16
経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」 リスクトレードオフ評価書 プラスチック添加剤 -難燃剤- 要約版 2014 3 独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門

プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

経済産業省受託プロジェクト

「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

リスクトレードオフ評価書

プラスチック添加剤 -難燃剤-

要約版

2014 年 3 月

独立行政法人 産業技術総合研究所

安全科学研究部門

Page 2: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

2

1.はじめに

欧州では電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会

指令(RoHS)で、鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、ポリ臭化ビフェノール(PBB)、ポリ

臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の 6物質の製品中への使用制限が 2006年に施行された。こ

の指令などにより、使用禁止物質に対する物質代替への対応が企業に求められてきた。なお、

PBDE の一つであるデカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)は 2005 年に RoHS 指令の対象

物質から除外された。

また、企業の環境マネジメントシステムにおいても、PRTR指定化学物質からそれ以外の物

質への代替を進め、環境への配慮を図る動きがすでに起こっており、プラスチック添加剤の

DEHPや decaBDEのような PRTR指定化学物質の代替の動きは大きい状況である。

以上のように、実際には、有害性や暴露情報の少ない化学物質への代替が進んでおり、そ

れらの代替物質のリスクが増加している可能性があるが、被代替物質と代替物質との間でリ

スクトレードオフが発生しているのかどうかを確認するためには、代替物質の暴露や有害性

情報が欠如し、リスク評価が困難なこと、被代替物質と代替物質のエンドポイントが異なり、

リスク比較ができない問題がある。したがって、プラスチック添加剤の物質代替によってト

ータルでリスクの低減が図られているかどうかを確認する手立てがないのが現状であり、リ

スクトレードオフ解析のための手法開発とリスクトレードオフ評価の実施が望まれる。

そこで、並行して開発しているツールやモデルを使用して、プラスチック添加剤として電

気電子製品等に使用される難燃剤を対象に、ヒト健康リスクと生態リスクのトレードオフ評

価を行った。

2.シナリオ設定

本評価では、難燃剤が使用される主要な対象製品として、テレビ、パソコンなどの家電、

OA 機器などの電気電子製品の筐体をリスクトレードオフ解析の対象として取り上げる。また、

decaBDE は繊維用途での使用量も大きいため、バックグラウンドとして繊維用途も扱う。そ

して、臭素系難燃剤からリン系難燃剤への物質代替を扱うこととし、decaBDE と縮合リン酸

エステル系のビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)を対象物質とした。

ヒト健康リスク評価の長期的な視点にたって、1980年~2020年の 40年間の排出量平均値

を用いたリスクを評価した。

解析では、decaBDE から BDP への物質代替に伴うリスクトレードオフを評価するために、

物質の需要量変化に応じて、①decaBDE代替あり(ベースライン)シナリオ、②BDP代替あり

(ベースライン)シナリオ、③decaBDE代替なしシナリオの 3種類のシナリオを設定した。

シナリオ①では、過去から現在の decaBDE需要量データをそのまま用いたケースシナリオ

を想定した。シナリオ②では、過去から現在までの BDP需要量をそのまま用いたシナリオを

想定した。そして、シナリオ③では、樹脂用途について BDPへの代替が起こらず、現在から

将来の需要量がすべて decaBDEであると仮定したシナリオを想定した。

リスクトレードオフ評価の際には、①と②の両物質の代替ありのベースラインシナリオと

③の decaBDE代替なしシナリオとを比較することによって、代替によるリスクの増減を判断

することが可能となる。

以上、3つのシナリオでリスクトレードオフ評価を実施した。

Page 3: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

3

3.難燃剤のマテリアルフロー解析と環境中への排出量推定

decaBDE と BDP の国内需要量にもとづいたマテリアルフロー解析を実施して、テレビ、パ

ソコンの筐体に使用される樹脂や繊維等に含有する難燃剤の生産から廃棄までのマテリアル

フローを推定した。また、難燃剤は生産から廃棄までの長いライフサイクルを有するため、

ライフサイクルの各段階における排出係数を設定して、2 章で設定した代替シナリオごとに

難燃剤の環境中への排出量の 1980年~2020年の経年変化を推定した。

3.1 マテリアルフロー解析

