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羅 ブートストラップ電流の検証
岡本正雄1),安積正史2),菊池 満2),徳田伸二2)
谷啓二2),金子修1),中島徳嘉1)
(,.灘獺灘.課))
(1990年2月13日受理〉
Observations of Bootstrap Currents
Mas300kamoto,Masafumi Azumi*,Mitsuru Kikuehiヂ
Shinji Tokuda*,Keiji Tani*,Osamu Kaneko and Noriyoshi Nakajima
(Reeeived Febmary13,1990)
Abstract
Recently it is repor総d that the neoelassieal bootstrap eurrents were observed in three big
tokamaks-TFTR,JET,an罎JT-60.Also in he賎cal systems心f ATF and CHS the existence of
㎞tstrap current is㎞iηg confirmed。 In th茸s artieleりthe veri償㎝tion of㎞tstrap currents
and assoeia総d t}teories are or6senもed.
Keywαds:
bootstrap current,、neoclassical theory,tokamak,helical system,one tum voltage,vertical
五el己quadrup・le五e14
1.序 どこかの国の民話か笑い話に,底無し沼に落ちた男が,呼べど叫べど誰も助けに来てくれない,そこで沈
みながら考え,自分の靴の紐を引っ張り,自分自身を持ち上げ沼から這い上って助かった,という話がある.
ブートストラップ電流一靴紐電流一の名前の由来はここから来ていると言われている.別の説もあり,ブー
トストラップ電流とはある種のダイナモ効果であり,複雑なダイナモ機構では磁力線が捻られて,結んだ靴
の紐の様になることがあり1),これがブートストラップ電流の名前の由来と言う人もいる・
トカマクのバナナ領域において,磁場を横切るバナナ粒子の拡散が磁力線方向に大きな電流を誘起しうる
事が,1971年BickertQn,Comor,Taylorにより予言された2)・この誘起電流はブートストラップ電流一
自発電流一と呼ばれ,同じ時期にGaleevとSagdeev3),KadomtsevとShafranov4)にょってもブートスト
禰あo襯1動3!伽ホ6カ7F銘3ズonS漉%06,八竹goツα4640ヱ.
*1〉4々αEz6sづo%五~636α〆6h Es孟oZ)1ズ5h〃z6n!,ノ切りα%ノ1!o盟zガ6Eπ6忽ソム~636σ76h∫㌶s!鉱z666,撫々o,∫ゐα名召をプ3ヱ1-01.
143
核融合研究 第63巻第3号 1990年3月
ラップ電流が論じられている.この自然に流れる電流は,平衡をとるためにプラズマ電流を駆動せねばなら
ないトカマクにとっては大変有難いものであるが,永くトカマクにおいて観測されなかった.そもそもプラ
ズマの磁場を横切る粒子拡散や熱拡散が,新古典論の予測より桁違いに大きい事実から考えると,新古典論
に基づくブートストラップ電流は存在しないのではないかと疑われた.しかし1984年にトロイダル・オクタ
ポール5》と,ステラレータ(Proto-Cleo)6)において,プローブ測定によりPfirsch-Sch1耽er電流と,
ブートストラップ電流の新古典論的電流が観測された.そして1988年,TFTRにおいてブートストラップ電
流が観測されたと報告された7),以来JET8)やJT-609)においてもブートストラップ電流が観測されるよ
うになり,特にJT-60ではβ,(ポロイダル・ベータ)を大きくすると全プラズマ電流のうち,80%程度ま
でブートストラップ電流が担っていると実験事実が解析されている.
一方,新古典論は精密化,体系化が進み,現在トカマクの新古典論は殆んど完成していると思われる(例
えば文献iO・助).上記の実験はすべて新古典論に基づく計算と比較されたものである,しかし,プラズマの
閉じ込めを支配するプラズマ輸送がトカマクでもヘリカル系でも“異常馳であるのに対して,外部から特に
駆動しない受動的電流(自発電流)が新古典論的である,少なくともそれに近いというのは非常に不思議な
事と思われる.この疑問に対しては,プラズマの揺動が作る磁場方向の電流の大きさや,新古典論に与える
揺動の影響が研究されている1鍬3’U),
ヘリカル系においても,ヘリオトロンーE二5),W7-A16),ATF17)やCHS且8)においてブートストラッ
プ電流が検証されっ㌧ある事は非常に興味深い.ヘリカル系での新古典論はまだ完成されていないが,プラ
トウ領域や1〃領域ではブートストラップ電流は一応定式化されている19’20・21).正確にブートストラップ電
流を評価するにはドリフト・運動論的方程式を直接数値計算し,又,捕捉粒子の損失等も考慮する必要があ
るが,理論的定式化の示すところによると,ペリカル系のブートストラップ電流は磁場配位に強く依存する.
特に2重極,4重極の磁場成分の効果が大きく,外部からブートストラップ電流を制御することが可能で,
トカマクと比較すると,より直接的にブートストラップ電流を検証できる可能性がある。
本稿では,ブートストラップ電流の検証とそれに関係した話題について簡単な解説を試みる。2.では理
論的背景について述べ,3.ではトカマクでのブートストラップ電流の観測について,JT-60を中心に記
述する.4.では定常トカマク炉の一例について考え,5.で,ヘリカル系のブートストラップ電流の理論
と実験を簡単に述べる.
2.理論的背景
新古典輸送理論は文献10・inに,またそれに基づいたブートストラップ電流の解説は本誌の講座「トロイ
ダルシステムにおける電流駆動」の第2章鋤で与えられている.本節では,新古典的輸送理論に基づいたブ
ートストラップ電流について,トカマクの場合を例に簡単に述べる.ヘリカル系での理論は5.で実験とと
叡4述べる..またプラズマの異常輸送とブートストラップ電流との関係については最近の研究について少し
144
解説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
紹介する.
