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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 1 2017 2 24 国内から海外へ、成長をかけて新たな挑戦へと飛び立つ 出所:Bloomberg 株式基本情報 上場日 2017 2 28 上場株式数 300 百万株 上場価格 VND 90,000/(参考)450 /値幅制限 上下 7% 時価(2017 4 17 ) VND 131,700/(参考)659 /時価総額(2017 4 17 ) VND 39,510 billion (参考)1,975 億円 出所:当社、Bloomberg 3 つの推奨ポイント 1. 成長余地の広さ 23 ページ~35 ページ参照) 2. 屈指の業績変化率 37 ページ~43 ページ参照) 3. 優れた経営姿勢 44 ページ~47 ページ参照)及び 79 ページ~80 ページ参照) 705 710 715 720 725 730 735 80000 90000 100000 110000 120000 130000 140000 2017/2/28 2017/3/2 2017/3/4 2017/3/6 2017/3/8 2017/3/10 2017/3/12 2017/3/14 2017/3/16 2017/3/18 2017/3/20 2017/3/22 2017/3/24 2017/3/26 2017/3/28 2017/3/30 2017/4/1 2017/4/3 2017/4/5 2017/4/7 2017/4/9 2017/4/11 2017/4/13 2017/4/15 2017/4/17 VJC株価(左軸) VN指数(右軸) ベトジェット航空(VJC) 新規調査開始 Vietjet Air 本レポートは、キャピタル・パートナーズ証券提携先のベトナム大手証券会社と、キャピタル・パートナーズ証券子会社の キャピタル・パートナーズ・ベトナム・コンサルティングが共同作成・翻訳したものです。 単位: VND 指数

ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

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Page 1: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 1

2017 年 2 月 24 日

国内から海外へ、成長をかけて新たな挑戦へと飛び立つ

出所:Bloomberg

株式基本情報

上場日 2017 年 2 月 28 日

上場株式数 300 百万株

上場価格 VND 90,000/株

(参考)450 円/株

値幅制限 上下 7%

時価(2017 年 4 月 17 日) VND 131,700/株

(参考)659 円/株

時価総額(2017 年 4 月 17 日) VND 39,510 billion

(参考)1,975 億円 出所:当社、Bloomberg

3 つの推奨ポイント

1. 成長余地の広さ (23 ページ~35 ページ参照)

2. 屈指の業績変化率 (37 ページ~43 ページ参照)

3. 優れた経営姿勢 (44 ページ~47 ページ参照)及び (79 ページ~80 ページ参照)

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VJC株価(左軸) VN指数(右軸)

ベトジェット航空(VJC) 新規調査開始

Vietjet Air

本レポートは、キャピタル・パートナーズ証券提携先のベトナム大手証券会社と、キャピタル・パートナーズ証券子会社の

キャピタル・パートナーズ・ベトナム・コンサルティングが共同作成・翻訳したものです。

単位: VND 指数

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(概要)

1. Vietjet 航空は厳しい環境下にベトナム航空業界に参入

2011 年 12 月 2 日、新しい世代に属する民間航空会社 Vietjet 航空はベトナム全土で航空券の発

券を開始、ベトナム航空が支配していたベトナム航空業界に正式参入した。しかし、参入した

時期は原油コストが 100USD/バレルを超える等、非常に厳しい環境下であった。経営陣の卓越

した経営手腕によりそうした難局下でも着実に業績を改善し、営業開始からわずか 2 年で黒字

化を達成、国内市場シェアも同時期に先行していたベトナム航空傘下のジェットスターを追い

抜き、ベトナム最大の格安航空会社(LCC)に躍り出ている。

2. 積極果敢な規模拡大を展開

2016年上半期現在では、Vietjet航空はAirbusを 38機保有し、その平均機齢は約 3.3年である。

ベトナム航空の平均 5.3 年と比べても非常に若い(通常航空機は 25 年まで運航できる)。同社は

2016 年 5 月にはボーイング社に対し 100 機の 737 MAX 200 を発注し、顧客輸送力で東南アジ

アにおいて最も急速に成長している LCC の 1 社となった。2016 年 9 月には、Airbus 機 20 機

の追加購入契約を締結し、注文中の Airbus は 102 機となった。引き渡しを待つ機材は合計 202

機に及ぶ。(参考:2020 年頃の保有機材数は Vietjet 航空もベトナム航空もおよそ 150 機で並

ぶ見込み)

Vietjet 航空の機材(2016 年 6 月 30 日)

機種 稼働中 不稼働中 新規注文中1

Airbus A320-200 33

102 Airbus A321-200 5

Airbus A320 neos

Airbus A321 neos

737 Max 200 100

合計 38 202

1 新規注文中にはリース会社とのリース契約機を含む

Vietjet 航空初フライト 営業開始 2年で黒

字化

Vietjet 航空は原油コストが上昇していたときも市場シェアと収益を

拡大してきた

出所: 当社

出所: アジア太平洋航空センター (CAPA)機材データベース

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3. 目指す世界の総人口およそ 74 億人の半分の取り込み

Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

んでいる。これは飛行時間にして 5.5 時間圏内であることを踏まえれば、ホーチミン市のタン

ソンニャット(Tan Son Nhat)国際空港はアジア地域内のハブ空港として絶好の位置にある。

この地の利を活かして、インバウンド、アウトバウンド双方の旅客数を伸ばしていくことが、

Vietjet 航空の中長期的戦略の中心となる。

出所: Vietjet 航空

Hanoi center = ハノイ市から 2500 マイル(5.5 時間圏)

HCMC center = ホーチミン市から 2500 マイル(5.5 時間圏)

Domestic hubs = 国内線のハブ空港

Existing destinations = 既存就航都市

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ベトナムのローコストキャリア(LCC)最大手 Vietjet 航空(VJC)がいよいよ 2017 年 2 月 28 日にホーチミン

証券取引所に上場

公開価格が 90,000VND/株で、発行済株式数が 3 億株であるため、時価総額は 27 兆 VND(約 1,350 億円)と

なる見込みである。ベトナム国内で設立され、成長した初めての民間航空会社で、地域内 LCC の新興勢力

として、Vietjet 航空は国内の航空搭乗者数や海外旅行客の増加、さらに海外からベトナムに来る観光客の増

大の波にのっている。国際線の競争激化や積極的な保有機拡大計画は、長期的な収益性の面ではリスクをは

らむ。しかし、今後 3 年間をみれば、国内市場が同社の成長の原動力であろう。

Vietjet 航空は国内航空搭乗者数の押し上げに貢献するとともに、その利益を享受

ベトナムの国内航空搭乗者数は前年同期比 21%増の 2100 万人に達し、今後も 2016 年から 2020 年の間に

さらに 2 桁の伸びが期待されている。その成長要因としては、1)可処分所得の伸びとともに中間所得層が増

加していること、2)LCC の普及が進み、中間所得層にとっても空の旅が手の届くものとなり、これまでの

鉄道やバス利用からの乗り換えが進んでいること、3)鉄道網や道路網のインフラ整備が遅れ、航空インフラ

の整備が急速に進んでいること、4)ベトナムの国内旅行産業の勃興等があげられる。

Vietjet 航空は 2016 年 6 月末に国内線シェア 43%に達し、ベトナム航空をあわてさせる。ただ、2018 年以

降のシェアは伸び悩む見通し

ベトナムを本拠とする航空会社の2016年上半期の国内線総搭乗者数におけるVietjet航空のシェアは41.4%

で、ベトナム航空の 42.5%にせまるものだった。6 月単月で見れば、Vietjet 航空のシェアは 43.1%とベトナ

ム航空の 41.3%を上回り、徐々に永遠のライバルを引き離しつつある。Vietjet 航空が既にホーチミン市-ハ

ノイ市間の主要路線で非常に高いシェアを持っていること、新たな国内線を開拓する能力はおぼつかないこ

とを鑑みると、Vietjet 航空の 2018 年以降の国内旅客増加数は市場成長率並みの 8%-10%に落ち着くものと

見ている。

国際線への注力が 2018 年以降の成長の原動力と目されるが、それはより経験豊富なアジア太平洋地域内の

同業他社との厳しい競争に Vietjet 航空が相対することを意味する

Vietjet 航空は現在ベトナムと東南アジア、北東アジア諸国を結ぶ 17 の国際線に就航している。一方で、ア

ジア地域内大手 LCC のエアアジア(AirAsia)は、同社の主要ハブ空港があるマレーシアのクアラルンプール

とその他アジア諸国を結ぶ 70 以上の国際線に就航している。ただ、2015 年時点で Vietjet 航空の総搭乗者

数のうち国際線旅客の占める割合は 12%に過ぎず、開拓の余地が大きいといえる。競争は既に激化してい

る。特に人気のあるベトナムのホーチミン市やハノイと、他国の主要ハブ空港であるタイのバンコクやシン

ガポールを結ぶ路線は、LCC 大手のエアアジア(AirAsia)、ジェットスター(Jetstar)、タイガーエア(Tiger

Airways)がしのぎを削っているのが現状である。明るい展望としては、ベトナムと他国を結ぶ Vietjet 航空

の国際線の総搭乗者数の 85%がベトナム人であり、ベトナムの国内線の雄である Vietjet 航空は対ベトナム

顧客対応面では海外の大手 LCC より一日の長があると同社経営陣は主張している。

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2019 年までに 57 機の新鋭機の導入が予定され、ASK2は大幅に強化されるが、一方でそれは LF3や機材の

稼働率を圧迫する

Vietjet 航空が今後導入する新鋭機を既存就航路線に就航させないことを前提とすると、現在の機材の平均稼

働率 1 機当り 13.3 ブロック時間4/日を維持するためには、同社は 2019 年までに購入を予定する 53 機のエ

アバス機と 4 機のボーイング機のために 103 の新規就航路線を確保しなければならない。しかし、既存就

航路線の多くがまだ就航してから日が浅く、搭乗者数を増やす余地が大きいことを勘案すると、経営陣とし

ては便数を増やすという戦略も採ることが出来、そうすれば新鋭機によって増加する旅客輸送力の半分は既

存の路線で吸収できると見込んでいる。それでもまだ 50 以上の新規路線の確保が 2019 年までに求められ

ている。状況的には非常に厳しい綱渡りが求められる。積極的な新規就航路線の開拓は航空機のブロック時

間を下支えするが、新規就航路線の搭乗者数は徐々に増加していくため、開設当初は LF5にしわ寄せがいく。

一方で LF を維持しようとすると、新規就航路線数を抑えなければならず、それは航空機のブロック時間に

影響する。

機材の売却とそのリースバックを実行することにより、利益の大幅増を達成

Vietjet 航空はボーイング社とエアバス社の双方と大規模な航空機購入契約を締結しているため、経営陣によ

るとかなり購入者側にとって有利な価格条件を確保している。そのため、購入機 1 機をリース会社に売却す

る都度、2 百万米ドル(約 2.26 億円)6またはそれ以上の利益があがるものと見込んでいる。2016 年から 2019

年の間に毎年 11 から 19 機の新鋭機が供給され、その全機が売却されリースバックされるとすると、2019

年までに毎年新機材売却益が毎年 22百万米ドルから 38百万米ドル(約 24.86億円から約 42.94 億円)売上総

利益に加算される。

搭乗客一人当たりの付帯サービス収入は最も低い水準から倍増も可能で、それによって収益率を大幅に高

められる

Vietjet 航空の 2015 年の一人当たり付帯サービス収入は、ここ 2 年間平均年率 13.8%伸びた後でもおよそ

12.14 米ドル(約 1,372 円)にとどまっている。アジア地域内 LCC 各社の平均が搭乗客一人当たり 20 から 30

米ドル(約 2,260 円から約 3,390 円)であることから、同社は機内販売、超過荷物料金、座席指定料や貨物輸

送や広告媒体としての利用等の便宜を改善して、更に同サービス収入を増加させる余地が十分にある。2016

年上半期実績では、付帯サービス収入が機材売却売上を除く総売上高の 22.6%を占め、2013 年時点の僅か

16.4%であった頃から増加している。付帯サービス収入の売上高貢献度の増加は今後数年継続する。

2 ASK= available seat kilometer 有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する 3 LF = load factor 有償搭乗率、座席利用率

4 block hours =ブロック時間 航空機が離陸のために、当該機のドアを閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間

5 LF = load factor 有償搭乗率、座席利用率

6 1USD=113YEN

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原油価格の楽観的な見通し及び規模の経済の拡大が利益率を下支えする

2015 年は世界の航空業界にとって恵まれた 1 年であった。LCC 各社のみならずフルサービスを提供する大

手航空各社(FSA7)は原油価格の急落から利益率が急回復し、収益性の改善が世界的に座席数の急増につなが

っている。Vietjet 航空の RASK8から CASK9を差し引いたスプレッドは今後 2 年間も規模の経済の拡大や原

油価格の低迷見通しから広がると予測している。原油価格の動向としては、2016 年のブレント原油価格の

平均は 45 米ドル/バレル(約 5,085 円/バレル)で、それから 2018 年にかけて緩やかに 65 米ドル/バレル(約

7,345 円/バレル)まで上昇すると予測している。さらに、保有機数の増加により RPK10が増加すればより一

層規模の経済が働き、空港や取引業者との交渉力も高まり、収益力は向上する。一方で、原油価格が想定外

に急上昇すれば、それは同社の業績の下方リスクにつながる。同様に、ベトナム空港総公社(ACV)が急に空

港利用料を大幅に引き上げれば、現在予測しているRASKとCASK間のスプレッドの拡大を妨げかねない。

7 FSA=full service airline フルサービスを提供する大手航空会社

8 RASK= Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入

9 CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費

10 RPK=Revenue passenger kilometer 有償旅客キロ数(料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)

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内容

国内から海外へ、成長をかけて新たな挑戦へと飛び立つ ...................................................................................... 1

世界の航空業界の概況 .......................................................................................................................................... 12

世界の航空業界の主要動向 ............................................................................................................................... 12

世界の航空業界売上高は過去 10 年間で倍増したが、細目では付帯サービス収入が急速に伸びている .......... 13

LCC は着実に FSA の市場シェアを侵食 .......................................................................................................... 14

アジア太平洋地域の航空業界 ............................................................................................................................... 15

2015 年は貨物輸送量の増加が低調な中、国際搭乗者数は堅調に増加 ............................................................ 15

東南アジア地域では、LCC 各社の旅客輸送力は過去 10 年間で FSA 各社の 5 倍以上増加 ........................... 17

世界航空業界の 2016 年概観: 地域によってばらつきがあるが、世界経済の回復は航空業界の成長を後押し

.......................................................................................................................................................................... 18

ベトナム航空業界 ................................................................................................................................................. 23

2015 年の業界概要 ........................................................................................................................................... 23

Vietjet 航空が 2011 年に就航以来、ベトナムの旅行者の行動に顕著な変化があらわれている ....................... 24

ベトナム航空業界は 2015 年に目覚ましい業績を達成 ..................................................................................... 26

ベトナムの主要航空会社は依然として世界の同業他社より高い交渉力を持っている ..................................... 28

見通し: GDP の持続的成長がベトナムの航空業界の成長を加速する ........................................................... 30

企業概要 ............................................................................................................................................................... 36

Vietjet 航空概観:難局の洗礼を受ける中、駆け足で業界のリーダー企業に成長 ............................................... 37

Vietjet 航空は厳しい環境下にベトナム航空業界に参入 ................................................................................... 37

そんな困難な状況下にありながら、Vietjet 航空は営業開始 2 年目には黒字化 ............................................... 38

Vietjet 航空の経営陣は多様な経歴を誇る ........................................................................................................ 43

Vietjet 航空の保有機材の機齢は若く、50 以上の路線を運航している ............................................................ 44

Vietjet 航空の成長戦略: 国内線が引き続き今後 2-3 年の主要成長原動力 ......................................................... 48

コスト競争力の維持が最優先事項 .................................................................................................................... 48

Vietjet 航空は引き続き中期的には国内航空旅行ブームの恩恵を受けられるが、市場シェアは横ばいとなる見

込み ................................................................................................................................................................... 53

国際路線の拡大が Vietjet 航空の今後の長期成長の鍵を握る ........................................................................... 63

積極的な保有機数の増強は、中期的には平均正規基本運賃と座席利用率(load factor)にとってはマイナス要

因であるが、原油価格が引き続き低位であること及び規模の経済が増すことから売上総利益率は改善が見込ま

れる ................................................................................................................................................................... 65

Vietjet 航空が保有機拡大を目的として採用する機材のセール・アンド・リースバック取引により、多額なキ

ャッシュ・イン・フローが生じる .................................................................................................................... 69

付帯サービス収入:中期的には成長が期待される重要な利益源 ..................................................................... 72

チャーター便サービス: 新国際路線開設の収益性等を計るうえで有効な手段 .............................................. 76

航空貨物サービス: 現在規模が小さいが、急速な成長を見せている事業区分 .............................................. 77

Vietjet 航空の 5 ヶ年計画 ................................................................................................................................. 79

2015 年概観: 急激な原油価格下落により CASK は大幅に減少 ........................................................................ 81

2016 年上半期概観: 急速な保有機数拡大を背景に劇的な成長を遂げる ........................................................... 91

2016 年の見通し:国内線市場での市場シェア 50%が視野に ............................................................................ 100

バリュエーション評価 ........................................................................................................................................ 102

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 8

同業他社比較 .................................................................................................................................................. 102

感応度分析 ...................................................................................................................................................... 103

株式評価範囲 .................................................................................................................................................. 104

財務諸表 ............................................................................................................................................................. 105

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図表目次

図 1: 世界の航空会社の売上高推移(セグメント別) .................................................................................... 13

図 2: 総座席数に占める格安航空会社(LCC)の世界シェア推移 .................................................................. 14

図 3: 2015 年度アジア太平洋地区航空会社のトラフィック統計 ............................................................... 15

図 4: 世界航空市場の有償旅客キロ数ベース(RPK)での地域別シェア(2015 年 12 月 31 日時点) ............... 16

図 5: アジアは世界の搭乗者数増加の牽引役に(1994 年-2014 年集計値) ................................................... 16

図 6: アジアで活躍する格安航空会社(LCC) ............................................................................................... 17

図 7: 地域別航空会社輸送力増強状況(2014 年対 2015 年) ......................................................................... 17

図 8: 世界の航空会社の売上高伸び率対実質 GDP 成長率 ......................................................................... 18

図 9: 経済成長率(IMF 予測) ........................................................................................................................ 19

図 10: 原油価格の動向は不安定であるが、100 ドル超えには時間がかかる ............................................. 19

図 11: 原油価格の下落により、世界大手 17 の航空会社の純利益率改善 .................................................. 20

図 12: 航空券価格の下落により、航空旅行の需要は堅調 .......................................................................... 20

図 13: 貨物部門は世界の貿易取引高の減速及び貨物運賃の弱含みの影響を受ける .................................. 21

図 14: 航空業界は初めて経済的利益創出に貢献 ........................................................................................ 21

図 15: 資産効率改善により有償搭乗率が劇的に改善 ................................................................................. 22

図 16: 交通手段別輸送量(百万旅客キロ数) ................................................................................................ 24

図 17: ベトナム国内線の週間座席供給数の推移 ........................................................................................ 25

図 18: ベトナムの格安航空会社(LCC)部門が占める収容力のシェア(座席数の割合%) .............................. 25

図 19: ベトナムの実質 GDP 成長率 ........................................................................................................... 26

図 20: 海外直接投資(FDI)実行額(10 億米ドル) ........................................................................................... 27

図 21: 近年国内旅行客数が増大 ................................................................................................................. 28

図 22: アジア各国における格安航空会社(LCC)の市場シェア .................................................................... 30

図 23: 2016 年第 1 四半期における交通手段別輸送量増加率(百万旅客キロ数) ......................................... 31

図 24: 国内線旅客者数の伸び(百万旅客キロ数) ......................................................................................... 31

図 25: ここ数年内に実行が予定されている航空輸送インフラ整備計画 .................................................... 32

図 26: 主要都市間移動では空の便が最も効率的な交通手段 ...................................................................... 34

図 27: 国際線搭乗者数(2011-2015) ............................................................................................................ 34

図 28: 国別インバウンド数とアウトバンド数の伸び ................................................................................. 35

図 29: ベトナムの実質経済成長率 ............................................................................................................. 37

図 30: ベトナムの年間インフレ率 ............................................................................................................. 37

図 31: Vietjet 航空の初フライトは原油価格が高騰していたとき ............................................................... 38

図 32: Vietjet 航空のこれまでの歩み(図 32-1 参照) .................................................................................... 39

図 33: Vietjet 航空は 2016 年 6 月末において、国内線シェアではベトナム最大の航空会社となる .......... 40

図 34: 2015 年 Vietjet 航空売上高(国内線からの旅客運賃収入が大半を占める) ........................................ 40

図 35: 30%を超える国内線マーケットシェアを達成するまでに要した期間 ............................................. 41

図 36: 売上高及び利益の推移(2013 年-2015 年 単位: 10 億 VND) ......................................................... 41

図 37: 調整済 EBITDAR 利益率(2013 年-2015 年) ..................................................................................... 42

図 38: 搭乗者数、ASK、RPK(2013-2015) ................................................................................................. 42

図 39: 有償搭乗率 ...................................................................................................................................... 43

図 40: Vietjet 航空の保有機材(2016 年 6 月末) ........................................................................................... 44

