40
1 2015.12.16 「事故シナリオ・リスク評価」グループ 「事故シナリオ・リスク評価」の対応について 1.対応方針 「事故シナリオ・リスク評価」では、確論的リスク評価(PRA)に拘らず、実施可能な リスク評価の方法を広く考慮し、それぞれの評価方法に応じて得られる評価結果(リスク 情報)を断層変位に対する安全性向上活動に活用する一の考え方(評価手順の骨子)を 整理する。 また、事故シナリオの分析・整理、及びリスク評価には、他の作業グループとのインター フェイスが重要であり、手順の骨子に沿ったインターフェイスの体系についても整理する。 更に、利用可能な学会標準等が既に整備されていることから、手順の骨子を構築する上で のそれらの用性を整理する。 これらの対応のイメージを図-1 に示す。 2.対応スケジュール H27/H27/H28/(1)関学会標準等の整理 (2)事故シナリオの整理 (3)リスク評価手順の整理 (4)対処対策の検討 (5)報告書作成 3.対応況 (1)関学会標準等の整理(第3回分科会(9/30)で報告) ・・・添付 ・・・添付 ・・・添付 ・・・添付- - -1 1 1 以下の関学会標準について用性を整理した。 a. 外ハザードに対するリスク評価方法の定に関する実施基準:2014 b. 原子力発電所に対する地震を起因とした確論的リスク評価に関する実施基準: 201* c. 原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010 d. 原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関する 実施基準:2014SAM 標準) (2)事故シナリオの整理(第6回作業会、第 7 回で報告) ・・・添付 ・・・添付 ・・・添付 ・・・添付- - -2 2 2 地質・断層変位評価グループ、建・構築影響評価グループ、土木構影響評価

・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

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1

2015.12.16

「事故シナリオ・リスク評価」グループ

「事故シナリオ・リスク評価」の対応について

1.対応方針

「事故シナリオ・リスク評価」では、確率論的リスク評価(PRA)に拘らず、実施可能な

リスク評価の方法を広く考慮し、それぞれの評価方法に応じて得られる評価結果(リスク

情報)を断層変位に対する安全性向上活動に活用する一連の考え方(評価手順の骨子)を

整理する。

また、事故シナリオの分析・整理、及びリスク評価には、他の作業グループとのインター

フェイスが重要であり、手順の骨子に沿ったインターフェイスの体系についても整理する。

更に、利用可能な学会標準等が既に整備されていることから、手順の骨子を構築する上で

のそれらの適用性を整理する。

これらの対応のイメージを図-1 に示す。

2.対応スケジュール

H27/上 H27/下 H28/上

(1)関連学会標準等の整理

(2)事故シナリオの整理

(3)リスク評価手順の整理

(4)対処対策の検討

(5)報告書作成

3.対応状況

(1)関連学会標準等の整理(第3回分科会(9/30)で報告)・・・添付・・・添付・・・添付・・・添付----1111

以下の関連学会標準について適用性を整理した。

a. 外部ハザードに対するリスク評価方法の選定に関する実施基準:2014

b. 原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:

201*

c. 原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010

d. 原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関する

実施基準:2014(SAM 標準)

(2)事故シナリオの整理(第6回作業会、第 7回で報告)・・・添付・・・添付・・・添付・・・添付----2222

地質・断層変位評価グループ、建物・構築物影響評価グループ、土木構造物影響評価

Page 2: ・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

2

グループ、機器・配管系影響評価グループの事故シナリオに係る検討状況を基に整理し、

リスク評価における取り扱いの観点からグループ化した。

(3)リスク評価手順の整理(第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付・・・添付・・・添付----3333

委員会、分科会でのご意見を踏まえ、影響がローカルであり、分散配置が有効な対策

となり得る断層変位の特徴を考慮した、リスク評価の流れ(断層変位に関する情報を入

力としたリスク評価とリスク評価結果を適用した安全性確認、継続的安全性向上への利

用)を整理した。また、利用可能なリスク評価モデルを用いた評価イメージを整理した。

(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付・・・添付・・・添付----4444

断層変位の影響に対する対処方策を考える上で参考となる深層防護の考え方、及び

SAM 標準の適用の考え方を整理した。また、委員会、分科会でのご意見を踏まえ、対

処方策のイメージを整理した。

4.今後の予定

リスク評価方法の選定、リスク評価結果の活用等の基本方針に関して「リスク評価の基

本的考え方グループ」の検討成果を反映、調整する。

また、「地質・断層変位評価グループ」、「建物・構築物影響評価グループ」、「土木構造物

影響評価グループ」、「機器・配管系影響評価グループ」の検討状況、検討成果を受けて、

リスク評価のためのインターフェイスを具体的に調整する。

以上の検討成果を報告書にまとめる。

Page 3: ・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

3

リスク評価手順の整理

(以下の 4 つの評価方法を参照)

リスク評価方法 ① ② ③ ④

ハザード評価

要 - - 要 要

建屋・機器リスト

要 要 要 要

フラジリティ評

- - 決定論的 決定論的 確率論的

事故シーケンス

評価

- - 要 要 要

得られるリスク

情報

発生頻度 or影響が基

準に対して十分余裕

があるかどうか

裕度

支配的因子

CDF(保守

的)

支配的因子

CDF(現実的

+不確実さ)

支配的因子

事故シナリオの分析・整理(他グループで想定する事故シナリオを参照)

安全性向上対策の検討(リスク情報を活用した総合的な意思決定プロセス、

対策例の検討を含む、考え方の整理)

外部ハザードに対

するリスク評価方

法の選定に関する

実施基準:2014

原子力発電所に対す

る地震を起因とした

確率論的リスク評価

に関する実施基準:

201*

原子力発電所におけ

るシビアアクシデン

トマネジメントの整

備及び向上に関する

実施基準:2014

地質・断層変位評価

グループ

建物・構築物影響評価

グループ

土木構造物影響評価

グループ

機器・配管系影響評価

グループ

関連学会標準等の適用 事故シナリオ・リスク評価手順(骨子)の整理 インターフェイスの明確化

リスク評価の基本的

考え方グループ

実施の可能性と結果の用途に応じて評価方法(の組み合わせ)を検討

原子力発電所の安全

確保活動の変更への

リスク情報活用に関

する実施基準:2010

図-1 事故シナリオ・リスク評価の対応イメージ

Page 4: ・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

4

添付-1

「外部ハザードに対するリスク評価方法の選定に関する実施基準:2014」の適用性を整理した。その他の整理結果は別添-1~別添-3 参照。

表-1 4 つのリスク評価方法の整理(1/2)

リスク評価方法 評価方法の説明 基本的考え方として考慮すべき項目

(リスク評価により得られる結果)

断層変位ハザードとして必要

な情報

建物・構築物、機器・配管フラ

ジリティ等として必要な情報

①ハザード発生

頻度分析若しく

は影響度分析に

よるリスク判断

a.ハザード発生頻度分析:

プラントに影響を与える可能性のあるハザードレベル(設計基準を

有する外部ハザードにおいては設計基準が該当する)を設定し,そ

れを超過する外部ハザード発生頻度を,保守的な解析により定量的

に評価する。この結果,当該ハザード発生頻度が判断基準値を下回

ると評価できる場合には,当該ハザードは有意な炉心損傷リスクを

有しないものと判断する。(注)判断基準について附属書(参考)有。

ハザード発生頻度が判断基準を十分

下回ることが示せる場合にのみ適用

可能な簡易的、保守的な方法である

こと、リスク上重要なシナリオ/シー

ケンス、SSC 等の詳細情報は示せな

いこと等を踏まえた評価結果の活用

の考え方。

断層変位ハザード曲線。若し

くは判断基準の変位量に対す

る超過頻度。

不確実さは決定論的に考慮。

若しくはフラクタイルハザー

ド曲線。

プラントに影響を与える可能性

のある変位量の設定。

不確実さは決定論的に考慮。

b.影響度分析:

当該外部ハザードのプラントへの影響を保守的に仮定したとして

も,プラントにおける炉心損傷につながる起因事象の発生,及び,

安全機能を有する SSC が損なわれる事が無いことを,決定論的評

価により確認する。この確認ができる場合には,当該ハザードは有

意な炉心損傷リスクを有しないものと判断する。

断層変位によるプラントへの影響が

軽微であることが示せる場合にのみ

適用可能な簡易的、保守的な方法で

あること、リスク上重要なシナリオ/

シーケンス、SSC 等の詳細情報は示

せないこと等を踏まえた評価結果の

活用の考え方。

なし(フラジリティ等との調

整は別途)

断層変位の規模に依らず、炉心

損傷防止に必要な SSC(例えば

地震 PRA の建屋・機器リスト

の対象 SSC)への影響が軽微で

あることを示す決定論的評価結

果。

不確実さは決定論的に考慮。

②裕度評価 多数の事故シナリオを対象として,炉心損傷につながる起因事象の

発生や安全機能を有する SSC の機能喪失に対するハザードの影響

を決定論的に設定することにより,炉心損傷リスクが必ず起こるハ

ザードレベル,及び,支配的な事故シナリオを導出する。ここで多

数の事故シナリオとしては,内的事象を対象とした事故シナリオが

使用可能である。

ここで導出されるハザードレベルとプラントに影響を与える可能性

のあるハザードレベルとの比を当該ハザードの炉心損傷に対する裕

度として算出する。

この結果,裕度が判断基準値を上回ると評価できる場合には,当該

ハザードは有意な炉心損傷リスクを有しないものと判断する。

CDF 等の絶対値は示せない(例えば

安全目標との比較は不可)こと、リ

スク上重要なシナリオ/シーケンス、

SSC 等の相対的(あるいは判断基準

に対する相対裕度の定量値)な詳細

情報を現実的に示せることを踏まえ

た評価結果の活用の考え方。

なし(フラジリティとの調整

は別途)

