査結果です。ここでは、IT 組織がデータセンターの変革を前進させる方法を説明しています。このレポートは、IDC によって作成され、IDC は IBM に代わり調査およびインタビューを実施しました。

このレポート作成にご支援、サポートいただいた以下の方々に謝意を表します。

• Dr. Ian Stewart, Director of Advanced Computing, University of Bristol

• Antonio Buratti, CIO, ABI (Associazione Bancaria Italiana)

• Pierre Debagnard, General Manager of Albiant-IT, BPCE Group

• Xiao Xiao Bin, IT Manager, INESA Information Solution Group Co. Ltd

• Martin Constant, Corporate Director of Information Technology, NORAMPAC

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IBM Global Data Center Study iii

エグゼクティブ・サマリー現在のデータセンターは急速に変化しています。多くの企業は、新しいテクノロジー・ソリューションを統合することで組織の最新化と進化を図っています。そしてほとんどが適切なレベルの IT サービス・デリバリーやコスト効率、ビジネス目標との整合性を確保できる道筋を模索しています。これは、あるデータセンターにとっては最先端レベルの可用性、柔軟性、拡張容易性の提供を意味することもあれば、「十分な」レベルのサービスを提供しながら、新たな設備投資を最小限に抑えることを意味する場合もあります。

いずれにしても、データセンターの効率性と柔軟性はさまざまに設定することが可能です。IBM と IDC は、現在のデータセンターの能力レベル評価に必要なデータセンター運用の効率モデルを作成し、どうすれば IT 組織がデータセンターの変革を目指して前進できるかについて説明しています。データセンターの進化は一般的に、効率性のレベルに応じて「基本レベル (ベーシック)」、「統合化レベル (コンソリデイティッド)」、「可用性レベル (アベイラブル)」、「戦略的レベル (ストラテジック)」という主要な 4 段階に分類することができます。

図 1: 最高レベルの効率で稼働するデータセンターは、最低レベルの効率で稼働するデータセンターよりも 50% 多い IT 予算を新規プロジェクトに割り振っています。

2012 年 1 月の CIO および IT マネージャーに対するグローバル調査の結果を効率モデルに当てはめると、現在のデータセンターの 21% (おおよそ 5 つに 1 つ) がピーク効率に達しており、最高レベルで稼働しています。

基本レベルのデータセンター

新規プロジェクト35%

既存のインフラストラクチャーの保守65%

新規プロジェクト53%

既存のインフラストラクチャーの保守47%

戦略的レベルのデータセンター

最高レベルの効率性で稼働しているデータセンターでは、50% を超える IT リソースが新規プロジェクトに割り振られています。

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iv データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

データセンターの効率性向上は、組織にはっきりとしたメリットをもたらします。今回の調査で、戦略的レベルのデータセンターが以下を実現していることが明らかになりました。

• 戦略的イニシアチブへの多大な投資。戦略的レベルのデータセンターでは、スタッフは半分以上の時間をインフラストラクチャーの保守ではなく、新規プロジェクトに費やしています。これに対し、基本レベルのデータセンターの場合は、わずか 35% です (図 1)。さらに、戦略的レベルのデータセンターの 39% が IT サービス・デリバリーを設計し直すために変革プロジェクトを計画していますが、基本レベルのデータセンターでは 23% です。

• 効率の向上。スタッフの配置の効率は 2.5 倍以上になり、管理者当たり平均 27 台のサーバーを管理しています。一方、基本レベルのデータセンターの場合は 10 台です。

• 柔軟性の向上。半数以上の企業が、しばしば発生する組織上の変化に対応していますが、基本レベルのデータセンターの場合は 6% です。

より戦略的なアプローチに移行した企業には、次の 4 つの際立った特徴があります。

• サーバー、ストレージ、ネットワーク、設備といった資産を最適化し、キャパシティーと可用性を最大限に発揮する

• 柔軟性を考慮した設計により、変化するビジネス・ニーズに対応する

• 自動化ツールを使用して、サービス・レベルと可用性を向上させる

• ビジネス目標に沿った計画を用意し、常に最新の状態に保つ

「適切な」ソリューションの標準化された青写真は1 枚だけではありません。また、戦略的レベルのデータセンターの効率レベルに達することがすべての組織の目標に合致するとは限らないため、多くの IT 専門家は適切な戦略の策定に必要なコンテキストを提供するプレーブック (戦術書) のようなものを探しています。

この調査について

このレポートの情報は、7 カ国 308 人の IT 幹部に対するグローバルな調査に基づいています。この調査は、データセンターの運用効率 (プロセス、ツール、テクノロジー) の現状を、次の 8 つの分野で把握することを目的としています: データセンターの運用、設備管理、サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションとツール、ガバナンス、スタッフの配置。この調査を補足するものとして、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの IT マネージャー、CIO への詳細なインタビューも実施されています。調査に関するさらに詳しい情報については、「調査の方法論」をご覧ください。

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IBM Global Data Center Study 1

目次

1 データセンターの状態の定義

3 戦略的データセンターの際立った特徴

8 データセンターの運用効率改善のために推奨される投資

11 効率レベルの段階的な向上:ケース・スタディー

14 戦略的データセンターへの移行

14 IBMがご支援する方法

15 調査の方法論

データセンターの状態の定義データセンター効率の状態およびビジネス・ニーズとの整合性を評価する際、留意すべき重要な概念が2 つあります。まず、これさえあれば効率の段階が上がるような「特効薬」となる指標はないということです。データセンター環境は、サーバー、ストレージ、ネットワーク・システム、機器/電気系統、アプリケーションとツール、ガバナンス手続き、スタッフが結集されたものです。データセンターの運用効率を評価する効果的な方法は、すべての要素について複数の測定基準を考慮した全体的な手法を取ることしかありません。2 つ目は、データセンターの進化とは、ビジネス・ニーズが変化するにつれ、目的地も変化する旅のようなものだということです。そのため、料理のレシピのようにそのまま従うものとしてこのフレームワークをとらえるのではなく、むしろ、組織の個々のニーズに基づいて柔軟に適用する必要があるプレーブックと見なすことが必要です。

