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1 授業コミュニケーション -教師のことばから授業環境を高めるために- 中井 弘一 要旨 教員免許状の取得制度が変革され長としている。昨今の授業環境の低下に対応するためのもの であろう。「トンデモ授業」を行う教員の資質にも厳しい目が向けられ、学校教員のコミュニケーショ ン能力不足も問われている。今、教員養成に教科指導における体系的教科の専門知識の修得が 求められている中、授業環境を高める教師の言葉授業コミュニケーションについて一考する。 1. はじめに 文部科学省は、大学 4 年間で必要単位を修得すれば教員免許が取得できる現行制度を変革し、 正規教員として本格的に教壇に立つには教職大学院修了など修士課程レベルの免許取得を求 める新制度の検討を始め、その諮問機関、中央教育審議会の特別部会は、教員免許について、 大学の学部卒業段階で与える暫定的な資格「基礎免許状」、教員採用後に大学院などで学んだ 者に与える修士レベルの「一般免許状」、より高い専門性を身につけた者に与える「専門免許状」 の3段階とする制度改革案をまとめた。 この案が実際にどう具現化されるかは政権の持続問題などもからみ予想できないが、現在の教職 課程制度の中で課題として検討されていることは、教員の教科内容に対する専門知識の体系的な 修得である。現行の教員免許状取得の所要資格として必要な科目は、「教科に関する科目」「教 職に関する科目」「教科又は教職に関する科目」「免許法施行規則66条の6に定める科目」である。 これに対し、教職課程の学問化が求められ、 ・教職に関する専門科目と教科に関する専門科目の一体化 ・専門科目教育を具体化する計画、方法等に関する学問 ・教科に関する専門知識と学習関連科学の活用による授業計画作成等に関する指導 ・教科専門科目と教科指導法と教育実習による体系的なプログラムの実践 を踏まえた「教科内容学」「教科内容構成学」の修得をめざすことの重要性が教職教育関係者で 叫ばれている。 教科内容構成の体系化を図るには教科内容について教育実践の観点から捉え直しが必要であ り、教育実践上の課題を十分に認識しなければならない。「教科内容」に対する識見をどう育成す るかが大きなテーマであるが、同時にその識見を生徒に伝達する「授業におけるコミュニケーション」 も認識すべき教育実践上の課題である。本稿では、教師の言葉が授業環境を高めるとし、授業コミ ュニケーションについて一考する。 2. 教育問題として取り上げられた教師の授業でのコミュニケーション 朝日新聞朝刊(2010 年 11 月 7 日)の特集記事「割り算の『殺人文章題』、セクハラサイコロ。耳を 疑う内容の授業や試験が各地で相次いで発覚した。先生たちはなぜそんな非常識な授業をしてし まうのか」など、「トンデモ授業」が昨年各紙で取り上げられた。たとえば、小学校 男性教諭(45)が

