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日本大学生産工学部研究報告A 2006年12月第39巻第2号 グラファイトおよびグラファイト層間化合物 C Ca 加藤正人 ・成田信男 ・鈴木修吾 Graphite and Graphite Intercalation Compound C Ca Masahito KATO , Nobuo NARITA and Shugo SUZUKI Wedeal with graphiteand graphiteintercalation compound C Ca.Wehaveused thedensityfunctional theory within the local-spin-density approximation.First we have optimized some supposed geometri - cal structures of graphite.Their binding energies and their electronic band structures have been obtained byuse ofthe optimized structures.We show that their binding energies are veryhigh and their band structures are extremely different each other around K point. Recently the bulk of graphite intercalation compound C Ca has been synthesized from high oriented pyrolytic graphite. The unit cell is rhombohedral, and belongs to R3 m space group.It shows supercon- ductivity at 11.5 K. The critical temperature is the highest in graphite intercalation compounds.Then we have calculated the band structure of this compound.We have shown the calculated results of the charge transfer,the characteristic feature of the band,and the density of states. Keywords: Graphite,Graphiteintercalation compound,C Ca,Densityfunctionalmethod,Band structure 1. 序論 グラファイト(石墨,黒鉛)は昔から知られており, 鉛筆の芯,電池の極,るつぼ,原子炉の炉心など幅広く 使われている鉱物で,炭素のみからできている。炭素の みからできているものとしては,ダイヤモンドやフラー レン,ナノチューブなどがあり,これらとは同素体の関 係にある。グラファイトの構造は層が幾重にも重なった 層状構造である。その単層の平面構造を Fig.1に示す。 炭素が蜂の巣状に結合しており,面内の炭素は強い共有 結合で結ばれている。一方,層と層の間の結合は,非常 に弱い力で結ばれている。そのため,雲母のような劈開 性を持っている。自然界に存在するグラファイトは,層 と層の重なりの違いにより,AB 型と ABC 型,無秩序型 とに区別される。その存在比は,それぞれ,80%,14%, 6%程度といわれている。したがって,普通に見られる のは,AB 型である。層の重なりが-A-B-A-B-のように 重なるので AB 型,層の重なりが-A-B-C-A-B-C-のよ うに重なるので ABC型といわれている。(ここでは, ABC型,無秩序型については取り扱わない)層と層の重 なりで,すべての原子が上下に位置するような重なり方, -A-A-A-A-のような重なり方は AB 型の特別の場合で あるが,AA 型と呼ばれることもある。AA 型は,ふつう 61 日本大学生産工学部教養・基礎科学系専任講師 日本大学生産工学部教養・基礎科学系教授 筑波大学物質工学系助教授

グラファイトおよびグラファイト層間化合物C - 日 …論 文 日本大学生産工学部研究報告A 2006年12月第39巻第2号 グラファイトおよびグラファイト層間化合物C웁Ca

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  • 論 文 日本大学生産工学部研究報告A2006年 12月 第 39巻 第 2 号

    グラファイトおよびグラファイト層間化合物CCa

    加藤正人 ・成田信男 ・鈴木修吾

    Graphite and Graphite Intercalation Compound C Ca

    Masahito KATO ,Nobuo NARITA and Shugo SUZUKI

    We deal with graphite and graphite intercalation compound C Ca.We have used the density functional

    theory within the local-spin-density approximation.First we have optimized some supposed geometri-

    cal structures of graphite. Their binding energies and their electronic band structures have been

    obtained by use of the optimized structures.We show that their binding energies are very high and their

    band structures are extremely different each other around K point.

    Recently the bulk of graphite intercalation compound C Ca has been synthesized from high oriented

    pyrolytic graphite.The unit cell is rhombohedral,and belongs to R3m space group.It shows supercon-

    ductivity at 11.5 K.The critical temperature is the highest in graphite intercalation compounds.Then

    we have calculated the band structure of this compound.We have shown the calculated results of the

    charge transfer,the characteristic feature of the band,and the density of states.