炉心損傷防止に必要な SSC(例

えば地震 PRA の建屋・機器リ

ストの対象 SSC)が機能喪失と

なる変位量。裕度を比として評

価する場合には、これに加えて、

影響を与える可能性のある変位

量。

不確実さは決定論的に考慮。

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5

表-1 4 つのリスク評価方法の整理(2/2)

リスク評価方法 評価方法の説明 基本的考え方として考慮すべき項目

(リスク評価により得られる結果)

断層変位ハザードとして必要

な情報

建物・構築物、機器・配管フラ

ジリティ等として必要な情報

③決定論的な

CDF 評価

炉心損傷につながる支配的な事故シナリオを対象として、炉心損傷

につながる起因事象の発生や安全機能を有する SSC の機能喪失に

対するハザードの影響を決定論的に設定する(SSC が必ず機能喪失

する、若しくは、必ず失敗するという仮定を行う)ことにより、ハ

ザードにより引き起こされるプラントの条件付き炉心損傷確率

(CCDP)を定量的に評価し、ここで算出された CCDP に、プラン

トに影響を与える可能性のあるハザードレベルを超過する外部ハザ

ード発生頻度を乗じることによりCDFを評価する。ここでのCCDP

評価としては、内的事象を対象とした PRA モデルを使用して、バウ

ンディング解析、若しくは、保守的な解析を実施することが可能で

ある。

この結果、CDF が判断基準値を下回ると評価できる場合には、当該

ハザードは有意な炉心損傷リスクを有しないものと判断する。

CDF 等の絶対値が保守的な結果とし

て求まること、リスク上重要なシナ

リオ/シーケンス、SSC 等の情報も保

守的な絶対値と相対的な詳細情報を

示せることを踏まえた評価結果の活

用の考え方。

なお、保守性を極力排除することで、

より現実的な評価(例えば手法②に

ハザード曲線を加味した評価)とす

ることは可能。

断層変位ハザード曲線。

不確実さは決定論的に考慮。

若しくはフラクタイルハザー

ド曲線等。

炉心損傷防止に必要な SSC(例

えば地震 PRA の建屋・機器リ

ストの対象 SSC)が機能喪失と

なる変位量を保守的に評価した

結果。

不確実さは決定論的に考慮。

④PRA等の詳細

なリスク評価

炉心損傷リスクを有すると判断される外部ハザードに対しては、確

率論的リスク評価(PRA)を適用する詳細なリスク評価を行う。こ

こでの全ての評価において、PRA を実施することが望ましいが、複

雑な事故シナリオを考慮する場合や事象の重畳を考慮する場合等に

より評価技術が未成熟な事象においては、決定論的評価及び工学的

判断による評価を適用することも可能である。

地震動に対するPRAと同等の詳細で

現実的なアウトプットを示すことが

できることを踏まえた評価結果の活

用の考え方。

断層変位ハザード曲線。不確

実さの情報(フラクタイルハ

ザード等)を含む。

炉心損傷防止に必要な SSC(例

えば地震 PRA の建屋・機器リ

ストの対象 SSC)に対するフラ

ジリティ曲線。不確実さの評価

(βU、βR)を含む。

(注)以下に示す特性分析基準の一つ以上に合致する場合は、リスク評価するまでもなく有意な炉心損傷リスクはないと判断できるとしている。

【基準1】ハザードの発生頻度が極めて小さいことが明確である。

【基準2】ハザードがプラントに影響を与える程近傍で発生しない。

【基準3】ハザードが進展するタイムスケールがプラントでの対処時間に比べて十分に長い。

【基準4】ハザードがプラントに到達したとしても、炉心損傷につながる起因事象を引き起こさないことが明らかである。

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6

図-2 評価方法①のイメージ

評価方法①評価方法①評価方法①評価方法①aaaa

評価結果:X(A を超えるハザードの年当

たり発生頻度)

適用方法(例):判断基準値 Y と X を比較

し、当該ハザードがリスクの観点で有意

かどうかを判断

適用のために必要な基準等:

・基準ハザードレベル:A(m)

・発生頻度の判断基準値:Y(/年)

評価方法①評価方法①評価方法①評価方法①bbbb::::

評価結果:炉心損傷につながる起因事象

となる SSC、及び安全機能を有する

SSC が当該ハザードにより損なわれる

かどうかを決定論的に評価

適用方法(例):これらのSSCが損わ

れるかどうかの結果から、当該ハザード

がリスクの観点で有意かどうかを判断

適用のために必要な基準等:なし

建屋・機器リスト

建屋・機器

xx 建屋

xx ポンプ

システム

xx 系統

事故シーケンス評価 フラジリティ

断層変位(m)

(ポイント評価)

断層変位(m)

(分布評価)

イベントツリー

フォールトツリー

断層変位(m)

X

Y

A

ハザード発生頻度

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7

図-3 評価方法②のイメージ

評価方法②評価方法②評価方法②評価方法②

評価結果:当該ハザードに対する炉心損傷、及び/あるいは事故シーケンス(グループ)が発生するハザードレベル(X)、若しくは基

準となるハザードレベル(A)に対する裕度

適用方法(例):事故シーケンス(グループ)毎の裕度の大小からリスクの観点で重要かどうかを分類。または裕度を判断基準値と比較

適用のために必要な基準等:基準となるハザードレベル(A)、ハザードレベル/裕度の判断基準値(Y)

建屋・機器リスト

建屋・機器

xx 建屋

xx ポンプ

システム

xx 系統

事故シーケンス評価 フラジリティ

断層変位(m)

断層変位(m)

(ポイント評価)

(分布評価)

イベントツリー

フォールトツリー

X

断層変位(m)

A

Y

断層変位(m)

ハザード発生頻度

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8

図-4 評価方法③のイメージ

評価方法評価方法評価方法評価方法③③③③

評価結果:フラジリティの不確実さを保守的に評価したCDF、及び/あるいは事故シーケンス(グループ)の発生頻度

適用方法(例):事故シーケンス(グループ)毎の発生頻度の大小からリスクの観点で重要かどうかを分類。またはCDF、事故シーケンス(グループ)発生頻度を判断基準値と比較

適用のために必要な基準等:

・事故シーケンス(グループ)を分類する際のしきい値

・CDF、事故シーケンス(グループ)発生頻度の判断基準値

建屋・機器リスト

建屋・機器

xx 建屋

xx ポンプ

システム

xx 系統

事故シーケンス評価 フラジリティ

断層変位(m)

断層変位(m)

(ポイント評価)

(分布評価)

イベントツリー

フォールトツリー

A B C 全 CDF

事故シーケンス(グループ)

断層変位(m)

ハザード発生頻度

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9

図-5 評価方法④のイメージ

評価方法評価方法評価方法評価方法④④④④

評価結果:不確実さを確率論的に評価したCDF、及び/あるいは事故シーケンス(グループ)の発生頻度

適用方法(例):事故シーケンス(グループ)毎の発生頻度の大小からリスクの観点で重要かどうかを分類。またはCDF、事故シーケンス(グループ)発生頻度を判断基準値と比較

適用のために必要な基準等:

・事故シーケンス(グループ)を分類する際のしきい値

・CDF、事故シーケンス(グループ)発生頻度の判断基準値

建屋・機器リスト

建屋・機器

xx 建屋

xx ポンプ

システム

xx 系統

事故シーケンス評価 フラジリティ

断層変位(m)

断層変位(m)

(ポイント評価)

(分布評価)

イベントツリー

フォールトツリー

) A B C 全 CDF

事故シーケンス(グループ)

平均値

断層変位(m)

