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マイクロクレジット浸透度の要因分析 途上国クロスカントリーデータおよびグアテマラ家計調査を用いて グアテマラ地図 (外務省ホームページより) マヤ文明の代表的なティカル遺跡 (ネイチャーワールドホームページより)

マイクロクレジット浸透度の要因分析 - JICA...2 要約 貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

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Page 1: マイクロクレジット浸透度の要因分析 - JICA...2 要約 貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

マイクロクレジット浸透度の要因分析 途上国クロスカントリーデータおよびグアテマラ家計調査を用いて

グアテマラ地図 (外務省ホームページより)

マヤ文明の代表的なティカル遺跡 (ネイチャーワールドホームページより)

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要約

貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

的・経済的条件の下に拡がってきたのだろうか。本稿では、MC浸透要因の実証的な分析に

よって、MCの拡がる条件を提示し、そこから、貧しい人たちに金融サービスへのアクセス

を保証するMCプログラムの充実に必要な施策を導こうと試みた。

途上国のクロスカントリーデータおよびグアテマラの家計調査を用いた計量分析の推定

結果からは、経済力よりもコミュニティ内の社会的結束の強さや社会的信用の高さを表す

要因が、世帯の MC 利用の可能性を高めていることが明らかになった。これは途上国信用

市場における“情報の非対称性”の問題を MC がグループ融資による相互選抜、相互監視

や、途上国在来金融に特徴的な直接的スクリーニングメカニズムによって乗り越えてきた

という理論で説明しうるものと考える。また、MCの浸透している国とは、経済的には貧し

いがインフレが少なく平均余命の高い国であることも明らかとなった。

MC プログラムにおける社会的信用や社会的結束の重要性が示唆されたことから導かれ

る施策としては、社会的信用や結束を醸成するプログラムと MC プログラムとの組み合わ

せが MC浸透を促進する可能性が考えられる。また逆に、社会的弱者が MCプログラムか

ら排除されていることからは、MC機関が貧困削減をそのミッションとするならば、弱者排

除とトレードオフの関係にある MC 機関の自立性ばかりを追い求めるのではなく、弱者に

配慮した施策との組み合わせが必要であると考えられる。そして、経済運営や長寿を可能

とするような基礎的なインフラやサービスの重要性が示唆されたことからは、MCプログラ

ムとともに基礎的な社会基盤の整備の必要性が考えられる。

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本文目次

Ⅰ.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

Ⅱ.先行研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

Ⅲ.マクロ的分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1. 分析を始める前に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

2. データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

3. モデルと変数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

4. 分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

5. 分析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

Ⅳ.ミクロ的分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

1. データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

2. モデルと被説明変数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

3. 説明変数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

4. 分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

5. 分析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

Ⅴ.考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

Ⅵ.提言と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

付表目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

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Ⅰ. はじめに

貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

的・経済的条件の下に拡がってきたのだろうか、ということが本稿の問題意識である。

貧困層向けの小口融資であるMCは、1970年代半ば以降、バングラデシュのグラミン銀

行等の成功に勢いを得て、それまで金融サービスへのアクセスが難しかった貧困層の需要

に応えるかたちで瞬く間に世界中に広がった。2006年には、グラミン銀行とその創設者ム

ハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞を受賞し、貧困削減に果たしてきた MC の役割が世

界的にも認められた。2005年 12月現在、開発途上国に住む1億 1326万人以上の人がこの

サービスを利用しているとされており(Daley-Harris(2006))、貧困削減のための重要な手段

として、世界銀行や国連諸機関から草の根 NGOまで様々な援助機関によって積極的な取り

組みがおこなわれている。

近年では、この MC プログラムを総じて制度インフラと捉え、その整備を促進すること

で貧しい人たちの金融サービスへのアクセスを保証しようとする動きが強くなっている。

本稿では MC 浸透の社会・経済的条件を分析することで、この貧しい人向けの金融インフ

ラ整備に必要な政策を探ることを試みる。MC 浸透の条件は MC 機関にとってもプログラ

ム運営上必要な情報と推測されるが、これまで MC の浸透要因について実証的に分析され

た研究はほとんどなく、開発現場では経験と試行錯誤によって政策の立案やプログラム運

営がおこなわれてきたものと想像される。具体的には、MC 利用者および MC 浸透国の属

性を計量的に分析しその解釈を提示するとともに、そこから政策的提言を導こうとするも

のである。

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本稿の構成は、次章で先行研究に見られる MC の浸透要因について触れた後、3章でク

ロスカントリーデータを用いたマクロ的な計量分析をおこなう。続く4章では、世界銀行

のグアテマラにおける家計調査を用いてミクロ的分析をおこない、5章で、マクロ、ミク

ロ両方の分析結果を考察する。最終章では本研究より導きうる政策提言と今後の課題につ

いて述べてみたい。

Ⅱ.先行研究

MCの浸透要因について触れた開発現場からの報告書としては、大橋・長畑(2002)などが

あるが、浸透要因に関する研究となるとその数は少ない。その中で Doyle(1998)は、紛争後

の MC に必要な条件を定性的に分析し、下記の表1のような条件を提示している。紛争後

に限らず、もう少しノーマルな状況にもそのレベルに応じて条件を緩和することで応用で

きるとしており、本稿の目的である、より一般的な浸透要因を探る上でも参考になると考

えられる。下線のついたものが一般的な状況にも当てはまると予想される条件である。

表1.Doyleによる紛争後のMC成立の条件とその理由

条件 理由

① 紛争の沈静化

② 市場の再開

③ 定住化

①安全性と経済活動の安定性が必要

②市場はMCへの需要を喚起し、借り手の事業の成否を左右する

③借金をして事業を起こし返済するためには一定の時間が必要

① 最低限の銀行が機能

② ハイパーインフレがないこと

③ ある程度の人口密度

④ MC機関を支える法制度

⑤ 質の高い労働力

⑥ ソーシャルキャピタル

⑦ 通貨・金融機関に対する信頼

① 銀行がないと運営コストが上がり、安全上のリスクも増える

② 利用者にインフレによる不利益が生じない為の業務に追われずに済む

③ 利用者を集める際の効率性とMC機関スタッフの安全性確保のため

④ 返済強制手段の不備から貸し倒れを招かないため

⑤ MC機関スタッフの質の確保

⑥ プログラム実施に様々な面から影響を与える

⑦ 初期の顧客開拓に有益である

出所:Doyle(1998)を基に筆者作成

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その後Wilson(2002)は、紛争後のアンゴラ、カンボジア等で、Doyle(1998)の議論を検証

