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平成 23 年度 ザンビア共和国 カナカンタパ地区 灌漑開発計画事業 報 告 書 平成 24 年 3 月 社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会 (ADCA)

カナカンタパ地区 灌漑開発計画事業 - ADCA · (3) この地区には小規模農家を対象としているが、事業完成後の施設の維持管理や、生産した

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平成 23 年度

ザンビア共和国

カナカンタパ地区

灌漑開発計画事業

報 告 書

平成 24 年 3 月

社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会 (ADCA)

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まえがき

本案件は、平成 22 年に JICA により実施した「アフリカ地域灌漑案件形成調査」において調査

を行った 4 ヶ国(ウガンダ・ザンビア・ガーナ・マリ)の中でザンビア国における最優良案件と

して抽出、提案した案件である。

本案件は、AfDB 及びフィンランド政府の援助により実施されている、小規模灌漑事業(SIP)

地区の中の一地区である。2012 年 2 月時点で、ダムの設計及び工事建設のための入札図書等は、

ほぼ完了しておりザンビア政府は早急にダムの建設工事の入札及び着工を念頭に、準備中である。

しかし、ダムの高さは約 20 メートル程度であるが、貯水量は 2,500 万トンとかなりの規模であ

るにも関わらず、現時点ではこの貯水量に対する灌漑可能面積の算定が行われていないばかりか、

灌漑地区の実施は、現計画で 620ha のみを実施することとしている。従って、ザンビア政府はこ

の事業の進捗に合わせて早急に、全体の灌漑事業計画及びその実施について調査検討を行うドナ

ーを探している。また、この計画は、ダムを建設し貯水池を利用する計画であるがザンビアでは、

あまり重力灌漑を考えた貯水池利用を検討していないため、貯水池から直接ポンプにより揚水し、

ナイトレザバーで調整し畑地灌漑を行いうこととしている。このため、日本のため池等で通常行

われている貯水池のヘッドを利用した重力灌漑により、ダム下流における水田灌漑のポテンシャ

ルが高く、日本の技術を導入した効果的な灌漑開発計画を立案することが本事業の更なる効果発

現とエネルギー節減による灌漑開発計画の立案が可能であると考えられる。

最近我が国の外務省においてザンビア国における「国別援助方針」が策定されつつあり、この

中にも灌漑面積の拡大も念頭にザンビア政府に対する農業開発に対する援助方針が定められよう

としている。本事業の F/S を実施するに当たり、下記に示すような国別援助方針に沿った効果的

な実施が考えられ、日本政府による F/S の実施が望まれると考えられる。

(1) 国別援助方針の中で小規模農家を対象にした灌漑面積の拡大が重要な援助方針となって

いる。本地区の受益地区は、小規模農家を対象としている。また、灌漑対象地区は F/S に

より詳細を決定することとなっているが、約 3,000~4,000ha の規模であり、TICAD-VI

において日本が約束した 10 万 ha の灌漑面積の拡大に大きく寄与できる。

(2) 首都であるルサカに約 30km 以内の距離に位置しており、大消費地を控えた極めて市場性

が高く栽培作物の多様性が期待できる。

(3) この地区には小規模農家を対象としているが、事業完成後の施設の維持管理や、生産した

農産物の市場流通を考えた官民連携(PPP)の導入を図り、より機能的な施設の維持管理

や付加価値を考えた市場流通への民間知識の導入を図ることを考えている。

(4) 日本の援助は、種々の援助機関との連携、協調融資を念頭に事業の推進を図ることを考え

ており、本案件は AfDB/フィンランドとの連携事業として推進することが出来る。

(5) 今回の受益地区については、AfDB/フィンランドにより建設されるダムの貯水量を効果的

に利用するために、重力灌漑施設の整備による水田灌漑を進めることとしており、日本の

稲作推奨に合致した事業を進めることが出来る。

上記のように、本事業の 1日も早い F/S の実施が望まれる次第である。

また、本案件の調査に当たり在ザンビア日本大使館の江川大使及び加藤書記官ならびに

JICAザンビア事務所の田中企画調査員、農業畜産省JICA派遣アドバイサーである杉本専門家、

ならびにザンビア政府関係機関及びフィンランド大使館の担当者の方々のご協力に感謝する

次第である。

平成 24 年 3 月

ADCA 調査団団長 小林 稔昌

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Kanakantapa Irrigation

Originally Planned

Irrigation Area

(2,000ha in which

620ha will be

implemented.)