調査回答から、IT 組織のビジネスとの整合性の度合いに応じて、データセンターの特徴が 4 つのステージに明確に分かれることが明らかになりました (図 2)。各ステージは、効率、可用性、柔軟性の組み合わせに基づいて、データセンターを特徴付けています。

• 基本レベル (ベーシック): 環境は比較的安定しており、短期的な目標に基づき維持されています。単体インフラストラクチャーが標準です。企業はサーバー統合によるメリットは得ていますが、可用性レベルを向上させるツール類は導入していません。アプリケーションやサイトごとに可用性レベルが大きく異なっています。

• 統合化レベル (コンソリデイティッド): サーバー仮想化およびサイト統合で、相当数のシステムおよび設備を削減しており、初期設備投資が低減しています。サーバーおよびストレージ・テクノロジーが有効に活用されており、仮想マシン (VM) の移動による可用性の向上が期待できます。

• 可用性レベル (アベイラブル) : IT インフラストラクチャーを、自在に配置・伸縮可能な汎用リソース・プールとして扱うことで、変化するワークロードの需要に対応し、使用可能時間とパフォーマンスを維持しながらも高い使用率を提供しています。サービス・レベルを評価して向上させながら、ビジネス要件に適合したガバナンス手続きを構築することが重視されています。

• 戦略的レベル (ストラテジック) : ポリシー・ベースの自動化ツールを幅広く採用することで、手動による複雑なデータ入力を簡素化し、アプリケーションとデータの可用性の要件と動的な移動を確保します。計器による計測および測定基準を一貫して使用することで、ガバナンス・ポリシーへの準拠を検証します。

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図 2: データセンターの成熟度は、効率性、可用性、柔軟性の組み合わせに基づき、4 つのステージに区分けされます。

運用11 年以上 データセンターの築年数 3 年未満

2.5 以上 電力使用効率 (PUE) 1.5 未満

設備なし 機器/電気設備の冗長性 完全

高 機器/電気設備のアップグレード時の運用停止 まったくなし

サーバー10% 未満 仮想化の割合 60% 以上

0 ~ 4 物理サーバー当たりの仮想マシン台数 8 以上

ストレージ10 ~ 20% ストレージ仮想化 80 ~ 90%

アーカイブとしてバックアップ アーカイブ e-ディスカバリー・デ

ータ・マッピング

ネットワーク 数日 災害復旧時間 数秒

アプリケーションとツール 個人で管理 アプリケーション・ポートフォリオの意思決定 集中アプローチ

ガバナンス 時間を要する 意思決定の容易さ 迅速に決定

スタッフの配置0 ~ 10 正規職員 (FTE) 当たりの物理サーバー 100 以上

30% 未満 スタッフが新規プロジェクトに費やす時間 60% 以上

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統合化レベル(コンソリデイティッド)

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可用性レベル(アベイラブル)

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戦略的レベル(ストラテジック)

非効率的 極めて効率的

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基本レベル(ベーシック)

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IBM Global Data Center Study 3

戦略的データセンターの際立った特徴回答者の約 60% が今後 2 年以内にデータセンターのアップグレードを予定しており、68% がテクノロジーを迅速に採用する意向を示していることを考慮すると、何が戦略的レベルのデータセンターを特徴付ける主要な差異かを理解することは有用です。すべての組織が、急速な変化をサポートするよう構築された環境を必要としているわけではなく、組織によっては、戦略的レベルの象徴といえる、ほぼリアルタイムの柔軟性や「常時の」可用性をまったく求めていない場合があります。しかし、これらの機能を実際に必要としている組織は、将来のデータセンターを考慮する際に必要となるロードマップをこのフレームワークから得ることができ、可用性と柔軟性だけでなく、費用抑制も優先するインフラストラクチャーの構築方法を学べます。

戦略的レベルのデータセンターを運用する企業は、常に以下を実行しています。

• サーバー、ストレージ、ネットワーク、ファシリティーといった資産を最適化し、キャパシティーと可用性を最大化する

• 柔軟性を考慮した設計により、変化するビジネス・ニーズに対応する

• 自動化ツールを使用して、サービス・レベルと可用性を向上させる

• ビジネス目標に合った計画を用意し、常に最新の状態に保つ

より戦略的なアプローチでデータセンターを運用する場合、エンド・ユーザーのニーズを中心に戦略を策定します。データセンターの効率レベルが上昇するにつれ、ハードウェア・コストの大部分が統合や仮想化によって既に削減されている場合が多くなるため、ビジネス上の利点をもたらすことが実際の焦点になります。

すなわち、アプリケーションの可用性やパフォーマンスだけでなく、ビジネスの変化に迅速に対応できる能力が重要です。効率性や費用抑制を典型的な基本要素としている組織と比べ、収益の創出やイノベーション、競争優位性を目標とし、ビジネス成果に焦点を当てることで莫大な見返りを得ることができます。

世界的に、データセンターの分布はベル型曲線に沿っており、21% (おおよそ 5 つに 1 つ) のデータセンターが、最高ステージである「戦略的 (ストラテジック) 」レベルで最適化されており、半数以上が「統合化レベル (コンソリデイティッド)」および

「可用性レベル (アベイラブル)」という異なる段階の環境に移行中です。

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4 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

統合から高水準の最適化への移行仮想化による統合は、データセンターの効率化を実現する行程に必要な最初のステップです。ほとんどの IT 組織では、まずサーバー・レベルで統合を行い、データセンターに存在する物理サーバーの冗長性を低減することで費用を削減します。この後、ストレージとネットワーク環境の仮想化を行います。通常、仮想化は統合と似たような目的で、物理インフラストラクチャーにかかる支出を合理化し、削減するために行われます。