国内需要量として、decaBDEは化学工業日報、BDPは日本難燃剤協会より提供されたデータ

を採用した。2005年までは実績であり、2006年以降は、2005年の状況が継続すると仮定し、

2020年までの需要量を推定した。各難燃剤は、用途を樹脂と繊維に分けて需要量推移を設定

した。樹脂と繊維の割合は、decaBDE で 6:4(東海ら、2008)、BDP は樹脂以外の用途はない

ことから、全量樹脂とした。国内生産量については、decaBDE は東海ら(2008)の設定に従

い、BDPは、国内需要量の 90%が国内で生産され、残りは輸入されると設定した。

難燃剤は最終製品中で難燃効果を維持するために、最終製品中に含有された状態で流通し、

その製品の寿命期間中に一般消費者にストックされ、その後廃棄される。そこで、電気電子

製品と繊維製品の寿命をそれぞれ 5~15 年、5~20 年と仮定して、累積ワイブル分布関数を

用いて、廃棄量および市中ストック量を推定した。その結果を図1に示す。

図 1 シナリオ別のマテリアルフロー解析結果

(左:廃棄量経年変化、右:市中ストック量経年変化)

3.2 排出量推定

国内生産、成形加工、最終製品消費および廃棄(一般廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥)の

ライフサイクルの各段階からの大気と水域への排出量を推定した。decaBDE の排出係数は、

基本的に東海ら(2008)のデータを参考とした(表1)。

BDP については、大気排出係数が物質の蒸気圧に比例すると仮定し、水域排出係数は水溶

解度に比例すると仮定して、BDP の排出係数を表2のように設定した。そして、各ライフサ

イクル段階でのマテリアルフローに排出係数を乗じて、排出量を推定した(図2)。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

19

80

19

82

19

84

19

86

19

88

19

90

19

92

19

94

19

96

19

98

20

00

20

02

20

04

20

06

20

08

20

10

20

12

20

14

20

16

20

18

20

20

市中ストック量[t/年

]

[年]

①代替ありdecaBDE ②代替ありBDP ③代替なしdecaBDE

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

2012

2014

2016

2018

2020

廃棄量

[t/年

]

[年]

①代替ありdecaBDE ②代替ありBDP ③代替なしdecaBDE

① ①

③ ③

② ②

(c)

Page 4: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

4

表1 decaBDEの環境中への排出移動係数一覧

工程 大気 水域 下水道 廃棄

国内生産 0 3.3×10-4 0 1.6×10-2

成形加工 樹脂 1.3×10-5 4.2×10-6 5.5×10-5 2.7×10-2

繊維 2.1×10-6 1.7E-03 3.2×10-3 9.8×10-2

最終製品使用 樹脂 5.1×10-6 0 0 0

繊維 5.1×10-6 3.1×10-7 6.9×10-7 0

破砕 3.0×10-7 0 0 0

焼却 9.4×10-6 0 0 0

埋立 7.3×10-7 2.3×10-7 0 0

表 2 BDPの環境中への排出移動係数一覧

工程 大気 水域 下水道 廃棄

国内生産 0 3.0×10-5 3.0×10-5 1.8×10-3

成形加工 樹脂 2.8×10-7 8.8×10-8 1.2×10-6 5.6×10-4

繊維 0 0 0 0

最終製品使用 樹脂 1.0×10-7 0 0 0

繊維 0 0 0 0

破砕 2.4×10-7 0 0 0

焼却 2.8×10-7 0 0 0

埋立 1.1×10-10 2.5×10-4 0 0

図2 シナリオ別の排出量推定結果

(上:大気排出量、下:水域排出量)

Page 5: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

5

4.室内暴露解析

開発中の室内暴露評価ツールを用いて decaBDE、BDPおよび BDP夾雑物のトリフェニルホス

フェート(TPP)の室内空気中濃度(ガス態濃度)、室内ダスト中濃度を推定した。

ベースシナリオの decaBDE の室内ダスト中濃度の推定結果とこれまで報告されている全国

を対象とした測定結果を図3に示す。モデル計算値は既存の測定結果と概ね一致した。

図3 decaBDEの室内ダスト中濃度の実測値と iAIRによる計算値の比較

図4に代替シナリオ別の室内ダスト中濃度を示した。decaBDE から BDP への代替がなかっ

た場合、decaBDEの平均値は代替ありのシナリオの 1,200 ng/gから代替なしシナリオの 1,400

ng/g へ上昇する。一方で BDP の室内ダスト中濃度は decaBDE と比較すると 2 オーダー、TPP

の室内ダスト中濃度は 2 オーダー低い値であった(表3)。

表3 室内環境中濃度の推定結果

シナリオ 物質 室内ダスト中濃度 室内空気中濃度

ng/g pg/m3

代替あり decaBDE 1,200 (240~2,500) 0.0026 (0.00052~0.0066)

