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グローブボックスを用いたウイルス噴霧試験と抗ウイルス効果の確認
(地独)神奈川県立産業技術総合研究所光触媒グループ 抗菌・抗ウイルス研究グループ研究員 永井 武
Innovation Hub 2018
高付加価値製品開発のための光触媒フォーラム
①光触媒と試験規格
②抗菌・抗ウイルスの試験規格について
③微生物の種類と感染様式について
④光触媒による抗ウイルスの作用メカニズム
⑤光触媒加工品による抗菌・抗ウイルス試験の概要
⑥実空間での抗ウイルス試験規格
⑦グローブボックスを用いた抗ウイルス試験法
⑧試験結果
⑨KISTEC抗菌試験室の紹介
目次
光触媒反応による評価方法としてJIS規格の制定がおこなわれている。これにより、光触媒反応による様々な効果を謳う製品について適切な評価をおこなうことが可能となった。
セルフクリーニング・防汚機能試験方法JIS R 1703-1、2
抗菌性能評価試験方法JIS R 1702
JIS R 1752
空気浄化機能試験方法
JIS R 1701-1〜5
抗ウイルス性能評価試験方法
JIS R 1706
JIS R 1756
抗かび性能評価試験方法JIS R 1705
水質浄化性能試験方法JIS R 1704
①光触媒と試験規格
②抗菌・抗ウイルス試験規格の経緯
抗菌繊維製品 抗菌加工製品 光触媒加工品
1996年 岡山・大阪で腸管出血性大腸菌(O-157)による集団食中毒が発生
抗菌製品ブーム→ 粗悪品の増加、安全性の懸念など消費者からの批判が増える
1990年 繊維評価技術評議会(SEK)
JIS L 1902制定(繊維・抗菌試験)
1998年 抗菌製品技術協議会(SIAA)発足
2000年 JIS Z 2801制定(平板抗菌加工品の試験)
2006年 ・光触媒工業会(PIAJ)発足
・JIS R 1702制定(UV・抗菌)
・NEDO プロジェクト→実用性の
ある高活性の可視光応答型光触媒の開発に成功
JIS R 1706制定(UV・抗ウイルス)
JIS R 1752制定(可視光・抗菌)
JIS R 1756制定(UV・抗ウイルス)
2013年
2007年
2015年 ISO18184制定(繊維・抗ウイルス試験)
空気清浄機
2009年 新型インフルエンザが世界的に流行
2011年 日本電気工業会
JEM1467 附属書D(浮遊ウイルスの除去性能)
2019年 ISO制定予定(平板・抗ウイルス試験)
光触媒初の製品化光触媒タイル(抗菌・防汚)
1993年
粗悪品の増加
90年後半から、家庭用
空気清浄機に除菌機能が付加され始める。
細菌 バクテリオファージ ウイルス
グラム陰性菌(大腸菌、肺炎
桿菌)
グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)
バクテリオファージQβ
(JIS光触媒抗ウイルス試験株)
バクテリオファージΦ6(JIS規格外)
ネコカリシ
ウイルス(ノロウイルスの代替)
インフルエンザウイルス
おおよその大きさ 3μm 1μm 20nm 30nm 30nm 100nm
増殖の方法 栄養分の存在下自己増殖可
自己増殖不可
(宿主として大腸菌が必要)
自己増殖不可
(宿主として緑膿菌が必要)
自己増殖不可
(宿主としてCRFK細胞が必要)
自己増殖不可
(宿主としてMDCK細胞が必要)
構造の特長
乾燥に対する耐性
主にリポ多糖、外膜、薄いペプチドグリカン層、内幕から
なる
比較的弱い
主に厚いペプチドグリカン層、細胞膜からなる
比較的強い
エンベロープ無
強い
エンベロープ有
強い
エンベロープ無
強い
エンベロープ有
強い
*エンベロープ:主に脂質やタンパク質で構成されており、アルコールや界面活性剤によって不活化し易い。
③微生物の種類と感染様式
③微生物の種類と感染様式
・接触感染
皮膚や粘膜同士の直接的な接触や、汚染された場所や物などへの接触を介して、感染する。(例: MRSAやMDRPなどの薬剤耐性菌、感染性胃腸炎を引き起こすロタ、ノロウイル、結膜炎やプール熱を引き起こすアデノウイルスなど)
・飛沫感染
感染している人により、くしゃみ・咳・会話などによって放出され、病原微生物を含む5μm以上の飛沫が、粘膜に付着して起こる感染。(例:百日咳菌、マイコプラズマ、インフルエンザウイルス、風疹ウイルスなど)
・飛沫核感染(空気感染)
