使使調調沿調使使RM Search 稿沿図表1 NIMSの5要素とICSの関係 ICS 多組織間 連携システム 広報 事前準備 通信情報管理 資源管理 指揮管理 継続的維持管理 図表2 モジュラー組織の拡張 図表3 統制範囲(SOC)の維持 最少 最適 最多 SOCは3~7に維持する 1 2 3 一般社団法人レジリエンス協会代表理事 一般財団法人リスクマネジメント協議会評議員 黄野 吉博 一般社団法人レジリエンス協会 白澤 健志 インシデント・コマンド・システム (ICS): 入門編(ICS100)概要 34 35 2014 January

インシデント・コマンド・システム(ICS):...ICSの概要 コースの概要 2 ICSの特徴と原則 一般社団法人レジリエンス協会代表理事 一般財団法人リスクマネジメント協議会評議員

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Page 1: インシデント・コマンド・システム(ICS):...ICSの概要 コースの概要 2 ICSの特徴と原則 一般社団法人レジリエンス協会代表理事 一般財団法人リスクマネジメント協議会評議員

理」「資源管理」「指揮管理」「継続的維

持管理」の5要素で構成される。この

うち「指揮管理」を構成する3要素が

「多組織間連携システム」「広報」そして

「ICS」である。(図表1)

(5)

ICSがないとどうなるか

●責任の欠如が起こる。曖昧な指揮監

督系統もその一つである。

●システムの非効率利用と略語や用語

の不一致で意思疎通の不全が起こる。

●秩序ある組織的な計画策定プロセス

が欠如する。

●共通性や柔軟性に欠ける管理構造の

ため、指揮者は権限移譲による負荷

の効率よい管理ができない。

●組織間の要求を、管理構造や計画策定

プロセスに効果的に統合する方法が

事前に定められていない状態になる。

(6

)ICSを使うことの効用

 

要員の安全確保、災害対応の目的達

成、資源の効率的利用に役立つ。

(1)

標準化

共通用語

 

共通用語と平易文の使用は、ICS

内の意思疎通能力向上に不可欠であ

る。

(2)

指揮

指揮の確立と移譲

 

NIMSは「指揮」を「明文化された

法規または権限移譲に基づき指示・命

令・管理すること」と定義している。

現場ではインシデント・コマンダー(指

揮者)が指揮権を持つ。

 

指揮を移譲する際には充分な引き継

ぎと組織内周知が不可欠である。

 

指揮の移譲は次の場合に行われる。

●より適任の指揮者が到着し指揮を執

るとき

●管轄の当局または機関が法に基づき

指揮を執ることが求められるとき

●事態が複雑化しつつあるとき

●指揮者が休息を取る必要があるとき

指揮系統と指揮の一元性

 

指揮者は、指揮系統に基づき、監督

下の全要員の行動を指示管理できる。

要員の行動にはスーパーバイザー(監督

者)の命令が必要であり、これにより

組織の混乱が防止される。なお、指揮

系統の存在は要員同士の直接的な情報

共有を妨げるものではない。

 

指揮の一元性により、一人の要員はた

だ一人のICS監督者のみに報告し、

またそこからのみ業務指示を受ける。

(3)

計画策定と組織構造

目標による管理

 

災害対応の目標の優先順位は、まず

「生命の安全」、次に「事態の安定化」、

は、安全と説明責任が最優先される

災害対応においては、極めて重要で

ある。

(4)

施設と資源

場所と施設

●指揮所(インシデント・コマンド・ポ

スト、ICP):指揮者が全業務を監

視する場所。

●ステージングエリア:配置を待つ要員

や設備が集積される場所。

●ベース:物資調達および総務の主要機

能を調整管理する場所。

●キャンプ:ベースに保管しきれない資

源を置いておく場所。

総合的資源管理

 

資源管理は「分類・発注・発送・追跡・

補充」のプロセスで構成される。

(5)

情報通信管理

●統合通信:災害時の通信は、共通通

信計画の設定と活用、および通信手

段・手順・システムの相互運用によ

って促進される。

(6)

