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ハイブリッド クラウド向けプラットフォーム テクニカル ホワイト ペーパー 発行日: 2013 9 (更新) 対象: SQL Server および Windows Azure 概要: クラウド コンピューティングはコンピューティングに新しいパラダイム シフトをもたらし、組織は、高いスケールと柔軟性を 備えたクラウドでデータベース アプリケーションを実行することによるコスト面での利点を実現しています。Microsoft SQL Server はクラウド環境で非常に適切に動作するので、SQL Server をプライベート クラウド、ハイブリッド クラウド、またはパ ブリック クラウドに容易に展開し、開発や管理に使い慣れたツールを使用することができます。パブリック クラウドでは、 Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server または Windows Azure SQL データベースを実行するよう選択でき ます。Windows Azure バーチャル マシン内の Microsoft SQL Server は、オンプレミスの SQL Server と同等の完全な 機能を提供します。Windows Azure SQL データベースは、数百万のユーザーまで拡張するクラウドベースのリレーショナル データベース アプリケーションを構築するための強力な基盤を提供します。

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ハイブリッド クラウド向けプラットフォーム

テクニカル ホワイト ペーパー

発行日: 2013 年 9 月 (更新)

対象: SQL Server および Windows Azure

概要: クラウド コンピューティングはコンピューティングに新しいパラダイム シフトをもたらし、組織は、高いスケールと柔軟性を

備えたクラウドでデータベース アプリケーションを実行することによるコスト面での利点を実現しています。Microsoft SQL

Server はクラウド環境で非常に適切に動作するので、SQL Server をプライベート クラウド、ハイブリッド クラウド、またはパ

ブリック クラウドに容易に展開し、開発や管理に使い慣れたツールを使用することができます。パブリック クラウドでは、

Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server または Windows Azure SQL データベースを実行するよう選択でき

ます。Windows Azure バーチャル マシン内の Microsoft SQL Server は、オンプレミスの SQL Server と同等の完全な

機能を提供します。Windows Azure SQL データベースは、数百万のユーザーまで拡張するクラウドベースのリレーショナル

データベース アプリケーションを構築するための強力な基盤を提供します。

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著作権

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目次

ハイブリッド クラウド: 場所に制限されることのないデータベース ............................................................. 4

データベース アプリケーションのポートフォリオ ビュー ........................................................................................................... 4

従来のベア メタル展開 .................................................................................................................................................................. 5

クラウド展開: パブリック クラウドとプライベート クラウド .............................................................................................................. 6

マイクロソフトのパブリック クラウドおよび SQL Server .............................................................................9

クラウド展開が合理的な理由および状況 ....................................................................................................................... 10

Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server ............................................................................................................ 10

Windows Azure SQL データベース .......................................................................................................................................... 13

一般的なクラウド シナリオでの機能の提供 ......................................................................................... 17

Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server のシナリオ .................................................................................. 17

既存の SQL Server アプリケーションの移行............................................................................................................................. 18

開発およびテストのサポート ....................................................................................................................................................... 24

オンプレミス データベースのクラウドへのバックアップ ................................................................................................................. 25

Windows Azure VM へのオンプレミス アプリの拡張 ............................................................................................................ 29

Windows Azure SQL データベースのシナリオ ............................................................................................................... 30

新しいクラウド向けアプリケーションの開発 ............................................................................................................................... 30

Windows Azure SQL データベースへのオンプレミス アプリの拡張 ..................................................................................... 34

ハイブリッド シナリオ .......................................................................................................................................................... 34

Code far アプリ: エンタープライズ クラスのデータ層へのシンプルなパス ............................................................................... 34

SQL データ同期によって時々接続されるアプリ ...................................................................................................................... 35

SQL データベースと Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server (単一のアプリへの統合) ............................. 36

Windows Azure ストレージの SQL Server データおよびログ ファイル ...................................................................... 37

まとめ ................................................................................................................................................... 38

詳細情報: ........................................................................................................................................... 39

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ハイブリッド クラウド: 場所に制限されることのないデータベース

最大級のパブリック Web サイトから小規模の部門アプリケーションまで、ほぼすべてのアプリケーション シナリオの大半は何ら

かの種類のデータベース管理システムに依存しています。データベースは最新のアプリケーションのスタックの一部となり、開

発者や IT 担当者はリレーショナル データベースの偏在性には注意を払わなくなりました 組織でのクラウド コンピューティン

グの活用では、クラウド対応データベース システムの可用性がその成功にとって非常に重要になります。

このホワイト ペーパーでは、クラウド コンピューティングでのリレーショナル データベース管理システムに関するマイクロソフトの

ビジョンについて説明します。これは、業界標準の Microsoft SQL Server テクノロジ セットを活用し、組織で現在実現で

きる一連の展開アプローチで使用できるようにするハイブリッド IT ビジョンです (図 1)。

図 1: IT 部門は、オンプレミスとクラウドでのホスティング提供を組み合わせてビジネス ニーズに対応できます。

データベース アプリケーションのポートフォリオ ビュー

ハイブリッド クラウドの概念では、組織には通常、ビジネス全体にわたって展開されているさまざまなアプリケーションのポート

フォリオと、独自の要件を持つ広範な環境があることが前提となります。一部のアプリケーションでは、クラウド コンピューティ

ングで提供されるコモディティ化された "汎用サイズ" の環境に展開できない詳細で複雑なハードウェア構成を必要としま

す。その一方で、需要のピークと谷間が極めて大きいアプリケーションのために十分なレベルのハードウェアをプロビジョニング

することは経済的に難しいので、多くのビジネスには大規模なパブリック クラウドの活用が非常に望ましいワークロードがあり

ます。ハイブリッド クラウドに対するマイクロソフトの目標は、アプリケーションを実行する方法および場所に関する広範な選

択肢を提供すると同時に、ソリューションのポートフォリオ全体で共通のサーバー製品、ツール、および専門知識を使用でき

るようにすることです (図 2)。

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図 2: データベース展開の各アプローチには固有の利点と課題があります。ますます多くの組織がワークロードをクラウドに移動していま

す。

従来のベア メタル展開

過去 10 年間での仮想化テクノロジの大幅な向上にもかかわらず、特定のワークロードの仮想化には依然としてパフォーマ

ンス上の大きな欠点があります。大規模で複雑なミッション クリティカルのオンライン トランザクション処理システム (OLTP)

は、オペレーティング システムとデータベース プラットフォームが "メタル上" に直接インストールされる大規模の専用サーバー

に残ったままです。

仮想化されない専用ハードウェア

ほとんどのワークロードの場合、仮想化は総保有コストにおける大きなメリットを提供するので、最適なアプローチです。しか

し、スケール アップ機能が重要である状況 (購入可能な最大規模のサーバー マシンから可能な限り最大のパフォーマンス

を引き出す必要がある場合、およびすべての些細な追加パフォーマンスを無視できない場合) では、組織は、ワークロード

を "メタル上" で実行する必要があります。

仮想化されない環境で実行するという要件の必然的な結果として、通常、アプリケーションには、その運用を専用とする特

定のサーバー ハードウェアが必要になります。

物理チューニング

大量の専用ハードウェア リソースを実行する主な利点は、高度な物理チューニングの機会が多くあることです。SQL Server

などのデータベース展開の最も重要な領域は、ストレージ サブシステムの物理構成です。クラウド環境に移行すると、組織

は物理チューニングを実行する機能を失います。

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クラウド展開: パブリック クラウドとプライベート クラウド