    Keywords:Graphite,Graphite intercalation compound,C Ca,Density functional method,Band structure

    1.序論

    グラファイト(石墨,黒鉛)は昔から知られており,

    鉛筆の芯,電池の極,るつぼ,原子炉の炉心など幅広く

    使われている鉱物で,炭素のみからできている。炭素の

    みからできているものとしては,ダイヤモンドやフラー

    レン,ナノチューブなどがあり,これらとは同素体の関

    係にある。グラファイトの構造は層が幾重にも重なった

    層状構造である。その単層の平面構造を Fig.1に示す。

    炭素が蜂の巣状に結合しており,面内の炭素は強い共有

    結合で結ばれている。一方,層と層の間の結合は,非常

    に弱い力で結ばれている。そのため,雲母のような劈開

    性を持っている。自然界に存在するグラファイトは,層

    と層の重なりの違いにより,AB型とABC型,無秩序型

    とに区別される。その存在比は,それぞれ,80%,14%,

    6%程度といわれている。したがって,普通に見られる

    のは,AB型である。層の重なりが-A-B-A-B-のように

    重なるのでAB型,層の重なりが-A-B-C-A-B-C-のよ

    うに重なるのでABC型といわれている。(ここでは,

    ABC型,無秩序型については取り扱わない)層と層の重

    なりで,すべての原子が上下に位置するような重なり方,

    -A-A-A-A-のような重なり方はAB型の特別の場合で

    あるが,AA型と呼ばれることもある。AA型は,ふつう

    ― ―61

    日本大学生産工学部教養・基礎科学系専任講師

    日本大学生産工学部教養・基礎科学系教授

    筑波大学物質工学系助教授

  • の状態では存在しないが,層間にアルカリ原子や分子な

    どをインターカレートした層間化合物では,通常,-A-α

    -B-α-A-α-B-のような重なり方をしないで,-A-α-A

    -α-A-や-A-α-A-β-A-のようになり,グラファイト層

    のみをみた場合,-A-A-A-A-のような重なり方をする。

    ここで,α,βはインターカレートしたインターカラント

    の層である。

    層に垂直な方向から見たAB型の安定な構造を Fig.2

    に示す。半数の原子が真上,真下に位置するが,残りの

    半数の原子は蜂の巣構造の中心上に位置している。この

    構造がAB型と一般的にいわれ,自然界ではふつうにみ

    られる安定な構造である。点線で囲まれた領域が単位胞

    である。

    グラファイト層が直接重なる場合,AA型よりもAB

    型が安定であるのはなぜか。また,グラファイト層の上

    下二層が,たがいに平行にずれて,上下の原子と原子の

    位置関係が異なる構造はいくらでも えられるが,それ

    らの構造は自然界では普通には見られないことからして

    AB型よりも安定性が悪いものとおもわれる。構造が安

    定であるかどうかは結晶を構成する原子間の全結合エネ

    ルギーの大小による。今回,上下二層の重なり方の異なっ

    た幾つかの結晶構造について,原子間の全結合エネル

    ギーをもとめたので報告する。

    つぎに電子状態について述べる。2次元グラファイト

    はゼロギャップの半導体であるが,3次元グラファイト

    では,価電子帯と伝導帯とが僅かに交差する半金属とな

    る。グラファイトのバンド構造はグラファイトの物性を

    知る上に重要であるので,非常に多くの研究がなされて

    いる。しかし,AA型のバンド構造については,J.C.Char-

    lier et alが詳しい計算をしているのみである 。かれら

    の論文の表から,AB型とAA型のバンド構造の違いが

    わずかであることがわかるが,実際大きく変化するK点

    からH点のバンド構造の図は掲載されていない。本論文

    では,AA型のみならず,上下二層の重なり方の異なった

    幾つかの場合についてもバンド構造をもとめたので,そ

    れらの図もあわせて報告する。

    グラファイトは層間の結合力が弱いため,層間にいろ

    いろな原子や分子などを蓄えておく材料としても使える

    ので,電池やガスの吸着・吸蔵などの材料に使われてい

    る。また,アルカリ金属などの原子やいろいろな種類の

    分子などをインターカレートした化合物,すなわち,グ

    ラファイト層間化合物は,グラファイトとは異なった物

    性をもつ化合物となる。たとえば,砒素やアンチモンの

    弗化化合物をインターカレートした層間化合物は金属と

    同じ程度の電気伝導性を示したり,カリウムやルビジウ

    ムなどのアルカリ金属をインターカレートした層間化合

    物は超伝導性を示したりする。最近,カルシウムやイッ

    テルビウムなどをインターカレートした層間化合物(C

    CaおよびC Yb)がバルクとして合成可能となり,それ

    らがアルカリ金属をインターカレートした層間化合物よ

    りも高い臨界温度を持つ超伝導体になることが発見され

    た 。これまでに得られたグラファイト層間化合物のう

    ちでは,C Kの臨界温度が0.14K,C Liが 1.9K,C Na

    が5Kなどである。ただし,C Liと C Naは高圧をかけ

    て合成された。これらと比べると,C Caの臨界温度が

    11.5K,C Ybの臨界温度が6.5Kというのは,きわめて

    高い値である。現在,より高い臨界温度を持つ超伝導体

    の合成や超伝導の理論を中心にして活発な研究がなされ

    Fig.1 Planar structure of graphite. Fig.2 Stable structure of the AB type graphite.The

