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東ティモールコーヒー産業の現状と展望
「農家にとっての幸せとは」を考える
東ティモールの産業への問題意識
・慢性的な輸入超過(赤が輸入、青が輸出)
(出典: http://atlas.media.mit.edu/ja/visualize/line/hs92/show/tls/all/all/1995.2017/ )
・高い失業率(70 ~ 80%以上)
東ティモールの現在の主要な輸出品目は?・石油・コーヒーがトップ2
コー ヒー
油
貿易赤字是正のためには輸出産業が必要
石油はいずれ枯れる+産業として育てようがない+リサーチできない(本音)
コーヒー産業の育成が必要!
渡航前の議論の流れ
分科会で東ティモールの産業を調べるにあたり、石油に次ぐ外貨獲得手段となっているコーヒーを調べることに
テーマについての話し合いの中で「自分たちの思う『正解』」は現地の人々にとっても「正解」であるとは限らないのではないかという意見が出る
現地の人というのを、東ティモール人全体ではなく「農家」に限定し、農家にとって一番良い東ティモールの未来を考えることに。
東ティモールコーヒーの成長していく先は?という疑問から出発。
渡航前にセットしたテーマ
東ティモールのコーヒー産業に携わる人たちに話を聞き、農家の幸せというテーマに沿って東ティモールコーヒーの将来について考える。
リサーチ方法
► 文献調査
► 現地で活動するNPO、NGOへの取材
► 農家への聞き取り
► 川先生への取材
アウトライン
⓪基本情報
①農家の幸せについての考察
②東ティモールコーヒー産業の課題
③まとめ
⓪ の前に…基本情報
► 略史
ポルトガル時代(16C〜1975年)
1815年、コーヒーの木が東ティモールに持ち込まれる。
19世紀末、エルメラにプランテーションができる。
(ポルトガル系の企業によって運営される)
インドネシア時代(1975年〜1999年)
品質を問わないインドネシア軍系の企業による買取→全体的な品質が低下
紛争でインフラが破壊される
独立後(1999年~)
先進国のNGOらによる支援開始(人道支援→生産支援へ)
UNTEAT(東ティモール暫定行政機構)の撤退により経済沈滞
2018年、ADB主導で東ティモールコーヒー協会(ACTL)設立
成立
復興
凋落
ACTL(東ティモールコーヒー協会)について
総会
農家
バリスタ
小売業者
輸出業者
買付業者
コーヒーにかかわる50団体が参加
役員理事会
年に一度総会が開かれ、前年度までの活動実績報告と、その年の活動の大きな方針を立てる。
総会の構成員から選ばれた15人の理事からなる。
さらに4人の役員をその中から選出。実質ここが実務部隊
①「農家の幸せ」についての考察
産地
東ティモール有数のコーヒー産地エルメラ
今回訪問した産地マウベシ
西部は標高の低さゆえにアラビカ種(比較的高価)は栽培できないためコーヒー生産自体が盛んではない。
ただ、近年ロブスタ種(比較的安価)の生産は広がっている
東部は山がちで一大産地エルメラを中心にコーヒーの生産が盛ん。
首都
①農家の幸せについての考察
► 現地で行なった取材
► 概要
► 日本のNGOパルシックと契約している農家のグループを二つ訪問(取材対象の偏りは否めない)、現地の言葉→英語→日本語で通訳
► 質問項目
► コーヒー生産について
► パルシックとの関係
► コーヒー農家という仕事について
► 将来、子供のことについて etc.
