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www.pwc.com/jp/tax タックスヘイブン対策税制 (外国子会社合算税制 ) の課題 -技術的な論点を中心に- 2015年11月20日(金) PwC税理士法人 パートナー 佐々木 浩

タックスヘイブン対策税制 (外国子会社合算税制 の課題PwC 2 ※ 以下については、対象に含めていない ・資産性所得の合算課税 ・二重課税調整

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タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制 )の課題 -技術的な論点を中心に-

2015年11月20日(金) PwC税理士法人 パートナー

佐々木 浩

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PwC 2

※ 以下については、対象に含めていない

・資産性所得の合算課税

・二重課税調整

・書類添付要件等

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PwC

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1 内国法人等が、税負担の著しく低い外国子会社を通じて国際取引を行うことによって、わが国での課税を免れる事態が生じ得る

→ このような租税回避行為に対処するため、租税負担割合20%未満の軽課税国に本店を有する外国子会社の所得相当額を、内国法人等の所得とみなして合算課税

2 外国子会社が独立企業としての実体を備え、本店所在地国において事業活動を行うことについて十分な経済合理性を有するなど、適用除外基準を満たす事業年度は、合算課税は行わない

3 税負担水準20%未満の外国子会社等が得る資産性所得については、2の適用除外基準を満たす場合でも、内国法人等の所得とみなして合算課税

1 タックス・ヘイブン対策税制の概要

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PwC 4

(現行) 特定外国子会社等の発行済株式の10%以上の株式を直接・間接に保有する内国法人

(論点) ・ 20%以上に引上げ(参考:持分法)

2 技術的な課題(論点) ① 適用対象者(法人の場合)

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(現行) 外国法人のうち、内国法人及び居住者(特殊関係非居住者を含む)がその発行済株式の50%超を直接・間接に有するもの

(論点) ・ 内国法人が外国法人と共同で株主となる場合に、その外国法人の株主に内国法人等が存するか否かの確認と存する場合の取扱い

(例)・ 日本法人と外国上場会社がそれぞれ出資比率50%で他の

外国法人の株式を保有するケース

・ 外国法人の法定の開示資料の確認

② 外国関係会社

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PwC 6

(参考)外国関係会社の判定の例

50%

50%

50% 10%

50%

内国法人1

外国法人A

外国法人B

内国法人2 内国法人1

外国法人C

外国法人D

Aの判定

10% <50% →非該当

Bの判定

(10%×50%)+50%=55%>50%

→該当

Dの判定

50%+O%=50% = 50% →非該当

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PwC 7

(現行) 法人税負担が著しく低い外国関係会社(次のいずれか) イ 法人税が存在しない国に本店を有する外国関係

会社

ロ 各事業年度の法人税額が所得金額の20%未満で

ある外国関係会社

(論点) ・ トリガー税率(20%未満)の引下げ

(例)英国は、今後19%、18%

・ 上記イの基準の廃止

(例)本店所在地国以外の法人税負担を含めると20%以上のケース

③ 特定外国子会社等

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(論点:続き)

・ 租税負担割合の計算の明確化

・ 非課税所得の範囲を法令で明確化

(参考)日本租税研究協会の報告書で一応の対応

・ 現物分配に係る譲渡益を非課税所得から除外(適用対象金額も同様)

・ ホワイトリスト(ブラックリスト)方式の導入

③ 特定外国子会社等

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(参考1)租税負担割合の計算

<20%

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(参考2)外国法人等の範囲

外国法人

外国関係会社

特定外国 子会社

内国法人以外の法人

本店所在地国におけるその所得に対して課される税負担が日本において課される税負担に比して著しく低いもの

外国法人のうち、発行済株式の総数の50%超を、内国法人等(内国法人、居住者及び特殊関係非居住者)が有するもの

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(現行) ①から④のすべての要件(適用除外基準)を満たす場合に、合算課税の対象外

① 事業基準(主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと。統括会社の特例あり)

② 実体基準 (本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)

③ 管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること)

④ 適用除外

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④ 次のいずれかの基準

イ 非関連者基準(非関連者との取引割合が50%超であること。統括会社の特例あり)

※ 主たる事業が、卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引

業、保険業、水運業、航空運送業の場合

ロ 所在地国基準(主として本店所在地国で主たる事業を行っていること)

※ 主たる事業が上記イ以外の業種の場合

④ 適用除外

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(参考1)詳細版

特定外国子会社等の営む事業が次のものでないこと ・ 株式(※1)もしくは債券の保有 (いわゆる持株会社) ・ 工業所有権、著作権等の提供 ・ 船舶、航空機の貸し付け

