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ハンドボールにおけるゲーム分析に関する研
究 -東海大学春季、秋季リーグ戦と日本代表の比較-
0 A G P1111 城 あさ子 指導教員 平岡 秀雄
Ⅰ 研究目的 東海大学女子ハンドボール部は秋季リーグ戦では、春季リーグ戦のチームと入れ替えな
く同じチームとの対戦であったが、春季リーグ戦が5位であったのに対し、秋季リーグ戦
では4位と順位に大きな差が出た。そこで本研究は、秋季リーグ戦の好結果がどのような
要因によるものかを明らかにするとともに、今後はどのようなチーム構想をもって練習す
べきかを判断するための資料を得ることを目的とした。 Ⅱ 研究方法
2003 年度関東学生ハンドボール連盟春季リーグ戦 1 部( 1 次リーグ) 6 試合、 2003 年度関東学生ハンドボール連盟秋季リーグ戦1部 6 試合、2003 年アテネオリンピックアジア予選兵庫/神戸大会女子 3 試合をビデオカメラで撮影しパーソナルコンピュータで試合分析ソフトを使っていつ、誰が、どういった行為を、どこへ、どうなったかを明らかにした。 試合分析ソフトで入力した東海大学の春季リーグ戦、秋季リーグ戦、アテネオリンピッ
ク予選日本代表女子のデータを攻撃回数、得点場所、得点とシュートミス、保持ミス場所、
保持ミスの種類の観点から分析、比較した。 Ⅲ 結果及び考察 1.攻撃回数及び成功率
図 1 及び図 2 より、春季リーグ戦に比べ秋季リーグ戦の保持ミス率が 7%(全 20 回、1試合平均 3.3 回)減っているのがわかる。それによって秋季リーグ戦では、シュートまでいく割合が増えている。シュートを打つ割合が多くなったことで、シュートミスが増えて
いるものの、得点の割合も 2%( 8 点、 1 試合平均 1.3 点)増加した。 春季リーグ戦では国士舘大学に 1 点差で、茨城大学に 3 点差で負けている。得点の割合
が 2%増えたということは 1点差や 2点差の試合に勝つためには大きな意味をもってくる。 東海大学の秋季リーグと日本代表の間には差はなかったが攻撃回数が多い。
2.得点 東海大学を比べると秋季リーグ戦のほうがポストからの得点が4%(9点、1試合平均
1.5 点)、フローターからの得点が2%(4点、1試合平均0.7点)増えている。しかし特徴的な変化は見られない。日本代表は東海大学に比べ、ロングシュートが主となるフロ
図1東海大学春季リーグ戦結果
109本
33%
121,本
36%
101本
31%得点
シュートミス
保持ミス
図2東海大学秋季リーグ戦結果
134,本
41%
117本
35%
81本
24% 得点
シュートミス
保持ミス
図3日本代表の結果
79本
41%
69本
35%
48本
24% 得点
シュートミス
保持ミス
ーターからの 1 試合平均の得点( 6.7 点)が多い。 3.シュートミス フローターは得点を多く決めている日本代表、秋季リーグ戦、春季リーグ戦の順にシュ
ートミスの割合が多くなっていた。ポストでのシュートミスは春季リーグ戦が1試合平均
1.8本、秋季リーグ戦では1試合平均4本と多くなっている。シュート確率から言って
も秋季リーグ戦のほうが良くない。日本代表はシュートミスが1試合平均2本で成功率か
らも一番良くなっている。これはゴールに近い場所からの得点力があることを示す。 4.保持ミス
春季リーグ戦と秋季リーグ戦を比較すると
全ての場所で保持ミスが減っていることがわ
かる。日本代表は秋季リーグ戦より1試合平
均で保持ミスが多いが、フローター、サイド
では秋季リーグ戦より少ない。 フローターでの保持ミスはパスでのミスが多
い。東海大学はオーバーステップとラインク
ロスでのミスが少なくなるが、パスミスは秋
季リーグに増加した。日本代表のミスは少な