図 41: Vietjet 航空にとって最大の LCC 競合相手である Jetstar Pacific の保有機材(2016 年 3 月 10 日) .. 45

Page 10: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 10

図 42: Vietjet 航空機材導入予定 ................................................................................................................. 45

図 43: Veitjet 航空の国内線座席供給数順位(2016 年 4 月 11 日 – 4 月 17 日) ............................................ 46

図 44: Veitjet 航空の国際線座席供給数順位(2016 年 4 月 11 日 – 4 月 17 日) ............................................ 47

図 45: 平均機齢 .......................................................................................................................................... 48

図 46: 主要格安航空(LCC)の機材効率性(航行時間) ................................................................................... 49

図 47: 販売チャネル別予約割合 ................................................................................................................. 49

図 48: 格安航空会社(LCC)各社の中で単位あたり労働コストは低水準(USD cents/ASK) .......................... 50

図 49: 格安航空会社(LCC)各社の中で販売経費は低水準(USD cents/ASK) ............................................... 50

図 50: 格安航空会社(LCC)各社の中で空港使用料は最も低い(USD cents/ASK) ........................................ 51

図 51: Vietjet 航空の燃料費を除く CASK(USD cents/ASK)は世界的にも低水準 ....................................... 52

図 52: 国内線旅客者数(単位:百万人) ........................................................................................................ 53

図 53: 国内線各社シェア(%)(搭乗旅客者数ベース) .................................................................................... 53

図 54: Vietjet 航空の国内線網(2016 年 5 月現在) ....................................................................................... 54

図 55: 国内運行路線数の推移 ..................................................................................................................... 55

図 56: ベトナム ハイフォンの海外運行路線網(実線: 既存路線、点線: 開設予定路線) ....................... 56

図 57: 近年ベトナムへの海外直接投資(FDI)のうち北部への投資割合が増加 ............................................ 56

図 58: ハイフォンは海外直接投資額でベトナム 6 番目に位置する(2015 年登録実績) .............................. 57

図 59: 路線網を構成する既存国内空港と今後開設が予定される空港 ........................................................ 58

図 60: ハイフォン(Cat Bi 空港)から就航が予定される新路線 .................................................................... 59

図 61: ダナン(Da Nang 空港)から就航が予定される新路線 ....................................................................... 60

図 62: ハノイ(Noi Bai 空港)から就航が予定される新路線 ......................................................................... 61

図 63: 国内線 RPK の内訳(予測値) ............................................................................................................. 62

図 64: Vietjet 航空の国際線路線(2016 年 5 月) ........................................................................................... 63

図 65: 各年度末時点の国際線数 ................................................................................................................. 64

図 66: Vietjet 航空の保有機材 対 東南アジア地域その他 LCC の機材比較 ............................................... 65

図 67: 国内線、国際線別 RPK 収益の状況 ................................................................................................. 66

図 68: 平均基本運賃の推移(2013 年来) ...................................................................................................... 66

図 69: ASK 当りの燃料費は、原油価格の下落を受けて低下 ..................................................................... 67

図 70: RASK – CASK の推移 ..................................................................................................................... 67

図 71: 売上総利益率(機材売上高を除く) .................................................................................................... 68

図 72: 差別化された商品と料金体系 .......................................................................................................... 69

図 73: セール・アンド・リースバック取引 ............................................................................................... 71

図 74: 付帯サービス収入の推移(2013-2015 年) ......................................................................................... 72

図 75: 搭乗者一人当たり付帯サービス収入 ............................................................................................... 73

図 76: Vietjet 航空の搭乗者一人当たり付帯サービス収入、同業他社との比較 .......................................... 73

図 77: 調整済総売上高に占める付帯サービス収入の割合(%) .................................................................... 74

図 78: 総売上高に占める付帯サービス収入の割合が高い世界の航空会社トップ 10 ................................. 74

図 79: 付帯サービスの内容 ........................................................................................................................ 75

図 80: チャーター機収入(10 億 VND)......................................................................................................... 76

図 81: 国際搭乗者数(過去実績及び将来予測) ............................................................................................. 76

図 82: 貨物輸送売上 ................................................................................................................................... 77

図 83: 2000 年から 2014 年迄の国内航空貨物量の推移(貨物輸送トンキロ) .............................................. 77

Page 11: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 11

図 84: ベトナムの航空貨物量推移 ............................................................................................................. 78

図 85: 今後の戦略(将来展開計画) ............................................................................................................... 79

図 86: 2016 年 6 月 30 日時点の国内線路線網 ........................................................................................... 81

図 87: 2016 年 6 月 30 日時点の国際線路線網 ........................................................................................... 82

図 88: Vietjet 航空保有機種推移 ................................................................................................................. 83

図 89: Load factor ...................................................................................................................................... 83

図 90: 機材の有効利用(ブロック時間) ........................................................................................................ 84

図 91: 総旅客者数 ...................................................................................................................................... 84

図 92: 国内市場シェア ............................................................................................................................... 85

図 93: ベトナムの航空搭乗者数推移(2010 年―2015 年) ........................................................................... 85

図 94: 過去 3 年のセグメント別売上高の伸び率 ........................................................................................ 86

図 95: 2015 年度調整済売上高内訳 ............................................................................................................ 86

図 96:調整済売上総利益率 .......................................................................................................................... 87

図 97: ブレント原油価格推移 ..................................................................................................................... 88

図 98: 原油価格の下落を主因として、ここ数年 CASK は大幅改善 ........................................................... 88

図 99: 有効座席キロ数当りマージンの推移(RASK – CASK のスプレッド) .......................................... 89

図 100: 業界平均と比較した Vietjet 航空の利益率 ..................................................................................... 89

図 101: 2015 年度世界の同業他社と比較した Vietjet 航空の利益率 .......................................................... 90

図 102: 2015 年上半期から 2016 年上半期にかけて業績は大幅に向上 ..................................................... 91

図 103: 2016 年上半期の Vietjet 航空の市場シェア ................................................................................... 92

図 104: Vietjet 航空機材保有数推移 ........................................................................................................... 92

図 105: セグメント別売上高 ...................................................................................................................... 93

図 106: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の Load factor .......................................................................... 94

図 107: 機材の有効利用(ブロック時間) ...................................................................................................... 95

図 108: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の RASK .................................................................................. 95

図 109: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の CASK .................................................................................. 96

図 110: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の燃料費控除後 CASK ............................................................. 96

図 111: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の RASK – CASK のスプレッド .............................................. 97

図 112: 2015 年上半期及び 2016 年上半期のセグメント別売上総利益率 .................................................. 98

図 113: Vietjet 航空及びベトナム航空の 2011 年 9 月から 2016 年 3 月迄の週当たり座席数の推移 ........ 100

図 114: Vietjet 航空の 2011 年 9 月から 2016 年 3 月迄のホーチミン-ハノイ間片道週当たり座席数の推移

............................................................................................................................................................. 101

図 115: Vietjet 航空同業他社比較 ............................................................................................................. 102

図 116: 原油価格シナリオ毎の 2016 年予想収益 ..................................................................................... 103

図 117: セール・アンド・リースバック取引シナリオ毎の 2016 年予想収益 .......................................... 103

図 118: 上場後株式評価範囲 .................................................................................................................... 104

図 119: 損益計算書 ................................................................................................................................... 105

図 120: 貸借対照表(1) ......................................................................................................................... 106

図 121: 貸借対照表(2) ......................................................................................................................... 107

図 122: キャッシュ・フロー計算書 ......................................................................................................... 108

図 123: 主要経営指標(1) ...................................................................................................................... 109

図 124: 主要経営指標(2) ...................................................................................................................... 110

Page 12: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 12

世界の航空業界の概況

世界の航空業界の主要動向

航空利用の旅行客は原油価格の低下による航空運賃の低下及び就航路線増の恩恵を受けている。航空旅

費の総額は世界の GDP の 1%を占める

出発地と目的地の組み合わせは過去 20 年で倍増している

2015 年の ROIC11は 8%を上回り、初めて資本コストを上回ったため、航空業界の株主還元が改善しつ

つある

2015 年の ATK12当りの燃料費は前年同期比で 1.8%減少し、業界全体で 1400 万トンの CO²排出量を減

らすとともに 20 億米ドル(約 2,260 億円13)の燃料費を削減した

座席利用率14は運送能力の拡大で若干低下すると予測されている。2015 年の新鋭機導入コストは 1,800

億米ドル(約 20.34 兆円)にのぼる

2016 年の利益率の面では、北米地域の税引き後純利益率が 9.5%となり、最も収益性の高い地域となっ

た。アフリカは純損失率 0.5%となり、最も脆弱な地域となった

11

ROIC=Return On Invested Capital 投下資本利益率 12

ATK=available ton kilometer 有効輸送トンキロ◆航空会社の生産量を表す数字 13

1USD=113YEN 14

LF= load factor 有償搭乗率、座席利用率

出所 : 国際航空運送協会 (IATA)

2015

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 13

世界の航空業界売上高は過去 10年間で倍増したが、細目では付帯サービス収入が急速に伸びてい

現在世界の航空業界では 2,000 以上の航空会社が 3,700 の空港で 23,000 機以上を運航している。業界の売

上高は、旅客輸送と貨物輸送合わせて 2004 年の 3,690 億米ドル(約 41.697 兆円)から 2014 年の 7,460 億米

ドル(約 84.298 兆円)まで、年平均成長率 7.2%で伸びている。その間の内容を分析すると、旅客収入が 2014

年の売上高中の 75%を占め、最も金額的な貢献度が高いが、伸び率が最も高いのは付帯サービス収入で、

下図の「その他収入」の大部分を占める。2004 年から 2014 年間の業界全体では、その他付帯サービスの

売上高年平均成長率が 13.7%、貨物輸送の売上高年平均成長率が 3.0%、旅客輸送の売上高年平均成長率が

6.6%となっている。

図 1: 世界の航空会社の売上高推移(セグメント別)

旅客収入 貨物収入 その他収入

出所: 国際航空運送協会(IATA) 2015

(単位:10 億米ドル)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 14

LCCは着実に FSA15の市場シェアを侵食

旅客航空業界では、総計 2,000 社以上の航空会社のうち 259 社の LCC が全体の市場シェアの 25%を占め、

最も急速に成長しているセグメントでもある。LCC は通常、主要都市間以外の 2 地点を直接結び16、中短距

離の路線に就航している。LCC はこのようにコードシェア17や乗継ぎ便の運航をしないことで、価格競争力

の高い運賃を提供している。こうした経緯からも、LCC 各社はウェブサイトを介した直接販売に特化して

きた。しかし、LCC の拡大により、販売チャネルは多様化し、今では自社ウェブサイトに加えてコールセ

ンター、GDS18や旅行代理店でも搭乗券の購入が可能となってきている。

図 2: 総座席数に占める格安航空会社(LCC)の世界シェア推移

2015 年に LCC は初めて市場シェアを低下させた。その要因は、FSA が市場シェアを取り戻そうと戦略を

変更したことにある。例をあげれば、FSA 各社は長距離路線への特化を目指したり、自らのビジネスモデ

ルを変更したりしてコストを削減し、航空券の価格引き下げを狙った。また、FSA 各社は卸売りしてきた

航空券の直接個別販売化を実施し、一部運賃は LCC の運賃と同等まで下げることによって搭乗率を改善し、

その一方でプレミアム顧客への高いサービス力訴求提案も継続している。一方で、LCC 各社は販売チャネ

ルを拡大するとともに、中距離路線の拡大に注力している。

15

FSA=full service airline フルサービスを提供する大手航空会社 16

Point to Point=2 地点間運航 17

コードシェア=共同運航 18

GDS=Global Distribution System 世界中の航空会社、ホテル、レンタカーなどの予約・発券ができるコンピュータシステム

出所: アジア太平洋航空センター(Centre for Asia Pacific Aviation - CAPA) 2016

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 15

アジア太平洋地域の航空業界

2015 年は貨物輸送量の増加が低調な中、国際搭乗者数は堅調に増加

2015 年にはアジア太平洋地域が世界で最も急速に成長した地域となり、国際航空搭乗者数は 7.9%増加し、

2 億 7,630 万人に達した。この搭乗者数の堅調な増加は、原油価格の低下によって、より競争力のある運賃

の提供が促進されたことによる。同地域の航空会社の座席利用率19は 2014年の 77%から 78.4%に上昇した。

アジア太平洋航空会社協会(AAPA)によると、長距離利用客の堅調な増加要因としては、①西側先進国の

経済状況の改善、②全般的に経済成長が減速し通貨安となったにも拘らず、中国からの海外旅行客の急増が

原動力となり、旅行需要が大幅に高まったことがあげられる。一方で、同地域の 2015 年の航空貨物輸送の

需要は弱く、貨物輸送トンキロ数(FTK)の伸び率が 1.6%に留まり、国際貿易の基調の弱さを反映した。

2015 年の貨物有償搭載率(Freight Load Factor)は 14 年の 65%から 63.7%に低下した。

図 3: 2015 年度アジア太平洋地区航空会社のトラフィック統計

国際線 2014 年 12 月 2015 年 12 月 変動率(%) 2014 年通期 2015 年通期 変動率(%)

搭乗者数(千人) 23,171 24,481 5.7%増 256,117 276,338 7.9%増

RPK20

( 百万キ

ロ) 83,401 89,777 7.6%増 924,784 1,000,457 8.2%増

ASK21

( 百万キ

ロ) 106,642 114,181 7.1%増 1,200,492 1,275,927 6.3%増

Passenger Load Factor

22

78.2% 78.6% 0.4pp 増 77.0% 78.4% 1.4pp 増

FTK23

( 百万キ

ロ) 5,612 5,593 0.3%減 63,917 64,925 1.6%増

FATK24

(百万キ

ロ) 8,587 8,768 2.1%増 98,401 101,863 3.5%増

Freight Load Factor

25

65.4% 63.8% 1.6pp 減 65.0% 63.7% 1.4pp 減

19

LF= load factor 有償搭乗率、座席利用率 20

RPK(Revenue passenger kilometer) = 有償旅客キロ数(料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)) 21

ASK(Available seat kilometer) =有効座席キロ数(総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する) 22

Passenger Load Factor = 旅客有償搭乗率、座席利用率 23

FTK(Freight Ton Kilometers) = 貨物輸送トンキロ数(貨物の輸送量を表す単位。貨物の重量トン数に、それを輸送した距離のキロ数を乗じたもの) 24

FATK(Freight Available Ton Kilometers) = 有効貨物輸送トンキロ数(総輸送容量(トン)× 輸送距離(キロ)) 25

Freight Load Factor = 貨物有償搭載率

出所: アジア太平洋航空会社協会(AAPA) 2016

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 16

図 4: 世界航空市場の有償旅客キロ数ベース(RPK)での地域別シェア(2015 年 12 月 31 日時点)

アジア太平洋航空協会(AAPA)によれば、アジア太平洋地域は今後世界の航空業界にとって最も重要な地域に

なりつつある。その要因としては①同地域が世界の GDP の 31%を生み出し、全地域の中でも最も速い経済成長

を遂げていること、②同地域の人口は 40 億人あまりで、世界人口の 56%を占めていること、③同地域の貿易取

引額が世界全体の 35%を占めていること、④優れた安全飛行記録及び⑤所得水準が広範囲であるとともに、中間

層の支出が大きく伸びていること、などがある。

図 5: アジアは世界の搭乗者数増加の牽引役に(1994 年-2014 年集計値)

出所 : 国際航空運送協会 (IATA)

2015

アフリカ

アジア太平洋

欧州

ラテン・アメリカ

中東

北米

出所: エアバス社 「世界市場予測」

世界 独立国家

共同体(CIS)

北米 欧州 ラテン

アメリカ

アフリカ アジア

太平洋

中東

搭乗者数(年平均成長率)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 17

東南アジア地域では、LCC各社の旅客輸送力は過去 10年間で FSA26 各社の 5倍以上増加

東南アジア地域では、FSA 各社の旅客輸送力は 2004 年の 1.8 億席から 2014 年は 2.6 億席と 1.4 倍の増加

にとどまり、年平均成長率では 3.7%と、同期間の需要の伸びを大幅に下回った。実際の総搭乗者数は同期

間に年平均成長率で 5.4%増加した(出所:IATA)。米国の通信社である PRNewswire によると、東南アジ

アの LCC 各社の旅客輸送力は 2004 年の 2,500 万席から 2014 年は 2 億席へと 8 倍増加し、年平均成長率で

は 23.1%に達した。

図 6: アジアで活躍する格安航空会社(LCC)

図 7: 地域別航空会社輸送力増強状況(2014 年対 2015 年)

26

FSA=full service airline フルサービスを提供する大手航空会社

出所: 当社、google map

出所:Planestat.com

*座席有効マイル(ASM)=ある期間中の乗客輸送に使用できる座席の合計数を飛行距離(マイル)でかけたもの

世界合計

北米

欧州

ラテン・アメリカ

アフリカ/中東 アジア/オセアニア

搭乗数

座席有効マイル(ASM)*

座席数

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 18

世界航空業界の 2016 年概観: 地域によってばらつきがあるが、世界経済の回復は航空業界の成

長を後押し

世界の航空業界の売上高は、経済状況や景気循環の変動の影響を受け、1 年単位では大きく上下動しながら

も、過去 30 年間では年平均約 5%の成長を遂げてきた。過去においては、航空会社の搭乗者数の伸び率は

GDP 伸び率のおよそ 2 倍だった。今後 10-15 年間、保守的に世界経済の成長率が年間 2-3%と予測しても、

世界の航空会社の搭乗者数は 4-5%伸び、航空搭乗者数は同期間で倍増すると見込まれる。

図 8: 世界の航空会社の売上高伸び率対実質 GDP 成長率

2016 年には、世界の航空旅客業界は次の二つの要因により下支えされると見込んでいる。①国及び地域に

よってばらつきがあるが、世界経済全体の成長が堅調であること、および②昨年より低い原油価格によって

航空運賃が下落し、航空旅客需要が高まっていること。

出所 : 国際航空運送協会 (IATA)

2015

実質 GDP 成長率 世界の航空会社の売上高伸び率

Page 19: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 19

世界経済のダイナミクスと航空旅客輸送との密接な関係が過去十年間で明らかになっている。一人当たり所

得の伸びが高ければ高いほど、航空旅行需要が増大する。IMF によれば、新興国のうちでも経済が減速する

国が出ていること及びブレグジット(英国の EU 離脱)後のユーロ圏経済の健全性に関する懸念等が存在する

にも拘らず、世界経済全体では本年も引き続き成長が見込まれている。

図 9: 経済成長率(IMF 予測)

航空券価格の下落により、航空旅行の需要は高まる見込みである。燃料費は通常、航空会社の経費の 30%

以上を占めるため、進行中の原油価格の下落から生まれる大きな利幅の一部は、航空会社により顧客に還元

されると考えることは合理的であろう。

図 10: 原油価格の動向は不安定であるが、100 ドル超えには時間がかかる

出所: IMF 世界経済概況(2016 年 7 月)

新興国 先進国

出所: Bloomberg, IEA, Goldman Sachs

国際エネルギー

機関(IEA) /

ゴールドマン・

サックス

Page 20: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 20

直近の原油価格の下落により、主要な航空会社の利益は大幅に改善している。この傾向は本年の各社の利

益率を引き続き下支えすると見込まれる。下図のように、2014 年以降の急激な原油価格の下落は、世界の

主要航空会社の平均営業利益率と平均純利益率の急回復と一致する。旅客運賃はある程度下がったものの、

航空会社は低燃料費による利益を内部留保している。航空運賃の下落は需要の伸びを押し上げるのには十分

であったが、同時に航空会社も業務費の低下から利益を享受できる水準で下げ止まった。今年の原油価格が

今後若干上昇したとしても、2016 年の平均原油価格は依然昨年より低く水準にとどまり、航空会社は利益

率を維持するどころか、更に拡大することも見込める。

図 11: 原油価格の下落により、世界大手 17 の航空会社の純利益率改善

図 12: 航空券価格の下落により、航空旅行の需要は堅調

出所: 当社、Bloomberg

平均営業利益率 平均純利益率 原油価格

米ドル/バレル

出所: 国際民間航空機関(ICAO)、国際航空運送協会(IATA)-旅客分析サービス (PaxIS) & 経済統計

旅客搭乗者数と実質平均往復運賃

旅客搭乗者数

CPI 対比の平均往復運賃 旅客搭乗者数

(単

位:百万人

)

往復運賃

(20

15年度

単位:

US

D)

Page 21: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 21

一方、航空貨物輸送は世界貿易取引の鈍化の影響を今後も引きずりそうである。その要因は世界貿易取引

の伸びが低迷し、かつまた世界中で保護貿易が拡大し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)等の主要貿易協

定の批准時期が見通せない状況で、2016 年中に航空貨物の平均運賃が回復する見込みはないからである。

図 13: 貨物部門は世界の貿易取引高の減速及び貨物運賃の弱含みの影響を受ける

航空貨物事業の低迷にも拘らず、世界の航空業界は引き続き良好な利益を確保している。航空業界はよう

やく 2015 年に投資家に通常利益を還元し、この傾向は 2016 年も維持される見込みである。国際民間航空

機関(ICAO)と国際航空運送協会(IATA)によると、これには理由が 2 つあり、一つは原油価格の低迷が

継続すると見込まれていること、二つ目は投下資本の利益率が高まっていることである。後者は近年資産効

率が向上し、2016 年はこのままの水準に留まると予想されていることが要因となっている。

図 14: 航空業界は初めて経済的利益創出に貢献

国際貿易取引高

CPI 対比の平均貨物運賃

前年度からの変動率

(%

)

