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はじめに ティップネス太田店は,群馬県太田市内のイオ ン太田ショッピングセンターの一角に,豊富なプ ログラムと最新設備の整った郊外型フィットネス クラブとして計画され,2007年1月にオープンを 迎えた。ここでは,本施設の建築および設備計画 の概要について紹介する。 1.建築概要 建築名称 ティップネス太田店 所在地 群馬県太田市下小林町534-8ほか 設計監理 ㈱梓設計 施  工 清水建設㈱ [空調衛生]㈱ヤマト [電  気]㈱関電工 敷地面積 10,085.67m 2 建築面積 1,595.49m 2 延床面積 3,014.59m 2 構  造 鉄骨造 階  数 地上2階,地下1階 用  途 フィットネスクラブ(スポーツ練習場) 工  期 2006年5月~2006年12月 2.建築計画 写真-1写真-2に建物外観を示す。 外観は,透明感と清潔感を持ちながら,個性的 な色彩計画を施し,ショッピングセンターの敷地 の中でも存在感のある建物表情をもたせている。 また,地域特有の「赤城おろし」と呼ばれる季 節風にも配慮した配置とした。 エントランス入口は,クラブとスクール(キッ 12 建築設備士・2007・7 フィットネスクラブ ティップネス太田店 Fitness Club TIPNESS OTA FLASH 空調 衛生 電気 AKIRA YOKOZAWA (㈱梓設計 環境部) 阿 部 克 史 KATSUSHI ABE (㈱梓設計 環境部 副主幹) 写真-1 外観写真

フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

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Page 1: フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

はじめに

ティップネス太田店は,群馬県太田市内のイオ

ン太田ショッピングセンターの一角に,豊富なプ

ログラムと最新設備の整った郊外型フィットネス

クラブとして計画され,2007年1月にオープンを

迎えた。ここでは,本施設の建築および設備計画

の概要について紹介する。

1.建築概要

建築名称 ティップネス太田店

所 在 地 群馬県太田市下小林町534-8ほか

設計監理 ㈱梓設計

施  工 清水建設㈱

[空調衛生]㈱ヤマト

[電  気]㈱関電工

敷地面積 10,085.67m2

建築面積 1,595.49m2

延床面積 3,014.59m2

構  造 鉄骨造

階  数 地上2階,地下1階

用  途 フィットネスクラブ(スポーツ練習場)

工  期 2006年5月~2006年12月

2.建築計画

写真-1,写真-2に建物外観を示す。

外観は,透明感と清潔感を持ちながら,個性的

な色彩計画を施し,ショッピングセンターの敷地

の中でも存在感のある建物表情をもたせている。

また,地域特有の「赤城おろし」と呼ばれる季

節風にも配慮した配置とした。

エントランス入口は,クラブとスクール(キッ

12 建築設備士・2007・7

フィットネスクラブティップネス太田店Fitness Club TIPNESS OTA

② FLASH 空調 衛生 電気

横 澤 晃AKIRA YOKOZAWA(㈱梓設計環境部)

阿 部 克 史KATSUSHI ABE

(㈱梓設計環境部副主幹)