し、上記の条件が概ね確認できたと述べるとともに、付け加えるべき条件として、貸し手

が借り手に関する情報に通じ借り手を信頼していること、および治安の良さをあげている。

次に、MC浸透要因について計量分析をおこなっている Honohan(2004)について述べる。

Honohan(2004)は、2002 年のマイクロクレジットサミットキャンペーンの報告書

(Daley-Harris(2003))のデータを用いて途上国 55カ国のMC浸透度の要因を分析している。

その推定結果は、人口が少なく経済的に貧しくガバナンスの良い国ほど MC が浸透してい

るとなっており、人口要因については先の Doyle(1998)と矛盾するものとなっている。

本稿では、マクロデータの分析においては Honohan(2004)を、一方、ミクロ経済学の観

点からは、主に Doyle(1998)を参考にしつつ、両者の整合性にも配慮しながら分析および考

察を進める。

Ⅲ.マクロ的分析

1.分析を始める前に

本稿では、MCを“貧しい人向けの小規模融資”と定義する。そして、そのようなサービ

スをおこなっている金融機関を MC機関と呼び、それら MC機関によって提供されている

融資を MC口座として数える。しかしここで MC機関による融資が必ずしも“貧しい人向

け”の“小規模”融資でないことは断っておかねばならない。“貧しい人向け”を標榜しな

がらも、MC機関から融資を受ける人々は厳密に貧困線以下あるいは低所得層に限られてい

るわけではなく、また融資額についても“小規模”融資のみではないからである。データ

の制約上、このような対象についての曖昧さは残るが、ここでは MC機関による MC口座

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図1 : Christen et al.によるMC機関の分類

Christen et al. (2004) を基に筆者作成

の広がりをMC浸透度とする。

2.データ

マクロ分析に用いる CGAP1の Christen et al.(2004)によるデータは、MCの利用者数を把握

するために様々なデータベースをまとめたもので、116 の途上国の 3000 強の機関による、

貸付・貯蓄の口座数および各機関の取引総額

から成っている。

この中で Christen et al.(2004)は、“商業銀行

を利用できない”人たちへの金融サービスを、

総じて“オルターナティブな金融機関”と呼

び、その中にいわゆる狭義の MC 機関を含

めている(図1参照)。具体的には、NGOやそこから発展したMC専門の銀行など、1980

年代にグラミン銀行等の成功により一種のムーブメントとなった手法を用いる運営主体を

狭義の MC 機関とし、それ以前より貧困層に対する融資をおこなってきた信用組合やコミ

ュニティバンク、農業 / 開発銀行などをオルターナティブな金融機関に分類している。こ

の種の金融機関のどこまでを MC 機関とみなすかについての確たる合意はないようだが、

本稿では Daley-Harris(2003)や岡本他(1999)に倣い、Christen et al.(2004)がオルターナティ

ブな金融機関に分類した、信用組合、協同組合、コミュニティバンク、農業 / 開発銀行、

1 世界銀行主導で設立されたMC援助機関のネットワーク。The Consultative Group to Assist the Poorの略。

オルターナティブな金融機関

信用組合 協同組合(2%)

コミュニティバンク(3%)

農業/開発銀行 (62%)

NGO(25%) MC専門銀行

狭義の MC 機関

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NGO、MC専門銀行をMC機関として分析を進めることとする。

その他データに関する問題点として、データベースを統括する組織に情報を上げていな

い小規模なMC機関がサンプルから落ちている点2、貧困層向けの特別な商品を扱っている

商業銀行の情報が一部対象となっていない点、そして休眠口座も稼動口座と区別なくカウ

ントしている点などもあげねばならず、途上国におけるデータ収集の難しさを感じさせる。

現在、CGAP をはじめとする MC 支援組織の努力により、曖昧さを残しながらもデータの

整備が進んできている段階であり、今後の進展が期待されよう。本稿では、現段階で、取

扱っている国・機関が最大かつ最も包括的である Christen et al.(2004)を採用する。

3.モデルと変数

途上国におけるMC浸透度の決定要因を、Christen et al.(2004)のデータを用いて分析す

る。経済モデルは以下のようなものである。

loan penetration rate (各国別ローン浸透度) = f(factor1 (決定要因), factor2,…,factork)

被説明変数である loan penetration rate (各国別ローン浸透度) は、各機関のローン口座

数を国別に足し合わせその国の人口で除したものである。ローン総額ではなく口座数を用

いたのは、Honohan(2004)も指摘しているように、金額では少数の大口ローンの影響が強

く出てしまい、MC本来の小口ローンの集積という情報が汲み取れなくなるからである。

各国別浸透度の分布は図 2(巻末付表参照)のようになっている。この図によるとほとんど

の国は浸透度 5%を切っており、5%以上は上位 7 カ国のみということがわかる。表 2(巻末

2 Christen et al.(2004)では、経済学のデータの性質上、凡そ8割は現実を反映しているのではないかと述べている。

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付表参照)では、浸透度上位 10 カ国を示しているが、世界的に有名な MC 機関が活発に活

動している南アジア 3 カ国が 10%を上回り群を抜いている。家計調査の分析対象国である

グアテマラは 4位(8.6%)と比較的高い浸透率を示している。

一方、MC浸透度を規定する要因には以下の7つの変数を用いる。

説明変数 採 用 理 由

①農村人口密度 MC 利用者の多くが農村に住んでおり、人口密度が高い方がサービスを受けるのに都合がよいことから採用。

②一人当たり PPP GNI 経済状態を表す変数。海外からの送金も考慮すべく GNIを採用。

③2$以下貧困ギャップ比率 その国の貧困の深刻さを表すものとして採用。

④GDP デフレーター インフレ率を表す指標。消費者物価指数よりも国際比較に適する。

⑤出生時平均余命 UNDPの人間開発指数を構成する指標。社会的変数として採用。

⑥成人識字率 同上

⑦投票率 社会参加への意識を表す変数として採用。

Christen et al.(2004)のデータ中 2000年のものが最多であったため、③以外はいずれも

2000年のデータを使用した。出典は①~④はWorld Bank(2002)(2003)(2006) 、⑤~⑦は

UNDP(2000)(2002)による。

4.分析方法

推定方法には OLSを用いる。計量経済モデルは以下のようになる。被説明変数の各国

別ローン浸透度(loanpenerate)と、説明変数の農村人口密度(ruralpopdens)、一人当たり

PPPGNI(GNI)、2$以下貧困ギャップ比率($2povgap)、GDPデフレーター(deflator)は、正

の歪度を正規分布に近づけるため、自然対数をとって変換することとする。

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一人当たり PPPGNI(GNI)と 2$以下貧困ギャップ比率($2povgap)は、どちらも経済力