BDP 7.2 (0.0~180) 0.00033 (0.000~0.0015)

TPP 15 (0.0~66) 5.9 (0~26)

代替なし decaBDP 1,400(400~3,300) 0.0029(0.00085~0.0073)

平均値(2.5%ile~97.5%ile)

10,000

20,000

30,000

10,000

20,000

30,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

計算値

CRM2005

環境省2005

環境省2006

環境省2007

環境省2008

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

室内ダスト中濃度(ng/g)

n=1,000,000

n=31

n=4

n=4

n=4

n=4

最大値

97.5%ile

2.5%ile

最小値

平均値

10,000

20,000

30,000

10,000

20,000

30,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

計算値

CRM2005

環境省2005

環境省2006

環境省2007

環境省2008

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

室内ダスト中濃度(ng/g)

n=1,000,000

n=31

n=4

n=4

n=4

n=4

最大値

97.5%ile

2.5%ile

最小値

平均値

Page 6: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

6

図4 代替シナリオ別の室内ダスト中濃度

5.環境中濃度推定

環境中に排出された難燃剤はさまざまな環境媒体を経て、ヒトや環境中の生物に到達する。

そこで、推定した排出量にもとづいてモデルにより decaBDEと BDPの大気、河川および海水

中濃度を推定した。

5.1 大気中濃度推定

推定排出量データを用いて AIST-ADMERで日本全国の大気中濃度を推定した。排出量データ

は、各段階及び用途(樹脂・繊維)に応じて工業統計出荷額、夜間人口、所在地情報などを

用いて、グリッド単位の排出量分布とした。

物質パラメータは、decaBDEについて分解係数 5.2×10-6、乾性沈着速度 3.0×10-3 m/sec、

洗浄比 2.0×105(東海ら、2008)、BDP でそれぞれ 1.18×10-5、2.7×10-3 m/sec、1.8×105

(モデル推定値)と設定した。バックグラウンド濃度はそれぞれゼロとした。各シナリオの

大気中濃度の推定結果を図 5に示す。

図5 各シナリオにおける大気中濃度の推定結果

5.2 河川水中濃度推定

各シナリオについて、排出量推計結果にもとづき、開発中の河川モデルを用いて、関東地

方の一級水系における 1kmメッシュごとの月別河川水中濃度を推定した。モデル入力パラメ

ータを表4に示す。

モデルでは、土壌侵食が考慮されないため、解析では、安全側の評価の観点から、大気沈

室内ダスト中濃度(ng/g)

代替あり代替なし

最大値

97.5%ile

2.5%ile

最小値

平均値

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

decaBDE BDP TPP decaBDE

室内ダスト中濃度(ng/g)

代替あり代替なし

最大値

97.5%ile

2.5%ile

最小値

平均値

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

decaBDE BDP TPP decaBDE

北海道

東北

北陸

関東

中部

東海

近畿

中国

四国

九州

沖縄

①代替ありdecaBDE

1.0E-07

1.0E-06

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

北海道

東北

北陸

関東

中部

東海

近畿

中国

四国

九州

沖縄

②代替ありBDP

北海道

東北

北陸

関東

中部

東海

近畿

中国

四国

九州

沖縄

最小

最大

平均

③代替なしdecaBDE

大気中濃度推定値

[ng

/m3]