プライベート クラウドはパブリック クラウドのすべての特性を備えることが可能ですが、必ずしもすべての特性を備えなければ

ならないことを意味するものではありません。たとえば、多くのプライベート クラウドは、完全なチャージバック会計メカニズムを

実装しません。しかし、組織でのプライベート クラウド戦略が成熟するにつれ、プライベート クラウドによって提供されるサービ

スおよびサービス レベルは、パブリック クラウド プロバイダーが提供する内容と同じになり始めます。

プール化および仮想化されたリソース

サーバー仮想化は、プライベート クラウド環境とパブリック クラウド環境の両方をサポートします。しかし、コンピューティングに

対するクラウド ベースのアプローチでは、ワークロードの単なる仮想化以上のものが必要になります。多くのオンプレミスの仮

想化環境には、特定のアプリケーション ターゲットがあります。環境は仮想化されていますが、アプリケーションは特定の専

用サーバー ホストで実行する必要があります。この理由は、技術的に必要な場合もあれば、特定の部門がそのノードを

“所有” していることが理由の場合もあります。クラウド環境はハードウェア リソースのプーリングに基づいていて、仮想化は

プーリング容量にとって重要ですが、それ自体だけでは十分ではありません。

"プーリング"は、リソースを集約し、任意のワークロードを実行できる均一な容量プールとして利用できるようにするメカニズム

です。プールされたクラウド環境で実行されるワークロードは、それらが実際に展開される物理ハードウェアに依存しません。

高度な物理チューニングが必要になるため、前述の 1 層ワークロードはプーリングの逆のパターンです。たとえば、物理

チューニングおよび特定のハード ドライブ スピンドル レイアウトに対する特定のアプローチを必要とする SQL Server ワーク

ロードは仮想化できますが、その独自のリソース要求は他のアプリケーションによって要求される可能性が低いので、プール

化されたリソースの使用には適しません。このような特定のスピンドル構成をプールに配置すると、その構成が他のアプリケー

ションで使用されない可能性が高くなります。

弾性

"弾性" とは、クラウドの需要のピークと谷間に対応する能力を意味します。多くのビジネス プロセスには、季節的な特性が

あります。年 1 回の干し草作りの作業を例として考えてみましょう。多くの農場経営者は外部の請負業者に依頼して、そ

の労働力と機械類で干し草を作ります。必要な大型トラクターと干し草を束ねる機械を 1 年の大部分の期間遊ばせてお

くのは不経済だからです。IT ワークロードも非常に季節的ですが、それらをサポートするために展開される機械は、通常、

ピーク負荷に対応するための十分な容量で購入され、その他の期間は "倉庫に保管" されています。

季節的なワークロードの標準的な例は、スポーツおよび文化イベントのチケット販売です。大規模なイベントのチケットが販

売されると、多くの場合、そのチケットを求める人の数は供給を上回ります。その場合、チケットを手に入れるためにチケット

オフィスの外で徹夜する人が現れます。オンラインの世界では、この自然な待ち行列メカニズムが壊れ、イベントの見込み客

が仮想のチケット オフィスに溢れ、多くの場合、過剰な負担が発生することになります。

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クラウド リソースは汎用で、かつプールされているため、スペア容量を "待機" させておくことを容易に正当化できます。クラウ

ド プロバイダーは、パブリックであるかプライベートであるかに関係なく、通常、容量の一部分を常に利用可能にしてピークに

対応しようとします。ここではパブリック クラウドが明らかに優位です。パブリック クラウドは大規模で運用され、数千の顧客

がプールされたリソースにアクセスするため、小規模のプライベート クラウドよりも著しく多い絶対的な領域を維持することが

できます。100 台のサーバーで構成される クラウドの 1% では負荷の急上昇は許容されませんが、10,000 台のサーバーで

構成されるクラウドの 1% では許容されます。弾性は、プライベート データセンターで実現することが最も困難なクラウド特

性です。容量をアイドル状態のままにしておくことが要求されますが、そもそもアイドル状態を回避することがクラウド ベースを

展開する主な理由だからです。

前述のチケット販売の例のようなワークロードは、プライベート クラウド環境では実現できません。クラウドの能力を適切に評

価するには、「予測される弾性の需要よりも多くの容量がクラウドで展開されることは何回あるか」という質問に答える必要

があります。容量は、単なる倍数ではなく、桁単位で測定する必要があります。急激なピークで数十台のサーバーが必要

になることが予測される場合は、少なくとも数千のノードを持つクラウドを検討すべきです。

セルフサービス

クラウド コンピューティングのセルフサービスには、2 つの補完的な目標があります。まず、リソースをプロビジョニングするために

通常必要となる労力を削減またはなくすことによって、サービス提供のコストをさらに削減します。次に、適切に行われれ

ば、セルフサービス機能の提供はユーザーに利益をもたらします。クラウド ユーザーは、リソースに直接アクセスできるようにな

ります。複雑な承認プロセスはなく、要求が IT 管理者にとってビジネス上の優先事項となるのを待つ必要もありません。

クラウド環境は、プールからオンデマンドでリソースをプロビジョニングするための権限をユーザーに委任します。この場合、ユー

ザーのワークロードが他のワークロードを妨げないこと、およびユーザーは権限を与えられている容量レベル (またはパブリック

クラウドの場合は信用制限の拡張上限) までしかリソースをプロビジョニングできないことが保証されます。セルフサービスは、

組織が新しいことを試し、新しい市場に迅速に対応できるようにすることによって、ビジネスの敏捷性を促進します。エンター

プライズ内部のプライベート クラウド内である場合でも外部の Windows Azure 内である場合でも、その他の展開アプロー

チよりもはるかに迅速に、アプリケーションを開発から実稼働へと移行させることができます。

使用ベースのモデル

ほとんどの共用 IT 環境は "コモンズの悲劇1" に苦しんでいます。IT 容量が限界のない状態だと、節約がすべての利用者

の利益になるにもかかわらず、個々の利用者にとって節約のインセンティブはありません。利用者は、水、ガス、電気などの

他のリソースでの単位あたりの支払いに慣れています。クラウド コンピューティングで提供される使用に応じた支払いモデル

は、使用されていない容量をオフにするためのインセンティブを提供します。

1 "The Tragedy of the Commons." "『Science』誌 162 (3859): 1243 ~ 1248 ページ。1968 年

http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/162/3859/1243.pdf

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パブリック クラウド ベンダーは、サービスに課金する必要があるため、その環境は常に測定され、測定結果に基づいて課金