く、大学生のトレーニング指標になると考える。 Ⅳ まとめ 1.東海大学の春季リーグ戦と秋季リーグ戦の結果の比較 秋季リーグ戦では春季リーグ戦より得点率が高く、保持ミス率が低くなった。また、保
持ミスが少なくなり、シュートチャンスが拡大して得点を多くできるようになったことが、
秋季リーグ戦で上位(4位)になった原因の一つであると言える。 シュート位置を見てみると、フローターとポストからの得点が増え、シュート確率も高
まった。しかし、フローターのシュート確率は 2 割 5 分程度で、まだまだ向上の努力が必要と考える。 保持ミスは、春季リーグ戦に比べ、ミスの数も割合も減り、特にフローターでのミスが
減少した。 2.日本代表と東海大学の比較 日本代表の攻撃成功率は東海大学の秋季リーグ戦結果と変わらないが、日本代表の攻撃
回数が多いため得点も多い。 攻撃位置からみると、フローターとポストからのシュートの割合は も高く得点も多い。
逆にサイドでの得点が少なく、シュート成功率も低い。ポストでの保持ミスが多く、サイ
ドでのミスが少ない。 以上のことより東海大学は今後保持ミスを減らす努力をする必要があると考える。ミス
を減らすことはチームにとって重要な課題であるので、今後の練習課題とすべきと考える。 東海大学のフローターでのミスは、パスミスが大半を占めているので、パスの正確性を
上げていくことが重要になってくる。また、シュートチャンスでありながらチャンスを潰
すことのないよう、普段の練習からミスについてお互い厳しくしていけばミスはもっと減
図5保持ミス場所比較(1試合平均)
0 5 10 15
フローター
サイド
ポスト
相手陣地
回
日本代表
秋季リーグ
春季リーグ
ハンドボールのゲーム分析に関する一考察 ―アテネオリンピックアジア予選の比較― 0agp2201 草原 麻奈 指導教員 平岡 秀雄 Ⅰ研究目的 2003年9月23日~28日に神戸で行われたアテネオリンピックアジア予選での全日本の
結果は、近差ではあったものの、4チーム中4位という残念な結果に終わってしまった。日本 チームの敗因を考えたとき、シュートミスと退場が多いと感じた。そこで本研究は、コートを分
割しシュート地域ごとの攻撃回数に着目し、全日本の敗因について検証を試みた。 Ⅱ研究方法 本研究はアテネオリンピックアジア予選で、日本チームが対戦した全3試合を分析の対象とし
た。オリンピックアジア予選でナショナルチーム分析班が使用した、試合分析ソフトによるラン
ニングスコアのデータから集計したものを使い、試合分析を行った。攻撃成功率を分析するため、
得点、シュートミス、保持ミスの数を出した。またシュートを、ロングシュート、サイドシュー
ト、ポストシュート、7mスローの4つの地域及び速攻とカットインシュートの2種類の突破方法で分析した。また、時間経過に退場数の変化を集計した。 Ⅲ結果及び考察 以下に示す表1及び図1、図2は日本チームと、日本と対戦した中国、韓国、カザフスタン
の試合結果の 3 試合を、攻撃成功率、地域別シュート成功率、退場者数の3項目で比較したものである。 1.攻撃成功率 日本は3試合の全得点を合計し、平均値を出した。また対戦相手であった中国、韓国、カザフ
スタンを合計し、その平均値を出し比較した。 (表1 全日本と他国の攻撃結果)
日本チームは他国に比べシュートミ スが 48%と多く、保持ミスは 21%と その割合は他国(34%)と比較しても 低い。特に日本チームのシュート成功率は
40%で他国の 54%に比べ低い。日本チームは他国と比較して、シュートを多用することでボール保持のミスを減らしているといえる。 しかし、相手のディフェンスを突破できずにシュートするケースが増えるので、相手の速攻の機
会やセットオフェンスでの得点の機会を増やすことになるので、日本チームの戦術が得策であっ
たとは言えない。
図1 全日本
31%
48%
21%
得点
シュートミス
保持ミス
図2 他国
36%
