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伝票の処理に追われる経理から、 経営判断のカギを握る経理へ―― そう願う経理担当者は多いだろう。 ところが経理という部門は「入出金」を担う会社の 根幹部門にも関わらず、毎日膨大な伝票が降ってくるために、 作業は受け取った伝票を会計システムに 入力するだけのルーチンワークに陥りがちだ。 では「経営判断のカギを握る」経理担当者の業務は 具体的にどのようなものなのか。 財務と経営システムに定評があり、 企業会計について詳しいミロク情報サービスの 営業推進部企業システム企画グループ 部長・志牟田浩司氏と同主任・瀬戸谷武志氏に聞いた。 ミロク情報サービス ミロク情報サービス 営業推進部 企業システム企画グループ長 志牟田浩司部長 ミロク情報サービス 営業推進部 企業システム企画グループ 瀬戸谷武志主任 会計 プロ 事例で 解説 単なる"事務方"から脱却し、 経営管理の主役になるには? 提案型・経理部門 成長する方法

ミロク情報サービス 事例で 単なる"事務方"から脱却し、解説 経営管理の主役になるには? 提案 … · 経営管理の主役になるには?

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伝票の処理に追われる経理から、経営判断のカギを握る経理へ――そう願う経理担当者は多いだろう。ところが経理という部門は「入出金」を担う会社の根幹部門にも関わらず、毎日膨大な伝票が降ってくるために、作業は受け取った伝票を会計システムに入力するだけのルーチンワークに陥りがちだ。では「経営判断のカギを握る」経理担当者の業務は具体的にどのようなものなのか。財務と経営システムに定評があり、企業会計について詳しいミロク情報サービスの