農家の像
・明確なビジョン・徹底した品質管理・整備された農園
・ビジョンがある人とない人でまちまち現状に満足⇔販路拡大・コーヒー豆の品質についての方向性はない・品質管理も人による・植えっぱなし
想像 実際
・知識不足(コーヒー生産からマーケティングなど)・「生活」の域を出ないビジョン
考察続き
► 「農家の幸せ」について► 生活環境と農家の幸せは密 している。
► 結論
► 彼らの生活環境の維持改善とその根本にある所得の向上(生活の安定化と漸次的改善)を目指すべき。押しつけの発展は弊害を生む。
► 方向転換
► 結局、現状の課題の発見とその分析、解決に尽きる。
②コーヒー産業の現状及び課題
サプライチェーン
農家
CCT
NGO
商社
フェアトレード市場
国内市場
生産側の問題
► 木の老朽化問題
生産性の低下、植え替えへの抵抗、
► 生産者のスキル不足
樹高、選別、
► 農家の規模
農園が点在、農園が小規模
► 人手不足
若者のコーヒー離れ
► 土地問題
地権の重複
► (思考の枠の小ささ)
生産側の問題①► 木の老朽化問題
► 概要:東ティモール全体でコーヒーの木が老朽化し、木の生産性(木一本あたりのコーヒー豆の収量)が下がっている。
► 対策:木の更新(植え替えなど)
► 対策の現状:政府の予算は不十分。CCT、NGOなどの仲買業者も取り組んでいるが、農家たちの短期的な生産減に対する不安をぬぐいきれず、進んでいない。
► 生産者のスキル不足
► 概要:インドネシア時代にノウハウの継承が途絶え、豆の収穫以外何もしないという時期も。また農園の管理もずさん(樹高がまちまち、植えっぱなし)
► 対策:取り組みはまばら(NGOなどが一時加工や農園の管理などを農家に教育⇔CCTは農家からチェリーの状態のまま仕入れ、それ以上干渉しない)
► 農家の規模
► 概要:どの農家も小規模(これ自体は問題ではないが)。また、農家の所有する農園が各所に点在しているケースもあり、生産効率に悪い影響を与えている。
► 対策:特に行われていない(土地への愛 もある)
生産側の問題②► 人手不足?
► 概要:コーヒー農家の高齢化と若者のコーヒー離れ。事務仕事への憧れ→ディリに出稼ぎ(→ディリで仕事にありつけず海外に出稼ぎに出るケースも)
► 対策:特に行われていない
► 土地問題
► 概要:各政府に発行された地権の証明書の所有者と、現在その土地を耕す農家との間でトラブルが発生する可能性がある。
► 対策:現在政府がリサーチを行なっている段階らしく、近々その全貌が明らかになるとのこと。
► 生産者の視野の狭さ
► 概要:自分の生活と今行っているコーヒー生産のことしか見えていないため、消費者にどのように自分のコーヒーが渡っているのかに想像が及ばない。
► 対策:一部のNGOでは流通業者である特性を生かし、生産者に消費の情報を教える取り組みをしている。
市場に売るうえでの問題
► マーケット不足► 概要:東ティモールコーヒーが世界で売れない。認知度と品質の低さによる。国内市場も小さい。
► 対策:各NGOは販路拡大に向け、売り込んではいる
► 不安定な市場価格
► 概要:協定がなくなり、世界的にコーヒー価格の変動が悪化。国にしても農家にしてもコーヒー産業だけのモノカルチャーでいるのは危険。
► 対策:政府の意向を受け、JICAなどが産業多様化事業を行っている。農家もイチゴや野菜を生産し、収入源を増やしている。
► 人材不足
► 概要:コーヒーを評価するためのに必要なカッピングを行える人材が少ない、コーヒー産業を草の根で支援するNGOなどのマンパワー不足
► 対策:NGOは東ティモール人の人材育成を進めている。政府規模では不明
③まとめと結論
東ティモールコーヒー業界の課題
以上のように課題を列挙して来たが、ほとんどの問題に対してはすでに草の根ではあるが対処が始まっている。しかしどのように売るかといったマーケティングやプロモーションについてはあまり取り組みがなされていないし、土地問題や若者の都会への流出については個々の力ではどうすることもできない。
そのような個々の取り組みでは限界のある課題に対して解決を行える存在が必要なのではないか。
生産 輸出加工
一つ一つのチェーンを管理しているのはNGOや商社
生産 輸出加工
生産 輸出加工
コーヒー産業全体を管理しうるのは政府かACTL
・政府の政策ははっきりしない上、失敗が多い。さらに政局も安定しない。・ACTLはNGOなどの組織の集合体であり、取り組み自体は個別にならざるを得ない。