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授業コミュニケーション

-教師のことばから授業環境を高めるために-

中井 弘一

要旨

教員免許状の取得制度が変革され長としている。昨今の授業環境の低下に対応するためのもの

であろう。「トンデモ授業」を行う教員の資質にも厳しい目が向けられ、学校教員のコミュニケーショ

ン能力不足も問われている。今、教員養成に教科指導における体系的教科の専門知識の修得が

求められている中、授業環境を高める教師の言葉̶授業コミュニケーションについて一考する。

1. はじめに 文部科学省は、大学 4 年間で必要単位を修得すれば教員免許が取得できる現行制度を変革し、

正規教員として本格的に教壇に立つには教職大学院修了など修士課程レベルの免許取得を求

める新制度の検討を始め、その諮問機関、中央教育審議会の特別部会は、教員免許について、

大学の学部卒業段階で与える暫定的な資格「基礎免許状」、教員採用後に大学院などで学んだ

者に与える修士レベルの「一般免許状」、より高い専門性を身につけた者に与える「専門免許状」

の3段階とする制度改革案をまとめた。

この案が実際にどう具現化されるかは政権の持続問題などもからみ予想できないが、現在の教職

課程制度の中で課題として検討されていることは、教員の教科内容に対する専門知識の体系的な

修得である。現行の教員免許状取得の所要資格として必要な科目は、「教科に関する科目」「教

職に関する科目」「教科又は教職に関する科目」「免許法施行規則 66条の 6に定める科目」である。

これに対し、教職課程の学問化が求められ、

・教職に関する専門科目と教科に関する専門科目の一体化

・専門科目教育を具体化する計画、方法等に関する学問

・教科に関する専門知識と学習関連科学の活用による授業計画作成等に関する指導

・教科専門科目と教科指導法と教育実習による体系的なプログラムの実践

を踏まえた「教科内容学」「教科内容構成学」の修得をめざすことの重要性が教職教育関係者で

叫ばれている。

教科内容構成の体系化を図るには教科内容について教育実践の観点から捉え直しが必要であ

り、教育実践上の課題を十分に認識しなければならない。「教科内容」に対する識見をどう育成す

るかが大きなテーマであるが、同時にその識見を生徒に伝達する「授業におけるコミュニケーション」

も認識すべき教育実践上の課題である。本稿では、教師の言葉が授業環境を高めるとし、授業コミ

ュニケーションについて一考する。

2. 教育問題として取り上げられた教師の授業でのコミュニケーション

朝日新聞朝刊(2010 年 11 月 7 日)の特集記事「割り算の『殺人文章題』、セクハラサイコロ。耳を

疑う内容の授業や試験が各地で相次いで発覚した。先生たちはなぜそんな非常識な授業をしてし

まうのか」など、「トンデモ授業」が昨年各紙で取り上げられた。たとえば、小学校 男性教諭(45)が

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3 年生の算数で、「子どもが 18 人います。1 日 3 人ずつ殺します。何日で殺せるでしょう」と口頭で

出題した。ここまで非常識でなくても、筆者が報告を受けた事象で、ある中学校の英語教員が「who

の定着を図って、生徒の会話練習で、生徒(中1)に、Who is your lover? My lover is Ayase

Haruka.と会話例をとりあげた」と、個人的なこと尋ねる内容や不適切な言葉を取り上げた例があ

る。

これらの事象に対して推測できる教員の意図は、楽しく課題を伝えたいという授業コミュニケーシ

ョン意識であったと思われる。児童生徒の学習意欲を高めるためにが「トンデモ授業」コミュニケー

ションとなってしまった。

前出の朝日新聞の記事では、こうした事象に対するコメントとして、カリスマ予備校講師として紹

介されている竹岡広信氏、東北福祉大准教授上條晴夫氏、歌人の俵万智氏の意見が取り上げら

れていた。竹岡氏は「授業の中で使えるネタはいくらでもある。先生たちは、もっと自分の担当教科

を好きになって、知識を身につけることはできるはずだ。生徒の気を引くには、こうした正攻法が一

番いい」と述べている。上條氏は「教師というだけで与えられていた権威がなくなった今、子どもから

遠いところに立って指導しようとしても、子どもに染みこまなくなっている。…子どもたちの中で尊敬

されるのも、まじめな子より冗談のうまい子、ユーモアのある生徒になっていた」と「お笑い」のコミュ

ニケーションの必要性を述べている。俵万智氏は「子どもたちを授業の力で引きつけられないから

刺激的な言葉を使ってしまったのではないか。近くでパンと手をたたけば誰でも振り向く。同じよう

に無理やり引きつけようとしていた気がする。刺激の強い言葉で人を引きつけるのは社会全体の風

潮だ。テレビやネット、政治家まで、あらゆるところで短くて強い言葉があふれている。じっくり伝え合

うのではなくワンフレーズで振り向かせる風潮が、教師にも影響を与えていると思う。言葉が人の心

にどう波及していくかという点に考えが至らない点も問題だ。先生の日本語力が落ちているのでは

ないか。」と世相分析と共に教員のコミュニケーション能力の欠如を危惧している。

教室という環境において、学習意欲を高めるコミュニケーションを行うスキルを教員は十分習得し

ているであろうか。授業コミュニケーションをどのようにとらえているだろうか。これは「トンデモ授業」

を防ぐ一つの鍵である。

3. 授業コミュニケーションを認識する体験活動

筆者は現職の教員研修で、Wessels(1987) の Drama で紹介されている活動を使い、生徒にコミ

ュニケーションで大切な要素を体験させる必要性を説明すると同時に、教員と生徒のコミュニケー

ションにおいても認識すべき大切な要素であると指摘してきた。

・Mirror hands 鏡の手

What to do

Students stand facing each other in pairs with their hands raised to shoulder height, palms

facing outward, and as close as possible to their partners' without actually touching.