営業推進部企業システム企画グループ 部長・志牟田浩司氏と同主任・瀬戸谷武志氏に聞いた。

ミロク情報サービス

ミロク情報サービス営業推進部企業システム企画グループ長

志牟田浩司部長

ミロク情報サービス営業推進部企業システム企画グループ

瀬戸谷武志主任

会計のプロが事例で解説単なる"事務方"から脱却し、

経営管理の主役になるには?「提案型・経理部門」に

  成長する方法

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―― 日本企業では今でも、経理部門に対して社

内の数字を集計している「経理屋」と見る風潮が

あるようです。日々、経理部の方々と接していて、

そうした扱いを受けることへの不満などは聞かれ

ますか。

瀬戸谷◦経理部というのは決まった業務をきっち

りやることが求められる部署です。その反面「5

年後、10年後もこのままなのか?」と感じている

人が多い印象を受けます。ですから経理担当の

方々も「何か変わらなければ」という思いを強く

抱いているように感じます。実際に「提案型業務

へシフトしたい」という相談も多くなっています。

 特に、企業経営者の経営判断に役立てることを

目的とした管理会計は、中小企業でも重要視され

るようになってきました。経営の意思決定や業績

向上に役立つ経理実務を行える人が「提案型の経

理担当者」とも言えるでしょう。

―― 「提案型の経理担当者」とは、具体的にどの

ようなことをしているのでしょうか。

志牟田◦経理処理のスピードを上げ、スピードア

ップによって生まれた時間を使って社内の数字を

分析・予測し、その結果を経営者にわかりやすく

伝えるために見やすく、役に立つ報告書をつくる

こと。これらを実践している人はかなり提案力が

ある経理担当者だと言えるでしょう。

 まず、スピードですが、経理部というのは業務

時間の大半が伝票の入力やチェックといった作業

に費やされがちです。月末などの締め日ともなれ

ばさらに業務が集中し経理部総出で残業、という

のがルーチンワークになります。経理部が抱える

最大の問題点といえるかもしれませんが、部内が

疲弊する仕組みでいつまでも運用していると、な

かなか事務作業的な仕事から解放されません。

 これは省力化できる仕組みに移行するべきでし

ょう。一案としては、伝票を経理部で集中処理す

るというのが根本的な問題でもあるので、全社で

部門ごとに現場で伝票入力する仕組みを新たに構

築します。現場が入力し、仕訳データの生成が同

時に行われるようなシステムを導入することで、

経理の業務負担は激減します。

 こうしたルーチンワークの軽減を求める声は多

いものの、中小・零細企業では実際にはなかなか

手を付けられないようです。ですが、提案型とな

るためには、「分析・予測に割く時間」が必要にな

りますから、ここはまず手を付けるべきところで

もあります。

―― 経理担当者がするべき数字の分析・予測と

は具体的にどういったことでしょうか。

志牟田◦日頃、入力している会計システムからは、

経営判断に役立つような情報はそう簡単には引き

出せません。会計システムの1行の仕訳に入力さ

れた数字の裏側にある情報がどこにも記入されて

いないため、せいぜい科目と金額と摘要欄から類

「このままでいいのか?」と思っている経理担当者は多い

単なる"事務方"から脱却し、経営管理の主役になるには?「提案型・経理部門」に成長する方法

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推するしかないのです。

 これを、プロジェクトごと、セグメントごとの

数値を細かく分析していくことで、今、自社のビ

ジネスで起こっていることを常に把握し、目の前

の数字の判断材料を多く持つことができるように

なります。

 この積み重ねから、過去のトレンドをもとに今

後の経営にどういかしていくか? また、次はど

ういうアクションをとるか? を考えることが

できます。

 例えば、過去の数字を見て、財務的にあまりに

もリスクがあると思うプロジェクトがあるとしま

す。それを数字を根拠に事業部に対して止めるこ

とを提案したり、あるいは反対に、事業部が生み

出す価値を計算して成功する方策を助言してサポ

ートする、といったことが考えられるでしょう。

 こういったことを実現するためには、相応の情

報量を1行の仕訳データの中に盛り込んでいく必

要があります。そのための仕組みづくりが、「提案

型経理」を実現するための勘所になるでしょう。

―― 「伝わりやすい報告書作成」については?