を表す変数であり多重共線性の恐れがあるため、一つの式にどちらか一方を使用する。

5.分析結果

MC の浸透要因についてクロスカントリーデータを用いて分析した結果を表 3(巻末付表

参照)に示す。

1Aのモデルは、MC浸透度を、農村人口密度、一人当たり PPPGNI、デフレーター、

出生時平均余命、成人識字率に回帰したものである。農村人口密度は 10%水準で有意とな

り、農村人口密度が 1 人増えると浸透度が 0.46%上がることが示唆された。また、一人当

たり PPPGNIは 5%水準で有意となり、GNIが 1$増えると浸透度は 0.97%下がることが示

唆された。デフレーターは 1%水準で有意となり、デフレーターが 1%増加すると浸透度は

0.54%低下することが示唆された。社会的変数である平均余命は 1%水準で有意となり、余

命が 1 年延びると浸透度が 0.045%高くなることが示唆されている。一方、成人識字率は、

10%水準でも有意な数字は得られず、係数の符号は平均余命とは逆のマイナスとなった。

1Bのモデルは、1Aのモデルの一人当たり PPPGNIを、2$以下貧困ギャップ比率と入れ

替えたものである。ブルーシュペーガン検定で不均一分散が観察されたため、ロバスト回

帰をおこなっているが、それによると 2$以下貧困ギャップ比率は 1%水準で有意となり、

ln(loanpenerate) = α + β1 ln(ruralpopdens) + β2 ln(GNI) / ($2povgap) + β3 ln(deflator)

+ β4(lifeexpectancy) + β5(adultliteracyrate) + β6(votingrate) + ε

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貧困ギャップ比率が 1%上がると浸透度が 0.88%高くなることが示唆された3。農村人口密

度と平均余命については、1B の方がやや係数の値は大きいものの 1A のモデルとほぼ同様

の結果となった。デフレーターは 10%水準で有意となり、係数の値は 1Aよりやや小さくな

った。修正済み決定係数は、1Aが 0.2797、1Bが 0.3652となり、1Bの方がモデルのあて

はまりはよいことが示された。

1Cは、1Aのモデルにサンプル数の少ない投票率を追加した補助的モデルである。投票

率は 10%水準でも有意な数字は得られず係数の符号は正となった。このモデルでは 1A、1B

とは異なり、一人当たり PPPGNIについて有意な結果は得られなかった。

なお、1Bのモデルにおけるブルーシュペーガン検定で、不均一分散がないという検定仮

説は棄却されたので、ロバスト回帰をおこない、それに合わせて 1A、1C においてもロバ

スト回帰をおこなった。いずれのモデルにおいても、F検定における係数=0の検定仮説は

棄却された。

Ⅳ.ミクロ的分析

1.データ

次にミクロレベルの分析について述べる。分析に用いるデータは、世界銀行とグアテマラ

統計局によるグアテマラ Living Standard Survey、あるいは Encuesta Nacional Sobre

Condiciones de Vida (以下 ENCOVI 2000)である。この調査は世界銀行の LSMS4の一環と

3 1$および2$以下貧困者比率、1$以下貧困ギャップ比率でも同じ推定をおこなったところ、2$以下貧困者比率で農村人口密度が有意にならなかった点を除きほぼ同様の結果となった。 4 Living Standards Measurement Study(生活水準指標調査)。1979年に開始された生活水準、貧困、不平等に関する家計調査。

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して 2000 年にグアテマラにおいておこなわれた大規模な家計調査で、従来の消費、教育、

保健等に関する質問に加え、新たにソーシャルキャピタルについての質問群が盛り込まれ

た点に特徴がある。数ある LSMS の中でも比較的最近のものであり、ローンに関するデー

タも多いこと、グアテマラの MC 浸透度が比較的高く、この調査の特徴でもあるソーシャ

ルキャピタルとMCの関係についても見られることなどから、この ENCOVI 2000が世帯

から見たMCの決定要因を分析するデータとして、入手可能なものの中では最適と考えた。

ENCOVI 2000では、 グアテマラの8つの地域と都市部・農村部を代表するかたちで7276

の世帯がサンプルとして抽出されている。世界銀行のホームページより公開されているデ

ータでは、すでにそれぞれの世帯の支出・収入の算出がなされ、それに基づいて“極めて

貧しい”、“極めてではないが貧しい”、“貧しくない”のラベルづけがなされている5。この

ラベリングによれば、“極めて貧しい”と“極めてではないが貧しい”を合わせた貧困世帯

の割合は全世帯の 45.9%にものぼり、その約 75%は農村部に住んでいる。地域的には北部

や北西部に貧しい世帯が多い。

マヤ文明の遺跡を誇る中米の国グアテマラでは(表紙写真参照)、人口の半数以上をマヤ系

を主体とする先住民族が占めているが(表6:グアテマラ基礎データ参照)、少数のスペイン

系白人が政治・経済的な権力を独占し、その下にラディーノと呼ばれる先住民と白人の混

血が中堅支配層を形成している。貧困家庭が多い北部や北西部は先住民族の居住地域とさ

れており、地域的な貧困分布は人種的に階層化されたグアテマラの経済構造を反映してい

5 極めて貧しい層:一日の最低摂取カロリーを満たす“フードバスケット”の年間コスト(1912ケッツアル≒$251.9)を年収が下回る層。 極めてではないが貧しい層:極めて貧しい層に食費以外の必要品を加えた額(4319ケッツアル≒$569)を下回る層。

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ると言えるであろう。

表 4(巻末付表参照)に示したのは、グアテマラにおけるローンの浸透状況である。これに

よれば、グアテマラ全世帯の約 13.7%が融資を利用しており、そのうちの約 6割が非貧困

世帯である。最貧困層と貧困層のローン利用率は同程度で、やや最貧困層の方が高いぐら

いである。また、都市部と農村部における利用率に大きな差はなく、若干、都市部が高く

なっている。むしろ地域差の方が大きく、首都圏や主要都市の多い中央部の利用率が高く

なっている。

次に、ローン利用世帯がどのような機関からサービスの提供を受けているかを表 5(巻末

付表参照)に示す6。この表からは、貧困層のローンの半数あるいはそれ以上が、友人・家族・

隣人や個人的金貸し等、インフォーマルな貸し手からのものであることがわかる。また広

義のマイクロクレジット機関に分類される協同組合や国立銀行が、貧困層以上に非貧困層

に利用されていることが見てとれる。その一方で、民間銀行も貧困層に比較的門戸を開い

6 複数の口座を持っている世帯があるため、総数が表 4と異なる。表 4の総数は世帯数、表 5は全口座数である。

表 6 : グアテマラ共和国 基礎データ

【面積】10.9万 km2

【人口】1263万人(2004年世銀)