One student is the leader, and begins to move both hands in a plane, i.e. always keeping

the palms facing outward no matter in which direction the hands are moved. His or her

partner has to follow as accurately as possible, as if in a mirror.

・Handshakes 握手

What to do

Everyone walks freely about the room. The object is to shake hands with everyone in the

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room, without speaking, but with an appropriate facial expression.

Mirror hands の活動では、この活動の指示にバリエーションを持たせ、最初は一定の距離を置い

て行い、次に限りなく手のひらをお互い近づけるように指示して行う。最後に手を合わせて行わせる。

活動を行った者の体験として、いくら距離的に接近していても相手の意思を即座に判断できないこ

とが分かる。手を合わせれば 100%の意思疎通が図れるがそういう状況は現実ではほとんど考えら

れないことが体得できる。つまり、教員が生徒のことを考えて自分では生徒の身近に位置していると

意識して話してもうまく通じないことがあるということである。また、「人は見た目が 70%」とよく言われ

るが、シュロスバーグ(1952)の写真分類研究による表情相関図(表情の円錐モデル:「笑い」̶「驚

き」̶「恐れ」̶「怒り」̶「嫌悪」̶「軽蔑」の六角形サイクル)のように、隣接する表情は混同されやす

いことがある。二つ目の活動では、さらに、言葉を発することのできないもどかしさやコミュニケーショ

ンのもの足りなさを感得し、言葉の持つ働きを再認識できる。

これらの活動で得られるコミュニケーションの基盤となる概念を教員は十分認識しておく必要があ

る。コミュニケーション活動として紹介されているものは、コミュニケーションのスキルに関するものが

多く、基盤となる概念を認識していないとコミュニケーションはドリルに陥ることになる。こうした認識

は教職経験を経る要素が大きいのだろう。1994 年の大学入試センター試験の英語の問題で小学

校教員の教室での印象が表として示されていた。

表1 小学生による教職経験年齢別印象:「とても満足」「非常に満足」の合計%

Question Items New Middle -standing Veteran

1 Shows a sense of humor in class 42 56 70

2 Explains clearly 33 58 68

3 Teachers in a relaxed and informal manner 30 46 65

4 Writes neatly on the blackboard 9 43 56

5 Lets pupils ask questions in class 18 30 47

6 Makes checks and comments in notebooks 22 30 43

7 Speaks loudly and clearly 45 85 54

8 Treats all pupils equally 43 58 42

9 Cares about pupils’ opinions 47 43 17

10 Spends time with pupils between classes 25 10 6 new: with less than three years' experience, middle-standing: ten to twenty years, veteran: twenty to thirty years

表1によると、ベテラン教員がコミュニケーションに関係する項目において満足度が高い。第 9 項目

「児童の意見を大切にする」では新任教員の満足がベテラン教員より高いことは注目に値する。

4. 授業コミュニケーションのアンケート調査

上條晴夫(2010)、山田洋一(2010)の「教師の話し方」解説を下に、高等学校教員と本学同僚、

本学の学生の協力を得て授業コミュニケーションに関するアンケート調査を 2010 年 5 月に行った。

表 2 授業コミュニケーション・アンケート回答者数

A校 B高校 高校 OJC学生

理系 文系 計 校 計 a/adv. c/d 計

72 111 183 97 280 50 63 113

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この調査で、生徒・学生が効果的と考える教師の話し方・対話術で「非常に効果的である」「効果

