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横浜市大 三用 インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的とした阻害モノクローナル抗体の開発

インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的と …...横浜市大 朴三用 インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的とした阻害モノクローナル抗体の開発

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Page 1: インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的と …...横浜市大 朴三用 インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的とした阻害モノクローナル抗体の開発

横浜市大 朴 三用

インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼを標的とした阻害モノクローナル抗体の開発

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インフルエンザウイルスとは?

HA(ヘマグルチニン)NA(ノイラミニダーゼ)

ウイルスの大きさは100nmくらいで8つの遺伝子(RNA)からなっている。

ウイルスは自分だけで増える事はできない。ヒトや鳥、豚などに寄生して増殖している。

PA

PB1PB2

NP+RNA

RNAポリメラーゼ

RNAポリメラーゼはウイルスの遺伝子を増やす。ウイルスには、子孫を残すための一番大事なタンパク質である。

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Neuraminidase(NA)

Nature 443, 45, 2006(ID=2hty)

Hemagglutini(HA)

Nature 444, 378, 2006(ID=2ibx)

インフルエンザウイルスの増殖機構

インフルエンザにかかると高熱、関節痛、頭痛で大変です。

感染

タミフル

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NA type km(mm)

Wild type 6.3

His274Tyr 27.0

Asn294Ser 53.0

Tyr252His 7.5

His274Tyr

PNAS 26 May (2008)

Nature 15 May (2008)

Tamiflu @

タミフル耐性ウイルスの出現

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今までヒトーヒト間で感染例のない遺伝子を持つウイルスを“新型ウイルス”と呼びます

ブタ型、ヒト型、トリ型の遺伝子を併せ持つ新型ウイルス誕生

ヒト型

ブタ型 トリ型

細胞で遺伝子の混合が起きる!

インフルエンザウイルス遺伝子

・・・GCATT・・・4種の核酸塩基(アデニン:A,グアニン:G,シトシン:C,チミン:T)を持つリボヌクレオチドが一本に重合した分子

混合される遺伝子分節は8種類!

分節塩基数

コードタンパク質

PB2 2280 RNAポリメラーゼb2PB1 2274 RNAポリメラーゼb1PA 2151 RNAポリメラーゼa

HA 1701 ヘマグルチニンNP 1497 核タンパク質NA 1410 ノイラミニダーゼ

M 982 マトリクスタンパク質1,2

NS 863 非構造タンパク質1,2

リボ核酸(RNA)

混合型

細胞

Neuraminidase(NA)

Nature 443, 45, 2006(ID=2hty)

Hemagglutini(HA)

Nature 444, 378, 2006(ID=2ibx)

1-16種類

1-9種類

(H5N1)

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インフルエンザウイルスの種類

!

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タンパク質は20種類のアミノ酸が1本につながった分子

香港かぜ(Hong_Kong)、ソ連かぜ(Russian)、鳥インフルエンザ(Avian)、新型インフルエンザ(New)のそれぞれのタンパク質配列を比較し、保存されている部位に色付けしました。

G グリシン N アスパラギン

A アラニン Q グルタミン

V バリン S セリン

L ロイシン T トレオニン

I イソロイシン Y チロシン

P プロリン D アスパラギン酸

F フェニルアラニン E グルタミン酸

M メチオニン K リジン

W トリプトファン A アルギニン

C システイン H ヒスチジン

アミノ酸一覧

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PAPB1

PB2

PA-C239

1 81 a.a

716 a.a

PB1-N

❖PA-PB1 interaction

domain

PA(54kDa)

PB1(8kDa)

90kDa

48kDa

RNAポリメラーゼ: PA-PB1タンパク質の発現

分子量 250kDa.

インフルエンザウイルスの増殖に中心的な役割をするタンパク質

PA,PB1,PB2タンパク質が正しく結合:ウイルスの増殖が出来る

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インフルエンザRNAポリメラーゼの阻害抗体による創薬研究

ペプチド創薬

(阻害抗体:ウイルス粒子タンパク質に結合して、そのタンパク質の機能を阻害される抗体)

ヒトへの副作用なし

RNAポリメラーゼの阻害抗体であれば、すべての新型インフルエンザの効果

阻害抗体である事を確認

RNAポリメラーゼ抗体作製 ペプチド開発

構造解析

New in-silico target

耐性ウイルスが生まれない

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RNAポリメラーゼ(PA/PB1複合体)