磁場Bに平行な電流ゐは,運動量のつり合いの磁気面平均
4、〈%、E・B>;<B・F、、>+<B・▽・厚。> ・(2.1)
から決定される.こ、でF、1は粒子種4(σ=6,ゴ)の粒子に働く摩擦力,浮、は粘性ストレス・テンソ
~ ~ 』 ~
~ンレである・電場及ぴそれに伴なう密度の揺動E・や存在すると・9・<ψB>から111嘩ずる』こ
の様な“異常ブートストラップ電流》}については後述する.当面このような揺動は無いとし,新古典論の範
囲内で議論する、電子の受ける摩擦力は
<F。1β>=一π。勉レ。i<(%。ll一%i朋)β> (2』2)
であり・これは良く知ら纏古鮒オーム員Uで南る・但い聾・は礪概の磁力線に沿う速さ1レ・iは電
子一イ寿ン衝突膚波数である.しかし,電子の平均自由行程が磁力線に沿って見た磁場の変化の特性長より
長くなると(バナナ,プラトウ領域),磁場に平行な粘性力B・▽・芳。の効果が重要になる.トロイダル配
位では磁力線に沿って磁場が変化するため,トロイダル磁場の弱い領域に捕捉きれる電子(捕捉電子)が生
ずる.この捕捉電子は電流を担わないので電気伝導度が下がる。それとともに,この捕足電子と周回電子の
間の衝突により粘性力が生ずる.これは,
<B・▽・ヲ、>=3μ、<(ゐ・▽β)2>π、,(ψ) (2.3)
で表わされる(6=B/β).こ㌧で%、θはポロイダル流束と呼ばれるもので,ポロイダル磁東函数ψのみ
の関数であり,反磁性流
F ∂ 9、 ∂ 7、=一一宏(一lnρ、+一一φ) (2。4) 4、 ∂ψ T、 ∂ψ
との間に
%、ll=%、e(ψ)β+γ、 . (2.5)
の関係が存性する.式(2.4)ではFは平衝磁場Bを
B=Vφ×▽ψ+F▽φ (2.6)
と表わした時のトロイダル磁束函数でψのみの函数である.但しここでφはトロイダル角である。式(2.3)
では,6・▽βは磁力線に沿った磁場の非均一性を表わしている.係数μ、は,ドリフト方程式を解いて得ら
れU》,バナナ領域で1ま
145
核融合研究第63巻第3号 1990年3月
μ。包π,卿。(gR)2阿(2.7)
7ee
程度になる.こ、で4は安全係数,Rは主半径,τ。。は電子一電子の衝突時間,西は捕捉電子の割合であ
る.新古典的オーム則を求めるには,式(2。2),(2.3)を式(2。1)に代入し,平行電流<∫IIβ>・=
耀<(%、1,一%。、,)β>を求めれぱよいヱの時式(25)鞭って麗、。を消去すれば<∫1監β>がd診>
によるオーム電流と圧力勾配によるブートストラップ電流との和で表わされる.特にバナナ領域で,円形磁
気面の高アスペクト比トカマクに対して
κdρ1bs盤一2,44一一 塚 d7
(2.8)
を得る(7:プラズマ小半径。この式では熱束からの寄与は無視している)。また電気伝導度σNcは同じ近
似で,
σ読2πe82τei1(1一・.95π)
卿e
(2.9)
であり,捕捉粒子の割合の分だけ低下する,ブートストラップ電流は,式(2.3)で表わされる粘性力によ
るポロイダル流の減衰効果と式(2.5)で示される平衝状態で必ず存在する反磁性流束とで定性的に理解で
きる。すなわち,軸対称配位であるトカマクでは,粘性による減衰の結果,流束はトロイダル流束(これに
は粘性が働かない)のみになる傾向があるが,,平衝状態で存在する反磁性流東にはポロイダル流束の成分を
持っため,これを打消す方向に平行流%、IIが流れねばならない。これがブートストラップ電流を作ると解釈
できる.
式(2,8)より,ブートストラップ電流密度からのトロィダル電流への寄与は粗く評価して
1、,/1,㏄β,/、広 (2.10)
となる.こ㌧で1は全電流,孟はアスペクト比,βはポロイダルベータである。式(2.10)の1の傾向 p p bs
は,平衝と新古典的平行電流(Pfirsch-SchlUter電流,ブートストラップ電流)とを矛盾なく解いた数値
計算23)で定量的に示されている.従ってβが伍程度になる高βトカマク・プラズマでは,閉じ込めに必要 P P
な全電流のうちかなりの部分が自発的に流れるブートストラップ電流でまかなえることになる。一方,平衝
限界はβ館11であるので,平衝の観点からはこの事が可能となる.しかしながらトカマクでは,閉込めに必 P要な電流を全てブートストラップ電流でまかなう事は不可能である・少なくとも磁気軸近摘にブートストラ
ップ電流以外の外部電流(オーミックやRF,NBIなどで作られる“種電流為})が必要である(ブートスト
146
解 説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
ラップ電流は自発電流であるが,完全な賦ブートストラップ”ではない).
次に異常輸送とブートストラップ電流との関係について考える.トカマクの実験で良く知られているよう
に,電子の粒子拡散および熱拡散は新古典輸送理論の予言よりずっと大きく(10~100倍),この原因とし
てドリフト波不安定などの微視的スケールで起るプラズマ乱流による電場や磁場の揺動が考えられる.一方,
電気伝導度については古典的なSpitzer伝導度に合うか,新古典的伝導度に合うか議論されている事からも
分るように,その異常性は小さいと考えられる,また3.で述べるように,新古典論に基づいたオーミック
電流,ビーム駆動電流,ブートストラップ電流が,一周電圧を良く説明している事から,揺動がブートスト
ラップ電流に与える影響は少ないものと推測される.すなわち現在の大型トカマクでは,プラズマ中に発生
する電磁場の揺動は,粒子拡散や熱拡散には強い異常性をもたらすが,電気伝導度とブートストラップ電流
には(あるいはwareピンチに対しても)あまり影響を及ぼしていないと考えられている.