されます。プライベート クラウドの場合、状況は多岐にわたります。チャージバック モデルの実装は、それをサポートするため

の既存の会計システムがない企業では特に複雑ですが、大きな利点があります。プライベート クラウド環境での使用に応じ

た支払いの目標は、ユーザーの動作を促進し、クラウド リソースが十分でないものとして扱われ、可能な場合は節約される

ようにすることです。クォータやその他のリソース割り当てメカニズムは、一部のプライベート クラウド環境では、より適切である

場合があります。

パブリックおよびプライベート クラウド オペレーターの 1 つの課題は、"どのメーターを使用するか" です。課金を判断するため

に何をカウントすべきでしょうか。指標は、サービス提供の実際のコストと適切に関連付ける必要がありますが、クラウド利用

者が理解できるぐらい十分にシンプルなものでなければなりません。クラウド利用者が特定の用途に対して予期される必要

なクエリ時間数をどのようにすれば導き出せるかを知らなければ、"クエリ時間" の測定はほとんど意味がありません。

課金モデルは、クラウド プロバイダーが効率性を示唆するメカニズムです。すべての実際のリソースが仮想化の各層によって

覆い隠されているクラウド環境では、組織は、第一の考慮事項として、アプリケーションをコスト面で最適化されるように設

計する必要があります。

コンプライアンス

一部のアプリケーション シナリオでは、特定のエンタープライズまたは業界標準ポリシーへの準拠が必要になります。通常、こ

れらのポリシーは、セキュリティ、システム管理、および法的事項に関するものです。ポリシーは、サーバーにどのウイルス対策

ソフトウェアをインストーするかなどのシンプルなものから、ISO/IEC 27001 などの複雑な情報セキュリティ管理システム規格

まで多岐にわたります。

組織がシステム スタック全体をより多く制御するほど、システムはすべての考えられるポリシーおよび要件に準拠しやすくなり

ます。エアギャップ展開が要求されるエンタープライズ ポリシーは、パブリック クラウドでの展開には適していません。同様に、

分離されたプライベート クラウドは、インターネットに接続されているプライベート クラウドとプールされたハードウェア上で共存

できません。コンプライアンス要件が厳しくなればなるほど、それらを導入するエンタープライズの完全な制御範囲内で実行さ

れる専用環境が必要になる可能性が高くなります。

主要なパブリック クラウド ベンダーは、システムを業界標準フレームワークに対して監査し、認定するために迅速に対策を講

じました。多くの小規模および中規模の組織では、コンプライアンスの実現は非常にコストがかかることがあります。これらの

小規模組織の場合、パブリック クラウド コンピューティングは、実際には、独自のデータセンター内でこれらの標準を実装す

るコストをかけずにアプリケーションを認定環境へと展開するための新しい機会を提供します。

パブリック クラウド コンピューティングで解決できないコンプライアンス課題もあります。システムに対する完全な管轄が必要

な組織では、多くの場合、データが特定の国内のみに配置されていて、システムがその組織のスタッフによってのみアクセス

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可能であることを保証する必要があります。これらの組織では、依然として、専用のシステムまたはプライベート クラウド環

境の使用が唯一の実現可能なソリューションです。

Windows Azure のさまざまな業界標準とのコンプライアンスの詳細については、

http://www.windowsazure.com/en-us/support/trust-center/compliance/ を参照してください。

たとえば、SQL Server は、共通基準認定を実現するために、SQL Server 2005 以降、コンプライアンスに厳格に対応し

てきました。この認定は、Common Creteria Mutual Recognition Arrangement (CCRA) に署名した 26 の国の政

府、および製品ベースにおいて 40 以上の政府によって正式に承認されています。この Common Criteria は、単なるセ

キュリティ機能および保証要件の簡潔な定義にとどまりるものではなく、 Common Evaluation Methodology ドキュメン

トで定義されている正確な評価プロセスでもあります。さらに、Common Criteria 評価を実行する各国の正式かつ承認

済みの評価スキームです。政府とその国で認定されたプライベート評価ラボの協働作業に基づく政府認定です。SQL

Server のコンプライアンスの詳細については、http://www.microsoft.com/en-us/sqlserver/common-

criteria.aspx#tab1 (英語) を参照してください。

マイクロソフトのパブリック クラウドおよび SQL Server

Windows Azure は、SQL Server データベースの使用を可能にするために 2 つの広義のオプションを提供します。

Windows Azure バーチャル マシン内の Microsoft SQL Server: このアプローチは、オンプレミス展開に似ていま

す。組織は、オペレーティング システムとインストールされたアプリケーションの両方を完全に制御します。また、オンプレミ

ス SQL Server とのほぼ完全な互換性を実現できます。組織は、Windows Azure バーチャル マシンを 1 時間あたり

数セントで購入できます。独自の SQL Server ライセンスを持ち込むか、時間単位で SQL Server ライセンスをレンタ

ルできます。Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server は、既存のアプリケーションをクラウドに移行すること

を目指している組織に最適です。

Windows Azure SQL データベース: SQL データベースは、クラウド内でのサービスとしての真のプラットフォームです。

組織は、このサービスをデータベース単位で購入しますが、その管理は、データベース レベルまでマイクロソフトによって

行われます。つまり、組織はオペレーティング システム、さらにデータベース サーバー ソフトウェアの修正プログラム適用

を行う必要がありません。このサービスは、新しいアプリケーションを構築する組織に最も適していて、仮想マシン アプ

ローチやオンプレミスでは複雑で実現しにくい高可用性やスケール アウトなどの追加の利点を提供します。

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図 3: マイクロソフトのパブリック クラウドは SQL Server に対する 2 つの異なるアプローチを提供します。

クラウド展開が合理的な理由および状況

Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server

Windows Azure バーチャル マシンを使用する組織は、実行して管理するクラウド内でサーバーを作成できます。これらの

サーバーは、Windows Server 2008 R2 以降、または多数の異なる Linux ディストリビューションを実行できます。組織は

サーバーを完全に制御します。アプリケーションをインストールし、ほぼすべてのワークロードを Windows Azure クラウドで実

行できます。Windows Azure バーチャル マシンへの SQL Server のインストールおよび実行は、マイクロソフトが提供し、

サポートする主要シナリオです。

互換性の観点から、Windows Azure バーチャル マシンでの SQL Server の実行は、オンプレミスの仮想マシンでホストさ

れている SQL Server の実行と同じです。通常、組織は、コード変更を行うことなく、アプリケーションをクラウドに移行できま

す。

組織は、Windows Azure イメージ ギャラリーの事前構築された仮想マシン イメージを使用して、クラウド サーバーを作成

できます (マイクロソフトは、SQL Server Web、Standard、または Enterprise で構成された複数のイメージを提供しま

す)。サーバーを作成して起動した後、一般的な SQL Server データベース移行技法 (バックアップと復元、ファイルのデタッ

チとアタッチなどを含む) のいずれかを使用してサーバーにデータベースを移行できます。または、組織は、オンプレミスの仮想

マシン全体を選択し、それを Windows Azure にアップロードできます。

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図 4: Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server は、アプリケーションをクラウドに移行するための最適なパスを提供します。

Windows Azure バーチャル マシンで実行されている SQL Server は、既存のアプリケーションの低

コストで技術的にも容易な移行パスを提供します。アプリケーションの総保有コストの重要な要素

は、アプリケーション自体を開発および保守するコストです。多くの場合、オンプレミスのデータセン

ターで非効率的なアプリケーションを実行する運用コストは、アプリケーションの記述および修正コス

トと比べると依然として小さく見えます。運用面での節約を約束する一方で多くのコード変更を必要とするクラウド移行アプ

ローチは、目的から外れてしまう傾向があります。通常、Windows Azure バーチャル マシンへのデータベースの移行は、

コード変更を必要としません。

SQL Server Standard Edition (ライセンスを含む) を実行する Windows Azure バーチャル マシンのコストは、1 時間あ

たり約 64 セント、1 か月あたり約 476 ドルです。SQL Server Web Edition に適したワークロードの場合、コストは、1 時

間あたり約 13.5 セント、1 か月あたり約 100 ドルから始まります。

組織は、データベースの密度を高くすることで、さらに大きなコスト効率を実現できます。オンプレミスの SQL Server の場

合、単一の低い月額コストで、単一の仮想マシンで数十または数百の負荷の軽いデータベースを実行することが可能で

す。

Microsoft SQL Server は、リレーショナル データベース管理システム (RDBMS) を越える多数の機

能を提供します。これらの機能には、豊富な機能を備えたレポート テクノロジ、抽出、変換、および

読み込み (ETL) ツーリング、ジョブ管理、スケジューリングなどがあります。

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Windows Azure バーチャル マシンでの SQL Server の展開は、展開済みの任意のバージョンの SQL Server の完全な