抗体の大量生産確立

PA PB1

PB2

IgGFab

抗体を利用した新たな創薬

PA-PB1結合部位を阻害: ウイルス増殖の阻害

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1

1 37

モノクロナール抗体作製

759 a.a

716 a.a1

Nature. 2009

PA:50-256

Endonuclease

domain

Nat.Struct.Mol.Biol. 2008 PB2:318-483

Cap-binding

domain

PLoS Pathog. 2008

PB2:543-740

RNA binding

domain

757 a.a

Nature. 2008

PA:239-716

PB1:1-15

PA/PB1 complex

EMBO J. 2009

PB1/PB2 complex

PB1:678-757

PB2:1-37

PA

PB1

PB2

H1:15

H5: 5

8X

X

3. 阻害抗体の開発

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input

PA (55kDa)

PB1 (8kDa)

Fab

(HC:23kDa , LC23kDa:)

Marker,

PA11.9抗体の精製(Fabドメイン)

IgG

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PA11.9抗体を細胞へ導入: Fab-ドメイン

MDCK(Madin-Darby canine kidney):

イヌ腎臓由来細胞HeLa細胞:ヒト由来細胞

AlexaFluor488

:Fab蛍光ラベル化

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GST-G196:antibody PA/PB1-antibody

MDCK(Madin-Darby canine kidney):イヌ腎臓由来細胞

H3N2 virus感染

control

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ウイルスの感染機構

PA11.9-antibody:Fab

PA/PB1

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GST-G196:antibody PA/PB1-antibody

MDCK(Madin-Darby canine kidney):イヌ腎臓由来細胞

PA11.9抗体によるRNAポリメラーゼの可視化

control

H3N2 virus感染

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H3N2: HA, NP, M1

polyclonal antibody

H3N2-AlexaFluor594:polyclonal antibody蛍光ラベル化

MDCK cells

H3N2感染

H3N2培養(37°C)

H3N2培養停止(4°C)

H3N2:Polyclonal染色

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Aichi Flu感染(H3N2)後 buddingの経時的変化

Alexa-488PA11.9

anti-Aichi Flu

細胞表面Alexa-594

DIC merge

感染8時間後感染6時間後

感染4時間後感染2時間後コントロール

導入なし

H3N2ウイルス

PA/PB1抗体(Fab)

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Crystal of Fab (PA11.9)

Space group P1(Resolution = 3.0A)

a=65.4, b=80.4, c=98.3,

a=102.6°, b=107.4°, g=92.6°

Condition 25% PEG4000,

0.25M AmSO4

Protein conc. 5.0mg/mL,

Crystal size 0.1x0.03x0.01 mm Heavy chain

Light chain

Structure of Antibody(Fab PA11.9)

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PA-PB1について結晶構造から計算される散乱曲線と実測の散乱曲線を比較しました。2つの散乱曲線は一致せず、またRgも一致しませんでした。結晶構造と溶液中での構造が異なっているか、結晶構造でディスオーダー

している残基の影響などが考えられます。あるいは、ごくわずかに会合体を生じてしまっているために散乱曲線が一致しないという可能性も否定できません。

PA-PB1+FabではFabの結合により、散乱曲線が大きく変化していることが分かります。

PA-PB1-Fab(PA11.9)複合体の構造

- PA-PB1 Crystal (2ZNL)Rg=26.4Å- PA-PB1 SAXS (1.8mg/ml)

Rg=29.2Å- PA-PB1+Fab SAXS (1.8mg/ml)

Rg=42.6Å

散乱曲線の比較

Log I(q

)

q

20

ビーズモデリングを行いました。PA-PB1では結晶構造と近いサイズのモデルとなりました。PA-PB1+FabではちょうどFabが収まりそうなサイズのモデルとなりました。

PA-PB1 Crystal (2ZNL)

PA-PB1 SAXS (1.8mg/ml)

PA-PB1+Fab SAXS (1.8mg/ml)

ビーズモデリング

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B50 Arg

B99 Arg

A97 Glu

B52 Asp

Heavy chain

Light chain

抗原タンパク質CDR

90º

90º

抗体Fab(PA11.9)の分子表面構造

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お問い合わせ先

横浜市立大学研究推進部 研究企画・産学連携推進課

中村 由希

〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22-2

Tel 045-787-8936 Fax 045-787-2025

E-mail [email protected]