ハザード発生頻度

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10

添付-2 事故シナリオの整理

「地質・断層変位評価」、「建物・構築物影響評価」、「土木構造物影響評価」及び「機器・

配管系影響評価」各グループにおける影響評価対象整理の考え方を基に、リスク評価、対

処方策検討のための事故シナリオを以下の手順で整理した。

① 断層変位が単独で影響する場合と、地震の発生に伴う地震動等の影響と断層変位の

影響が重畳する場合に分類する。地震の発生に伴う影響については、地震動による

機器等の損傷以外にも、津波、火災、溢水といった随伴影響、波及影響が考えられ

るが、ここではそれらを含めて地震動等による影響として分類する。また、余震に

よる地震動の影響など、時間遅れでの影響の可能性も考えられることから、余震等

の影響として分類とする。

② 断層変位は地震動と異なりその影響が局所的であることを考慮し、断層変位が発生

する位置関係による分類を考慮する。

③ 断層変位による建物・構築物、及び土木構造物の損傷の状況、形態等に着目した影

響シナリオを分類する。

④ 建物・構築物の影響に応じて機器・配管系への影響シナリオを分析する。

⑤ これらの分類項目毎に、断層変位の影響が局所的な場合を想定して、損傷の組み合

わせ、ランダム故障等との重畳を考慮した重大事故に到る事故シナリオを整理する。

整理結果を表-2 に示す。なお、これらの事故シナリオは、それぞれが単独で発生する場

合だけでなく、組合せて発生する場合も考えられることに留意が必要である。

これらの事故シナリオについて、リスク評価の観点からの取り扱い方針のパターンを以

下に示す考え方で分類し、合わせて表-2 に整理した。リスク評価では必要に応じてこれら

を組み合わせて実施する。

A) 建物・構築物の断層変位による影響範囲とフラジリティ評価結果を事故シーケンス

解析モデルに反映

B) 建物・構築物の影響による機器・配管等の影響範囲とフラジリティ評価結果を事故

シーケンス解析モデルに反映

C) 土木構造物の断層変位による影響範囲とフラジリティ評価結果を事故シーケンス解

析モデルに反映

D) スクリーニングアウト対象

E) 他のハザード評価、他のリスク評価等と結合させた総合的な評価が必要

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11

表-2 断層変位による事故シナリオの分析・整理

ハザードの

影響 断層変位の発生位置 建物・構築物/土木構造物

への影響シナリオ 機器・配管への 影響シナリオ

重大事故に到るシナリオ 取扱い

方針

断層変位 プラントの安全性に直接

影響する位置での断層変

床、壁の全体崩壊 当該建屋内の全ての機器・配管

等が機能喪失 建物・構築物の大規模な損傷によりそのまま

重大事故に到る。(炉心損傷直結) A

床、壁の局所的崩壊 当該建屋内の一部の機器が機

能喪失 機器の損傷の組み合わせ或いは他の機器の故

障の重畳により重大事故に到る。 A

変形 影響程度により当該建屋内の

大型動的機器が機能損傷 大型動的機器の損傷の組み合わせ或いは他の

機器の故障の重畳により重大事故に到る。 B

傾斜 影響程度により当該建屋内の

動的機器が機能損傷 動的機器の損傷の組み合わせ或いは他の機器

の故障の重畳により重大事故に到る。 B

建屋内支持機能の低下 影響程度により当該建屋内の

機器定着部の構造損傷 機器の損傷の組み合わせ或いは他の機器の故

障の重畳により重大事故に到る。 B

建屋間の相対変位 影響程度により当該建屋間の

渡り配管等の構造損傷 渡り配管の損傷の組み合わせ或いは他の機器

の故障の重畳により重大事故に到る。 B

土木構造物の損傷 関連する機器・配管等が機能喪

失 土木構造物の損傷によりそのまま或いは他の

機器の故障の重畳により重大事故に到る。 C

プラントの安全性に間接

的に影響する位置での断

層変位

床、壁の全体/局所的崩壊 当該建屋内の全て /一部の機

器・配管等が機能喪失 建物・構築物の損傷と他の機器の故障の重畳

により重大事故に到る。 A

建屋の変形 当該建屋内の大型動的機器が

機能損傷 大型動的機器の損傷と他の機器の故障の重畳

により重大事故に到る。 B

建屋の傾斜 当該建屋内の動的機器が機能

損傷 動的機器の損傷と他の機器の故障の重畳によ

り重大事故に到る。 B

建屋内支持機能の低下 当該建屋内の機器定着部の構

造損傷 機器の損傷と他の機器の故障の重畳により重

大事故に到る。 B

建屋間の相対変位 当該建屋間の渡り配管等の構

造損傷 渡り配管の損傷と他の機器の故障の重畳によ

り重大事故に到る。 B

土木構造物の損傷 関連する機器・配管等が機能喪

失 土木構造物の損傷と他の機器の故障の重畳に

より重大事故に到る。 C

プラントの安全性に有意

に影響しない位置での断

層変位

有意な影響なし 有意な影響なし 重大事故に到るシナリオは考えにくい。 D

断層変位+

地震動等 上記に同じ 上記に加え、建物・構築物、

土木構造物の地震動等に

よる損傷

上記に加え、機器・配管等の地

震動等による損傷 上記に加え、地震動による建物・構築物及び

機器・配管等の損傷の重畳により重大事故に

到る。

断層変位+ 余震等

上記に同じ 断層変位の影響下での余

震等による損傷 断層変位の影響下での余震等

による損傷 上記に加え、断層変位の影響下での余震等に

よる損傷との重畳により重大事故に到る。 E

Page 12: ・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

12

添付-3 リスク評価手順の整理

図-1、図-3 の評価方法②を採用する場合を想定して、断層変位に関するリスク評価を実

施し、評価時点でのプラントの安全性確認、及び継続的な安全性向上活動に資することを

目的とした検討フロー案を図-6 に示す。

リスク評価モデルでは、目的に応じて、炉心損傷まで、炉心損損傷後の格納容器機能の

喪失まで、等、事故シーケンスモデルの評価範囲を選択することができる。また、同様に

目的に応じて、事故シーケンスモデルでは整備済、あるいは整備を計画している重大事故

対処設備や自主的なアクシデントマネジメント等に期待した評価も可能である。

更に、断層の影響範囲と設備配置の関係に応じて、機能喪失する設備と機能を維持でき

る設備が存在する可能性を考慮する。このため、断層に関する情報のうち影響範囲に係る

情報の特性に応じて、必要であれば断層の想定を複数評価する等、建物・構築物、機器・

配管系の評価と調整しつつ適切な取扱い方法を考える。

上限変位は、断層変位に関するリスク評価の基本的考え方に基づき定義されるものと想

定し、上限変位までにクリフエッジがないことをリスク評価により確認することで、評価

対象とした当該プラントにおける安全性確保の状況を評価することができる。更に、リス

ク評価結果からプラントの相対的な脆弱性を把握することにより、最新知見の反映等によ

る継続的な安全性向上活動に繋げることができる。

<具体的なイメージ>

以下に図-6 における「建屋・機器リスト作成」及び「リスク評価モデル作成」に関する

具体的なイメージ、要求事項等を示す。

(1) 建屋・機器リスト作成

「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*201*201*201*」」」」

の附属書附属書附属書附属書 XXXX に、フラジリティ評価対象の建屋・機器リストの記載内容例が示されている。

断層変位に関するリスク評価では断層変位が発生する位置に応じてその影響が大きく変わ

るため、以下に示すように、建屋・機器リスト上に座標情報も記載する必要がある。

出典:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*」附属書 X

「座標情報」を追加

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13

(2) リスク評価モデル作成

「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*201*201*201*」」」」

の附属書附属書附属書附属書 CWCWCWCW に、地震を起因としたイベントツリーの作成例が示されている。これを用い

て、断層変位に関するリスク評価におけるリスク評価モデルの BWR プラントにおける作成

例を以下に検討する。

・原子炉建屋直下(プラントの安全性に直接影響する位置)での断層変位のケース

附属書附属書附属書附属書 CWCWCWCW の図 CW.1 のイベントツリーがこのケースと類似している。同図における「地

震動」を「断層変位」に、「原子炉建屋損傷」を「原子炉建屋 床、壁の全体崩壊」に置き

換える(図-7 に示す)。原子炉建屋の床、壁の全体崩壊に至る場合には、地震 PRA と同様

に炉心損傷直結事象と整理する。建屋の局部損傷に留まる場合は、機器、配管、土木構築

物等への影響を評価し、その結果を後続のヘディングにて考慮する。

・熱交建屋直下(プラントの安全性に間接的に影響する位置)での断層変位のケース

このケースでは、原子炉建屋直下の場合と異なり、建屋の床、壁の全体崩壊に至ったと

しても炉心損傷直結事象には至らない。海水系・機器冷却系の喪失により LUHS(Loss of

Ultimate Heat Sink)となるが、重大事故等対処設備(SA 対策)を考慮すると炉心損傷を

回避できる(蒸気駆動ポンプによる原子炉注水、その後格納容器ベント+代替注水系によ

る注水継続)。附属書附属書附属書附属書 CWCWCWCW の図 CW.3 の全交流電源喪失のイベントツリーがこの場合と類似

している。同図における「地震」を「断層変位」に変換する(図-8 に示す)。図-8 では、断

層変位によって、熱交建屋の床、壁の全体崩壊に至ったシーケンスを太線で示めしている。

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14

図-6 リスク評価結果の適用イメージ(評価方法②の採用を想定)

上限変位まで

クリフエッジ有無

建物・構築物への強制変位解析

リスク評価モデル作成

建屋・機器リスト作成

機器・配管系への影響検討

リスク評価(評価方法②)

クリフエッジシナリオへの

対策検討

内的事象、地震等、

利用可能なリスク評価

断層変位に対する安全性を確認

継続的な安全性向上活動

断層に関する情報

(変位量、位置、ずれの方向、等)

断層に関する情報に応じて

評価方法を調整

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15

出典:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*」附属書 CW

図-7 原子炉建屋直下での断層変位におけるイベントツリー例

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16

出典:「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*」附属書 CW

図-8 熱交建屋直下での断層変位におけるイベントツリー例

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17

添付-4 対処方策の検討

断層の活動性とそれに伴うリスクをどのように取り扱い対処するかを検討するために、

深層防護に関する以下の原子力学会の標準等に記載されている考え方を参考に整理した。

(詳細は別添参照)