機能セットを活用できることを意味します。ごく少数の例外を除き、ユーザーは、製品版の SQL Server の完全な機能セッ

トにアクセスできます。サポートされる機能は次のとおりです。

SQL Server Integration Services

SQL Server Analysis Services

SQL Server Reporting Services

SQL Server Master Data Services

SQL Server Data Quality Services

SQL Server Agent

Windows Azure バーチャル マシンで SQL Server を使用することにより、組織は、展開プロセスを

完全に制御できます。このことは、Windows と SQL Server の構成をカスタマイズできることを意味

します。アプリケーションがサードパーティのツールまたはテクノロジの使用を必要とする場合は、必要

なアイテムをインストールできます。エンタープライズ レベルの組織は、パスワードの強度要件やウイル

ス スキャナーなど、SQL Server 展開に関する特定のポリシーを抱えている場合があります。

Windows Azure バーチャル マシンであれば、そのようなポリシーでも容易にインストールして適用できます。

Windows Azure 仮想ネットワークを使用することにより、IT 管理者は、Windows Azure バーチャル マシンをオンプレミス

ドメインにドメイン参加させることができます。この機能により、単一の企業の信頼の境界の下で、オンプレミスおよびオフプレ

ミス展開にまたがるハイブリッド アプリケーションの開発が可能になります。

Windows Azure は、Windows Azure バーチャル マシンの基礎となるすべてのインフラストラクチャ

の管理を提供します。IT 管理者は、物理ハードウェアまたは物理ネットワーク構成を管理する必要

がありません。

それでも、制御は責任の増大を伴います。IT 部門には、オペレーティング システムに修正プログラム

を適用し、SQL Server が確実に更新されるようにする責任があります。ただし、この展開は Windows Server だけなの

で、Microsoft System Center 2012 以前のバージョンを始めとする標準の管理テクノロジを使用してこのプロセスを促進

できます。

仮想ハード ディスク (VHD) は Windows Azure ストレージに格納され、このサービスによって提供される高可用性ストレー

ジを活用できます。真の高可用性データベース ソリューションを実現するには、IT 管理者は、SQL Server 2012 以降の

AlwaysOn 機能を構成する必要があります。

通常、組織は、仮想マシンに対して 99.9% の稼働時間というサービス レベル契約 (SLA) を締結しています。組織は、

SQL Server データベース サービス自体を含め、その仮想マシンで実行されるアプリケーションの稼働時間に責任を負いま

す。

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Windows Azure SQL データベース

Windows Azure SQL データベースは、Windows Azure クラウドで動作し、高可用性とスケーラビリティを備えたマルチテ

ナント リレーショナル データベースを提供します。SQL データベースは、クラウド向けに設計された新しいアプリケーションに最

適です。これらのアプリケーションは、独特のスケーラビリティ機能を活用できます。SQL データベースは SQL Server との高

い互換性があるため、データベースおよびコード変更を最小限に抑えて、多くの既存アプリケーションを SQL データベースに

移行することも可能です。移行できるシンプルなデータベースを持つ組織の場合は、SQL データベースは、非常に低い

TCO および高可用性やスケール アウトなどのオンプレミスでは実現しづらい利点を提供します。これは、クラウドで完全に実

行されるアプリケーションの場合、またはいくらかの待ち時間を許容できるシナリオの場合、クラウドにリモート接続されるオン

プレミス アプリケーション用のデータ ストアとして優れた選択肢となります。

SQL データベースには、他のベンダーのクラウド サービスでは利用できない優れた機能が多数あります。これらの機能は現

在要求されている常時稼働の大規模アプリケーションと適切に動作しますが、アプリケーション開発者の特定のサポートが

必要です。したがって、既存のアプリケーションを移行するよりも新しいアプリケーションを構築するオプションを選択することが

できる組織に最も適しています。

これらの最初の機能は、SQL フェデレーションと呼ばれます。"フェデレーション"により、組織は、データベース "シャーディング”

パターン (行ベースのパーティション) のためのツール処理および T-SQL サポートを提供してデータベースをスケール アウトす

ることができます。適切に設計されたアプリケーションがあれば、SQL データベースは、データ ボリュームとトランザクション負荷

の両方の点においてほどんど制限されることのないスケールを実現できます。この機能を活用するには、データベースとアプリ

ケーションの両方の設計に対する特定のアプローチが必要です。最低限、フェデレーションでは、既存のアプリケーションの大

幅な改訂が必要になります。アプリケーション開発者が最初からシャーディング パターンを念頭に置いたアプリケーションを構

築することが理想的です。

SQL データベースのもう 1 つの独特の機能は、トランザクションの一貫性を維持するデータベースの 3 つのコピーを

Windows Azure データセンターのフォールト トレラント領域にわたって分散して保守することによって、ハイレベルの可用性

を提供することです。1 つのレプリカが失敗した場合、SQL データベースはトラフィックを残りの稼働コピーに再ルーティングし

て新しいレプリカを作成し、そのレプリカを戻してトランザクションの一貫性を維持します。組織はオンプレミスおよび IaaS 展

開で高度な高可用性機能を使用できますが、それらをセットアップする複雑さが手に負えなくなる場合があります。SQL

データベースでは月額ほんの数ドルの最も小さいデータベースでさえ、高可用性を実現するように構成されます。高可用性

をフルに活用するには、開発者は、コードが信頼性の高い方法でデータベース切断に対処できるようにする必要がありま

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す。SQL データベースは、ワークロードを別のレプリカに移行する必要がある場合、アプリケーションの接続を切断します。開

発者は、再試行ロジックを使用して、これらの切断イベントを処理できます。2

図 5: Windows Azure SQL データベースは、大規模アプリケーションを構築するための独特の機能を提供し、クラウド向けに設定され

た新しいアプリケーションの TCO を削減します。

SQL データベースを使用すると、組織はデータベース アプリケーションを迅速に展開できます。データ

センターの構築、ハードウェアのプロビジョニング、およびソフトウェアのインストールが必要がないので、

新しいデータベースを数分でプロビジョニングできます。この敏捷性により、組織が、新しいことを試し

て新しい市場に迅速に進出できます。適切なアプリケーション アーキテクチャがあれば、数百人の

ユーザー用のアプリケーションを展開する作業も数万人のユーザー用のアプリケーションを展開する作

業もわずか数分で完了します。

広義では、SQL データベースは完全なホット スタンバイ サーバー (1 つではなく 2 つのスタンバイ サーバー) と共に実行し

ている SQL Server のオンプレミス インスタンスに相当します。このようなオンプレミスのソリューションでは、通常、数千ドル

のハードウェア投資とセットアップ時間が必要になります。一方、SQL データベースは 1 か月あたりわずか数ドルから始まり

ます。 SQL データベースは、真の高可用性を備えたエンタープライズ クラスのリレーショナル データベースを 1 か月あたり 5

ドルから提供します。

2 “Retry Logic for Transient Failures in Windows Azure SQL Database (Windows Azure SQL データベースでの一時的なエラーの再試行ロジッ

ク)” Microsoft TechNet. http://social.technet.microsoft.com/wiki/contents/articles/4235.retry-logic-for-transient-failures-in-

windows-azure-sql-database.aspx

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完全に接続されたインターネットの世界では、驚異的な成功は絶望的な失敗と同じぐらい対応が