Page 7: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

7

着の decaBDEと BDPは、当該メッシュの河川水へ直接入力し、河川水中濃度を推定した。

表4 decaBDEおよび BDP の物性パラメータ

decaBDE BDP

蒸気圧(Pa) 4.63×10-6 2.75×10-6

分子量 (g/mol) 959.2 693

水溶解度(mg/L) 1.00×10-4 7.3×10--11

Koc (L/kg) 5.16×109 2.3×108

河川水半減期 (day) 693 693

河川底泥固相半減期 (day) 693 693

土壌固相半減期 (day) 693 693

各シナリオにおける本川の月平均濃度について、推定結果の最小値、最大値、中央値を図

6に示す。①代替ありシナリオ decaBDEにおける実測値との比較では良好な結果となった。

図6 各シナリオにおける関東一級水系本川濃度の推定結果

5.3 海水中濃度推定

排出量推定結果と、河川から海域に流入する decaBDEおよび BDP負荷量をもとに、東京湾

における海水中濃度と堆積物中濃度を AIST-RAMTBを用いて推定した。表5に AIST-RAMTBで

使用したパラメータ設定値を示す。

1E-10

1E-08

1E-06

0.0001

0.01

1

①代替あり

decaBDE

②代替あり

BDP

③代替なし

decaBDE

久慈川 那珂川 利根川

1E-10

1E-08

1E-06

0.0001

0.01

1

①代替あり

decaBDE

②代替あり

BDP

③代替なし

decaBDE

荒川 鶴見川多摩川

1E-10

1E-08

1E-06

0.0001

0.01

1

①代替あり

decaBDE

②代替あり

BDP

③代替なし

decaBDE

相模川

ー 最大値■ 中央値ー 最小値

[μg/L

][μ

g/L

][μ

g/L

]

decaBDE実測値(複数地点,場所不明,2004年報告)の幅

Page 8: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

8

表5 AIST-RAMTBの設定諸元

項 目 設 定 値

対象範囲 東京湾全域

水平分解能 1km メッシュ

初期条件 溶存態および堆積物中濃度を 0 とした.

湾口境界条件 溶存態および懸濁物質吸着態を 0 とした.

懸濁物質の沈降速度(cm/sec) 植物プランクトン;2.0×10-4

デトリタス;5.8×10-4

無機態懸濁物質;5.8×10-4

分解速度定数(1/sec),温度係

数(1/℃)

水中 1.16×10-8

堆積物中 4.11×10-9,温度係数 0.0693

吸着速度定数(1/sec) 植物プランクトン;2.0×10-5

デトリタス;2.0×10-5

無機態懸濁物質;0.0

Koc(L/kg) 植物プランクトン;5.16×109 (DBDE),

1.15×106 (BDP)

デトリタス;5.16×109 (DBDE),

1.15×106 (BDP)

各シナリオについて、溶存態濃度(表層、水深 0~2m)の推定結果を図7に示す。シナリ

オ 1とシナリオ 3の比較をすると、溶存態濃度、堆積物中濃度ともにシナリオ 3の方が若干

高くなる傾向を示した。これは、大気および河川からの流入負荷量が多くなるためである。

一方、シナリオ 2では河川付近の溶存態濃度が高く、分配係数が decaBDEに比べ小さいため、

懸濁物質吸着態より溶存態として存在しやすく堆積量も少なくなると考えられる。

東京湾における decaBDE の堆積物中濃度実測値(PBDE 濃度、9 割以上は decaBDE 製

品の主要構成成分である BDE209)と計算結果(シナリオ 1)と比較すると,計算値は観測

データより高い値を示したものの同様のオーダーであった.

図7 東京湾における溶存態濃度の年間計算結果

(左:シナリオ①、中央:シナリオ②、右:シナリオ③)

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

富津

0.010

0.008

0.006

0.004

0.002

0.000

[ng/L]

0.010

0.004

0.002

0.006

0.008

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

富津

0.010

0.008

0.006

0.004

0.002

0.000

[ng/L]

0.004

0.002

0.006

0.008

0.010

0.010

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

富津

0.010

0.008

0.006

0.004

0.002

0.000

[ng/L]