感染している人により、くしゃみ・咳・会話などによって放出され、病原微生物を含む5μm以下の飛沫が蒸発したものが飛沫核となる。それが、空気中に拡散し、他の人に感染する。(例:結核菌、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなど)
抗菌・抗ウイルス製品に関係がある感染様式
④光触媒による抗ウイルス効果のメカニズム
光触媒工業会HPより
⑤光触媒加工品による抗菌・抗ウイルス試験の概要
試験菌/ファージ液
保湿ガラス
密着フィルム/ガラス
試験サンプル
U字ガラス管
シャーレ
保湿用ろ紙(+水)
白色蛍光灯/ブラックライト
シャープカット
フィルタ(可視光照射時、必要に応じて)
試験サンプルを入れたシャーレ
光照射用暗幕
試験サンプルから菌/ファージを回収する
10倍の段階希釈
・・・
コロニー(菌の場合)もしくはプラーク(ファージの場合)の数を測定し、活性値を求める。
JIS L 1902 JIS Z 2801など
↓
インキュベータ内もしくは室温暗所で静置など
光触媒サンプルの場合 光触媒以外のサンプルの場合 ただし、試験片は吸湿性のない平板状製品
(ガラスやフィルムなど)、もしくは繊維製品に限られる。フィルター類はJIS規格の対象外となる。
光触媒加工品による抗菌・抗ウイルス(ファージ)試験 (JIS R 1702、1706、1752、1756)
フィルターは、様々な素材や形状があるため、試験をするためには、試験方法を工夫する必要性がある。
⑤光触媒加工品による抗菌・抗ウイルス試験の概要
光触媒加工品による抗ウイルス(動物感染ウイルス)試験(JIS規格外)ウイルス
宿主細胞
試験ウイルス液
保湿ガラス
密着フィルム/ガラス
試験サンプル
U字ガラス管
シャーレ
保湿用ろ紙(+水)
白色蛍光灯/ブラックライト
シャープカット
フィルタ(可視光照射時、必要に応じて)
試験サンプルを入れたシャーレ
光照射用暗幕
ウイルスを含む培養上清
遠心分離(上清が試験ウイルス液)
ウイルスを回収後段階希釈
宿主細胞
希釈したウイルス液を宿主細胞に接種
希釈倍率
ATP濃度
ATP発光法により
ウイルスの感染価を測定
ウイルス感染価(TCID50)
9
光触媒サンプルの場合
TCID50法 プラーク法
希釈したウイルス液を宿主細胞に接種し、寒天培地を加え数日間培養する。
固定後、メチレンブルーで染色し、プラークの数を計測する
⑥実空間での抗ウイルス試験規格
日本電機工業会JEM1467 (家庭用空気清浄機の性能評価と性能基準)
「空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験方法」
「空気清浄機の室内付着ウイルスに対する抑制性能評価試験方法」
「空気清浄機のフィルターに捕捉したウイルスに対する抑制性能評価試験方法」
「空気清浄機の浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験方法」・推奨評価機関:
(財)北里環境科学センター (財)日本食品分析センター・試験チャンバー:
20m3〜32m3の空間(ウイルスが外部へ出ないような閉鎖空間)・試験ウイルス大腸菌ファージ(φX174及びMS2)インフルエンザウイルス(H1N1, H3N2)(安全面を考慮し、ほとんどがファージによる試験)・試験方法
ウイルスを噴霧し、撹拌用ファンで空間全体に拡散させる。その後、空気清浄機を可動し、経時的に空間中のウイルスを捕集し、ウイルスの不活化を測定する
空気清浄機などの試験品
従来は、家庭用の空気清浄機の噴霧試験を1m3
のチャンバー内で行う事が多かった。
メリット :・実際使用するであろう室内空間と同様の環境で試験ができる。・実際の空気清浄機をそのまま試験品として使用できる。
デメリット:・試験費用が高額 ・バラツキが大きい・素材の研究開発段階での検討が困難
⑥実空間でのその他の試験規格
(公社)日本空気清浄協会
JACA No.50 2016空気清浄機の性能評価指針(業務用〜家庭用)
微生物の項では、カビ、細菌、ウイルスとあるが、株の指定はない。あくまで指針であるので試験の詳細は未記載
SIEJ(室内環境学会)室内環境学会標準法20110001号
「家庭用空気清浄機によるカビ胞子除去性能の評価試験法」(試験対象は、カビ胞子のみ)