的である」と回答した項目の中で高い割合の回答項目を調べた。大阪女学院大学・短期大学生は

1 年生 a クラス、cクラス、dクラス及び 2 年生 adv.クラスの学生を対象に調査を行い、「高校時代に

おいて」印象を持っていたこととして回答させた。

4.1 「非常に効果的である」「効果的である」の回答の高かった項目調査結果

表3 学校別 top10 項目順位表

A 高校

B 高校 2校計

大阪女学院

理科系 普通科 A C/D 計

1

「たとえば」で具

体的な話をす

「たとえば」で具

体的な話をす

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

最後のまとめを

具体的にする

まずは笑顔で

話し出す

「たとえば」で具

体的な話をす

「たとえば」で具

体的な話をす

2 黒板に図を描

いて話す

黒板に図を描

いて話す

最後のまとめを

具体的にする

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

「たとえば」で具

体的な話をす

例示して、納得

させる

まずは笑顔で

話し出す

3 例示して、納得

させる

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

黒板に図を描

いて話す

「たとえば」で具

体的な話をす

共に悩んでみ

まずは笑顔で

話し出す

例示して、納得

させる

4 短文主義で

話をする

例示して、納

得させる

「たとえば」で具

体的な話をす

黒板に図を描

いて話す

例示して、納得

させる

仕草・動作を入

れて話す

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

5 まずは笑顔で

話し出す

「ガチでやりま

す」などくだけ

た言い方で言

い換える

例示して、納得

させる

複数の理由を

順序よく話す

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

重点をキーワ

ードにしてくり

返す

仕草・動作を入

れて話す

6 仕草・動作を入

れて話す

最後のまとめを

具体的にする

複数の理由を

順序よく話す

例示して、納得

させる

仕草・動作を入

れて話す

黒板に図を描

いて話す

黒板に図を描

いて話す

7

「ガチでやりま

す」などくだけ

た言い方で言

い換える

複数の理由を

順序よく話す

二つを比較し

て話す

「ガチでやりま

す」などくだけ

た言い方で言

い換える

黒板に図を描

いて話す

自分のエピソー

ドで話す

最後のまとめを

具体的にする

8 自分のエピソ

ードで話す

仕草・動作を入

れて話す

仕草・動作を入

れて話す

二つを比較し

て話す

最後のまとめを

具体的にする

最後のまとめを

具体的にする

自分のエピソー

ドで話す

9 短い話をする 自分のエピソ

ードで話す

「つまり」でキー

ワード化する

仕草・動作を入

れて話す

「こんなことあ

る」等あるある

ネタを話す

会話を入れて

話す

共に悩んでみ

10 複数の理由を

順序よく話す

まずは笑顔で

話し出す

「ガチでやりま

す」などくだけ

た言い方で言

い換える

「つまり」でキー

ワード化する

二つを比較し

て話す

予告してから話

をする

予告してから話

をする

理系文系別の傾向など細かな分析は行っていないが、生徒が求める教員の対話術の全体的な

傾向として、

・ わかりやすいこと

・ 具体的であること

・ 端的にキーとなる考えが分かること

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・ 図示などによる直解型の説明

と、図解などを含めわかりやすく説明して欲しい要望が強いことが分かる。

これに対して教員はどう対応しているであろうか。調査人数が少ないのであくまで参考値であるが、

B 高校の英語科教員 10 人の協力で得た結果を生徒・学生が効果的と回答した項目でまとめると

表 4 のようになる。

表 4 B 校英語科教員の項目別実施状況回答 (人数)