【首都】グアテマラシティ

【人種】先住民 52% 混血 45% 欧州 2%

【言語】スペイン語

【宗教】カトリック

【識字率】68.6%(2002 年 UNESCO)

【GDP】321.6 億ドル(05 年中銀)

【一人当たりGDP】2532 ドル(05 年中銀)

【略史】 1523 年 スペインによる征服

1821 年 スペインからの独立

1823 年 中米諸州連合結成

1838 年 グアテマラ共和国成立

1960 年 内戦勃発

1996 年 内戦終結

【主要産業】コーヒー,バナナ,砂糖 等

【通貨】ケッツアル(Q) 1US$=7.59Q(05 年)

(主として外務省ホームページを参考に筆者作成)

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ている様子がうかがわれる。

Christen, et al.(2004)によれば、グアテマラには、Banruralという民間銀行があり、グア

テマラのMC口座数の約 75%を占める 71万件弱の口座を持っている。ここから、グアテマ

ラの民間銀行の貧困層への敷居の低さは、MC専門の銀行と考えられるこの Banruralの存

在が大きいと推測される7。

2.モデルと被説明変数

途上国経済の中で MC が浸透する条件をミクロレベルにおいて明らかにするため、すな

わち、どのような属性をもった世帯が MC にアクセスできているかをみるために、グアテ

マラの家計調査を分析する。経済モデルは以下のようなものである。

Household loan 01(MC利用の有無)

= f (characteristic1(家計の属性), characteristic2,…characteristic k)

被説明変数である Household loan 01(MC利用の有無)は、世帯の誰かが過去 12ヶ月以

内にMCを利用したことがあれば、“はい:1”、なければ“いいえ:0”とする変数である。

この変数を、貧困世帯(3339世帯)および非貧困世帯(3937世帯)について推計する。

MCの範囲は、全ローン提供機関から、個人的金貸しおよび親戚・友人からの借金等インフ

7 Alfaro-Gramajo(2003)によれば、Banruralは、1998年に、国立の農業開発銀行であったBANDESA(Banco Nacional de Desarrollo Agricola)を改編して設立された銀行で、グアテマラ全土におけるユニバーサルな金融サービスを通じて農村部の開発を目指すというミッション

を掲げている。資本金の 70%は民間部門から、残り 30%は公的部門からの拠出である。その業績は良好で、1997年~2001年の4年間に収益は 2倍以上の伸びを示し、収益性(ROE)もグアテマラの全銀行中 3位となっている。またアウトリーチの点でも、農村部への拠点を 3倍以上に増やし、ローン口座数も 35倍以上に伸ばしている。多くの政府系農業開発銀行が、1980年代からの市場を重視する開発の潮流から取り残された中、この Banruralへの改編の成功は、資本および経営に、民間人や市民のグループが入っているからとされている。

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ォーマルなローンを除いたものとする。

3.説明変数

MCの浸透に影響を及ぼすと予想される世帯の属性には以下の変数を用いた。変数は全

て ENCOVI 2000のデータを基に、必要に応じて筆者が加工を施した。

説明変数

地理的条件 ①居住地(都市部/農村部) ⑩マーケットへのアクセス ⑬銀行・協同組合へ

のアクセス8⑭居住地域(標本抽出の際の枠となった8つの地域)

社会的条件 ②世帯人数 ③消費十分位数 ④非先住民族ダミー ⑤性別ダミー ⑥年齢

⑦結婚ダミー ⑧社会的協働活動への参加 ⑨社会的組織への所属 ⑪教育

レベル ⑫母語スペイン語ダミー

④~⑦⑪⑫については世帯主の属性とする。⑧は世帯員が社会的活動(相互扶助、近所の

子守、募金、公共奉仕、投票等)に参加しているかどうか、⑨は社会的組織(文化的グループ、

コミュニティグループ、労働組合、スポーツクラブ等)に所属しているかどうかという世帯

のソーシャルキャピタルの豊かさを示す変数である。ENCOVI 2000では、ソーシャルキャ

ピタルを「社会相互作用の質および量を規定する制度・関係・規範(世界銀行 website)」とい

う世界銀行の定義に基づいて捉え、社会的協働活動への参加の程度と社会的組織への所属

の有無をその測定方法として用いている。MC とソーシャルキャピタルの関係については、

現場からの報告等でも議論されており9、定量的に分析するよい機会と考えた。

4.分析方法

推定方法には、質的従属変数を分析する際に用いられる非線形の確率モデル、プロビッ

8 本来であれば NGOなども含めた全MC機関へのアクセスの有無を表す変数が必要だが、ENCOVI 2000から作ることができるのはこの変数までである。 9 国際協力事業団・国際協力総合研修所(2002)など。

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トモデルを用いる。その際、MC 機関へのアクセスの有無を、世帯の MC 利用決定の前提

となるセレクションメカニズムと捉え、サンプルセレクションのあるプロビットモデルで

あるヘックマンプロビットモデルを使用する。計量経済モデルおよびその尤度を求める尤

度関数は以下のようになる。

計量経済モデル:

y i : householdloan01 i (各世帯のMC利用の有無)

x i : householdfactor i (各世帯の属性)

zi : MCaccess i (各世帯のMC機関へのアクセスの有無)

尤度関数: L (β,γ,σ,ρ| x i ,zi , y i ) = Π{ zi = 0 } P (zi ) ・Π{ zi = 1 } P ( yi,zi = 1 )

=Π{ zi = 0 } P (zi ) ・Π{ zi = 1 } P ( yi ) P (zi = 1 | yi)

対数尤度関数:

lnL (β,γ,σ,ρ| x i ,zi , y i ) = ∑ ln P (zi ) + ∑ ln P (zi = 1 | yi ) + ∑ ln P ( yi )

