Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
ビッグバンから始まる世界(II)〜宇宙物理学的トピックス〜
埼玉大学大学院理工学研究科
井上直也
HiSEP「入門セミナー」 2013年度 Ver.
南部陽一郎氏、小林誠氏、益川敏英氏がノーベル物理学賞受賞
2008年10月7日(火)・スウェーデン王立科学アカデミーノーベル物理学賞受賞者○シカゴ大学名誉教授 南部陽一郎氏、
「自発的対称性の破れ」という概念を素粒子理論に適用し、素粒子に質量が生まれる仕組みや、真空が素粒子に与える影響の解明に貢献。
○高エネルギー加速器研究機構名誉教授 小林誠氏○京都産業大学理学部教授・京都大学名誉教授 益川敏英氏
クォークが3種類しか発見されていない当時、1973年に、物質を構成する基本粒子クォークが6種類あれば、「CP対称性の破れ」が自然に説明できる、という先駆的な理論(小林・益川理論)を提唱。
http://www.kek.jp/nobel/
プレス発表
でもその対称性が破れている(法則が変わる、性
質が変わる)ということ。。なぜ?
(素)粒子と反粒子=双子の関係
(電子と陽電子、陽子と反陽子など)
両者は裏表の関係だがその性質はお互い変わらないものであろう。「対称」の概念から。。。。
さて、、
宇宙ができたときは、粒子と反粒子は同数あった。
そうならば粒子と反粒子はすべて対消滅すべき。
消滅!!! でも。。
エネルギー
何かの理由で粒子のみが残った(今の宇宙です)。
ビックバン初期に、反粒子が対称性の破れから対消滅せずに粒子に転換されるものがあった(性質が変わった)。
初期の宇宙で粒子と反粒子のそれぞれを支配していた法則に何らかの違いがあったということ。→「CP対称性の破れ」。
変身!
ケプラーの法則
16世紀後半、ケプラーはティコ・ブラーエによる惑星の運行観測データを解析し、3つの法則を導いた。 100年後、ニュートンは万有引力の法則をみいだし(中心力)、それでケプラーの法則を説明した。
第1法則:惑星の軌道は太陽を一つの焦点とする楕円。第2法則:太陽と惑星結ぶ線分が一定時間に通過する面積は等しい。第3法則:惑星が太陽を一周する周期Tの2乗と軌道の長軸半径aの3乗の比は
すべての惑星に対して同じ。
最初と最後の段階は大きな謎を残している。
宇宙の始まりのビックバンと現在の宇宙の見えない姿の謎。星の進化の最終段階である
超新星爆発は、重元素の起源、中性子星・ブラックホールの起源、ガンマ線バースト、高エネルギー宇宙線加速源、ニュートリノ放射源、など高エネルギー宇宙物理学のあらゆる研究領域における主役。
古典物理学の世界での宇宙
20世紀の宇宙研究
宇宙空間でどうして力が伝わるのか?宇宙でも磁石の力ははたらきます。
なぜ引きつけあう力だけなのだろう?反発する力はないの?(物理の世界での対称性の破れ)
(c.f. 電気力 F=a(q x Q)/r2 クーロン力) q、Qは電気量でプラス、マイナスがある。
M
mR
力はなにが伝えるのか?
○1個の原子/ml
○多量のニュートリノ(宇宙の活動天体による)
○未知の物質(ダークマター)
○電磁波
300個/mlの光子 光は波であり粒子である。
(宇宙背景光子:ビックバンのなごり)
→ あとで主役になります。
宇宙は真空でしょうか?
その力の源は媒介仮想粒子によると考えます(“力”の理論)。力をおよぼしあう2つの物では、片方から粒子がでて、相手側の物に到達します。この粒子のエネルギーを片方からうばい、もう片方にそれを伝えます。これで相手側に力がつたわる。
その粒子、って?? 作用反作用
(ゲージ粒子:力のメカニズム)
☆強い相互作用力(原子核をつなぎ止める力)☆弱い相互作用力 (弱ボゾン)☆電気磁気的な力 (光子)☆重力 (グラビトン)
それぞれの力は別々の原因から生まれてきたのでしょうか?