瀬戸谷◦「わかりやすく伝える」というのは最近

の経理業務における大きなトレンドです。忙しい

経営者に「あのデータをすぐに見せてくれ」と言

われたときに、要求に応えるデータを出すことが

できても、ぱっと見てわからないようでは、読み

解くのに時間がかかってしまいます。

 当社のお客様の中でも、先進的な企業の経理部

門の方は、損益計算書や貸借対照表をそのまま報

告資料として提出するようなことはせず、「この

科目は先月に比べて1. 2倍になった」というデ

ータがあった場合、その裏側にはこういう要素が

あったから、と分析コメントを付けたり、その要

因となった特定の取引だけピックアップしてレポ

ートするなど、報告書は「経営者の素早い判断を

助けるツール」となることを心がけておられるよ

うです。

 実際、経理部ではいろいろな文書が作成されて

いますが、活用されていないものも多いのが実情

です。それをわかっていて続けているケースもよ

く見られます。それは「何を伝えるか」を考えずに

ルーチンワーク化しているから起こっているので

しょう。

「伝わりやすい報告書」を作るという意識を高め

ることで、「この文書は何のために作るのか」が明

確になり、慣習として作成しているだけの経理資

料は減っていきます。そこで作業が圧縮された分、

「分析・予測」などに時間を割くことも可能になり

ます。

 そのためにも「データをわかりやすいレポート

にする」といった機能があるシステムを導入して

おくことも大切です。

―― このようなことは、企業であまり実践され

てないのでしょうか。

瀬戸谷◦大企業であれば、担当者の人数も多く、

経理部門と経営企画部門の役割が明確化されてい

るため、このような問題は起こりにくいのかもし

れません。ですが、中小・零細企業や中堅企業で

はそうはいきません。経営企画もなく、経理担当

者は総務も人事も担当するなど、事務方のことを

全部やっていることが多いのです。そうなると、

単に数字を処理するだけでいっぱいになってしま

います。

志牟田◦そうした企業に向けて、私たちも「経理

担当者が変わっていく」ためのセミナーを行って

います。

 経理作業の軽減という目先の大問題をシステ

ム化によって解決することで、単に日々の伝票を

処理する受け身の経理担当者ではなく、「経営判

断のカギを握る経理担当者」という目標へ向かう

道が開けるといっても言い過ぎではないと思いま

す。

単なる"事務方"から脱却し、経営管理の主役になるには?「提案型・経理部門」に成長する方法

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 管理会計を行う大きな目的の一つとして業績の

評価がある。業種によって視点はさまざまで製造

業であれば経営者は原価や利益率に注目するし、

卸売業や商社であれば支社別の経営状況が見たい

だろう。

 各地に70店舗を出店するこの飲食チェーンで

は、店がどれくらい儲かっているのかという「利

益」に着目していた。ところが利益は、役職や立場

によってとらえ方が異なるため、店舗別の業績評

価資料の作成に頭を悩ませていた。しかも新店/

既存店、路面店/テナント別、業態別といった複

数の視点から損益を管理する仕組みもなかった。

 店の利益は、どれだけ儲かっているのかいない

のかさえ見ればいいと単純にとらえてはいけない。

店を1店舗任されている店長、複数店を見ている

スーパーバイザー、あるエリア内の全店舗の責任

管理会計用資料作成の効率化を実践、

「情報発信型経理部門」へ転換

事 例 研 究

●業績評価制度〔店舗別損益計算書〕

◦店長の業績評価には店舗損益①、エリアマネージャ等は店舗損益②を評価の指標として採用。◦毎月、損益計算書の科目を手作業で組み替えて、業績評価資料を作成する必要があった。

〔店舗業績評価資料〕

売上高 ×××× 飲料売上 ××× 洋食売上 ××× 商品売上 ×××仕入高 ×××× 飲料仕入 ××× 食材仕入 ××× 商品仕入 ×××  売上粗利益 ××××販売費 ××× 消耗品 ××× 修繕費 ××× 調査費 ××× 償却費 ×××一般管理費 ××× 人件費 ××× 光熱費 ××× 家賃 ×××営業利益 ×××

売上高 ××××仕入高 ××××

販管費 ×××× 消耗品 ××× 調査費 ××× 人件費(パート) ××× 宣伝費(共通配賦) ×××   …

店舗損益① ××××

販管費 ×××× 人件費(社員・通常) ××× 修繕費 ××× 光熱費 ××× 家賃 ××× 本社経費(配賦) ×××   …

店舗損益② ××××

エリアマネージャの責任範囲

店長の責任範囲

変動費(管理可能費)

固定費(管理不可能費)