Proposed

Additional

Irrigation Area

(3,000ha)

Proposed Dam

Proposed Reservoir Area

Storage V=25.0 million m3

Project Map of Kanakantapa Irrigation Development Project

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略 語 表

Acronyms and Abbreviations

略語 正式名称 和文訳

AASB Agricultural Advisory Service Branch 農業サービス部

ADF African Development Fund アフリカ開発基金

AfDB African Development Bank アフリカ開発銀行

CARD Coalition for African Rice Development アフリカ稲作振興のための 共同体

CDC Central Depository Company CDC 投資会社

CPB Crops Production Branch 穀物生産部

DBZ Development Bank of Zambia ザンビア開発銀行

DOA Department of Agriculture 農業局

DWA Department of Water Affaires, MEW 水関係局、エネルギー水省

EC European Commission 欧州委員会

EIA Environment Impact Assessment 環境影響評価

EIRR Economic internal rate of return 経済内部収益率

F/S Feasibility Study 実施可能性調査

FAO Food and Agriculture Organization of the United Nations 国連食料農業機関

FSP Fertilizer Support Program 肥料支持プログラム

FISP Farmers Inputs Support Program 農民入力サポートプログラム

IDF Irrigation Development Fund 灌漑開発基金

IDSP Irrigation Development Support Project(WB) 灌漑開発プロジェクト

IFAD International Fund for Agricultural Development 国際農業開発基金

JICA Japan International Cooperation Agency 国際協力機構

MACO Ministry of Agriculture and Cooperative 農業協同組合省 (旧名称)

MD Meteorological Department 気象局

MEW Ministry of Energy and Water Development エネルギー・水資源開発省

MOAL Ministry of Agriculture and Livestock 農業畜産省 (新名称)

MOD Ministry of Land 国土省

NGO Non-Governmental Organizations 非政府組織

NIP National Irrigation Plan 国家灌漑計画

NIRS National Irrigation Research Station 国家灌漑研究所

PACO Provincial Agriculture Coordinator 州農業コーディネーター

PAO Provincial Agricultural Office 州農業担当者

PPP Public Private Partnership 官民連携手法

RIF Rural Infrastructure Fund 地方インフラ基金

SAO Senior Agricultural Officer 上級農業官

SF Smallholder Fund 小規模基金

SIP Small-Scale Irrigation Project(AfDB) 小規模灌漑プロジェクト

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略語 正式名称 和文訳

SNDP Sixth National Développement Plan 国家開発計画

TAF Technical Assistance Fund 技術支援基金

TSB Technical Service Branch,;MACO 農業協同省技術部

UA Unit of Account 計算貨幣

USAID United States Agency for International Development 米国国際開発庁

WB World Bank 世界銀行

WP Water Department 水資源局

WfP Water for Production 生産用水

ZG Zambian Government 「ザ」国政府

ZIPS Zambia Irrigation Policy and Strategy 「ザ」国灌漑政策と戦略

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目 次

ページ

まえがき .......................................................................... -1-

Project Map ....................................................................... -2-

略 号 .......................................................................... -3-

目 次 .......................................................................... -5-

1.国別援助方針における農業農村開発分野の位置づけ .................................... 1

1-1 外務省による国別援助方針の策定 .................................................. 1

1-2 ザンビア国に対する国別援助方針 .................................................. 1

2.国家開発計画などにおける農業農村開発分野の位置づけ ................................ 3

3. 我が国のザンビア国に対する支援状況 .............................................. 6

3-1 過去 10 年間のプロファイ実施状況及び採択/利用状況 ................................ 6

3-2 過去のプロジェクト実施状況及び現行のプロジェクト(JICA ナレッジサイト) ......... 6

3-3 農業農村開発分野の援助の方向性及び重点領域 ...................................... 8

3-4 平成 23 年度計画プロファイの位置づけ ............................................. 8

3-5 農業農村分野実施済み案件レビューと今般 PF 調査の狙いと目的 ....................... 9

3-6 現地派遣者情報 ................................................................ 10

4. カナカンタパ灌漑地区の概要 ..................................................... 10

4-1 小規模灌漑事業(SIP)の概要 .................................................... 10

4-2 カナカンタパダムの設計状況.................................................... 12

5. 現地調査結果 ................................................................... 15

5-1 調査日程及び面談記録 .......................................................... 15

5-2 現場調査 ...................................................................... 16

6. 今後の事業の展開方向 ........................................................... 16

6-1 F/S 調査内容 ................................................................... 16

6-2 調査工程案 .................................................................... 19

ANNEX

Annex-1 事業概要

Annex-2 現地調査要員及び調査日程

Annex-3 収集資料リスト

Annex-4 現地の調査写真

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1.国別援助方針における農業農村開発分野の位置づけ

1-1 外務省による国別援助方針の策定

外務省は 2011 年度に今までの「国別援助計画」を昨年 6 月に公表した「ODA のあり方に関する

検討 最終とりまとめ」において,「国毎の援助の重点分野や方針を一層明確にするため,国別援

助計画を簡潔で戦略性の高いものに改編する。そのため,内容及びプロセスを簡素化・合理化し

た上で,原則として全ての ODA 対象国について策定する。」こととなり,以下のとおり見直すこ

ととなった。

1)名称を「国別援助計画」から「国別援助方針」に変更。

2)原則として全ての ODA 対象国について策定。

3)内容を簡素化し(本文は最大 2 頁),策定プロセスを短期化・迅速化。

4)事業展開計画を統合し,国別援助方針の付属書類と位置づける。

上記の趣旨の基、ザンビア国の国別援助方針は、現地 ODA タスクフォースの意見を踏まえ平成

24 年 3 月に基本的な素案が策定され、現在 3 月 7 日~4 月 3 日の期間パブリックコメントを募集

している最中である。これを基に近日中に最終の「国別援助方針」が策定され、公表される予定

である。この策定中の援助方針としては以下のとおり示されている。

1-2 ザンビア国に対する国別援助方針

(1) ザンビア国に対する援助の意義

ザンビア共和国は、独立以来政治的に安定しており、民主主義も定着している。地域共同体で

ある東南部アフリカ共同市場(COMESA)1 の本部があるほか、南部アフリカ開発共同体(SADC)

