6
- 26 - 31 61 61 42 30 34 18 24 1973年9月 東京大学医学部卒業 1976年2月 東京大学医学部第3内科医員 1976年4月 三井記念病院内科医員 1984年7月 東京大学医学部第3内科助手 1985年1月 テネシー大学医学部生理学教室留学 1986年11月 東京大学医学部老年病学教室講師 1995年8月 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 教授 2006年4月 東京大学医学部附属病院副院長 2013年4月 国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長・ 東京大学名誉教授 日本老年医学会名誉会員 2017年 国際老年学会会長賞受賞 6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」 特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要 大内 尉義 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 わが国における著しい高齢化の進展とともに,間もなく到来する超高齢社会を,明るく, 活力あるものにするために,社会の仕組みの根本的な変革が必要な時代を迎えている. わが国においては,65歳以上という従来の高齢者の定義が現状に合わない状況が生じ ている.そこで,日本老年学会,日本老年医学会では,2013年に高齢者の定義を再検討 する合同ワーキンググループを立ち上げ,いろいろな角度から議論を重ねた.そして, 2017年1月,75歳以上を高齢者とし,従来,前期高齢者とよばれた65 〜 74歳を准高齢者 とすべきであるという提言を発表した. この提言の目的は,支えられるべき存在としての高齢者の意識や立ち位置を,社会の 支え手でありモチベーションを持った存在としてのポジティブなものに変え,結果とし て,迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにすることにある.個人差はあるも のの,准高齢者,高齢者には十分,社会活動を営む能力のある人がおり,このような人々 が社会参加できる社会を創ることが,超高齢社会を活力あるものにすると考えたのであ る.准高齢者,高齢者の社会活動は,若い世代の負担を軽減するなど,わが国の社会保 障を持続可能なものにするためにも重要と考えられる.この提言は,暦年齢をものごと の判断基準にしない「エージフリー社会」を築いていくことが超高齢社会を迎えようと している日本にとって重要であることを示し,社会に大きなインパクトを与えた. 提言から約2年半が経過したが,本シンポジウムでは,この高齢者の定義の見直しの 提言の意義について,社会保障学,行政,メディア,産業界を代表する方々からそれぞ れの立場でのご意見を頂き,また日本老年医学会からは今後の方針について述べて頂き, 超高齢社会の到来に直面し,変革を迫られているわが国の社会の今後のあり方にどのよ うに生かしていくかについて,幅広く議論したいと考えている.

イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 26 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1973年9月 東京大学医学部卒業1976年2月 東京大学医学部第3内科医員1976年4月 三井記念病院内科医員1984年7月 東京大学医学部第3内科助手1985年1月 テネシー大学医学部生理学教室留学1986年11月 東京大学医学部老年病学教室講師1995年8月 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座

教授

2006年4月 東京大学医学部附属病院副院長2013年4月 国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長・

東京大学名誉教授 日本老年医学会名誉会員2017年 国際老年学会会長賞受賞

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年学会・日本老年医学会からの提言の概要

大内 尉義国家公務員共済組合連合会虎の門病院

 わが国における著しい高齢化の進展とともに,間もなく到来する超高齢社会を,明るく,活力あるものにするために,社会の仕組みの根本的な変革が必要な時代を迎えている. わが国においては,65歳以上という従来の高齢者の定義が現状に合わない状況が生じている.そこで,日本老年学会,日本老年医学会では,2013年に高齢者の定義を再検討する合同ワーキンググループを立ち上げ,いろいろな角度から議論を重ねた.そして,2017年1月,75歳以上を高齢者とし,従来,前期高齢者とよばれた65 〜 74歳を准高齢者とすべきであるという提言を発表した. この提言の目的は,支えられるべき存在としての高齢者の意識や立ち位置を,社会の支え手でありモチベーションを持った存在としてのポジティブなものに変え,結果として,迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにすることにある.個人差はあるものの,准高齢者,高齢者には十分,社会活動を営む能力のある人がおり,このような人々が社会参加できる社会を創ることが,超高齢社会を活力あるものにすると考えたのである.准高齢者,高齢者の社会活動は,若い世代の負担を軽減するなど,わが国の社会保障を持続可能なものにするためにも重要と考えられる.この提言は,暦年齢をものごとの判断基準にしない「エージフリー社会」を築いていくことが超高齢社会を迎えようとしている日本にとって重要であることを示し,社会に大きなインパクトを与えた. 提言から約2年半が経過したが,本シンポジウムでは,この高齢者の定義の見直しの提言の意義について,社会保障学,行政,メディア,産業界を代表する方々からそれぞれの立場でのご意見を頂き,また日本老年医学会からは今後の方針について述べて頂き,超高齢社会の到来に直面し,変革を迫られているわが国の社会の今後のあり方にどのように生かしていくかについて,幅広く議論したいと考えている.