異常輸送とブートストラップ電流との関係についての研究を紹介する.ComorとTaylor12)は,電子の熱
伝導度の異常性を,レ。。を増大きせ,レ。iは古典的な値のま㌧にしておくことによりモデル化し,異常性の
ブートストラップ電流への影響を論じている.この時は周回電子と捕捉電子問の相互作用も同じ割合で増大
する・その蘇バナナ領域でのブートストラップ電流は修正さ礼・評藩になる(式(a8)と比
較せよ).すなわち,電子の熱伝導度が異常に大きくなるとともに,ブートストラップ電流も新古典値より
1/阿倍大きくなる。しかし,この議論は揺動電磁場のスペクトルの特徴を考慮していないかなり乱暴な
議論である,ItohとItohB)によると,静電的揺動が生ずる電流(“異常ブートストラップ電流と》)は,揺
動スペクトルの構造に強く依存する.シァー磁場中のスラブ・プラズマ中にドリフト波タイプの静電的揺動
%,φがある時,この揺動が引き起す粒子東rと平行電流ゐは
弓Σ磁》一器Σ砥(髪1 *
ブ,一一σ,麦Σ争《擁,》一一σ,ぞΣゐ,器(募プ
*
(2、11)
(2.12)
で与えられる,こ、でσ1『はSpitzerの電気伝導度,E,=一齢,φ,ω*はドリフト周波数,γはπとφの
位相差,《》はアンサンブル平均,和はモード全体にわたる.々は有理面を境に符号を変えるため,磁場 Ilのシァーと%の半径方向の勾配がノIIの大きさを決める,揺動が々llに対して偶であればノ”=0となる.一般
に揺動が作る式(2.11)のTは大きいが,揺動の作る式(2.12)のノ11は小さい。Shaing14》は,静電ポ
テンシャル揺動が飽和レベルでπ=、苧.φ叫,、で与えられるものとし(吻認は夫々ポロイダル,トロイダル
, ,モード数,ωは周波数),電子が磁場に捕捉される事によりB・▽・斧が大きくなる事と同じアナロジー e
で,粒子が0、,。,、に捕捉されると8<%B・▽σ>が大きくなる事を示し,この効果により,揺動が誘起す
る粒子東丁7a,熱束ga,平行電流∫、β(同時にwareピンチ束),電気伝導度σaはスペクトルに対して次の
147
核融合研究 第63巻第3号 1990年3月
ような依存性を持つことを明らかにした.
〆・ゲ㏄覇卿弩,i(望皿可
乙1㏄轟卿1鍔ll(衡ア
σa一、轟瞬gl(衡)
e
(2.13)
(2.14)
(2.15)
これらより,文献〔周と同じく,異常ブートストラップ電流1、1は揺動のスペクトル構造及びシアーに強く依
存することと,一定符号ではない事がわかる,またポロイダル・モード数卿は10のオーダーとみなせるので,
揺動φは粒子束と熱束に対して非常に大きい影響を与えるが,ブートストラップ電流には(wareピンチに
も)影響は小さく,電気伝導度に対しては殆んど影響がない.そして6の皿。、/T。~ε。程度で粒子拡散や , ,熱拡散は新古典値より2桁程大きくなり得るが,ブートストラップ電流の異常性は小さく,電気伝導度の異
常性は殆んどない事が示されている。文献〔14〕のこれらの結論は,現在のトカマクの実験観測の傾向と一致
している.しかしながら,実験結果のより詳細な解析,次世代の・トカマク・プラズマにおけるブートストラ
ップ電流の異常性の予測のためには,揺勤の大きさ80/T。,及ぴそれのプラズマ・パラメータヘの依存性
を明らかにする必要があり,それは理論の今後の課題である.
3.トカマクにおけるブートストラップ電流
トカマクにおけるブートストラップ電流の検証はまずTFTR(1988年)において行われた7).この実験
結果では,低プラズマ電流(1<1MA)のプラズマに高加熱入力を行うことにより高ポロイダルベータ P(β~2)状態を生成した.無衝突領域の高βプラズマでは,式(2.10)が示すように,ブートストラ
P P
ッ’プ電流が大きくなると予測される。NBIやRFに,よる電流駆動と向様に,プラズマ電流を一定値に帰還制
御しているトカマク装置では,ブートストラップ電流が流れると,変流器コイルによる誘導電流が減少し,
プラズマ表面の周回電圧が低下する.また,プラズマ圧力分布が比較的ブロードな場合には,ブートストラ
ップ電流は顕著琴ホロー分布となり,内部インダクタンスJiが減少する.この場合にはプラズマ表面の周回
1 dJi電圧がさらに減少する(7surface=yR+てμ・1,Rpπ・yRは抵雛電圧)・電子温度分布(乳(7))・
NC ∂βP ∂ NC実効電荷(Z。ff)を測定し新古典理論による電気抵抗率(η )を用いて磁場の拡散の方程式一=一η ∂渉 ∂7{毒券(卿一厨を解き・非誘導電流グ評一ム駆動電流とブートストラップ電流)を考慮し
た場合とそうでない場合のプラズマ表面電圧を計算し,実測値と比較する.この論文は,プラズマ表面電圧
の実測値はブートストラップ電流を考慮した場合のみ一致すると結論づけている。この計算評価が妥当であ
るためには,電気抵抗率ηとビーム駆動電流も新古典的である必要がある.ブートストラップ電流の存在が
148
解 説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
示唆されたIAEA京都会議時にはηは新古典値からずれているとしていたが,電子温度測定精度向上により,電気
抵抗率ηは電子の衝突度パラメータ(レ。*)が2程度まで新吉典値に一致するとの結論を得ている24)・前節
に示きれているように抵抗率ηの新古典補正もブートストラップ電流も磁力線方向の磁気粘性から生じてい
る、ことから,磁力線方向の磁気粘性が新古’典理論に従うとすれば,抵抗率ηもブートストラヅプ電流も新古
典理論に従うと考えられることに留意する必要がある.ビーム駆動電流が新古典理論の予測に一致している
ことはDITE25》の実験以来多くのトカマクで確認されているが,プラズマの回転はビーム駆動電流を大き
く変化させるので,回転速度を測定して計算に考慮する必要がある.TFTRでは分光測定で回転速度を評
価している.