0.008

0.010

0.006

0.004

0.002

Page 9: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

9

6.ヒト摂取量推定

AIST-ADMER により推計された decaBDE と BDP の大気中濃度分布と AIST-RAMTB により推定

された東京湾海水中の decaBDE と BDP 濃度分布をもとに、decaBDE から BDP への物質代替に

伴う食物(農・畜・水産物)経由の摂取量を3つのシナリオで推定した。また、室内ダスト

中濃度も考慮して、食物および室内ダスト経由の総摂取量もシナリオごとに推定した。

農・畜産物経由の摂取量推定には、消費地への流通経路を考慮する環境媒体間移行モデル

を用いた。また、有害化学物質生物蓄積モデルで魚類体内中濃度を推定し、東京湾で漁獲さ

れる魚介類経由の摂取量を推定した。

6.1 農・畜産物経由の経口摂取量推定

農・畜産物経由の摂取量推定に際しては、以下の仮定のもとに推定した。

・植物性食品中の濃度の分布は、推定した 12種の農作物の平均濃度分布と等しい

・国内産の豚肉および鶏肉中の濃度の分布は、牛肉中の濃度分布と等しい

・輸入農・畜産物中濃度の分布は、推定した国内産の平均濃度分布と等しい

2次元モンテカルロ・シミュレーションは、Crystal Ball 2000(構造計画研究所)を用い

て、ラテンハイパーキューブ・サンプリングで、外部シミュレーション(不確実性)50 回、

内部シミュレーション(変動性)1,000回とした。実測/推定濃度比の分布で補正後の京浜地

区での国内産の農・畜産物経由の平均一日摂取量を表6に示す。

表6 各シナリオにおける国内産農・畜産物経由の decaBDE 摂取量分布(単位:μg/kg/日)

シナリオ ① 代替あり

decaBDE

②代替あり BDP ③ 代 替 な し

decaBDE

ヒト摂取量(平均,男性) 3.76×10-5 2.77×10

-6 1.47×10-4

ヒト摂取量(95%ile,男性) 1.22×10-4 8.99×10

-6 4.76×10-4

ヒト摂取量(平均,女性) 4.19×10-5 3.08×10

-6 1.64×10-4

ヒト摂取量(95%ile,女性) 1.27×10-4 9.36×10

-6 4.96×10-4

6.2 東京湾の魚介類経由の経口摂取量推定

推定された decaBDEおよび BDPの海水中と懸濁物質吸着濃度をもとに、有害化学物質生物

蓄積モデルのプロトタイプを用いて、東京湾に生息するマアナゴ中の濃度を推定した(図9)。

そして、推定された東京湾のマアナゴ中の decaBDE と BDP 濃度の確率密度関数を基に、東

京湾で漁獲される水産物経由の摂取量を推定した。

6.3 食物と室内ダスト経由の総摂取量推定

推定された食物(農・畜・水産物)経由の摂取量と室内ダスト中濃度から推定される室内

ダスト経由の摂取量から総摂取量を以下のように算出した。また、経路別の摂取割合を図9に示

す。

①代替ありシナリオ decaBDE(現状の代替状況を示す)

decaBDE の総摂取量の平均は、男性で 2.04×10-4μg/kg/日、女性で 2.07×10

-4μg/kg/日と推定

された。また,95 パーセンタイルは、男性で 7.27×10-4μg/kg/日、女性で 6.91×10

-4μg/kg/日と

推定された。

Page 10: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

10

図8 東京湾のマアナゴ中濃度の推定結果(水深 8~10 m)

(左:シナリオ①、中央:シナリオ②、右:シナリオ③)

②代替ありシナリオ BDP(現状の代替状況を示す)

BDP の総摂取量の平均は、男性で 7.17×10-4μg/kg/日、女性で 7.19×10

-4μg/kg/日と推定され

た。また,95 パーセンタイルは、男性で 2.59×10-3μg/kg/日、女性は 2.46×10

-3μg/kg/日と推

定された。

TPP の総摂取量の平均は、男性で 2.17×10-7μg/kg/日、女性で 2.45×10

-7μg/kg/日と推定され

た。また,95 パーセンタイルは、男性で 2.34×10-7μg/kg/日、女性は 2.61×10

-7μg/kg/日と推

定された。

④代替なしシナリオ decaBDE(decaBDE のまま物質代替が起こらない架空の状況)

decaBDE の総摂取量の平均は、男性で 3.19×10-4μg/kg/日、女性で 3.31×10

-4μg/kg/日と推定

された。また、95 パーセンタイルは男女とも 1.07×10-3μg/kg/日と推定された。

図9 京浜地区住民の食物及び室内ダストからの経路別摂取割合

(左:シナリオ①、中央:シナリオ②、右:シナリオ③

上:男性平均,下:女性平均)

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

1095[日目]

5.00

4. 00

3. 00

2. 00

1. 00

0. 00

[ng/g]

0. 5

1

2

2. 5

2. 5

3

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

1095[日目]

20

16

12

8

4

0

[ng/g]

2

46

8

10

12

14

東京

川崎

横浜

横須賀

市川船橋

市原

木更津

1095[日目]

5.00

4. 00

3. 00

2. 00

1. 00

0. 00

[ng/g]