いつも 極力 時々 あまり ほと

んど

いつも

極力

時々

あまり

ほとんど

1 「たとえば」で具体的な話をする 1 6 3 70% 30%

2 黒板に図を描いて話す 1 2 2 2 3 30% 70%

3 例示して、納得させる 2 5 3 70% 30%

4 最後のまとめを具体的にする 3 2 3 1 1 50% 50%

5 重点をキーワードにしてくり返す 1 3 2 3 1 40% 60%

6 まずは笑顔で話し出す 1 2 7 30% 70%

7 仕草・動作を入れて話す 2 3 3 2 20% 80%

8 複数の理由を順序よく話す 3 3 3 1 60% 40%

9 「つまり」でキーワード化する 3 4 3 0% 100%

10 「ガチでやります」などくだけた言い方

で言い換える 1 2 3 2 38% 62%

生徒・学生が効果的と回答した項目において、「たとえば」「例示」などわかりやすく説明しようと試

みているが、図解や重点項目の整理などたとえでない項目整理のコミュニケーションが不足してい

る。これはどのようなことに起因するのであろうか。

5.まとめ

藤沢晃治(2010) は『「交渉力」を強くする』において、以下の項目を交渉に失敗する要因として

挙げている。

・ 性格が「お人好し」すぎる

・ 自分から先に本音を明かしてしまう

・ 主張に説得力がない

・ 交渉姿勢がかたくなである

・ 感情的になる

・ 安易な妥結案に飛びつく

・ 相手の話を聞かない

・ 相手の視点で考えられない

・ 相手の期待値を上げてしまう

・ ハッタリが過ぎる

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これらの失敗の要因は、教員の授業コミュニケーションにおいても見られる要素である。こうした授

業コミュニケーションの未熟・不足は、結果的に現在、教職課程の再考で課題となっている教科

内容学に基づく専門知識の不足であるように思われる。

図1 授業コミュニケーションの充実を図る構造

教員が教室でとるべきリーダーシップの機能として、supporting, coaching, directing, delegating

が考えられる。Whitaker, P. (1993)は、これらの働きを次のように示している。

・ Supporting:Being available, Showing interest, Noting quality work, Encouraging

・ Coaching:Talking things through, Joint problem solving, Working alongside, Trying out ideas

・ Directing: Giving clear instructions, Demonstrating, Setting tasks, Assessing outcomes

・ Delegating: Leaving them to get on, Being available, Showing interest, Trusting これらは授業コミュニケーションの機能でもある。これらの4機能をもとに生徒と対話を進めるには、

やはり扱う教材に対し、教材を見る眼、教材の読み込み、教材に関する体系的な知識、教材・学習

材の体系的な学習プロセスする深い専門知識と学習者である生徒の学習実態の理解を併せた上

での明確な指導目標の設定が必要不可欠である。また、学習者である生徒も一つの枠にあてはま

るものでなく個別である。個に応じたつながりを教員は教室の状況を踏まえ準備をすると同時に瞬

時に判断しなければならない。教材研究や学習プロセスに対する深い専門知識をもとに相手に応

じた柔軟な対応が必要である。

こうしたコミュニケーションには、生徒の考えや意見を引き出す対話型の授業を行うことが望まれる。

生徒の思考は対話の中で生まれ、対話に内在する論理が生徒の思考力を育成する。対話型の授

対話型の授業 Interactive Learning Environment

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業コミュニケーションは、単独にスキル育成できるものでなく、教科内容学と統合し実際の教育実践

の場で教材を活かす質の高いやりとりの中で育成されるものであろう。

引用・参考文献

秋山喜代美(編)(2010)『教師の言葉とコミュニケーション』教育開発研究所

秋田喜代美、キャサリン・ルイス(2008)『授業の研究教師の学習』明石書店

上條晴夫(2010)『教師の話し方 スピード・上達法』たんぽぽ出版

岡田啓司(2001)『コミュニケーションと人間形成』

佐藤幸司(2010)『プロ教師のすごいほめ方・叱り方』学陽書房

高橋早苗・鈎治雄(2006)『「教師̶生徒関係」におけるコミュニケーションの課題

ー中学校教師を対象とした面接調査を通して』創価大学教育学部論文集第59号 pp.23-54

辰野千壽(2009)『科学的根拠出示す学習意欲を高める 12 の方法』図書文化

新山田信夫編著(1999)『ティーチャーズ ルール 300』、東洋館出版社

諸富祥彦(2008)『子どものやる気を引き出すできる教師の言葉の魔法』教育開発研究所

藤沢晃治(2010) 『「交渉力」を強くする』講談社 BlueBacks

山田洋一(2010)『発問・説明・指示を超える 対話術』さくら社

Alan Maley & Alan Duff(1987) Drama Techniques in Language Learning, Cambridge

Charlyn Wessels(1987) Drama, Oxford Univ. Press

Whitaker, P. (1993) Managing Change in Schools, Open University Press, p.134

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