仮想化は、データセンターにとって必須の機能です。実際に、データセンターが「戦略的」な段階に至るころには、サーバー、ストレージ、ネットワーク環境の仮想化が高水準で実装されており、ソフトウェアと自動化ツールの使用も進んでいます。リーダー層は、サーバー当たり 8.2 台の仮想マシン (VM) を管理することにより、スタッフの生産性を大幅に高めています。それに対し、基本レベルのデータセンターでは、サーバー当たり 4.5 台の VM の管理にとどまります。資産の最適化を、戦略的レベルのデータセンターと基本レベルのデータセンターで比較した場合に見られる主な特徴は以下のとおりです (図 3)。

• 戦略的レベルのデータセンターでは、サーバー全体の 48% が仮想化されています (基本レベルのデータセンターでは 27%)

• 戦略的レベルのデータセンターの 93% が仮想化ストレージを使用しています (基本レベルのデータセンターでは 21%)

• 戦略的レベルのデータセンターの 92% が重複排除テクノロジーを使用しています (基本レベルのデータセンターでは 14%)

図 3: 戦略的レベルのデータセンターは、物理インフラストラクチャーのすべてのコンポーネントにわたる仮想化を特徴とします。

48%

27%

93%

21%

92%

14%

サーバー仮想化の割合

ストレージ仮想化を使用している

重複排除を使用している

戦略的レベル 基本レベル

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IBM Global Data Center Study 5

柔軟性を考慮した設計で変化するビジネス・ニーズに対応

変化はますます加速しており、インフラストラクチャーはその変化への対応を迫られています。戦略的レベルのデータセンターを運用する幹部の約 90% が、新規テクノロジーを真っ先に、または率先して採用することを表明しています。絶えず変化するビジネスとテクノロジーのニーズに対応できるよう、柔軟性を考慮した設計で計画を策定することは重要です。

柔軟性とは、サービス・レベルの合意 (SLA) を確実に満たすために、適正なレベルの可用性および冗長性を備えていることも意味します。可用性と冗長性を、戦略的レベルのデータセンターと基本レベルのデータセンターで比較した場合に見られる特徴は以下のとおりです (図 4)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 47% が運用を中断しないで機器、電気設備をアップグレードできます (基本レベルのデータセンターでは 9%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 90% が 1 次データセンターでアクティブ/アクティブ構成を行っています (基本レベルのデータセンターでは 21%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 100% が災害復旧用にバックアップ・サイトまたは 2 次サイトを設けており、その半数以上がホット・サイトです (基本レベルのデータセンターでは 15%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 46% がストレージのバックアップに対して、同期複製、地理的複製、複数のスナップショット用の整合性グループといった、高度なアプローチを取っています (基本レベルのデータセンターでは 8%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 45% が新規サービスを柔軟にサポートするネットワーク設計を行っています (基本レベルのデータセンターでは 31%)。

図 4: 戦略的レベルのデータセンターは、ビジネス・ニーズを満たすために、適切なレベルの可用性および冗長性で設計されています。

47%

9%

停止を伴わない機器/電気設備のアップ

グレード

アクティブ/アクティブで複製された主要データセンター

ストレージ・バックアップで使用

される複製

柔軟なネットワーク設計による新規サー

ビスのサポート

90%

21%

46%

8%

45%

31%

戦略的レベル 基本レベル

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6 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

自動化ツールを使用した、サービス・レベルおよび可用性の向上

自動化は一般に、データセンターの進化における次のステップです。自動化のレベルを高めると、柔軟性のレベルが向上し、より高いレベルの可用性をサポートできます。自動化ツールとテクノロジーへの依存度を高めると、システム管理者による手作業中心のタスクが軽減されて、エラー率が減少するとともに、SLA に対応したアプリケーションのパフォーマンスが保証されます。

戦略的レベルのデータセンターと基本レベルのデータセンターを比較した場合に見られる管理上の特徴は、以下のとおりです (図 5)。

サーバー管理の場合:• 戦略的レベルのデータセンターの 81% が、物理ハードウェ

アをまたいで VM を移動させ、柔軟性および可用性のレベルを大幅に向上させています (基本レベルのデータセンターでは 27%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 100% が自動化ツールを使用して仮想サーバー環境を管理し、58% が自動化ツールを使用して、サービス・レベルの合意 (SLA) に基づき、手動操作による介入の必要なしで VM を自動的に移動させています (基本レベルのデータセンターでは 1%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 32% がクラウドのような機能を実現するセルフサービス・ポータルを提供しています (基本レベルのデータセンターでは 4%)。また、 48% が 1 年以内の提供を計画しています。つまり、2013 年までに 80% がクラウド機能を提供すると見込まれます。

ストレージ管理の場合:• 戦略的レベルのデータセンターの 85% が自動化された階

層型ストレージを備えています (基本レベルのデータセンターでは 12%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 87% がストレージ向けにサービス・カタログを使用したアプローチを採用しており、可用性と自動化のレベルが向上しています (基本レベルのデータセンターではわずか 3%)。

図 5: サーバー、ストレージ、ネットワークの管理で幅広く自動化を活用することで、戦略的レベルのデータセンターの特徴である高レベルの可用性とサービス・レベルを実現できます。

58%

1%

VM を移動させて SLA に対応

ストレージ・サービス・カタログの

実装

戦略的レベル 基本レベル

ネットワーク・サービスの自動プロビ

ジョニング

温熱条件のモニター

87%

3%

30%

3%

31%

0%

ネットワーク管理の場合:• 戦略的レベルのデータセンターの 60% が自動化されたネ

ットワーク管理を使用しています (基本レベルのデータセンターでは 20%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 30% がポリシー管理プロセスを使用して、ネットワーク・サービスを自動的にプロビジョニングしています (基本レベルのデータセンターでは 3%)。これにより、サービスへの応答が迅速になり、ネットワークの復旧時間が数時間~数日から数分~数秒に短縮します。