0. 5

1

2

2. 5

2. 5

3

3

Page 11: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

11

7.ヒト健康影響とリスクトレードオフ評価

推計された decaBDEと BDPの摂取量をもとに、物質代替シナリオにおけるこれらの物質の

リスクを質調整生存年数(QALY)の尺度で推定した。

7.1 影響臓器ごとの毒性等価係数の推定

ヒト疫学情報がある塩ビモノマーとカドミウムを肝臓と腎臓への影響の参照物質とし、開

発中の推論アルゴリズムを用いて、参照物質に対する decaBDE、BDPと TPPの毒性等価係数を

算出した。その際、毒性等価係数の算出には、経口投与試験結果を用いた。まずラットとマ

ウスについて、各臓器への影響の NOEL(無影響量)の文献値がある場合にはそれを真値とし、

ない場合には推論アルゴリズムの推定値を用いて毒性等価係数を算出し、肝臓及び腎臓の参

照物質での用量反応関係とから、図10に示すような用量反応関係(経口暴露)を得た.

図10 肝臓影響(左)と腎臓影響(右)の用量反応関係:

暴露量(μg/kg/day)と損失 QALY(day:一人当たり生涯での値)の関係

(図中の物質名の後ろの括弧書きの数字は、各参照物質に対する毒性等価係数)

7.2 物質代替によるリスクの変化

推計された各シナリオでの decaBDE、BDPと TPPのヒト摂取量(男女の平均値)を、上記の

毒性等価係数で重み付けして比較した。図 11に、毒性等価係数で重み付けした摂取量(μg

decaBDE当量/kg/日)のシナリオ間比較を示す。

0.0.E+00 5.0.E-04 1.0.E-03

代替あり①+②+③

95% worst case

代替あり①+②+③

average case

代替あり①+②+③

重量単純加算

代替なし④

重み付け摂取量(μg decaBDE当量/kg/日)

decaBDE BDP TPP

0.0.E+00 5.0.E-04 1.0.E-03

代替あり①+②+③

95% worst case

代替あり①+②+③

average case

代替あり①+②+③

重量単純加算

代替なし④

重み付け摂取量(μg decaBDE当量/kg/日)

decaBDE BDP TPP

Page 12: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

12

図 11 物質代替による重み付け摂取量の増減(左:肝臓影響、右:腎臓影響)

相対毒性値を考慮しない重量単純加算では、物質の代替によって、難燃剤の摂取量は増加

するが、相対毒性値の考慮によって、肝臓影響、腎臓影響ともに、decaBDE 当量としての摂

取量(及びリスク)が低減されると考えられた。しかしながら、95% worst case で示される

ように、物質代替による摂取量(及びリスク)の増加の可能性も否定はされていない。

さらに、摂取量との用量反応関係から QALY の減少量を推定した(表7).その結果、物質

の代替の有無によらず、QALY 損失で表されるリスクの絶対値はきわめて小さい(一人当た

り生涯での値として 0.01 日未満)ことが示された。リスクの増減自体では、物質代替を根拠

づけることは出来ないと考えられる。この結論は、相対毒性値の 95%推定下限値を用いたと

しても(表7の 95% worst case)同様である。

表7 代替シナリオによる物質ごとのリスク=QALY 損失量(日:一人当たり生涯での値)

代替あり

(現状の代替状況)

代替なし

(架空の状況)

①decaBDE,②BDP,TPP ③decaBDE

average case 95% worst case

肝臓影響 << 0.001

(2.8×10-57)

<< 0.001

(2.0×10-53)

<< 0.001

(9.5×10-57)

腎臓影響 << 0.001

(1.4×10-140)

<< 0.001

(1.0×10-122)

<< 0.001

(8.8×10-137)

合計 << 0.001

(2.8×10-57)

<< 0.001

(2.0×10-53)

<< 0.001

(9.5×10-57)

average case:相対毒性値として,推定の幾何平均値を用いた場合.

95% worst case:相対毒性値として,95%推定信頼下限値を用いた場合.