プロフェッショナリズム

説明責任

 

現場では特に次の原則を守ること。

●災害対応計画(IAP):運用は必ず

IAPに沿って行う。

●指揮の一元性:各要員はそれぞれただ

一人の監督者のもとに配置される。

●統制範囲:監督者は配下の要員を適

そして「財産や環境の保全」である。

ICSの組織

 

平時の組織構造との相違は、ICS

独特の役職名と組織構造があること

と、要員の配置を階級ではなく専門性

に基づいて行うことである。

モジュラー組織

 

ICSの組織構造は、災害の規模と

複雑さが増すごとに上から順にモジュ

ラー方式で拡張され、それにあわせて

機能上の責任も委譲されていく。拡張

性と柔軟性がICSの組織構造の特徴

である。(図表2)

災害対応計画(IAP)

 

IAPは戦略そのものである。災害

対応の目標とそのために遂行すべき活

動が明記される。記述対象は活動期間

全体に及ぶべきである。表現手段は口

頭でも文書でも構わない。

 

IAPには「すること」「責任者」「連

絡方法」「負傷者発生時の対処方法」を

含める。

管理可能な統制範囲(SOC)

 

統制範囲(スパン・オブ・コントロー

ル、SOC)は、一人の監督者が効果

的に管理できる人または資源の数で

ある。ICSでは監督者一人あたりの

統制範囲を3~7名とし、5人を超え

ないことが望ましい。(図表3)

 

効果的な統制範囲を維持すること

●様々な組織が協調して対応すること

を可能にするものである。

●計画の策定と資源の管理についての

共通プロセスを設定するものである。

●施設・設備・人員・手順・通信を、

共通の組織構造の中で統合的に運用

することを可能にするものである。

(2)

いつICSを使うのか

 

自然災害、技術的災害、人為災害、

そして計画的イベントを管理する時。

(3)

なぜICSを使うのか

 

何よりも、人命を救うのに有効だか

らである。また同時に、国家インシデ

ント・マネジメント・システム(NIM

S)で定められているからでもある。

(4)

NIMSの5要素とICS

 

NIMSは「事前準備」「情報通信管

 

インシデント・コマンド・システム(I

CS)は米国が国家規模で制定し導入

している、災害対応の現場指揮システ

ムである。ICSの全体概要について

は前回のR

M Search

を参照されたい。

 

ICSの教育コースは入門から応用

まで幾つかの段階や分野に分けて構成

されている。そのうち入門編(ICS

100)と基礎編(ICS200)を含

む一部のコースのテキストはFEMA

(米国危機管理庁)のHPで公開されて

いる。今回は、このうち入門編(IC

S100)の内容を抄訳し紹介する。

 

なお現在、国内の関係者により全訳

の作業が進められているが、本稿は独

自に訳出したものであり、全訳版とは

訳語等が異なることを記しておく。

 

コースは7つの単元で構成される。

単元1:

コースの概要

単元2: ICSの概要

単元3: ICSの特徴と原則

単元4:

指揮者と指揮スタッフ機能

単元5:

一般スタッフ機能

単元6:

統合指揮

単元7:

コースのまとめ(略)

 

以下、単元に沿って説明する。

(1)

ICSとはなにか

●標準化され、現場に即した、あらゆ

る災害に対応するためのインシデン

ト・マネジメントの概念である。

図表1 NIMSの5要素とICSの関係

ICS

多組織間連携システム

広報

事前準備

通信情報管理

資源管理

指揮管理

継続的維持管理

図表2 モジュラー組織の拡張

図表3 統制範囲(SOC)の維持

最少

最適

最多

SOCは3~7に維持する

コースの概要

1ICSの概要

2

ICSの特徴と原則

3

一般社団法人レジリエンス協会代表理事一般財団法人リスクマネジメント協議会評議員

黄野 吉博一般社団法人レジリエンス協会

白澤 健志

インシデント・コマンド・システム(ICS):入門編(ICS100)概要

3435 2014 January

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限を委譲することができる。

広報担当者(PIO)