宇宙ができたそのときには(ビックバン)力の種類は一つだけのはず。。宇宙の進化とともに4つの力に別れたに違いない。。それぞれの力をすべて平等に説明できる理論を作ること。
標準理論・統一理論・大統一理論。。。。。
自然界に存在する4つの力とその起源
1981年、アラン・グースと佐藤勝彦「インフレーション宇宙」ビッグバン理論を補完する初期宇宙の進化モデル。
現在の宇宙は
フリードマン宇宙(平坦な宇宙)であるとしている。
観測によるとΩは1よりはるか小さい→ 膨張宇宙
しかし・・・
Ω=1のはず!
インフレーション宇宙論:ビックバン時代
「インフレーション」宇宙→膨張時期
最初の 10-36秒から10-34秒間 継続
体積は 1040倍 に。。。。
不確定性原理から,短い時間ではエネルギー(質量)の不確定性も膨大。
インフレーションが起こると,粒子は反粒子から急激に引き離されてしまうために対消滅ができなくなる。このため宇宙は,物質と反物質が高温の熱平衡状態になったスープ状になる。その後、粒子の対生成と対消滅(電子陽電子対は~3×10-22秒程度)を起こす。
ビッグバン理論において宇宙の始まり以来、初めて光子が長距離進めるようになった時期
→ およそ38万年後
宇宙の温度の低下にともない電子と原子核が結合して原子を生成。光子は電子との相互作用をまぬがれ長距離進めるようになる。 → 宇宙が放射に対して透明
晴れ上がり時期のマイクロ波は宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれ、ビッグバン理論について最も良い証拠。
電子
宇宙の晴れ上がり
WMAPの観測によると、
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/feelnikon/discovery/light/chap01/sec01.htm
宇宙の96%は未知の物質
我々は色のついた物質しか見えない。見えない物質(黒い部分)はいったい何なのか?
今後の課題
銀河では,星が集中している中心部分で,星の回転速度は距離とともに増える。星が少なくなる外側になっても,回転速度は緩やかに増え続ける。軌道半径が大きくなれば重力は小さくなり,それにつり合う遠心力も小さくなるので,回転速度は遅くなる。そのような領域は,光を出さない暗黒物質(ダークマター)によって占められていると考えられる。
銀河の回転速度と暗黒物質
現在の宇宙のエネルギー密度の
5分の1は光を出さず重力のみ及ぼすダークマター、4 分の3 は実効的には「万有斥力」を及ぼすダークエネルギー
ダークマターの解明
未発見の素粒子階層の理論構築、地上での直接検出実験(高エネルギー物理学)へ。
ダークマターが直接検出され、素粒子の階層として正しく位置づけられて初めてその研究が完結。
21世紀の宇宙物理学に残された課題
2011年:ノーベル物理学賞
「遠距離の超新星観測を通じた宇宙の膨張加速の発見」
米カリフォルニア大バークリー校 ソール・パールマッター教授、オーストラリア国立大 ブライアン・シュミット教授(44)、米ジョンズホプキンス大 アダム・リース教授(41)
1a型超新星:○銀河に相当するほどの光を発し、○明るさは宇宙のどこにあってもほぼ同じ○超新星のある銀河までの距離がわかる○超新星の色から後退速度がわかる標準光源(standard candle)
遠方宇宙の50個の超新星の光が予想に反して弱い。 → ビッグバンによる宇宙の膨
張が加速していると解釈。
通常の物質と暗黒物質だけでは観測された宇宙膨張の加速を説明できない。
→ 膨張を加速する力として働く真空の「暗黒エネルギー」の存在を指摘。
物質は重力で引き合うため、いずれ膨張は減速され、止まり、そして収縮に転じる。
もしくは、、、アインシュタイン:宇宙は静止していると考えていた。→ アインシュタイン理論では、重力の影響で宇宙は静止できない。そこで、重力と反対に働く項(宇宙の膨張を加速する原因:宇宙項)を導入した(1917)。
ところが、、1929年エドウィン・ハッブル銀河観測から、宇宙が膨張していることを示した。(光の波長の「ドップラー効果」による。「レッドシフト」)ハッブルの法則(遠ければ遠いほど速く後退する。 V=Hr後退速度V(キロメートル/秒)その銀河までの距離r(Mpc)H:ハッブル定数71km/sec/Mpc
宇宙パラメータ宇宙パラメータアインシュタインの「場の方程式」の別の記述
(宇宙定数を無視した場合)
1Ω:密度パラメータ(宇宙の質量に依存)
κ:宇宙の曲率
1 : 開いた宇宙(永久に膨張を続ける)
1 : 平坦な宇宙(膨張を続けるが膨張速度はゼロに近づく)
1 : 閉じた宇宙(膨張はやがて止まり収縮に転じる)
宇宙がビッグバンで誕生したとすれば、現在の宇宙はどれ?