Page 2: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 27 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1985年 慶應義塾大学商学部卒業1987年 慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了1990年 慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了(単位取得)1990年 慶應義塾大学商学部助手 1994年 慶應義塾大学商学部助教授2002年 慶應義塾大学商学部教授より現職(博士(商学))

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

高齢者の定義再検討時代における社会保障のあり方

権丈 善一慶應義塾大学商学部

 一昨年2017年1月に,日本老年学会・老年医学会は合同で,75歳以上を高齢者として再検討するよう提言した.この提言の社会へのインパクトは極めて大きかった. たとえば翌年2018年には,自由民主党政務調査会の「人生100年時代戦略本部」がまとめた報告書では,「高齢者像も大きく変化している.関係の学会は,“最新の科学データでは,高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあり,現在の高齢者は10年前に比べて5 〜 10歳は若返っていると想定される”」と論じることにより,政策を考える指針として両学会の提言を受け止めていることを示している. さらには同年,政府の『高齢社会対策大綱』においても両学会からの提言が紹介され,

「65歳以上を一律に“高齢者”と見る一般的な傾向は,現状に照らせばもはや,現実的なものではなくなりつつある」として,「70歳やそれ以降でも,個々人の意欲・能力に応じた力を発揮できる時代が到来しており,“高齢者を支える”発想とともに,意欲ある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境を整えることが必要である」と記し,高齢者再検討の提言を新しい社会を構築していく上での基礎に据えるに至っている. 本報告では,日本老年学会・老年医学会の提言を受け止めた,政治という政策形成の川上,上流での動きが,社会保障という制度にどのように前向きな方向性を与えようとしているのかを論じる.

Page 3: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 28 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1996年3月 東京大学法学部卒業1996年4月 労働省入省2017年7月 厚生労働省政策統括官付政策評価官2018年7月 内閣府政策統括官付参事官(子供の貧困対策・高齢社会対策・総合調整担当)

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

高齢者の定義提言と我が国の高齢社会対策

牧野 利香内閣府政策統括官付参事官(高齢社会対策担当)

 我が国の高齢社会の現状や,「高齢社会対策大綱」(2018年2月閣議決定)に基づく高齢社会対策について,「高齢者の定義と区分に関する提言」との関係も踏まえつつご説明します.

Page 4: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 29 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1979年3月 日本医科大学医学部卒業.ベルギー国立ゲント大学研究員,日本医科大学助手を歴任.

1985年12月 読売新聞社入社.編集局解説部(電波報道部兼務)で医療,教育,社会をテーマとして報道,解説に従事.NTV系報道番組「読売新聞ニュース」を担当.

1989年2月 欧州共同体(当時)の招聘により,ECVP(現EUVP)制度で渡欧,研修

2007年4月 読売新聞東京本社編集委員

2011年10月 編集局医療情報部長2014年6月 取締役調査研究本部長2017年6月 現職

【公職等社外業務】旧厚生省・医療審議会,厚生労働省・厚生科学審議会,社会保障審議会,文部科学省・科学技術学術審議会,中央教育審議会,内閣官房・社会保障国民会議などの委員を歴任.東京女子医科大学医学部非常勤講師等を経て,現在は日本医科大学特任教授,東京大学大学院博士課程教育リーダーシッププログラムを務める.