の加盟国であり、地域の難民を積極的に受け入れるなど、南部アフリカ地域の政治的安定と民主

主義、経済発展に貢献している。また、ザンビアは銅やコバルトなどの鉱物資源に恵まれ、我が

国の重要な資源供給国である。

ザンビアは鉱業に依存した経済からの脱却を目指し、経済の多様化を掲げた開発政策を長年採

ってきた。近年は、周辺国や自国の経済成長によって国内外の非鉱物製品の需要が拡大し、その

貿易量が増加するなど、経済の多様化の兆候が見え始めている。また、銅価格の高騰にけん引さ

れる形で、2004 年以降は GDP 成長率 6~7%と高度成長を実現している。これらを背景に、ザン

ビアに対する我が国の商社やメーカーなどの関心が高まりつつある。

しかし、産業発展に欠かせない交通網や電力など、経済インフラは脆弱で、教育や医療、給水

衛生施設などの社会インフラも未発達であることから、依然として貧困率は地方農村部を中心に

高い水準にある。

2011 年 9 月に発足したサタ新政権も、前バンダ政権に引き続き、上述のような課題を克服しつ

つ、経済社会開発を進める努力を行うとしている。こうした自助努力を支援し、ザンビアの経済

社会開発を促進することは、ザンビアにとってのみならず、南部アフリカ地域の安定と繁栄並び

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に民主主義の定着にも貢献するものである。また、日本とザンビアの経済関係強化にも役立つも

のである。

(2) 援助の基本方針(大目標)

基本方針としての大目標を「鉱業への過度の依存から脱却した裾野の広い持続的経済成長の促

進」を掲げている。

ザンビアは銅の国際価格の上昇に伴って国民所得が上昇したことから、2010 年世銀の格付け分

類によって「下位中所得国」(GNI 1,070 US$ ;2010 年世界銀行)として格付けられた。しかし、

貧困レベルは依然として高いままである。このため、特に総人口の 7 割が従事する農業と持続的

経済成長のけん引役となる製造業の底上げ、成長を支えるインフラ整備・強化、及び社会基盤の

整備や人材育成の環境整備を支援する。

(3) 重点分野(中目標)

1) 産業の活性化

農業及び製造業において、外国資本の大企業とザンビア国内の零細・中小企業との生産性格差

は大きく、市場は大企業が独占しているため、ザンビアの雇用の 91%を占める零細・中小企業や小

規模農家は、市場への参入機会が限られており、ザンビア経済全体の底上げの阻害要因となって

いる。そこで技術協力を中心に、中小・零細企業のビジネス能力向上やビジネス環境制度の改善

支援を行い、製造業の成長率や全輸出に対する割合の向上を後押しする。また、農業においては、

主食であるメイズのみを栽培する農家が大半であり、天水に依存した栽培を行っているため、生

産性が低いだけでなく、低収量となっている。このため、技術協力を通じて、灌漑面積の拡大や

食用作物の多様化を支援する。

2) 経済活動を支える基礎インフラの整備・強化

ザンビアは内陸国であることから、経済活動のための運輸経路の整備が重要であるにも関わら

ず、国内の道路は未整備もしくは維持管理不足が著しい。このため、主要幹線道路の整備および

維持管理能力の強化を支援し、物流に関わる運輸コストの低減を図る。また、電力の安定供給が

課題となっているため、発電施設や送配電網の整備を支援し、電力へのアクセス向上を図る。

3) 持続的な経済成長を支える社会基盤の整備

ザンビアにおける平均寿命は48 歳であり、且つ人口の半数が15 歳未満である。この背景には、

安全な水・保健サービスへのアクセス率が低いという事情がある。また、学力も東南部アフリカ

において最下位にあり、これは教室数と教員数、教員の教授能力の不足が理由として挙げられる。

そこで我が国は、給水衛生および保健サービスへのアクセス改善、教育の質の向上を支援する。

更に詳細な内容として、対ザンビア共和国の事業展開計画(案)において、農業分野について

は、上記重点分野である 1)産業の活性化、として「開発課題 1(小目標)国内製造業及び農業の

活性化のための生産性の向上及び生産の安定化」のための協力プログラムとして「農業の生産の

安定化と生産性の向上」として具体的に「農家の 9 割以上を占める小規模農家を主な対象とし、

現地適応技術の普及による作物多様化の推進と灌漑面積の拡大により、農業の安定的な生産量と

生産性の向上を図ることで小規模農家の市場参加を促進する。」ことを掲げている。

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また、「開発課題2(小目標)経済活動活性化のための物理的インフラの改善」のための協力プロ

