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1.はじめに当法人製品認証センター(以下、当センターといいま
す)は、2005年よりJISマーク表示制度に基づく登録認証機関となり、現在約2,400(2019年4月末現在)の認証件数を有しています。
JIS認証を取得した製造事業者等は、関連する省令1)
等で定められた定期審査の受審や、品質管理体制を変更する際の届出書提出が義務付けられている等、登録認証機関に対する申請や変更届等の手続が数多く発生します。当センターでは、これらの手続についてクラウドコン
ピューティングを活用したシステム(GBRC JIS-Cloud
computing Application System, 略称:GJ-CAS)を構築し、2019年1月にリリースしました。ここでは開発に至った経緯、システムの概要等についてご紹介します。
2.システム開発の背景JIS認証を取得しようとする事業者等は、登録認証機関
の規定に基づき、初回申請のための書類を整え申請しなければなりません。当センターの場合は、申請書及び添付書類に加え社内規格一式の提出を求めており、その量はA4版用紙で厚さ5~ 10cmほどにもなります。認証取得後においても、3年毎に受審が義務付けられた定期審査の度に、初回と同様の書類を提出しなければなりません。また、原材料や製造工程、認証された製品の仕様、登録している品質管理責任者等、品質管理体制に変更が生じる際にも変更届を提出する必要があります(図-1参照)。申請者や認証取得者(以下、認証取得者等といいます)から提出された、これらの申請や変更届に対して、当センターはその内容を精査し、回答書発行や必要に応じて認証書の書換え、臨時審査の要否判断等を行います。
認証取得者等は、定期審査や品質管理体制の変更の度に、該当する申請書や届出書の様式を当法人のホームページからダウンロードし、必要事項の記載及び押印の上、当センターに送付いただいておりました。また、当センターも申請や届出に応じた回答書等を認証取得者等に返信することとなります。このように、JIS認証を維持するためには多くの手続が必要となり、認証取得者等からは表-1のようなご要望が当センターに寄せられておりました。
図-1 JIS認証における審査等
表-1 認証維持に必要な手続に関するご要望の事例
テーマ解説
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クラウドコンピューティングを活用したJIS認証の申請・届出システムについて
製品認証センター 認証部
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認証取得者等から寄せられた手続の省力化、迅速化等に関するご要望にお応えするため、webを活用した申請・届出システムの構築が有効と判断し、GJ-CASのリリースに至りました。
3.システムを利用するメリットGJ-CASは、認証取得者等が定める社内規格の内容等をシステム上のフォームに入力して申請し、その後は申請内容に変更が生じる際に入力内容を修正することで変更届の手続が執られる仕組みとなっています(図-2参照)。また、認証取得者等は変更届に対する回答や審査の進捗状況等も、同システムを通じて確認できます。
一部の押印書面の提出は残るものの、GJ-CASの利用により申請・届出の手続から紙媒体が大幅に削減される等、利用者は次のメリットを享受できます。①書面提出のコストを削減できる
これまで定期審査の申請に際しては、申請書及び添付書類約30頁、社内規格一式50~ 200頁を書面でご提出いただいておりましたが、添付書類は現在と同様のフォームに入力、社内規格も必要な箇所のみ抜粋して入力いただくことで、大量の紙媒体での提出は不要となり、コピーや送付に要する時間と費用を削減できます。②申請や変更届の作業がどこでもできる
認証取得者等がGJ-CASの利用申込を行うと、ご自身でログインパスワードを設定していただきます。このパスワードとインターネットに接続されたパソコンがあれば、工場や自宅、出先等からでも専用ページにアクセス可能であり、場所を問わず作業ができます。また、スマートフォンからの閲覧も可能です。③変更届が簡単に行える
品質管理体制に変更が生じる際には、該当する入力情報を変更して再申請することで、これまで書面でご提出
いただいていた変更届の手続きもGJ-CAS上で行えます。認証取得者等により入力情報が変更されると、当センターでは変更内容の妥当性について審査し、その結果をGJ-CAS上で通知します。したがって、認証取得者等は変更に対する回答を迅速に知ることができます。これは変更届に対する回答だけでなく、審査日や審査結果の判定の通知などについても同様です。④申請書や届出書の紛失リスク対策となる