� 原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010

� 原子力安全の基本的考え方について 第 1 編 別冊 深層防護の考え方 2014 年 5

� 原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関する

実施基準:2014

これらを参考に、断層変位に対して有効と考えられる対処方策のイメージを、方策の考

え方と、深層防護概念との関係を考慮して表-3 に整理した。

特に、設備の離隔によって断層変位の影響を避けるという方策の考え方については、既

存の設備配置においても有効な場合は多いと考えられ、それらを明確にするとともに、安

全性向上のために追加する恒設設備や可搬設備に関しては、断層変位の影響範囲を考慮し

た離隔化が有効である。

なお、深層防護の考え方としては、これらの対処方策が各レベルにおいて対応されるこ

とが望ましいが、不確実さを考慮したリスク評価によりリスクが適切に防止、抑制されて

いることが確認できていれば、現実的な対応は可と考えられる。

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18

表-3 対処方策のイメージ

対処方策の方法と考え方 耐える

安全上重要な設備の耐

力向上により機能を維

持する

吸収する/追随する

安全上重要な設備の変

位影響軽減により機能

を維持する

避ける3)

広範な従属的影響を避

ける(建屋間の離隔、

建屋内の離隔、等)

深層防護

レベル1)

目的 目的達成に不可欠な手段 関連する

プラント状態

レベル 1

通常運転からの逸脱と安

全上重要な設備の故障を

防止

品質管理と工学的手法に従って

プラントを健全かつ保守的に立

地, 設計, 建設, 保守, 運転。

通常運転

� PS 設備の耐力向上 (耐震性を考慮すると

適用は限定的)

� PS 設備間の離隔

レベル 2

プラントの運転時に予想

される事象が事故の状態

に拡大するのを防止

設計段階において特定の系統・設

備を設置。有効性を安全解析で確

認。

運転時の異常

な過渡変化

� MS設備の耐力向上 同上 � PS 設備と MS 設備

間の離隔

� MS 設備間の離隔

(多様性を有する

場合)

� MS 設備内(冗長系

列間、冗長機器間)

の離隔

レベル 3

炉心の損傷や重大な所外

放出を防止

設計段階において事故の進展可

能性を想定。固有の工学的安全施

設, 安全系, 手順書を用意。

設計基準事故

同上 同上 同上

レベル 4

深層防護の第 3 の防護レ

ベルが失敗した結果の事

故の影響を緩和

閉じ込め機能を確実にし, 放射

性物質の放出を合理的に達成可

能な限り低く維持。

設計拡張状態

(シビアアクシデ

ント状態も含む

こともある)2)

� 重大事故対処設備

の耐力向上

同上 � MS設備と重大事故

対処設備間の離隔

� 可搬設備の利用

� 外部支援の利用

レベル 5

放射性物質の放出による

放射線の影響を緩和

緊急時管理センターの整備。緊急

時対応に対する緊急時計画と緊

急時要領の確立。

(本調査の対象外)

注 1)SAM標準 解説1より抜粋。IAEA の SSR-2/1(2012)の深層防護の考え方に基づく。

注 2)原子力安全・保安院の解釈による「IAEA における深層防護の考え方」に基づく。

注 3)系統分離、位置的分散、可搬設備の利用等により、断層変位時にも生き残った設備を利用するもので、深層防護レベル5に対しても適用できる。

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別添-1

別添目次

(1)関連学会標準等の整理

別添-1 「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基

準:201*」の適用性

別添-2 「原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:

2010」の適用性

別添-3 「原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関す

る実施基準:2014」の適用性

(2)事故シナリオの整理

(3)リスク評価手順の整理

(4)対処方策の検討

別添-4 深層防護とリスクの関連

別添-5 原子力学会標準等に基づくアクシデントマネジメントの構築手順

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別添-2

別添-1

「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*」

の適用性

� 地震PRA の評価手順(下記)の骨子は断層変位リスク評価にも基本的に適用できる。

� 地震 PRA 標準改定版では断層変位に関しても一部記載されている。

(地震 PRA標準本文より)

4.評価手順

5.2サイト・プラント関連情報の収集・分析

5.3サイト・プラントウォークダウンの実施

5.サイト・プラント情報の収集・分析 5.事故シナリオの概括的分析

9.文書化

7.建屋・機器フラジリティ評価

8.事故シーケンス評価

6.地震ハザード評価

8.2起因事象の設定

6.2東北地方太平洋沖地震等巨大地震か

らの知見の反映、不確実さの取扱い及び

地震ハザードの妥当性確認

7.2評価対象と損傷モードの設定

附属書附属書附属書附属書A(規定)地震(規定)地震(規定)地震(規定)地震PRAの品質を確保するための方策の品質を確保するための方策の品質を確保するための方策の品質を確保するための方策

6.3震源モデルの設定 6.4地震動伝播モデルの設定

6.5ロジックツリーの作成

6.6地震動ハザードの評価

6.7フラジリティ評価用の地震

動の作成

7.3評価手法の選択

7.4現実的耐力の評価 7.5現実的応答の評価

7.6フラジリティの評価

8.3事故シーケンスのモデル化

8.4システムのモデル化

8.5事故シーケンスの定量化

6.1地震PRA実施基準策定後の地震からの知

見と地震動ハザード評価の流れへの反映

6.10複合ハザード評価及び地震随伴事象PRA

に用いる地震動ハザード

6.9断層変位及び地殻変動のハザード評価

6.8複数プラントにおけるハザー

ド評価の留意事項

7.7損傷の相関及び免震型原子力施設・

設備のフラジリティ評価

8.6格納容器機能喪失シナリオの分析

5.4事故シナリオの概括的な分析及び選定

5.5事故シナリオの明確化と起因事象の分析

5.6建屋・機器リストの作成

図図図図 4.1-地震-地震-地震-地震 PRA の評価手順の評価手順の評価手順の評価手順

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別添-3

(抜粋:附属書(参考)として改定時に追加となった断層変位に関する感度解析例)

附属書附属書附属書附属書 DK

(参考)(参考)(参考)(参考)

地殻変動及び断層変位に起因する地盤変状の影響の感度解析の例地殻変動及び断層変位に起因する地盤変状の影響の感度解析の例地殻変動及び断層変位に起因する地盤変状の影響の感度解析の例地殻変動及び断層変位に起因する地盤変状の影響の感度解析の例

序文序文序文序文

この附属書は,地殻変動及び断層変位に起因する地盤変状の影響の感度解析の例を記載

する。

DK.1 地盤変状地盤変状地盤変状地盤変状を考慮した場合のを考慮した場合のを考慮した場合のを考慮した場合の感度解析の感度解析の感度解析の感度解析の考え方考え方考え方考え方

地盤変状を考慮した場合の感度解析を行うためには,地盤変状のハザード評価,地盤変

状の影響を考慮した SSCsのフラジリティ評価及び事故シーケンス評価が必要となる。これ

らの評価技術は現時点で研究段階にあり,評価方法の詳細及び評価例などに関する情報は

非常に少ないため,地盤変状を考慮した場合の感度解析の方法を,系統的に示すには至っ

ていない。次は,現段階で得られている情報又は知見から,各評価過程における感度解析

の基本的な考え方を纏めたものである。

DK.2 地盤変状地盤変状地盤変状地盤変状の影響の影響の影響の影響に関する感度解析のに関する感度解析のに関する感度解析のに関する感度解析の方法方法方法方法

特定の活断層とそれに付随する副断層の活動による炉心損傷頻度への寄与の程度につい

て感度解析を行う方法の例は次のとおりである。

地盤変状の炉心損傷への寄与は,次のようなシナリオによって生じると考えられる。

① 当該活断層又は付随する副断層が活動する。

② ①の活動により,当該原子炉建屋,熱交換器建屋などの重要建屋及び重要な屋外施

設のある領域で地盤変状が発生する。

③ ②の地盤変状の発生により,安全機能の一部が喪失する。

安全機能喪失のメカニズムとしては,次が想定される。

・建屋直下の地盤変状により建屋が損傷又は崩壊する

・建屋の傾きにより建屋内の SSCsが損傷する

・建屋間の変位により渡り配管,ケーブル,タンクなどが損傷する

・屋外に設置された配管,ケーブル,機器が損傷する

④ ①の活動により,地震動が重畳する。

⑤ ④の地震動により,安全機能の一部が喪失する。

⑥ ③及び⑤の結果,炉心損傷に至る。

以上のシナリオによる炉心損傷頻度を感度解析する手順を次に示す。

ただし,この手順は,現在の知見から評価するために,過大評価と思われる仮定をあえ

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別添-4

て用いている。従って,よりよい精度を得る方法があればモデルを詳細化することは望ま

しいことである。

a) 当該活断層又は付随する副断層の活動の発生頻度の評価当該活断層又は付随する副断層の活動の発生頻度の評価当該活断層又は付随する副断層の活動の発生頻度の評価当該活断層又は付随する副断層の活動の発生頻度の評価 特定震源における地震動の