κ<0:開いた宇宙κ=0:平坦な宇宙κ>0:閉じた宇宙
宇宙マイクロ波背景放射光子と宇宙線
宇宙のなぞと原子の世界を解き明かす!!
宇宙からやってくる高いエネルギーをもった原子(光子・・・)を宇宙線と呼びます。
目に見えない!!1秒間に300個くらいの宇宙線が身体を通過している!
☆宇宙における活動の活発な天体の姿を明らかにします。☆宇宙ができたときに作られた化石粒子を探索します。☆空気の原子との衝突を観測して、原子核構造と、物理学理論の検証に挑戦しています。
宇宙線はどこでつくられるのか?
宇宙には太陽のエネルギーの
何千倍ものエネルギーを持った
はげしい活動をする天体がありま
す。
銀河の中では、ブラックホール、
超新星の爆発、中性子星。銀河
の外に目を向ければ、活動
銀河核。
宇宙線はそういった、天体で生
まれていると考えられています。
宇宙線が空気の中に入ってくると?
空気の中にやってきた高いエネルギーをもった宇宙線は空気と衝突しておおくの“こども粒子”(宇宙線エネルギーに依存しますが、もっとも大きいものでその数は100億個をはるかにこえます。)作り出し、それが地上にシャワーのように降り注いできます。
これを空気シャワーと呼びます。
空気シャワーのイメージ
The Pierre Auger collaboration has reported a correlation between Ultra-High Energy Cosmic Rays (UHECR) and nearby Active Galactic Nuclei (AGNs) within ∼75 Mpc. Two of these events fall within 3 degrees from Centaurus A, the nearest AGN, clearly suggesting that this object is a strong UHECR emitter.
最近の研究成果から
もっとも期待されるUHE宇宙線起源天体ケンタウルス座A(CenA):
1000万光年(4Mpc)に位置する、2つの銀河の衝突でできた銀河で、降着物質がブラックホールに落ち込んでいる。ブラックホールを中心とするは銀河から電波、X線、ガンマ線の形でエネルギーを放出している。
切れ込んだ暗黒帯6分露出http://homepage3.nifty.com/stacafe1/KBH/seiun/NGC5128.htm
α:13h 25m 27.6s δ:-43°00’31“ 7.8等
ビッグバン理論と宇宙背景放射1964年、アーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンは、宇宙背景放射を発見した。
1978年、ノーベル物理学賞を受賞
ビッグバン理論の勝利
宇宙は膨張している!アーノ・ペンジアス(右)と
ロバート・ウィルソン(左)
ビッグバン理論の予言が的中
300個/mlの光子(宇宙背景光子:
ビックバンのなごり)
宇宙背景放射 ビックバンの名残
ビッグバンから30万年ほど経過(温度=3000K)したあと、電子と陽子がクーロン力によって結合し,原子がつくられる。光子のエネルギーが下がるため原子と相互作用しなくなる。
→物質と放射が切り離し。晴れ上がり。
温度T = 2.726±0.005Kを持つ熱放射であり、現在でも宇宙に充ちている。
宇宙の膨張の結果,3000Kの熱放射は,波長が伸び,3Kの熱放射になったと考えられる。
ビッグバン宇宙論の決定的な証拠の1 つ、また背景放射の波長は,宇宙のサイズを測る尺度になっている。
最高エネルギー宇宙線の伝播機構
高エネルギーのガンマ線により陽子が核子共鳴高エネルギーのガンマ線により陽子が核子共鳴状態に励起され、状態に励起され、ππ中間子を放出しエネルギー中間子を放出しエネルギー損失が起こる。損失が起こる。
pion production
E0>E1
E0 E1
From the source to the EarthFrom the source to the EarthUHECR particles go through a medium filled with Cosmic MicrowaveBackground (CMB) photons.