設備管理の場合:• 戦略的レベルのデータセンターの 31% がソフトウェア・ツール

を使用して温熱条件を監視しています (基本レベルのデータセンターでは 0%)。この情報を利用して、リアルタイムの稼働条件に合わせて調整することが可能です。

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IBM Global Data Center Study 7

ビジネス目標に合った計画を用意し、常に最新の状態に保つ戦略的レベルのデータセンターを有する組織は、景気が回復したときに市場の機会を利用できるよう、準備を万全に整えています。これらの組織では、統合プロジェクトを多用して、維持しているデータセンター・サイトの数を最適化しています。さらに、戦略および実行に絶えず焦点を当てて、必要とされるデータセンターの対象数を継続的に評価する傾向が非常に高くなっています。

例えば、戦略的レベルのデータセンターを有する IT 組織は、近年の経済不況時に機能の拡張または最新化を行っている傾向が強く見られます。基本レベルのデータセンターでは 60% 以上が、過去 2 年間にその運用において戦略的な変更や投資を行っておらず、70% 以上が今後 2 年間にもその見込みがありません。 対照的に、ほぼすべての戦略的レベルのデータセンターが過去 2 年間に何らかの拡張または成長を遂げており、そのうちの 80% 以上が今後 2 年間にも拡張または増加を見込んでいます。

さらに、戦略的レベルのデータセンターを運用している IT 組織は、正式な計画策定に定期的に従事している傾向が強いといえます。基本レベルのデータセンターと比較して柔軟性が高い戦略的レベルのデータセンター計画には、以下のような特徴があります (図 6)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 68% が一度にすべてを増設するのではなく、少しずつキャパシティーを増やすことを計画 (基本レベルのデータセンターでは 53%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 25% が 10 ~ 20 年のデータセンターの耐用年数をサポートするために必要なスペースを予測 (基本レベルのデータセンターでは 0%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 77% が電力需要を予測 (基本レベルのデータセンターでは 14%)。

• 戦略的レベルのデータセンターの 33% が新規テクノロジーの多様な電力需要をサポートするために低密度および高密度のゾーンの実装を計画 (基本レベルのデータセンターでは 2%)。

戦略的レベルのデータセンターは有利な立場にあり、変革を促進するプロジェクトを進める傾向は、基本レベルのデータセンターと比較してほぼ 2 倍です。実に、戦略的レベルのデータセンターの管理者の 39% が、今後の 5 年間で社内での IT サービスの提供方法を大幅に変更するプロジェクトを計画しています。これに対して、基本レベルのデータセンターでは、管理者のわずか 23% が計画しているに過ぎません。

図 6: 戦略的レベルのデータセンターの管理者は、定期的に予測を行い、柔軟性を確保する拡張戦略を採用することで、ビジネス目標との整合性を実現します。

68%

53%

小さい単位で容量を追加

スペースを予測 (10 年 ~ 20 年)

戦略的レベル 基本レベル

電力需要を予測 高密度ゾーンと低密度ゾーンを実装

25%

0%

77%

14%

33%

2%

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8 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

データセンターの管理者は総じて、この変革には外部のツール、テクノロジー、支援への投資が必要であることを理解しています。大規模なプロジェクトを計画している管理者の 4 人に 3 人以上が外部の支援に頼ると答えており、戦略的レベルのデータセンターに限ればこの割合はさらに高くなります (85%)。さらに、戦略的レベルのデータセンターでは、ホスティング、コロケーション、災害復旧用の代替サイトなど、外部の機能をより多く活用しようとする傾向がかなり高くなっていますが、キャパシティーの 64% を社内で維持しています。

データセンターの運用効率を向上させる投資とはコスト抑制は確かにデータセンターの効率向上がもたらす重要なメリットですが、おそらく最も重要なメリットは、中核事業のニーズや市場需要の変化により適切に対応できるようになることでしょう。調査結果によると、データセンターの効率レベルを向上させる過程で、組織のツール、テクノロジー、プロセスを大幅に変更する必要があることが明らかになりました。

企業は、現在の効率レベルがどの段階にあり、どのレベルを目指すのかを把握したら、次にどの程度の時間とリソースを投資するのが適切なのかについて検討する必要があります。ある段階から次の段階への移行には依存関係が伴うため、戦略的レベルへ到達するには、連続したステップを踏むことが必要で

す。先導的な企業の際立った特徴を参考にすることは、どのように着手するかを決定する際に役立ちます。各分野の領域には以下のものがあります。

• データセンター運用および設備管理• サーバー• ストレージ• ネットワーク• ビジネス回復力• ガバナンス (アプリケーション、ツール、スタッフの配置を

含む)

データセンター運用および設備管理戦略的レベルのデータセンターは設備の設計に細心の注意を払い、データセンターを単一のシステムとして扱う全体論的な視点の必要性を理解しています。また、電力、スペース、キャパシティー、可用性を予測することによって、設備の耐用年数がビジネス・ニーズを満たせるように計画を立てています。これにより、予測可能性が高められ、変更時や増設中に運用を中断する可能性を低減できます。先導的な企業から以下のような洞察を得られます。

• 適切なサイズのキャパシティーおよび可用性。 プライマリー・センターおよびバックアップ・センターのビジネス・ニーズを満たすために、キャパシティーおよび可用性を予測します。その後、リアルタイム・モニター、管理ソフトウェアを使用して効率性の管理を継続します。

• 柔軟性を考慮した設計。 投資によりスケーラビリティーを確保し、例えばキャパシティーを少しずつ時間をかけて増設したり、機器の変更時に運用中断が不要になるように機器/電気システムを設計したりすることで、需要やテクノロジーの急速な変化に対応できるようにします。