‘TFTRの実験は,かなり過渡的放
電であり,中性粒子ビームをバラン
ス入射しているもののビーム駆動電
流の計算値が大きい.ビーム駆動電
流の少ない高密度プラズマでのブー
トストヲップ電流の確認実験はJ E
Tにおいて行われた8》。TFTRのデ
ータ解析に用いられた実験輸送解析
コード(TRANSP)26)を用いてT
FTR同様の解析をすることにより,
プラズマ表面電圧の実測値はマブー邑
トストラップ電流を考慮した場合の
み良く一致することが示された.ま
たポラリメータ測定により電流分布
のブロード化も示唆されている.
JT-60は大型トカマク装置の中
で唯一NBIが準垂直入射であり,
高加熱入力を行っても,ビーム駆動
電流がほとんど流れない.これを利
用してジュール加熱プラズマから高
βプラズマ(β<4毎)=3.2)まで P p
系統的にデータ分析をおこない,ブ
ートストラップ電流の確認実験を行
った9》.図3・1はJT-60において
1.0
㌧Σ
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7
図3・1。JT-60における高ブートストラップ放電波形。内部イン
ダクタンスの変化は小さく,定常に近い放電が実現さ れている。表面電圧の変化はブートストラップ電流を 含む新古典理論の予測と一致する。
21.4 一 り1.~ ~1.0國一〇.8 寺
O.6 色 亀0。4 1
0.2 ま
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765の=4》ト享
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04 _ ハ 1∈…3 2 02 -1 1ど
O
149
核融合研究第63巻第3号 1990年3月
得られた典型的な高β。放電波形である.NBI加熱が中心加熱となるように配位調整を行い1,=500kAの
プラズマに20MW以上の強力な加熱を行った。これにより反磁性測定によるβ(β(のσ))が3以上の準 P P
定常状態を1秒以上生成した,縦長非円形プラズマでは磁気解析により,内部インダクタンスとβ,。,(平
衝β)の分離が可能なことを利用し,準定常状態(ず=5秒と5.5秒)での内部インダクタンスを評価す Pると,この間の内部インダクタンスの変化は極めて小さく,プラズマ表面から吸収されたポインティングエ
ネルギー束は,抵抗性の散逸を起こしたと考えられる.≠=5~5.5秒間の平均表面電圧は60mVであり,
T。(ア),%。(7),線平均Z。ffから計算したブートストラップ電流を考慮しない場合の抵抗性電圧260mVに比
べると極めて小さい.新古典理論の予測するブートストラップ電流を考慮して抵抗性電圧を計算すると図に
示すように実験結果と良い一致を示した.この放電におけるブートストラップ電流は全プラズマ電流の約80
%に達する,図3・2は測定された温度・密度分布とACCOMEコード27)を用いて計算した磁気面平均の電
》o潔
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!一、¥ 臼Ol96實5・5s l2 E睾0聾9605.552c 99 8 ノ 、 4x帰./i瓢……1 8 7 ず lO 7 E _ \・6 ■蝋\ / 6’E く 8 ⑦ Σ 5 ロ リリ 5二 d ♂ 。 4 嵐、/¥qlψ》 4 ‘: 6 & 〈 3 くJφ・H〉 × 3 ◆ b 罵 〉 2 く」伽。㎝〉アノ 窺零認冶帆 4 2了 o’! 、 l l
2 0 000 0,25 α50 ◎」5 0 0.5 LO
r lml r/q
図3・2.高βp放電における温度・密度分布の実測値とそれを用いて自己整合性のある電流駆動コードによって 計算した磁気面平均電流分布.〈」φt。t〉;全電流密度,く」φbt〉;ブートストラップ電流密度,〈JφOH〉1
0H電流密度,〈」φbe、m〉;ビーム駆動電流分布,q(Ψ);安全保数分布.
流密度分布である.図に示すようにブートストラップ電流がプラズマ電流の大部分を占めるが中心ピークの
イオン温度分布のためブートストラップ電流もかなリピーキングしている(但し中心では0)。この電流分
布を用いて計算した内部インダクタンスも磁気解析の結果とよく一致する.JT-60において,TFTRやJET
と異なり,準定常な高βプラズマが形成された理由としては,スーパーショットやHモードと異なり,L- Pモードであるためにプラズマが比較的定常になり易く,温度も相対的に低いために抵抗性緩和時間が短かい
こと等が考えられる.実測の抵抗性電圧とブートストラップ電流を考慮しない場合の抵抗性電圧の比は全電
流に対する誘導電流(オーミック電流)の割合である.図3・3はポロイダルベータ値(β )の関数として Pオーミック電流の割合を示す.βの広い領域で実測値と,新古典理論に基づく計算値とは良く一致しており,ブー P
150
解 説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
トストラップ電流のβ依存性 P 1.2が実験的に確認された.
新古典理論をJT-60やTFTR 1
のような高βプラズマに適用す Pる際の問題点として,全蓄積エ
ネルギーの30~40%を占める
入射ビームの取り扱いがある.
TFTRの場合には熱化成分(電
子,イオン,不純物)のもつ粘
性力(viscous force)のみを
考慮に入れているが,Hirshman
-Sigmarのレビュー論文u)に
も触れられているように,高速
イオンも有限の粘性係数をもっ.