30%
34%
得点
シュートミス
保持ミス
得点 シュートミス 保持ミス
全日本 22 33 15
他国 23 19 22
2.シュート地域、状況別シュート結果 日本と他国を地域別に分けて表したものが図3、図4である。
図3 日本
6
2
1
4
4
5
25
3
3
1
0
0
0 5 10 15 20 25
ロング
サイド
ポスト
カットイン
PT
FB
ポジション
回
シュートミス
得点
図4 他国
3
2
4
3
5
6
8
4
2
1
1
1
0 5 10 15 20 25
ロング
サイド
ポスト
カットイン
PT
FB
ポジション
シュートミス
得点
日本チームのロングシュートミス(25回)が他国チーム(8回)に比べて圧倒的に多いことが
分かる。ロングシュート以外の得点は、ほとんど変わりなく他国と同様に得点していることが分
かった。 日本チームはロングシュートでのミスが多く、ポストシュートでの得点が少ないと言える。 3.退場数
図5は日本の3試合と、日本と対戦した中国、韓国、カザフスタンの退場数の平均値をグラフに
したものである。日本チーム平均退場回数は他国に比べ少なくなっていることが分かる。 日本は他国に比べ、数的に優位な機会が多い有利な状況で戦うことが出来ているといえる。
ただ、この間の得点は日本チームが7点であったのに対し、他国チームは4点であった。以上の
ことから、日本チームが数的優位な状況で有効に得点できなかったのが、敗因及び引き分けの原
因の1つとしてあげることが出来る。
Ⅳまとめ 日本チームはシュートを多用し、保持ミスからの相手の得点を減らしているといえるが
シュートミスの多さが相手の得点チャンスを増やしたといえる。また、相手選手の退場中に十分
得点できていなかったことも、敗戦や引き分けの原因といえる。
図5 全日本と他国の退場数
0 0
1 11 1 1
2
0
1
2
3
0~15 15~30 30~45 45~60
分
回
全日本
他国
ハンドボールの攻撃に関する戦術分析
-アテネオリンピックアジア予選男子に着目して-
0AGP1206 内
野智 指導教員 平岡秀雄
Ⅰ 研究目的 本研究はハンドボール競技において、アテネオリンピックアジア予選男子を勝利チームと敗
北チームの導入形態、突破方法、得点パターンを明確にし、比較分析することにした。その結果、
どのようなチームが勝利するのかを明確にすることを目的とした。 Ⅱ 研究方法 本研究では、アテネオリンピックアジア予選男子(兵庫・神戸)の6試合をビデオカメラを用
いて録画し、そのうち5試合を対象とする。次に、全日本の試合における戦術を分析するため、
開発された多用途ゲーム分析ソフトを用いて、各試合をデータに入力し、全試合をエクセルにま
とめて比較分析をした。 また分析をする際に多用途ゲーム分析ソフトは以下のような項目に分けた。 項目 1に『チーム名・3;3・Pチェンジ・3;3⇒4;2・4;2・1B・2B・3B』、項
目2に『クロス・パラレル・ブッロク・個人』、項目3に『成功・失敗・PT成功・PT失敗・K
ミス』とした。 Ⅲ 結果及び考察 1) 各導入形態別攻撃成功率・得点数・突破方法別得点数
図 1は導入形態別得点を勝利チームと敗北チームで比較したものである。勝利チームは敗北チームより、ほぼ全て
の導入形態で得点が多く、なかでも3-3、1次速攻(1B )、での得点が勝利チームの方が多い。 また、6対 5の様な数的優位な状況でも勝利チームが敗
北チームを得点が上回っている。 5対 6の様な数的不利な状況勝利チームは敗北する相手
チームの防御を数多く突破できることが予想され、相手の
退場を促す結果も推察できる。また、数的有利な状況で多
く得点することも予想された。
図 2、図 3は攻撃の最終局面である突破方法を勝利
チームと敗北チームを比較したものであり、図 1を具体的に表したものである。突破方法の、その大半