Kg当り運賃

(201

5年度

単位:

US

D)

出所: オランダ経済政策分析局(Netherlands CPB)、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)、IATA の貨物情報サービス(CarogoIS)

資本コスト(WACC)

投下資本利益率(ROIC)

投下資本に対する利益率

(%

)

出所: 国際民間航空機関(ICAO)、国際航空運送協会(IATA) - 経済統計

Page 22: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 22

図 15: 資産効率改善により有償搭乗率が劇的に改善

出所: 国際民間航空機関(ICAO)、国際航空運送協会(IATA) - 経済統計

有償搭乗率(実績)

有償搭乗率(損益分岐)

有償搭乗率

(%

)

Page 23: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 23

ベトナム航空業界

2015年の業界概要

ベトナム民間航空局(CAAV)によれば、2015 年末までに、国内航空搭乗者数は前年比 21.1%増の 2100

万人に達した

ベトナム民間航空局(CAAV)によると、2015 年 10 月末までにベトナムの保有機数は 127 機に達し、平

均機齢は 5.6 年である。その内、自社保有機は 51 機で、総保有機数の約 40%に相当する

国内線航空機市場では、主要航空機会社間で市場シェアの変更が起きた。Vietjet 航空の旅客者数シェア

が 2014 年の 29.6%から 2015 年には 37.0%と大幅に拡大する一方、ベトナム航空の市場シェアは急減

した

ベトナム民間航空局(CAAV)は、国内航空会社の積極的な運送力拡大を踏まえ、国内線航空業界が 2016

年も継続して 2 桁成長すると予測している

ベトナム民間航空局(CAAV)は、2015 年 9 月に、2015 年-2020 年の期間に空港インフラ整備事業に必要

な投資額は 102 億米ドル(約 1.146 兆円)以上であるとの予測を公表した

2015 年にはベトナム空港総公社(ACV)が新規公開し、その調達額は 1.12 兆ドン(約 5600 億円)に

達し、ベトナム航空業界の成長見通しを強く確信する出来事となった

国際航空運送協会(IATA)の予測では、ベトナムは 2014 年-2017 年の期間に国際航空搭乗者数が年率

6.9%、貨物運送量が年率 6.6%増加し、世界で急速に成長している市場の 7 つに入る

注)ベトナム空港総公社(ACV)は 2012 年に、ベトナムの北部、中部と南部の空港運営会社を統合して設

立された国有企業である。国有企業の株式会社への転換を義務付けられた通達 51/2011/NĐ-CP 号に従って、

2015 年 12 月 10 日に IPO を完了し、2016 年 12 月にはホーチミン取引所に上場すると予測される。現在、

ACV は国内に合計 22 空港を所有し、その内、21 空港は既に稼働している。

Page 24: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 24

Vietjet航空が 2011年に就航以来、ベトナムの旅行者の行動に顕著な変化があらわれている

Vietjet 航空の就航以来、ベトナム国内線の旅客輸送量は 2 倍以上増加している。ベトナム航空業界の主要

航空会社はベトナム航空、Vietjet 航空及びジェットスター・パシフィックの 3 社である。Vietjet 航空は 16

年 6 月、まず国内線の旅客輸送実績でベトナム航空を追い抜き、シェア 43.1%を確保し、国内線市場で最

大の航空会社となった。ベトナム航空の市場シェアは次いで 41.3%である。

ベトナムのように一人当たり GDP が世界の平均以下の国では、航空旅行需要は LCC 各社に著しく偏る。

Vietjet 航空が非常に短期間でベトナム航空に追い付けたのも、そうした事象が働いたからである。近年、

ベトナムの中間所得層が増加していることも、2011 年後半の就航以来、Vietjet 航空にまたとない成長機会

をもたらしている。ベトナム国民 9200万人が高い割合で移動手段を自動車・鉄道から飛行機に変えている。

原油価格下落による燃油サーチャージの低下及び LCC 各社の旅客輸送能力拡大は平均航空運賃の低下を促

し、所得が増加したことも加わり、国民の大部分にとって航空運賃が手頃な価格となった。下図から、移動

に航空機を利用する乗客の層が既に定着していて、搭乗者数の増加の一部は初めて航空機を利用した人々で

あることを示唆している。そして、こうした人々こそ Vietjet 航空が狙いを定めている重要な顧客層である。

アジア太平洋航空センター(CAPA)によると、ベトナムの週間国内線輸送力は、2011 年 9 月(Vietjet 航空の

就航日の 2 ヶ月前)の 235,000 席から 2015 年 9 月にはおよそ 490,000 席へと過去 4 年間で 2 倍以上とな

ったが、Vietjet 航空は追加された週間座席総数の 75%を占めている。

急激な景気の停滞により乗客数が減少した 2010 年-2012 年は別として、旅客輸送量全体における航空旅客

シェアは確実に増加している。

図 16: 交通手段別輸送量(百万旅客キロ数27)

27

旅客の総数に移動距離を乗じた値(キロメートル)

出所: ベトナム政府統計局(GENERAL STATISTICS OFFICE of VIET NAM - GSO)

鉄道 自動車 内航路/海上交通 航空

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 25

図 17: ベトナム国内線の週間座席供給数の推移

長期的には、ベトナムの LCC 業界は引き続き Vietjet 航空が主導権を握るものと見込んでいる。ベトナム航

空が経営権を握っているジェットスターは、同航空がフルサービスモデルを指向するだけに、事業規模を拡

大できないでいる。

図 18: ベトナムの格安航空会社(LCC)部門が占める収容力のシェア(座席数の割合%)

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(Centre for Asia Pacific Aviation – CAPA and OAG)

週当たり座席供給数

(単位:

K=千

)

合計

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(Centre for Asia Pacific Aviation – CAPA and OAG)

(国際線) (国内線)

Page 26: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 26

ベトナム航空業界は 2015 年に目覚ましい業績を達成

ベトナム統計総局(GSO)によると、ベトナム航空業界は 2015 年に、国内線航空搭乗者数における好調な

伸びを達成するとともに国内航空貨物量においても、僅かながらも増加を記録した。有償旅客キロ数(RPK

= Revenue Passenger Kilometer)は前年同期比 9.8%増の 310 億旅客キロ、貨物輸送トンキロ数(FTK =

Freight Ton Kilometer)は 2.5%増の 5 億 5600 万トンキロに達した。国内航空搭乗者数は 2100 万に達し、

2014 年比 10%の増加となった。

この国内線航空搭乗者数の堅調な伸びの要因は次の通りである。①2015 年の実質 GDP 成長率は 6.7%、一

人当たりの GDP 成長率は 5.6%を記録。収入増により、時間節約のためベトナムの消費者は移動手段を鉄

道や道路から飛行機に変更する傾向が高まっている。②国内航空会社は引き続き市場シェア拡大を目指し、

主要都市以外の 2 都市間を結ぶための新規就航路線を開設している。③中間所得層が急増していることと国

内観光インフラの改善が進んでいることから、国内観光業が急速に発展している。

外国直接投資(FDI)実行額の記録的な増加を背景に、実質 GDP 成長率は高い伸びを示す:2015 年の

外国直接投資は登録額、実行額共に記録的な高水準に達し、好調な経済成長を支えた。国民 1 人当たり

の GDP 成長率は 5.6%となり、航空旅行需要の増加に寄与した。経済活動の拡大に伴い、ビジネス旅

行需要も増加した。

図 19: ベトナムの実質 GDP 成長率

出所: ベトナム政府統計局(GSO)、当社

Page 27: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 27

図 20: 海外直接投資(FDI)実行額(10 億米ドル)

国内航空会社は市場シェア獲得のために、未就航区間に新路線を継続的に開設している。

ジェットスター・パシフィックは 2015 年に 20 の新路線に就航:ジェットスター・パシフィック

は 2015 年末時点の約 110,000 の週間提供座席数に基づけば、東南アジア地域において座席数で 23

番目に大きな航空会社である。座席数は前年比で 52%増となっている。フライトスケジュールや運

航状況などのデータを提供している OAG 社の情報に基づくと、ジェットスター・パシフィックは

2015 年末時点で 34 路線に就航している。そのうち国内線が 24 路線で国際線が 10 路線である。

また、34 路線のうち 20 路線(国内線 13 路線、国際線 7 路線)が 2015 年に新規開設された路線であ

る。国内線をみると、同社のホーチミン市ハブ空港からは 2015 年に 6 都市に新規就航しているが、

その 6 都市とはチューライ(Chu Lai)、ダラット(Da Lat)、ドンホイ(Dong Hoi)、プレイク(Pleiku)、

クイニョン(Qui Nhon)、トイホア(Tuy Hoa)である。また、首都ハノイからはダラット(Da Lat)とト

イホア(Tuy Hoa)の 2 路線を新規開設した。その他新規 5 路線は主要都市以外の 2 地点を結ぶ路線

で、ヴィン市(Vinh) - ニャチャン(Nha Trang)、ダラット(Da Lat) - フェー(Hue)、ブオンマトゥオ

ット(Buon Ma Thuot) - チューライ(Chu Lai)、ハイフォン(Hai Phong) - タインホア(Thanh Hoa)間

を結んでいる。

国内旅行・観光ブームは航空業界の成長を牽引している。2015 年のベトナム訪問外国人旅行者数が

2014 年の前年割れから、前年同期比 0.9%増へと僅かな改善にとどまる中、国内旅行者数は過去最高の

5,700 万人(前年同期比 48%増)を記録した。ベトナム観光総局によると、2015 年に近年非常に人気

のある国内旅行先となっているフーコック島(Phu Quoc)やダナン市(Da Nang)を訪れた観光客数はそ

れぞれ前年同期比 48%、34%増加した。

出所: ベトナム政府統計局(GSO)、当社

Page 28: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 28

図 21: 近年国内旅行客数が増大

ベトナムの主要航空会社は依然として世界の同業他社より高い交渉力を持っている

ベトナムの航空業界は世界の同業他社より魅力的だと当社では考えている。ベトナムには国内航空会社が 3

社しか存在せず、乗客はその内の 1 社に搭乗する以外の選択肢を持たないため、乗客の価格交渉力は比較的

弱い。そして、航空便以外の代替交通手段も、値段が高い上に交通インフラの未整備からあまり発達してい

ない状況にある。厳格なライセンス要件及び高い資本コストも参入障壁となって、新たな航空会社の速やか

な参入を防いでもいる。しかし、ベトナムの航空業界は依然として規模が小さく、より大規模な市場の競合

相手と比べて、航空機メーカーとの交渉力では劣る。

規模の経済性により、大きな航空会社は規模の劣る同業他社より優位な立場にある。規模の経済性のメリ

ットを活かして航空券の価格を引き下げ、強い販売力を持つ一方で、航空機メーカーやリース会社との価格

交渉力は高くなり、顧客に対しては飛行路線や飛行時間の選択肢を広げることもできる。そうした面で、

Vietjet 航空とベトナム航空は競争上の見地からは非常に有利な立場にあることがいえる。

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

(単位:百万人)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 29

競争状況

リスク: 中

・撤退障壁。航空業界の固定

費負担は非常に重い。通常長

期ローンを抱えていることか

ら、容易には業界から退場で

きない。

・乗客の他社への乗り換えコ

ストが低いため、長期的には

どの航空会社も独占的な市場

シェアを維持できない。

・最近では、域内の国家間で

締結されるオープンスカイ協

定で、国際線の競争が激化し

ている。

・ベトナムの国内航空業界は

まだ発展段階にあり、多くの

未就航路線や十分に輸送量を

確保できていない路線が残

り、航空各社に成長の余地を

与えている。そうした現況に

よって競争の激化が軽減され

ている。

新規参入の脅威

リスク: 中

・既存各社はコスト面で非常

に優位な立場に立っている。

航空業界の立ち上げ段階から

利益を確保するには多大な資

本と強い顧客基盤が必要であ

る。

・顧客は評判が良い航空会社

しか選ばない傾向がある。航

空券代が高価なので顧客は信

用できるブランドを選択す

る。

・航空業界参入には飛行機の

所有と飛行経験を要求する。

この条件も新規参入の脅威を

減少させている。

・ベトナムでは航空会社の設

立のための許認可手続きが制

限されている。

・航空会社の設立にかかる莫

大な資金と時間が、そもそも

参入障壁となっている。

代替サービスの脅威

リスク: 中

・顧客は目的地に向かう移動

手段として自動車・バス・列

車・船などに変更できる。変

更にはコストがかからず、移

動時間だけ増加する。

・移動時間面では航空機に勝

る交通手段は他にない。利便

性とサービス面でも優位に

ある。但し、顧客の移動距離

が近距離の場合では、コスト

などの様々な理由で他の交

通手段を選ぶこともあり、航

空会社のリスク要因となる。

・LCC との価格競争面では、

ベトナムのインフラ未整備

が、列車・バス・内航船利用

の制約条件となる。価格差が

あまりない場合、顧客は時間

を節約のめに、LCC を選ぶ。

供給会社の価格交渉力

リスク: 中

・主要な供給会社は航空機メ

ーカーである。この業界で

は、使用機材面では高度に標

準化されている。航空会社は

アメニティーでしか差別化

できない。機材そのものは同

じである。航空機メーカーの

何社かが、環境に優しい機種

の製造に挑戦している。

・航空機メーカーにとって、

航空会社は唯一の顧客なの

で、彼らにとって航空会社の

経営状態は非常に重要であ

る。よって、航空会社にとっ

て、供給会社の価格交渉力は

それほどの脅威ではない。

顧客の価格交渉力

リスク: 低

・航空業界では、顧客を 2 分

類できる。まず個人客である。

彼らが航空券を購入するの

は、個人利用または業務利用

である。この区分は特に多様

である。彼らは特定の航空会

社経由または第二の顧客区分

である旅行代理店やウェブサ

イトを通じて航空券を購入す

る。この第二の顧客区分は航

空会社と乗客を媒介する役割

を果たしている。彼らは複数

の航空会社と取引して、乗客

に最も良い便を提供する。こ

の 2 つの区分では、企業より

個人の数が圧倒的に多い。

・ベトナムの主要国内航空会

社は 3 社のみであるが、個人

客や旅行代理店を含めた顧客

数は多い。この現状では、顧

客側の価格交渉力は脅威とは

なり得ない。

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 30

見通し: GDP の持続的成長がベトナムの航空業界の成長を加速する

ベトナムの航空業界(貨物を除く)は 2016 年から 2022 年の期間は 2 桁成長を遂げると予想している。その

理由は次の通りである。①国民の可処分所得増により、顧客が電車やバスから航空機に乗り換えていること、

②他のアジアの国々と比べ、ベトナム国内でまだ LCC が普及していないこと、③航空業界のインフラの急

速な改善に比べ、鉄道と道路のインフラ整備が遅れており、LCC は電車、バスから顧客を奪う絶好の機会

を得ていること、④ベトナムの観光ブームが更に飛行機旅行需要を加速すること。

(1) 今後も可処分所得の強い伸びが期待され、海外旅行向け到着便、出発便双方の航空需要を刺激する。ベ

トナム統計総局によると、2016 年から 2020 年のベトナムの実質 GDP 成長率は、近年の海外直接投資の急

速な流入に後押しされ、平均で 6.5%~7.0%になると予測されている。こうしたベトナムへの海外直接投資

の流入は一過性のものではなく、次の理由から持続すると見込まれる。①中国の平均賃金が上昇し、ベトナ

ムなど他の発展途上国と比べると競争力が低下していること、②多くの FTA(自由貿易協定)が締結され、

ここ数年のうちに中国からベトナムへの工場移転が加速すると思われることである。また、FTA の締結と海

外直接投資の増加は、ビジネス目的の到着便、出発便双方の航空需要も直接刺激する。

(2) アジアの他の国々と比べると、ベトナムの LCC はまだ普及していない。国内線でも国際線でもまだ多

くの未就航区間が残り、LCC が成長する余地がまだ多くある。特に国際線は輸送能力不足により LCC の普

及率は非常に低い。

図 22: アジア各国における格安航空会社(LCC)の市場シェア

(3) 航空業界のインフラ整備が急速に進んでいるのに対し、鉄道と道路のインフラ整備は遅れている。この

差から交通手段間の価格差が徐々に縮まっているが、移動時間の差は埋められずに残る。LCC はこうした

状況を背景に自動車やバス等の他の移動代替手段から更に顧客を獲得する機会に恵まれている。実際に、全

国の小規模空港の整備・拡張は、小都市間を結ぶ路線の効率性を高め、航空券代の引下げを可能としている。

所得水準が向上し、航空料金が下がっていることで、時間の節約・安全性面やサービスの質を勘案し、より

多くの人々がバス・鉄道の利用から LCC 利用へ切り替えると予測される。

市場シェア

(%)

(国際線) (国内線)

出所: SAP 産業別分析レポート(2015 年 9 月 1-7 日間の供給座席数換算)、ボーイング社、IMF

左からインドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポール

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 31

図 23: 2016 年第 1 四半期における交通手段別輸送量増加率(百万旅客キロ数28)

図 24: 国内線旅客者数の伸び(百万旅客キロ数29)

28旅客の総数に移動距離を乗じた値(キロメートル)

29旅客の総数に移動距離を乗じた値(キロメートル)

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

Page 32: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 32

(4) 道路・鉄道のインフラ整備が遅々として進まないのに対して、航空業界のインフラ整備は多くの大規模

プロジェクトが政府の許認可を受け、急速に改善されている。国全体の輸送量に占める航空輸送の割合は

2000 年の 13%から 2015 年には 21%へ上昇し、今後数年は引き続き顕著な伸びが予測されている。ベトナ

ム政府は空港関連インフラの整備・改善に意欲的な計画を持ち、ベトナム空港管理公社(ACV)の株式を一

部売り出すことによって、民営化を進めるのも、新空港建設のための資金調達の一環である。BMI 社の 2015

年の交通運輸業関連報告書によると、フランスの大手空港運営会社である ADP(Aeroports de Paris)社が関

心を示しているロンタイン(Long Thanh)空港建設には 158 億米ドル30(約 1.785 兆円)の投資資金が必要とさ

れている。この他にも、2018 年の使用開始を目指しているカムラン(Cam Ranh)国際空港のターミナルを追

加するプロジェクトでは、4 兆ドン(約 205 億円)の資金が必要とされている。さらに、カットビー(Cat Bi)

国際空港及びフーカット(Phu Cat)空港の新しいターミナルビル建設も 2015 年 1 月に着工されている。

図 25: ここ数年内に実行が予定されている航空輸送インフラ整備計画

*Air transport master plan (空港整備基本計画) 図 25-1 参照

*Key projects (主要プロジェクト) 図 25-2 参照

30

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空、Mink Khue Law Company Limited、フレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務所、

ベトナム民間航空政策局(Civil Aviation Administration of Vietnam - CAAV)、アジア太平洋航空センターCentre for Asia Pacific

Aviation – CAPA)

既存空港

新規建設予定空港

既存空港

改修による拡張予定の空港

新規建設予定空港

Page 33: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 33

図 25-1 空港整備基本計画

2014 年 2020 年 2030 年

空港の数 22 26 26-27

乗客処理能力(百万人) 5131

62-10632

13233

貨物処理能力(百万トン) 0.87

(脚注 31 参照)

2.00-4.00

(脚注 32 参照)

3.20

(脚注 33 参照)

図 25-2 主要プロジェクト

Noi Bai International

Airport

ベトナムで 2 番目に大きな空港で北部への入口

国際線ターミナル T2 が 2014 年 12 月に営業開始。年間乗客処理能力 1000 万人

国内線ターミナル T1の乗客処理能力を 2018年中旬までに 900万人から 1500万人

に引き上げる改修案が 2015 年 12 月に公表

Cat Bi International Airport Hai Phong (ハイフォン)地区及び周辺の省で最大の空港だが、現在滑走路は 1 本の

2016 年第 2 四半期までに 2 つのターミナルを新設し、年間乗客処理能力は 400-500

万人に改善

Da Nang International

Airport

Da Nang (ダナン)地区及び周辺の省で最大の空港で、現在滑走路は 2 本、国内線タ

ーミナル 1 つ

2 つ目のターミナルが 2020 年に完成予定であり、これにより年間乗客処理能力は

600 万人から 1000 万人に改善

Cam Ranh International

Airport

(ホーチミン市近郊のビーチリゾート)ニャチャン(Nha Trang)やその近郊への玄関

口。ベトナム第 4 の規模を誇る

2020 年までに 2 本目の滑走路と新しいターミナルを建設予定。完成すれば、現在

の年間乗客処理能力 160 万人が 260 万人に改善

Tan Son Nhat

International Airport

ベトナム最大かつ国際線利用客の玄関口

2.83 億米ドル(約 322 億円)をかけて改修し、2020 年までに年間乗客処理能力 2000

万人から 2500 万人に改善予定

Long Thanh International

Airport

ホーチミン市に建設される新しい国際空港。2025 年までに営業開始予定。国際民

間航空機関(International Civil Aviation Organization – ICAO に基準にそって 4 階建

て)

建設工事の第 1 フェーズ完成時の年間乗客処理能力 2500 万人。計画の第 3 フェー

ズまで完了すると年間 1 億人の乗客処理能力をもつ

第 1 フェーズの投資額は 54.5 億米ドル(約 6200 億円)、総投資額は 160 億米ドル(約

1 兆 8200 億円)