発生頻度の評価方法【本本本本体体体体 6.9】】】】を用いて当該活断層の発生頻度を評価する。この頻度

は,当該活断層が動く場合と副断層が動く場合の合併事象の頻度を表すものと解釈す

る。

b) 地盤変状影響区画の設定地盤変状影響区画の設定地盤変状影響区画の設定地盤変状影響区画の設定 サイト内の領域のうち,そこで地盤変状が生じた場合に当該

原子炉の安全機能に関わる領域を評価対象活断層と平行に設定した長方形区画として

設定する。

この区画内で変状が生じた場合にのみ,地盤変状の影響が及ぶと考え,さらに,この

区画内で生じた場合には,あらゆる SSCsのそれぞれに,その真下で変状が生じた場合

と同じ強さの負荷が加わるものと仮定する。この仮定は保守的と考えられるが,感度

解析により炉心損傷頻度への影響が大きく過度に保守的と考えられる場合は,適宜こ

れを分割してモデルを詳細化してもよい。その場合は,複数区画のどれかで発生する

と仮定し,発生確率は区画を1個とした場合の確率を面積比で配分する。

c) 地盤変状影響区画で発生する地盤変状の評価地盤変状影響区画で発生する地盤変状の評価地盤変状影響区画で発生する地盤変状の評価地盤変状影響区画で発生する地盤変状の評価 当該活断層又は副断層の活動により,付付付付

属書属書属書属書 BD(参考)(参考)(参考)(参考)に示した方法により得られる地盤変状影響区画での生起確率と地表に

おける断層変位の大きさ(条件付き断層変位ハザード)を求める。次に,敷地内で,

その断層変位が生じる得る弱面を含む基盤上の地盤をモデル化し,粒子法

1)などを用い

て基盤に断層変位に起因した段差を静的に作用する解析を実施する。その解析は,地

表における断層変位が先に示した地表位置の断層変位と同程度となるように試行錯誤

的に実施し,地表における断層変位とその周辺の地盤変状を求める。

d) 断層変位による断層変位による断層変位による断層変位によるSSCsのフラジリティ評価のフラジリティ評価のフラジリティ評価のフラジリティ評価 炉心損傷防止及び格納容器機能維持防止に

関わる安全機能を有する機器のうち,地盤変状の影響評価において機能を期待する機

器について地盤変状に対するフラジリティ評価を行う。【本本本本体体体体 7.2.4 a) 3.4),本体本体本体本体 7.4.2.3

d),本体本体本体本体 7.5.2.3 b)参照】

安全機能喪失のメカニズムとしては,次を考慮する。

① 建屋直下の断層変位により建屋が損傷又は崩壊する

② 建屋の傾きにより建屋内の SSCsが損傷する

③ 建屋間の変位により渡り配管,ケーブル,タンクなどが損傷する

④ 地盤変状により屋外に設置された配管,ケーブル,機器が損傷する

なお,対象機器の選定では,例えば,相当に大きい建屋間変位が想定される場合には,

屋外の機器と建屋間を横断する機器はすべて損傷すると仮定することとし,建屋内の

機器とモバイルの機器だけで炉心損傷防止をはかる成功パスについてのみ評価するこ

とでもよい。その場合は地盤変状の安全機能喪失のメカニズムとして①と②のみを考

慮する。

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別添-5

e) 炉心損傷への影響の炉心損傷への影響の炉心損傷への影響の炉心損傷への影響の感度解析感度解析感度解析感度解析 評価対象活断層の活動による地震動の発生については,

地震動に関する事故シーケンス評価のために作成したシステムモデル(イベントツリ

ー/フォールトツリーなど)を適用することとし,これと地盤変状による機器の損傷に

関する a)から d)までの評価結果を統合して,評価対象活断層が動いた場合の条件付き

炉心損傷確率を感度解析する。

【【【【参考文献参考文献参考文献参考文献】】】】

(1) Jorgen Johnasson, Kuauzo Konagai, Fault induced permanent ground deformations:

Experimental verification of wet and dry soil, numerical findings’ relation to field observations

of tunnel damage and implications for design, Soil Dynamics and Earthquake Engineering 27

(2007) 938–956

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別添-6

別添-2

「原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010」の適

用性

「まえがき」より抜粋:

この標準は,リスク情報を確率論的安全評価(以下,“PSA”という。)によって得られ

る情報と捉えて,原子力発電所の安全確保活動のうち電気事業者が実施する運転・保守管

理の変更においてリスク情報を活用して意思決定する場合に用いる,各活用分野に共通し

た要件と要件を満たす具体的方法を規定したものです。

「標準本文」より抜粋:

図図図図 リスク情報活用の実施フロー(概念図)リスク情報活用の実施フロー(概念図)リスク情報活用の実施フロー(概念図)リスク情報活用の実施フロー(概念図)

本体 5.2

活用方法及び関係する要求事項の

明確化

本体 5.4 計画の策定

本体 5.3.2 本体 5.3.3

本体 5.4.2

本体 5.4.3

本体 5.5

確率論的安全評価

本体 5.3 工学的評価の実施

本体 5.3.4

本体 5.4.1

安全余裕の確保

実施計画の策定

統合的な意思決定

計画の実行と是正

監視計画の策定

深層防護の堅持

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別添-7

5555....3333....2222 深層防護の堅持深層防護の堅持深層防護の堅持深層防護の堅持

注)注)注)注)

安全確保活動の変更を想定しても深層防護が適切に堅持されていることを,次の a)a)a)a)~eeee))))

の全項目により確認する。

a)a)a)a) 防護レベル間のバランスと独立性の確保防護レベル間のバランスと独立性の確保防護レベル間のバランスと独立性の確保防護レベル間のバランスと独立性の確保 異常の発生防止,異常の拡大防止及び影響の

低減の三つの防護レベルがバランスよく講じられ,一つ又は二つの防護レベルに過度

に依存していないこと,かつ,各防護レベル間の独立性が適切に確保されていること

を確認する。

b)b)b)b) 管理的手段への過度な依存の回避管理的手段への過度な依存の回避管理的手段への過度な依存の回避管理的手段への過度な依存の回避 異常の発生防止,異常の拡大防止及び影響の低減の

三つの防護レベルの信頼性を確保するに当たり,運転操作,試験,及び検査などの管

理的手段に過度に依存しないことを次のように確認する。

c)c)c)c) 多重性又は多様性及び独立性の確保多重性又は多様性及び独立性の確保多重性又は多様性及び独立性の確保多重性又は多様性及び独立性の確保 原子力発電所における起因事象の発生頻度やそ

の影響,それらの不確実さに応じて防護レベルの各対策を受け持つ系統,機器などの多

重性又は多様性及び独立性が確保されていることを次のように確認する。

d)d)d)d) 共通原因故障に対する防護対策の実施共通原因故障に対する防護対策の実施共通原因故障に対する防護対策の実施共通原因故障に対する防護対策の実施 複数の防護レベルに共通に関連する共通原因

故障について防護対策が適切に講じられていることを次のように確認する。また,個々

の防護レベルの維持に対して影響の大きい共通原因故障の防護対策がとられているこ

とも確認する。

e)e)e)e) 人的過誤の防止対策の実施人的過誤の防止対策の実施人的過誤の防止対策の実施人的過誤の防止対策の実施 複数の防護レベルに共通に関連する人的過誤について防

止対策が適切に講じられていることを次のように確認する。また,個々の防護レベル

の維持に対して影響の大きい人的過誤の防止対策がとられていることも確認する。

5555....3.33.33.33.3 安全余裕の安全余裕の安全余裕の安全余裕の確保確保確保確保

変更する安全確保活動に関して,現行の許認可内容へ影響する項目の評価値の変化を確

認し,安全余裕を確保していることを次により確認する。

a)a)a)a) 5.25.25.25.2 に関して設置許可,工事計画認可,保安規定認可などの許認可内容の変更が生じる

可能性の有無を明らかにし,許認可内容に変更が無いことを確認する。

b)b)b)b) 5.25.25.25.2 に関して設置許可,工事計画認可,保安規定認可などの許認可内容の変更が生じる

可能性の有無を明らかにし,許認可内容の変更の可能性がある場合は,安全確保活動

の変更内容が影響する温度,圧力等のすべての発生荷重を評価し,許認可における規

制許容基準を満足することを確認する。

附属書D(参考)「深層防護の堅持の確認の考え方」より抜粋:

DDDD.1.1.1.1 深層防護の位置付けと防護レベルの対策を受け持つ系統,機器等深層防護の位置付けと防護レベルの対策を受け持つ系統,機器等深層防護の位置付けと防護レベルの対策を受け持つ系統,機器等深層防護の位置付けと防護レベルの対策を受け持つ系統,機器等(本体の 5.5.5.5.3333.2.2.2.2)

a)a)a)a) 深層防護の位置付け深層防護の位置付け深層防護の位置付け深層防護の位置付け 深層防護とは,国際原子力機関(IAEA)の INSAG-121) “Basic

Safety Principles for Nuclear Power Plants 75-INSAG-3 Rev.1”(以下,“基本的安全原則”

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別添-8

という。)では,安全確保対策を講じる場合,“異常の発生防止”,“異常の拡大防止”,“影

響の低減”,“アクシデントマネジメント”,及び“防災”(以下,これらを“防護レベル”

という。)について,ひとつの防護レベルあるいは物理的障壁が万一機能し損なっても,次

のレベルあるいは物理的障壁が機能するか確認することで,各防護レベルの信頼性を確保

するものであるとされている。安全確保活動にリスク情報を活用して変更する場合におい

ても,これらの防護レベルの信頼性が確保され,深層防護が堅持されることが求められる。

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別添-9

別添-3

「原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関する実施基

準:2014」(SAM 標準)の適用性

SAM 標準本文より抜粋:

注:図中の番号は SAM 標準の章番号。

AAAACTCTCTCT

13131313 維持向上維持向上維持向上維持向上

14141414 品質保証品質保証品質保証品質保証

PLAPLAPLAPLANNNN

5555 発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出

6666 発電所対応能力の同定発電所対応能力の同定発電所対応能力の同定発電所対応能力の同定

7777 アクアクアクアクシデントマネジメントの検討シデントマネジメントの検討シデントマネジメントの検討シデントマネジメントの検討

(解析評価を含む)(解析評価を含む)(解析評価を含む)(解析評価を含む)

CCCCHECKHECKHECKHECK

11 11 11 11 確認及び検証確認及び検証確認及び検証確認及び検証

12 12 12 12 教育・訓練教育・訓練教育・訓練教育・訓練

DDDDOOOO

8888 設備改造又は追加設備改造又は追加設備改造又は追加設備改造又は追加

9999 手順書類の作成手順書類の作成手順書類の作成手順書類の作成

10101010 緊急時対応組織の整備緊急時対応組織の整備緊急時対応組織の整備緊急時対応組織の整備

12121212 教教教教育・訓練育・訓練育・訓練育・訓練

アクシデントマネジメントの目的アクシデントマネジメントの目的アクシデントマネジメントの目的アクシデントマネジメントの目的

①シビアアクシデントの防止,②事故進展の抑制,③格納容器の健

全性確保,④放射性物質の放出の最小化,⑤長期の安定状態の達成

図図図図 4.14.14.14.1-アクシデントマネジメントに関する-アクシデントマネジメントに関する-アクシデントマネジメントに関する-アクシデントマネジメントに関する PDCAPDCAPDCAPDCA サイクルサイクルサイクルサイクル

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別添-10

第四回作業会資料「SAM 標準の概要について」より抜粋:

3.3.3.3.発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出発電所脆弱性の摘出((((SAMSAMSAMSAM 標準標準標準標準 5555 章)章)章)章)

設計基準事故を超え,シビアアクシデントに至る重要なシーケンスを同定することにより,

発電所脆弱性の摘出を行う。

3.13.13.13.1 事象の想定事象の想定事象の想定事象の想定

事象の想定については, 可能な限りの網羅性を確保することを目標に a), b)項に基づいて

考慮する。

a) 対象プラントの安全機能喪失の起因として以下の事象を考慮する。

1) 単一事象(内的事象, 外的事象),2) 重畳事象,3) 安全機能の重大な喪失

b) 安全機能の支援, 代替もしくは復旧に際して, 以下の事象を考慮する。

1) 社会インフラの喪失,2) 複数プラントの損傷

3.23.23.23.2 重要な想定事象の抽出重要な想定事象の抽出重要な想定事象の抽出重要な想定事象の抽出

3.1 において a)で想定した事象の内, 安全機能の重大な喪失に繋がる想定事象を除く単一事

象及び重畳事象を対象にし,“定性的な予備スクリーニング”と“バウンディング解析或い

は保守的であると論証可能な解析に基づく定量的なスクリーニング”を段階的に実施して

重要な想定事象の抽出を行う。

3.33.33.33.3 重要なシーケンスの同定重要なシーケンスの同定重要なシーケンスの同定重要なシーケンスの同定

3.2 で抽出した重要な想定事象毎に, 確率論的リスク評価(以下、PRA という), 決定論

的評価, 工学的判断又はそれらを組み合わせることにより重要なシーケンス(炉心損傷等に

至る起因事象,緩和系作動及び緩和操作の成否の組合せ)を同定する。

少なくとも内的事象においては, PRA により重要なシーケンスを同定する。内的事象以外

の外的事象に対する重要なシーケンスの同定についても, PRA により実施する事が望まし

いが, 評価技術が未成熟な事象においては, 決定論的評価及び工学的判断による評価を用

いて重要なシーケンスを同定する。

重要なシーケンスの同定における評価にあたっては, 以下を考慮する。

a) PRA においては, アクシデントマネジメントの抽出に資するべく, プラント挙動, 事故

の進展, 事故の過酷度の観点で, 設計基準を超える事故及びシビアアクシデントを総合的

に評価し, 燃料及び原子炉格納容器の健全性並びに放射性物質の放出に関する重要なシー

ケンスを同定する。

b) これらの評価に際しては, プラント状態として出力運転時及び停止時を対象とするとと

もに, 発電所に保管中の使用済燃料についても対象とする。又, プラント固有の安全設計上

の特徴(機器, システム,建物, 構築物の仕様や配置を含む)を考慮する。更に, サイト・プ

ラントウォークダウン(原子力発電所内の現地調査)により, 発電所の立地条件やプラント

間の独立性を含むプラント設備, 運用の実態を踏まえた調査を行う。

3.3.13.3.13.3.13.3.1 確率論的リスク評価による重要なシーケンスの同定確率論的リスク評価による重要なシーケンスの同定確率論的リスク評価による重要なシーケンスの同定確率論的リスク評価による重要なシーケンスの同定

PRA を適用する場合には, 事故シーケンスグループを定義してグループ毎の発生頻度の程

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別添-11

度により重要なシーケンスグループを抽出し, それに基づき重要なシーケンスを同定する。

3.3.23.3.23.3.23.3.2 決定論的評価及び工学的判断による重要なシーケンスの同定決定論的評価及び工学的判断による重要なシーケンスの同定決定論的評価及び工学的判断による重要なシーケンスの同定決定論的評価及び工学的判断による重要なシーケンスの同定

外的事象に対して決定論的評価及び工学的判断を用いる場合には, 内的事象で設定した事

故シーケンスグループを参考にグループを設定して, 事故シーケンスグループ毎で最も発

生頻度の高いと判断されるシーケンスを同定してそれを重要なシーケンスとする。決定論

的評価及び工学的判断を使用する場合においては, 適切な保守性を考慮して評価・判断を行

う等,PRA を使用する場合とは評価の詳細度が異なることを認識した上で, 重要なシーケ

ンスの同定を行うことが望まれる。

3.43.43.43.4 プラント個別の脆弱性の摘出プラント個別の脆弱性の摘出プラント個別の脆弱性の摘出プラント個別の脆弱性の摘出

3.3 で同定した重要なシーケンスの要因となる系統, 機器等に基づき, プラント個別の脆弱

性を摘出する。安全機能の重大な喪失に繋がる想定事象に対しては, 決定論的評価及び工学

的判断を用いてプラント個別の脆弱性を摘出する。

4.発電所対応能力の同定(4.発電所対応能力の同定(4.発電所対応能力の同定(4.発電所対応能力の同定(SAMSAMSAMSAM 標準標準標準標準 6666 章)章)章)章)

前節で述べた発電所脆弱性の摘出で実施する重要な事故シーケンス及びプラント脆弱性の

摘出と並行し,アクシデントマネジメントの検討のための情報として,シビアアクシデン

トの発生防止及び影響緩和のそれぞれに対し,有効と考えられる全ての対応能力を同定す

る。

4.1 4.1 4.1 4.1 設備,手順設備,手順設備,手順設備,手順

設計と異なる目的での設備使用や設計ベースを超えた利用,故障した設備の復旧及び再使

用,従来と異なる設備構成又は仮設設備を使用する可能性等について確認する。アクシデ

ントマネジメント策に係る設備及び手順は,炉心損傷や格納容器バウンダリの破損防止が

可能か,若しくは損傷や破損が避けられない場合には,それらを遅らせることができるよ

う整備されているかどうかを確認する。

4.2 4.2 4.2 4.2 体制,要員の能力,作業環境体制,要員の能力,作業環境体制,要員の能力,作業環境体制,要員の能力,作業環境

発電所の体制が,休日や夜間においても十分な緊急時対応を高い信頼性で実施できるもの

かどうかを確認する。また,アクシデントマネジメント策を適切に実行するために,要員

の能力が十分であるか,教育・訓練が,自然災害発生時等の劣悪な環境条件を想定して実

施されているかどうかを確認する。高放射線下における作業など,要員の健康や生命に危

険を及ぼす可能性のある作業の実施については線量低減のため,遮へい設備や資機材の整

備や手順上の配慮が適切になされているかどうかを確認する。

4.3 4.3 4.3 4.3 外部支援外部支援外部支援外部支援

同一敷地内の隣接プラントから利用できる手段や支援の活用は,外部ハザード(地震,津

波等,発電所外で発生するハザード要因)及びプラント間の共用部からの影響伝播が複数

プラントに及ぼす影響を考慮しても,隣接プラントがその支援の提供に支障がないもので

あるかどうかを確認する。資機材,燃料などを発電所外から調達することを考慮する場合

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別添-12

は,社会インフラの喪失に伴う輸送時間,輸送経路への影響や気象などによる輸送手段へ

の制約の観点から適切な計画が策定されているかどうかを確認する。

5.5.5.5.アクシデントマネジメントの検討アクシデントマネジメントの検討アクシデントマネジメントの検討アクシデントマネジメントの検討((((SAMSAMSAMSAM 標準標準標準標準 7777,,,,8888 章)章)章)章)