が個人技とパラレルプレーで数的有利な場面を作り、
得点していた。これは、勝利チームも敗北チームも
同様の傾向を示した。
2) 攻撃失敗時の導入形態別攻撃回数
図 4、図 5は攻撃失敗時の突破方法を勝利チームと敗北チームを比較したものである。ここでは攻撃
成功回数のときよりもはっきりと勝敗の違いが出て
いるのがわかる。なかでも3-3、3-3⇒4-2
の失敗回数が敗北チームの方が多い。 また 5対 6の数的不利の状況下で勝利チームは 13
回の攻撃回数で 4回の失敗だが、敗北チームの場合は 21回の攻撃回数で 16回も失敗しているという大きな差が出てしまっている。
またここでも大半が個人技とパラレルプレーで数的有利な場面を作り、攻撃している。これも
勝利チームも敗北チームも同様の傾向を示している 3) 導入形態別合計攻撃回数
図6は導入形態別の合計攻撃回数を勝利チームと敗北チームを比較したものである。勝利チームは合計 317回に対して、敗北チームは合計 342回と攻撃回数は敗北チームの方が多い。 勝利チームは合計攻撃回数こそ少ないが、その数少ない得点チ
ャンスを効率よく得点出来ている。一方、敗北チームは攻撃回
数が多く、攻め込んでいる様に見えるのだが攻め倦んでしまっ
ていることが推察できる。 また 5対 6の数的不利の状況下で敗北チームは勝利チームに
比べて退場者が多く出てしまっている。結果、自ら数的不利な
状況下を作ってしまい、無理な攻撃を強いられてしまっている。 Ⅳ.まとめ 1.勝利チームは、様々な導入形態で攻撃しており、シュート成功回数、シュート成功率におい
て敗北チームを圧倒した。 2.敗北チームはシュート回数こそ多いのだが、攻め倦んでしまう結果になった。 3.退場者が出た時に勝利チームは、6 対 5 の時は数的有位をどんどん利用し、シュート成功率
を上げ、5対 6の時はいつも以上に動き、OF,DFともに安定していた。 4.お互いに退場者は出たのだが、敗北チームは 6対 5の状況下では、勝利チームより少しだけ
劣っており、5 対 6 のような数的不利の状況下になったとき、敗北チームはシュートミス、失点、自滅が勝利チームより目立った。
今回の予選において、両チームとも突破方法は個人技とパラレルプレーが大半だが、敗北する
チームはシュートミスが目立ち、自滅してしまう。また、6 対 5 での数的有位の場面では多少の差だが、5 対 6 での数的不利の状況下になった時、シュートミス、失点を重ねてしまっていることにより、敗北してしまう。 一方、勝利するチームは様々な導入形態で攻撃し、ほとんどのシュート成功回数、シュート成
功率が敗北チームを圧倒した。また 6対 5での状況下では数的有位の場面でチャンスを確実に活かし、5 対 6 での状況下では数的不利の場面にも関わらず、自分達がやるべきことが明確であることにより、勝利に近づくのだ。
1
ハンドボールのゲーム分析に関する一考察 ―東海大と他大学、全日本との比較―
0AGP5216 前田 香織 指導教員 平岡 秀雄
Ⅰ 研究目的 本研究は、東海大学の春季と秋季の戦術を中心に比較検討し、その違いを明確にしよう
とした。また、2003年9月23日から28日まで神戸で行われたアテネオリンピック
アジア予選の全日本女子の戦術等と東海大学の戦術等を比較することにより、春季リーグ
戦から秋季リーグ戦の戦術的な変化が、トップチームに近づいていく方向にあるかを確認
しようとした。 Ⅱ 研究方法 1.分析対象 1)2003年関東学生ハンドボール連盟春季リーグ戦 東海大学 対 日本体育大学 東海大学 対 国士舘大学 2)2003年関東学生ハンドボール連盟秋季リーグ戦 東海大学 対 日本体育大学 東海大学 対 国士舘大学 3)2003年アテネオリンピック アジア予選(神戸)
日本 対 韓国 日本 対 中国 各チームの戦術を分析するため、攻撃の導入形態、突破方法、結果の3階層について項