31

搭乗者数、貨物処理能力はベトナム空港総公社(Airports Corporation of Vietnam - ACV)の 2014 年報告書による 32

2013 年 2 月 25 日の政府決議(No. 355/QD-TTg)に基づき、首相は 2030 年を視野に入れた 2020 年までの航空輸送インフラ整備計画を承認してい

る。 33

空港整備基本計画に基づく。計画そのものは、2009 年 1 月 6 日の決議 21(ベトナムの航空交通インフラの現状と急を要する整備事項(2014 年) フ

レッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務所)によって、首相の承認を得ている。

Page 34: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 34

図 26: 主要都市間移動では空の便が最も効率的な交通手段34

移動手段

ホーチミン市―ハノイ市 ホーチミン市―ダナン市

時間

(hrs)

運賃

(VND)

運賃

(YEN)

時間

(hrs)

運賃

(VND)

運賃

(YEN)

航空 2:05 961,000 4,805 1:20 615,000 3,075

バス 35:00 831,385 4,157 15:30 405,458 2,027

鉄道 34:00 1,066,278 5,331 17:00 616,833 3,084

(5) ベトナムの旅行・観光市場の近年のブームは航空業界の成長の柱になると見込まれる。世界観光機関

(UNWTO)によると、ベトナムを訪れる外国人観光客数は過去 10 年間に年率 8.9%の伸びを示し、世界平

均の 3.4%を大幅に上回った。ここ 5 年間で捉えると、ベトナムを行き来した外国人搭乗者数は 2010 年か

ら 2014 年まで年平均成長率 11.2%で増加し、アジア諸国間で 2 番目に速いペースだった。世界人口の 50%

がホーチミン市から 5.5 時間飛行の半径内に住んでいることを踏まえれば、今後もベトナムは国際観光旅行

客を惹きつけるのに絶好の場所に位置していると言える。

図 27: 国際線搭乗者数(2011-2015)

34

(1)航空運賃は 16 年 2 月 1 日時点の 3 月 1 日便と 4 月 1 日便の平均

出所: Vietjet 航空、SAP 産業別分析レポート、IMF

出所: SAP 産業別分析レポート、ベトナム民間航空政策局(CAAV)

(単位:百万人)

Page 35: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 35

図 28: 国別インバウンド35数とアウトバンド36数の伸び

(6) 国際観光旅行客の行き来に加えて、国内観光客の航空旅行需要も 2016 年に強い伸びが見込まれる。ベ

トナム観光総局によると、2016 年第 1 四半期に国内旅行客が国内の観光地にある空港に着陸した回数は

1,870 万回に達し、前年同期比 21%と大幅に増加した。この国内観光ブームに乗り遅れまいと、Vietjet 航空、

ベトナム航空及びジェットスター・パシフィック各社はフーコック島(Phu Quoc)やダナン市(Da Nang)等の

人気の非常に高い観光地へ降り立つ便数を増強し続けている。

35

インバウンドとは外国人旅行客の入国数 36

アウトバウンドとは自国民旅行客の出国数

出所: SAP 産業別分析レポート、ベトナム民間航空政策局(CAAV)

インバウンド アウトバウンド

Page 36: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 36

企業概要

業種: 格安航空会社 (Low cost carrier)

売上高増加の主要因: ベトナム国民一人当たりの可処分所得、航空旅行普及率

費用の主項目: 燃料費、航空機リース・メンテナンス費用、労働費、地上整備費

主要リスク: 原油価格の変動、国際的格安航空会社の参入

主要顧客: ベトナム人航空旅行者

代表者: グエン・タイン・ハー(会長)

(Mdm. Nguyen Thanh Ha) (Chairwoman)

グエン・ティ・フォン・タオ(副会長兼 CEO)

(Mdm. Nguyen Thi Phuong Thao) (Vice Chairwoman & CEO)

本社: ハノイ市、バ・ディン区、コンヴィ地区、キムマトゥオン通り、ニャットアンビ

ル、7 階 (Floor 7, Nhat An building, Kim Ma Thuong Street, Cong Vi district,

Ba Dinh, Ha Noi)

ウェブサイト: http://www.vietjetair.com

代表電話: 84-(8) 35 471 866

主要経営指標

売上構成比(%)

旅客運賃収入

付帯サービス収

その他収入

出所: Vietjet 航空、当社

*1. RASK (Revenue per Available Seat Kilometer) 有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入

*2. CASK (Cost Per Available Seat Kilometer) 有効座席キロ数当たりの営業経費

旅客運賃収入(2013 年-2015 年) 単位: 10 億 VND

総搭乗客数(2013 年-2015 年) RASK*1 – CASK

*2

3,169 VND bn =約 158 億円、5,742VND bn =約 287 億円、8,543 VND bn =約 427 億円

0.09 US cents = 約 0.10 円、0.39 US cents =約 0.44 円、0.44 US cents =約 0.50

Page 37: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 37

Vietjet 航空概観:難局の洗礼を受ける中、駆け足で業界のリーダー企業に成長

Vietjet 航空は厳しい環境下にベトナム航空業界に参入

2011 年 12 月 2 日、新しい世代に属する民間航空会社 Vietjet 航空はベトナム全土で航空券の発券を開始、

ベトナム航空が支配するベトナム航空業界に正式参入した。しかし、参入時期は航空業界が国際経済面にお

いても、国内経済面においても多くの難題に直面している時期だった。そうした難題には、①国内経済危機

による実質 GDP 成長率の減速、②人々が一般的に旅行、特に航空旅行を思いとどまる高いインフレ率、③

LCC 各社にとってコスト管理を困難にさせる原油価格の高騰等があった。

図 29: ベトナムの実質経済成長率

図 30: ベトナムの年間インフレ率

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

Vietjet 航空初フライト

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

Vietjet 航空初フライト

Page 38: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 38

そんな困難な状況下にありながら、Vietjet 航空は営業開始 2 年目には黒字化

2011 年 12 月にホーチミン市からハノイへの最初の商業フライトから僅か 2 年で、Vietjet 航空は国内線航

空市場シェアの 20%を確保し、ベトナム LCC セグメントに参入した先駆者であったジェットスターを追い

抜き、ベトナム最大の格安航空会社(LCC)となった。(2013年8月末時点、アジア太平洋航空センター(CAPA)

調べ)。2013 年年頭には、Airbus 社と 99 機、総額 91 億米ドル(約 1.028 兆円37)の航空機購入契約を締結し、

国内外の航空業界を驚かせた。この契約に基づく最初の航空機は 2014 年 11 月末に引き渡された。2016 年

6 月には Vietjet 航空の国内線市場シェアは 43.1%を記録し、ついにベトナム航空(市場シェア 41.3%)を上回

りベトナム最大の航空会社となった。同社は現在、17 の国際線と 36 の国内線に就航し、合計 38 機の航空

機(AirbusA320 型 33 機と A321 型 5 機)を運航している。

図 31: Vietjet 航空の初フライトは原油価格が高騰していたとき

37

1USD=113YEN

Vietjet 航空初フライト 営業開始 2 年で黒字

Vietjet 航空は原油コストが上昇していたときも市場シェアと収

益を拡大してきた

出所: 当社

Page 39: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 39

図 32: Vietjet 航空のこれまでの歩み(図 32-1 参照)

図 32-1: Vietjet 航空のこれまでの歩み(和訳)

表彰 年度 主要業績

2007 会社設立とともに、航空運送事業者免許

(Air Operator’s Certificate – AOC)を取得

2011 初の営業飛行はホーチミン市からハノイ

やダナンへ

ベトナム Economic Times 誌から、思いや

りのあるサービスと施策に対して、ベス

ト・エアライン賞を受賞

2012

BID(Business Initiative Directions/ビジ

ネス イニシアティブ ディレクション)社

からビジネス品質について「インターナシ

ョナル・スター・アワード」を受賞

2013 初めての国際線がホーチミン市とタ

イのバンコク間を飛行

300 万人目の搭乗客を祝うセレモニ

ーを実施

Airbus 社から機体 100 機を購入する

契約を締結

Anphabe & Nielsen 社から、2014 年

度観光業界における「最も働きがいの

ある会社」に選定される

ベトナム国際知的財産権協会からブ

ランド知名度トップテンの 1 社に選

ばれる

2014 年末までに国内線シェア 29.6%を達成

アジア太平洋観光協会(The Pacific

Asia Travel Association - PATA)から

独創的なマーケットキャンペーンに

対して金賞を授与

TTG Travel Awardで2015年度のアジ

アベスト LLC に選定される

ベトナム首相から、目覚ましい功績を

表彰される

2015 1000 万人目の搭乗客を祝うセレモニ

ーを実施

2015 年の最終週に国内線シェア 43%

を達成

ベトナムのみならず、東南アジアで成功裏に格安航空会社の営業展開モデルを確立

出所: Vietjet 航空

Page 40: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 40

図 33: Vietjet 航空は 2016 年 6 月末において、国内線シェアではベトナム最大の航空会社となる

図 34: 2015 年 Vietjet 航空売上高(国内線からの旅客運賃収入が大半を占める)38

38

売上高から機材売却売上を控除

出所: 2016 年 Vietjet 航空概要(アジア太平洋航空センター – CAPA)

ベトナム航空 その他

出所: 当社、Vietjet 航空

国内線 国際線 チャーター便

その他 付帯サービス収入

Page 41: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 41

図 35: 30%を超える国内線マーケットシェアを達成するまでに要した期間

図 36: 売上高及び利益の推移(2013 年-2015 年 単位: 10 億 VND)39

39

売上高に機材売却売上を含む

出所: Vietjet 航空

(1) LCC に転換来の期間

(2) Indigo=インドの LCC、Air Asia=マレーシアの LCC、Cebu Pacific=フィリピンの LCC

出所: Vietjet 航空

2013 年: 3.793 兆 VND=約 190 億円、690 億 VND=約 3 億円、320 億 VND=約 3 億円

2014 年: 8.706 兆 VND=約 435 億円、5,880 億 VND=約 29 億円、3,600 億 VND=約 18 億円

2015 年: 19.846 兆 VND=約 992 億円、1.597 兆 VND=約 80 億円、1.170 兆 VND=約 59 億円

売上高

営業利益

純利益

Page 42: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 42

図 37: 調整済40EBITDAR

41利益率(2013 年-2015 年)

図 38: 搭乗者数、ASK42、RPK

43(2013-2015)

40

売上高から機材売却売上を控除 41

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, Amortization, and Rent 42

Available Seat Kilometer = 有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する 43

Revenue Passenger Kilometers = 有償旅客キロ数◆料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)

出所: Vietjet 航空

出所: Vietjet 航空

総搭乗客数(単位:1000 人)

ASK(単位:100 万)

RPK(単位:100 万)

Page 43: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 43

図 39: 有償搭乗率

Vietjet 航空の経営陣は多様な経歴を誇る

会長-グエン・タイン・ハー氏 (Chairwoman – Mdm Nguyen Thanh Ha): Vietjet 航空に入社する前は

ベトナム民間航空局(CAAV)の副局長の重責を担っていた。CAAV 入社前はベトナム航空の企画投資部門

の責任者であった。2007 年に Vietjet 航空の取締役会会長に就任した。

副会長兼 CEO-グエン・ティ・フォン・タオ氏 (Vice Chairwoman and CEO – Mdm Nguyen Thi Phuong

Thao): 2007 年に取締役会副会長に就任し、Vietjet 航空の現 CEO である。また、同氏は HD Bank (Ho

Chi Minh City Development Joint Stock Bank)の副会長でもある。

副会長-グエン・タイン・フン博士 (Vice chairman – Dr Nguyen Thanh Hung): 2007 年 7 月から取

締役副会長に就任。同氏はまた、Sovico ホールディングスの創設者兼会長である。

取締役社長・リュウ・ドゥック・カイン氏 (Managing director – Mr Luu Duc Khanh): 2011 年に取

締役社長に就任した。同氏はまた、HD 銀行の副会長でありベトナム証券投資ファンド(Vietnam

Securities Investment Fund)の代表取締役会長でもある。

出所: Vietjet 航空

Page 44: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 44

Vietjet 航空の保有機材の機齢は若く、50 以上の路線を運航している

Vietjet 航空の保有機数は今後 10 年間で急拡大する見込み

2013 年年頭に、Vietjet 航空はエアバス社と 99 機、総額 91 億米ドル(約 1.028 兆円 )の航空機購入契約を締

結し、国内外の航空業界を驚かせた。この契約に基づく新鋭機の配備は 2014 年から 2022 年が予定されて

いる。この契約に基づく最初の新鋭機は 2014 年 11 月末に引き渡された。2016 年上半期現在、Vietjet 航空

は機材 38 機を保有し、その平均機齢は約 3.3 年で、ベトナム航空の平均 5.3 年と比べても非常に若い(通常

航空機は 25 年まで運航できる)。同社の計画によると、2016 年の下半期から 2019 年末までに新たに 53 機

の Airbus と 4 機のボーイングが追加購入され、保有機材合計は 78 機まで拡大する(同期間中にリース中の

機材 17 機はリース会社に返却される)。2020 年から 2023 年には更に 49 機の Airbus と 96 機のボーイング

が引き渡される予定だが、これらの機材の引き渡し時期は未定である。

Vietjet 航空は 2016 年 5 月に、航空機メーカーのボーイング社と 100 機のボーイング 737MAX200 をメーカ

ー側の希望価格の総額約 113 億米ドル(約 1.276 兆円)44で発注し、顧客輸送力で東南アジアにおいて最も急

速に成長している LCC の 1 社となった。最初のボーイング 4 機は 2019 年までに、残りの 96 機は 2023 年

末までに引き渡される予定である。しかし、2019 年以降の正確な引渡しスケジュールは確定していない。

2016 年 9 月 6 日には、2017 年から 2020 年の間に 20 機の AirbusA321 型機を 23.9 億米ドル(約 2,700 億円)

で購入する契約を締結した。

確定的には、Vietjet 航空は 2016 年 6 月 30 日から 2019 年末までに 57 機の新鋭機を配備し、同期間に 17

機をリース会社に返却し、保有機材総数は 78 機となる。

図 40: Vietjet 航空の保有機材(2016 年 6 月末)

機種 機数 搭乗可能人数 備考

Airbus A320 33 エコノミー 180 人 Vietjet 航空が自己保有してい

るのは A320 を 1 機のみ。残り

の機材は全てオペレーティン

グ・リースで調達。

Airbus A321 5 エコノミー 230 人

合計 38

44

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空

Page 45: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 45

図 41: Vietjet 航空にとって最大の LCC 競合相手である Jetstar Pacific の保有機材(2016 年 3 月 10 日)

機種 稼働中 不稼働中 新規注文中45

Airbus A320-200 10 0 4

Airbus A321-200 2 0 0

合計 12 0 4

Vietjet 航空の機材(2016 年 6 月 30 日)

機種 稼働中 不稼働中 新規注文中46

Airbus A320-200 33

102 Airbus A321-200 5

Airbus A320 neos

Airbus A321 neos

737 Max 200 100

合計 38 202

これまでの Vietjet 航空の路線網の拡大は殆が新規国内線就航拡大による

Vietjet 航空は 2013 年国際線参入来、国際線でも新路線を就航させているが、同社の成長の圧倒的部分は国

内線の拡大による。総搭乗者数は 2014 年の 560 万人から 2015 年は 930 万人まで大幅に増加したが、2015

年の総搭乗者数の内 820 万人は国内線旅客である。Vietjet 航空によると、同社は現在、36 の国内線と 17

の国際線で就航している。アジア太平洋航空センター(CAPA)の調べによると、2016 年 4 月時点でホーチミ

ン市と首都ハノイを結ぶ路線が同社の国内線総座席数の 23%、全体総座席の 21%を占めるドル箱路線であ

る。

図 42: Vietjet 航空機材導入予定

機種 2016 2017 2018 2019 2020-2023

A320 ceo 4 49機の Airbusが

配備予定 A321 ceo 7 11 10 3

A320 neo 2 4

A321 neo 5 5 8

737 Max 200 4 96

合計 11 16 17 19 145

45

新規注文中にはリース会社とのリース契約機を含む 46

新規注文中にはリース会社とのリース契約機を含む

出所: アジア太平洋航空センター (CAPA)機材データベース

出所: Vietjet 航空

Page 46: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 46

図 43: Veitjet 航空の国内線座席供給数順位(2016 年 4 月 11 日 – 4 月 17 日)

順位 出発地 到着地 週間座席数 増加率/年

1 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport HAN

Hanoi Noi Bai Airport 59,856 11%

2 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport DAD Da Nang Airport 32,760 49%

3 HAN Hanoi Noi Bai Airport DAD Da Nang Airport 18,000 0%

4 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport HPH

Hai Phong Cat Bi Airport 17,100 70%

5 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport HUI

Hue Phu Bai Airport 12,600 25%

6 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport VII Vinh City Airport 12,600 67%

7 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport PQC

Phu Quoc Int. Airport 12,600 67%

8 HAN Hanoi Noi Bai Airport CXR

Nha Trang Cam Ranh Airport 12,240 143%

9 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport CXR

Nha Trang Cam Ranh Airport 12,060 139%

10 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport THD Thanh Hoa Airport 8,232 63%

11 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport VCL

Chu Lai Int. Airport 6,480 n/a

12 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport UIH

Qui Nhon Phu Cat Airport 5,040 100%

13 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport DLI

Da Lat Lien Khuong Airport 5,040 100%

14 HAN Hanoi Noi Bai Airport PQC

Phu Quoc Int. Airport 5,040 100%

15 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport PXU Pleiku Airport 5,040 n/a

16 HAN Hanoi Noi Bai Airport DLI

Da Lat Lien Khuong Airport 5,040 100%

17 HAN Hanoi Noi Bai Airport BMV

Buon Ma Thout Airport 3,960 57%

18 DAD Da Nang Airport HPH Hai Phong Cat Bi Airport 2,520 n/a

19 DAD Da Nang Airport VCA Can Tho Airport 2,520 75%

20 VII Vinh City Airport BMV Buon Ma Thout Airport 2,520 n/a

21 VII Vinh City Airport DLI Da Lat Lien Khuong Airport 2,520 75%

22 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport TBB Tuy Hoa Airport 2,520 n/a

23 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport BMV

Buon Ma Thout Airport 2,520 0%

24 HAN Hanoi Noi Bai Airport UIH

Qui Nhon Phu Cat Airport 2,520 n/a

25 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport VDH Dong Hoi Airport 2,520 n/a

26 HAN Hanoi Noi Bai Airport VCA Can Tho Airport 2,520 0%

27 HAN Hanoi Noi Bai Airport PXU Pleiku Airport 2,520 n/a

28 HAN Hanoi Noi Bai Airport VCL

Chu Lai Int. Airport 2,520 n/a

29 HPH Hai Phong Cat Bi Airport CXR

Nha Trang Cam Ranh Airport 1,800 n/a

30 HPH Hai Phong Cat Bi Airport PXU Pleiku Airport 1,440 n/a

31 VII Vinh City Airport PXU Pleiku Airport 1,080 n/a

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(CAPA and OAG)

Page 47: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 47

図 44: Veitjet 航空の国際線座席供給数順位(2016 年 4 月 11 日 – 4 月 17 日)

順位 出発地 到着地 週間座席数 増加率/年

1 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport SIN

Singapore Changi Airport 5,040 100%

2 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport BKK

Bangkok Suvarnabhumi Airport

5,040 0%

3 SGN Hanoi Noi Bai Airport ICN

Seoul Incheon Int. Airport 2,520 n/a

4 HAN Hanoi Noi Bai Airport ICN

Seoul Incheon Int. Airport 2,520 0%

5 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport TPE

Taipei Taoyuan Int. Airport 2,520 40%

6 HAN Hanoi Noi Bai Airport BKK

Bangkok Suvarnabhumi Airport

2,520 0%

7 SGN Ho Chi Minh City Tan Son Nhat Airport RGN

Yangon Mingaladon Airport

1,800 n/a

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(CAPA and OAG)

Page 48: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 48

Vietjet 航空の成長戦略: 国内線が引き続き今後 2-3 年の主要成長原動力

コスト競争力の維持が最優先事項

保有機の運航効率性、就航路線網の最適化及びマーケティングと販売効率性が同社の経営陣がかじ取りでき

る 3 つの主要な管理指標である。

保有機の効率性: Vietjet 航空は比較的機齢の若い航空機を 1 機種で揃えている。16 年 6 月 30 日時点

で同社の保有機の約 87%が AirbusA320 型機であるが、実際の機数では AirbusA320 型機を 33 機、A321

型機を 5 機保有している。機種を揃えることにより、まず訓練やメンテナンスのコストを下げることが

できることに加え、保守管理の複雑性を軽減するのに役立っている。次に、燃費効率がよい機齢の若い

航空機を使用することで、同社のコスト削減能力はより向上している。Vietjet 航空の保有機の平均機齢

は 2016 年上半期時点において 3.3 年で、世界の同業他社の平均機齢より比較的若い。3 番目に同社発注

済みの 102 機の Airbus 機の内、73 機が既存機よりさらに 15%燃費効率が良いとされる A320Neo 型機

と A321Neo 型機が占める。加えて、ボーイングに発注した最新の 737 max 200 ジェット 100 機も、燃

費効率をさらに向上させることに貢献すると見込まれている。しかし、航空機メーカー2 社から異なる

新機種を導入することは、運航面、特にメンテナンス・修理及びオーバーホール(分解整備)面で複雑

性を増大させることにはなるであろう。

図 45: 平均機齢47

就航路線網の最適化: Vietjet 航空の国内市場戦略は、現在需要に見合う座席数を提供していない路線

及びまだ就航していない短距離路線(図 59 をご参照)へのフライト数を拡大することである。目的地

としては大規模なハブ空港ではなく、混雑を回避できる小規模空港を選択している。そうすることで、

航空機のターンアラウンドタイム(turnaround time=到着してから再び離陸するのにかかる時間)や遅

延を減らすことができ、航空機のブロック時間(block hours=航空機が離陸のために、当該機のドアを

閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間)の増加を支える。ただ、短距離路線は、離

陸と着陸の頻度が高まることから、逆に航空機のブロック時間や使用効率を悪化させるため、如何に適

切なバランスを取るかが重要となる。

47

原則として 2014 年数値。例外:Indigo (2015 年 3 月 31 日)、Wizz Air (2015 年 3 月 31 日)、Ryanair (2015 年 3 月 31 日)、Easy Jet (2015 年 9