難しい場合があります。新しいビジネス アプリケーションが成功した場合は、それを迅速に拡張する

必要があります。このコンテキストでの "迅速" とは、数分または数時間を意味します。容量を追加

するのに数日または数週間もかかってしまうと機会を逃してしまう可能性があります。

迅速なスケール アウトを実現するには、展開プラットフォームには 2 つの主要なプロパティが必要です。

オペレーティング システムに影響を与えずに容量を追加する機能

需要がどれほど迅速に拡大するかにかかわらず、利用可能な十分なリソースが存在するという強力なコミットメント

SQL "フェデレーション"を使用することによって、SQL データベースでアプリケーションを構築する開発者は、データを複数の

データベースにわたってシャード化できます。このスケール アウトは迅速に発生し、ユーザーにとって透過的であり、IT 担当者

からの大量の入力を必要としません。負荷がかかった状態で、データベースをスケール アウトまたは分割できます。分割操

作 (再シャーディング) は、アプリケーションのダウンタイムを発生させずにオンラインで実行されます。

SQL データベースは大規模なスケールで提供されるので、常にリアルタイムで利用できる "スペア容量" があります (図

6 )。この可用性は、容量の大幅な新しい要求があるときに最初に新しいハードウェアをデータセンターに導入する必要があ

るオンプレミスの展開アプローチやプライベート クラウドとは対照的です。新しいアプリケーションが大きな成功を収めた場

合、その需要は組織がサプライ チェーン経由で新しいサーバー ハードウェアを調達する能力を上回ることがあります。新し

いオンプレミス サーバーを発注してプロビジョニングするには数日または数週間を要します。

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図 6: 組織は T-SQL、SQL Server Management Studio または管理ポータルを使用してフェデレーションを管理できます。

SQL フェデレーションを使用すると、リレーショナル データベースをスケール アウトできます。この機能は、通常は "NoSQL"

スタイルのクラウド データ ストアによって犠牲となる強力なトランザクションの一貫性やその他の属性を重視する組織にとって

重要です。

IT インフラストラクチャをどのぐらい適切に管理するかに関して差別化を図っている企業はほとんどあり

ません。多くの企業は優れた仕事をすること、および競合他社との競争を勝ち抜くことを考えています

が、一般的に、適切な管理は戦略上の強みの源ではありません。SQL データベースでは、スケール

の経済性だけでなくスケールの質も活用することが可能です。

SQL データベースは、SLA で裏打ちされたデータベース レベルでの 99.9% の可用性を実現します。これは、SQL デー

タベースを実行するサーバーだけでなく、データベース自体の稼働時間も保証されていることを意味します。

インフラストラクチャとプラットフォームの両方のコンポーネントを管理するため、SQL データベースは、IT 管理者の介入が不

要なダウンタイム 0 の更新を実現します (ハードウェア アップグレード、ソフトウェア修正プログラムの適用など)。SQL データ

ベースを導入することにより、組織は、エンタープライズ レベルのコストを負担することなく、エンタープライズ レベルの可用性

を備えたアプリケーションを提供できます。

既存のシステムの運用に費やす時間が少なくなることで、IT チームはシステムの革新やアプリケーションの改善により多くの

時間を自由に費すことができます。IT の焦点は、運用からビジネスへの戦略的価値の追加へと移ります。

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SQL データベース プロトコルは SQL Server と互換性があるので、開発者および IT 担当者は、

Microsoft Visual Studio 統合開発環境 (IDE) や SQL Server Management Studio などの使

い慣れたツールを使用できます。SQL Server を使用するオンプレミス アプリケーションを操作する

際、開発者および IT 担当者は、表形式データ ストリーム (TDS) プロトコルを実装するクライアント

ライブラリを使用してクライアントとサーバー間の通信を行います。Windows Azure SQL データベースは、SQL Server と同

じ TDS インターフェイスを提供するので、Windows Azure SQL データベースに格納されているデータを操作するアプリケー

ションで同じライブラリを使用できます。リレーショナル データベース プログラミングの一般的なアプローチには、ADO.NET、

Entity Framework、ODBC などがあります。SQL データベースは、JDBC、さらに PHP や Node.JS 用のドライバーが搭載

された他のプラットフォームもサポートします。オンプレミスの SQL Server アプリケーション用に開発されたコードは、通常、

Windows Azure SQL データベースへ容易に移行できます。

SQL データベースは真の RDBMS です。RDBMS のリレーショナル データベース モデルおよびトランザクション プロパティは、

エンタープライズ アプリケーション データ ストレージでも依然として代表的な標準です。他のクラウドにホストされる多くのデー

タ ストアとは異なり、SQL データベースを操作する開発者は、データ モデリングの新しいアプローチを習得したり、トランザク

ションの一貫性などの機能を譲歩したりする必要はありません。SQL データベースは、ストアド プロシージャ、ストアド関数、

およびテスト済みの真の SQL Server 機能の大部分をサポートします。

一般的なクラウド シナリオでの機能の提供

Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server のシナリオ

ここでは、Windows Azure バーチャル マシンで SQL Server を使用する組織の主なシナリオについて説明します。これらの

シナリオを図 7 にまとめます。

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図 7: Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server の 4 つの主要シナリオ

既存の SQL Server アプリケーションの移行

Windows Azure バーチャル マシンは Windows Server ベースのほとんどすべてのイメージを実行で

きるので、既存のアプリケーションをクラウドに容易に移行できます。データベース層とアプリケーション層

の両方を Windows Azure バーチャル マシンに移行できます。ASP.NET などの一部のワークロード

は、Windows Azure クラウド サービスまたは Windows Azure Web サイトに移植することが合理的

である場合があります。このサービスとしてのプラットフォーム (PaaS) アプリケーション層は、Windows Azure バーチャル マシ

ンで実行しているサービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS) の SQL Server によって容易に接続できます。

オンプレミス SQL Server から Windows Azure バーチャル マシンで実行している SQL Server にデータベースを移行する

場合、図 8 に示されているパスのいずれかを一般的に使用します。

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図 8: Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server にデータベースを移行するためのパス

仮想マシン全体の移行

図 8 のオプション 1 では、オンプレミスの Hyper-V サーバーから Windows Azure に仮想マシン全体を移行します。仮想

マシン全体の移行は、開発およびテスト シナリオ、特に、オンプレミス マシンに複雑な追加構成が含まれている状況に適し

ています。仮想マシン全体を移行することにより、別のマシンでその正確な構成を再作成する必要がなくなります。仮想マ

シン全体を移行する場合は、サーバー オペレーティング システムが Windows Server 2008 R2 SP1 x64 以降であるこ

と、および SQL Server のバージョンが SQL Server 2008 SP3 以降の 64 ビット インストールであることを確認する必要が

あります。仮想マシンがこれらの要件を満たさない組織は、アップグレードするか、オプション 2 の "バックアップと復元" アプ

ローチに従う必要があります。

VMWare などのサードパーティ製ハイパーバイザー、または物理ベア メタル サーバーで実行されている仮想マシンを移行す

ることも可能です。まず、これらのサーバー インストールを Hyper-V に移行します。この移行では、仮想環境から仮想環境

(V2V) または物理環境から仮想環境 (P2V) の移行を実行する必要があります。必要なツールは、System Center

Virtual Machine Manager および Virtual Machine Converter Solution Accelerator で提供されています。

仮想マシンは、Windows Azure によってサポートされるアップロード ツールを使用してアップロードできます。System

Center App Controller 2012 SP1 も、SQL Server 仮想マシン全体を Windows Azure に移行するためのメカニズムを