6. 分析結果

MCを利用している貧困層の属性を推定した結果を表 6(巻末付表参照)に示す。2Aのモ

デルは、第一段階でMC機関へのアクセスを居住地域ダミーと都市部/農村部ダミーから推

y i = y i = x i β + u i if zi = 1

unobserved if zi = 0 (1)

zi = 1 if zi = γ regionalfactor i + εi > 0

0 if zi = γ regionalfactor i + εi < 0 (2)

εi 0 1 ρσu

u i ~ N 0 , ρσu σ2u (3)

Page 17: マイクロクレジット浸透度の要因分析 - JICA...2 要約 貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

17

定し(2B)それを踏まえた第二段階で、MC利用の有無を世帯の属性から推定したものである。

ここから明らかになったグアテマラ貧困層における MC 利用者像は、農村に住み、家族の

人数が多く、先住民であり、世帯主が結婚している家族である。またいわゆるソーシャル

キャピタルと呼ばれる社会との関わりが豊かで母語はスペイン語の世帯であることがわか

る。農村居住が MC の利用可能性を高めるという推定は、マクロの分析における農村人口

密度の影響と呼応する結果と考えることができるだろう。興味深いのは、経済的要因の影

響が観察されなかったことである。各世帯の消費レベルを表す消費十分位数については

10%水準でも有意な数値は得られなかった。かたや非貧困層 MC 利用者の属性の分析では

(巻末付表 7参照)、消費十分位数が高ければその利用可能性は高まるという推定結果が出て

おり、MC利用に対する経済的要因の影響の無さは、貧困層に特有のものと考えることがで

きるだろう。

限界効果の値から、貧困層のMC利用の確率に影響する要因をその大きい順に並べると、

先住民である(MC利用の確率を 3.1%高める)、社会的な組織に加入している(2.5%)、農村部

に居住している(2.3%)、母語がスペイン語である(2.2%)、世帯主が結婚している(1.6%)、協

働活動に参加している(0.5%)、世帯人数が多い(1 人増で 0.4%)となる。非貧困層 MC 利用

者においては先住民ダミーの影響も有意には出ておらず、民族の影響も貧困層 MC 利用に

特徴的な傾向と言える。また、貧困層・非貧困層ともに居住地やソーシャルキャピタルの

影響の大きさがうかがわれる。他方、MC利用の有無に影響すると思われた教育レベルやマ

ーケットへのアクセス、世帯主の年齢や性別については有意な結果が得られなかった。

推定上の問題としては、第一段階の分析で北西部居住ダミーに不均一分散が見られたた

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18

めロバスト分析をおこなった。モデルの検定については、二段階ともに係数=0は棄却され、

モデルの特定化は認められた。

Ⅴ.考察

本稿では、MC浸透の要因を、マクロ的にはクロスカントリーデータを用いて国の属性か

ら分析し、ミクロ的にはグアテマラの世帯調査を用いて世帯の属性から分析した。3 章、4

章で示した分析結果をまとめると図 3のようになる。

図3 : MCの浸透要因

貧困層における MC 利用世帯の属性から明らかになったことは、経済力よりも、民族や

ソーシャルキャピタルの豊かさといったコミュニティ内の社会的結束を示唆する要因や、

母語や世帯規模、ソーシャルキャピタルといったコミュニティ内の社会的信用を左右する

要因がクレジット利用の有無に影響するということである。これは、途上国信用市場にお

一人当たり国民総所得が低い、貧困ギャップ比率(2$以下)が高い、インフレが少ない、 農村人口密度が高い、平均余命が長い

カントリーファクター (マクロ的条件)

世帯の属性(ミクロ的条件)

先住民である、組織に所属(ソーシャルキャピタル)、

農村部居住、母語がスペイン語、世帯人数大、

世帯主が結婚、協働活動参加(ソーシャルキャピタル)、

家族 数多

MC機関

ENCOVI 2000を使った計量分析の結果より筆者作成

Page 19: マイクロクレジット浸透度の要因分析 - JICA...2 要約 貧困削減に多様な効果を持つとされるマイクロクレジット(以下MC)は、どのような社会

19

ける“情報の非対称性”の問題を、MCが、グループ融資による相互選抜10、相互監視11や、

途上国在来金融に特徴的な直接的スクリーニングメカニズム12によって乗り越えてきたと

いう理論で説明しうるものと考えられる。すなわち、一部の MC 機関が用いているグルー

プ連帯保証の仕組みにおいては、グループメンバーを選ぶ基準は、Morduch(1999)も指摘

するように、世帯の‘社会的’資産であり、隣人間でも正確には観察できない経済力ではな

いということができるだろう。この社会的信用の役割は、非貧困世帯におけるクレジット

の利用が経済力に左右されるという結果からも、貧困層 MC 利用の特徴と言うことができ

るだろう。

また、直接的スクリーニングメカニズムは先住民族コミュニティの強い社会的結束を背

景に可能となっていると考えることができる。Ibanez et al. (2002) によれば、グアテマラ

先住民族のコミュニティには強い連帯意識と伝統的な社会規範が息づいており、豊かなソ

ーシャルキャピタルを擁しているところが多い。そしてそのようなコミュニティでは協同

組合や互助的な融資グループが数多く作られ、取引が繰り返される中で“情報の非対称性”

の問題が緩和されるとともに、ソーシャルキャピタルが情報の共有化の役目を果たしてい

るとのことである。広義の MC を支えるメカニズムとして、このグアテマラ先住民族コミ

10 Ghatak(1999)は、グループメンバーによる相互選抜によって、リスキーな借り手が排除されることで、逆選択の問題が緩和されるとしている。 11 Stiglitz(1990)、Banerjee et al.(1994)は、グループ融資による相互監視機能によりモラルハザードが緩和されるとしている。 12 Hoff and Stiglitz(1993)は、途上国信用市場の問題として“情報の非対称性”と“履行強制の欠如”をあげ、それらを克服するために在来金融は間接的メカニズムと直接的スクリーニングメ