●情報発信と広報対応について指揮者

に助言する。

●計画策定部門、地域社会、報道機関

と情報交換する。

安全担当者

●安全性の問題を指揮者に助言する。

●関係する全要員の安全を確保する。

渉外担当者

●関係機関との連絡窓口を務める。

●支援組織への説明を行う。

(1)

ICSの組織構造の要素

部門(セクション):4つの主要機能

の責任階層。

地区(ディビジョン):災害が広域に

わたる場合の地理的な区分。

集団(グループ):運用の機能分野。

支部(ブランチ):地区や集団の数が

統制範囲を超える時に設ける区分。

タスクフォース(TF):多様な資源

で構成されるチーム。

ストライクチーム(ST):単一種類

の資源で構成されるチーム。

シングルリソース(SR):必要な装

備等を持つ、特定分野の専門家。

(2)ICS監督層および補佐の役職名

指揮:指揮者/代理(デプティー)

指揮スタッフ:オフィサー/補助者

一般スタッフ(部門):チーフ/代理

支部:ディレクター/代理

地区・集団:監督者/(非該当)

班(ユニット):リーダー/マネー

ジャー

ST・TF:リーダー/SRボス

(3)

ICSの部門チーフとその代理

 

部門チーフは一人以上の代理を置く

ことができる。代理はチーフの責務の

特定の一部を引き受けることができ

る。

(4)

組織間連携の増進

 

災害対応が複数の組織に跨って行わ

れる場合、他組織からの代表者を「代

理」として配置することで組織間連携

が増進される。

(5)

運用部門の主要活動と特徴

●他部門より先に立ち上げられる。

●全ての戦術運用を指示調整する。

●下層から順に拡張される。

●もっとも多くの資源を持つ。

●ステージングエリアと特別組織を持

つことがある。

●小規模災害の場合、運用部門はチー

フと複数の専門家で構成される。

●運用部門のチーム例:捜索救難ST、

救急ST、周辺警備ST、被害査定

TF、避難所・給食TF、公共事業

●要員の業務時間管理(時間管理班)

●費用分析(費用班)

●人身傷害や財産の損害賠償、賠償の

ための文書作成(賠償・請求班)

 

統合指揮とは、様々な機関や組織の

指揮者が単一指揮組織を形成して共同

運用を行うことである。これにより、

法的、地理的、機能的に責務が異なる

団体や機関が効果的に計画し調整し協

力し合うことができる。

 

統合指揮では、指揮者達は共同で決

定を下し、単一のアナウンスをする。

指揮の一元性は維持され、個々の対応

要員の報告先は各専門分野の監視者た

だ一人である。

(1)

統合指揮の効果

●優先順位と制約認識が共有される。

●災害対応の目標が一つにまとまる。

●協働的戦略がとれる。

●内外の情報の流れが促進される。

●労力の無駄な重複が削減できる。

●資源をより有効に活用できる。

(2)

統合指揮の特徴

●災害対応の単一統合組織である。

●施設は一か所に共有配置される。

●災害対応目標、計画策定プロセス、

災害対応計画のいずれも単一である。

●一般スタッフも統合される。

●資源発注が連携よく行われる。

(3)

統合指揮の成功の鍵

●地域のキーパーソンを含めること。

●初期対応要員に自らの法および倫理

上の責務を周知すること。

●ICSに関する理解を深めること。

●教育訓練を共同で行うこと。

(4)

災害対応連携

●関係者が協力して方針を策定する。

●情報の収集・分析・発信を行い、共

通運用図の策定を支援する。

●複数災害間の優先順位を設定する。

●資源制約の問題を解決する。

●物資調達と資源追跡を促進する。

●公表する情報や発言を一本化する。

(5)

統合情報センター(JIC)

●広報活動を連携よく行うためにJI

Cを設立することができる。JIC

は全報道機関に対する広報窓口とし

て機能する。可能なら全関係機関の

広報担当者がJICに同居すること

が望ましい。

 