提供します。

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データベースのみの移行

図 8 のオプション 2 では、データベースのみをクラウドに転送します。この転送は、完全なデータベース バックアップまたは

データ ファイルの形を取ることができます。また、データベース スキーマとデータを個別に移動する方が適切な場合がありま

す。このアプローチの主な利点は、接続回線経由でデータベースだけを送信すればよい点です。低速のインターネット接続

では仮想マシン全体を送信するのに時間がかかることがあります。

最初に、イメージ ギャラリー内のイメージから Windows Azure バーチャル マシンを作成する必要があります (図 9)。

図 9: イメージ ギャラリーからの仮想マシンの作成

図 10 に示すように、Microsoft SQL Server イメージのいずれかを選択することをお勧めします。

図 10: Microsoft SQL Server 2012 評価版マシン イメージの選択

セットアップ中、マシン名を指定し、管理者アカウント名を変更して強力なパスワードを設定することに加えて、マシン サイズ

の選択を行う必要があります。マシン サイズは後で変更できます。テスト目的の場合、通常は、[小] のインスタンス サイズ

で十分です (図 11)。

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図 11: 仮想マシンのプロパティの設定

残りの設定は、仮想マシンの配置場所、DNS 目的での解決方法、および使用するサブスクリプションを決定します (図

12)。

図 12: ネットワーク、DNS、ストレージ、データセンター、およびサブスクリプション プロパティの設定

[] ボタンをクリックすると、仮想マシンの作成処理が開始します。これには数分かかる場合があります。ポータルの右下隅

にあるインジケーターは、進行状況を緑色のバーで示します (図 13)。

図 13: 仮想マシン作成の進行状況インジケーター

ポータル内の仮想マシンの一覧で、[状態] 列を参照して、プロビジョニング処理が完了するのを待ちます。状態が [実行

中] になったら、接続できます。

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図 14: [接続] をクリックすると、仮想マシンへの RDP 接続が確立されます

この時点で、可能なアプローチは次のとおりです。

オンプレミス データベースのコピーの抽出

クラウドで実行している仮想マシンへのそのコピーの転送

詳細については、「Windows Azure 仮想マシン内の SQL Server への移行」(http://msdn.microsoft.com/ja-

jp/library/windowsazure/jj156165.aspx) を参照してください。

以下の手順に示すように、オンプレミス データベースをバックアップし (図 15)、バックアップ ファイルを RDP 接続を介してサー

バーに直接コピーして、データベース ファイルを Windows Azure バーチャル マシンで実行している SQL Server インスタン

スへ復元できます。このアプローチは、小規模データベースに適しています。

図 15: オンプレミス データベースのバックアップ

リモート デスクトップ プロトコルを使用すると、エクスプローラーで切り取りと貼り付けの操作を実行して小さなファイルを簡単

に転送できます (図 16)。

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図 16: オンプレミス マシンからファイルをコピーして、Windows Azure バーチャル マシンに貼り付ける (リモート デスクトップ プロトコル)

ファイルをコピーした後、Windows Azure バーチャル マシンで実行している SQL Server インスタンスに復元できます (図

17)。データベースがユーザー データベースに格納されていないメタデータに依存する場合は、追加の手順が必要になること

があります。詳細については、「データベースを別のサーバー インスタンスで使用できるようにするときのメタデータの管理

(SQL Server)」(http://msdn.microsoft.com/ja-jp//library/ms187580%28v=sql.110%29.aspx) を参

照してください。

図 17: SQL Server Management Studio で復元されるデータベース

SQL Server 2014 は、データベースを Windows Azure バーチャル マシンで実行している別の SQL Server インスタンスに

展開するためのウィザード (図 18) を提供します。複雑さは完全に自動化され、Windows Azure に関する詳細な知識は

必要ありません。また、展開時間を定義する主要な要素はデータベース サイズなので、この処理にはパフォーマンスのオー

バーヘッドはありません。必要に応じて、移行ステップをさらに簡素化するために、同じウィザードを使用して Windows

Azure バーチャル マシンに SQL Server インスタンスを作成することもできます。

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図 18: オンプレミスの SQL データベースを Windows Azure バーチャル マシンで実行している SQL Server に展開するためのウィザード

(SQL Server Management Studio)

開発およびテストのサポート

アプリケーションを構築するとき、多くの組織は、アプリケーション ライフサイクルの一部として開発、テ

スト、およびステージング サーバーを使用します。これらのセットアップは、開発者のデスクトップにホス

トされる仮想マシンから、専用の仮想サーバーにホストされる環境までさまざまです。大規模の組

織、特に大規模のエンタープライズやシステム インテグレーターでは、これらの開発サーバーとして、プライベート クラウドとほ

ぼ同様のものが必要になることがあります。

Windows Azure バーチャル マシンは、これらのワークロードをサポートするためのパブリック クラウド オプションを提供しま

す。アプリケーションが最終的にオンプレミスでホストされる場合でも、開発およびステージング サーバーを実行するために

Windows Azure を使用することは、コスト効率の良い選択肢となり得ます。このオプションは、セルフサービス マシン プロビ

ジョニングの柔軟性と、使用に応じた支払い請求によるコスト節約メリットを提供します。

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オンプレミス データベースのクラウドへのバックアップ

Windows Azure ストレージは、高可用性を備えたクラウド ホスティング ストレージ メカニズムを月

額 1 ギガバイトあたり数セントで提供します。この利点が Windows Azure バーチャル マシン サービ

スの可用性と組み合わされ、バックアップおよび障害復旧機能を必要とする組織に対して新しいオプ

ションを提示します。

組織は、ストレージを使用して、データベースまたは仮想マシン全体のいずれかのバックアップを格納できます。Windows

Azure ストレージは、これらのファイル用の高可用性、耐久性、および安全性を備えたオフサイト ストレージです。3 つの整

合性のあるコピーがプライマリ データセンターに格納され、4 つ目のレプリカはセカンダリ データセンターに非同期でコピーされ

ます。

障害が発生した場合、ストレージからファイルを取得するか、Windows Azure バーチャル マシンを使用してバックアップ マ

シン イメージを復元し、それらをクラウドから一時的に実行することができます。

SQL Server 2012 SP1 CU2 以降には、データベース バックアップおよび復元に Azure ストレージを使用するための機能が

含まれます (図 19)。

図 19: ポータルを使用した Windows Azure ストレージ アカウントの作成

バックアップ データを Windows Azure ストレージに直接アップロードするには、ストレージ アカウント用のセキュリティ キーの

いずれかを取得する必要があります (図 20)。

図 20: ポータルからのストレージ キーの取得

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Windows Azure ストレージ バックアップ サポートには、SQL Server Management Studio から、および T-SQL コマンド

BACKUP DATABASE .... TO URL を使用して アクセスできます。まず、Windows Azure ストレージに認証情報を格納す

るための SQL Server 資格情報 (図 21) が必要です。資格情報は、ストレージ アカウントの名前およびストレージ アカウ

ントのアクセス キー値を格納します。

図 21: Windows Azure ストレージ認証情報を格納するための SQL Server 資格情報の作成

資格情報の作成後、SQL Server Management Studio で BACKUP/RESTORE および WITH CREDENTIAL を使用

して、データベースを Windows Azure ストレージに直接バックアップおよび復元します (図 22)。

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図 22: SQL Server 2014 Management Studio での Windows Azure ストレージへのデータのバックアップ

詳細については、「Windows Azure BLOB サービスを使用した SQL Server のバックアップと復元」

(http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/jj919148.aspx) を参照してください。