グラムとして「農業・製造業に係る物流の円滑化」を図ることとし「農業生産物及び国内製品の

輸送コスト軽減に資する交通網(道路・鉄道)を整備し、物流の円滑化を図る。」ことも掲げて

いる。

2.国家開発計画などにおける農業農村開発分野の位置づけ

(1) 農業政策の変化

ザンビア政府は、1990 年代以前の政策を振り返り、農民の助成金への過度な依存体質から脱却

を図るべく、1992 年に構造調整政策の実施に伴い、農業改革へ動き出した。その中心は、農業部

門の自由化と生産、流通、金融などへの民間企業の参入促進であった。

1996~2001 年の農業部門投資計画(ASIP)は、農業部門の市場経済への移行を容易にするため

に、①食糧安全保障、②所得と雇用の創出、③土地・水などの資源の維持・改善、④工業開発へ

の貢献、⑤農産物輸出の拡大の 5 つの目標を掲げた。これらの目的達成のために、農業流通の自

由化、作物生産の多様化、畜産振興、小規模農家へのサービス重視、遠隔地の経済機会拡大、女

性の地位向上、水資源利用の改善、農業適地の完全利用等の戦略を設定した。同時に農業部門投

資計画は、今までの旧 MACO 農業・協同組合省の再編と地方分権の推進を前提としていたが、再編

が進展しなかったことなどから期待された成果を上げられなかった。

農業部門投資計画の後継政策として策定された「農業商業化計画(ACP)2002-05」は、貧困削減

戦略文書(PRSP) 2002-2004 の農業部門計画と連動した計画に位置づけられた。同 PRSP では、農業

部門の重点として、①1990 年代当初以来の政策改革の完遂(農業投入財と農産物の流通政策の明

確化)、②法制度の整備・改革、③農業の生産、生産性と競争力の向上を打ち出している。

2011 年 9 月の大統領選挙の結果、前バンダ大統領は新サタ大統領に政権を譲ることとなった。

この新政権は今までの政府機構に付いても手を加え、農業協同組合省(MACO)も農業畜産省

(Ministry of Agriculture and Livestock (MoAL))と名称及び機能を改革した。

農業畜産省の中で、灌漑事業をつかさどる部署としては、農業部(Department of Agriculture)

に所属する「技術部」(Technical Services Branch : TSB)が担当することになっている。技術

部は、農業の機械化、灌漑、水管理、農地に関する業務を担当している。

新しい農業畜産省の組織図を次ページに示している。

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(2) 第 6 次国家開発計画(SNDP)

SNDP(2011 年~2015 年)は、「国家ビジョン 2030」に基づいて策定されており、経済成長促進、

貧困削減、雇用創出に焦点をあてた戦略領域として農業部門に重点が置かれている。また、これ

を達成するために、主に作物、畜産、漁業の 3 つの小部門への投資を拡大することに焦点が当て

られている。更に改良品種の利用や研究と普及の連携強化を通じた、栽培面積の拡大と生産性向

上による生産量増加に重点が置かれているほか、環境保全や気候変動への適応を含む持続可能な

農業を推進し、さらに農業インフラの整備と農産物加工・流通技術の改善を含むマーケティング

システムの開発を推進するとしている。

Permanent Secretary Dr. D. Shamulenga

Policy and Planning Mr. J. J. SHAWA

Provincial and District

Coordinating Offices

Policy Analysis

and Statistics DD: Mrs. Emma

MALAWO

Program Planning and M&E

DD: Vacant

Human Resource Management and

Administration Mr. Edwin MWANZA

National Agricultural Information

Service DD: Mutukelwa MUKELEBAI

Assist D: Mr. Lenox KALONDE

Human Resource Development and

Training Mr. Lame KANYUKA

Assist D: Mrs. Jane

PHIRI

Agricultural and

Cooperative Colleges

Food Reserve Agency

Minister Hon. E. CHENDA

Deputy Ministers: Mr. N. BANDA, Brig. Gen. KAPAYA

Permanent Secretary Dr. D. Shamulenga

Zambia Agricultural Research Institute

Dr. Richard KAMONA

Research Division DD: Dr. Medson CHISI

Technical Division DD: Mr. Moses

MWALE

Seed Control and

Certification Institute

Dr. Catherine. MUNGOMA

Agriculture Mrs. Mary CHIPILI

Advisory &

Extension DD: Mr. Albert

CHALEBESA

Crops DD: Mr.

Alick DAK

A

Technical Service DD: Mr. George

SIKULELA

Agribusiness and Marketing

Mr. Green MBOZI

DD: Mrs. K. KATYAMBA

Cooperatives Development

Mrs. A. M. SITWALA

Livestock Development Dr. Benson MWENYA

DD: Vacant

Veterinary Services

Dr. Joseph. MUBANGA

DD: Dr. KABILIKA

Fishery Mr.

