17
1 ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望 平成16年3月25日 日本電気株式会社

ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

1

ユビキタスセンサーネットワークの技術動向と将来展望

平成16年3月25日

日本電気株式会社

Page 2: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

2

センサ-ネットワークは、多彩なソリューションを産出す、多様な要素技術の塊であるので、均質の技術動向ではない。

本資料では、センサ-ネットワークの現在の技術動向を簡単に整理した上で、将来ターゲットを明確化して、いくつかの重要と考えているレイヤの技術について、将来実現されるであろう技術を含めて、技術の方向性を明確化する。

目次

1.センサ-ネットワークの現在の技術動向2.重要技術の紹介(0)センサーネットワークのターゲット(1)アドホック・マルチホップネットワーク技術(2)省電力技術(3)ソリューション創出基盤技術3.まとめ

Page 3: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

3

1.センサ-ネットワークの現在の技術動向

Page 4: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

4

センサーネットの多彩なソリューション

大量のデータ

屋内画像センシング

低速環境データセンシング(河川、森林、大気、農業)

屋外画像センシング

迷子・老人対策

車(衝突防止、空気圧) 検針

体内物流

位置情報

防犯・防災

ビル・工場管理

共通なことは・低電力化・自律無設定化・日常化・(高速化)

広いところで使用する

小さいところで使用する

電源が必要

電池や自然エネルギーで長期間動作

インターネットを使用する

光ネットワークを使用する

Page 5: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

5

センサ-ネットワークを実現する多様な技術要素

センサ技術

バックエンド技術・IT利活用サーバ・コンテキスト管理技術・バックエンドインテリジェンス(顔認識など)

自然エネルギーからの電力抽出技術

人による設定が不要な自律・自己組織化技術

デバイス技術(1chipユビキタスデバイス)

無線方式・回路・アドホック・マルチホップ方式・省電力無線技術

コンテキスト処理技術(画像処理,セキュリティ,XML,データマイニング)(センサーとコンテキストで価値を産み出す技術)

センサ共通インタフェース技術

電波混信対応技術

コンテキストルーチング網

センサノード技術千差万別プラットフォーム

IT利活用ソリューション

新ソリューション創出のための技術トライアルなど

Page 6: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

6

国内の状況・微弱無線+アドホック通信で研究試作ベースシステム・特定小電力無線を1ホップで使った実用的なシステム・無線LANベースのアドホックネットワークシステム・IPv6センサネットワークのビル管理などへの応用・学会でのアドホック通信方式などについての研究ペーパーなどがある。

海外の状況・世界的には、UCバークレー(Smart Dust)が、省電力センサネット技術の先頭を走ってきた・IEEEでは、センサネット的な無線方式も検討されている・Ember, Millennial Net, Crossbowなどの小さい会社がある・世界的にもセンサネットは最近、話題となってきた段階である

国内・海外の現在の動向

Page 7: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

7

センサネットワークに関連する現在の標準化動向

PAN(Personal Area Network)の規格を審議中。UWB技術を用いた、近距離での100Mbps以上の無線伝送が検討されている。1ピコネットあたり256台を収容。4ピコネットが可能。親(Parent)と多数のChild(子)との通信を想定。~5m程度を想定。2004年中に標準化される可能性あり。

IEEE802.15.TG3a

~10m。~720Kbps。PCや携帯の無線接続向け。アプリケーションからの起動で時間がかかる。2.4GHz帯。

IEEE802.15.1Bluetooth

STIM(Smart Transducer Interface Module)をインターネットに接続するために、NCAP(Network Capable Processor)に接続するためのインタフェース規定。STIMの電子データシート(TEDS:Transducer Electronic Data Sheet)の形式が定められている。STIMは最大255個のセンサーやアクチュエータを接続する。

IEEE1451インタフェースとデータ形式

アドホック

プロトコル

IETFでアドホックネットワークの方式が検討され、4方式がRFC標準になろうとしている。携帯電話間、車々間通信のような移動する物の間のアドホックな通信だけでなく、移動頻度が少ないセンサネットワーク向きの方式も存在する。

MANET(Mobile Ad hoc

NETwork)

次世代無線LAN。11gの100Mbps級の技術。2006年標準化目標。複数アンテナで並列伝送を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術とOFDMの組み合わせ技術が検討されている。

IEEE802.11n

~100m。250kbps。3年近いバッテリー寿命も可能な低電力仕様(RFD:ReducedFunction Device)。電池動作向け。センサーネットなど低頻度通信向け。2.4Gbps帯はグローバルに使用可能。セキュリティ機能なども整備。

