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プロトコールに基づいた 睡眠薬適正使用の薬学的介入 田中 智也 1) 、樋本 繭子 1) 、米澤 圭祐 1) 、合田 俊一 1) 、髙瀬 尚武 1) 美紀 2) 、高原 秀典 3) 、横山 3) 、室井 延之 1) 1) 赤穂市民病院 薬剤部 2) 同看護部 3) 同診療部

プロトコールに基づいた 睡眠薬適正使用の薬学的介入 · 2015. 3. 28. · プロトコールに基づいた 睡眠薬適正使用の薬学的介入 田中智也

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Page 1: プロトコールに基づいた 睡眠薬適正使用の薬学的介入 · 2015. 3. 28. · プロトコールに基づいた 睡眠薬適正使用の薬学的介入 田中智也

プロトコールに基づいた

睡眠薬適正使用の薬学的介入

田中 智也1)、樋本 繭子1)、米澤 圭祐1)、合田 俊一1)、髙瀬 尚武1)、原 美紀2)、高原 秀典3)、横山 正3)、室井 延之1)

1)赤穂市民病院 薬剤部 2)同看護部 3)同診療部

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目的

近年、睡眠薬を使用している患者が増加を続ける一方、

睡眠薬に対する不安や抵抗感を持っている患者もいることから、

2013年6月に日本睡眠学会より「睡眠薬の適正な使用と休薬の

ための診療 ガイドライン」(以下、ガイドライン)が作成された。

当院においても、薬剤師の服薬指導時に患者からの不眠の

訴えを耳にすることが多くなってきている。今回、病棟薬剤業務

の一環として睡眠薬適正使用のためのプロトコールを作成し、

睡眠薬治療の最適化のためのシステムを構築したので報告する。

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方法

対象患者:7階北病棟(外科・泌尿器科・乳腺外科)に

入院中で睡眠薬を使用している患者

調査期間:平成26年5月~9月

介 入:睡眠薬適正使用プロトコールの作成

(医師・看護師・薬剤師で協議した介入手順書)

睡眠状態に合わせた処方提案のための

治療アルゴリズムの作成

睡眠薬使用患者の抽出(薬歴確認時)、

睡眠薬の服薬指導、処方提案・リスク評価

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睡眠薬適正使用プロトコール(介入手順)

※1:睡眠薬使用による副作用として眠気、ふらつき、転倒、

精神運動機能の低下、前行性健忘、頭痛、消化器症状がある参考文献:睡眠薬の適正使用と休薬のための診療ガイドライン

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睡眠障害症状の評価

ガイドラインの不眠症のQOL評価尺度を利用

服薬指導時に薬剤師が患者に聞き取り記入

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各種薬剤の特徴

利点

欠点

参考文献:今日の治療薬2014、睡眠障害の対応と治療ガイドライン、睡眠薬の適正使用と休薬のための診療ガイドライン

薬剤選択が睡眠状態を大きく改善する

要因となる。

・耐性を生じやすい・依存形成されやすい・筋弛緩作用が強い

・中途覚醒・早朝覚醒には不向き

・効果発現に時間がかかる

・耐性を生じにくい・依存形成されにくい・筋弛緩作用が弱い

・耐性を生じにくい・依存形成されにくい・筋弛緩作用が弱い・高齢者に対して比較的使用しやすい

・短~超長時間作用型の幅広い睡眠薬の種類がある

①ベンゾジアゼピン系(ブロチゾラム、エチゾラムなど)

②非ベンゾジアゼピン系(ゾピクロン、ゾルピデムなど)

③メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)

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治療アルゴリズム(入眠障害)

※1:筋弛緩作用の強弱(ω1受容体とω2受容体への選択性)※2:添付文書の適応に不安の項目の有無参考文献:今日の治療薬2014、睡眠障害の対応と治療ガイドライン、睡眠薬の適正使用と休薬のための診療ガイドライン

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治療アルゴリズム(中途覚醒・早朝覚醒)

※1:添付文書に不安の項目の有無※2:筋弛緩作用の強弱※3:抗不安・パニック効果強※4:睡眠障害に適応なし

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患者背景

年齢 男女比睡眠薬使用患者 25名

50歳代(2名)

60歳代(7名)

70歳代(12名)

80歳代(4名)

男性11名

女性14名

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処方された睡眠薬睡眠薬の種類

超短・短時間作用型の処方が多い

睡眠薬の併用

睡眠薬 1剤使用88%(22名)

睡眠薬 2剤使用12%(3名)

件数

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睡眠障害評価

睡眠障害の有無 睡眠障害の種類

睡眠薬使用患者 25名

※1:睡眠障害症状評価尺度の1.2.3項目ともにスコア2以下※2:睡眠障害症状評価尺度の1項目にてスコア4以上※3:睡眠障害症状評価尺度の2,3項目にてスコア4以上

睡眠障害患者 12名

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睡眠障害のある患者への介入

睡眠薬の変更希望

睡眠障害患者(12名)睡眠薬変更症例(4名)

睡眠薬未変更症例(8名)

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結果睡眠障害に対して超短時間・短時間作用型睡眠薬を

使用している患者の割合が多かった。

睡眠薬を使用している12名の患者に睡眠障害があり、

中途覚醒・早朝覚醒が残る患者の割合が多かった。

睡眠薬変更を望む4名に対し薬剤師が介入するに

よって、睡眠状態が改善し満足度を高めることができた。

8名に対しては睡眠薬変更に不安があり、睡眠薬変更

はしなかった。

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考察睡眠薬の適正使用としてプロトコールに基づいた薬物治療

管理を実施することで患者の睡眠状態を把握し、個々の

病態に適した睡眠薬の処方提案が可能となった。

睡眠薬に不安を持った患者が多いことから、薬剤師は睡眠

薬開始時から介入し患者のQOLを向上させる必要がある。

今後、患者の睡眠に対する満足度向上を目的として、

生活指導や睡眠薬を適正に使用するための指導を行う

必要があり、副作用防止の観点から前向性健忘や

転倒のリスクを適切に評価していきたい。