5.15.15.15.1 アクシデントマネジメントの策定アクシデントマネジメントの策定アクシデントマネジメントの策定アクシデントマネジメントの策定

3 章「発電所脆弱性の摘出」,4 章「発電所対応能力の同定」の結果を元に,合理的に実行

可能なアクシデントマネジメントを策定する。策定にあたって従うべき考え方の例を以下

に示す。

・ シビアアクシデントの防止,事故進展の抑制、格納容器の健全性確保,放射性物質の放

出の最小化,及び長期の安定状態の達成が可能な方策を策定する。

・ プラントの全ての能力を考慮してよいが,対象とするシーケンスにおいて機能喪失して

いる可能性が高い設備との独立性を考慮する。

・ 外的事象時の対応を目的とする場合,当該のアクシデントマネジメントの有効性が損な

われないように設置,保管場所を選ぶなど,適切に策定する。

5.25.25.25.2 アクシデントマネジメントの優先順位の体系的評価アクシデントマネジメントの優先順位の体系的評価アクシデントマネジメントの優先順位の体系的評価アクシデントマネジメントの優先順位の体系的評価

対象とするシーケンスの進展に応じて,対応方策の重要性を考慮し,実施する対応方策の

選択,及び実施に際しての優先順位を評価する。

5.35.35.35.3 アクシデントマネジメントの有効性確認アクシデントマネジメントの有効性確認アクシデントマネジメントの有効性確認アクシデントマネジメントの有効性確認

アクシデントマネジメントの策定に際して,シビアアクシデントの発生防止、又は影響緩

和の観点で有効に機能することを確認するために必要な解析評価を行う。有効性確認にあ

たって従うべき考え方の例を以下に示す。

・ 熱水力解析など解析コードを用いる場合は,広く検証された解析コードを使用する。

・ 解析評価は最適評価を原則とし,解析結果はモデルの限界と不確実さを考慮して解釈す

る。

・ 抽出された脆弱性に対して,策定したアクシデントマネジメントによるリスク低減の効

果及び悪影響の可能性を確率論的リスク評価又はそれに代わる方法を使用して, 定量的又

は定性的に評価する。

5.45.45.45.4 マネジメントクラスの設定マネジメントクラスの設定マネジメントクラスの設定マネジメントクラスの設定

アクシデントマネジメントに対してリスクを考慮した重み付けとして, マネジメントクラ

スを設定する。

5.4.1 5.4.1 5.4.1 5.4.1 マネジメントクラスの定義マネジメントクラスの定義マネジメントクラスの定義マネジメントクラスの定義

アクシデントマネジメントについては, アクシデントマネジメントの安全機能やその影響

等を考慮し,アクシデントマネジメントの信頼性を確保するため,以下のマネジメントク

ラスの考え方に従う。

・ 安全性の重要度が高いハードウェア, ソフトウェアを重点的かつ確実に活用できるよう

にリスク 等を考慮した重み付けに基づいてマネジメントクラスを定義する。

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別添-13

・ マネジメントクラスの運用については,各プラントに対してリスク評価,シビアアクシ

デント環境条件等の考慮要件に基づいてクラス分類を行うための,各クラスの判断基準を

設定する。

5.4.2 5.4.2 5.4.2 5.4.2 マネジメントクラスの適用マネジメントクラスの適用マネジメントクラスの適用マネジメントクラスの適用

アクシデントマネジメントにマネジメントクラスを具現化するためには,以下の考え方に

従う。

・ アクシデントマネジメントでは, マネジメントクラスのレベルに応じて安全上の要求に

関する基本要求事項を満足した対策とする。マネジメントクラスに応じた設備の独立性, 耐

震性, 位置分離性等を含めた基本要求に基づいて具現化する。

・ アクシデントマネジメントについては,マネジメントクラスの定義に基づきクラス分類

する。

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別添-14

別添-4 深層防護とリスクとの関連

地震動等に対する新規制基準対応における議論と同様に、断層の活動性とそれに

伴うリスクをどのように取り扱うか、深層防護に関する原子力学会の標準等に記載

されている考え方を参考に整理してみる。

a. リスク情報活用に関する実施基準

「原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:

2010」では、PRA によって得られる情報を捉えて、原子力発電所の安全確保活動

のうち事業者が実施する運転・保守管理の変更においてリスク情報を活用して意思

決定する場合に、共通した要件を規定したものである。その中には、深層防護の賢

持が求められており、防護レベル間のバランスと独立性の確保や、防護レベルの各

対策を受け持つ系統、機器などの多重性又は多様性及び独立性の確保等が求められ

ている。したがって、深層防護の概念は付図 1 のイメージとなり、原子力発電所の

安全確保活動の変更を実施しても、深層防護の防護レベルは維持されているという

基本的な考え方である。

b. 深層防護の考え方

原子力学会の原子力安全分科会(主査 山口先生(東大))にて検討された「原

子力安全の基本的考え方について 第 1編 別冊 深層防護の考え方 2014 年 5 月」

では、深層防護の概念を理解するための論点として、設計基準を超える外的ハザー

ドに対する取組みが検討されている。ここでは、設計要求範囲と必然的にそれを超

える領域(beyond design basis)を定義し、beyond design basis 事象について DEC

(Design Extension Condition)として捉え直し設計する意義を検討している。さ

らに、設計基準を超える外的ハザードに対し、ハザードの影響を受けない設備の設

置(ハード面)もしくはアクシデントマネジメントによる柔軟な対応(ソフト面)

の設備・対策をどう組み合わせるかについて、ハザードの特性に応じて決定するこ

とが重要であると指摘している。

c. SAM 実施基準

「原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関

する実施基準:2014」では、解説にて深層防護との関連が記載されている。この中

では、アクシデントマネジメントを改善する上で重要な視点は、 第 3層までの設計

の延長ではなく、 深層防護思想の最も重要な視点である、 独立した効果を与える

ことである。第 3 層までのように基準シナリオや基準事象などを決めて対策をとる

ことだけでは不十分であり、 第 3層(安全設計)とは違う視点でのマネジメントを

とらねばならないと記載されている。これは、ハードウェア対策だけでなく、 要員

の対応能力の向上を目的とした教育・訓練、 手順書の整備等のソフトウェアの対策

を重視することを意味している。

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別添-15

「原子力発電所の安全確保活動の変更へのリスク情報活用に関する実施基準:2010」

-付図-1 深層防護の概念-

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別添-16

「原子力安全の基本的考え方について 第 1 編 別冊 深層防護の考え方 2014 年 5 月」

3.2.4 設計基準を超える外的ハザードに対する取組み

設計要求範囲(設計基準事故・事象に基づく設計範囲)を設定することにより、

必然的にそれを超える領域(beyond design basis)が存在することになる。また、

beyond design basis 事象について、リスク評価や最適評価を用いて DEC(Design

Extension Condition)として捉え直し設計で対処した場合においても、きわめて頻

度の低い事象やこれまでに経験のない事象に関しては知識の不完全性の限界がある

ことから、やはりそれを超える領域(beyond design basis)の存在することは否定

できない。したがって、深層防護を適用することによって、そのいずれにも対応で

きるようにしておくことが重要である。特に、地震や津波を始めとする自然事象に

加えて、テロや航空機衝突などの外的人為事象など、設計基準を超える外的ハザー

ドに対しては、設計基準に対する対策は機能を失うことから、当該ハザードの特質

を踏まえた異なる質の対策が必要である。すなわち、当該ハザードの影響を受けな

い設備の設置(ハード)もしくは、アクシデントマネジメントによる柔軟な対応(ソ

フト)が効果的と考えられる。例えば航空機衝突への対応として、欧州では隔離や

残留熱除去システムなどのハード面での対策を要求している例がある一方、米国で

は炉心冷却や格納容器及び燃料プール冷却の機能を維持又は復旧することを目的と

したガイダンスや方策の策定・実施を求めている。

航空機衝突に限らず、設計基準を超える津波などの外的ハザードが発生した場合

には、恒設の設備が共通的に機能を喪失する可能性が高まる。したがって、対策を

施すにあたっては、喪失した機能の回復を高め、それにより環境中への放射性物質

の早期大量放出はもとより、有意な影響を生じるような規模の放出を防止すること

ができるよう、事象進展を遅らせることも質の異なる対策として効果的である。こ

のような場合には、多様な状況に柔軟に対処できる能力(例えば、代替策としての

設備の準備や復旧能力)を重視した対策として、基本的には可搬設備や汎用品を活

用した代替策等を用意することが有効と考えられるが、事象進展が速く、可搬設備

では対応が困難な場合においては恒設設備が必要となることもある。いずれにして

も、どのようなハード面もしくはソフト面の設備・対策をどう組み合わせるかにつ

いては、ハザード毎の特性に応じて決定することが重要である。また、効果的なリ

スク低減を図るため、リスク評価を実施し、対策の有効性を確認することも重要で

ある。

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別添-17

「原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関する実施基

準:2014」

解説

1.1 深層防護との関連

原子力施設の安全性確保を達成するための考え方として、 プラント内外に起因する

事象に対して人及び環境を防護できるように、 深層防護の考え方が採用されている。最

新のものは新型炉を対象とする IAEA の SSR-2/1(2012) [2]で示されている。表表表表 1111.1.1.1.1 に示

すように深層防護のレベルは 5 段階に分けられ、 かつ、 それぞれの深層防護レベルが

合理的に実用可能な限り独立して機能することが必要である。(詳細は解説 2 を参照)