IEEE802.15.4Zigbee

特定小電力無線。テレメータ・テレコントロール用。日本では429MHz帯。~数百m。10mW無線出力。~10kbps。低速センサネット用。距離は十分だが、通信速度が遅い。

内容

ARIB-STD-T67

標準名

無線

分野

Page 8: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

8

2.重要技術の紹介

(0)センサネットワークの到達点

(1)アドホック・マルチホップネットワーク技術

(2)省電力技術

(3)ソリューション創出基盤技術

Page 9: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

9

(0)センサーネットワークの到達点

・ユビキタス社会において、IT利活用のための道具となり、小さくて、状況を人に教え、人間の可能性を高め、かつ、安心・安全の社会を創るもの

・長期的には、「人」の数よりも多くなるが、人手をかけずに管理される自立型のネット。(必然的に、無線、低電力)

大型コンピュータ通信システム

PC 携帯 RFIDソリューションセンサネットワークソリューション

産業規模

時代

半導体の進歩⇒ダウンサイジング

貴重品 人の数の商品 物の数(より日常的なものへ)

大型システム 企業システム コンシューマ

ネットワークロボット

底流:

前提とする仮説

Page 10: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

10

状況を理解してセンサーやアクチュエータが動作し、人間の能力を引き出すネットワークロボットとしての極めて高い価値を発揮

データマイニング技術の適用

多様なセンサーのグループ化やコンテキストを簡単、安全に流通する仕掛けの導入

小容量データを低速転送コンテキスト処理

100Mbps級(高速)で短時間で通信して低電力を実現

短伝送距離・高密度配置対応へ

0.1mW/ノード

2.4GHz、5GHz帯を用いたMbps級の高速化0.3mW/ノード

特定小電力無線(低速)

パケットベース間欠受信待ちによる低電力

比較的長距離伝送

3mW/ノード

無線通信技術

ソフト無線技術などにより一層高度化

特定ノードを選択的にWake-Upさせる技術が普及干渉対策の無線方式への導入

CSMA方式

複数ch

電波混信対策

アンテナと一体化したActiveデバイスへ

無線回路がIPコア化し、1チップデバイスが出現

個別部品による無線モジュール

デバイス技術

ウェアラブルコンピュータが外界からエネルギーを抽出して動作

日の当たらないところでも電源線のないネットワークが出回り始める

太陽電池が実用化

他は、基礎研究レベル

自然エネルギーからの電力抽出

全ての設定が不要な自己組織化型ネットワーク

10年後の技術レベル

代替ルート、プラグ&プレイが自由な自律ネットワーク

3年後の技術レベル

アドホックプロトコルによるノード毎のルーテング設定が不要なネットワーク

今日技術レベル

人による設定が不要な自律網管理技術

ターゲットから見たセンサネットワーク技術の発展シナリオ

Page 11: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

11

(1)アドホック・マルチホップネットワーク技術

センサー/通信機

基地局

センサー/通信機

センサー/通信機

センサー/通信機

センサー/通信機

センサー/通信機

データ収集

アドホック制御情報

データ収集装置・アドホック・マルチホップ網のデータ転送経路構築指示・データ収集、緊急指示、緊急アラーム

<1 km

<1 km

アドホック・マルチホップ通信の特徴

・個々の端末は近隣の中継機までデータを送ればよく、トータルの通信電力を小さくできる(距離の2~4乗で電波は減衰)・無設定でデータ転送経路を構築するために、高度なネットワーク技術が必要・課題:省電力なマルチホップ通信技術

⇒間欠受信待ち技術など

数十 km数十 km

Page 12: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

12

アドホック・マルチホップ通信の自律分散性

データ収集ゲートウェイ

低電力自律分散ノード

Smart Dust等の自律分散方式。低電力ノードが、完全な自律分散モードで通信するので、1種類のノードで、設置するだけで動作する。人間が配置を管理しない課題各ノードはいつ隣からパケットが来ても受けられる必要あり。このための省電力な無線方式が課題

アドホック・マルチホップ方式

Full function deviceReduced function device

IEEE802.15.4等では、Reduced function deviceは低消費電力であるがマルチホップはできないので、ノードが2種類になり置局設計が必要 人間が配置を管理出来る近未来のセンサネットでは有効

IEEE802.15.4方式

Page 13: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

13

・ルーチングテーブルを設定しなくても、隣接ノードを見つけて、自動的にデータ収集経路が出来上がる

センサネットワークにおけるアドホックネットワークへの要求条件

・故障や設置環境の電波伝搬状態の変化があっても、ロバスト性を発揮して、迂回してデータ収集を行う

・初期の低速センサネットワークでは、出来るだけ電力を使わずに、データ収集経路を作り上げる(簡易なツリー状の経路構築)高速のセンサネットワークでは、ルータ以上に移動性も考慮して、経路テーブルを書き換えることが必要

・緊急リアルタイム通信を可能とする場合、無線パニックを避ける

・設置後、無設定で簡単に使える。動かしても使える。

さらに、(2)の省電力技術を組み合わせたアドホック・マルチホップ通信の研究開発の余地は大きい

Page 14: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

14

(2)省電力技術-通信システムにおける省電力化の考え方と手法-

取組むべき要素技術取組むべき要素技術

システム・方式による省電力ソフトウェアによる省電力電源・実装による省電力LSI・FPGA回路設計による省電力デバイス選択による省電力

etc.