月 30 日)、Vietjet 航空 (2016 年上半期)

出所: SAP 産業別分析レポート、Vietjet 航空社

Page 49: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 49

図 46: 主要格安航空(LCC)の機材効率性(航行時間48)

マーケティング・販売チャネル及び労働コスト: Vietjet 航空は他社より安い運賃を提示しているため、

航空券販売のためのマーケティング活動はそれほどかからないと見込んでいる。航空券の殆どはインタ

ーネット経由で直接販売され、旅行代理店を通じた場合の販売手数料の節約を可能としている。また、

Vietjet 航空は地域の同業他社に比べて人件費コストが低く抑えられている。これは航空機 1 機当たりの

従業員数が少なく、アジアの他の国々よりベトナムの労働コストが低いからである。

図 47: 販売チャネル別予約割合

48航空機が飛行の目的のために、当該機の動力を用いて動き出した時点から着陸後静止するまでの時間をいう

出所: Vietjet 航空 2015 年 12 月データ、その他は SAP 産業別分析レポートの 2014 年度データ

出所: Vietjet 航空

Vietjet 航空予約サイト(ネッ

ト) 航空券取扱いサイト(ネット)

旅行代理店(ネット)

その他(国際搭乗券発券システム、コールセンター、その他販売業者)

Page 50: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 50

図 48: 格安航空会社(LCC)各社の中で単位あたり労働コストは低水準(USD cents/ASK49

)

図 49: 格安航空会社(LCC)各社の中で販売経費は低水準(USD cents/ASK)

49 ASK = available seat kilometer: 有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する

出所: Vietjet 航空 2015 年 12 月データ、その他は SAP 産業別分析レポートの 2014 年度データ

出所: Vietjet 航空 2015 年 12 月データ、その他は SAP 産業別分析レポートの 2014 年度データ

Page 51: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 51

図 50: 格安航空会社(LCC)各社の中で空港使用料は最も低い(USD cents/ASK)

Vietjet 航空の空港使用料が平均を下回っているのは、ベトナム政府が国内の航空会社を支援するために制度

的に空港使用料を引き下げているからである。ベトナム空港総公社(ACV)によれば、現在の国内線ターミ

ナルの離発着料は、国際線ターミナルの 34%である。これは同地域の他国の国内線ターミナルの使用料が

国際線の 40-60%であるのを大きく下回っている。同様に、国内線ターミナルの空港サービス料は、国際線

ターミナルの 12%-15%であり、同地域他国の国内線ターミナルの空港サービス料が国際線ターミナルの

40-60%であるのを大幅に下回っている(ベトナム空港総公社(ACV)調べ)。2016 年 6 月には、ACV 社が

航空インフラへの投資増を目的としてベトナム交通運輸省(Ministry of Transport=MOT)に対して、2017

年 1 月 1 日から空港サービス料を 33%引き上げ、更に国内線ターミナルの離発着料を国際線ターミナルの

50%に値上げすることを提案している。しかし、これまでのところベトナム交通運輸省(MOT)から料金

引き上げ提案に対する正式な回答はない。ベトナム交通運輸省(MOT)は依然として空港関係諸費の引き

上げに慎重姿勢を崩していないが、値上げされれば Vietjet 航空の営業総利益率、または Vietjet 航空が値上

げ分をそのまま顧客の航空券代に転嫁すれば搭乗者数に影響が出ることに留意が必要である。

出所: Vietjet 航空 2015 年 12 月データ、その他は SAP 産業別分析レポートの 2014 年度データ

Page 52: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 52

図 51: Vietjet 航空の燃料費を除く CASK50

(USD cents/ASK51

)は世界的にも低水準

50

CASK (Cost Per Available Seat Kilometer) 有効座席キロ数当たりの営業経費 51

ASK = available seat kilometer: 有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する

出所: Vietjet 航空 2015 年 12 月データ、その他は SAP 産業別分析レポートの 2014 年度データ

Page 53: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 53

Vietjet 航空は引き続き中期的には国内航空旅行ブームの恩恵を受けられるが、市場シェアは横ば

いとなる見込み

アジア太平洋航空センター(CAPA)によると、2015 年末のベトナム航空の国内線市場シェアは、2014 年

時の 56.0%から 47.1%に激減した。一方で、Vietjet 航空の市場シェアは 14 年の僅か 29.6%から 37.1%まで

上昇した。2011 年の創業以来、2016 年 6 月末までに Vietjet 航空は 2,500 万人以上の旅客を運び、ベトナ

ム航空業界における「夢物語のような金字塔」を達成している。2015 年の国内線旅客総数は 23.3%増加し、

その増加分のうち 75%以上は Vietjet 航空が貢献している。

図 52: 国内線旅客者数(単位:百万人)

図 53: 国内線各社シェア(%)(搭乗旅客者数ベース)

出所: Vietjet 航空

出所: Vietjet 航空

出所: Vietjet 航空、SAP 産業別分析レポート、ベトナム民間航空政策局(Civil Aviation Administration of Vietnam - CAAV)

ベトナム航空

Vietjet 航空

Jetstar Pacific

VASCO

メコン航空

Vietjet 航空 ベトナム航空-Vietjet 航空 ベトナム航空

Page 54: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 54

Vietjet 航空が設立以来一貫して取っている国内戦略は、供給座席数が需要に満たない路線の増便、及び新路

線への新規就航を通じて、初めて飛行機に乗る顧客を獲得することである。これまでのところ、こうした国

内戦略が同社の急成長を牽引している。Vietjet 航空は今後も同社の 4 つの主要なハブ空港である南部タンソ

ンニャット国際空港(Tan Son Nhat international airport ホーチミン市)、北部ノイバイ国際空港(Noi Bai

international airport 首都ハノイ)、中部ダナン国際空港(Da Nang international airport ダナン市)及び南中

部カムラン国際空港(Cam Ranh international airport ニャチャン市)を起点として、人口の多い地方都市を

結ぶ中短距離路線への新規就航に注力することを同社経営陣は強調している。さらに、最近 Vietjet 航空は

北部ハイフォン市(Hai Phong)にも新たなハブ空港を開設した。同市は北部経済三角地帯(Northern

economic triangle 首都ハノイ、ハイフォン市、クアンニン市)の一角を占めるという立地にも恵まれ、近

年経済が急速に発展しており、またベトナムで最も有名な観光地の一つハロン湾(Halong Bay)にも近く、

同空港からの発着双方の航空旅客の増加の波を捉えることを目指している。

図 54: Vietjet 航空の国内線網(2016 年 5 月現在)

出所: Vietjet 航空

国内線ハブ空港

既存目的地

Page 55: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 55

図 55: 国内運行路線数の推移52

ハイフォン(Hai Phong)をハブ空港としたのは賢明な戦略

人口が 200 万人以上おり、観光や経済活動のより活発化する潜在性も高く、近年既にハイフォン市を離発

着する航空需要は増加している。ベトナム民間航空局(CAAV)によれば、同市のカットビー空港(Cat Bi

Airport)の 2015 年の航空搭乗者数は 130 万人、航空貨物取扱量は 4300 トンに達し、前年比で航空搭乗者

数は 14%増、航空貨物取扱量は 30%伸びた。2016 年 5 月 13 日には新滑走路と新しい空港ターミナルが稼

動を開始し、同時に複数の国内線と国際線が開設された。国内線としてはハイフォン(Hai Phong)- フー

コック島(Phu Quoc)、ハイフォン(Hai Phong) - ダラット市(Da Lat)、ハイフォン(Hai Phong)- カ

ントー市(Can Tho)、ハイフォン(Hai Phong)- ヴィン市(Vinh)、ハイフォン(Hai Phong)- カムラ

ン市(Cam Ranh)、ハイフォン(Hai Phong)- ブオンマトゥオット(Buon Ma Thuot)、ハイフォン(Hai

Phong)- プレイク(Pleiku)等の路線が開設された。国際線としては、同市から中国、日本、韓国、シン

ガポール及びタイへの路線等が挙げられる。次に述べる理由から、Vietjet 航空経営陣がハイフォンを同社の

第 5 ハブとして選択したことを当社では高く評価している。

同市の経済見通しが良好であること:ベトナム北部(特にハイフォン市)への多額な FDI(外国直接投

資)の流入がカットビー(Cat Bi)空港の貨物取扱量を更に増大させる見込みがあること。更に、ベト

ナム統計総局(GSO)によると、2010 年から 2015 年にかけてハイフォン市の平均実質 GDP 成長率は

8.76%に達し、同市の市民 1 人当たり名目 GDP の額を 2857 米ドル53(約 322,841 円)に押し上げ、ベ

トナム全土平均を 50%以上上回った。言うまでもないが、一人当たり GDP が増加すれば、航空需要も

高まる。ベトナム民間航空局(CAAV)によれば、カットビー(Cat Bi)国際空港ターミナルの搭乗者数

と貨物量は 2020 年までに搭乗者数は 230 万人、貨物量は 11 千トンに達すると見込まれている。

52

2016 年 6 月現在の飛行路線数は 36 である 53

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空

Page 56: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 56

ハイフォン(Hai Phong)はベトナム北部の製造及び物流拠点として地の利があり、北部の輸出入活動

の要衝を占める。ハイフォン市(Hai Phong)は中国との国境から約 200km しか離れていないところに

あるため、同市の製造業者は完成品の巨大な中国市場に物流面で容易にアクセスできる利点がある。特

にサムスン、LG、マイクロソフト等の大手ハイテク製造者は高価な完成品を航空貨物として輸送する必

要があるため、今後航空貨物輸送の需要は急増することが見込まれる。ベトナム空港総公社(ACV)に

よれば、2016 年 5 月 12 日に国際ターミナルの営業を開始したカットビー(Cat Bi)空港は、ノイバイ

(Noi Bai)空港以外では唯一の北部の国際空港である。このことによって、北部の他の工業都市である

ハイ・ドゥオン市(Hai Duong)又はフンイエン市(Hung Yen)等からも輸出向け航空貨物を集積させ

ることが可能となろう。また、ベトナム政府もハイフォン(Hai Phong)を地域の製造・物流拠点とし

て発展させることを計画している。

図 56: ベトナム ハイフォンの海外運行路線網(実線: 既存路線、点線: 開設予定路線)

図 57: 近年ベトナムへの海外直接投資(FDI)のうち北部への投資割合が増加

概要

人口

1,946,000 人

面積

152,743ha

13.2 USD bn

約 1.5 兆円

3.8 USD bn

約 4,335 億円

(2012+2013+2014)

3.6 USD bn

約 4,107 億円

出所: ベトナム CBRE 社、ハイフォン統計局、2014 年ハイフォン統計年鑑

出所: ベトナム政府統計局(GSO)、当社

Page 57: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 57

図 58: ハイフォンは海外直接投資額でベトナム 6 番目に位置する(2015 年登録実績)

Vietjet 航空にとってはハイフォン市(Hai Phong)のカットビー空港(Cat Bi)を第 5 のハブ空港とす

ることは、ベトナム航空やジェットスター・パシフィックに市場シェアを奪われないためにも必須の措

置。ベトナム民間航空局(CAAV)によると、現在ベトナムの航空会社 3 社、Vietjet 航空、ベトナム航

空(Vietnam Airlines)、ジェットスター・パシフィックは、ハイフォン市のカットビー空港を起点とし

て9路線に就航している。その内、国内線の 5路線はカットビー空港からホーチミン市(Ho Chi Minh city)、

ダナン市(Da Nang)、ニャチャン市(Nha Trang)、プレイク(Pleiku)、ブォンマトゥオト(Buon Me

Thuot)を結び、国際線の 4 路線の目的地は中国、ラオス、タイ及びシンガポールである。また、ハイ

フォンからは更に国内ではカントー(Can Tho)、クイニョン(Quy Nhon)、トゥイホア(Tuy Hoa)、

フェー(Hue)、ヴィン(Vinh)、ディエンビエン市(Dien Bien)までの各都市、国際線としては香港、

マカオ、日本、韓国、そしてマレーシアの 5 カ国を結ぶ可能性がある。結果として、Vietjet 航空の競合

各社は間違いなくハイフォンを結ぶ路線の増強を図るはずであり、Vietjet 航空が速やかに行動しなけれ

ば、それだけ不利な状況に陥ったはずである。

今後 2、3 年は国内市場における有償旅客キロ数(RPK54)の増加は新路線の開設ではなく、主として既存

路線での増便に牽引される見込み

特定の都市で堅調な経済成長が進むと、その都市同士を結ぶ既存国内路線を増便する機会が生まれる。中期

的にはこうした増便需要への対応が Vietjet 航空の成長の拠り所になると見通している。しかし、当然なが

ら新しいハブ空港であるハイフォン(Hai Phong)やその他のハブ空港であるダナン(Da Nang)、ハノイ

(Hanoi)からの新規就航路線を増やすことは、Vietjet 航空にとっては、国内市場シェアを確保維持するた

めに重要な戦略である。新規国内就航路線としては 2016 年から 2019 年の期間に、11 路線が開設されると

見込んでいる。

54

RPK = Revenue Passenger Kilometer

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

Page 58: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 58

図 59: 路線網を構成する既存国内空港と今後開設が予定される空港55

55

赤字は既に Vetjet 航空が就航している空港

出所: 当社

空港名 人口(単位:千人) 所在地 GDP 成長率

Page 59: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 59

図 60: ハイフォン(Cat Bi 空港)から就航が予定される新路線56

56

赤線は当社予想

出所: 当社予測

Page 60: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 60

図 61: ダナン(Da Nang 空港)から就航が予定される新路線57

57

赤線は当社予想

出所: 当社予測

Page 61: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 61

図 62: ハノイ(Noi Bai 空港)から就航が予定される新路線58

58

赤線は当社予想

出所: 当社予測

Page 62: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 62

図 63: 国内線 RPK59の内訳(予測値)

59

RPK=revenue passenger kilometers: 有償旅客キロ数◆料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)

出所: 当社予測

(注)新規国内線とは、年度内に新規開設され、業績が報告されているものをいう

既存国内線の RPK

新規国内線の RPK

Page 63: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 63

国際路線の拡大が Vietjet 航空の今後の長期成長の鍵を握る

Vietjet 航空は 2013 年 2 月 10 日に初めてベトナム国境を越え、タイの首都バンコクへ向かう国際線に進出

した。同社の国際定期路線網は 2015 年末には 11 路線に、2016 年 6 月 30 日末時点では 17 路線に拡大し

た。今後 2018 年の年末までには 36 路線へと拡大を予定している。今後の 3-5 年を見通すと、同社が保有

するAirbus機の最大航続距離が約 6,100km、最大巡航速度が 1機当たり 827km/時であることを勘案すると、

同社が今後国際線として就航するのは主としてアジア太平洋地域になると見込まれる。今後追加就航可能な

国内線が 10-11 路線に留まることを考慮すると、2016 年-2019 年に引き渡される 57 機の新鋭機を効率運航

するには、同社は少なくとも国際線 40 路線に新規就航する必要があると考えられる。

図 64: Vietjet 航空の国際線路線(2016 年 5 月)

出所: Vietjet 航空

Hanoi center = ハノイ市から 2500 マイル(5.5 時間圏)

HCMC center = ホーチミン市から 2500 マイル(5.5 時間圏)

Domestic hubs = 国内線のハブ空港

Existing destinations = 既存就航都市

Page 64: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 64

図 65: 各年度末時点の国際線数60

Vietjet 航空は国内市場シェアの獲得にここまでは大成功したものの、今後も継続的な成長を遂げるには地域

内既存 LCC 勢力との直接対決に立ち向かわなければならない。エアアジアやタイガー航空といった既存

LCC との比較では、Vietjet 航空は規模の経済性でも運航経験でも現時点で劣っている。一方で、Vietjet 航

空の国際戦略は、確固たる基盤を持つベトナムの国内空港であるニャチャン(Nha Trang)、ホーチミン市

(Ho Chi Minh City)、ダナン(Da Nang)、ハノイ(Ha Noi)等からアジア太平洋地域内の目的地へ新規就

航することである。Vietjet 航空によると、世界人口のおよそ 50%がホーチミン市を中心とする 2,500 海里

内に住んでいることを踏まえれば、ホーチミン市のタンソンニャット(Tan Son Nhat)国際空港はアジア地

域内のハブ空港として絶好の位置にあるといえる。さらに、同社は国際線市場でのプレゼンスを更に拡大す

るため、地域内同業他社と相互接続に関して交渉中である。新規国際路線の開設は、Vietjet 航空にとって次

の 2 つの利点をもたらす。

国際線就航から、より長い距離を飛行することは航空機の稼働率を押し上げる: 通常国内便の飛行距

離は短く、夜間は飛ばない。どちらも航空機のブロック時間(block hours=航空機が離陸のために、当

該機のドアを閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間)を縮小させる要因となる。今

後Vietjet航空が、4時間-5時間の飛行時間となる距離にある韓国の仁川(Incheon)や中国の天津(Tianjin)

等に就航すると、夜間に飛行する便を希望する旅客も増えると見込まれる。それは、航空機が離陸して

から着陸するまで、長時間飛び続けることを意味する。どちらもブロック時間の増加要因となる。

国内線の伸びが一旦鈍化すると、国際線が成長を下支えする: ベトナムは依然として国際路線網が充

実しておらず、今後さらにアジア太平洋地域の経済や観光が発展することを勘案すると、Vietjet 航空の

ような自国国内線の主要航空会社にとっては、国際線需要を満たす絶好の機会と見込まれる。Vietjet 航

空は 2016 年下半期にホーチミン市(Ho Chi Minh)- 高雄市(Kaohsiung 台湾)、ハノイ(Ha Noi)- 台

60

2016 年 6 月末時点で既に国際線数 17

出所: Vietjet 航空

Page 65: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 65

北 (Taipei 台湾)、ハノイ(Ha Noi)- 釜山(Busan 韓国)、ハイフォン(Hai Phong)-ソウル(Seoul

韓国)を結ぶ国際線新路線の開設を予定している。

Vietjet 航空にとって、長期的な成長を維持するためには、新規国際線を開設することが不可欠だが、国際市

場での競争は非常に激しく、Vietjet 航空が保有機数で勝る競合他社と比べて規模の経済面で劣ることは否め

ない。

図 66: Vietjet 航空の保有機材 対 東南アジア地域その他 LCC61の機材比較

積極的な保有機数の増強は、中期的には平均正規基本運賃と座席利用率(load factor62)にとって

はマイナス要因であるが、原油価格が引き続き低位であること及び規模の経済が増すことから売

上総利益率63は改善が見込まれる

今後 4年間に増加する保有機数の内半分は既存路線の増便対応で利用するとしても、同期間に新たに 50の

新規路線就航が求められている

現在の 1 機あたり 12 時間から 13 時間のブロック時間64/日の平均稼働率を維持するためには、2016 年から

2019 年の間に引き渡される 53 機の新型 Airbus 機と 4 機のボーイング機の就航に合わせて、2019 年までに

90 から 100 の新路線を開設する必要があると見込まれている。一方で、多くの既存路線が新規開設して日

が浅いか、輸送能力が需要に見合っていない。経営陣としてはこうした路線の増便のために、新規配備の航

空機輸送能力の半分を充てることになると考えられる。それでも残り 50 の新規就航路線を開設する必要が

あることが示唆されるが、通常新規路線の場合には徐々に搭乗者数等が増加するため、しばらくの間は座席

利用率や航空機稼働率のマイナス要因となる。2019 年から 2023 年には、同社は更に 96 機のボーイング機

と 49 機の Airbus 機の追加配備を予定しており、航空機の稼働率の維持にとっては重荷となる。

年間約 12 から 13 の新路線を開設することは、そのこと自体が運賃上昇の圧迫要因ともなりかねない。早

期に座席利用率を引上げるために、経営陣は過去同様、新路線就航時に積極的な販売促進策を取り、低価格

運賃を提供すると思われる。2014 年から 2015 年にかけて、Vietjet 航空は 14 の国内線及び 9 つの国際線に

新規就航したが、その際には初めて飛行機に乗る低所得の乗客を誘引するために、価格を引き下げた運賃が

提供された。この販促策の導入により、積極的な路線拡大計画を支えるために、正規基本運賃が 2014 年に

は前年同期比 2%、2015 年には前年同期比 17%下落したという経緯があった。

61

Vietjet 航空は 2016 年 6 月 30 日現在、他社は 2015 年 12 月 31 日現在 62

load factor 有償搭乗率、座席利用率 63

Gross Profit Margin (GPM) 64

block hours =ブロック時間 航空機が離陸のために、当該機のドアを閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間