カニズムを用いているとしている。間接的メカニズムとは、継続的取引関係の下での取引停止の

威嚇やインターリンケージ型の取引を指し、直接的スクリーニングメカニズムとは、取引を地

縁・血縁に限定することやインターリンケージ型取引などを指している。

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20

ュニティが持つような社会的結束の強さをあげることができるのではないだろうか。

次にもうひとつ注目したいのは、母語がグアテマラの公用語のスペイン語でないとか、

世帯主が結婚してないといった、いわば社会的信用の低い世帯が、MCのサービスからはじ

かれている点である。従来、最貧困層はグループ連帯保証の仕組みからはじかれて MC を

利用できないことが問題視されてきたが13、この分析結果によれば、はじかれているのは経

済的最貧困層というよりも、厳密には社会的弱者層ということができるだろう。世帯人数

の多さが決定要因として効いているのもこの文脈から読み解くことが可能であろう。すな

わち、寡婦をはじめとする単身世帯に比べ、世帯内に稼ぎ手の多いだろう大家族は病気や

災害などのリスクに強く、それゆえローン返済の能力も高い。ゆえに寡婦や単身世帯がグ

ループ融資や直接的スクリーニングメカニズムからはじかれるのとは逆に、世帯人数の多

い家族は好ましい融資対象となるのである。

社会的弱者がグループ融資による相互選抜や直接的スクリーニングメカニズムによって

はじかれることと、社会的信用の高い世帯が選抜され、それによって MC の高い返済率が

保たれ、ひいては MC 機関の持続性が支えられることはコインの表裏の関係と言えるのか

もしれない。しかし本来 MC が、より多くの貧しい人々に金融サービスを届けることで貧

困緩和を図ろうとするものであるならば、他の開発プログラムとの組み合わせやターゲッ

トアプローチの工夫等、MCを利用できない社会的に弱い人たちへの取り組みについても考

えていく必要があるだろう。

13 黒崎・山形(2003)は、グループ融資の際の相互選抜によって、返済能力に問題のある寡婦や病弱な家族がはじかれてしまうとしている。

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ミクロ的分析に関する考察の最後に、貧困世帯の属性の中で MC 利用に影響が認められ

なかった要因についても少し考えてみたい。まず性別と年齢についてだが、非貧困世帯の

分析では、世帯主が男性で若い世帯ほど MC を利用する可能性が高いことが示唆されてお

り、貧困世帯とは対照的な結果となっている。これは、グアテマラ先住民女性が織物14等伝

統的手工芸品の生産・販売をおこない、非貧困世帯の女性よりも融資に関わる機会が多い

と推測されること、そして農村に住む貧しい世帯のほとんどが農業に従事しており(国際協

力推進協会(2000))年齢に関係なく働けることなどと関係しているのかもしれない。また、

一般に MC の浸透に影響があるといわれているマーケットへのアクセスの影響が貧困層・

非貧困層ともに見られなかったのは、融資金の用途の約 6 割が家族の病気や借金の返済、

あるいは新築・増築といった家庭内のことに関するものであり、起業等特にマーケットを

必要とするものではなかったことによると考えられる。

次にMC浸透度を規定する国の条件であるが、人口要因としては Doyle(1998)のあげた人

口密度の影響が確認された。これは人口密度が高ければ顧客である貧困層もサービスにア

クセスしやすく、MC機関も取引コストをあまりかけずに顧客を集めサービスを提供できる

からと解釈できる。また、経済的条件としては、一人当たり国民総生産が低く、貧困率が

高い国ほど、MC が浸透していることが確認された。これは Honohan(2004)の主張に沿っ

た結果であり、MCの対象となる貧しい人々が多い国ほどクレジットが浸透しているという

ことができる。貧困ギャップ比率の影響が認められたことで、最貧層にも MC の浸透が進

14 “ウィビル”と呼ばれる村落ごとに異なる色鮮やかな民族衣装が有名である。

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22

んでいると考えることもできるのではないだろうか。マクロの経済状況としては、ハイパ

ーインフレがないという Doyle(1998)の指摘どおり、インフレの少ない国ほどMCが浸透し

ていることが確認された。インフレは MC 機関運営の障害になるとともに、顧客のサービ

ス利用意欲を削ぐものとも考えられよう。

一方興味深いのは、ミクロの分析に呼応させるべく組み込んだ社会的要因の影響である。

UNDP が人間開発指数を成す指標として用いている出生時平均余命と成人識字率を、MC

浸透度に回帰した結果からは、MC浸透に対する平均余命の影響が示唆される結果となった。

平均余命の GNIや貧困率に対する高い相関を踏まえると(相関係数はそれぞれ 0.61、-0.73)、

両変数とは逆の影響を示唆する平均余命の影響はかなり強いものと考えることができるだ

ろう。この MC に与える平均余命の影響は、人々が長寿であればお金を工面しなければな

らない機会が増えると解釈することもできるが、Honohan(2004)の分析において浸透度に

ガバナンス指標の影響が見られた文脈からすると、長寿を支える医療衛生面や食糧供給面

に関わるインフラやサービスの充実が、MCの浸透度を高める要因と解釈することもできる

だろう。Hoff and Stiglitz(1993)では、農村金融に存在する負の外部性への対処法として全

域的なインフラの整備を掲げているが、その整備状況を平均余命が一種の代理変数として

反映しているとも考えられるのではないだろうか。

Ⅵ.提言と課題

1970年代以降のMCの世界的な広がりは、貧しい人たちに収入の向上や生活の安定、そ

して社会的な力を与えたと言われている。現在、一億を越える人たちに利用されるように

なったこの MC へのアクセスを、より多くの貧しい人たちに保証するにはどのような条件

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が必要なのだろうか。本稿では、マクロ・ミクロ両面から MC 浸透の要因を分析すること

で、その条件を明らかにすることを試みた。計量分析から浮かび上がってきた MC の顧客

像とは、経済力よりも社会的な信用を有している人、あるいは社会的なつながりを強く持

っている人であり、これは社会的信用を担保とするグループ融資の仕組みや在来金融特有

の直接的スクリーニングメカニズムに関するこれまでの理論によって支持されるものと解

釈できた。また、MCが浸透している国とは、経済的には貧しいが物価は比較的安定してお

り、農村人口密度が高く、長寿を支えるサービスやインフラが充実している国である可能

性が示唆された。

以上の結論から導きうる政策的提言を以下に述べてみたい。まず第一に、社会的信用お

よび社会的結束の多寡が MC の浸透に影響していることから、MC プログラムには社会的

信用や社会的結束が重要な条件であるという認識が必要であろう。そして必要であれば、

その醸成を促すようなプログラムと MC を組み合わせることで、MC の浸透を円滑に進め

ることが可能になると考えられる。具体的には、コミュニティ内のソーシャルキャピタル

醸成を目的とした組織づくりや参加型の協働活動プログラムを実施し、コミュニティ内の

社会的信用や社会的結びつきを育み、情報の非対象性の緩和というチャンネルを通じてMC

利用者のすそ野を拡げていくといったことが考えられるだろう。その場合、社会的信用や

結束の質や程度によって MC の手法についての考慮が必要になってくると思われる。MC

とソーシャルキャピタルの関係については近年研究が進められており、MC返済率へのソー

シャルキャピタルの影響を分析する実証研究なども出てきている(Wydick(1999),

Karlan(2005))。本稿では、ソーシャルキャピタルがMC利用可能性を高めることを確認す

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るに留まったが、Dowla(2001)などは、逆にMCのソーシャルキャピタル形成機能を指摘し