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

メディアの立場からみた高齢者の定義再検討

南 砂読売新聞東京本社

 2017年1月,日本老年医学会などが「高齢者の定義に関する提言」を公表すると,メディアは一斉に報道した.従来65歳とされている高齢者の定義を75歳以上に見直し,65 〜74歳には「準高齢者」という新たな区分を設け,意欲のある人々がいっそう就労やボランティア等に参加できる健康長寿社会を創っていくべき,という提言をメディアはおおむね好意的に紹介した.他方,この提言を直接に年金支給年齢引き上げなど社会保障制度の変更に結びつけるのではないか,という警戒や批判,若年世代と労働市場で競合し,若者の仕事を奪うのではないかという危惧,所詮は前期高齢者を準高齢者と置き換えただけでは,と言う否定的意見も提起された.そもそも,何事も批判的精神で報道するメディアの習性を考えれば当然のことで,むしろ議論を巻き起こしたこと自体,提言には一定の意義があったといえる.この後,自民党プロジェクトチームは提言とほぼ歩調の一致した提言をまとめたし,神奈川県大和市が「70歳代を高齢者と言わない都市」を宣言,長野県長野市,松本市も「高齢者の定義を75歳以上とする共同宣言」を掲げる等,提言を踏襲した動きが各方面に広がっている. 私は独自の視点でもこの提言を評価したい.私は医学の道を志し,医師として医療現場に身を置いた後に転職したので純然たるメディア人とはいえないかもしれないが,30年余メディアに身を置いて,最近とみに危惧を感じるのはアカデミア(学者専門家集団)のありようである.東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の後の社会状況では,

「アカデミアの役割は何なのか」を繰り返し考えさせられた.保健医療分野でも,メディアに登場する「専門家」の発言に,アカデミアの役割を考えさせられることが少なくない.このたびの提言は老年医学の専門家集団が3年あまりの時間をかけて検討し,客観的科学的データに基づいてとりまとめた意見を社会に示したものであり,アカデミアのありようとして私はこれを改めて評価したいと思う.

Page 5: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 30 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

慶應義塾大学経済学部卒業後,1964年トヨタ自動車工業株式会社(現在のトヨタ自動車)に入社.1992年取締役,1997年常務,1999年専務,2001年副社長を経て,2005年社長,2009年副会長,2011年相談役,2016年より顧問.2010年より長寿科学振興財団会長.2009年から日本経済団体連合会副会長を務め,2012年から首都高速株式会社取締役会長を務めた.2009年11月藍綬褒章受章.2018年11月旭日大綬章受章.

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

産業界の立場から人生100年時代を考える

渡辺 捷昭公益財団法人長寿科学振興財団

 日本人の平均寿命は世界のトップに立ち(1985年以降女性は1 〜 2位,男性も1 〜 3位),高齢化率も世界一(2017年10月:27.7%)となっている.このことは今後も進展し,日本の超高齢社会への対応は世界のベンチマークとなる.この事実を前向きに捉え,高齢者がより活き活きと生活出来る社会環境を国を挙げて整備する必要がある.まさに人生100年時代の「人生設計」が必要であり,その構想図の構築が求められる.そのためには次の3点が課題である.①高齢者自身の意識改革 今までのライフスタイルからの変革であり,60才以上の自らのライフステージ,働き方の変革である.マルチステージの人生設計を自ら描くことが求められる.②社会環境の変革と社会制度の変革 多様な高齢者に対応した,移動手段,住まい,コミュニティづくり,人生100年時代に即した雇用・教育制度の変革等も必要である.③産業界の変革 -多様な高齢者を対象として-1)新しい産業の創出により高齢者向けの市場創造 自動車,住宅,ロボット,情報通信,薬品,食品,金融等々の垣根を越えた企業の連携が鍵となる.2)企業に働く人の「働き方改革」 働く意欲と能力の高い人たちが働き続けることが出来るための社内制度の構築,特に定年制度(含む終身雇用)の見直しとICT(情報通信技術)による働き方の改革が求められる.3つの課題を挙げたが,夫々複雑に関連している.国,地方自治体,医学会,研究機関,産業界等々の連携した取り組みが無ければ解決は難しい.長寿社会のトップを行く日本が世界から注目されている中,日本老年学会が提言した,高齢者の新たな定義は大変意義のあること.この提言が,「高齢者の意識改革」「社会制度改革」「産業界の変革」を一層促進することを期待する.