【事例企業プロフィール】

業種:飲食業/年商:約80億円/店舗数:70店舗

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者であるエリアマネージャーという役職によって、

評価対象となる数字の集計の仕方が異なるのであ

る。

 店長の業績評価は店の貢献利益が中心となるべ

きで、設備投資(減価償却費)やテナント料を含め

た利益(営業利益)では正しい評価ができない。逆

にエリアマネージャーは地域全体の業績に対する

責任を負っているので、設備投資等を含めた集計

が不可欠となる。

 これまでは店舗別損益計算書の内容を、店長の

責任範囲、エリアマネージャーの責任範囲別に手

作業で組み替えていた。そのため店舗業績の評価

資料の集計に手間がかかり、経営層の報告資料の

作成も遅れがちだった。

 ではどうすれば解決できるのか。

 まずは、専用の集計システムを導入する案が出

た。だが検討を進めていくうちにメンテナンスの

手間という障害が明らかになった。科目が一つ増

えるだけでもシステムへの影響範囲が大きくなる

し、機敏な経営判断により出店・退店を行うたび

に、複数のシステム設定を変更するのが面倒。そ

こで会計システム上で実現する可能性を探ること

になったのである。

 システム検討のポイントは3点。

(1) 勘定科目の体系を柔軟に設定でき、集計の範

囲を選択できること。

(2) 部門(店舗)マスタの体系を複数種類設定で

きること。

(3) 定型の帳票だけでなく、経営層の要望に柔軟

に対応できるレポーティングの仕組みを備えてい

ること。

 そこでミロク情報サービスが「勘定科目」と「部

門」の活用にポイントを置き、科目体系設計の活

用に加え、通常のエリア別の集計とは別に、業態

別、出店時期別、立地別など、仮想的な集計部門を

自由に設定できる仕組みを提案。

 同社の会計システムは柔軟な設計が行えるとこ

ろに特徴があり、科目や部門の階層は無制限に取

ることができる。その組み方を問題解決につなが

る設計にしたことで、飲食業が求める数字の集計

●当初の構想 【新たに業績評価資料作成システムを構築】

◦新たにシステムを追加する場合、集計方法の変更や店舗の出退転に伴うシステムメンテナンス作業に負荷がかかることが想定された。◦このため、根本的な解決にはならないと判断。

●実際に採用した方法 【会計システム上で管理会計と制度会計を両立】

◦会計システムに制度会計と管理会計の両方の機能を持たせることにより、業務負担を増大させることなく運用できることがわかった。◦そのために、「科目体系」と「部門体系」の見直しを行い、柔軟な設定が可能な会計システムを新たに選定。店舗別

損益計算書

業績評価資料

業績評価資料

会計システム(制度会計)

販売管理システム

(POS集計)

管理会計システム

店舗別損益計算書

会計システム(制度・管理)

販売管理システム

(POS集計)

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が自動で行えるようになった。それまでエクセル

で作成して経営会議に出していた情報も、会計シ

ステムで出せるようになった。

 ここで、「月1回の経営会議であればエクセル

でもやれる」と捉えるべきではない。システムか

ら出せるというスピード感が重要なのである。

 そういう資料の作成が一つや二つなら手間では

ないが、70店舗も抱えていると、1つの変更でも

70回行うことになる。そういう手間が経理に負

担をかけるのでシステム化が重要なのだ。

 また経営者からの要望が毎月同じではなく、「今

月はこの情報が欲しい」「来月はあれを集計して欲

しい」と変わるのは当然であり、システム化すれ

ば作業量が軽減され迅速に対応することができる。

 さらに、報告用資料は「仮締め=速報版」と「本

締め=確定版」の2種類を作成することも多い。

仮締めして帳票を出し、その後入力漏れなどをチ

ェックして本締めして正しい帳票、月次決算書を

出す。その後1枚の伝票の入力忘れが発覚すると

エクセルを使って組み替え作業を行って訂正版を

出し、またミスが見つかると……と同じことを何

度も繰り返すことになる。

 これではレポートを出すタイミングも遅れてし

まい、正しい情報を早いタイミングで経営者に伝

えることができない。

 システムを導入することで、単純に“それまで

手作業でやっていたことをシステム化した”とい

うだけではなく、「経営者が求める情報を早く的

確に上げて経営に役立てる」という本質的な目的

を実現できる体制に生まれ変わったのだ。

新宿店 横浜店 千葉店 大阪店 京都店 神戸店

●部門体系の活用『科目体系設計の活用』に加え、通常の組織体系(エリア別)とは別に『業態別』や『出店時期別』『立地別』など、「仮想的な集計部門」を自由に設定できる仕組みを活用。

エリア別

出店時期別

立地別

関東エリア 関西エリア

合計部門

部門

仮想部門(管理用)

全社

テナント路面店

百貨店

株式会社ミロク情報サービス 営業推進部 企業システム企画グループ東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル48階TEL:03-5326-0381 URL:http://www.mjs.co.jp/

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