ており、今後は、この MC とソーシャルキャピタルの関係、そして両者の相互作用などに

ついても課題としていきたい。

次に、社会的弱者が MC のアクセスからはじかれているという結果からは、社会的弱者

が利用しやすい仕組みの工夫やターゲットアプローチ、あるいは社会的弱さの緩和につな

がるような教育プログラム等と MC との組み合わせなどの必要性が喚起される。社会的弱

者の排除と MC 機関の自立性とはトレードオフの関係にあると考えられるが、MC 機関の

ミッションが貧困層への金融サービスのアクセス保証による貧困の緩和であるならば、MC

機関の自立性・持続性ばかりを追い求めるのではなく、社会的弱者層への配慮が MC 全体

としては必要であると考える。

また、長寿を支えるサービスやインフラの充実が MC の浸透に影響を与えうる可能性を

鑑みると、MCプログラムの充実とともに、社会的インフラや公共サービス等人々の暮らし

を支える基礎的な社会基盤の整備が重要であると言うことができるだろう。

本稿では、MC 全般を制度的インフラと捉えようとする流れの中で、組織形態や手法等

様々な MC 機関をひと括りにし、その浸透要因を明らかにしようと試みた。共通の条件が

多様なMCの中でどこまで一般化できるのかは今後の課題として検討していきたい。

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付表目次

図 2 各国MC浸透度の分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

表 2 MC浸透度上位十カ国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

表3 マイクロクレジット浸透度の要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

表4 グアテマラローン浸透度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

表 5 グアテマラローンサービス提供機関内訳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

表 6 貧困世帯におけるMC利用世帯の属性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

表 7 非貧困世帯におけるMC利用世帯の属性・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

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26

020

4060

80Fr

eque

ncy

0 5 10 15 20loanrate

図2 : 各国MC浸透度の分布

ローン浸透度 %(ローン口座数 / 人口) Christen et al.(2004)を基に筆者作成

国名 ローン浸透率スリランカ 17.84インドネシア 13.74バングラデシュ 13.22グアテマラ 8.55ベトナム 8.26ボリビア 6.45エジプト 6.03ガンビア 4.96カンボジア 4.76ホンジュラス 4.71

表2 : MC浸透度上位十カ国

Christen et al.(2004)を基に筆者作成

1A  ロバスト回帰 1B  ロバスト回帰 1C ロバスト回帰

農村人口密度(log) 0.4602 0.4602 0.5204 0.5204 0.4949 0.4949

(1.80*) (1.67*) (2.20**) (1.81*) (1.69*) -1.65

一人当たり国民総生産(PPP)(log) -0.9749 -0.9749 -0.6495 -0.6495

(-2.28**) (-2.20**) (-1.31) (-1.33)

2$以下貧困ギャップ比率(log) 0.8825 0.8825

(4.04***) (3.57***)

デフレーター(log) -0.544 -0.544 -0.3306 -0.3306 -0.4849 -0.4849

(-2.86***) (-3.18***) ( -1.80*) ( -1.81*) (-2.22**) (-2.82***)

出生時平均余命 0.083 0.083 0.1106 0.1106 0.0732 0.0732

(3.13***) (2.71***) (3.88***) (3.94***) (2.36**) (2.23**)

成人識字率 -0.0111 -0.0111 -0.0149 -0.0149 -0.0171 -0.0171

(-0.73) (-0.83) (-1.10) (-1.11) (-0.99) (-1.07)

投票率 0.0148 0.0148

-1.11 -1.08

定数項 1.8633 1.8633 -10.2866 -10.2866 -0.9905 -0.9905

0.52 0.56 -4.46*** -4.46*** (-0.24) (-0.26)

サンプル数 99 99 88 88 80 80

修正済み決定係数 0.2727 0.3098 0.3652 0.4017 0.2231 0.2821

F 検定 8.35*** 8.01*** 11.01*** 11.96*** 4.78*** 5.29***

ブルシュペーガン検定 8.91 10.40* 7.07

ホワイト検定 20.16 24.33 26.5

表 3 : マイクロクレジット浸透度の要因分析被説明変数 : ローンアカウント数 / 国毎の人口 (log)

  *は10%有意水準で有意,**は5%有意水準で有意,***は1%有意水準で有意であることを示している.( )内はt値.

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ローン  有 り ローン無 し 世帯数

世帯数 995 (13 .6 8 ) 6281 (86 .32 ) 7276 (100 .00 )

貧 困度

極めて貧しい 92 (11 .9 8 ) 676 (88 .02 ) 768 (100 .00 )

貧 しい 288 (11 .2 0 ) 2283 (88 .80 ) 2571 (100 .00 )

貧 し くない 615 (15 .6 2 ) 3322 (84 .38 ) 3937 (100 .00 )

農 村 / 都 市

農村 490 (12 .7 2 ) 3362 (87 .28 ) 3852 (100 .00 )

都市 505 (14 .7 5 ) 2919 (85 .25 ) 3424 (100 .00 )

地 域

首都圏 163 (17 .6 0 ) 763 (82 .40 ) 926 (100 .00 )

北部 96 (12 .0 3 ) 702 (87 .97 ) 798 (100 .00 )

北東部 62 (10 .3 5 ) 537 (89 .65 ) 599 (100 .00 )

南東部 89 (11 .0 6 ) 716 (88 .94 ) 805 (100 .00 )

中央部 192 (15 .3 5 ) 1059 (84 .65 ) 1251 (100 .00 )

北西部 171 (14 .2 9 ) 1026 (85 .71 ) 1197 (100 .00 )

南西部 153 (13 .7 2 ) 962 (86 .28 ) 1115 (100 .00 )

ペテン地方 69 (11 .79 ) 516 (88 .21 ) 585 (100 .00 )

世帯数 (% )

表 4 : グ アテマラローン浸透度

ENCOV I 2000 . In s titu to N ac iona l de Es tad is tica (IN E .) G ua tem a laを基に筆者作成