本実施基準においては、 上記の深層防護との関係において、 アクシデントマネジメ

ントは第 3層の DEC相当から第 4層への対応全体と定義する。

深層防護のうち第 3層までの決定論的手法に基づく設計の考え方については、 間違

っていなかったことが今回の事故を含めても確認されている。第 3層までの考え方は、

確立された設計基準に基づけば高い信頼性を持って安全を担保できる、 との考え方であ

る。津波に関する設計基準に課題はあったものの、 それ以外の設計の考え方に問題は無

かったことは、 福島第一をはじめ、 福島第二、 東海第二、 女川などの発電所で地震

直後に正常にスクラムし、 また、 非常用発電機などが機能したことからも明らかであ

る。

福島第一原子力発電所事故のどこに課題があったのかというと、 本標準の対象であ

る、 アクシデントマネジメントが不十分であったと結論付けられる。すなわち、 TMI

事故の後、 設計基準を超える事象があり得ることは認識されており、 その場合の対策

としてのアクシデントマネジメントがあらかじめ考えられていた。例えば、 30分間の

交流電源喪失は設計上考慮されており、 それを超える場合については、 アクシデント

マネジメントが用意され、 対策がマニュアルとして用意されていた。このマニュアルで

は直流電源があることが前提となっていたが、 福島第一原子力発電所事故ではこの前提

が覆されさらに厳しい条件となったために、 このマニュアルの対策が役に立たなかった

のである。一方、 福島第二では、 やはり設計基準を超える大きな津波に襲われ、 最終

ヒートシンク機能喪失に陥っているが、 ここでは、 あらかじめ考えられていたアクシ

デントマネジメントに従って対策を行い、 もちろん、 それ以上の創意工夫もなされて

いるが、 安全に原子炉を停止することが出来ている。このように類似の起因事象に対し

ても対策には不確かさが存在し、不確かさの大きなところにより頑強な対策を設定する

などの不確かさに対する備えは深層防護の重要な要素の一つでもある。ここを正確に把

握しないと福島第一原子力発電所事故の教訓の正しい反映が不可能となる。

これらの事実は、 設計基準事故を超えた場合のアクシデントマネジメントの考え方

は、 用意されていたが不十分であったことを物語っている。よって、 本標準を制定す

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別添-18

る最大の目的は、 この不十分なアクシデントマネジメントを改善し、 二度と大事故を

起こさないことである。

次に、 アクシデントマネジメントを改善する上で重要な視点は、 第 3層までの設計

の延長ではなく、 深層防護思想の最も重要な視点である、 独立した効果を与えること

(Independent Effectiveness)である。第 3層までの設計と同じ手法で評価することは、 同

じ間違いを犯すことになる。第 3層までのように基準シナリオや基準事象などを決めて

対策をとることだけでは不十分であり、 かつ間違いである。第 3層(安全設計)とは違

う視点でのマネジメントをとらねばならない。

本標準では、 リスク評価に基づくハードウェア対策だけでなく、 要員の対応能力の

向上を目的とした教育・訓練、 手順書の整備等のソフトウェアの対策を重視することで、

低頻度・高影響事象も含めたシビアアクシデントの種々のシナリオに科学的、 合理的に

対応させ、 機能的かつ弾力的に安全性を担保することを目的としている。

以上が、 本標準で考えるアクシデントマネジメントの基本的な考え方である。

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別添-19

付表 1 IAEA の SSR-2/1(2012)の深層防護の考え方の概要

深層防護

レベル

目的

目的達成に

不可欠な手段

関連する

プラント状態

レベル 1

通常運転からの逸脱と安全上

重要な設備の故障を防止

品質管理と工学的手法に従っ

てプラントを健全かつ保守的

に立地、 設計、 建設、 保守、

運転。

通常運転

レベル 2

プラントの運転時に予想され

る事象が事故の状態に拡大す

るのを防止

設計段階において特定の系

統・設備を設置。有効性を安全

解析で確認。

運転時の異常

な過渡変化

レベル 3

炉心の損傷や重大な所外放出

を防止

設計段階において事故の進展

可能性を想定。固有の工学的安

全施設、 安全系、 手順書を用

意。

設計基準事故

設計拡張状態

シビア

アクシデント

レベル 4

深層防護の第 3 の防護レベル

が失敗した結果の事故の影響

を緩和

閉じ込め機能を確実にし、 放

射性物質の放出を合理的に達

成可能な限り低く維持。

レベル 5

放射性物質の放出による放射

線の影響を緩和

緊急時管理センターの整備。緊

急時対応に対する緊急時計画

と緊急時要領の確立。

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別添-20

付表 2 NRCの NTTF報告書(2011)の既存炉を対象とする

深層防護とリスク知見をバランスさせた規制枠組みの提案

深層防護

レベル

アプローチ 対応する規則・措置 備考

レベル 1

設計基準

事故(適切

な防護と同

等 と み な

す)

3 レベルの規制要

・正常運転

・異常な過渡事象

・想定事故

・10CFR50「生産・利用施設の国内認

可」

・附則 A「原子力発電所の一般設計指

針」

・附則 B「原子力発電所及び燃料再処

理施設のための品質保証基準」

レベル 2

レベル 3

レベル 4

設計基準

を超える事

象(安全強

化 と み な

し、費用が

妥当である

場合に限り

適用)

規制要件

ATWS 規則(50.62)、 SBO 規則

(50.63)、保守規則(50.65)、 特別

な取扱(50.69)、 AIA 規則

(50.150)、 可燃性ガス制御

(50.44)、 火災防護(50.48、 附

則 R)、 大規模火災及び爆発

(50.54(hh))、 パッシブ炉設計の非

安全系の規制上取扱い

(SECY-94-084)

IAEA の DEC

とほぼ同じ

概念

EDMG の整備

を要件化

自主的措置

・シビアアクシデントの検討

IPE、 IPEEE、 停止時リスク

MarkⅠ格納容器ベント

・シビアアクシデントマネジメント指針(SAMG)

新設炉は、

PRA、 シビ

アアクシデ

ントの検討

を要件化

レベル 5 緊急時対応

・10CFR50.47「緊急時計画」

・附則 E「生産・利用施設の緊急時

計画」

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別添-21

別添-5 原子力学会標準等に基づくアクシデントマネジメントの構築手順

「原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び向上に関

する実施基準:2014」の附属書 A では、アクシデントマネジメントに関する PDCA

サイクルと留意点を解説しており、この中からアクシデントマネジメントの構築

手順を示す。

d. アクシデントマネジメントに関する PDCA サイクル

アクシデントマネジメントは、以下に述べる PDCA サイクルに沿って策定する

と共に、継続的な改善を行う。PDCA サイクルのイメージ図を別添-3 に示す。

a) 設計基準事故を超え、シビアアクシデントに至る重要なシーケンスを同定

する。

b) 同定したシーケンスに対して、アクシデントマネジメントに有効と考えら

れる発電所対応能力を同定する。

c) 重要なシーケンスに対応して、シビアアクシデントの発生防止及び影響緩

和のために有効で、合理的で実行可能なアクシデントマネジメントを整備す

る。

d) アクシデントマネジメントに必要な設備の改造又は追加、手順書類の整備

等を実施する。

e) アクシデントマネジメントを実施するために必要な発電所における緊急時

対応組織を定めるとともに、各要員の役割に応じて、教育や訓練を実施する。

f) 整備したアクシデントマネジメントが深層防護の観点で適切なものである

ことを確認する。

g) アクシデントマネジメントは、発電所における保安活動に係る品質マネジ

メントシステムのもとで、確立、 実施、 評価確認、 継続的な改善を行い、

新知見の反映等による維持向上に努める。

b. アクシデントマネジメントに関する留意点

a) アクシデントマネジメントにおいては、プラント状態として出力運転中及

び停止中を対象とするとともに、発電所に保管中の使用済燃料についても対

象とする。

b) アクシデントマネジメントは、構造化したトップダウン構成(目的から始

まり対応方策、そして手順書)で、防止と緩和の両方の領域を対象として作

成する。

c) 起因として、単一の外的事象又は内的事象に加えて、事象の重畳の可能性

を考慮する。

d) 深層防護の観点から、起因事象を特定せずに、安全機能が大幅に損なわれ

Page 40: ・・・添付・・・添付----4444roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/aesj/...(4)対処方策の検討(第6回、第7回作業会で報告)・・・添付・・・添付----4444

別添-22

た状態を想定する。

e) 外部ハザード及びプラント間の共用部からの影響伝播による複数の原子炉

の同時事故発生を考慮するとともに、プラント間での安全対策の独立性と共

用について検討する。

f) 可能な限りの網羅性を確保するように想定した事象について、スクリーニ

ングを段階的に実施して重要な想定事象の抽出を行い、各事象毎に確率論的

リスク評価、決定論的評価、工学的判断又はそれらを組み合わせることによ

り、重要なシーケンスの同定を行う。

g) アクシデントマネジメントは発電所特有の立地条件等を十分に考慮して、

プラント毎に作成する。

h) アクシデントマネジメントの方策の検討では、安全系に限定せず、非安全

系又は当初意図した範囲外での機器の使用可能性など、プラントの全ての能

力を考慮して整備する。

i) 最悪の実施条件(アクセス性、時間的制約、作業環境、資機材の制約、外

的事象の影響、計装の信頼性)を予測した上で、実行可能性を考慮する。

j) 同一敷地内の隣接プラントから利用できる手段や支援の活用は、その支援

がアクシデントマネジメントとして有効であることが確認された場合に、考

慮する。

k) アクシデントマネジメント策は、 その安全機能、 必要とされる頻度や機

能喪失時の影響、 使命時間などを考慮してマネジメントクラスを定め、 整

備運用する。