この効果は,等方的なビーム分
布関数の場合に評価きれている28).
JT-60のデータ解析において
●●
・9貞
欝ご ● 逸00.8 6飴2: ● ● り
。.6_L三
0。4
0。2
0
、
●
o
●
ρ
o●
VRζm●asurod》ハノR{NC w’0 800t3竃侮p}
VR{NCwe。。陥ργVRくNPwノ。8。o書s岬l l o 9
‘
隻鳴㌧ヤリちooQ
£ミミo
O o
■
●●
o
0
図3・3.
0.5 1 ’1.5 2 2.5 3・ 3。5
BP
新古典抵抗から予測される抵抗性電圧で規格化した実測電圧(●)はβp(ポロイダルベータ)と共に減少し,ブートスト
ラップ電流の存在を仮定した場合の抵抗性電庄の計算値(○)
と良い相関を示す.
4
はビーム成分の流すブートストラップ電流を考慮して解析しており,ビーム成分の流すブートストラップ電
流を無視した場合に比べ最大20%ブートストラップ電流が増加する.しかしながら実験結果との比較という
面では測定精度の面からいって結論を出すのは現状困難である。
このようにJT-60における実験において,抵抗性電圧の振舞いは新古典理論の予測するブートストラッ
プ電流の存在と矛盾しない。このとき,プラズマの電気抵抗に対する新古典理論補正項も,ブートストラッ
プ電流を発生させる磁場方向の粘性により生じているので電気抵抗も新古典理論に従うと考えられる.プラ
ズマの電気抵抗に関しては中型トカマク29)や初期のJT-60データに対しては新古典理論からのずれが報告
されたが,測定系の精度向上等により新古典電気抵抗を用いた予測と良い一致を示した.(プリンストンプ
ラズマ物理研究所のM.Zamstorff氏の調べによると,プラズマの電気抵抗に対する新古典補正を否定する
(Spitzer抵抗)結果を出しているのは,PLT(1984),TEXT(1987,1988),ASDEX(1988),JT-60
(1988,EPS)である.但し,現在3大トカマクにおいてはプラズマの電気抵抗に対する新古典補正の存
在は広く認められている.)図3・4は抵抗性電圧の実測値と電場一様を仮定して温度・密度分布と可視制動
輻射から求めた実効電荷Z。,,から計算した抵抗性電圧の比較である。ブートストラップ電流が少ない低β,
のジュール加熱プラズマ(図中0.7V以上のデータ)においてに新古典電気抵抗を用いた方が新古典補正をし
ない場合(Spitzer抵抗)に比べ実測の抵抗性電圧を良く説明できる。加熱プラズマ(図中0.6V以下)に
151
核融合研究 第63巻第3号 1990年3月
おいてはブートストラッ
1 プ電流を考慮しなければ
0・♀, 説明できないのは明らか
0.8 である.
o.7 ブートストラップ電流
の存在を調べる他の方法 0.6 V「 として,プラズマ電流制 (caL)o・5
(V) 御を停止し,プラズマ電 0.4 流の減衰時定数(L/R
O.3 時定数)を調べる方法が
0。2 ある,ブートストラップ
o・1 電流が存在すれば,高β P O プラズマのプラズマ電流 0 0.1 0.2 0.3 0。4 0。5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 Vr(measured〉(V) の減衰時定数はジュール
電流に対する電気抵抗か 図3・4.実測の抵抗性電圧と理論計算値(温度,密度,実効電荷は実測 使用)との比較 ら予想される値よりかな
△1ブートストラップ電流無し十Spitzer比抵抗 Oゴートストラップ電流無し+新古典比抵抗 り長くなるはずである. ●;ブートストラップ電流有り十新古典比抵抗 図3・5は,ある時刻(P彦
=4秒)からプラズマ電流を制御している空心変流器回路に流れる電流を}定値に制御し,プラズマ電流の減
衰時定数をジュール加熱プラズマとNB I加熱プラズマに対して調べたものである.両者の見掛け上の時定
数は6.8秒と27秒であり,ジュールプラズマ(ブートストラップ電流が少ない場合)には新古典抵抗率から
予測されるジュール電流の減衰時定数に一致するが,NB I加熱プラズマの場合はブートストラップ電流を
考慮しないと時定数は10秒となり,ブートストラップ電流を考慮した場合(29秒)に良い一致を示す1但し
時定数の評価には次式を用いた.
● Neoda$slcaI
o
%啄◎
{lnc.Boo璽諏ap》 I lO Nooclassical
o {noBoo曼s艦rap》 1ム Sl竃置er
●
曽8・Ol● り∂ ・
●o
へ △
◎
◎
亀。函 o◎ o △△△
o◎ム
%● ●姓飴ムムムム ムム
o び心
●
△
十ブ●,
τ一,尾(1一躯㈱〉∫鮮
P
これらのデータに関してはさらに詳細な評価を行う予定である.
ブートストラップ電流の存在は,次節に示すように,トカマク型核融合炉の定常化を現在知られている電
流駆動法の予測の範囲で可能とするので,トカマク方式核融合研究に極めて重要なインパクトをもつ,大電
流化改造後のJT-6030)においても精力的に研究を進める必要がある.
152
解説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
α6
くα4…
ら
一α2
O
3
ら 2気
1
0
IpElO701
軋 略、。軸
眠}。 εlo704 ㍉㌔ も ノリコロロロロロロコ IF \! εIO704 \幽/’El。7。1
cα、Slon璽
ε!0701
EIO704、一》。’》}”、A
v
20
lO一 隻
O 」 一
一IO
O l 2 3 45678910 t lsecl
図3・5.プラズマ電流制御停止によるプラズマ電流減衰時定数からブー
トストラップ電流の存在を調べたJT-60の実験結果.’p;プラズ
マ電流,’F;空心変流器電流,βp」一(反磁性測定によるポロイダ
ルベータ値).