AHAM(アメリカ家電製品協会)ANSI/AHAM AC-1 2006「Method for Measuring the Performance of Portable Household Electric Room Air Cleaners 」(試験対象は、タバコ、ホコリ、花粉のみ)
よりスモールスケールでの噴霧試験も重要である。
実空間での噴霧試験
⑦グローブボックスを用いた抗ウイルス試験法
金鍾鎬 教授(全南大学、韓国)のご厚意による公表
・試験品:紫外光応答型光触媒フィルター内蔵の小型空気清浄機(試作機、190x155x45mm)・試験ウイルス: インフルエンザウイルス((H3N2) A/Kita-Kyusyu/159/1993 )
(宿主細胞:MDCK細胞)・試験条件:
内部にUVランプとファンが内蔵しており、個別に制御できる
試験品のスイッチ ウイルス噴霧終了後からの時間
ファン 紫外線ランプ 5 min 10 min 20 min
OFF OFF #1 #4 #7
ON OFF #2 #5 #8
ON ON #3 #6 #9
⑦グローブボックスを用いた抗ウイルス試験法
グローブボックスを用いたウイルス噴霧試験装置
グローブボックス(ガス置換型 120L、庫内はシリカゲルを敷き、低湿度を保つようにする)
ゼラチンフィルター(吸引した気中の菌やウイルスを捕集する。捕集効率は高いが、湿気があると溶けてしまう)
試験デバイス
ウイルス噴霧器(ネブライザー)約108/mlのウイルス液を1ml噴霧
エアサンプラー(内循環、庫内を陰圧にしないように、吸引した排気は庫内に戻す)
吸引( 30L/分 )
排気
プラーク法
ウイルスを捕集したフィルターを培地で溶解する
庫内撹拌用ファン
感染価の測定
⑦グローブボックスを用いた抗ウイルス試験法
撹拌用ファン
ウイルス噴霧
試験品
ファン
UVランプ
サンプリング
庫内UV殺菌
0 5分
1分
1分
1分
10分 20分 30分
1分 1分
40分
10分
撹拌用ファン
ウイルス噴霧
試験品
ファン
UVランプ
サンプリング
庫内UV殺菌
1分
1分
1分 1分 1分
10分
撹拌用ファン
ウイルス噴霧
試験品
ファン
UVランプ
サンプリング
庫内UV殺菌
1分
1分
1分 1分 1分
10分
試験のフロー
⑧試験の結果
試験の結果(単位:pfu/30L)
モジュールのスイッチ
ウイルス噴霧終了後からの時間
ファン紫外線ランプ
0 min 5 min 10 min 20 min
OFF OFF
1.7×107
1.9×106 1.7×105 5.2×104
ON OFF 2.8×105 2.1×104 5.5×103
ON ON 2.3×104 1.0×104 1.5×103
Fan+UV-
Fan+UV+
1 1/10 1/102 1 1/10 1/102 1 1/10 1/102
Fan-UV-
希釈倍率
5 min 10 min 20 min
プラークの写真
1.0E+03
1.0E+04
1.0E+05
1.0E+06
1.0E+07
1.0E+08
1.0E+09
0 min 5 min 10 min 20 min
ウイルス噴霧終了後からの時間
ウイルス感染価
pfu
/30
L OFF OFF
ON OFF
ON ON
Fan UV
⑨KISTEC抗菌試験室の紹介
光触媒製品
JIS R 1702 (紫外光 抗菌)JIS R 1706 (紫外光 抗ウイルス)JIS R 1752 (可視光 抗菌)JIS R 1756 (可視光 抗ウイルス)
【KISTEC抗菌試験室での受託試験一欄】
一般抗菌製品(平板)
JIS Z 2801
一般抗菌繊維製品JIS L 1902
(JNLA登録規格)
その他、規格外の素材(フィルター、砂、コンクリートなど)や液体(消毒薬、抗ウイルス薬)など、ご相談ください。
ネコカリシ及びインフルエンザウイルスを用いた抗ウイルス試験(光触媒製品、一般抗菌製品、
繊維製品、消毒薬、抗ウイルス薬など)
(地独)神奈川県立産業技術総合研究所光触媒グループ 抗菌試験室〒210-0821 神奈川県川崎市川崎区殿町3-25-13川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)4階4c-2TEL 044(280)1181FAX 044(280)1182E-mail: [email protected]
グローブボックスを用いた抗ウイルス試験(準備が整い次第、KISTECでも受託開始予定)