    A layer is drawn with a thick line and the B

    layer with a thin line. The parallelogram

    drawn with a broken line shows a unit cell.

    ― ―62

  • ている。本論文では,カルシウムをインターカレートし

    たグラファイト層間化合物C Caのバンド構造をもとめ

    たので報告する。グラファイトおよびグラファイト層間

    化合物についての基本的な事項についてはたとえば,

    M.S.Dresselhausたちの文献を参照されたい 。

    計算は,局所密度近似にもとづいた密度汎関数法によ

    る第一原理計算でおこなった。構造の最適化,すなわち,

    原子間の全結合エネルギーを最大にする各原子の位置の

    決定を行うことにより,グラファイトの最適な構造を決

    め,最適化された構造から電子構造をもとめる。現在,

    グラファイト層間化合物C Caについても構造最適化の

    計算を進めているが,膨大な時間がかかるため,今回の

    報告では結晶構造および各原子の位置は実験から得られ

    ている値 を使った。局所密度近似にもとづいた密度汎

    関数法による計算では,他の計算方法と比べて全体的な

    電子構造の違いはほとんどないが,層状物質での層間距

    離の値が実験値に比べて少し短くなる(3%以内)傾向

    にあり,半導体の場合にはギャップも小さく計算される

    (実際の数分の一になることもある)。また,結晶構造が

    幾種類もの原子からなる複雑な構造をしていれば別であ

    るが,比較的単純な結晶構造では,全体的な電子構造は

    計算方法によらず,層間距離の値の変化には比較的鈍感

    であることも知られている。今回取り扱うC Caの場合

    には,比較的単純な結晶構造で,しかも,半導体でなく

    金属になると予想され,ギャップの大小の心配もないの

    で,実験から得られている値を使っても大きな間違いは

    ないと判断して計算を実行した。実際にわれわれが以前

    に計算したグラファイト,C K,グラフィン (graphyne)