Patrick NGALANDE

Capture Fish

DD: Mr. M. K.

KALONGA

Aquaculture DD: Mr. M. CHILALA

Ministry of Agriculture and Livestock Structure, as of March 2012

DD: Deputy Directors

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5

(3) 国家農業政策(NAP)

2004 年に制定された NAP(2004-2015)では、農業の自由化、商業化、公共部門と民間部門の連

携、効果的なサービスの提供等の政策を基本とした。同政策の目的とする展望は、食糧安全保障

を確保し、GDP に貢献する効率的、競争的、持続的な農業の発展である。同政策の中で、①国家レ

ベルと家庭レベルの食糧安全保障、②工業発展への貢献、③農産物輸出の拡大、④所得と雇用機

会の創出、⑤農業関連資源の維持・改善が優先目標として掲げられた。

上記の優先目標の達成のため、同政策では、自由化と民間活力、輸出農産物の品質・安全性確保、

小規模農家向けの農業サービスの強化、適正技術の開発、ジェンダー、環境に配慮した持続的な

農業などを戦略として設定した。

(4) 農産物市場開発計画(AMDP)

マーケティング政策については、FNDP(第 5次国家開発計画)において、9 つの重点分野のひと

つに「マーケティング、貿易及びアグリビジネス振興」が掲げられており、官民連携による農産

物及び生産投入財の効率的かつ競争性・透明性あるマーケティングシステムの開発を促進するこ

とを目指している。同プログラムは、主な戦略として、市場情報の伝達円滑化、農民及び流通関

係者のアグリビジネス能力強化、小規模農家のための農産物及び生産投入財市場の環境整備、及

び農産物の国内外市場への販売促進を挙げている。プログラムの主な裨益対象は小規模農家とさ

れている。

本調査は都市近郊小規模農家の商業的灌漑農業振興を目標としており、小規模農家の組織化を

通じたマーケティング能力の向上に力点を置く上記諸施策及び開発プログラムは本調査の目指す

方向性と基本的に合致している。

(5) 国家灌漑計画(NIP)

気候変動などザンビア国の農業が影響を受けやすい現状を考慮し、旧 MACO は農業全般について

国家灌漑戦略 NIP を策定し、この中で国内の様々な農家レベルに適合した灌漑農業の開発計画を

策定している。NAP、及びまた FNDP において、NIP は持続可能な農業開発を推進する上で灌漑施設

の整備を目標としており、多数の既存灌漑計画の見直しを行い、現状の問題点の解決策を提案し

ている。このような観点から NIP では以下の 4 項目について計画を策定している。

1) 財政及び投資計画

2) 政策及び法整備

3) 組織改革

4) 市場とのリンク

(6) CARD の第 3 回総会の開催と国家稲作開発戦略(NRDS)の策定

第 4回 CARDの総会が 2011年 11月 7日~11日にウガンダのカンパラ市のムニョニョにおいて開

催された。ザンビアはこの CARD の第 2グループの国となっており、この総会において国家稲開発

政策(NRDS 2011-2015)を発表している。

この中で、将来における稲作の面積や生産量について下表のような方向性を示している。

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6

現在及び将来における稲作の面積、単収及び生産量の予測表

年 天水陸稲 天水水田 灌漑田 合計

面積

(1000

ha)

単収

(t/ha)

生産量

(1000t)

面積

(1000

ha)

単収

(t/ha

)

生産量

(1000t)

面積

(1000

ha)

単収

(t/ha)

生産量

(1000t)

面積

(1000

ha)

単収

(t/ha)

生産量

(1000t

)

2008 27.9 1.3 36.9 2.5 1.3 3.3 0.6 1.3 0.8 31 1.3 41

2013 25.2 2.0 50.4 7.2 2.0 14.4 3.6 2.0 7.2 36 2.0 72

2018 21.0 3.0 63.0 10.5 3.0 31.5 10.5 3.0 31.5 42 3.0 126

NRDS の政策的には、コストがかかる灌漑については当面は抑制することとしているが、上記の

表のように灌漑における面積の拡大は予測している。しかし、ザンビアにおける灌漑方式が不安

定な水源である河川からの取水と貯水池を建設してもポンプアップによる灌漑方式を通常行われ

ているような状況では、費用がかかり過ぎると考えているようである。しかも、上表に示されて

いるように単収についても天水田と同じ程度の 3.0ton/ha と考えているのは、いかにも灌漑技術

による単収増による効果をあまり理解していないと考えられる。日本のように河川やダムからの

灌漑による場合も維持管理費が比較的低く抑えられる重力灌漑方式を取り入れることにより、か

なり費用対効果が効率的な灌漑事業も考えられ、日本からの灌漑方式に対する技術の導入が必要

と考えられる。

3. 我が国のザンビア国に対する支援状況

3-1 過去 10 年間のプロファイ実施状況及び採択/利用状況

PF 件数 採択/利用数

H11~H20 年度 開発調査 無償 円借 技協 その他 計 率

0 0 0 0 0 0 0 0

現在の ADCA の資料によると、ザンビア国における農業関連のプロファイはほとんど行われて

いないようである。但し、最近では平成 22 年度プロジェクト事前調査事業 「ザンビア共和国

東部州マサンディル・ニャンパンデ灌漑地区計画調査」が NTCI により実施されている。

3-2 過去のプロジェクト実施状況及び現行のプロジェクト(JICA ナレッジサイト)