このチェーンは東ティモール人の手に渡っても機能しうる(ATTが良い例)
将来像
► 政府
► 明確なビジョンを持っていない。様々検討しているようだが見えない
► ACTL
► ①「収量の安定化、増加」②「品質の向上」③「マーケティングの促進」の三つで一致
► もう少し長期の目標、方針については多様な意見があるようで、統一した見解はない。
► 多くある意見
► 多くは作れない→スペシャリティとして生き残る→フェアトレードとして売り続ける。品質を上げて高品質コーヒーとして売る。
► 観光と農業がこれらの主産業→アグリツーリズム
それぞれに考えがあり、共有の場も生まれた。議論を活発にするためにも海外の事例や国内のデータ収集等のリサーチが必要。
そのために
現状、NGOや商社などステークホルダーの寄せ集めであるACTLに
・産業全体の分析や課題発見、海外の事例研究とそのためのデータ収集が行える研究機関ないし研究員
・それらの課題解決のためだけに動きうる部署、そしてそれを行える事務員
が必要であると考える。
現状それを行っている人材が国外国内通して不足している印象
→まずは海外の人材でもよいので課題発見とその分析、解決案提示、その実行のサイクルを確立するべき。
→同時に国内で人材育成を進め、徐々に代替させることで永続的なものへ
参考文献
► Susie Khamis, Timor-Leste coffee : Marketing the “golden prince” in post-crisis
conditions, Food culture and Society An International Journal of Multidisciplinary
Research,2015
► Silva, A.B., & Furusawa, K. (2014). Land, state and community reconstruction. In
Takeuchi, S. (Ed.). Confromting Land and Property Problems for Peace:
Routledge
► 妹尾裕彦. (2009). コーヒー危機の 因とコーヒー収入の安定・向上策をめぐる神話と現実. 千葉大学教育学部研究紀要, 57, 203-228.
► パルシックホームページ https://www.parcic.org/timor-
leste/project/supportproducers/
► ADB記事 https://www.adb.org/news/adb-supports-development-timor-leste-s-
coffee-sector
お話を伺った方々
► 東ティモールの方々
► アイナロdistrictマウベシsubdistrictのリティマ、ブルテロの農家の方々
► フランコさん
► NGOの方々
► パルシック代表井上様、パルシック東ティモール事務所代表伊藤様
► オルタートレードジャパン若井様、オルタートレードティモールEvangelino様
► ピースウィンズジャパン丹羽様、恵比澤様
► その他
► 東京女子大学現代教養学部教授 沢様
► JICA東ティモール事務所の方々
編集後記
感想と反省
► 学び
► 発展途上国における人材の重要性を感じた。コーヒー産業だけでなく官僚にも閣僚にも人材が足りていないという。結局人材不足はどこにおいても顕著であり、発展を妨げていると感じる。教育がどれほど重要か。
► 反省
► リサーチテーマを大きくしすぎた。約半年の分科会、2週間の渡航でみたも見たもの、得たものは東ティモールのコーヒー産業のほんの一部に過ぎない。自分たちのできるリサーチには限界があり、それを超えてしまうと根拠の薄い主張にしかならない。少なくとも自分にはそう感じられた。
今後検討するべき事項
► (編者の個人的意見なのでリサーチの発表として扱うのはやめたことです)
► 結論:ACTLにシンクタンクと実行部隊を備えるべき
► シンクタンクはUNTL(東ティモール国立大学)になりえないのか?という新たな疑問
► もし次やるとしたら、、、産学連携の可能性のリサーチか?
► 教育問題にかかわりつつ今回のリサーチも活用可能→東ティモールの産業育成の根本につながるリサーチが可能なのではと感じる。
► 一方で産学連携をどう評価するかについてのリサーチには海外の事例の研究が必要でありバックグラウンドとして持つべき知識が膨大になる可能性も感じる。