出所: Vietjet 航空及びその他航空会社の website

Page 66: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 66

図 67: 国内線、国際線別 RPK65収益の状況

図 68: 平均基本運賃の推移(2013 年来)

65

RPK=revenue passenger kilometers: 有償旅客キロ数◆料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)

出所: Vietjet 航空、当社

800.0VND=約 4 円、1,000.0VND=約 5 円、1,200.0VND=約 6 円

1,600.0VND=約 8 円

搭乗客 1 人当たり、1 キロメートル当たりの収益(単位:VND)

国内線の収益状況 国際線の収益状況

出所: Vietjet 航空、当社

1,000,000VND=約 5,000 円、800,000VND=約 4,000 円

Page 67: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 67

座席利用率(load factor66)及び稼働率の悪化圧力のかかる中、原油価格の下落と規模の経済性の拡大が利

益率を下支えする。ブレント原油価格は 2016 年に平均 1 バレル 45 米ドルが、2017 年には 1 バレル 55 米

ドルに上昇し、2018 年以降は 1 バレル 65 米ドルで安定することを見込む。それでも 1 バレル 55 米ドルか

ら 65 米ドルという水準は 2014 年当時の 1 バレル平均 109 米ドルを大幅に下回る。次に、メンテナンスや

地上勤務職員の給与コスト等の固定又は準固定費は保有機数の拡大に伴い、有効座席キロ数(ASK)が増え、

配賦単位では下落する。このように規模の経済性の高まりにより、2015 年から 2017 年にかけて原油価格

の上昇が見込まれ、また座席利用率及び稼働率の下落圧力があるにも拘らず、RASK から CASK を差し引

いたスプレッドは 2015 年の 0.44 米ドルから 2017 年は 0.79 米ドルに上昇すると見込んでいる。

図 69: ASK67当りの燃料費は、原油価格の下落を受けて低下

図 70: RASK68

– CASK69の推移

66

load factor 有償搭乗率、座席利用率 67

ASK=available seat kilometer:有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する 68

RASK=Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入 69

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費

出所: Vietjet 航空、当社

2.73 US cents = 約 3 円、2.56 US cents =約 3 円、1.71 US cents =約 2 円

出所: Vietjet 航空、当社

0.09 US cents = 約 0.10 円、0.39 US cents =約 0.44 円、0.44 US cents =約 0.50 円

Page 68: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 68

図 71: 売上総利益率(機材売上高を除く)

出所: Vietjet 航空、当社

Page 69: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 69

有償旅客キロ数(RPK70)当たりの平均正規基本運賃が、保有機増加に対応するための新規路線開拓により

中期的には下落する可能性があっても、同社の差別化された価格設定戦略により、その一部は相殺される見

込みである。現在、Vietjet 航空は異なる顧客セグメントに応じて、スカイボス(sky BOSS)、エコノミー

(Economy)及びプロモーション(Promotion)と名付けた 3 階層の料金体系を提供している。経営陣が需

要の価格弾力性が高い顧客層(エコノミー及びプロモーション)に対して正規基本運賃を下げて、同クラス

の座席を先ず埋めようとすることは十分考えられることである。一方で、価格感応度がそれ程高くないスカ

イボスの顧客に対してはプレミアム運賃を保持する。よって、この顧客層は他の顧客層(エコノミー及びプ

ロモーション)の運賃価格下落に対する一定のバッファーの役目を果たす。だが、経営陣にとって重要な課

題は、自らの LCC としてのブランドを維持しながら、如何にプレミアム顧客への特別対応を提供できるか

である。プレミアム顧客は感覚的にまたは自身の威信から、そもそも格安イメージの航空会社に搭乗したい

とは思わないかもしれない。

図 72: 差別化された商品と料金体系

料金タイプ 特典

前方座席への優先予約、機内食無料

間際での搭乗便変更

VIP ラウンジの利用

優先搭乗手続き

エコノミー 基本的なプラン

追加的料金を支払うことで、エコノミーで搭乗する人もサービスを向上さ

せることができる

プロモーション 1 フライトの座席数の 20%まで適用されるディスカウント価格

Vietjet 航空の HP を通じての販売に限定

Vietjet 航空が保有機拡大を目的として採用する機材のセール・アンド・リースバック取引により、

多額なキャッシュ・イン・フローが生じる

通常航空会社は航空機メーカーから、航空会社以外の場合よりも大幅に割り引いた価格で購入できるため、

航空会社が所有航空機を売却する場合、その価格にはプレミアムが付く場合が大半である。航空機の価格が

発注時から通常の場合上昇していることも、売却時の実現利益の確保に寄与する。実現利益の額に更に貢献

するのは、航空機発注時の規模と航空会社の信用である。この取引により得られるキャッシュは、特に開業

間もない航空会社にとっては重宝される。機材を増強するための元手とすることも、新規路線開拓や専用空

港ターミナルの建設に用いることもできる。

航空業界関連のニュースを発信している Flightglobal 社によると、インドの IndiGo 社が LCC の中で最もセ

ール・アンド・リースバック取引を積極的に活用している。2006 年に事業開始する 1 年前に、IndiGo 社は

100 機の AirbusA320 型機を確定発注したが、IndiGo 社は取引規模に応じた割引を受けている。そのため

IndiGo 社がセール・アンド・リースバック取引を実際に行った際に、航空機 1 機毎に 4-5 百万米ドル(約

70

RPK=revenue passenger kilometers: 有償旅客キロ数◆料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)

出所: Vietjet 航空

Page 70: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 70

4.52 億円から 5.65 億円)71の利益を捻出したことは特に驚くに値しない。このインドの LCC は他のどの航

空会社よりも、当初からセール・アンド・リースバック取引に取り組むことによって、航空機の購入と売却

を繰り返して利益を捻出し、その利益を元に機材を更に増加させていく方針を明確にしていた。インドの

IndiGo 社に次いでセール・アンド・リースバック取引を積極的に採用しているのは、順にヴァージン・オ

ーストラリア社、ライオン・エア社、スパイスジェット社、そしてノルウェージャン社である。

2016 年末までに Vietjet 航空の保有機数は 42 機に達すると予測され、その内、本年新規に引き渡される 11

機の航空機は、全て世界的な航空機リース会社である Avolon 社や BH Air 社及び Avation 社とのセール・ア

ンド・リースバック取引となることが見込まれている。セール・アンド・リースバック取引では、Vietjet

航空はリース会社に航空機を売却すると同時に同機をリースバックしてもらう契約となっている。

Vietjet 航空がセール・アンド・リースバック取引を採用した理由

Vietjet 航空経営陣が保有機材増強のためにセール・アンド・リースバック取引を採用している理由は次の通

りと考える。

セール・アンド・リースバック取引は航空機に投資した資金を固定化せずに、他の投資にまわすこと

を可能とする。すぐに特段の資金需要が無いとしても、セール・アンド・リースバック取引を採用する

ことにより、航空機に投資した資金をさらに事業拡張に役立てるよう効率的に用いることを可能とする。

セール・アンド・リースバック取引では航空機の再販のリスクを移転できる。セール・アンド・リース

バック取引では Vietjet 航空は航空機の所有者ではないため、陳腐化資産の流動化リスクを避けること

ができる。一方でリース契約上は、リース契約終了時に、望むなら当該航空機を購入する選択権が与え

られている。

貸借対照表が改善され、資産が積み上がるのを避けることが可能となる。セール・アンド・リースバッ

ク取引では、Vietjet 航空は貸借対照表上の負債項目としてリース債務を計上する必要がない。この処理

により、レバレッジが下げられ、総資産利益率も改善する。殆どのオペレーティング・リース取引同様、

借り手にとってはオフバランス金融取引であることを意味している。

71

1USD=113YEN

Page 71: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 71

図 73: セール・アンド・リースバック取引

航空機

メーカー

出所:当社

航空会社

0 年

3 年

8 年

エンジン

メーカー

注文時に 5%分

の前払金を支払

航空機の引

き渡し

機材を利幅をのせてリ

ース会社に売却。売却代

金を航空機メーカーへ

の支払代金に充当

リース会社は

5 年間同機を

航空会社にリ

ースする

リース会社

に機材を返

航空会社は例えば 1 機 55

百万米ドル(約 63 億円)で

20 機購入する契約を結

ぶ。

3 つの契約を、連続して個別に実行:一つ目は発注した航空機の受け入れ。

二つ目は受け入れた機材を例えば 1 機 60 百万米ドル(約 69 億円)でリース会

社へ売却し、1 機あたり 5 百万米ドル(約 6 億円)の利益を得る。3 番目として、

売却した機材をそのままリースバックして使用する。

リース期間は 5 年:

リース期間終了後機

材はリース会社に返

却される。

Page 72: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 72

2016 年下半期から 2019 年の間に引き渡される 57 機の新鋭機全機をリース会社に売却すれば、その売却益

は事業拡張に再投資できる非常に大きなキャッシュ・イン・フローを生み出す。Vietjet 航空は航空機を 1

機リース会社に売却するごとに 200 万米ドル(約 2.26 億円)72の利益(更に多額になる可能性も)が計上

でき、その結果同期間の利益を 1.14 億米ドル(約 128.82 億円)増加させることができるだろう。

付帯サービス収入:中期的には成長が期待される重要な利益源

2013年から 2015 年の間に、Vietjet 航空の付帯サービス収入は年平均成長率(CAGR)99.3%という記録的

な伸びを見せた。この伸びには様々な付加価値サービス、貨物及び機内広告サービスのそれぞれが貢献して

いる。しかし、2015 年の旅客 1 人当たりの付帯サービス収入は、2013 年から 2015 年の間に年平均成長率

(CAGR)20.6%伸びたにも関わらず、12.14 米ドル(約 1,372 円)に留まり、アジア太平洋地域及び世界

の平均水準を大幅に下回っている。そして、2015 年と 2016 年上半期の売上高全体に占める付帯サービス

収入の割合はそれぞれ 22.3%、22.6%であった。この数字は今後数年間に旅客 1 名当たりの付帯サービス収

入を高める余地が未だに有ることを示唆している。

図 74: 付帯サービス収入の推移(2013-2015 年)

72

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空

2013 年:6,230 億 VND=約 31 億円

2014 年:1.193 兆 VND=約 60 億円

2015 年:2.475 兆 VND=約 124 億円

Page 73: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 73

図 75: 搭乗者一人当たり付帯サービス収入

図 76: Vietjet 航空の搭乗者一人当たり付帯サービス収入、同業他社との比較73

73

付帯サービス収入はまだ拡大余地が大きいことを示している

出所: Vietjet 航空

2013 年:9.4USD=約 1,080 円

2014 年:10.1USD=約 1,160 円

2015 年:12.1USD=約 1,390 円

出所: SAP 産業別分析レポート、IdeaWorks 社

平均: 43.5USD=約 4,990 円

12.14USD=約 1,390 円

Page 74: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 74

図 77: 調整済総売上高に占める付帯サービス収入の割合(%)

図 78: 総売上高に占める付帯サービス収入の割合が高い世界の航空会社トップ 1074

74

2014 年度

出所: Vietjet 航空

出所: SAP 産業別分析レポート、IdeaWorks 社

Page 75: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 75

図 79: 付帯サービスの内容

付帯サービ

内容詳細

付加価値サ

ービス提供

超過手荷物料: 事前にオンラインで、またはチ

ェックインの際に追加料金を支払えば、定めら

れた重量より重い荷物を持ち込むことができる

搭乗機変更料金、基本サービス料等、飛行場で

発生する料金

座席指定料: オンラインで座席指定時にかかる

料金

予約手数料: (オンラインでなく)コールセンタ

ーや販売店、空港の販売カウンターや団体客専

用窓口で予約をすると、搭乗客一人毎に手数料

が発生する

機内サービス: 機内食、飲み物等の有償提供、

機内販売(免税品等の物品販売)

販売手数料 オンライン予約時に乗客はホテルの予約、旅行

保険の加入、レンタカーの予約等の物品及びサ

ービスの購入ができる

広告宣伝サ

ービス料

機内雑誌や機体の内外の空いたスペース、そし

てウェブサイトへの掲載等を広告宣伝サービス

として提供

Vietjet 航空経営陣にとって、如何に付帯サービス収入を伸ばすかは成長の鍵を握る優先事項である。利益率

の高い付帯サービス収入の伸びを加速させるために同社が検討している戦略は次の通りである。

特に搭乗前や搭乗中の付帯サービス収入の増加に注力する

資金決済、旅行商品、小売用商品を組み合わせた特注の商品パッケージを作るために電子取引ソリ

ューションを開発する

電子取引から得られた顧客情報を活用し、独自で特注の商品を開発する

ベトナムは依然として比較的低所得国で、LCC 各社の乗客の大部分は中間所得層であることから、旅客 1

名当たり付帯サービス収入は 2020 年までに 15 米ドル(約 1,695 円)75に増加するのがせいぜいと当社では

予測している。

75

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空

Page 76: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 76

チャーター便サービス: 新国際路線開設の収益性等を計るうえで有効な手段

Vietjet 航空が運航したチャーター便の数は 2013 年の 30 便から 2015 年には 2,376 便に急増した。この間

の売上高の年間平均成長率(CAGR)は 731%にのぼる。通常チャーター便は旅行会社によって手配され、

定期便より価格が低く抑えられるが、それでも Vietjet 航空に次の 2 つのメリットをもたらす。①通常はロ

ーシーズン(搭乗者数が少ない期間)である第 3 四半期末において一定の売り上げを確保できる、②新国際

路線開設の収益性等を計る上で、経営陣にとって有意な指標となる。

チャーター便による収入は 2016 年上半期には前年同期比 75.4%増加した。経営陣によると、この高い伸び

は主として来越する中国人観光客が増大したことが貢献している。

図 80: チャーター機収入(10 億 VND)

今後数年も来越する外国人観光客が高い伸びを示すことが見込まれる中、Vietjet 航空がチャーター便事業を

拡大する余地は大いにある。

図 81: 国際搭乗者数(過去実績及び将来予測)

実績 予測

国名 2001

2010

2014

2001 年から

2014 年の年

平均成長率

2010 年から

2014 年の年

平均成長率

2015 年 2019 年 2014 年か

ら 2019 年

の年平均

成長率

インドネシア 5,154 7,003 9,435 4.8% 7.7% 10,098 12,638 6.0%

マレーシア 12,775 24,577 27,450 6.1% 2.8% 29,247 36,492 5.9%

フィリピン 1,698 3,292 4,628 8.0% 8.9% 4,935 6,024 5.4%

シンガポール 9,818 14,451 17,086 4.4% 4.3% 18,017 22,286 5.5%

タイ 10,061 15,936 24,780 7.2% 11.7% 25,814 31,630 5.0%

ベトナム 1,599 3,990 6,112 10.9% 11.3% 6,489 8,125 5.9%

合計76

42,262 74,433 99,936 6.8% 7.6% 105,809 131,918 5.7%

76

上記以外の国からの搭乗者数を含む

出所: Vietjet 航空

2013 年:190 億 VND=約 9500 万円、2014 年:4,120 億 VND=約 21 億円、2015 年:1.337 兆 VND=

約 67 億円

出所: ベトナム観光局

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 77

航空貨物サービス: 現在規模が小さいが、急速な成長を見せている事業区分

Vietjet 航空経営陣によれば、同社は旅客便の一定区画を区切り、代理店を通じてそのスペースを販売するこ

とで貨物輸送サービスを提供している。新規就航路線で搭乗者が少ない便の特定スペースを卸売り価格で航

空貨物運送業者に販売している。

図 82: 貨物輸送売上

BMI 社によれば、ベトナムの航空貨物量は 2016 年から 2019 年の間に 6%から 6.5%で伸びることが予測さ

れている。これは主として家電製品や製造機械に代表されるハイテク製品製造への投資が流入し続けている

ことに牽引されている。2015年6月にベトナムと東南アジア地域の航空ハブとしてロンタイン(Long Thanh)

国際空港の建設が承認されたことにより、今後更に航空貨物取扱量が増大すると見込まれている。

図 83: 2000 年から 2014 年迄の国内航空貨物量の推移(貨物輸送トンキロ77)

77

freight ton kilometers=貨物の輸送量を表わす単位。記号は t・km。輸送した貨物のトン数に,その輸送距離を乗じたものを各貨物ごとに計算し,

その合計を示す。

出所: Vietjet 航空

2013 年:1,900 億 VND=約 10 億円、2014 年:2,990 億 VND=約 15 億円、2015 年:5,490 億 VND=約 27 億円

出所: ベトナム政府統計局(GSO)

百万トンキロ

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 78

図 84: ベトナムの航空貨物量推移

百万トンキロ

出所: BMI 社 2015 年度貨物輸送報告書

航空貨物量(百万トンキロ) 航空貨物量前年同期比伸び率

Page 79: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 79

Vietjet 航空の 5 ヶ年計画

図 85: 今後の戦略(将来展開計画)

計画 詳細 目的

国内線網の拡充 路線の利益率を勘案しながら、同一路線の便数増や就

航地の拡大を図る 国内線トップの座を盤石なものと

する

新規国際線の開設 需要の多い、短・中距離の路線網をアジアに構築

する。2018 年末までに国際線の就航路線数を現

行の 17 から 36 に増やす

就航先のパートナー企業とフランチャイズ契約

を締結し、目的地でのビジネス展開を図るか、ま

たは他の航空会社と相互接続(乗り継ぎの便宜に

つき)契約を締結する

アジア圏に短・中距離の路線網を構

築し、国際線搭乗者数を増やす

保有機の拡張を図

りつつ、機齢を若

く保つ

Airbus 社の新しく燃料効率の高い A320、A321

や A320 neo シリーズを導入し、保有機を増やす

保有機数を 78 機とする

機齢を若く保つ

輸送能力の最適化を図り、座席当た

りのコストを削減し、コスト面での

優位性を維持する

付帯サービス収入

を増やす

付帯サービス収入(特に搭乗前や搭乗中)の増収

に注力する

電子取引基盤を活用し、資金決済、旅行商品、小

売商品が有機的に結合した独自の商品パッケー

ジを作成する。よってグループ全体の相乗効果を

上げる

電子取引から得られた顧客情報を有効活用し、他

にない、より顧客ニーズに合う商品を開発する

先行する世界の他の航空会社の動

向に沿って、利益率の高い付帯サー

ビス収入の割合を高める

人材育成に注力す

訓練プログラムを強化するとともに、良い企業文

化を構築し、次世代の育成につなげる

Vietjet 航空トレーニングセンターのトレーニン

グ・プログラムを継続して改善し、Vietjet 航空カ

デミーをプロフィットセンターとして設立する

プロジェクトを立案する

国際基準に適合した、プロフェッシ

ョナルな労働環境を構築し、職員の

創造性と熱意を高める

コスト管理及び経

営効率向上に注力

する

2015年に一人当たりASK78ベースで 18%の業務

費削減を達成

機材の利用率を高めるとともに、燃料費の消費管

理に積極的に取り組む

2015 年から Airbus 社、CFM 社(エンジンメーカ

ー)、P&W 社(会計系コンサルタント会社)と協働

で効率的な在庫管理、人員管理、積極的なコスト

管理に取り組む

経営効率向上のため、様々な IT 基盤に投資を行

もっとも単位コストが低く、同クラ

スの航空会社の中では経営効率も

高い地位を守る

78

available seat kilometer=有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する