• 長期的な総コストの最適化。 設備投資と運用コストのトレードオフを前提にした設備設計を行い、エネルギー効率と電力消費量をリアルタイムで測定します。

大規模プロジェクトを計画する戦略的レベルのデータセンター管理者の 85%、プロジェクトを計画する管理者全体では 77% が外部の協力に頼ると述べています。

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IBM Global Data Center Study 9

サーバー戦略的レベルのデータセンターのオペレーターは、サーバー・インフラストラクチャーを統合することでサーバー管理の効率を抜本的に向上させています。また、可用性のレベルとサービス品質の向上を促進するために自動化とソフトウェア・ツールを活用し、「より困難な」プロジェクトに取り組む必要性があることを理解しています。活用に関する具体的な洞察には以下のものがあります:

• 統合から仮想化への移行。 ソフトウェア・ツールと自動化を活用して、仮想イメージを物理サーバーとデータセンター間でポリシーに基づき移動させることで、SLA のパフォーマンスを向上させます。

• クラウド・コンピューティングに対する準備。 セルフサービスのポータルから、VM のサイズ、オペレーティング・システム、サービス・レベルを選択して、オンラインで自動オーダーできるサービスを計画します。

• 最新テクノロジーの利用。 どのようにシステムを最適化し、ワークロードを移動させるかを把握することで、統合インフラストラクチャー (サーバー、ストレージ、ネットワーキング・システムと管理ソフトウェアがあらかじめ統合されたパッケージとして販売されている) を活用できます。

ストレージ戦略的レベルのデータセンターは、ストレージの最適化と管理のあらゆる側面に対処しています。ソフトウェアとポリシー・ベースの管理システムを使用して、ストレージのプロビジョニングと管理に必要な細かい手作業を削減し、急増するストレージに先んじて対応する必要があることを認識しています。先導的な企業から以下のような洞察を得られます。

• ストレージ最適化の増強。 先導的な企業は、仮想化、重複排除、シン・プロビジョニングなどのストレージ最適化手法を 4 ~ 6 倍多く実施しています。

• ストレージ・アーキテクトにより費やされる時間の短縮。 ストレージ管理テクノロジー、特に、ストレージ・サービス・カタログを実装して、セルフサービスとポリシー・ベースの管理を促進します。

• ストレージのバックアップおよびアーカイブも確実に対応。 ストレージのボリュームに全面的に注目しているため、先導的な企業は、データの全ライフサイクルを管理する必要性を認識しています。ストレージのバックアップでは、地理的複製や複数のスナップショットに対応できる整合性グループなど、より高度なアプローチの採用を検討します。アーカイブについては、e-ディスカバリー・データ・マッピングや、監査用の定義済みプロセスの使用を検討します。

「新しいデータセンターの構築により、より多くのスペース、より効率的で環境に配慮した冷却および電力、ならびにより堅固なサービス・デリバリーが実現されました。より高いレベルの冗長性を組み込むことが、そのキー・コンポーネントとなりました。」 – Martin Constant, Corporate Director of Information Technology, NORAMPAC Paper and Packaging industry, Canada

「私たちは、既に自動化された階層型ストレージ、ストレージ仮想化、重複データ削減、および動的リソース割り当てを (オンデマンドで) 活用しています。」 – Pierre Debagnard, General Manager of Albiant-IT, BPCE Group, France

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10 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

ネットワークスマートフォンが急増し、アプリケーションやデータへのアクセス要求が大幅に増加しています。さらに、ビデオ使用の増加や、クラウド・コンピューティングの導入もあり、今日のネットワークに多くの外的プレッシャーが加っています。先導的な企業は、データセンターのネットワーキング戦略を策定する必要性を認識しています。また、従来のネットワーク最適化技術から、ネットワーク管理と自動化を取り入れたアプローチへと移行することで、全体的な IT の効率性と柔軟性の向上を図っています。先導的な企業から以下のような洞察を得られます。

• ネットワーク戦略の開発および実行。 全体的、長期的な視点を取り入れ、ネットワーク、サーバー、ストレージとアプリケーション、エンド・ツー・エンドの管理の容易性を考慮に入れて、ビジネス目標や財務目標とのバランスを調整します。

• ネットワーク管理および自動化の実装。 継続的なネットワークの調整を可能にするツールとプロセスを使用して、ポリシー・ベースのアプリケーション要件を満たし、予測ツールを使用して予定外の停止を回避します。

• 柔軟性を目的とした設計。 人手による介入を最小限に抑え、ポリシーに基づいてネットワーク・サービスを自動的にプロビジョニングする能力をアーキテクチャーに取り込みます。

ビジネス回復力成長を可能にし、変化するビジネス条件に対処し、新しい規制、セキュリティーの脅威、サービスの停止に対応するには、IT リスクを管理する能力が不可欠です。先導的な企業は、潜在的な機会を最大限に活用する能力を強化しながら、ネガティブなリスクを軽減するアプローチと能力において際立っています。先導的な企業の戦略から得られる洞察には、以下のようなものがあります。

• 事業継続計画のレビュー。 データセンターであろうと、リモート・ロケーションであろうと、テープのみに頼ったデータのバックアップやリカバリーを避けます。バックアップには、オンサイトおよびリモートのディスク・ストレージを組み合わせます。

• 特定のビジネス・プロセスやアプリケーションからシステムが利用不可能になった場合の影響を把握。 先導的な企業は、アクティブ/アクティブ構成を使用してビジネス・ニーズを満たすために最適な可用性のレベルを提供します。これにより、障害発生時にシステムの迅速なフェイルオーバーが可能になります。

• ビジネスおよび規制のコンプライアンス要件の調査。 長期にわたるデータ・アーカイブの潜在的なニーズを理解します。これには、検索機能がコンプライアンス要件への対応能力にどう作用するかという点も含まれます。監査用の定義済みプロセスと、アーカイブ e-ディスカバリー機能を整えます。