目を設けて分析した。 Ⅲ 結果と考察 1、 東海大学と他大学の春季リーグ戦と秋季リーグ戦の得点比較 東海大学の春季リーグ戦2試合の結果を合計し、攻撃成功率など(第3階層)の割合を
明らかにした (図 1)。 次に、春季リーグ戦の日本体育大学と国士舘大学の結果を合計し、他大学の割合とした(図
2)。続いて、秋季リーグ戦も同様に、各大学の第3階層の割合を出し(図 3、図 4)、春季リーグ戦と秋季リーグ戦の結果を比較した。
22%
36%3%
2%
37% 成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
28%
37%
5%
1%
29%成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
図 1 春季リーグ戦(東海) 図 2 春季リーグ戦(他大学)
2
33%
39%
2%
0%
26%
成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
25%
46%
2%
2%
25%
成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
図 3 秋季リーグ戦(東海) 図 4 秋季リーグ戦(他大学) 東海大学は、春季リーグ戦に比べて秋季リーグ戦のシュート成功率が上がり、保持ミス
の割合が低下した。逆に、他大学は図 2,4 に示した通り、春季リーグ戦に比べてシュートミスの割合が高くなっていた。これは東海大学が、春季リーグ戦よりも攻撃力が向上し
たことを示すものであると同時に、秋季リーグ戦において東海大学のディフェンス力も向
上したことを推察するのに値する資料といえる。 2、日本代表と秋リーグ東海大学の比較 アテネオリンピックアジア予選での日本の2試合の結果を合計して第3階層の割合を明ら
かにした (図 5)。図 6 は東海大学の秋季リーグ戦結果である。
26%
35%
8%
1%
30% 成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
33%
39%
2%
0%
26%
成功
失敗
PT成功
PT失敗
保持ミス
図 5 日本の結果の攻撃割合 図 6 東海大学秋リーグの攻撃割合 日本チームの成功率(26%)は東海大学(33%)よりも低く、保持ミスも多い。またア
テネ予選で、日本チームは大学生の試合よりもペナルティーでの得点割合が高い。世界レ
ベルの試合ではより激しい接触が起こっていると思われる。 Ⅳ まとめ 以上の結果から、東海は春季リーグ戦から秋季リーグ戦にかけての半年間で、様々な面
でチームの競技力が向上したと言える。特に春に比べて秋は東海大学の得点が増え、失点
が減った。東海大学のディフェンス力の向上は、他大学のシュートミスが春季リーグ戦と
秋季リーグ戦とで大きく違うことからも分かる。 ハンドボールはチームスポーツなので、個々の成長が、チームの成長に大きく関わって
きたものと考える。 また、本研究では日本のトップチームである日本代表を、より高いレベルの見本として
参考にしようと思い、秋季リーグ戦の東海大学のデータと比較してみた。しかし、実際に
はレベルの違いはあるものの、それほど大きな違いは見当たらなかった。
ハンドボールの戦術に関する一考察
―日本と中国の戦術・攻撃割合の違い― 0AGP1210 中
川 文 指 導 教 員 平 岡
秀雄 Ⅰ 研究目的
2003 年アテネオリンピックアジア女子予選に出場した 4 チーム(日本・韓国・中国・カザフスタン)を分析し、総当たり戦の結果 1位となり、オリンピックの出場権を手に入れた中国女子チームと、4 位で最下位となってしまった全日本女子チームの戦術の違いを明確にすることを目的とした。
Ⅱ 研究方法 1. 調査資料 下記チームがアジア予選で対戦した際に撮影したVTRを利用し分析した。