p + CMB p + 0
n + +
2.725 K, ~400 /cm3,average energy = 6.310-4 eV
Ethr 31019 eV
The mean free path of a 31020 eV is ~ 6 Mpcand it losses 10% of its energy at eachinteraction!
The consequence: whatever the energy with whichthe proton started, after at most 100 Mpc or soits energy will be < 1020 eV!
GZK cutoff
GZK効果
宇宙空間には宇宙背景放射(CMBR)が漂っている。
GZK効果による宇宙線(陽子)エネルギーの減衰
CMBRCMBRとの相互作用によりとの相互作用により
エネルギーを失うエネルギーを失う
→→100Mpc(100Mpc(約約33億光年億光年))以遠以遠の根源では、の根源では、10102020eVeV附近で附近で
到来頻度が急激に減少する。到来頻度が急激に減少する。
GZKGZKカットオフカットオフ
1020eV
1021eV
1022eV
100Mpc
10 102 104
伝播距離(Mpc)
1031019
1
1020
1021
1022
エネルギー
(eV
)
宇宙線エネルギースペクトル
べき-2.7
P
3Kγ
ΔN
π
3Kマイクロ波宇宙背景放射(CMB)
GZKカットオフ
>1020eV:1個/100km2・年
Auger flux
?
超高エネルギー宇宙線の諸問題
●GZKカットオフの存否前提 1.宇宙背景放射との相互作用
2.銀河系外起源3.相対性原理は超高エネルギーでも成立
●宇宙線起源のシナリオ1.Top-down 初期宇宙に生成されるX粒子の崩壊からの生成
2.Bottom-up 活動銀河核、電場ローブなどによる加速
●High Energy End→宇宙線起源の謎の解明、またビッグバン理論や相対性原理の検証にもつながり、天体・宇宙物理学全体に大きなインパクト
TA実験の物理目的○ AGASAの8倍の大面積地上アレイ(SD)
+3台の大気蛍光望遠鏡(FD) による
Super-GZK 事例の空気シャワー観測
エネルギー領域 1019eV ~ 1020.5eV においてAGASAをしのぐ高統計量観測事例数、高精度シャワーパラメータの決定
→エネルギーキャリブレーション エネルギースケールの評価→物理: エネルギースペクトラム, 点源探査, 化学組成。。。
ハイブリッド観測により、地表アレイ(AGASA)と大気蛍光法(HiRes)の結果を相互補完できる!
Telescope Array
Millard CountyUtah/USA
~600 Scintillators(1.2 km spacing)
AGASA x 9
3 x Fluorescence StationsAGASA x 4
TA Detector Configuration
Low Energy HybridExtension
1000 km2 surface array
From M. Teshima
Telescope Array 実験(2007年) 米国ユタ州に建設
有効面積800km2
(AGASAの8倍)
地表検出器(SD)576台
大気蛍光望遠鏡(FD)3台
ハイブリッド観測
1. Auger North will be in Colorado ($50 million).2. This week the Auger collaboration willpublish their first results after > 1 year workwith partial (half) array.
JEM-EUSO (Extreme Universe Space Observatory)
This is a space based (on ISS)fluorescent detector and will cover more than 105 km2.
Very good detector of UHE neutrinos!
おわり