E10704;ジュール加熱プラズマ,E10701;NBI加熱プラズマ E10701のβp⊥増加は主に密度上昇であり,温度はE10704とほ ぼ同等であり分布測定から求めたプラズマ抵抗の差からは時定 数の差は説明できない.
4.トカマク核融合炉の定常化に対するインパクト
ブートストラップ電流によってトカマク炉を定常化するという概念はBickerton博士によって提案されて
以来の歴史をもつ.能動的電流駆動法の研究の進展によって電流駆動効率の理論的予測値がかなり明確にな
1R雑り,核融合炉条件では,ηcD(畢 P e)は5×10二9MA/㎡MW程度以下であることが明らかになって PCDきた鋤.第3.1節に示したような実験結果をふまえると,トカマク型核融合炉の定常化への手法が明瞭に見
えてくる.即ち,プラズマ電流の過半をブートストラップ電流で流すことにより電流駆動装置の所要電力を
P .大幅に削減し動力炉に必要とされるエネルギー増倍率Q(… f腿8ioロ>20)を確保する。このためには,フ PCD一トストラップ電流㏄β。の依存性から必然的に高β,炉にならざるを得ないことになる・トカマク・プラズ
1マのβ値に対するトロヨンの法則<βt>=9菰から亀炉ではトロィダルベータ値1ま低くなる図4。1
は文献9喝32)で考察されている定常トカマク炉SSTR(Steady State Tokamak Reactor)の運転領域である.
自己点火領域を目指した次期装置が高い<β,>を実現するために高電流低β。領域で運転するのに対し,こ
153
核融合研究 第63巻第3号 1990年3月
の動力炉においては低電流高β,領域で運転
きれる.この場合,核融合出力密度を高める
ためには高アスペクト比の方が優れている.
また,エネルギー閉じ込め特性もGoldston
則のような比例則が成立する場合には高アス
ペ久ト比の方が低いプラズマ電流で自己点火
領域を達成できる・図4・2はSSTRの(の(0)・
%i(0)Ti(0)τE)平面上での軌跡で右に行く
ほど加熱パワーが増加している。図にはアス
ペクト比に対して全く逆の依存性をもつ下村
一小田島則による閉じ込め予測も示している
が,この場合もほぼ同等の閉じ込め特性を示
す.即ち,Lモードの2倍の閉じ込め時間が
炉条件で実現きれれば,プラズマ電流のかな
♂
3
2
00
SSτR
κ31.8
933.5
q2κβP《β1》‘τ
Nετ
O
FER o O ITER
210
1 2 3 4 5 6 7
くβ!》偶1
図4・1.(〈βt〉,βp)ダイアグラムとトロヨンの法則
92κ 〈βt>βP=丁(実線)・次期装置の運転
点とSSTRの運転点.SSTRは高βp運転に 特徴がある,
膠?・
E…
8 ゆ
5皇
高 IO9∈
ロ←
oト_ 1.0
9ど
O,1
Gold5量on sco髄ng
PF32.8GWPo 30.57GW
TI{01332keVTε1!h}引.14sec
Ws=O.95GJ
Olh=4{
SSTRIp2!2MARp=7mO,3讐.75m
・κ器1.8
B了=9T
Zo舘=2
五璽=1.57xloz。m-3
ω2xolds量onscollng
2xS-05coling
10
5
O監h=1
図4・2.
2 1 10 io
Tバ0〕{keV》
(ηi(0)双0)τE,η(0))ダイアグラムとGoldston Lモード則と下村一小田島
Lモード則の2倍の閉じ込め(Hモード)が得られた場合のSSTRの閉じ込め性能予測
154
解 説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
りの部分をブートストラップ電流で駆動する定常トカマク型核融合炉が成立し得ることになる.さて,ブー
トストラップ電流は,プラズマ中心では0であり,通常ホロー分布となる.このためMHD的に安定な電流
分布を実現するために,中心部分に能動的電流駆動を付加する必要がある。図4・3は,プラズマ電流の73%
、≧三一 〇.5
オ才V
(a》
00
Jbd
」璽ol
q乎
Jbl
5
4
3
2
篭
0.5
亙
0
♂
.漉,,
ABCD
(b)5
4
3
2
1
0 0.5
π
O
♂
図4・3.ACCOMEコードで計算した完全非誘導電流駆動(NBCD十Bootstrap電流〉時の電流分布.
横軸は 磁束関数でほぼ小半径に対する.(a)は」分布とσ分布であり,Jbdはビーム駆
動電流,Jbtはブートストラップ電流.(b)はNBIのビーム断面を変えることによりσ 分布が制御できることを示している. [(A)α躍2m,(B)α苫1.8m,(C)α認1.6m,(D)α=
1.4m;b/α=2.0]
をブートストラップ電流で流す一方,中心部にNBCD(中性粒子入射電流駆動)を行なうことにより単調増
加の4分布が得られる例である。図に示すようにg分布はNBCDの分布制御により制御することができる,
この方式の核融合炉は高g(安全係数)運転となるため,中心g値(g(0〉)を上げるとバルーニング安定性
も改善されるためMHD的にも極めて興味深い領域になっている.