この機能を使用して、オンプレミス インスタンス内または Windows Azure バーチャル マシンなどのホスティング環境で実行

している SQL Server のインスタンス内の SQL Server データベースをバックアップできます。クラウドへのバックアップは、可用

性、実質的に無制限の地理的なレプリケート オフサイト ストレージ、クラウドとの間でのデータの移動のしやすさ、といった利

点を提供します。これらの利点には、バックアップ アーカイブ メカニズムを提供する一方で、柔軟で信頼性が高く、ハードウェ

ア管理のオーバーヘッドが発生しない実質的に無制限のオフサイト ストレージも含まれます。

SQL Server 2014 は、クラウド バックアップ機能 (図 23) を提供して、SQL Server データベースを Windows Azure スト

レージへ自動的にバックアップします (この処理は "Windows Azure への SQL Server マネージ バックアップ" と呼ばれま

す)。バックアップ処理はコンテキスト対応 (ワークロードおよびスロットル依存) で、最小の構成を使用して保持期間を指定

し、データベース インスタンス全体または特定のデータベースを管理できます。

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図 23: SQL Server 2014 で SQL Server データベースを自動的にバックアップするための Windows Azure へのマネージ バックアップ

SQL Server 2014 では、Windows Azure バーチャル マシンで障害復旧用の AlwaysOn レプリカを作成することもできま

す。このプロセスをシームレスにするために、使いやすいウィザード (図 24) が用意されています。お客様は、このウィザードを

使用して、データベースの 1 つ以上のレプリカを Windows Azure バーチャル マシンに容易に展開できます。お客様は DR

サイトを設定する必要がなく、レプリカ用の DR マシンを購入する必要もありません。セットアップ後、レプリカを使用してデー

タベースをバックアップすることや、レポート用途にレプリカを使用することができます。

図 24: Windows Azure バーチャル マシンで AlwaysOn レプリカを作成するためのウィザード (SQL Server Management Studio)

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最後に、SQL Server 内からのデータのバックアップに加えて、Windows Server 2012 および System Center 2012 Data

Protection Manager のユーザーは、Windows Azure Online Backup を使用して他のデータ (仮想マシン イメージ全

体を含む) を Windows Azure に直接バックアップし、すべてのバックアップ データを中央の場所に格納できます。

Windows Azure VM へのオンプレミス アプリの拡張

場合によっては、アプリケーションの一部だけをクラウドに移行して機密データをオンプレミスに残す一

方で、追加のスケールを必要とするアプリケーションの部分をパブリック クラウドに移行することが望ま

しいことがあります。

電子商取引サイトを例に考えてみましょう。顧客詳細やクレジット カード情報などの機密情報はオンプレミスに残す必要が

ありますが、増加する負荷をサポートするために、製品カタログやショッピング カート データは Windows Azure に移行でき

ます。

これらの種類のハイブリッド アプリケーションについては、後のセクションで詳しく説明します。

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Windows Azure SQL データベースのシナリオ

ここでは、Windows Azure SQL データベースを使用しようとしている組織の 2 つの主なシナリオについて説明します。

図 25: SQL データベースは、クラウド向けに設計されたアプリケーションを作成する開発者に最適です。

新しいクラウド向けアプリケーションの開発

SQL データベースの独特の機能の多くを活用するには、アプリケーションをこれらの機能向けに設計

および開発する必要があります。たとえば、SQL フェデレーション アプリケーションを使用するには、開

発者は、シャーディング スケール アウト パターンによってもたらされる制約を理解し、USE

FEDERATION T-SQL ステートメントを通じてシャード メンバーにアクセスする方法を知っている必要

があります。

開発者は、通常、Windows Azure SQL データベースで実行しているリモート データベースに接続しながら、すべての開発

作業を請け負うことによって、SQL データベースでクラウド向けの新しいアプリケーションを構築できます。組織は、通常、

サーバーおよびデータベースを Windows Azure または SQL データベース管理ポータルから作成します。次に、既存のツー

ルをリモート データベースに接続します。前に説明したとおり、SQL データベースは SQL Server との非常に高い互換性が

あるので、Visual Studio、SQL Server Management Studio 2012 を始めとする SQL Server ベースのほとんどのツール

をサポートします。開発者は、これらのツールを使用し、リモート サーバーに対して作業して、データベース スキーマを構築で

きます。

通常、開発者は、Windows Azure クラウド サービスまたは Windows Azure Web サイト機能を使用してアプリケーショ

ンを構築します。これらのツールを使って、アプリケーション開発者は、Windows Azure ロード バランサーの背後で容易に

スケール アウトできるアプリケーションを構築できます。アプリケーション層でのスケール アウトは、データ層のスケール アウトの

アプローチと厳密に一致するので、開発者は、クラウド内の大規模ワークロードの要求に応えるアプリケーションを構築でき

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ます。開発者は、Microsoft .NET Framework だけに制限されることはありません。クラウド サービスは Java と適切に動

作し、SQL データベースは SQL Server 用の JDBC ドライバーと適切に動作します。マイクロソフトは、一般的な Java IDE

である Eclipse 用の Windows Azure アドイン ツーリングを提供するオープン ソース プロジェクトもサポートします。Ruby、

PHP、Node.js などの他のフレームワークは、SQL データベースおよび Windows Azure によって同様に適切にサポートさ

れます。

IT 担当者は、Windows Azure および SQL データベース ポータル、さらに既存の SQL Server 管理ツーリングを組み合わ

せて使用して、データベースの継続的な運用を管理します (図 26)。

図 26: SQL データベースで、開発者は、アプリケーション層とデータ層でアプリケーションをスケール アウトできます。

Windows Azure 管理ポータルを使用して SQL データベースを作成できます。カスタム作成のオプションを使用して、SQL

データベース サーバーを作成します (図 27)。

図 27: 新しい SQL データベース用のカスタム作成オプションの使用

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SQL データベースでの "サーバー" は、論理的な概念です。所定の SQL データベース インスタンスを構成する実際のデータ

ベース レプリカは、データセンター内の多数の異なる物理ノードに物理的に配置されます (図 28)。

図 28: データベースを作成するときの新しいサーバーの指定

図 29: 新規サーバーの作成 (ログイン詳細を含む)

SQL データベースには、不明な IP アドレスからの接続を防止するファイアウォールが含まれています。ファイアウォール ルール

(図 30) を作成して、データベース サーバーに接続されることが予期される各アドレスまたはアドレス範囲に対するアクセスを

明示的に開く必要があります (図 31)。[Windows Azure サービス] を選択して、Windows Azure 内の他のサービス

(Windows Azure コンピューティングや Windows Azure バーチャル マシンなど) にデータベース サーバーへのアクセスを許

可するファイアウォール ルールを設定します。オンプレミス マシンから Management Studio またはその他のツールを使用し

て接続するには、追加のツールを作成する必要があります。

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図 30: ファイアウォール ルールの追加 (サーバー ハイパーリンクをクリックしてサーバー プロパティを開く)

図 31: ファイアウォール ルールの追加 (許可されるアドレスの範囲を指定)

サーバーを構成した後、管理ポータル内でデータベース プロパティから接続文字列を取得できます (図 32)。

図 32: 接続文字列を使用して Management Studio を接続 (情報の取得)

接続文字列に含まれている情報を使用して、SQL Server Management Studio をリモート データベースに接続します。

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図 33: 接続文字列を使用して Management Studio を接続 (設定の入力)