省電力化のための基本的考え省電力化のための基本的考え

・トップダウンであらゆる技術を適用

・トラヒックがない時間は処理を停止またはその時間を利用し処理速度を制御

・使っていないCHは処理を停止 etc.

入力トラヒック NW製品装置 出力トラヒック

処理

その結果の一例

300W

50W

負荷 100%0%

①ピーク時電力を下げる

②処理がなければ電力を消費しない

常時接続でもトラヒックには隙間があるので省電力化可能

・通信する時だけ電力を消費する装置を実現・その結果、トラヒック応じて電力が変化する装置となるはず

消費電力

Page 15: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

15

(2)省電力技術 -低頻度マルチホップ通信への省電力技術適用-

・前ページの考え方を、低頻度通信を基本とするセンサネットワークに適用すると、通常の送受信時の電力と比較して、1/10~1/1000の低電力化が可能である。

・低電力な待ち受け回路は、携帯電話などで使用しているタイプの技術を展開できる。

・様々な工夫により、将来的にCPU電力よりも無線部分の電力が課題となるが、平均消費電力が0.1mW級で、電池で数年間動作させる回路も実現可能と想定される。

・消費電力は、無線の伝送速度との関係は薄いため、将来、高速のセンサーネットワークを省電力化することは可能である。(但し、無線が高速なほど伝送距離は短くなる)

・このような考察から、今後、高速化しつつも低電力なアドホック・マルチホップ無線方式の開発が重要であると考えている。

Page 16: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

16

(3)ソリューション創出基盤技術~安全、安心、便利を与えるユビキタス社会構築を目指して~

ユビキタスセンサユビキタスセンサ

アプリケーション

リモート監視 遠隔検針 資産管理 物流管理

低電力通信

コンテキスト最適処理/流通技術コンテキスト最適処理/流通技術

コンテキスト矛盾回避/信憑性評価技術コンテキスト矛盾回避/信憑性評価技術

センサグループ化,センサ間協調技術センサグループ化,センサ間協調技術

ユビキタス・センサ・ネットワーク<ソリューション>•環境監視/工事現場監視/ガス検針など有線インフラ設営が困難な環境におけるリモート監視ソリューション•RFIDでは識別困難な小型商品を大量に扱う商品物流管理/資産管理ソリューション•警察,消防,病院,駅など公共施設を緻密に監視する防犯/防災//救急ソリューション•ホームセキュリティやビル管理サービスソリューション•家電や自動車をユビキタス・センサ・ネットワークに接続.市民が享受できるユビキタス・コンピューティング市場

<目的>街全体の安全、安心、便利を支える、センサ・ネットワーク構築技術の開発1.人と人/人と物を正確に結びつけるユビキタスサービスの普及: 交通管理,物流管理,投薬管理など,人々に安全,安心,便利を与えるユビキタス・サービスの普及を促し,ユビキタス・ネットワークの社会インフラ化を加速する。2.人々の不安を無くすIT社会の実現: 携帯機器や街中のユビキタス機器,及びこれらを所持/管理する人々により,街全体が見守られているという安心感を与え,犯罪のない社会構築を支援する.

<課題と研究内容>(1)人と人を結ぶため,人/物/場所のコンテキストの最適処理/流通技術(2)コンテキストの矛盾回避,信憑性評価技術,コンテキスト表現の標準化(3)センサグループ化,センサ間協調,情報同期,高速マッチング技術

Page 17: ユビキタスセンサーネットワーク の技術動向と将来展望€¦ · ・(高速化) 広いところ で使用する ... 自律・自己組織化技術 デバイス技術

17

3.まとめ

・ユビキタスセンサーネットワークについて、主にネットワーク関係の技術動向について整理しました。・電力抽出~無線~アドホック~コンテキスト処理~自己組織化技術まで多様な技術が、今世界中で検討されています。

・私たちが一歩抜きん出るための技術として、省電力なアドホック・マルチホップ無線技術と、多彩なソリューションを創出するための技術について紹介させていただきました。