ガバナンス、アプリケーション、ツール、スタッフの配置戦略的レベルのデータセンターの幹部は、多くの運用管理ベスト・プラクティスの使用に対応した環境を確立しています。以下に例を挙げます。

• アプリケーション管理に集中型のポートフォリオ手法を採用。 先導的な企業はまた、アプリケーションの所有者に支払う用意がある場合、アプリケーションごとに異なるサービス・レベルと、サポート・レベルを適用するようになるでしょう。

• データセンターへの投資を行う際には、設備費・初期投資と継続的な運用コストの両方に注目。 先導的な企業は、モニターおよび管理ソフトウェアを使用することで、継続的な運用だけでなく、特定時点の投資決定でも総コストへの注目を怠りません。

• 意思決定手順およびポリシーの実装。 先導的な企業は、文書化された手順およびポリシーを採用することで、継続的なデータセンターの運用に関する意思決定を容易にしています。

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IBM Global Data Center Study 11

効率性レベルの向上: ケース・スタディー

イタリア銀行協会 (ABI): 基本レベルから、統合化レベルへ

イタリアの銀行協会である ABI は、自国および海外の両方でイタリアの金融機関の利益を代弁する非営利組織です。ローマに拠点を置くこの協会は、重要な芸術作品を数多く所蔵している国の歴史的建造物、Palazzo Altieri にオフィスを構えています。

2010 年、ABI の IT インフラストラクチャーは、建物内に分散した 6 つの独立したサーバー・ルームでホストされている 110 台のサーバー、50 台のスイッチおよびルーターで構成されていました。管理は 6 人の IT アドミニストレーターおよび合計 19 人の IT 部門のスタッフが行っていました。これらのシステムは、Web ポータルを通して 600 の内部接続および数千の外部接続をサポートしていました。仮想化はされておらず、サーバー・ルームの設備や冷却は適切とはいえませんでした。また、各サーバー・ルームを別々に維持しなければならなかったため、スタッフの配置が非効率的でした。ABI は、インフラストラクチャーを次のレベルへ向上させるべく、統合を推進することを決定し、データセンターを単一の設備に集中化することから着手しました。

ABI 固有の課題の 1 つとして、既存の本部に新規のデータセンターを置くという要件がありました。文化遺産という性質上、構造的な変更を制限するさまざまな制約が課せられています。それにもかかわらず、約 80 平方メートルの、天井の高いホールを建物内で特定し、適切なスペースとしてサイトのリノベーションを開始しました。

サイトを完全には改修できないことが判明した後 (床上げ冷却の導入ができないなど)、ABI は革新的な冷却システムをホールに装備するという選択をしました。この冷却システムは、ラック・キャビネットの上の冷却装置に接続された APC ラック内水冷ブロックをベースにしています。データセンターをこのように変革することで、IT インフラストラクチャーの平均電力消費量を約 35%、すなわち 25 kW 削減できたと考えています。

「現在、さまざまなツールを個別に使用してアプリケーションを管理していますが、将来的に、単一の管理プラットフォームを実装する予定です。」 – Xiao Xiao Bin , IT Manager, INESA Information IT Services industry, China

「私たちのシステムでは IT 機器を直接冷却するため、部屋全体で空調を行う必要性が軽減されています。データセンターを変革することで、IT インフラストラクチャーの平均電力消費量が約 35% (25 kW) 減少しました。 – Antonio Buratti、CIO、ABI

現在では、ABI は設備の最新化を完了し、機器/電気システム、電力、冷却に焦点を置いています。ABI は、統合化レベルのデータセンターへの移行を完了する一歩を踏み出しました。今後の予定として、ラック・マウント型サーバーからブレード・サーバーへとさらなる統合を計画しています。これは冷却システムの効率がさらに向上したことで、より高密度のサーバーに対応可能になったためであり、合わせて、より優れたレベルのサーバー仮想化の導入も予定されています。さらに、データセンターの効率性をいっそう高める高機能管理ツールの導入も計画中です。この管理ツールは、ラックのモニターから設備のセキュリティー・システムの運用まで、設備全体の運用をすべて単一のダッシュボードから実行できます。

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12 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

ブリストル大学: 戦略的データセンターへの投資

ブリストル大学は英国の代表的な研究大学で、気候学、航空宇宙、遺伝子配列解明技術、社会医学、経済学、計算化学など、高性能コンピューティング (HPC) を基礎とした研究で幅広い実績を持っています。専用の HPC データセンターは、600 人を超える研究者や学生の計算主体の研究や教育のニーズをサポートしています。

メインのデータセンターの他に、ブリストル大学は HPC および研究データのストレージ・システムを収容するためだけに使用されている 2 つの独立したデータセンターを所有しています。これらのデータセンターは、「可用性」をもった効率レベルで運用されています。データセンターのインフラストラクチャーは、クラスターおよび分散システム構成によりハイレベルの仮想化および冗長性を提供しています。大規模なデータセンターには APC ホットアイルを密閉するソリューション内に 38 個のラックがあり、小規模なデータセンターには同様のホットアイル構成で 12 個の APC ラックが配置されています。これらのデータセンターは合計で 600 台を超えるサーバー・ノードと 1.3 ペタバイトのストレージを収容しています。

2006 年、ブリストル大学はデータセンター 10 カ年計画を策定しました。これは、インフラストラクチャーを大幅にアップグレードし、最適化のレベルをさらに向上させる新規のデータセンター機能も追加するものでした。残念ながらキャンパスには利用可能なスペースを確保する余裕がなかったため、ブリストル大学は古い貯水設備を新規のデータセンターにするという解決策を考え出しました。この独特なスペースには、他に類を見ない課題がいくつかありました。例えば、貯水設備は物理学棟の屋上にあったため、装置を 5 階まで移動する必要があったり、同じ物理学棟上に設置されている大学の研究用電波望遠鏡に電磁干渉を及ぼさないようにする必要がありました。幸運にも、このスペースにはいくつかの利点もありました。例えば、物理学棟があるのはブリストルでも最も高い地点の 1 つだったため、無償の空冷を利用できたことなどです。