事業基準

実体基準

管理支配基準

非関連者基準

所在地国基準

特定外国子会社等が、主たる事業に必要な事務所、店舗、工場等の固定施設を本店所在地に有していること

特定外国子会社等が、その本店所在地国において、その事業の管理、支配を自ら行っていること 次の事項を総合的に勘案 ・ 株主総会、取締役会の場所 ・ 役員の職務執行状況 ・ 会計帳簿の作成・保管

(上記以外の事業) 事業をその本店所在地で行っていること

(卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運航空運送業) 取引の過半を関係者以外の者と行っていること(※2)

or

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PwC 14

(参考2)統括会社の特例(※1、2)

○統括会社

・ 1の内国法人に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている

・ 2以上の被統括会社を有し、被統括会社に対して統括業務を行っている

・ 本店所在地国において統括業務に係る固定施設等・統括業務に従事する者(役員等を除く)を有する

○被統括会社 統括会社に株式・議決権のいずれも25%以上を保

有され、かつ、本店所在地国に事業を行うに必要と認められる事業に従事する者を有するもの

○統括会社の特例 ・ 株式保有業(事業統括会社)

株式保有を主たる事業とする場合は、事業基準を充足するものとされる

・ 卸売業(物流統括会社)

卸売業を主たる事業とする場合は、非関連者基準における非関連者との取引金額が50%を超え

るかどうかの判定は、被統括会社のうち外国法人であるものを関連者に含めないで行う

日本親会社

被統括会社

統括会社

100%直接/間接保有

統括業務の例 被統括会社の事業方針の策定、指示、調整、地域戦略の立案

被統括会社

50%超グループ内25%以上直接保有

統括業務

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(論点) ・ 適用除外基準のあり方

イ 機能別に分社している場合

(例)1 ロイズのように規制により機能別に分社することが求め

られているケース

2 グループ経営の効率化の観点から分社しているケース

ロ 清算中の場合(事業廃止)

・ 事業基準

イ 株式保有業

(例)資産保有、子会社管理手段

ロ 航空機リース業

(参考) 1 所在地国で事業を行うことに経済合理性がある場合

2 主要国では、航空機リースであっても能動的事業活動があ

る場合には適用除外

④ 適用除外

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(論点:続き) ・ 管理支配基準

「事業の管理、支配及び運営」の明確化

(参考)株主総会及び取締役会の開催、役員としての職務執行

・ 非関連者基準

実体基準を満たす場合(本店所在地国で、経営の意思決定、従業員・事務所ありの場合)の必要性

・ 所在地国基準

サービス業など事業を行う場所の明確化(サービス業の場合、役務提供地、提供する者・される者の所在地)

(参考)来料加工

・ 買収後一定期間の適用除外措置

④ 適用除外

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(参考)適用除外が論点となっている事例(来料加工)

製造業を営んでいる。実際の製造は、人件費の安い中国の工場で行っている。香港に設立した子会社がこれを管理。香港子会社は、工場を所有せず、中国本土の企業(工場を所有)へ委託生産という形態を採っている。これは、中国では工場等の所有に制限があることから、やむを得ない形態と考えている。

香港では、原材料の調達上のメリットもあり、相当の利益。ただし、香港での課税は極めて低い

香港

本社

(子会社)

材料調達・手配

グループ内企業へ卸売

中国本土(深セン等)

製造工場

土地・建物の所有、従業員は

すべて当該法人に帰属

製造委託

中国法人

(第三者)

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⑤ 適用対象金額等

※1 特定外国子会社等が25%以上の株式等を6カ月以上保有している場合の配当等 ※2 他の特定外国子会社等からの配当等 ※3 外国子会社等の所得が欠損の場合は、7年間繰り越すことができる。繰越が認められるのは、特定外国子会社等に該当する事業年度に生じたものに限られる

適用対象金額

前7年内の繰越欠損金

納付法人税

×持株割合 課税対象金額

※3

子会社配当 ※1

※2

我が国の税法による所得の金額の計算に準ずる一定の基準により計

算した金額

(基準所得金額)

控除対象配当等

(現行)

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(論点) ・ 本邦法令基準を適用する場合における従前の外国子会社の帳簿価額等の明確化

・ 特定外国子会社等に該当しない事業年度において生じた欠損金についても控除対象に追加

(参考)特定外国子会社が累積欠損でも対象となる事業年度に課税対象金額がある場合には合算課税

・ 解散後の債務免除益相当の期限切れ欠損金の損金算入

・ 欠損金のある他の特定外国子会社等との所得通算

⑤ 適用対象金額等

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⑥ 特定外国子会社等の所得の取込み時期

(現行) 外国法人の事業年度終了の日の現況により特定外国子会社等に該当するか否かの判定をし、合算対象となる場合には、その事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む内国法人の事業年度において合算課税が行われる

(論点) ・ 買収により子会社化した場合には、合算対象となる事業年度を買収の翌事業年度とすること(期間按分)

親会社

海外子会社

X1.3 X1.

12 X0.3

X0.

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