Page 80: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 80

い、改善を図る

Vietjet 航空ブラン

ドの強化

優れた顧客サービスを提供する航空会社として、

高いブランド認知度及びレピュテーション(評

判)を確立する

堅固なリスク及び安全性管理態勢を構築し、当該

面でのレピュテーションを確立する

2016 年に顧客ロイヤリティプログラムを導入

し、繰り返し利用する固定客を増やす

固定客ファン層を拡大するための

基盤を構築する

資本調達の多様化

を図る

機材ファイナンスの多様化を図る

国際資本市場にアクセスし、国際的銀行との関係

を構築する

ファイナンス基盤の多様化を図る

国内線空港ターミ

ナルに投資する

地元の投資家と協働することによって、主要な国

内ハブ空港でターミナルを運営する権利を確保

する

投資額は自己資本の 10%を下回る額に抑制する

業務費を削減し、路線スケジュール

の改善によって顧客サービスの向

上を図る

出所: Vietjet 航空

Page 81: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 81

2015 年概観: 急激な原油価格下落により CASK79は大幅に減少

Vietjet 航空は 2015 年の監査済み業績として、売上高が前年同期比 82%増の 11.08 兆ドン(約 554 億円)、

純利益が前年同期比 135%増の 7720 億ドン(約 38.6 億円)となったことを公表した。売上高と純利益の双

方とも航空機売却高を除外している。航空機売却益も含めると、株主に属する純利益は前年同期比 227%増

の 1.18 兆ドン(約 59 億円)に達する。これは 1 株当たり 8,140 ドン(約 41 円)の EPS に相当する(備

考:2015 年末時点の発行済み株式数は 1.45 億株)。

Vietjet 航空は 2015 年に調整済み売上高(航空機売却高を除く)で目覚ましく成長したが、これは同社の 3

つの主要収入源である旅客運賃、付帯サービス収入及びチャーター便収入の全てにおいて劇的な高成長を遂

げたことによる。具体的には以下の通りである。

旅客運賃収入: Vietjet 航空が 2015 年に運んだ国内外搭乗者数は前年比 66.1%増の 930 万人で、平均

座席利用率80は 88.1%となり、業界標準を大幅に上回った。この目覚ましい成長を牽引したのは、①年

度内に保有機数が 11 機増加したこと、②座席の需要に供給が間に合っていなかった既存国内路線にお

ける座席供給数が急増するとともに、新路線が開設され、国内路線数は 2014 年末の 19 路線から 2015

年 12 月 31 日には 28 路線に増えたこと、及び③定期国際路線も 2014 年末の 6 路線から 2015 年 12 月

31 日には 11 路線に増加したことである。

図 86: 2016 年 6 月 30 日時点の国内線路線網

開設日 路線

2011 年 12 月 24 日 Ho Chi Minh City – Hanoi – Ho Chi Minh City

2012 年 04 月 27 日 Ho Chi Minh City – Da Nang – Ho Chi Minh City

2013 年 06 月 01 日 Hanoi – Nha Trang – Hanoi

2012 年 05 月 24 日 Hanoi – Da Nang –Hanoi

2012 年 08 月 03 日 Ho Chi Minh City – Nha Trang – Ho Chi Minh City

2012 年 10 月 01 日 Ho Chi Minh City – Hai Phong – Ho Chi Minh City

2012 年 11 月 15 日 Ho Chi Minh City – Vinh –Ho Chi Minh City

2012 年 11 月 22 日 Ho Chi Minh City – Hue – Ho Chi Minh City

2012 年 12 月 07 日 Hanoi – Da Lat – Hanoi

2012 年 12 月 12 日 Ho Chi Minh City – Phu Quoc – Ho Chi Minh City

2012 年 05 月 20 日 Ho Chi Minh City – Buon Me Thout – Ho Chi Minh City

2013 年 10 月 15 日 Hanoi – Buon Me Thout – Hanoi

2013 年 11 月 01 日 Ho Chi Minh City – Quy Nhon – Ho Chi Minh City

2013 年 12 月 23 日 Vinh – Da Lat – Vinh

2014 年 03 月 22 日 Ho Chi Minh City – Da Lat – Ho Chi Minh City

2014 年 05 月 28 日 Hanoi – Phu Quoc – Hanoi

2014 年 07 月 22 日 Da Nang – Can Tho – Da Nang –

79

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer 有効座席キロ数当たりの営業経費 80

load factor 有償搭乗率、座席利用率

Page 82: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 82

2014 年 10 月 17 日 Hanoi – Can Tho – Hanoi

2014 年 11 月 25 日 Ho Chi Minh City – Thanh Hoa – Ho Chi Minh City

2015 年 04 月 26 日 Hanoi – Quy Nhon – Hanoi

2015 年 04 月 29 日 Ho Chi Minh City – Dong Hoi – Ho Chi Minh City

2015 年 05 月 27 日 Ho Chi Minh City – Chu Lai – Ho Chi Minh City

2015 年 06 月 01 日 Da Nang – Hai Phong – Da Nang

2015 年 10 月 01 日 Ho Chi Minh City – Pleiku – Ho Chi Minh City

2015 年 11 月 18 日 Hanoi – Chu Lai – Hanoi

2015 年 11 月 18 日 Hai Phong – Nha Trang – Hai Phong

2015 年 11 月 19 日 Vinh – Buon Me Thout – Vinh

2015 年 12 月 16 日 Hanoi – Pleiku – Hanoi

2016 年 01 月 15 日 Hai Phong – Pleiku – Hai Phong

2016 年 01 月 16 日 Vinh – Pleiku – Vinh

2016 年 01 月 20 日 Ho Chi Minh City – Tuy Hoa – Ho Chi Minh City

2016 年 05 月 20 日 Hanoi – Tuy Hoa – Hanoi

2016 年 05 月 20 日 Hai Phong – Phu Quoc – Hai Phong

2016 年 05 月 20 日 Hai Phong – Da Lat – Hai Phong

2016 年 06 月 02 日 Hai Phong – Buon Me Thout – Hai Phong

2016 年 06 月 06 日 Nha Trang – Thanh Hoa – Nha Trang

図 87: 2016 年 6 月 30 日時点の国際線路線網

開設日 路線

2013 年 02 月 10 日 Ho Chi Minh City – Bangkok – Ho Chi Minh City

2013 年 06 月 01 日 Hanoi – Bangkok – Hanoi

2014 年 05 月 23 日 Ho Chi Minh City – Singapore – Ho Chi Minh City

2014 年 07 月 24 日 Hanoi – Incheon – Hanoi

2014 年 12 月 12 日 Ho Chi Minh City – Taipei –Ho Chi Minh City

2015 年 06 月 22 日 Nha Trang – Hangzhou – Nha Trang

2015 年 07 月 11 日 Nha Trang – Chengdu – Nha Trang

2015 年 09 月 25 日 Nha Trang – Tianjin – Nha Trang

2015 年 09 月 27 日 Nha Trang – Ningbo – Nha Trang

2015 年 10 月 02 日 Ho Chi Minh City – Yangon – Ho Chi Minh City

2015 年 11 月 07 日 Ho Chi Minh City – Incheon – Ho Chi Minh City

2016 年 01 月 18 日 Nha Trang – Shanghai – Nha Trang

2016 年 01 月 22 日 Nha Trang – Chongping – Nha Trang

2016 年 02 月 06 日 Da Nang – Hangzhou – Da Nang

2016 年 04 月 10 日 Da Nang – Macau – Da Nang

出所: Vietjet 航空

Page 83: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 83

2016 年 06 月 01 日 Ho Chi Minh City – Kuala Lumpur – Ho Chi Minh City

2016 年 06 月 22 日 Ho Chi Minh City – Tainan – Ho Chi Minh City

図 88: Vietjet 航空保有機種推移

機種 2011 2012 2013 2014 2015

A320 3 5 10 19 27

A321 3

退役機

合計 3 5 10 19 30

図 89: Load factor81

81

Load factor=有償搭乗率、座席利用率

出所: Vietjet 航空

出所: Vietjet 航空

出所: Vietjet 航空

国際線 国内線 全体

Page 84: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 84

図 90: 機材の有効利用(ブロック時間82)

図 91: 総旅客者数

82

航空機が離陸のために、当該機のドアを閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間

出所: Vietjet 航空

1 機当たりのブロック時間/日

出所: Vietjet 航空

国内線搭乗者数 国際線搭乗者数

単位:千人

Page 85: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 85

図 92: 国内市場シェア

図 93: ベトナムの航空搭乗者数推移(2010 年―2015 年)

チャーター便数は 2015 年には 2,376 便に達した。サービスが開始された 2013 年はたった 30 便に

過ぎなかったことから比べると、劇的な増加である。これは主として国際チャーター便数が 2014

年末の僅か 12 便から 2015 年末には 37 便に増えたことが原動力となっている。2015 年にはチャー

ター便事業部門の収入は前年比 225%増加の 1.34 兆ドン(約 67 億円)に達し、航空機売却高を除

く総売上高の 12%を占めた。

付帯サービス収入は 2015 年にフライト関連サービス(機内サービス、予約手数料、超過荷物料)が

伸びたことに支えられ、前年比 107.4%増加し 2.48 兆ドン(約 124 億円)に達した。2015 年末時点

の旅客 1 名当たりの付帯サービス収入は 12.14 米ドル(約 1,372 円83)に留まり、アジア太平洋地域

の平均である約 30 米ドル(約 3,390 円)から 35 米ドル(約 3,955 円)を未だ大幅に下回っている。

これは Vietjet 航空が同事業を開拓する余地を多く残していることを示唆する。

83

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空

出所: ベトナム政府統計局(GENERAL STATISTICS OFFICE of VIET NAM - GSO)

単位:百万人

Page 86: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 86

図 94: 過去 3 年のセグメント別売上高の伸び率

図 95: 2015 年度調整済売上高内訳84

84

調整済売上高には機材売却売上を含まない

出所: Vietjet 航空

単位:10 億 VND

旅客収入 付帯サービス収入 その他

出所: Vietjet 航空

旅客収入

その他収入

付帯サービス収入

Page 87: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 87

原油価格の急落と運航効率の向上により、2015 年の EBITDA 利益率と純利益率は改善した

2015 年中に原油価格は約 45%と記録的な下落を見せた。航空会社にとって燃料費は有効座席キロ数あたり

の経費(CASK85)の 40%から 50%も占めるため、原油価格の急落は Vietjet 航空にとって大きな恩恵とな

った。CASK は前年比 18%減少し、2015 年末には 4.14 米セントとなった。しかし、積極的な新規路線拡

大戦略により、同社の正規基本運賃は 2015 年に 17%下落した。CASK と同程度正規基本運賃が下落したに

もかかわらず、2015 年の RASK86と CASK のスプレッドは 13%増加した。このことは、RASK と CASK の

スプレッドの拡大が非燃料項目の改善及び効率性の向上によってもたらされていることを示唆する。結果と

して、調整済み総利益率は 250bps 大幅に改善した。

図 96:調整済売上総利益率87

85

CASK= Cost Per Available Seat Kilometer 有効座席キロ数当たりの営業経費 86

RASK=Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入 87

調整済売上総利益率は機材売却売上の調整を行っている

2014 年、2015 年と利益率が改善したのは燃料費を除く事業費管理の上達による

出所: Vietjet 航空

Page 88: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 88

図 97: ブレント原油価格推移

図 98: 原油価格の下落を主因として、ここ数年 CASK88は大幅改善

88

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer 有効座席キロ数当たりの営業経費; RASK=Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当た

りの旅客運賃収入

出所: Bloomberg

出所: Vietjet 航空

燃料費を除いた CASK50

(有効座席キロ数当たりの営業経費)

50 50

Page 89: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 89

図 99: 有効座席キロ数当りマージンの推移(RASK89

– CASK90のスプレッド)

図 100: 業界平均と比較した Vietjet 航空の利益率91

2015 年度 純利益率

全世界 4.6%

北米 9.5%

欧州 3.5%

アジア太平洋 2.9%

中東 2.3%

ラテンアメリカ -0.9%

アフリカ -2.1%

Vietjet 航空 5.9%

89

RASK= Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入 90

CASK= Cost Per Available Seat Kilometer 有効座席キロ数当たりの営業経費 91

純利益率の計算にあたっては機材の売却高を含む

出所: Vietjet 航空、当社

単位:cents

平均油価 109USD/バ

レル

平均油価 99.4USD/バ

レル

平均油価 53.6USD/

バレル

出所: 国際航空運送協会(IATA)、Vietjet 航空、当社

Page 90: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 90

図 101: 2015 年度世界の同業他社と比較した Vietjet 航空の利益率92

92

利益率の計算にあたっては機材の売却代を含む

出所: 国際航空運送協会(IATA)、Vietjet 航空、当社

営業利益率 純利益率

Page 91: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 91

2016 年上半期概観: 急速な保有機数拡大を背景に劇的な成長を遂げる

2016 年上半期の業績は急速な保有機数の拡大を背景に素晴らしい成長を遂げる。Vietjet 航空は 2016 年上

半期に機材売却売上を除いたベースで、売上高は前年同期比 45%増の 7 兆 4,020 億ドン(約 370 億円)、少

数株主損益控除後の純利益(NPATMI)は前年同期比 65%増の 1 兆 2,360 億ドン(約 62 億円)を達成した。

本上半期中に、保有機材は 2015 年 12 月 31 日比 27%増え、38 機(内、AirbusA320 型機 33 機、AirbusA321

型機 5 機)となった。2016 年 6 月末には同社の国内線市場シェアは 43.1%で、ベトナム航空の 41.3%を上

回り、遂に Vietjet 航空はベトナム航空を追い抜き、国内線シェアではベトナム最大の航空会社となった。

図 102: 2015 年上半期から 2016 年上半期にかけて業績は大幅に向上

出所: Vietjet 航空、当社

単位:10 億 VND

2015 年

上半期

2016 年

上半期

機材売却高控除後

売上高

機材売却高控除後

売上総利益

営業利益 少数株主損益

控除後の純利益

Page 92: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 92

図 103: 2016 年上半期の Vietjet 航空の市場シェア

図 104: Vietjet 航空機材保有数推移

2016 年上半期においては、旅客運賃収入の伸びが引き続き主要な牽引力となる一方、機材売却も堅調だっ

出所: Vietjet 航空、当社

Vietjet

航空

航空

ベトナム航空 その他

出所: Vietjet 航空、当社

Page 93: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 93

た。2016 年上半期の売上高は前年同期比 41%増の 12 兆 5,570 億ドン(約 628 億円)となり、国際航空貨

物部門を除いた全ての主要な部門で大幅な業績更新を達成した。2016 年上半期の国際航空貨物の業績は

65%低下したが、この部門はそもそも小さく、売上高全体に占める割合は 1%弱に留まる。

図 105: セグメント別売上高

売上高

(単位:10 億 VND)

2016 年

上半期

2015 年

上半期

増減率

(%)

旅客収入

(参考: 円換算値)

5,620.8

281 億円

4,087.4

204 億円

38%

国内線

(参考: 円換算値)

4,552.0

228 億円

3,459.6

173 億円

32%

国際線

(参考: 円換算値)

369.6

18 億円

229.1

11 億円

61%

チャーター便

(参考: 円換算値)

699.1

35 億円

398.7

20 億円

75%

付帯サービス収入

(参考: 円換算値)

1,671.9

84 億円

1,019.4

51 億円

64%

付帯サービス手数料

(参考: 円換算値)

1,358.0

68 億円

708.2

35 億円

92%

機内物品販売

(参考: 円換算値)

41.2

2 億円

33.8

1.7 億円

22%

国内貨物運送

(参考: 円換算値)

205.6

10 億円

133.5

7 億円

54%

国際貨物運送

(参考: 円換算値)

45.3

2 億円

128.8

6 億円

-65%

広告収入

(参考: 円換算値)

6.6

0.3 億円

7.3

0.4 億円

-10%

その他付帯サービス収入

(参考: 円換算値)

15.1

0.8 億円

7.7

0.4 億円

96%

機材売却高

(参考: 円換算値)

5,154.6

258 億円

3,769.1

188 億円

37%

機材レンタル収入

(参考: 円換算値)

28.1

1.4 億円

その他収入

(参考: 円換算値)

81.5

4 億円

3.6

0.2 億円

2,164%

総売上高

(参考: 円換算値)

12,556.83

628 億円

8,879.47

444 億円

41%

総売上高(機材売却高控除後)

(参考: 円換算値)

7,402.25

370 億円

5,110.35

256 億円

45%

出所: Vietjet 航空、当社

Page 94: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 94

旅客運賃収入(売上高の 45%): 国内線、国際線共に堅調に伸びた。Vietjet 航空が開設した新規路線

は次の 8 つで、それぞれハイフォン(Hai Phong)- プレイク(Pleiku)間、ヴィン(Vinh)- プレイク

(Pleiku)間、ホーチミン(Ho Chi Minh)-トイホア(Tuy Hoa)間、ハノイ(Ha Noi)-トイホア(Tuy

Hoa)間、ハイフォン(Hai Phong)- フーコック(Phu Quoc)間、ハイフォン(Hai Phong)- ダラ

ット(Da Lat)間、ハイフォン(Hai Phong)- ボゥオンマトゥアット(Buon Me Thout)間、ニャチ

ャン(Nha Trang)- タインホア(Thanh Hoa)間を結び、便数は週 3 から 7 便である。更に、16 年上

半期には国際線も新規に 6 路線就航している。それらはニャチャン(Nha Trang)- 上海(Shanghai 中

国)、ニャチャン(Nha Trang)- 重慶(Chongqing 中国)、ダナン(Da Nang)- 杭州(Hangzhou 中国)、

ダナン(Da Nang)-マカオ(Ma Cau)、ホーチミン(Ho Chi Minh)- クアラルンプール(Kuala Lumpur

マレーシア)、ホーチミン(Ho Chi Minh)- 台南(Tainan 中国)である。16 年上半期の急速な拡大にも拘

らず、同社は国内線と国際線のどちらでも 80%以上の高い座席利用率を維持できている。

図 106: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の Load factor93

93

Load factor=有償搭乗率、座席利用率

出所: Vietjet 航空、当社

国際線 Load factor

国内線 Load factor

全路線 Load factor

Page 95: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 95

図 107: 機材の有効利用(ブロック時間94)

図 108: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の RASK95

94

航空機が離陸のために、当該機のドアを閉じてから、着陸後静止して再びドアを開けるまでの時間 95

RASK=Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入

出所: Vietjet 航空、当社

機材 1 日のブロック時間

出所: Vietjet 航空、当社

4.47 US cents = 約 5.1 円、4.29 US cents =約 4.9 円

Page 96: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 96

図 109: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の CASK96

図 110: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の燃料費控除後 CASK97

96

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費 97

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費

出所: Vietjet 航空、当社

3.88 US cents = 約 4.4 円、3.81 US cents =約 4.3 円

出所: Vietjet 航空、当社

2.21 US cents = 約 2.5 円、2.43 US cents =約 2.8 円

Page 97: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 97

図 111: 2015 年上半期及び 2016 年上半期の RASK98

– CASK99のスプレッド

付帯サービス収入(売上高の 13.3%)は前年同期比 64%と大幅に増加した。この高成長の背後には

次の 2 つの要因が働いたと考えている。①そもそも前年の数字が低かったこと、②同社運航路線数

が急増したこと。16 年上半期には 8 つの国内線及び 6 つの国際線が開設された。

機材売却数(売上高の 41.4%)は前年同期比 37%急増した。Vietjet 航空は 2016 年上半期に 6 機の

セール・アンド・リースバック取引を行い、その売上高は 2.30 億米ドル100(約 260 億円)超だった。

機材売却により売上総利益率101が改善したことから、旅客関連事業(旅客運賃収入や付帯サービス収入)

の売上総利益率が RASK と CASK のスプレッドの縮小により悪化したにも関わらず、全体の売上総利益率

は 110bps 改善した。RASK と CASK のスプレッドが縮小した理由は、燃料費を除く運営コストの増加及

び RASK が減少したことによる。燃料費を除く CASK の増加は離着陸料、人件費及びメンテナンス費が増

えたことによるが、RASK の減少は積極的な新路線の就航が運賃、ひいては収益に悪影響を及ぼしたもので

ある。

98

RASK= Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入 99

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費 100

1USD=113YEN 101

Gross Profit Margin=売上総利益率

出所: Vietjet 航空、当社

0.59 US cents = 約 0.7 円、0.48 US cents =約 0.5 円

Page 98: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 98

図 112: 2015 年上半期及び 2016 年上半期のセグメント別売上総利益率

機材売却活動の売上総利益率は 570bps と大幅に拡大した。機材売却は1機につき平均 430 万米ド

ル102(約 4.85 億円)の利益を生み出し、前年同期の僅か 200 万米ドル(約 2.26 億円)をはるかに

上回った。

旅客関連部門の売上総利益率は、離陸料が前年同期比 59%、着陸料が前年同期比 64%、人件費が前

年同期比 95%及びメンテナンス費が前年同期比で 151%それぞれ上昇したため悪化した。

離着陸料:離着陸料の上昇は空港の離着陸費が値上げされたからではなく、新路線増及び既

存路線の便数増により離着陸回数が高まったことによる。便数の増加が離着陸料総額の増加

を招いたが、売上高は比例して増加しない。新路線での搭乗者数を増やすために、正規基本

運賃を低く抑えているからである。今後離着陸料そのものが値上されるというリスクも残る。

ベトナム空港総公社(ACV)によれば、現在国内線ターミナルの離着陸料は国際線ターミナ

ルの 34%に過ぎず、アジア太平洋地域内他国の国内線ターミナルの 40-60%を大きく下回っ

ている。2016 年 7 月には、ベトナム空港総公社(ACV)はベトナム交通運輸省(MOT)に

実際に航空インフラへの投資を目的として、17 年 1 月 1 日からの国内線ターミナルの離着陸

料を国際線ターミナルの 50%に値上げすることを提案している。現在まで、ベトナム交通運

輸省(MOT)から離着陸料金引き上げ提案に対する正式な回答はない。ベトナム交通運輸省

(MOT)は依然として空港料金の引き上げに慎重な姿勢を維持しているが、政府予算の制約

のため、近い将来の値上げを完全には排除できない。このことは Vietjet 航空の将来の営業利

益率に大きな下落リスクをもたらす。

人件費:前年同期比 95%上昇したが。これは 2016 年から 2019 年にかけて年当り 11-19 機

新しく航空機を導入する準備として、パイロット及び機内客室乗務員向けの訓練プログラム

をより多く実施したからである。

102

1USD=113YEN

出所: Vietjet 航空、当社

旅客関係売上総利益率

機材売上総利益率

合計売上総利益率

Page 99: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 99

メンテナンスコスト:2016 年上半期に 151%上昇した。保有機材の定期メンテナンスを実施

したためだが、対象機にはセール・アンド・リースバック取引対象機、及びウェット(短期)

/ドライ(長期)双方のリース機を含む。

少数株主損益控除後の純利益(NPATMI)は 1 兆 2,530 億ドン(約 6,265 億円)に達し、前年同期比 65%

増加した。利益増加の原動力となったのは、(1)合計売上総利益率が 110bps 改善したこと、(2)スタッフの

報酬費の低下により一般管理費が 8.6%低下したこと、(3)メンテナンス準備金に関連する引当金繰入額が

前年同期比 28%減少したことである。

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 100

2016 年の見通し:国内線市場での市場シェア 50%が視野に

アジア太平洋航空センター(CAPA)の 2016 年 1 月付けレポートによると、Vietjet 航空の総座席数は 1 月に

前年同期比 74%増の週間 26.1 万に達した。その内、国内線の座席数が同 82%増の 24.2 万席に、国際線の

座席数が同 30%増の 1.9 万に増加した。同年の 6 月 30 日時点では、同社の市場シェアが 43.1%となり、ベ

トナム航空の 41.3%を上回り、Vietjet 航空はベトナム航空を追い越し、ベトナム国内最大の航空会社とな

った。Vietjet 航空の総座席数は 3 月に週間 26 万席に達し、2015 年 3 月に比べて 7%増加した。

図 113: Vietjet 航空及びベトナム航空の 2011 年 9 月から 2016 年 3 月迄の週当たり座席数の推移

同社によれば、引き続き国内幹線(特にホーチミン - ハノイ)の拡大・増便に注力する方針である。アジ

ア太平洋航空センター(CAPA)によると、Vietjet 航空は 2015 年にホーチミン - ハノイ路線の総座席数の

40%を占め、2015 年以降も着実な拡張を図ってきたおかげで、2016 年 4 月には同社の同路線の市場シェア

は約 50%に達した。

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(Centre for Asia Pacific Aviation – CAPA and OAG)

:ベトナム航空 :Vietjet 航空

1.