ここから、Management Studio で使用できる使い慣れたツーリングを使用して、データベース スキーマを作成します。SQL

Server Management Studio は、フェデレーションの作成と管理もサポートします。

Windows Azure SQL データベースへのオンプレミス アプリの拡張

場合によっては、アプリケーションの一部のみをクラウドに移行して機密データをオンプレミスに残す一

方で、追加のスケールを必要とするアプリケーションの部分をパブリック クラウドに移行することが望ま

しいことがあります。

電子商取引サイトを例に考えてみましょう。顧客詳細やクレジット カード情報などの機密情報はオンプレミスに残す必要が

ありますが、増加する負荷をサポートするために、製品カタログやショッピング カート データは Windows Azure に移行で

きます。

これらの種類のハイブリッド アプリケーションについては、次のセクションで詳しく説明します。

ハイブリッド シナリオ

ハイブリッド IT の概念は、アプリケーションを実行する場所に関する選択肢を組織に与えるたけでなく、アプリケーションをパ

ブリック クラウドおよびプライベート データセンターにわたって配布するよう選択できることを意味します。Windows Azure

仮想ネットワークでは、論理的に分離されたセクションを Windows Azure に作成して、Ipsec 接続でオンプレミス デー

タセンターまたは単一のクライアント マシンに安全に接続できます。Windows Azure 仮想ネットワークを使用することに

より、リモート ブランチ オフィスをセットアップする場合と同様に Windows Azure を使用してデータセンターを容易に拡張

することができます。組織は、ネットワーク トポロジおよび構成を維持し、オンプレミス インフラストラクチャと同様に管理でき

ます。Windows Azure 仮想ネットワークでは、カスタム コードを作成することなくオンプレミス インフラストラクチャとの安全

な接続を維持しながら、ハイブリッド シナリオを容易に構築することが可能です。

Code far アプリ: エンタープライズ クラスのデータ層へのシンプルなパス

SQL データベースは、高可用性を含め、エンタープライズ クラスのデータベース機能を数多く提供します。これらの機能は多

くの部門アプリケーションに利点をもたらしますが、多くの場合、高額すぎてオンプレミスではこのような機能を提供できませ

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ん。Code far (プリケーションがオンプレミスに配置されていて、そのアプリケーションに関連付けられたデータベースがクラウド

にある) ハイブリッド アプローチでは、インターネットを介してオンプレミス アプリケーションを SQL データベース インスタンスに接

続します (図 34)。

図 34: リモート アクセスされる SQL データベースを通じて、軽量アプリケーション用のエンタープライズ クラスのデータベースを提供

Microsoft Access 2013 は、この展開アーキテクチャの良い例です。Access 2013 では、Microsoft Office 365 またはオ

ンプレミス サーバーで動作し、データを Windows Azure SQL データベースに格納する Access 2013 アプリを構築できま

す。

SQL データ同期によって時々接続されるアプリ

SQL データ同期は、Microsoft Sync Framework 上に構築されるサービスです。このサービスを使用して、オンプレミス

SQL Server と SQL データベース インスタンスの間で双方向でデータを同期できます。SQL データ同期は Windows

Azure 内のサービスとして提供されるため、開発者はカスタム コードを記述する必要がありません。Azure ポータルで SQL

データ同期を構成し、SQL データ同期エージェントをオンプレミス サーバーにインストールできます (図 35)。

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図 35: SQL データベースと SQL データ同期を使用して、ハイブリッド アーキテクチャを通じて時々接続される作業をサポート

このハイブリッド アーキテクチャによって、時々接続される作業をサポートするアプリケーションを構築できます。ユーザーが接

続されていない場合、データはローカルの SQL Server データベースに格納され、接続が復元されると SQL データベース ハ

ブと同期されます。

SQL データベースと Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server (単一のアプリへの統合)

前に説明したとおり、SQL データベースおよび Windows Azure バーチャル マシン内の SQL Server にはそれぞれ強みがあ

ります。もう 1 つのアプローチは、両方を単一のアプリケーションに組み合わせることです。たとえば、組織の OLTP Web アプ

リケーションで SQL データベースのスケール アウト機能を活用する必要がある場合があります。多次元分析およびレポート

も必要な場合があります。これは仮想マシンにインストールされている SQL Server の完全な機能を必要とする機能です

(図 36)。

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図 36: アプリケーションが展開オプションの強みを使用できるようにする (SQL データベースと SQL Server の組み合わせ)

SQL データ同期を使用することにより、組織は、SQL データベースを展開してアプリケーションのトランザクション処理ニーズ

を促進し、オンプレミスで SQL Server Reporting Services および Analysis Services の完全な機能を使用して分析処

理要件を提供できます。

Windows Azure ストレージの SQL Server データおよびログ ファイル

SQL Server 2014 の新機能を使用すると、オンプレミスで実行している SQL Server の計算ノードを維持したまま、

実行中のデータベースのデータおよびログ ファイルを Windows Azure ストレージに移動できます (図 37)。これは、アプ

リケーションを変更する必要なく行うことができるので、アプリケーションの互換性テストは必要ありません。データおよびログ

ファイルのセキュリティを強化するために、データベースに対して透過的なデータ暗号化を有効にして、暗号化キーをオンプレ

ミスに保存することができます。

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図 37: Windows Azure ストレージの SQL Server データおよびログ ファイル

このシナリオを使用することにより、実質的に "無制限" のストレージ容量、Windows Azure ストレージの高可用性、保

護の強化を目的とした複数の地理的場所への複数のコピーの作成機能、およびオンプレミスでの障害発生時におけるす

ばやい復元機能を活用しながら、既存のアプリケーションをそのまま使用することができます。

まとめ

クラウド コンピューティングは、アプリケーションを、より安価に、またはこれまでよりも大きなスケールで展開するための新しい

機会を提供します。同時に、マイクロソフトのハイブリッド IT 戦略では、ほとんどの組織には通常、多くのアプリケーションがあ

り、一部はクラウドに展開され、一部はオンプレミスに残されるが認識されています。詳細なハードウェア構成や最適化を必

要とするアプリケーション、または機密データを保持する複雑なアプリケーションは、クラウド コンピューティングによって提供さ

れる種類のコモディティ サービスにあまり適していません。これらのアプリケーションは、当面、オンプレミスに残る可能性が高く

なります。その一方で、非常に多様な需要を抱えたアプリケーションなど、一部のワークロードはパブリック クラウド展開に非

常に適しています。マイクロソフトのハイブリッド IT の目標は、オンプレミス サーバー、プライベート クラウド、およびパブリック ク

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ラウド プラットフォームにわたって、業界をリードする同じテクノロジ、技法、および専門知識を使用するための選択肢を組織

に提供することです。

ハイブリッド IT は、業界をリードする DBMS である SQL Server の機能を展開テクノロジの全範囲にわたって提供します。

オンプレミスに展開する場合でも、パブリックまたはプライベート クラウドに展開する場合でも、使い慣れた同じ SQL Server

エクスペリエンスとツール セットが提供されます。

Windows Azure バーチャル マシン内の Microsoft SQL Server では、クラウド コンピューティングの効率性を活用する一

方で、オンプレミスの SQL Server とほぼ同等の完全な機能を利用できます。多くのユーザーへの新しいアプリケーションの

提供にクラウドを使用することが望ましい場合、Windows Azure SQL データベースを使用して、数百万のユーザーへとス

ケール アウトする次世代のリレーショナル データベース アプリケーションを構築できます。

アプリケーション シナリオの特定のニーズや展開先に関係なく、マイクロソフトは、組織で必要とされる機能、柔軟性、および

使いやすさを提供します。

詳細情報:

http://www.microsoft.com/ja-jp/sqlserver/: SQL Server Web サイト

http://technet.microsoft.com/ja-jp/sqlserver/: SQL Server TechCenter

http://msdn.microsoft.com/ja-jp/sqlserver/: SQL Server 開発者向け技術情報

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