写真-1 外観写真

Page 2: フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

ズ)とを分け,それぞれの雰囲気を保ちながらス

ペースレイアウトをした。

室内は,明るく機能的なふたつのスタジオとジ

ムエリア,そしてプールエリアは利便性に配慮し

たクラブプールとスクールプールの構成となって

いる。さらに,リラクゼーション機能を持ったワ

ールプール・マッサージプール・採暖室を併設し

ている。スクールプールの観覧席は,全面ガラス

張りとし,キッズスクールの見学に配慮し落ち着

いた雰囲気で保護者が観覧できるスペースとした。

そのほかにも,清潔感と機能性を備えたロッカ

ールームとシャワー・風呂,サウナやクーリング

ルーム・リラクゼーションルームといった諸室を

持つ(写真-3~写真-6,写真-9~写真-14)。

2007・7・建築設備士  13

写真-2 外観写真

マッサージ プール

ワール プール

マッサージ プール

ワール プール

クラブプール

スクールプール

図-1 1階平面図

スタジオA スタジオB

マシンジム

図-2 2階平面図

屋上設備スペース

図-3 R階平面図

写真-3 スタジオ

写真-4 マシンジム

Page 3: フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

3.設備計画のコンセプト

郊外型フィットネスクラブの設備計画をするに

あたり,利用会員の快適性・利便性を満たしなが

ら,豊富なプログラムメニューへの個別対応と省

エネルギー性,快適性,そして二酸化炭素排出量

低減など社会ニーズである環境に配慮した,一体

感のあるコンパクトかつ高機能な施設づくりとし

た。

4.空気調和設備計画

4.1 熱源設備

熱源は,敷地条件やいわゆる化石燃料を使用し

ない環境負荷削減,安定したインフラ供給を総合

的に判断した上で,全館オール電化システムを採

用した。これにより,すべての設備を自動運転す

ることができ,安全性と省力化を図った。また,

オール電化による割安な電力料金メニューを適用

して,システム全体でランニングコストの低減を

図った。空調熱源は空冷ヒートポンプチラーを採

用した。特にプール系統は,夜間はプールの昇温

として,昼間はプール室の空調(暖房)用として

利用するシステムとしている(写真-7,図-6)。

4.2 空調設備

プール系統は空調機による単一ダクト方式とし,

そのほかスタジオ・マシンジムおよびホール事務

室などは,各室毎に制御可能な空冷ヒートポンプ

パッケージの個別空調方式とした。

また,一部空調には,夜間蓄熱方式を採用して

ランニングコストの低減を図った(図-4)。

4.3 換気設備

プール系統の換気設備は,蒸発塩素による腐食

に配慮し,耐塩素仕様機器や塩ビライニングダク

トを採用した。また,外気冷房可能な第1種換気

方式として省エネ対策を図った。スタジオ・マシ

ンジムおよびホール・事務室などは,全熱交換器

による第1種換気とし,各室ごとに省エネ対策を

図った。便所や倉庫などは,第3種換気とした。

4.4 自動制御設備

1階事務室に防災盤と並列して,壁掛型自動制

御盤を設置し,館内の監視・管理をすべて事務室

に一元化し,省力化を図った。

14 建築設備士・2007・7

写真-5 プール(クラブ・スクール)

写真-6 マッサージプール

写真-7 屋上空調用熱源機器

図-4 空調システム概念図

図-5 給湯システム概念図

Page 4: フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

5.衛生設備計画

5.1 給水設備

給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

で引き込み,受水槽+加圧給水ポンプ方式にて各

所へ給水した。

5.2 給湯設備

給湯システムは,夜間の安価な電力料金を利用

した給湯用空冷ヒートポンプチラー+蓄熱方式と

した。スポーツクラブは,朝から夜遅くまで利用

される施設形態であり,利用時間帯と蓄熱時間帯

との調整・設定が重要となってくる。したがって,

年間利用の変動傾向や季節ごとの需要を検討して,

常に効率的に給湯を利用できる貯湯量(蓄熱槽容

量)を設定した(図-5,写真-8)。

5.3 排水設備

屋内排水は,汚水系統・雑排水系統およびプー

ル系統を分流方式とし,屋外にて合流方式とした。

フィットネスクラブは水(湯)利用の多い施設で

あり,排水量の平準化を図るため中継ポンプ槽を

設け,下水道インフラの負荷軽減に配慮した。放

流先は,ショッピングセンター敷地内の排水系統

とした。

5.4 衛生器具設備

衛生器具は,会員種別の異なる一般用とキッズ

用(プール)の利用形態(高さなど)に合わせた

器具選定を行い幅広い利用者に対応した。また,

器具には節水器具を積極的に採用した(写真-10)。

5.5 プールろ過設備

プールは,クラブプール(3コース)とスクー

ルプール(4コース)の構成となっている。さら

に,リラクゼーション施設としてワールプールと

マッサージプールを併設している。

すべてのろ過方式は,砂ろ過+滅菌方式とし,

かつ十分な循環回数を確保しながら,常に透明度

のある水質を維持する計画とした。

2007・7・建築設備士  15

図-6 プール系統システム概念図

写真-8 屋外給湯用熱源機器

写真-9 ロッカー室

写真-10 トイレ

写真-11 浴室

Page 5: フィットネスクラブティップネス太田店 - JABMEEjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2007/2007-07/2007-7-12.pdf5.衛生設備計画 5.1 給水設備 給水方式は,市水を水源とし給水本管より50φ

6.電気設備計画

6.1 受変電設備

東京電力より3相3線6.6kV1回線にて引込み

を行い,施設の屋上に計画した屋外型受変電設備

より各負荷へ供給を行った。

・配電盤形式 屋外キュービクル型

・変圧器   油入式トップランナー型

電灯用:300kVA

動力用:1,000kVA

・コンデンサ 油入:6.6kV 160kvar×2

自動力率調整装置付

6.2 照明設備

スタジオ,ジムなどフィットネス部分は,清涼

感と活発的な空間演出を計るため,昼光色を採用

し,エントランス,観覧席などフィットネス以外

の部分は,落ち着いた雰囲気を演出する電球色を

採用した。

スタジオ・ジムは,ルーバ付スクエア型照明器

具を採用し,照度均整度が高く,グレアを考慮し

た照明計画としている。プールは,天井に向けて

投光器を設置することでグレアを低減した。ワー

ルプール・マッサージプールには,水中照明を設

置し,空間演出を行った(写真-6)。

パウダーコーナー,トイレおよび廊下は,間接

照明を行い適正な照度と運動後のリラックスでき

る柔らかな雰囲気を演出した(写真-13,写真-

14)。

6.3 情報通信設備

有線放送システムにより,雰囲気をBGMによ

って演出している。またスタジオには配信システ

ムに加え,レッスンプログラムに応じた放送が行

えるようにローカル放送設備を採用した。

6.4 防災設備

非常照明,誘導灯,非常放送及び自動火災報知

器は法規に基づいた防災システムのほか,保安用

としてITVカメラシステムを設けた。これら監視

システムは事務室にて一元管理が行える計画とし

た。

おわりに

最後に,本施設の計画・設計・建設にあたり,

㈱ティップネス,工事関係者他関係各位の皆様に

は,御指導・助言ならびにご協力いただきました

ことを厚く感謝し,御礼申し上げます。

(平成19年4月27日 原稿受理)

16 建築設備士・2007・7

写真-12 エントランスロビー カウンター写真-13 観覧席

写真-14 パウダーコーナー