    層状化合物などの計算結果 からも,電子構造の大きな

    変化はみられない。

    この論文は,2章で計算方法,3章で結晶構造,4章

    で,(1)グラファイトの安定構造と層間エネルギー,(2)グ

    ラファイトのバンド構造,(3)最近,注目を浴びているグ

    ラファイト層間化合物C Caのバンド構造の3点につい

    て述べ,5章で全体をまとめるという構成である。

    2.計算方法

    W.Kohnたちにより,1960年代に開発された密度汎

    関数法 は分子,結晶,クラスターなど広い分野で応用

    され,電子状態をもとめる計算方法として成功をおさめ

    ている。ここでは,局所密度近似による密度汎関数法を

    用いた。局所密度近似は局所的な電子密度の関数として

    交換・相関ポテンシャルを用いる。交換・相関ポテンシャ

    ルにより結合エネルギーや電子状態は大きく影響される

    ので,正確な交換・相関ポテンシャルの式を必要とする

    が,どの分子や結晶にも適用できるような交換・相関ポ

    テンシャルの具体的な式をもとめることは容易でなく,

    現在までに多くの式が えられてきており,現在も研究

    がなされている 。ここでは,一般的によく使われてい

    る J.P.Perdew and A.Zungerたちの式 を用いた。

    Kohn-Sham方程式をそのまま厳密に解くことはできな

    いので,実際にはいくつかの近似解法が 案されている。

    われわれはバンドをもとめる計算方法として,Full-

    Potential LCAO法 を用いた。原理および計算方法に

    ついては,これらの文献に述べられているので,触れな

    い。

    実際の計算では,まず,取り扱う物質の構造最適化を

    おこなう。その際,ブリルアンゾーン内で多くの波動ベ

    クトル kの点に対して計算すれば,結果の精度はあがる

    が,計算時間がかかり過ぎるようでは現実的ではない。

    できるだけ k点の数を少なく取って計算すれば,計算時

    間は短くなる。そのため,はじめに,取り扱う物質が安

    定に存在できると思われる構造の格子定数(たとえば,

    実験値)を与えて,十分に大きく k点の数をとって計算

    する。つぎに,それより小さな k点の数で同じ計算をし

    て結果を比較し,結果の精度を えて k点の数を決定す

    る。適当と判断した k点の数で格子定数を変化させて

    いって,結合エネルギーが最大となる格子定数をもった

    構造を決定する。そのときの構造が一番安定な構造であ

    るといえる。k点の選び方は,special pointから決める

    方法と優良格子点法 があるが,今回は後者を用いた。

    グラファイトの場合,結合エネルギーの誤差として

    0.05eV程度を えるということでバンド構造を決定す

    るのであれば,k点の数は , , の各方向に , ,

    個として , , = 4,4,2 の4×4×2=32点で

    も十分であるが,層間相互作用のように弱い相互作用を

    える場合には,計算結果から得られる結合エネルギー

    の精度を高くとる必要がある。そのためには,k点の数を

    多くとって計算をしなければならない。

    3.結晶構造

    グラファイトのAB型で上下の層が互いにずれた幾

    つかの構造を える。AB型とは序論で述べたように,半

    数の原子が真上,真下に位置して,残りの半数の原子は

    蜂の巣構造の中心上に位置している場合を限定していう

    のであるが,ここでは,-A-B-A-B-のような重なりかた

    でも重なりかたが異なる場合について えるので,区別

    するためにAB とする。以下に述べるように, の違

    いによって重なりかたが異なっていることを表してい

    る。最初にA層(下層)に対してB層(上層)を回転す

    ることなく平行にずらす。Fig.3において,大きな六角形

    でしめしてある部分をA層の一部分とする。1としめし

    てある点は,B層の炭素原子の一つに着目し,B層をず

    らして1の位置にB層のその炭素原子をもってきたこ

    ― ―63

  • とを意味する。そしてこの場合B層の炭素原子がすべて

    A層の原子の真上にある状態になったとする。層に垂直

    な方向からみて,上層の炭素はすべてA層と同じ位置に

    見える状態である。このときの構造をAB(1)と表す。こ

    れはまさにAA型の構造である。図において,5と書い

    てあるのは,上記の状態からB層を平行にずらして,着

    目したB層の炭素原子を5の位置にもってきたことを

    意味する。このときの構造はAB(5)で,普通,最も安定

    な構造といわれているAB型の構造である。なお,図の

    中に7と8が2個所あるが,それらの点は上下の層の重

    なり方が同じ点である。AB で表したこれらの構造

    の単位胞はすべて Fig.2の点線で囲まれた領域と同じ

    で,単位胞のなかにはA層,B層のそれぞれに2個,合

    計4個の炭素原子存在する。また,これらAB の空間

    群はP6/mmcである。ブリルアンゾーンを Fig.4にし

    めす。

    グラファイト層間化合物C Caの結晶構造は,研究者

    により,-A-α-A-β-A-α-A-β-A-のような構造と-A

    -α-A-β-A-γ-A-α-A-β-A-γ-A-のような2つの構造

    が示されたが,最近では,後者に落ち着きそうであ

    る 。したがって,この論文では後者を採用した。

    その場合の平面構造とやや斜めからみた垂直方向の構造

    を Fig.5にしめす。計算で用いた菱面体構造の単位胞の

    格子定数は平面方向 = =4.261Å,層に垂直な方向は

    菱面体構造の1層(グラファイト層とつぎのグラファイ

    ト層との間の距離)のみをとり, = /3=13.572/3Å=

    4.524Åとした。したがって,菱面体構造の単位胞は6個

    Fig.3 Assignation for the site of the carbon atom.

    See text.

    Fig.4 The Brillouin zone of graphite.

    Fig.5 The view of the structure of C Ca. Greek

    letters represent Ca atoms.These are located

    within each other sheets.