(1) JICA ナレッジサイト 期間 案件名 スキーム 分野

2002 年~2009 年 孤立地域参加型村落開発計画プロジェクト 技術協力プロジェクト 農業政策制

2009 年~2011 年 農業・農村開発アドバイザー 個別案件(専門家) 農業政策制

2006 年~2011 年 食糧安全保障向上のための食用作物多様化支援

プロジェクト 技術協力プロジェクト 農業開発

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期間 案件名 スキーム 分野

2009 年~2011 年 都市周辺地域における小規模農家のための灌漑

農業振興マスタープランプロジェクト 開発調査 農業開発

2009 年~2011 年 小規模農家のための灌漑システム開発計画プロ

ジェクト 開発調査 農業開発

2009 年~2010 年 米種子増産支援 個別案件(専門家) 農業開発

2006 年~2009 年 農業・農村開発アドバイザー 個別案件(専門家) 農業開発

2006 年~2008 年 ザンビア・イニチアチブ地域における農村開発

プロジェクト 技術協力プロジェクト 農村開発

2009 年~2014 年 農村振興能力向上プロジェクト 技術協力プロジェクト 農村開発

2006 年~2009 年 家畜衛生・生産技術普及向上計画プロジェクト 技術協力プロジェクト その他農業

開発

(2) 外務省国別・地域別データ(ODA 案件検索 2001 年~)

形態 年度 案件名

無償資金協力 H23 年度 ルサカ南部地域居住環境改善計画

無償資金協力 H23 年度 ンドラ市上水道改善計画

無償資金協力 H23 年度 第二次ルアプラ州地下水開発計画

無償資金協力 H21 年度 ザンビア大学付属教育病院医療機材整備計画

無償資金協力 H21 年度 ンドラ市及びキトウェ市道路網整備計画

無償資金協力 H20 年度 ザンビア柔道連盟に対する一般文化無償

無償資金協力 H20 年度 貧困農民支援

無償資金協力 H20 年度 ルアプラ州地下水開発計画

無償資金協力 H20 年度 リビングストン市道路整備計画

無償資金協力 H19 年度 貧困農民支援

無償資金協力 H19 年度 ンドラ市及びキトウェ市道路網整備計画(1/2 期)

無償資金協力 H19 年度 第三次感染症対策計画

無償資金協力 H18 年度 食糧援助(WFP 経由)

無償資金協力 H18 年度 マラリア対策計画

無償資金協力 H18 年度 第二次予防接種体制整備計画

無償資金協力 H17 年度 貧困農民支援

無償資金協力 H17 年度 第三次ルサカ市道路網整備計画(1 期目)

無償資金協力 H17 年度 第二次ルサカ市小中学校建設計画

無償資金協力 H17 年度 北部州地下水開発計画

無償資金協力 H17 年度 食糧援助(WFP 経由)

無償資金協力 H17 年度 ルサカ市未計画居住区住環境改善計画(2 期目)

無償資金協力 H16 年度 ルサカ市未計画居住区住環境改善計画(1 期目)

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形態 年度 案件名

無償資金協力 H16 年度 食糧援助(WFP 経由)

無償資金協力 H15 年度 感染症対策計画

無償資金協力 H15 年度 リビングストン博物館に対する文化無償

無償資金協力 H15 年度 債務救済のための無償援助

無償資金協力 H15 年度 食糧援助(WFP 経由)

無償資金協力 H14 年度 干ばつ地域給水計画

無償資金協力 H14 年度 債務救済のための無償援助

無償資金協力事業における上記以前の農業農村開発案件の実績としては、下記の 2 案件が実

施されている。

1991 年:カナカンタパ農村開発計画(1/2 期) (5.94 億円)

1992 年:カナカンタパ農村開発計画(2/2 期) (6.80 億円)

1993 年 9 月完成:カナカンタパ農村開発計画(合計 12.74 億円)

1996 年:モング地域農村開発計画 (8.30 億円)