過去 12ヶ月の間にローンに関わったこと(借 りた 、返 した等 )があるかないか

総計 極めて貧しい 貧しい 貧しくない

民間銀行 244 (21.67) 5 (5.21) 40 (12.58) 199 (27.95)

国立銀行 87 (7.73) 7 (7.29) 20 (6.29) 60 (8.43)

協同組合 165 (14.65) 14 (14.58) 37 (11.64) 114 (16.01)

生産者組合 8 (0.71) 1 (1.04) 5 (1.57) 2 (0.28)

金融業 17 (1.51) 1 (1.04) 7 (2.20) 9 (1.26)

NGO / コミュニティ銀行 54 (4.80) 9 (9.38) 22 (6.92) 23 (3.23)

個人的金貸し 155 (13.77) 25 (26.04) 54 (16.98) 76 (10.67)

クレジットカード 1 (0.09) 0 (0) 0 (0) 1 (0.14)

友人・家族・隣人 304 (27.00) 32 (33.33) 108 (33.96) 164 (23.03)

その他 91 (8.08) 2 (2.08) 25 (7.86) 64 (8.99)

総計 1126 (100) 96 (8.53) 318 (28.24) 712 (63.23)

世帯数 (%)

Source: ENCOVI 2000. Instituto Nacional de Estadistica(INE.)Guatemalaを基に筆者作成

表5 : グアテマラローンサービス提供機関内訳

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28

限界効果 z値 限界効果 z値

(ロバスト) (ロバスト)

都市部/農村部居住ダミー -0.0234 -4.21*** -0.0204 -3.63***

世帯人数 0.0043 3.86*** 0.0043 3.97***

消費十分位数 0.0026 1.28 0.0031 1.6

先住民族ダミー -0.0313 -3.27*** -0.0132 -2.18**

性別ダミー -0.0055 -0.48 -0.0052 -0.48

年齢 -0.0002 -0.87 -0.0002 -1.2

結婚ダミー 0.0164 1.68* 0.0161 1.75*

協働行動参加回数 0.0052 3.79*** 0.0052 3.83***

組織所属ダミー 0.0257 3.87*** 0.0256 3.91***

マーケットアクセスダミー 3.84E-06 0 -0.0001 -0.01

教育レベル 0.0055 1.27 -0.0024 -0.56

母語スペイン語ダミー 0.0223 2.18** 0.0114 1.90*

北東部ダミー -0.0267 -4.13***

南西部ダミー -0.0161 -2.61***

Number of obs: 3339 Wald検定(f=12):106.13*** Wald検定(f=14):114.11***

Uncensored obs: 3193 Wald検定(ρ=0) :3.79* Wald検定(ρ=0) :1.51

限界効果 z値 LR統計量

(ロバスト) (不均一分散)

北部居住ダミー -0.0296 -1.04 1.06

北東部居住ダミー 0.0304 3.41*** 1.17

南東部居住ダミー 0.0381 4.84*** 1.07

中央部居住ダミー 0.0264 2.13** 0

北西部居住ダミー 0.0086 0.49 3.87**

南西部居住ダミー 0.001 0.05 2.61

ペテン地方ダミー -0.0067 -0.29 0.1

都市部/農村部居住ダミー 0.0124 1.87* 0.33

Number of obs: 3339 LR検定(f=8) :61.62***

McFadden's Adj R2:0.036 Cragg-Uhler(Nagelkerke) R2: 0.061

Mckelvey & Zavoina's R2: 0.10Efron's R2: 0.018

Count R2: 0.956 AIC: 0.346

プロビットモデルによる限界効果 第一段階 MC機関(銀行+協同組合)へのアクセスの有無

*は10%水準で有意、**は5%水準で有意、***は1%水準で有意を示している。

Source : ENCOVI 2000. Instituto Nacional de Estadistica (INE.) Guatemala

2B

表 6 :貧困世帯におけるMC利用世帯の属性 ヘックマンプロビットモデルによる限界効果(第二段階)

2A

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29

限界効果 z値 限界効果 z値

(ロバスト) (ロバスト)

都市部/農村部居住ダミー 0.013 1.26 0.0217 2.34**

世帯人数 0.0116 2.96*** 0.0136 6.48***

消費十分位数 0.0177 2.80*** 0.0287 7.25***

先住民族ダミー 0.0078 0.48 -0.0035 -0.34

性別ダミー -0.0226 -1.73* -0.0326 -2.88***

年齢 0.00006 0.2 -0.0005 -1.81*

結婚ダミー 0.0225 1.6 0.0186 1.47

協働行動参加回数 0.0053 2.09** 0.0043 2.23**

組織所属ダミー 0.0301 2.53** 0.0345 4.02***

マーケットアクセスダミー 0.0076 0.52 0.0065 0.44

教育レベル 0.0254 2.77*** -0.0021 -0.5

母語スペイン語ダミー -0.0286 -1.34 0.0027 0.25

首都圏ダミー -0.0402 -4.77***

中央部ダミー -0.0275 -2.71***

南西部ダミー -0.0269 -2.61***

Number of obs: 3937

uncensored obs:3849

限界効果 z値 LR統計量

(ロバスト) (不均一分散)

首都圏ダミー -0.0109 -0.79 1.63

北部居住ダミー -0.0415 -1.53 0.25

北東部居住ダミー -0.0208 -1.08 0.12

南東部居住ダミー 0.0151 2.26** 1.14

中央部居住ダミー -0.0093 -0.68 4.93**

北西部居住ダミー -0.0124 -0.73 0.85

南西部居住ダミー -0.0505 -1.93* 0.58

都市部/農村部居住ダミー 0.0084 1.78* 2.21

Number of obs: 3339 Wald検定(f=8) :38.19***

McFadden's Adj R2:0.026 Cragg-Uhler(Nagelkerke) R2: 0.052

Mckelvey & Zavoina's R2: 0.097Efron's R2: 0.010

Count R2: 0.978 AIC: 0.209

Source : ENCOVI 2000. Instituto Nacional de Estadistica (INE) Guatemala

Wald検定(ρ=0) :0.00 Wald検定(ρ=0) :4.80**

第一段階 MC機関(銀行+協同組合)へのアクセスの有無

プロビットモデルによる限界効果

*は10%水準で有意、**は5%水準で有意、***は1%水準で有意を示している。

3B

表 7 :非貧困世帯におけるMC利用世帯の属性 ヘックマンプロビットモデルによる限界効果 (第二段階)

Wald検定(f=12):175.36*** Wald検定(f=12):189.46***

3A

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