8.生態影響とリスクトレードオフ評価

decaBDE、BDPは生態毒性情報がほとんどなく、既存の毒性値から種の感受性分布を推定す

ることは困難である。そのため、種の感受性分布が推定できるほどの毒性情報がない化学物

質の種の感受性分布を推定する手法を開発し、推定された種の感受性分布を用いて、リスク

の変化を推定した。

8.1 種の感受性分布の推定

データが豊富な化学物質を用いて多くの種の感受性分布を作成し、それらの化学物質の情

報から、decaBDEと BDPの種の感受性分布の平均と分散を推定した。

既存の毒性値は、製品評価技術基盤機構の「初期リスク評価書」から収集した。説明変数

として、分子量、沸点、融点、log Kow、ヘンリー係数を用いた。91 物質について、対数正

規分布を仮定して、平均と分散を求めた。

線形重回帰モデルを用い、意味のある説明変数を選択するため、赤池の情報量基準(AIC)

を用いてモデル選択を行った結果、意味のある説明変数として、沸点、融点、log Kow が選

ばれた。回帰係数とそれらの統計量を表8に示す。また、モデルの推定値と、実測値を図 12

Page 13: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

13

に示す。沸点や融点の回帰係数は有意であるものの絶対値としては小さく、オクタノール水

分配係数が平均値の推定に大きく寄与している。このモデルを用いて、decaBDE、BDPの平均

値を予測したところ、それぞれ 0.018、0.12 (mg/L)となった。

表8 統計量(自由度調整済み R2=0.24)

説明変数 回帰係数 p-値

沸点 0.0029 0.011

融点 -0.0080 0.015

log Kow -0.59 <0.001

切片 3.17 <0.001

図 12 種の感受性分布平均の実測値と予測値の比較

破線は、観測地の 2倍を表す.91物質中、39物質が 2倍以内に含まれている

分散の推定が比較的困難なため、既存の感受性分布の中央値(2.58)を用いた。感受性分

布は、

decaBDE:

fdecaBDE(ln[x]) 1

2.58 2exp

(y ln[0.018])2

2 2.58

ln[x]

dy

BDP:

fBDP(ln[x]) 1

2.58 2exp

(y ln[0.12])2

2 2.58

ln[x ]

dy

と、表される。これらの感受性分布と、暴露評価の結果を合わせ、リスク評価を行った。

8.2 難燃剤の生態リスクの変化量

推定された河川水中濃度と種の感受性分布を用いて、上式からリスクを求めた(表9)。

Page 14: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

14

表9 生態リスクの推定結果

河川名*

代替あり 代替なし

decaBDE BDP decaBDE

久慈川水系 4.04×10-17

0 1.65×10-15

那珂川水系 3.12×10-13

0 1.59×10-12

利根川水系 1.34×10-10

0 2.85×10-10

荒川水系 1.27×10-9

0 5.67×10-9

多摩川水系 1.97×10-9

0 8.35×10-9

鶴見川水系 1.26×10-7

1.56×10-18

5.11×10-7

相模川水系 8.13×10-9

0 1.73×10-8

*対象はいずれも本川

代替ありシナリオにおいては、BDP のリスクは decaBDE よりもはるかに小さく、リスクの

大部分は decaBDEによる。代替がないと仮定した場合では、decaBDEのリスクは上昇する(約

2 倍~40 倍)と予測されるが、いずれも総量としては非常に小さいと推定された。

9.難燃剤リスクトレードオフ経済分析

decaBDE から BDP への代替費用を推定し、代替の単位効果削減費用を算出し、既報の他の

化学物質に関するリスク削減対策の単位リスク削減費用と比較し、難燃剤代替のリスク削減

対策の費用対効果を評価した。decaBDE から BDP への代替に伴う費用の変化と代替に伴うヒ

ト健康リスク増分を表 10に整理する。

表 10 decaBDEから BDPへの代替における費用と効果の増分

費用(億円/年) 効果(損失 QALY の低減)

代替なしシナリオ①+② CY3 = 72.5 R3=1.1×10-51(年/人/生涯)

代替ありシナリオ③ CY1+2 = 138.3 R1+2 = 5.0×10-53(年/人/生涯)

差 ΔC = 65.7 ΔR = 5.8×10-48(年/人口/年)

ΔC とΔR から、QALY1 年獲得費用(全人口の生涯での1QALY 獲得のために、対策として 1

年当たり費用がどれだけかかるかを示す)は、以下のように算出された。

ΔC/ΔR=65.7[億円/年]/5.8×10-48[年/人口/年]=1.1×1049[億円・人口/年]