3-3 農業農村開発分野の援助の方向性及び重点領域

ザンビア国の農業の GDP に占める割合は、2008 年において 16.7%であるが、80%の人口が農業か

ら収入を得ており、就労人口の 80%を吸収し、また、過去の銅生産を中心とした鉱業の低迷による

国全体の経済状況の落ち込みを考慮すれば、農業開発はザンビア国の最優先事項であることは疑

う余地はない。

農業生産者は耕作面積により、1) 0.5~5.0ha の自家消費栽培を中心とした小規模農家、2) 10

~20ha を有し、自家消費農産物の他、換金作物を栽培する新興農家、3) 20~60ha を有する中規

模農家、4) 60ha 以上を有し、換金作物を中心に栽培する大規模農家に分類される。このうち小規

模農家は 600,000 世帯あると見られ、このうちの 119,200 世帯は新興農家に分類される。中規模

農家は 100,000 世帯、また大規模農家は 740 世帯と見られ、商業化農業を営んでいる。

2004 年においてザンビア国の食料輸入は 51百万ドルに上っているが、食料輸入のピークは 1992

年、1993 年、また 2002 年の干ばつ年、また 1997~1998 年の洪水年に発生している。ザンビア国

は食料輸入国と位置付けられており、常に食料輸入量が輸出量を上回る状況にある。一方で食料

輸出のポテンシャルは高く、1995 年の 46.5 百万ドルから 1999 年の 133.9 百万ドルまで推移して

いるほか、2005 年には 300 百万ドルを超える農産物を輸出している。(これら輸出農産物の 70%

は砂糖、綿、タバコからなる)。現在の商業的灌漑農業の進展と契約栽培の拡大から多様な輸出

作物の栽培の増加と農業の商業化を促進していることは明らかである。

一方で小規模農家は十分な灌漑手段を持たないことから、干ばつの発生に対しては非常に脆弱

であり、このような社会的弱者に対しては、最低限の自家消費作物の生産基盤である灌漑と、農

民組織化と、販路開拓による安定的な農家収入を維持するための政府施策が強く求められている

状況にある。

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3-4 平成 23 年度計画プロファイの位置づけ

(1) 国際機関の灌漑事業に対する援助計画

世銀は現在 IDSP(Irrigation Development Support Project)を進めており、その中の優先地

区である Group-1 に分類されている 3 地区の実施が間もなく始まろうとしている。世銀はこの

Group-1 に対して全体計画として F/S から事業実施までの全てを行う計画であり、2010 年 3 月に

約 1 億ドルのローンアグリーメントを締結する予定である。この事業の実施期間は 7 年間を予定

しているようである。

また、AfDB は現在実施中の SIP の 5 か所の実施について、予算不足からフィンランド政府から

の無償基金を導入し引き続き事業の実施を進めている。現在カナカンタパ(Kanakantapa)地区の

地質調査を実施しその結果を基に、設計及び建設を業種内容とする企業で URS-Scott Wilson によ

りダムの設計及び入札図書が 2012 年 2 月に完成している。この設計書を基に SIP は建設業者の入

札を 2012 年 3 月中に考えており、業者の選定を行い工事の実施へ向かう予定である。

(2) 本プロファイ調査の位置付け

上記のように、世銀やアフリカ開銀は既に、借款により中・大規模灌漑事業の実施を行いつつ

ある。また、ジンバブエの大規模商業的農業の崩壊に伴い、これらの商業農家がザンビアに流入

してきており、大規模なセンターピボット方式灌漑によるサトウキビ、小麦、メイズ、コーヒー

等の商業的農業が広く行われるようになってきている。また、南アフリカから輸入した、高品質

な農産物がスーパーマーケット等で売られるようになっており、大都市においては、高品質な農

産物に対する市民のニーズも高まりつつあると考えられる。

このように、大規模な商業的農業経営知識に基づいた灌漑事業に対する投資等が実際に行われ

ており、これらのノウハウが、集団経営を行う小規模農家へ移転しつつあると考えられる。実際、

PPP 導入による小規模農家の集団経営方式が 2~3 箇所で行われており、効果が上がっていると言

われている。この小規模農家の商業的農業へ向けた集団経営方式が、政府の貧困対策や農業振興

政策に今後どの程度寄与することが出来るのか、注目されるところである。この国の水資源や土

地資源の豊富さを考える時、小規模農業ばかりでなく、中規模から大規模へと徐々に規模を拡大

させる方向に向かう事は、妥当であると考えられる。

3-5 農業農村分野実施済み案件レビューと今般 PF 調査の狙いと目的

今までの事業の進め方は、主として灌漑施設の建設に主眼が置かれていたようである。これら

の事業が持続的に継続されずに放置された大きな理由として以下の 3 つが挙げられている。

①政府職員の技術の力の低さと責任体制の不明確さ、ガバナンスの欠如

②住民への十分な事業内容の事前説明の欠如

③事業完成後の受益者への営農・維持管理・水管理技術の研修・指導・訓練の欠如

特に①については灌漑事業の担当者がその事業に十分な時間をさけるだけのアサインメント

が行われておらず、パートタイム的な事業管理が行われ、住民の不信感などが増長されていたよ

うである。また、担当職員は農民を指導する能力にも欠け十分な研修訓練が出来ず、コミュニテ

ィとしての水利組合などの維持管理能力欠如などにより、住民は施設の運営管理がほとんどでき

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ず、資金もなく施設を壊れるまで使い切り壊れればそのまま放置するほかは無かったようである。