Page 6: イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本 … · イントロダクション:高齢者の定義に関する日本老年 学会・日本老年医学会からの提言の概要

- 31 -

第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

【学歴・職歴】1984年3月 大阪大学医学部卒業1985年7月 桜橋渡辺病院循環器内科医員1989年9月 米国Harvard大学ブリガム・アンド・ウイ

ミンズ病院内科研究員1990年7月 米国Stanford大学心臓血管内科研究員1993年8月 大阪大学医学部老年病医学助手2002年10月 大阪大学大学院医学系研究科加齢医学講師2004年2月 大阪大学大学院医学系研究科加齢医学助教授

2007年11月 大阪大学大学院医学系研究科内科学講座(老年・腎臓内科)教授

2015年10月 大阪大学大学院医学系研究科内科学講座(老年・総合内科)教授 現在に至る

【主な学会役員】日本老年医学会(理事長),日本高血圧学会(副理事長),日本心血管内分泌代謝学会(理事),日本サルコペニア・フレイル学会(理事)

6月7日(金) 9:00 ~ 11:50 第16会場/東北大学百周年記念会館 2F 「ホール」特別招聘シンポジウム 人生100年時代における高齢者の今後-高齢者の定義再検討をどう生かすか

高齢者の定義の提言に関する日本老年医学会の今後の方針

樂木 宏実大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学,日本老年医学会

 高齢者の定義変更の提言は,高齢者の若返りの現状を踏まえて,明るくプロダクティブな健康長寿社会の構築や,超高齢社会における医療・介護・福祉のあり方を国民が選択するための議論の契機とするものであった.提言の根拠には,内閣府が行っている国民の意識に関する調査結果も重要な役割を果たした.社会情勢の変化に伴い国民の意識も変化すると考えられるため,調査の継続性は重要である.日本老年医学会として,政府機関と定期的に意見交換を行い,内閣府が行っている調査への参加を目指す.高齢者の定義は,いわゆるエイジズムとは異なり,医療的・社会的に支援が必要であったり,対応において特に注意を要したりする人の割合が多い集団を特定することを一つの目的にしており,実地医療や高齢者を対象とした研究,社会保障制度の構築に有用である.しかしながら,暦年齢で区切ることには限界があり,いわゆる生物学的年齢による区分が求められる.連続的指数ではないが,フレイルの評価はその役割を果たしうる.このような生物学的年齢に相当する指標を探索することは,将来のエイジレス・エイジフリー社会の構築に重要である.日本老年医学会として,提言をさらにエイジレス・エイジフリー社会に進化させるための研究活動を推進する.さらに,高齢者医療は,若返りだけで語ることはできず,この提言を国民がポジティブに現実と向き合う契機にもしたいと考える.行政の施策,研究の進歩による新技術の開拓,これらを一緒に国民と議論することが重要である.その点では双方向性の議論を構築できるメディアとの関係は極めて重要である.日本老年医学会として,准高齢者や高齢者が社会の支え手・モチベーションを持った存在として活動するには何が必要か,「治し支える医療」への転換,エンドオブライフのあり方,高齢者の若返りの継続可能性などの議論を継続的に展開していきたい.現在,提言をさらにエイジレス・エイジフリー社会に展開するための議論を開始しており,世界に向けた情報発信にもつなげたいと考える.