    ― ―64

  • の炭素原子 (C)と1個のカルシウム原子 (Ca)からなり,

    空間群はR3mである。ブリルアンゾーンを Fig.6にし

    めす。

    4.結果

    4.1 グラファイトの安定構造と層間エネルギー

    グラファイトの上下二層の重なり方の違いにより安定

    性がどの程度違うかを調べるために結合エネルギーをも

    とめた。自然界に見られ,したがって,安定な構造であ

    るAB型と,通常の状態では存在しない,したがって,

    不安定な構造であるといわれているAA型,さらに,ほ

    かの重なり方についても結合エネルギーをもとめること

    により安定性がどの程度であるかを調べた。

    まず,格子定数を一定にした構造(実験より決まって

    いる格子定数を用いた)で,k点の数, , , に対

    して結合エネルギーがどの程度収束していくかをしらべ

    る。k点の数, , , で , を一定の値に設定し

    て, を2から まで変化させた各場合の結合エネル

    ギーがどの程度変化するかをしらべた。その変化は,

    = =4,6,8の場合に対して0.4meV/atom以下で

    あった。したがって, 方向の変化は通常の層状物質で実

    験からえられている層間エネルギーよりもかなり小さい

    値なので, の値を小さい値にして計算しても問題ない

    ものと思われる。つぎに,k点の数をできる限り大きい値

    にして計算した場合と k点の数を小さくとった場合の

    結合エネルギーの変化をしらべた。今回,計算を実行し

    た最高の格子点の数は, , , = 16,16,8 の場合

    で,そのときの値に対して,12,12, の場合も 10,10,

    の場合, 8,8, の場合も0.4meV程度, 6,6,

    の場合は4meV程度,4,4, の場合は3meV程度の

    差があった。(ここで,かっこ内の は2から まで変

    化させた)グラファイトの層間エネルギーは実験値 か

    ら数十meV程度と思われるので,その点を 慮して,誤

    差を1meV程度におさめることにきめ,構造最適化の計

    算を実行することにした。実際には計算時間も 慮して,

    k点の数を 8,8,4 とした。この場合,k点のサンプリン

    グからくる誤差は k点の数の収束の度合いからみて,

    1meVである。また,層間距離を最適値のまわりで

    0.01Åの精度で決めるときの誤差は実際に計算した結果

    から,0.1meV以下と小さい値であるので問題はない。

    したがって,誤差を1meV程度におさめるには k点の

    数を 8,8,4 として構造最適化の計算を実行させればよ

    いことがわかった。

    最初に安定なAB型の構造に対して最適化を行った。

    グラファイトの平面構造は非常に強い spの結合で結ば

    れており,インターカレートした場合でも格子定数の変

    化は少なく0.001Åの程度である 。今回は,平面構造の

    最適化は行わず,蜂の巣構造の六角形の一辺は不変とし,

    1.419Åとした。グラファイトの面に垂直な方向(c軸方

    向)のみ格子定数の最適化を行った。その結果,隣接す

    る上下のグラファイト面の間隔 =3.31Å,したがって,

    =2 =6.62Åが最適値として得られた。面の間隔の実

    験値が3.35Åであるので,1.2%の誤差であり,局所密度

    近似にもとづいた密度汎関数法による値としては,満足

    のいく結果である。そのときの結合エネルギーは8.9652

    eV/atomである。

    つぎに,AB型で上下の層が互いにずれた幾つかの構

    造AB を える。Fig.3に示した各場合の重なりか

    たが違う構造についてc軸方向のみの格子定数の最適化

    を行うことによって,それらの安定構造とそのときの結

    合エネルギーをもとめた。各構造について最適化したと

    きの結合エネルギーと隣接層間の距離 = の関係を

    Fig.7に示す。結合エネルギーが大きいほど安定性が高

    いと えられるから,安定性が一番高いのはAB(5)の構

    造と えられる。したがって,一般にいわれているよう

    に半数の炭素原子が蜂の巣構造の中心に位置するAB

    型の構造が一番安定であることがわかる。また,結合エ

    ネルギーが最も低いのはAB(1),すなわち,AA型で,一

    番安定性が低いといえる。AB型,AA型構造の結合エネ

    Fig.6 The Brillouin zone of C Ca.

    Fig.7 The binding energy versus the distance

    between adjacent layers.