他の化学物質の対策による QALY1年獲得費用は、自主管理経過における 1,3-ブタジエン削

減 で QALY1年獲得費用が 2.2億円/年、ごみ処理施設でのダイオキシン類恒久対策で 1.5億

円/年、シロアリ駆除剤クロルデンの禁止で 0.4 億円/年、ガソリン中ベンゼン含有率の規制

で 2.2億円/年等である。これらのデータと比較しても、decaBDEから BDPへの代替の QALY1

年獲得費用は非常に大きく、費用対効果としては極めて悪いと判断する。

10.結論

本評価書では、臭素系難燃剤decaBDEからリン系難燃剤BDPへの物質代替シナリオとして、

①decaBDE代替あり(ベースライン)シナリオ、②BDP代替あり(ベースライン)シナリオ、

③decaBDE 代替なしシナリオの 3 種類のシナリオを選択し、代替前後のヒト健康リスクと生

Page 15: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

15

態リスクのトレードオフを解析し、社会経済分析を実施した。

ヒト健康リスクトレードオフ評価では、摂取量の多い京浜地区の住民を対象に評価を実施

した結果、相対毒性値の考慮によって、肝臓影響、腎臓影響ともに、decaBDE 当量としての

摂取量(及びリスク)が低減されると考えられが、毒性等価係数の不確実性が大きく、物質

代替によるリスク増加の可能性も否定はできない。また、物質の代替の有無によらず、QALY

損失で表されるリスクの絶対値はきわめて小さいことが示された。

生態リスクトレードオフ評価では、国内でも排出量の多い関東地域を対象に評価を実施し

た結果、物質代替によるリスク低減が示されたが、各シナリオにおけるリスク(影響を受け

る種の割合)は極めて小さいことが示された。

社会経済分析の結果、decaBDE から BDP への代替による費用対効果は極めて悪いことが示

された。

以上のように、decaBDE から BDP への物質代替を例としたリスクトレードオフ評価を行っ

た。事業者や事業者団体の自主的取り組みとしての物質代替、あるいは法規制としての物質

代替の際には、詳細さはケースバイケースであるとしてもリスクトレードオフ評価が必要と

考える。事業者や事業者団体は周辺住民、従業員や顧客などに対して、行政は規制影響分析

を通して国民に対して、リスク削減の実行可能性と費用対効果の観点から、その物質代替が

妥当であることを事前に示すことが望まれる。

参考文献

ECB(2004)Update of Bis(pentabromophenyl) ether Final Environmental Draft of May 2004.

ENVIRON(1988)Indoor DEHP air concentrations predicted after DEHP volatilizes from

vinyl products、 Chemical Manufacturers Association、 ENVIRON Corporation.

江里口知己,市川哲也,中田喜三郎,堀口文男 (2009). 海洋における有害化学物質生物蓄積

モデルの研究―プロトタイプモデルの開発―,海洋理工学会誌 Vol. 15, No.1:15-21.

東野晴行,北林興二,井上和也,三田和哲,米沢義堯(2003)曝露・リスク評価大気拡散モ

デル(ADMER)の開発,大気環境学会誌 38(2):100-115.

IARC (1999). IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume

71 Decabromodiphenyl oxide 1365-1368.

石川百合子,東海明宏(2006).河川流域における化学物質リスク評価のための産総研-水系

暴露解析モデルの開発,水環境学会誌,29:797-807.

NICNAS (The National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme,

Australia) (2000). Phosphoric acid, (1-methylethylidene) di-4,1-phenylene

tetraphenyl ester (Fyrolflex BDP), File No: NA/773, 1 November 2000.

NTP (1986). Toxicology and Carcinogenesis Studies of Decabromodiphenyl Oxide (CAS No.

1163-19-5) in F344/N Rats and B6C3F1 Mice (Feed Studies). National Toxicology

Program Technical Report Series No. 309.

OECD(2008)Emission scenario document on plastic additives, Series on Emission Scenario

Documents No.3, revised December 2008.

OECD/UNEP (2002). Triphenyl Phosphate: SIDS Initial Assessment Report for SIAM 15.

東海明宏・岩田光夫・中西準子(2008)デカブロモジフェニルエーテル 詳細リスク評価書

シリーズ 23、丸善株式会社.

USEPA (1995). IRIS Database. Decabromodiphenyl ether.

Page 16: プラスチック添加剤 -難燃剤- - AIST RISS...1 経済産業省受託プロジェクト 「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」

16

WHO (1994) Environmental Health Criteria 162, Brominated Diphenyl Ethers International

Programme on Chemical Safety.