ICS100では、ICS最大の特

徴である「5つの機能と組織構造」に

ついて、「共通化・標準化」「柔軟性・

拡張性」をキーワードに説明した。次

回は基礎編にあたるICS200を紹

介する。

TF、等。

(6)

チームの統制範囲

 

チーフが抱えるチーム数が統制範囲

を超えてしまうような場合、いくつか

のチームを一人の集団監督者の下にま

とめることが望ましい。広域災害の場

合は地区を分けることも有効である。

 

複合災害で、集団や地区の数がチー

フの統制範囲を超えるような時、チー

フは複数の集団を束ねる「支部」を設

置し、それぞれにディレクターを置く

ことができる。

(7)

計画策定部門の主要活動と班

●資源の追跡(資源班)

●情報の収集・評価・公表(情勢班)

●IAP策定と文書の更新(文書班)

●撤収計画の策定(撤収班)

(8)

物資調達部門の主要活動と班

サービス支部:

●通信計画策定と資源提供(通信班)

●対応要員への医療の提供(医療班)

●対応要員への食事提供(食糧班)

サポート支部:

●人員・器材・消耗品の発注、入手、

管理、会計(補給班)

●施設の設置と維持管理(施設班)

●地上交通手段の提供(地上支援班)

(9)

財務・総務部門の主要活動と班

●契約交渉と履行監視(調達班)

切に監督統制しなければならない。

●資源の追跡:監督者は資源の状態変化

を記録し報告しなければならない。

●災害対応に際しては、自らのストレ

スを管理し、プロフェッショナルであ

り続けること。

派遣および展開

●指示があるまでは平常業務に就く。

自己判断で現地に赴かないこと。

●現場では、まずチェックインをして

担当業務の割り当てを受ける。

(1)

5つの管理機能

指揮

●目標、戦略、優先順位を設定する。

●災害対応の全責務を引き受ける。

運用

●戦術と資源を決定する。

●戦術レベルの対応を指示する。

計画策定

●情報を収集し分析する。

●資源を追跡する。

●文書を更新する。

物資調達

●資源と必要なサービスを供給する。

財務・総務

●災害対応にかかる費用を把握する。

●会計・調達・時間管理・費用分析を

行う。

代理指揮者

 

指揮者は一人以上の代理を置くこと

ができる。代理は以下の業務を行う。

●指揮者が求める特定の任務

●処理能力超過時の指揮機能の代行

●管轄の支援機関の代表の代行

(3)

組織の拡張

 

指揮者は、災害の拡大に合わせ、指

揮スタッフ(広報担当者、安全担当者、

渉外担当者)および一般スタッフ(運用

部門、計画策定部門、物資調達部門、

財務・総務部門)の組織を拡張して権

(2)

指揮者

指揮者の機能

 

指揮者はICSの5つの管理機能全

てに責任を持つ。小規模災害では指揮

者が5機能を一人で兼ねることもある。

管理機能の委譲

 

指揮者は災害の規模に応じて、下位

の部門を設置し、権限を委譲できる。

指揮者の責務

●災害対応の安全性を確保すること。

●内外関係者に情報を提供すること。

●他機関との連絡を維持すること。

図表4 ICSの機能と組織(青色は必須機能、他は必要に応じ設置)

運用部門

航空運用支部

○○支部

△△地区

××ST

▽▽TF

●●SR

・・・・・・

計画策定部門

指揮者 他組織の指揮者 破線は統合指揮の実施時のみ適用

他分野の指揮者

統合目標

資源班

情勢班

文書班

撤収班

技術的専門家

広報担当者

安全担当者

渉外担当者

物資調達部門

サービス支部

通信班

医療班

食糧班

補給班

施設班

地上支援班

サポート支部

財務総務部門

調達班

時間管理班

費用班

賠償・請求班

(運用部門の構成は概念図)

指揮スタッフ

一般スタッフ

指揮者と

指揮スタッフ機能

4

一般スタッフ機能

5

統合指揮

6

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