    ― ―65

  • ルギーは,それぞれ,8.9652eV/atom,8.9574eV/atom

    である。その間にAB 構造はおさまっている。AB

    構造がAA型構造 (AB(1))よりも不安定で結合エネ

    ルギーも低くなるのではと えていたが予想外に安定で

    結合エネルギーがAA型構造よりもすべて高い値と

    なった。AA型構造の結合エネルギーは8.9574eV/

    atomであるから,AB型とAA型構造の結合エネル

    ギーの差は,およそ,8meV/atom(=8×10 eV/atom)

    で僅かである。AA型構造の結合エネルギーは他の化合

    物と比べても非常に高い値であるので,環境条件によっ

    てはAA型のみならずAB 構造のグラファイトも存

    在できるようなことも えられる。Fig.7から,B層の原

    子がA層の蜂の巣構造の中心の位置からずれるにした

    がって結合エネルギーも低くなり,層間距離が長くなる

    傾向が読み取れる。いずれにしても,いくつか えられ

    る構造について結合エネルギーをもとめたが,そのなか

    で一番安定な状態がAB型であることがはっきりとし

    た。何故そのようになるかの分析はこれからの課題であ

    る。

    つぎに,一番安定なAB型の層間エネルギーがどの程

    度かをもとめた。2次元平面(単層)のグラファイト)

    の炭素全体の結合のエネルギーは8.9499eV/atomとい

    う値が得られたので,3次元グラファイトの値から,こ

    の値を引いた値15.3meV/atom(=0.0153eV/atom)

    が層間エネルギーである。この層間エネルギーをファン

    デルワールス相互作用のエネルギーと呼んでいる場合が

    多い。しかしながら,本来,ファンデルワールス力は,

    電子密度のゆらぎにより,ある部分に電気双極子が生じ,

    それがほかの部分に生じた電気双極子と相互作用するこ

    とによって起こるもの,あるいは,不対電子をもたない

    分子(原子)間にはたらく引力をさすというような言い

    方もされる。この効果も含めた形の層間エネルギーであ

    れば,層間エネルギーをファンデルワールス相互作用の

    エネルギーと呼んでも構わないが,われわれの用いた局

    所密度近似による密度汎関数法は,完全にはファンデル

    ワールス相互作用の効果は含まれていない。密度汎関数

    法で上記のようなファンデルワールス相互作用も含んだ

    形にするには,電子の交換・相関ポテンシャルの部分を

    少し補正する必要がある。その点についてもいくつかの

    理論式がだされているので ,将来の課題として取り組

    みたいと えている。いずれにしても,共有結合やイオ

    ン間相互作用に比べると,数百分の一程度と非常に弱い

    力であるため,原理的な面での理論的研究は昔からなさ

    れてきたが,具体的に個々の原子や分子についてのファ

    ンデルワールス力の理論的,実験的研究は,それほど進

    んでいない。ここで取り扱うグラファイトについての

    ファンデルワールス相互作用のエネルギー(層間にはた

    らく引力のエネルギー)は,実験からは35meV/atom ,

    計算からはε 20 26meV/atom ともとめられ

    ている。

    4.2 グラファイトの電子構造

    (1)で幾つかの重なりかたの異なる構造について安定

    性を調べたが,重なりかたの違いや安定性の違いがバン

    ド構造にどのような影響を与えているのかを調べるため

    に,最適化した各構造のバンド構造をもとめる計算を実

    行した。最適化した各構造についてバンド構造がどのよ

    うになっているかを報告する。最も安定な構造である

    AB型 (AB(5))および計算した中で結合エネルギーの最

    も低いAA型 (AB(1))のバンド構造を Fig.8,Fig.9に

    しめす。同時にAB型のバンドについて,エネルギーと

    そのキャラクターを Table 1にしめす。両者の構造はK

    点付近を除きK-Γ-M の領域ではよく似ている。両者の

    構造は,ブリルアンゾーンのK点付近とK-H線に沿っ

    て驚くほどに違っている。AB型では結合バンドと反結

    合バンドがエネルギーの高い部分を除けばK点からH

    点で縮退するが,AA型では縮退しないで,エネルギー幅

    がかなり広がっている。特にK点付近でフェルミエネル

    ギー(エネルギーが0)付近では,AA型のバンドは交差

    して縮退しない。この違いが安定性とどのように関係し

    ているのか,現在まだ,説明できない。Table 1にしめし

    Fig.9 The band structure of the AA type graphite

    (AB(1)).The Fermi level is chosen as the zero

    of energy.

    Fig.8 The band structure of the stable AB type

    graphite(AB(5)).The Fermi level is chosen as

    the zero of energy.