最終的に、新しい施設は床面積が 190 平方メートルを超え、多くの最先端機能を備えた代表的な戦略的レベルのデータセンターになりました。これらには、別個のデータセンターのように稼動する、密閉されたホットアイル・ポッド 2 つを含むモジュラー設計が含まれます。APC インフラストラクチャーである、こうした水冷式密閉ホットアイルは、大学のコンピューティング・ニーズが増大したときに容易に拡張できます。モジュラー手法を採用することで、初期

設備投資を削減し、過剰な構築を回避しながら、将来的なスケーラビリティーに対応可能になりました。現在、ラック当たり 20 kW で指定されている設備は、将来的により高密度をサポートできるように設計されています。

「完全自動管理ツールを開発したことで、データセンターと HPC の両方を管理できるようになり、データ・ストレージ・システムの調査が 4 名の正規職員

(FTE)で可能になりました。これにより、日常的な保守作業およびモニター作業のために、職員がデータセンター内に入る必要性が軽減されています。」 – Dr. Ian Stewart, Director of Advanced Computing, University of Bristol

データセンターは、「戦略的」レベルの効率性の特徴をさらに強化し、完全自動管理などのさまざまな最先端の自動化機能に対応することで、日常的な保守、監視作業のために、HPC 担当者がデータセンター内に入る必要性を軽減し、データセンターおよびすべてのコンピューター機器の両方を 4 人の HPC システム管理の担当者で管理できるようにしました。 自動化スクリプトは、APC センサー機器と通信することで、マシン・ルーム環境をモニターし、適切な処置を実施します。重大な問題が発生した場合は、計算システムおよびストレージ・システムのシャットダウンも可能です。

将来を見据えて、この大学では、2012 年の春の終わりまでの完了を目標に、現在 38 個あるラック・ユニットを 48 個に拡張する計画を既に進めています。また、グリーン・イニシアチブを積極的に推進しており、より電力効率の高いプロセッサーの使用と、よりインテリジェントなソフトウェアを使用して、その処理能力のより効率的な活用を検討しています。これにより、運用コストをさらに削減できるだけでなく、データセンターの耐用期間を延ばすことも可能になります。

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IBM Global Data Center Study 13

Albiant-IT 社、BPCE グループ: 「戦略的」レベルでの稼働

Albiant-IT 社は、バンキングおよび金融サービスをさまざまな法人、個人顧客に対して包括的に提供するフランス企業、バンキング・グループ BPCE のデータセンターのホスティングと管理を専門に行うサービス・プロバイダーです。このグループは、3,600 万の顧客を抱えており、117,000 人の従業員と 8,000 の営業店でこれらの顧客に対応しています。これらのオペレーションに対応するため、Albiant-IT 社は、パリ首都圏およびフランス北部にそれぞれ 1 カ所ずつ拠点を設け、この 2 カ所で合計 4 つのデータセンターを運用しています。4 つのデータセンターを合計すると、約 7,500 平方メートル (約 9,000 平方メートルまで拡張可能) の面積を備えており、現在、18,000 台のサーバーをホスティングしています。サーバーの 80% は x86 で、残りは UNIX サーバー、および 7 つのメインフレームという構成です。

Albiant-IT 社は、データセンターが最も最適に稼働できるよう戦略的に投資を行いました。データセンターは、可用性 99.999% の SLA (99.999% のシステム動作可能時間) で稼働しており、実際、現在の設備を配置してから 2 年以上経過した今なお 100% のシステム動作可能時間を達成していることが測定で明らかになっています。現在、社内の IT およびホスティング・サービス・インフラストラクチャーを考慮した10 カ年のキャパシティー計画が準備されています。

データセンターは、2(N+1) アーキテクチャーで、ホット/ホット (アクティブ/アクティブ) モードで稼働しています。各データセンターは、他のデータセンターに複製されるため、必要に応じてワークロードを移動できます。キャパシティーは、電力容量を増やしたり、既存の物理設備内に新しい「設置スペース」を準備することで、モジュラー方式で追加できます。電力消費量は、準備された電力容量計画に従い、設備レベルで測定しています。電力使用効率 (PUE) の最適化に大きな重点を置いているため、現在 PUE 2 で稼働しているこの設備では、直近の目標として PUE 1.7 の達成を目指しています。室内にいる人数、気流、湿度測定、温度の最適化といった、

さまざまに変動する要素に左右される電力使用量の最適化にシステム全体で対応しています。仮想化を幅広く導入しており、全体のサーバー仮想化レベルは 60% を上回っています。VM の移動が自動キャパシティーでサポートされています (例: サーバーの障害時)。また、仮想化はオンデマンドでの重複排除や動的リソース割り当てとともにストレージ環境に組み込まれています。バックアップは、地理的複製により、テープやディスクを使用して、オンサイトで実行されます。ネットワークは、リアルタイムに障害から復旧できるように設計されています。ガバナンスは、銀行内の各顧客組織の代表者から構成される、チェンジ・コミッティーを通じて実現されます。そして、中核となる意思決定基準を中核として、常に、高可用性の実現と運用コストの最小化を確保しています。

「私たちは 99.999% の SLA で稼働していますが、現在の設備が導入された 2 年前から、可用性は 100% 達成されていることが測定で明らかになっています」 – Pierre Debagnard, General Manager of Albiant-IT, BPCE Group

データセンターの大部分が「戦略的」レベルで稼働していますが、Albiant-IT 社がさらなる最適化の領域を検討していないということではありません。その領域の 1 つが統合インフラストラクチャーの導入です。BPCE の顧客とともに、Albiant-IT 社は、コスト削減を支援し、迅速な投資収益率 (ROI) を可能にする、こうしたインフラストラクチャーの導入を検討しています。