これまでも「火災により社内規格が焼失してしまった」「水害によりパソコンが水没し、保存していた管理記録がダメージを受けた」等の事例について、認証取得者等から報告がありました。
GJ-CASを利用することにより、品質管理体制の主要部分は専用ページに保存されているため、万一社内規格を紛失した場合でも再構築の際の備えとなります。また、当センターからの回答書や通知書等も保存されており、自然災害等へのリスク対策として有効です。なお、GJ-CASに入力された情報は国内2箇所の専用サーバーに保存されており、災害等への対策も万全です。
4.システムの概要4. 1 基本仕様
GJ-CASの基本仕様は表-2のとおりであり、一般的なPC環境でご利用いただけます。
4. 2 入力フォームGJ-CASの主要な入力フォームについて、既に認証を取得している場合を例に紹介します。①ログイン画面
GJ-CASにアクセスすると図-3の画面が立ち上がります。認証番号、登録されたメールアドレスに加え、認証
図-2 GJ-CASの概念図
表-2 GJ-CASの基本仕様
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取得者が設定したパスワードを入力することで、システムが利用できます。
②基本情報画面
認証取得者や認証対象工場の基本情報のページであり、あらかじめ当センターに登録されている情報が示されます(図-4参照)。
③品質管理画面
GJ-CASのメインと言える画面であり、省令や当センターが定める認証基準書、個別審査手順書等の要求事項に基づいて、方針管理、教育訓練、製品管理、原材料管理、工程管理、設備管理、外注管理、苦情処理等の入力項目が設定されています。認証取得者等は、これらの項目について社内規格の該当部分を抜粋して入力することとなります。また、組織図等でフォームへの入力が困難な場合は、電子ファイル(PDFやワード、エクセル形式等)を添付することも可能です。
JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」について、製品管理に関する入力画面を図-5.1に、原材料管理に関する入力画面を図-5.2に示します。なお、これらの画面は認証対象となる製品に応じて、個別の入力項目が設定されています。
④定期の認証維持審査ステータス画面
省令等で定められる定期の認証維持審査の約6ヶ月前になると、審査受審について図-6.1の画面に入力を促すメールが認証工場に送られます。認証工場は希望する審査時期等を入力して回答します。
図-3 ログイン画面
図-4 基本情報画面の一部
図-5.1 品質管理(製品管理)画面の一部
図-5.2 品質管理(原材料管理)画面の一部
図-6.1 定期の認証維持定期審査実施確認画面
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5.おわりに当センターでは、2022年1月末(GJ-CASのリリースから3年後)までに、従来の書面による申請・届出手続をGJ-CASに移行していただくよう、認証取得者にお願いしているところであり、既に約260件(2019年4月末現在)のご利用申込をいただいております。今後、入力支援(PC操作が不慣れな方などへの入力代行)や、個別ストレージ(利用者が自由に利用できる保存領域の提供、社内規格や品質記録の保存に利用可能)等の付帯サービスを展開する予定です。皆様により快適にGJ-CAS
をご利用いただくためのシステム改善を目指しますので、ご意見・ご要望等は下記までいただければ幸いです。
お問い合わせ先
製品認証センター 認証部TEL:06-6966-5032/ E-mail:[email protected]
【参考文献】
1) 鉱工業品及びその加工技術に係る日本産業規格への適合性の認証に関する省令(令和元年7月1日施行)
定期審査を受審することになると、工場は前述の③品質管理画面や3年間の品質記録の入力を中心に作業を行い、定期審査の申請を行います。その後工場審査の実施日や、審査結果の評価判定委員会への付託予定日等について、認証工場等は図-6.2の画面で進捗状況を確認できます。また、同じ画面には申請に対する回答書や審査計画書を確認できるボタンが設定されており、申請から一定期間(原則6年)はいつでも閲覧することが可能です。
図-6.2 定期の認証維持審査進捗画面
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