    ― ―66

  • たバンドのキャラクターとエネルギー値は,ほかの研究

    者によりこれまでに計算された値と一致している 。

    つぎに,AB型のK点からH点までのフェルミエネル

    ギーに近い部分についてのべる。結合バンドと反結合バ

    ンドがK点で縮退して Fig.8ではフェルミエネルギー

    に完全に沿って進み,H点でさらに,4本のバンドが縮

    退するようにみえる。この部分を拡大した図が Fig.10

    である。フェルミエネルギーに完全に沿っているように

    みえたバンドは緩やかな傾斜をしてフェルミエネルギー

    を横切っている。非常に小さいが,3次元のグラファイ

    トがH-Kに沿って電子と正孔のフェルミ面が形成さ

    れ,半金属となるのはこのためで,実験からも電子と正

    孔からなるフェルミ面が観測されている。

    さらに,AB 型の幾つかのバンド構造を Fig.11に

    しめす。Γ点を中心とする広い領域はAB型とほとんど

    変わらない構造であるので省略し,M-K-Hの領域のみ

    をしめす。それぞれ,非常に特異なバンド構造をしてい

    る。この違いはグラファイト層のc軸方向での原子の重

    なりの違いによるものである。原子核同士,原子核と電

    子,電子同士の静電相互作用の向きや大きさの違いが大

    いに関係すると思われるが,K-Hの領域でバンドが縮退

    し,あるいは縮退が解けているのは,電子同士の交換・

    相関相互作用も大いに影響している結果であり,複雑な

    構造となっている。原子の重なりの変化にともなって,

    最も安定な構造であるAB型 (AB(5))から安定性が最も

    低いAA型 (AB(1))へとバンド構造がどのように変わっ

    ていくかは得られたバンド図からははっきりしない。現

    在,原子の重なりかたを,さらにいろいろと変えた場合

    について,バンド計算をしている。結晶にはたらいてい

    る静電力や交換・相関からくる力の3次元方向の各成分

    も調べ,結晶構造の違いによる電子状態の変化と安定性

    の関係を 察しているので,近いうちに,何らかの知見

    が得られるものと期待している。

    4.3 グラファイト層間化合物C Caのバンド構造

    C Caのバンド構造は,-A-α-A-β-A-α-A-β-A-のよ

    うな結晶構造,すなわち,空間群がP6/mmcの場合は,

    2つの研究グループにより計算されているが,-A-α-A

    -β-A-γ-A-α-A-β-A-γ-A-のような菱面体構造,すな

    わち,空間群がR3mに属する構造の計算は擬ポテン

    シャル法によるものがあるのみである 。われわれは菱

    面体構造について,電荷の移動の大きさ,バンド構造,

    状態密度をLCAO法を用いてもとめたので報告する。

    Table 1 Electronic energy and character of the band

    level atΓ point.

    Energy level Energy(eV) Character

    15 8.3 2p ,2p

    14 8.2 2p ,2p

    13 4.4 2s ,3d

    12 -3.0 2p

    11 -3.0 2p

    10 -3.0 2p

    9 -3.0 2p

    8 -6.5 2p

    7 -8.7 2p

    6 -19.2 2s

    5 -19.5 2s

    4 -263 1s

    3 -263 1s

    2 -263 1s

    1 -263 1s

    Fig.10 The band structure of around K-H line in

    close-up.

    (i) (ii)

    (iii) (iv)

    Fig.11 The band structures of some different stack-

    ing arrangements.

    Only the band structures near the K point are

    shown.(i)AB(3).(ii)AB(6).(iii)AB(7).(iv)AB(8).