週当たり座席数

Page 101: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 101

図 114: Vietjet 航空の 2011 年 9 月から 2016 年 3 月迄のホーチミン-ハノイ間片道週当たり座席数の推移

同社の 2016 通年の売上総利益率(GPM)は凡そ 15%(機材売却売上を除く)で、下半期の売上総利益率

(GPM)は 14.8%(機材売却売上を除く)程度であろうことを予見させる。下半期の売上総利益率(GPM)

が上半期を下回ることを意味するが、2015 年下半期の売上総利益率(GPM)が 10.7%だったことからすれ

ば、大きく改善している。2016 年下半期の売上総利益率(GPM)(機材売却売上を除く)が前年同期比で

大きく改善する要因は次の通りである。

2015 年下半期の売上総利益率(GPM)(機材売却売上を除く)は例外的に低迷。当期に多額の定期

メンテナンス費を計上する一方、旅客運賃収入面では固定費回収が危ぶまれるほど大きく落ち込ん

だことが要因である。2016 年には、Vietjet 航空は上半期中に多額のメンテナンス費を計上した(同

経費は前年同期比で 151%増)。経営陣によると、下半期にはメンテナンス費が大きく減少すること

が見込まれている。

有償旅客キロ数(RPK = Revenue Passenger Kilometer)の 60%以上の増加及び長距離路線の増

加は規模の経済を押し上げる。積極的な新規路線就航により、平均正規基本運賃に引き続き下げ圧

力がかかるが、規模の経済の効果が勝る。特に長距離路線の拡大は、地上職員の業務コストや離着

陸料等の固定・準固定費の比例的拡大を抑制しつつ、売上高を拡大できる。2016 年末までに、一部

の定期チャーター便を定期就航便に振り替えること等により、国際線の就航路線数は 20 を上回る。

一方で、国内線の路線数増加は予定されていないが、ホーチミン(Ho Chi Minh)- ダナン(Da Nang)

やダナン(Da Nang)- ハノイ(Ha Noi)、ハノイ(Ha Noi) - ニャチャン(Nha Trang)等の利益

率の高い路線ではフライト増が見込まれる。

出所: アジア太平洋航空センター及び OAG 社(Centre for Asia Pacific Aviation – CAPA and OAG)

週当たり座席数

Page 102: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 102

バリュエーション評価

同業他社比較

図 115: Vietjet 航空同業他社比較103104105

航空会社名

(ティツカー) 国名 時価総額

(単位:USD 百万)

直近 12 ヶ

月売上高

前年同

期比(%)

直近 12 ヶ

月中核税引

き後純利益

前年同期

比(%)

負債資

本比率

ROE (%)

予想

PER

前四

半期

PBR

EV/ EBITDA

easyJet plc (EZJ LN)

Britain 5,626.0

(約 6,375 億円)

7,071.6 (約 8,014 億円)

4.0 788.6

(約 894 億円) 5.4 0.2 28.3 8.9 2.2 4.9

AirAsia Bhd (AIRA MK)

Malaysia 2,269.9

(約 2,572 億円) 1,664.4

(約 1,886 億円) 16.0

314.9 (約 357 億円)

1,259.3 2.8 26.2 9.1 1.8 6.9

Cebu Air Inc (CEB PM)

Philippines 1,582.8

(約 1,794 億円) 1,287.5

(約 1,459 億円) 9.0

147.2 (約 167 億円)

138.8 1.5 23.6 9.0 2.3 5.7

JetBlue Airways Corp (JBLU US)

Unites States

5,388.5 (約 6,106 億円)

6,540.0 (約 7,411 億円) 10.0

767.0 (約 869 億円)

68.2 0.6 23.8 8.2 1.5 3.3

Ryanair Holdings PLC (RYA ID)

Ireland 17,074.1

(約 19,348億円) 7,293.2

(約 8,265 億円) 16.0

1,742.1 (約 1,974 億円)

71.5 1.1 40.6 10.0 4.0 7.7

Spirit Airlines (SAVE US)

Unites States

2,807.1 (約 3,181 億円)

2,217.0 (約 2,512 億円) 11.0

306.5 (約 347 億円)

14.1 0.5 25.7 10.0 2.2 4.6

Virgin America Inc (VA US)

Unites States

2,499.7 (約 2,833 億円)

1,592.1 (約 1,804 億円) 3.0

318.3 (約 361 億円)

158.3 0.4 43.9 18.0 2.8 11.0

Air Arabia PJSC (AIRARABI UH)

UAE 1,791.5

(約 2,030 億円) 1,067.1

(約 1,209 億円) 3.0

142.8 (約 162 億円)

(2.2) 0.7 10.6 10.5 1.3 8.3

Controladora Vuela Compa nia de Aviacion, S.A.B de C.V. (VOLARA MM)

Mexico 1,864.1

(約 2,112 億円) 1,193.2

(約 1,352 億円) 30.0 193.4

(約 219 億円) 95.7 0.2 48.4 14.1 3.9 7.9

Mean(平均)

4,544.8 (約 5,150 億円)

3,325.1 (約 3,768 億円)

11.3

524.5 (約 594 億円)

201.0

0.9

30.1

10.9

2.4

6.7

Median(中央値)

2,499.7 (約 2,833 億円)

1,664.4 (約 1,886 億円)

10.0

314.9 (約 357 億円)

71.5

0.6

26.2

10.0

2.2

6.9

Vietjet 航空

(Vietjet 航空 VN)

Vietnam N/A

1,260.1 (約 1,428 億円) 41.7

109.4 (約 124 億円)

108.5 1.4 74.0

103

PER、PBR そして EV/EBITDA はベトナムとのカントリーリスクの相違を調整済み 104

2016 年 11 月末の株価を基準 105

Vietjet 航空は直近 12 ヶ月の数値がないため、2016 年の決算予測数値を用いた

出所: Bloomberg、当社

Page 103: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 103

感応度分析

図 116: 原油価格シナリオ毎の 2016 年予想収益106

原油価格のシナリオ 基本シナリオ バレル当り 3 米ドル

高いケース

バレル当り 6 米ドル

高いケース

2016 年度税引き後純利益

(単位:10 億 VND)

2,213

(約 111 億円)

2,037

(約 102 億円)

1,860

(93 億円)

EPS(VND/株) 11,067

(約 553 億円)

10,185

(約 509 億円)

9,302

(約 465 億円)

ROE (%) 68% 64% 60%

図 117: セール・アンド・リースバック取引シナリオ毎の 2016 年予想収益

機材売却収益のシナリオ SAL107取引毎に 1

百万米ドル(約 1.13

百万円)の収益

SAL 取引毎に 2 百

万米ドル (約 2.26

百万円)の収益

基本シナリオ

(SAL 取引毎に 2.9

百万米ドル(約 3.28

百万円)の収益)

SAL 取引毎に 4 百

万米ドル (約 4.53

百万円)の収益

2016 年度税引き後純利益

(単位:10 億 VND)

1,855

(約 93 億円)

2,057

(約 103 億円)

2,213

(約 111 億円)

2,438

(約 122 億円)

EPS(VND/株) 9,274

(約 464 億円)

10,283

(約 514 億円)

11,067

(約 553 億円)

12,188

(約 609 億円)

ROE (%) 60% 65% 68% 72%

106

基本シナリオでは 2016 年度の原油価格をバレル当り 45 米ドルと予測している 107

SAL=Sale and Leaseback transaction 売却後リースバック取引

出所: 当社

出所: 当社

Page 104: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 104

株式評価範囲

当社は Vietjet 航空の企業価値を、先ずは「残余利益法」と(同業他社との比較に基礎を置く)「PER マルチ

プル法」で個々に求め、その加重平均の下限株価と上限株価に発行済株式総数をかけて、上場後の時価の企

業価値下限を 27 兆 9,140 億ドン(約 1,396 億円)から 35 兆 2,840 億ドン(約 1,764 億円)とした。それ

ぞれの計算方法に対し、2 つの原油価格変動シナリオを作成・適用し、下限・上限の変動幅を確認している。

一番目のシナリオ(可能性が高いケース)は 2016 年のブレント原油の平均価格が 45 米ドル/バレルで、2017

年は 55 米ドル、2018 年以降は 65 米ドルで推移すると予測している。二番目のシナリオ(可能性が低いケ

ース)は予測期間中に平均原油価格が一番目のシナリオより、更に 8 米ドル高いとしている。

図 118: 上場後株式評価範囲

出所: 当社

残余利益法

PER マルチプ

ル法

約 1,764 億円 約 1,396 億円

Page 105: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 105

財務諸表

図 119: 損益計算書

単位: 10 億 VND 2014 年実績 2015 年実績 2016 年予測

売上高 8,706.3

(約 435 億円)

19,845.5

(約 992 億円)

28,118.8

(約 1,406 億円)

売上原価 7,826.5

(約 391 億円)

17,728.7

(約 886 億円)

24,683.9

(約 1,234 億円)

売上総利益 879.8

(約 44 億円)

2,116.8

(約 106 億円)

3,434.9

(約 172 億円)

販売宣伝費 186.4

(約 9 億円)

317.8

(約 16 億円)

431.8

(約 22 億円)

一般管理費 141.0

(約 7 億円)

210.2

(約 11 億円)

189.0

(約 9 億円)

営業利益 552.4

(約 28 億円)

1,588.7

(約 79 億円)

2,814.1

(約 141 億円)

金融収益 63.3

(約 3 億円)

66.8

(約 3 億円)

86.3

(約 4 億円)

金融費用 196.6

(約 10 億円)

474.7

(約 24 億円)

362.8

(約 18 億円)

内 支払利息 132.2

(約 7 億円)

272.9

(約 14 億円)

176.6

(約 9 億円)

関連会社損益 (10.2)

(約-0.5 億円)

(20.6)

(約-1.0 億円)

(4.8)

(約-0.2 億円)

その他損益 35.4

(約 1.8 億円)

8.5

(約 0.4 億円)

-

税引き前利益 444.3

(約 22 億円)

1,168.8

(約 58 億円)

2,532.7

(約 127 億円)

法人税 84.2

(約 4.2 億円)

(2.1)

(約-0.1 億円)

91.9

(約 4.6 億円)

少数株主損益前税引き後利益 360.2

(約 18 億円)

1,170.9

(約 59 億円)

2,440.8

(約 122 億円)

少数株主損益 (0.3)

(約-0.02 億円)

0.4

(約 0.02 億円)

0.8

(約 0.04 億円)

少数株主損益控除後税引き後利益

(公表数値)

360.4

(約 18 億円)

1,170.5

(約 59 億円)

2,440.0

(約 122 億円)

少数株主損益控除後税引き後利益

(調整済)

394.0

(約 20 億円)

1,459.0

(約 73 億円)

2,524.6

(約 126 億円)

EBITDA 997.3

(約 50 億円)

2,133.0

(約 107 億円)

3,590.7

(約 180 億円)

基本 EPS(公表数値、単位:VND) 2,484

(約 12 円)

8,140

(約 41 円)

9,766

(約 49 円)

基本 EPS(調整済、単位:VND) 2,719

(約 14 円)

4,721

(約 24 円)

9,593

(約 48 円)

完全希薄化後 EPS(単位:VND) 1,201

(約 6 円)

3,902

(約 20 円)

8,133

(約 41 円)

Page 106: ベトジェット航空(VJC)...為替換算レート: 100VND=0.50YEN 3 3. 目指す世界の総人口およそ74億人の半分の取り込み Vietjet航空によると世界の総人口のおよそ50%がホーチミン市を中心とする2,500海里内に住

為替換算レート: 100VND=0.50YEN 106

図 120: 貸借対照表(1)

単位: 10 億 VND 2014 年実績 2015 年実績 2016 年予測

現金及び現金同等物 526.7

(約 26 億円)

923.5

(約 46 億円)

924.0

(約 46 億円)

短期投資 270.0

(約 14 億円)

270.0

(約 14 億円)

270.0

(約 14 億円)

売掛金・受取手形 770.6

(約 39 億円)

1,745.2

(約 87 億円)

2,177.9

(約 109 億円)

棚卸資産 93.6

(約 5 億円)

164.4

(約 8 億円)

190.7

(約 10 億円)

その他流動資産 2,569.3

(約 128 億円)

3,639.9

(約 182 億円)

6,902.7

(約 345 億円)

流動資産総額 4,230.2

(約 212 億円)

6,743.1

(約 337 億円)

10,465.2

(約 523 億円)

償却前固定資産総額 182.5

(約 9 億円)

177.0

(約 9 億円)

357.1

(約 18 億円)

- 減価償却 (16.5)

(約-0.8 億円)

(21.9)

(約 1.1 億円)

(36.0)

(約-1.8 億円)

償却後固定資産総額 166.1

(約 8 億円)

155.1

(約 8 億円)

321.1

(約 16 億円)

長期投資 8.4

(約 0.4 億円)

8.4

(約 0.4 億円)

3.6

(約 0.2 億円)

その他長期資産 3,272.4

(約 164 億円)

5,138.3

(約 257 億円)

7,719.9

(約 386 億円)

固定資産総額 3,446.9

(約 172 億円)

5,301.8

(約 265 億円)

8,044.6

(約 402 億円)

資産合計 7,677.1

(約 384 億円)

12,044.9

(約 603 億円)

18,509.8

(約 925 億円)

買掛金 1,024.6

(約 51 億円)

1,048.0

(約 52 億円)

1,522.8

(約 76 億円)

短期借入金 2,602.2

(約 130 億円)

3,543.5

(約 177 億円)

5,438.6

(約 272 億円)

その他流動負債 1,636.7

(約 82 億円)

2,568.2

(約 128 億円)

2,863.2

(約 143 億円)

流動負債総額 5,263.5

(約 263 億円)

7,159.6

(約 358 億円)

9,824.6

(約 491 億円)

長期借入金 - - 648.5

(約 33 億円)

その他固定負債 1,446.9

(約 72 億円)

2,737.8

(約 137 億円)

4,000.0

(約 200 億円)

負債合計 6,710.4

(約 335 億円)

9,897.4

(約 495 億円)

14,473.1

(約 723 億円)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 107

図 121: 貸借対照表(2)

単位: 10 億 VND 2014 年実績 2015 年実績 2016 年予測

優先株式 - - -

払込済/発行済資本金 800.0

(約 40 億円)

1,450.0

(約 73 億円)

2,500.0

(約 125 億円)

追加株式資本・資本剰余金 - - -

利益剰余金 165.5

(約 8 億円)

685.7

(約 34 億円)

1,525.4

(約 76 億円)

その他持分 0.5

(約 0.03 億円)

10.6

(約 0.5 億円)

10.6

(約 0.5 億円)

少数株主持分 0.7

(約 0.04 億円)

1.1

(約 0.06 億円) -

純資産合計 966.7

(約 48.7 億円)

2,147.4

(約 107.6 億円)

4,036.0

(約 202 億円)

負債+純資産の合計 7,677.1

(約 384 億円)

12,044.9

(約 603 億円)

18,509.8

(約 925 億円)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 108

図 122: キャッシュ・フロー計算書

単位: 10 億 VND 2014 年実績 2015 年実績 2016 年予測

現金の期首残高 309.1

(約 15 億円)

526.7

(約 26 億円)

923.5

(約 46 億円)

純利益 360.2

(約 18 億円)

1,170.6

(約 58 億円)

2,440.8

(約 122 億円)

減価償却費 409.5

(約 20 億円)

536.0

(約 27 億円)

776.6

(約 39 億円)

運転資金の増減 288.8

(約 14 億円)

1,285.8

(約 64 億円)

(727.2)

(約-36 億円)

その他の調整 (829.5)

(約-41 億円)

(1,868.8)

(約-93 億円)

33.9

(約 2 億円)

営業活動によるキャッシュ・フロー 229.0

(約 11 億円)

1,123.6

(約 56 億円)

2,524.1

(約 127 億円)

純資本支出 (360.5)

(約-18 億円)

(433.0)

(約-22 億円)

(180.1)

(約-9 億円)

純投資 (2,528.1)

(約-126 億円)

(1,039.6)

(約-52 億円)

(4,191.3)

(約-210 億円)

投資活動によるキャッシュ・フロー (2,906.0)

(約-145 億円)

(1,472.6)

(約-73 億円)

(4,371.4)

(約-219 億円)

配当金の支払額 - - (625.0)

(約-31 億円)

Δ 株式資本 - - -

Δ 長期負債 7,131.5

(約 357 億円)

1,895.1

(約 95 億円)

Δ 短期負債 (4,738.2)

(約-237 億円)

941.2

(約 47 億円)

648.5

(約 32 億円)

その他の財務活動によるキャッ

シュ・フロー

501.0

(約 25 億円)

(201.1)

(約-10 億円)

-

財務活動によるキャッシュ・フロー 2,894.3

(約 145 億円)

740.1

(約 37 億円)

1,918.6

(約 96 億円)

現金の増減額 217.4

(約 11 億円)

391.1

(約 20 億円)

71.3

(約 4 億円)

現金の期末残高 526.7

(約 26 億円)

923.5

(約 46 億円)

994.8

(約 50 億円)

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 109

図 123: 主要経営指標(1)

レシオ 2014 年実績 2015 年実績 2016 年予測

成長性

売上成長率 129.7% 127.9% 41.7%

EBIT 成長率 769.1% 187.6% 77.1%

税引き前利益成長率 na 163.0% 116.8%

EPS 成長率(調整済) 641.1% 73.6% 103.2%

収益性 - - -

売上総利益率 10.1% 10.7% 12.2%

EBIT 利益率 6.3% 8.0% 10.0%

EBITDA 利益率 11.5% 10.7% 12.8%

少数株主損益控除後純利益率(調

整済) 4.5% 7.4% 9.0%

ROE 45.9% 75.5% 79.2%

ROA 6.8% 11.9% 16.0%

効率性

在庫日数 4.6 5.0 5.0

売掛金回収日数 2.1 11.3 11.3

買掛金支払日数 40.0 39.6 39.6

キャッシュ回転日数 (33.3) (23.3) (23.3)

流動性

流動比率(倍) 0.8 0.9 1.1

当座比率(倍) 0.2 0.2 0.2

現金比率(倍) 0.1 0.1 0.1

総資産負債比率% 33.9% 29.4% 32.9%

負債/投下資本比率% 72.9% 62.3% 60.1%

純負債/自己資本比率% 214.9% 122.1% 111.9%

インタレスト・カバレッジ・レシオ 4.7 6.1 16.4

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 110

図 124: 主要経営指標(2)

主要経営指標 2015 年 2016 年(予)

期末の航空機の機数 30.0 38.0

- Airbus A320 27.0 33.0

- Airbus A320 neos - -

- Airbus A321 3.0 5.0

- Airbus A321 neos - -

搭乗者数 (百万人) 7.9 14.2

座席利用率(load factor)108 88.1% 87.0%

- 国内線 88.7% 87.9%

- 国際線 83.8% 83.7%

ASK (百万)109 11,054.8 18,753.9

- 国内線 8,641.5 14,714.1

- 国際線 2,413.3 4,039.7

RPK (百万)110 9,690.4 16,315.0

- 国内線 7,667.9 12,933.7

- 国際線 2,022.5 3,381.3

CASK (ドン)111 905.4 786.6

CASK (米セント) 4.14 3.76

燃料費を除く CASK (VND) 530.2 486.3

燃料費を除く CASK (米セント)(6) 2.42 2.40

RASK (米セント)112 4.58 4.23

RASK – CASK のスプレッド (米セント) 0.44 0.47

108

load factor 有償搭乗率、座席利用率 109

ASK= available seat kilometer 有効座席キロ数◆総座席数に輸送距離を乗じた数値(キロメートル)。旅客輸送力を意味する 110

RPK(Revenue passenger kilometer) = 有償旅客キロ数(料金を支払って航空機に搭乗した旅客の総数に飛行距離を乗じた値(キロメートル)) 111

CASK=Cost Per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの営業経費 112

RASK= Revenue per Available Seat Kilometer:有効座席キロ数当たりの旅客運賃収入

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 111

【memo】

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為替換算レート: 100VND=0.50YEN 112

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