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14 データセンターの運用効率のベスト・プラクティス

戦略的データセンターへの移行ビジネスの根底にある変化するニーズに対応するために、データセンターは常に拡張と進化を迫られています。こうした課題に適応できるよう、各データセンターでは少しずつ異なるアプローチを採用しています。

現在、データセンターのおおよそ 5 つに 1 つが「戦略的」 (最も効率の高い) レベルで稼働しています。まだこのレベルで稼働していない企業は、戦略的レベルのデータセンターを稼働する IT 組織の 4 つの重要な行動に倣うことで、より優れた効率性を実現できます。

• サーバー、ストレージ、ネットワーク、設備といった資産を最適化し、能力および可用性を最大限に発揮する

• 柔軟性を考慮した設計により、変化するビジネス・ニーズに対応する

• 自動化ツールを使用して、サービス・レベルおよび可用性を向上させる

• ビジネス目標に合った計画を準備し、常に最新の状態に保つ

一夜にこの状態を実現できる企業はほとんどありません。通常、「戦略的レベル」の状況を実現するには、数年単位で計画を立て、データセンターの各領域に戦略的な投資を行う必要があります。戦略的レベルのデータセンターを運用している比率が最も高かったのは、500 人を超える従業員を持つ北アメリカの組織および企業ですが、いかなる企業でもこのレベルの効率性を実現することは可能です。戦略的レベルのデータセンターは、世界中のあらゆる地域で見られ、より小規模な企業でも見られました。

規模を問わず、ほとんどの企業では、効率を向上させるプロジェクトにおいて外部の協力を仰ぐ計画を立てていますが、これは特に戦略的レベルのデータセンターで共通した認識といえます。最高レベルの効率性を実現するには、パフォーマンスを継続的に再評価し、ツール、テクノロジー、ガバナンスへの投資をレビューする必要があります。また、適切なレベルのスキルとサポートを用意する必要があります。そうすることで、スタッフの配置の効率性と柔軟性のレベルが向上し、ビジネスをサポートする戦略的な IT イニシアチブにさらに多くの時間を費やせるというメリットを実現できます。

IBM がご支援する方法IBM は、世界中のお客様のデータセンター計画策定、最適化、自動化をご支援し、ビジネスの成長および目標をサポートします。IBM は、お客様のデータセンターの効率性の目標達成に役立つ、データセンター設備の計画と設計、クラウド、IT 仮想化、ネットワーク最新化、ビジネス回復力、自動化のサービスで構成される幅広いポートフォリオをご用意しています。

お客様は、次のツールを活用して、データセンターの効率性を実現する行程を確認できます。 Data Center Efficiency Self-Assessment。 コスト不要のこのオンライン・ツールを使用することで、設備管理、サーバー、ストレージ、ネットワークにおける、効率性の概要を簡単に把握することができます。

詳細情報データセンターの効率性向上のため、IBM がどのようなご支援をさせていただくかの詳細情報については、IBM 営業担当員までお問い合わせいただくか、次の Web サイトをご覧ください。

ibm.com/smarterdatacenterjp (日本語)

ibm.com/services/smarterdatacenter (英語)

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IBM Global Data Center Study 15

調査の方法論

このホワイト・ペーパーの情報は、2012 年 1 月に実施された、308 人の IT エグゼクティブのグローバル・サーベイによるものです。また、データセンター効率性の各ステージを代表するデータセンター管理者との詳細なインタビューで補足されています。サーベイの母集団は、5,000 万ドルを超える収益を上げ、少なくともデータセンターを 1 つ所有している企業・組織に在籍している、データセンター戦略に責任を負う、または影響を及ぼす IT エグゼクティブで構成されています。回答者は、インターナショナル・パネルからランダムに選出・選別されています。また、回答者の国の内訳は、アメリカ合衆国、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、フランス、およびインドの 7 カ国です。グローバル・データは、サーバー・システム、ストレージ、企業ネットワーク、パッケージ化されたソフトウェアおよびサービスに対する IT 支出に重み付けを行って導き出されました (

通信とアウトソーシングを除く)。回答者には、電話でインターネット・サーベイへの協力を依頼し、サーベイは、電話、Web ともに現地の言語にて実施されました。

サーベイでは、データセンターの運用、設備管理、サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーションとツール、ガバナンス、スタッフの配置という、8 つの領域において、データセンター、ツール、テクノロジー、プロセスに関する情報の提供を回答者に依頼しました。質問は、これらの各領域における、データセンターの効率性レベルを明らかにする目的で作成されました。サーベイのデータは、これらの各領域における効率性を評価、分類し、データセンター全体の効率性の格付けにまとめ上げるように設計された IDC モデルにインポートされました (図 7)。このモデルを使用して、データセンターのインフラストラクチャーを改善する手段を考察できるため、可用性/回復力、費用対効果、柔軟性といった、ビジネスで必要となる容量の算出につながるいくつかの領域が明らかになりました。

回答者の構成は以下のとおりです。

• 成熟市場国の回答者 60%、成長市場国の回答者 40%• 大企業の回答者 63%、中堅企業の回答者 37%• IT 管理者の回答者 83%、CIO の回答者 17%• 金融、情報通信、公益、製造業、流通、官公庁などを対象とする

25 の業界

サーベイ情報を補足するものとして、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアのデータセンターに責任を負うエグゼクティブとの詳細な 5 つのインタビューが実施されています。これらの回答者は、データセンター運用全体に責任を負い、データセンターの効率性のステージの全領域を代表する方々です。

図 7: 本調査では、世界中のデータセンターの効率性の 4 つのステージを明らかにしました。

17%

基本レベル(ベーシック)

統合化レベル(コンソリデイテ

ィッド)

可用性レベル(アベイラブル)

戦略的レベル(ストラテジック)

32%30%

21%

効率性レベル

1 標準偏差 1 標準偏差

サー

ベイ

回答

者の

割合

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