5.ヘリカル系でのブートストラップ電流
ステラレータやヘリカトロン/トルサトロンのようなヘリカル系においては,平衡配位は外部電流のみで
作られ,トカマクの様に内部プラズマ電流を駆動する必要はない。そのためヘリカル系はしばしば“無電流}』
として特徴づけられるが,実際は,ブートストラップ電流,ビーム駆動電流(N B Iによる大河電流),RF
加熱に伴う電流,FCT電流等,’トロイダル電流が生ずる要因がある,ヘリカル系は外部コイル系の選択,
あるいはそれらによる制御により様々な配位を作ることができるが,ブートストラップ電流は磁場配位依存
性が強く,又,プラズマの密度や温度の大きさや分布にも強く依存するので,場合によっては非常に大きな
トロイダル電流が生ずる恐れがある.このためヘリカル系でのブートストラップ電流は,理論的にも実験的
にも興味が抱かれている.理論的には,1/レ領域(バナナ領域)とプラトウ領域においてブートストラップ
155
核融合研究 第63巻第3号 1990年3月
電流の表示が導かれている.1ル領域ではブートストラップ電流1、、は次の式で与えられているig).
<∫協β>一一Z95会q・{σ1(瑠・)器+σ・帯煽豊1(臥1)
こ、で,β,%,T。,T、は磁場強度,プラズマの密度,電子温度,イオン温度でyは体積を表わし,∫,,
∫cは夫々捕捉粒子,周回粒子の割合(∫,+∫。=1)である・G、、は磁場配位により決る幾何形状因子で・
α、,α,,σ3は数値因子で< >は磁気面平均を表わしている。式(5.1)に関しては,本誌の講座「ト
ロイダルシステムにおける電流駆動」の第2章において詳しく解説されているのでこ、ではくり返さない.
注意すべきことは,式(5.1)のG、、は軸対称系ではGb,=.β。/B,(.βtはトロイダル磁場,β,はポロイダ
ル磁場)となり,式(5.1)は,大アスペクト比のトカマクのバナナ極限の表示式(2,8)を与えるが,非
軸対称系では,(}b,は磁場構造に非常に強く依存することである.これは,ブートストラップ電流を作って
いるトロイダル・リップルに捕捉された粒子の運動が,いかにヘリカル・リップルに妨げられるかという事
と深く関係している.Gb.は非軸対称系においては一般に数値計算をしなければ求まらない.文献〔33〕では,
ヘリオトロン/トルサトロン型の大型ヘリカル装置(L=2,1~蟹4m,.β鯉4T)にっいて外部軸対称コイル系に
よるポロイダル場の制御がGb、へ与える影響を数値計算により研究した,こ、では主として垂直磁場と4重
極磁場の影響を調べている。垂直磁場β,は,プラズマを水平方向に移動させ,4重極場βQは,プラズマ断面
の楕円度を変化させる。この論文の結果では,β,の制御によリプラズマをトーラス外側へ少し移動させると
G。、は減少し,内側へ移動させるとG。,は増加する,βQの制御の効果は極めて顕著で,楕円度を小さくして
トーラス方向に平均したプラズマのポロイダル断面が横長になるとG、,は大きくなり,楕円度を大きくして
縦長にするとG、、は殆んどゼロになる,G、,は平均小半径ρの函数であり,%。(ρ),T。(ρ),Ti(ρ)が与えられ
ひると式(5.1)から就,β>が計算鵡全電流・、、一∫プ咄<・、、β>β/くβ2>が求まる(ら
はプラズマの平均半径).プラズマの移動を磁気軸シフトδ、、i、で表わす。外部ポロイダル・コイルの作る
βvとヘリカル・コイルの作る.βvとが丁度打消す時δ、.i、=・0とするとδ、.i、/σ,雲0.1からδ、、i、/σ。包
一〇.1までシフトさせると,論文〔33焚用いた%。,T。,Tiの例では1b,は1.5倍から2倍程度増加する,
またこの論文の例ではβQの制御により1、,が約500kAから数kAまで変化する,文献〔20〕ではATFについ
てG、,のポロイダル場への依存性を調べ,文献〔33〕と同様の傾向を示している。この論文では,2本のヘリカ
ル・コイルに流す電流の大きさの比を変えることによりブートストラップ電流を非常に小さくできることも
示している.
プラトウ領域でのブートストラップ電流は次の式で与えられる2n.
.-
<へβ>一一崎{ウ1(卿器+δ・π霊+δ・船} (5.2)
156
解説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
こ㌧で砺。は電子の熱速度,レ。iは電子一イオン衝突,〃1、,ウ2,63は数値因子である.∬b、は磁場構造
で決まる複雑な因子である.文献33)では様々な配位に対して∬、、を数値計算し,その結果,∬。、は垂直磁
場β,や4重極磁場βQに対する依存性は弱く・トロィダルピッチ数Mに強く依存することが判った・これは
1ル領域ではβ,やβQに対する依存性が強いのに対し,M依存性はあまり強くないのと対照的である。数
値計算の結果からE はモデル場に対する表示 bs
馬一2π2&{・1{L+ (尭ア1・l/(5.3)
で充分近似できることが判った.こ\でR5は大半径,ρは平均小半径,オは回転変換,ε,とε、は夫々ト
ロイダル・リップル,ヘリカル・リップルの大きさを表す.もしεh=0であると式(5.3)はトカマクの『
プラトウ領域での結果と一致し,ブートストラップ電流は小さい値に留まる.しかしε、はρとともに大き
くなり,プラズマの周辺で式(5.3)のイに比例する第2項が,㌶に比例する第1項より大きくなると
かなり大きなブートストラップ電流が流れ,しかもこの時E、、は符号を変え,負の方向(ポロイダル磁場を
弱める方向)に流れる可能性がある.+ロィダル・、ピッチ数Mが大きくなるとεも大きぐなり,式(・5.2),又は h(5.3)に従うと大きな負のブートストラップ電流が流れる事になる6文献33)一では,大型ヘリカル装置で
は・バラボリック分布のプラトウ領域にあるプラズマ中に1し4=10で1b、=一30kA・M二14で1b,上}2¢O
kAのブートストラップ電流が流れると計算している.
㌔式(5.1)と式(5.2)は夫々バ・ナナ極限とプラト.ウ極限における表示であり,・トカマク「の場合の様に両
領域を結ぶ式は無い.任意の衝突周波数領域においてブートストラップ電流を計算するには,DKESコード
34・3φを用いて直接ドリフト運動論方程式を数値計算する必要がある.