女子 日本 vs韓国 日本 vsカザフスタン 日本 vs中国 中国 vs韓国 中国 vsカザフスタン
2. 調査器材 パーソナルコンピューター・VTR・TV 戦術を分析するため、平岡1)らが開発した「多用途ゲーム分析ソフト」を用いた。
3. 分析方法・手順 1)多用途ゲーム分析ソフトの第一階層に、攻撃導入時の形態を、第二階層には突破のプレーを、第三階層にプレーの成否を設定し入力した。
2)ビデオを見ながら攻撃パターンを多用途ゲーム分析ソフトに入力する。 Ⅲ 結果及び考察 1.2003年アテネオリンピックアジア予選順位 中国 2勝 1分け・韓国 1勝 2分け・カザフスタン 1勝 2敗・日本 2敗 1分であった。その結
果、中国が第 1 位でオリンピックの出場権を獲得し、第 2 位韓国・第 3 位カザフスタン・第 4位日本となった。日本は勝利を収めることなく最下位に終わった。 2. 保持ミス時の導入形態・攻撃パターン
0 5 10 15 20 25
3;3
Pチェンジ
3;3;4;2
4;2
1B
2B
3B
6vs5
5vs6
回
クロス
パラレル
ブロック
個人
0 5 10 15 20 25
3;3
Pチェンジ
3;3;4;2
4;2
1B
2B
3B
6vs5
5vs6
回
クロス
パラレル
ブロック
個人
図 1日本の導入形態保持ミス 図 2中国の導入形態保持ミス 日本・中国とも 3-3攻撃での保持ミスが多く、特に中国は 3-3攻撃での保持ミスが非常に目立
つ。中国は 3-3攻撃以外の保持ミスはどれも同じ位の失敗回数だが、日本は 3-3攻撃の次に 3-3攻撃から 4-2攻撃への変化・ポジションチェンジでの攻撃が多く、4-2攻撃・3次速攻(3B)での保持ミスがない。以上のことから、日本は、セットオフェンスでの攻撃が多く、セットオフェ
ンスでの保持ミスが多くなったものと思われる。 以上の結果から、日本チーム、中国チームとも個人的な保持ミスが多く、チームの基本戦術と
いえる日本のクロスを含む攻撃や中国の3-3攻撃で多くのミスが見られた。 特に中国の個人的なミスは多く、日本チームよりミスの多い未熟なチームであることは
推察できるので、日本チームは中国のミスを利用して得点に繋げられれば、勝利に結び付けられ
たのではないかと考える。 3.攻撃割合・攻撃回数
52回
28%
46回
24%
5回 3%
14回
7% 72回
38%
成功
失敗
PT成功
PT失敗
Kミス
54回
28%57回
29%
4回 2%
7回 4% 73回
37%
成功
失敗
PT成功
PT失敗
Kミス
図 5 日本の攻撃割合と回数 図 6 中国の攻撃割合と結果 日本と中国のシュートが成功した割合や回数に差は見られないが、ボールを保持してのミスは、
日本が 46回、中国が 57回と 11回の差があり、PT成功は日本 14回、中国 7回と 7回の差があった。 中国の保持ミスが多かった点を見逃さず、旨く(速攻などで)攻められれば、日本にも十分勝
利の機会があったと思われる。また、日本の 7mスロー(PT)による得点が多かったのは、日本が 3 試合で 20 回の7mスローに対し、中国は 11 回で、日本に圧倒的に多くの7mスローを与えられた結果である。 Ⅳ まとめ 本研究は日本と中国に、戦術・攻撃割合に違いがあるのかを明確にしようとするものである。
その結果、以下のようなことが分かった。 1、日本 *攻撃導入の形態は、3-3システムの攻撃からポジションチェンジを含むクロスプレーを使い攻撃する。
*得点は個人技能によるものが多く、個人のミスも多い。 *速攻は一次速攻のみで、2次、3次速攻は殆んどない。
2、中国 *攻撃導入の形態は3-3システムと速攻が中心である。 *得点は個人技能によるものが多く、コンビネーションを使ったものは少ない。また、ミスも
多い。 * 速攻での得点は 1次速攻が大半でミスも多く、2次、3次速攻はミスが目立つ。