    ― ―67

  • まず,CaからCへの電荷の移動について述べる。Ca

    の電子が中性の状態では20個,Cの電子では6個である

    が,C Caでの結果ではCaの電子の占有数は19.53個,

    Cの電子の占有数は平 で6.079個となった。したがっ

    て,単位胞あたり0.47個の電子がグラファイト層のC

    へと移動し,1個のCはおよそ0.08個の電子を受け

    取ったことになる。この結果は,ほかのグループの値

    0.32よりはやや大きな値であるが ,電の移動量は予想

    外に小さな値である。これまでのグラファイト層間化合

    物の電荷の移動量の数分の一である 。

    つぎに,バンド構造を Fig.12に,状態密度を Fig.13

    にしめす。また,Table 2にバンドのエネルギーとその

    キャラクターのもっとも強い成分のみをしめす。Γ点で

    Ca4sバンドはフェルミレベルの下方1.4eVに,C2p

    のキャラクターを持つ2本のバンドはフェルミレベルの

    下方1.8eVにある。これら3本のバンドはフェルミレ

    ベルを横切る。3.0eVから4.7eVにかけて起伏の少な

    い5本のバンドはCa3dバンドである。Fig. 13におい

    て,フェルミレベルはちょうど,-1.5eVから2.0eVに

    かけて広がる状態密度の広い頂きをもつ山のところに位

    置している。この部分を詳細にしらべるとC2pとCa3

    d,Ca4sの混在した状態になっている。バンド構造など

    は,大体において,M.Calandra and F.Mamiの計算と

    一致している 。

    上述したように,C Caの特徴はCaからCへの電荷

    の移動量がこれまでに知られているグラファイト層間化

    合物の数分の一と低い値であることとフェルミレベル付

    近の電子状態がC2pとCa3d,Ca4sの混在した状態

    である点である。超伝導の発現と高い臨界温度をしめす

    理由としてはCaからCへの電荷の移動が少ない,すな

    わち,Caに残される電荷が多いことからきているのであ

    ると,その点に重点をおいて説明しているグループ ,

    C Caのフェルミレベル付近でのバンドのキャラクター

    の混在が大きいことが高い臨界温度をしめすのに寄与し

    ているのであると説明をしているグループ など,

    いくつかのグループが高い臨界温度をしめす超伝導体

    C Caのメカニズムの解明に取り組んでいる。

    われわれは,C CaおよびC Ybの最適化した構造の

    Table 2 Electronic energy and character of the band

    level atΓ point.

    level energy(eV) character

    37 6.9 C3d

    36 6.9 C3d

    35 4.7 Ca3d

    34 4.6 Ca3d

    33 3.6 Ca3d

    32 3.0 Ca3d

    31 3.0 Ca3d

    30 -1.4 Ca4s

    29 -1.8 C2p

    28 -1.8 C2p

    27 -2.3 C2p

    26 -2.3 C2p

    25 -4.3 C2p

    24 -4.3 C2p

    23 -9.0 C2p

    22 -12.0 C2p

    21 -12.0 C2p

    20 -13.7 C2s

    19 -13.7 C2s

    18 -13.9 C2s

    17 -13.9 C2s

    16 -20.8 C2s

    Fig.12 The band structure of C Ca.The Fermi level

    is chosen as the zero of energy.

    Fig.13 The density of states of C Ca.

    ― ―68

  • 電子状態を現在もとめているが,間も無く計算も終了す

    ると思われる。電荷の移動量,バンドのキャラクターの

    混在に加えて,インターカラントの大きさも超伝導の臨

    界温度に影響すると思われるので,その点も含めて超伝

    導の機構についての議論が近い将来できることを期待し

    ている。

    5.まとめ

    局所密度近似による密度汎関数法を用いて,グラファ

    イトの幾つかの えられる構造の安定性,バンド構造,

    さらには,グラファイト層間化合物C Caのバンド構造

    をもとめた。

    グラファイトの安定構造はAB型で,結合エネルギー

    は8.965eV/atomである。安定性の低いAA型との結

    合エネルギーの差は8meV/atom程度である。

    グラファイトの層間の相互作用エネルギーは15±1

    meV/atomである。

    層の重なりを変化させて得られる結晶構造のバンド構

    造はブリルアンゾーンのΓ点を中心とする広い領域で

    互いによく似た構造であるが,K点のまわりやK-H線

    に沿った領域では,非常に複雑で異なった構造をしてい

    る。

    C Caの結晶構造の空間群はR3mの菱面体構造とし

    て,電荷の移動とバンド構造をもとめた。電荷の移動は,

    単位胞あたり1個のCa原子から0.47個の電子が6個

    のC原子へ移動するという低い値である。バンド構造

    は,1本の主にCa4sバンドと2本の主にC2p バンド

    とがフェルミ-レベルを横切っている。5本の主にCa3

    dからなるバンドがフェルミ-レベルの上方3eVから

    4.7eVの比較的狭い範囲に局在している構造である。

    フェルミ-レベル付近の状態密度をみると,Ca4s,Ca3

    d,C2pが混在している。

    謝辞

    日本大学生産工学部教養・基礎科学系助教授,山川一

    三男氏および同専任講師,大坂直樹氏には本研究のグラ

    ファイトの安定構造について有益な議論をしていただい

    た。ここに謹んで感謝いたします。

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    (H18.6.9受理)

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