実験面においては,1984年に,ヘリオトロンE、で,ブ、一トストラップ電流が観測されたと報告されている
主5).最近になって米国のAFTや核融合科学研究所のCHSが新しいヘリカル装置1として稼動を始めたが,こ
れらの装置においてもブートストララプ電流が検証さ「れつ㌧あるように思われる・ATF17)ではECHプラ
ズマに対して,外部ポロイダル・コイル系を制御して,磁気軸をシフトさせたり,4重極場を変えプラズマ
断面形状を変化させたりして,トロイダル電流1,の測定を行った。外部ポロイダル・コイル系の制御によリプラズマ
のパラメータは変わるが,ECHのノマワーpECH-2・・贈で,およ鉱瓠×1・亘8m-3溜,・≧・kL
T,(0)篇400~600eV,1,=1~2kAである・一周電圧は0・・003V以下でオーミック電流は無視できる・
また,ECHはBに垂直に入射され,測定されたトロィダル電流1は%。とともに大きくなり,またヘリカ oル・コィル電流1 を逆にすると1も逆転するので,ECHによる電流は無く,1はブートストラップ電 HF p P
流を直接測定していると思われる.プラズマは周辺と中心近傍を除いてほq/ン領域にある,プラズマをよ
り縦長にしていくと1,は小さくなりδ、.i,盤0の時はプラズマに楕円度を充分つけることによりほ寸0にする
こ・とができる・δ、、匪、=一2cmの時は・δ、.、、皇0に比べ約1kA程1,は大きく・またこの場合もプラズマ断
157
核融合研究・第63巻第3号 1990年3月
面をより縦長にすると1,は小さくなる。1,、の値は理論値とお、むね一致する.ブートストラップ電流1b,
の他の依存性,1、,㏄翫,1b。㏄.β一五も確かめられている。
CHS18)においてもECHプラズマで1kA程度のプラズマ電流が観測されており,4重極成分への依存
性が見られている.たずしその傾向はATFとは異なり,最適な4重極成分値がある結果になっている.C
HSではプラズマが完全に無衝突領域に入っておらず,また理論的には,プラトウからバナナヘの遷移はま
だ扱えないので今後の検討が必要である.CHSでは入射角可変のNB Iを1台持っているが,今までのと
ころ基本的に接線入射を行っているためビーム駆動電流(大河電流)が(大半径が小さな事もあり)大きい。
実際低密度領域(死盤2×1019m-3)では15kAにも及ぶ。しかし高密度領域(万。想7×10五9m-3),又
は低磁場においてはビームを入射しているにも抱らず,トロィダル電流はビームと逆方向に流れる事が観測
された.同様な電流の逆転現象は,ビーム入射角を接線方向から垂直方向へ変化させていくときにも見られ
た.この原因は,ブートストラップ電流が逆方向に流れるためと思われる.理論的にも式(5.3)で示した
ように,プラトウ領域のプラズマはヘリカル・リップルの大きな配位ではブートストラップ電流は反対方向
(B を打ち消す方向)に流れ得る. P 以上のように,ヘリカル装置ではブートストラップ電流が直接的に観測されており,実験と理論との比較
が今後精力的に進められていくものと思われる.
6.終りに トカマクとヘリカル系におけるブートストラップ電流の検証について概観した.ブートストラップ電流が
流れるという事は次の様な意味を持つ.
i)トカマク・プラズマ中で,ブートストラップ電流が全電流に占める割合が大きくなると,電流駆動の
ための循還エネルギーを大巾に節約出来る.この為,ITERでは,30%程度のブートストラップ電流を期
待している.一方,ブートストラップ電流をより積極的に採用して,トカマク炉の最適化をはかるアプロー
チもある。4.で述べた高β,定常トカマク炉の概念は,その一例である。この様に,ブートストラップ電流
の検証は,トカマク炉設計概念の選択子を広げ,今後のトカマク実験の方向にも大きな影響を与えると思わ
れる.
li)ヘリカル系にとってはブートストラップ電流は必ずしも好ましいものではない.もちろんヘリカル系
でどの程度までトロイダル電流が流れても良いかという事は充分研究せねばならないが,ヘリカル系が大型
化され,高温・高密度のプラズマが得られる様になると,配位によっては回転変換を完全に変えてしまう程
のブートストラップ電流が流れ得る。もちろんダイポール場や4重極場の制御により小さくできるが,許さ
れる程度のブートストラップ電流を生ずる配位が,MHD安定性やプラズマ輸送にとって好ましいものかど
うか,理論・実験両面からの研究が必要である・
iii)理論的には,ブートストラップ電流の検証は非常に興味深いものである。プラズマ輸送現象の中で,
158
解説 ブートストラップ電流の検証 岡本,安積他
粒子拡散や熱拡散は大きな異常性を示すのに,ブートストラップ電流や電気伝導度は新古典的に振舞ってい
る様に見える.新古典的ブートストラップ電流が存在するならW加eピンチも存在する事になる,揺動が引
き起す拡散や電流についての研究は2.で少し紹介したが,将来,より高温プラズマになった時ブートスト
ラップ電流に与える揺動の効果はどの様なものになるか,運動量閉じ込めとどのような関係にあるか,等多
くの理論的課題がある.
ヘリカル系ではブートストラップ電流は,トカマクより直接的に(例えば垂直入射のNB I加熱ではブー
トストラップ電流のみがトロイダル電流になる)測定し易すく,又,外部からの制御が容易であるので,ブ
ートストラップ電流について,理論・実験両面からのより定量的な比較が可能であると思われる.今後のブ
ートストラップ電流の研究は,トカマクとヘリカル系の相補的研究の一つの課題となって行くと思われる。
参 考 文 献
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