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中京デトロイト化計画 中京デトロイト化計画 大正時代、アメリカでは第一期モータリーゼーションの時代を迎えていた。日本の市場の 将来性に着目したフォード社は1925(大正14)年に、ゼネラルモータース(GM)は、1927(昭和 2)年に日本に進出、T型フォードとシボレーは年間約1万台が生産されていた。 こうした中で、中部地方で自動車工業を興そうと、名古屋市長大岩勇夫は、1930年に名古 屋地区の自動車工業化を推進、名古屋財界に協力を求めた。後に「中京デトロイト化計画」と 呼ばれる振興政策であった。 大岩勇夫の振興策に呼応したのが、日本車輌製造の秋山正八、大隈鐵工所の大隈榮一、岡 本自転車製作所の岡本松造であった。国産乗用車の基本仕様は、米国ナッシュ社の1931年 型をモデルとし、全長4.85m、エンジンの排気量は3963cc、7人乗りに決まり、日本車輌製 造が車体と組み立てを、大隈鐵工所は8気筒エンジンと伝導装置、岡本自転車製作所が車 輪、ブレーキなどの足回り部品を担当した。また、エンジンブロックは、薄肉鋳物が得意であ った豊田式織機が担当した。 1930年に生産に着手、各社協力のもとに1937年に試作車が完成、熱田神宮にちなんで「あ つた号」(アツタ号とも表記)と命名された。 熱田神宮前のあつた号 (出典:『オークマ創業100年史』) 中部における国産車のあゆみ 中京デトロイト化計画とその後(1) あつた号のエンブレム (出典:『創業 70 周年記念製品沿革写真集』) あつた号乗用自動車仕様 7名 ステアリング型式 ウォーム、セクトル 4840mm 前車輪 逆エリオ型 1791mm 後車輪 半浮動式 1800kg 足ブレーキ 機械式4輪内開 ホイールベース 3300mm 手ブレーキ 推進軸外締式 トレッド(前) 1434mm フロント板スプリング 51×6.5×8枚 トレッド(後) 1447mm リヤー板スプリング 51×6.5×10枚 タイヤ(前) 7.00-16 クラッチ型式 選択式滑り歯車 タイヤ(後) 7.00-16 変速比(前進) 3.08 1.668 1.00 最低地上高 220mm 変速比(後退) 4.17 最小回転半径 6700mm 燃料タンク容量 57リットル

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中京デトロイト化計画中京デトロイト化計画大 正 時 代 、 ア メ リ カ で は 第 一 期 モ ー タ リ ー ゼ ー シ ョ ン の 時 代 を 迎 え て い た 。 日 本 の 市 場 の

将 来 性 に 着 目 し た フ ォ ー ド 社 は 1 9 2 5 (大 正 1 4 )年 に 、 ゼ ネ ラ ル モ ー タ ー ス (G M )は 、 1 9 2 7 (昭 和

2 )年 に 日 本 に 進 出 、 T 型 フ ォ ー ド と シ ボ レ ー は 年 間 約 1 万 台 が 生 産 さ れ て い た 。

こ う し た 中 で 、 中 部 地 方 で 自 動 車 工 業 を 興 そ う と 、 名 古 屋 市 長 大 岩 勇 夫 は 、 1 9 3 0年 に 名 古

屋 地 区 の 自 動 車 工 業 化 を 推 進 、 名 古 屋 財 界 に 協 力 を 求 め た 。 後 に 「 中 京 デ ト ロ イ ト 化 計 画 」 と

呼 ば れ る 振 興 政 策 で あ っ た 。

大 岩 勇 夫 の 振 興 策 に 呼 応 し た の が 、 日 本 車 輌 製 造 の 秋 山 正 八 、 大 隈 鐵 工 所 の 大 隈 榮 一 、 岡

本 自 転 車 製 作 所 の 岡 本 松 造 で あ っ た 。 国 産 乗 用 車 の 基 本 仕 様 は 、 米 国 ナ ッ シ ュ 社 の 1 9 3 1 年

型 を モ デ ル と し 、 全 長 4 . 8 5 m 、 エ ン ジ ン の 排 気 量 は 39 6 3 c c 、 7 人 乗 り に 決 ま り 、 日 本 車 輌 製

造 が 車 体 と 組 み 立 て を 、 大 隈 鐵 工 所 は 8 気 筒 エ ン ジ ン と 伝 導 装 置 、 岡 本 自 転 車 製 作 所 が 車

輪 、 ブ レ ー キ な ど の 足 回 り 部 品 を 担 当 し た 。 ま た 、 エ ン ジ ン ブ ロ ッ ク は 、 薄 肉 鋳 物 が 得 意 で あ

っ た 豊 田 式 織 機 が 担 当 し た 。

1 9 3 0年 に 生 産 に 着 手 、 各 社 協 力 の も と に 1 9 3 7年 に 試 作 車 が 完 成 、 熱 田 神 宮 に ち な ん で 「 あ

つ た 号 」 (ア ツ タ 号 と も 表 記 )と 命 名 さ れ た 。

熱田神宮前のあつた号(出典:『オークマ創業100年史』)

中部における国産車のあゆみ Ⅱ 中京デトロイト化計画とその後(1)

あつた号のエンブレム

(出典:『創業 70周年記念製品沿革写真集』)

あつた号乗用自動車仕様

定 員 7名 ステアリング型式 ウォーム、セクトル

全 長 4840mm 前車輪 逆エリオ型

全 幅 1791mm 後車輪 半浮動式

自 重 1800kg 足ブレーキ 機械式4輪内開

ホイールベース 3300mm 手ブレーキ 推進軸外締式

トレッド(前) 1434mm フロント板スプリング 51× 6.5×8枚

トレッド(後) 1447mm リヤー板スプリング 51× 6.5× 10枚

タイヤ(前) 7.00-16 クラッチ型式 選択式滑り歯車

タイヤ(後) 7.00-16 変速比(前進) 3.08 1.668 1.00

最低地上高 220mm 変速比(後退) 4.17

最小回転半径 6700mm 燃料タンク容量 57リットル