本プロファイ調査ではこれらの農業灌漑事業に進展の阻害要因となっている政府職員の事業

管理能力の不足、また受益農民に対する営農・維持管理・水管理技術の研修・指導・訓練につい

て、PPP を導入したソフトコンポーネントも事業に組み入れることが重要である。

3-6 現地派遣者情報

平成 24 年 3 月現在

案件名または派遣先 氏名 派遣形態 派遣期間

在ザンビア日本国大使館 加藤 孝 大使館(二等書記官) H23.4.1~H26.3.31

農業畜産省 杉本 亜歴 JICA 個別派遣専門家 H21.7.27~H24.7.26

4. カナカンタパ灌漑地区の概要

4-1 小規模灌漑事業(SIP)の概要

(1) AfDB/Finnish による SIP のカナカンタパ地区

現在 AfDB/フィンランドで実施中の SIP 地区の 5地区については表 1-1 に示している。これら

の地区の内、Nega-Nega 地区及び Buleya Malima 地区については既に AfDB により実施されて

いる。現在 Kanakantapa 地区の実施がフィンランド政府からの無償基金が追加され詳細な調

査が実施される段階となっている。しかし、資金としては全体を実施するには十分でなく、

この地区の実施状況を判断して、日本政府と AfDB/Finnish との連携の可能性が十分期待でき

る状況にある。

表 1-1 SIP(小規模灌漑プロジェクト)地区リスト 計画名 州 郡 受益面積 (ha) 1. Kanakantapa Lusaka Chongwe 620 2. Nega-Nega Southern Mazabuka 595 3. Buleya Malima Southern Sinazongwe 275 4. Nzenga Fishing Camp Southern Sinazongwe 98 5. Kanakanpata dam Lusaka Chongwe 上記 1.の水源である。

この地区については、現在 SIP の事業として Nega-Nega 地区と Kanakantapa 地区の 2 ヶ所

が進行中である。Phase-2 としてフィンランドの無償で Kanakantapa 地区のダム及び 620ha

の実施が既に決まっている。拡大地区に付いてはまだどこのドナーも支援の方向性を示して

いない。ダム容量が 2500 万トンと大きく、拡大地区を実施することにより、投資効果を大き

く向上させる可能性があり、非常に有利な状況である。水源もダムであり、MOAL の実施体制

もかなり整っており有利な案件である。灌漑地区の地形条件としては、ダムの建設を予定し

ているにも関わらず、ダムからのポンプアップにより調整池を設置して左岸側の畑地潅漑を

行う計画となっている。しかし、下流の受益地区の標高を考えると右岸側の地区も含めて十

分重力灌漑を導入できる可能性があり、河川周辺の左右岸の低地に水田を導入することもで

きると考えられる。現在この 2500 万トンの貯水量に対する灌漑可能面積は算定されていない

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ため、下流における水田の導入も合わせ、貯水池容量と灌漑可能面積の算定のための水収支

も合わせて、SIP で実施予定の 620ha も合わせて全体の潅漑計画を見直し日本が F/S を実施

することにより、より効率的なダム運用に付いても検討が可能である。また、フィンランド

大使館との協議の中で日本が拡大地区の F/S を実施した後の工事に付いても追加融資の可能

性があることも表明しており、日本政府との協調融資の可能性も十分考えられる。

(2) 現時点でのカナカンタパ地区の進捗状況及び追加的に必要な検討事項

現時点で環境及び社会環境への影響評価調査は既に完了しており、EIA 調査報告書、貯水

池内の移転住居調査報告書は完了している。また、貯水池内からの移転住民は調査結果から

98 戸あるとしており、すでに下流の受益地区へ移転することに同意している。

現在の調査状況は、SIP の中の地区で AfDB のローンとフィンランドの無償による事業で灌

漑対象地区 620ha と水源であるダム建設を実施するものである。全体のレイアウト図及び灌

漑対象地区の全体(620ha と拡大地区を含む)レイアウト図を巻頭の Project Map に示して

いる。ダムによる貯水量は約 2500 万トンで、全体で約 2000ha~3000ha は灌漑可能であると

考えられている。満水面標高は EL1116m としている。ダム地点の流域面積は 471 km2としてい

る。この貯水量を効率的に利用するための灌漑地区に対する作物計画(ダム下流への重力灌

漑による灌漑水田を考慮する)と全対象灌漑必要水量と流入量とで水収支計画を行い灌漑可

能面積を算出する必要がある。この結果から、カナカンタパ地区の AfDB が実施する 620ha を

除外した拡大灌漑地区の F/S を実施するものである。この拡大灌漑地区についての実施につ

いてもフィンランド国は更に 9 million €の追加無償を検討中であり、これを利用すること

は可能であるとの見解である。

しかし、今回入手した 1/50,000 の地形図によるとダムによる貯水池面積の広さがかなり小

さめに算定されていることが判明した。このため貯水容量は約 3000 万トン以上程度は可能で

ある。その結果灌漑可能面積についても更に拡大可能と判断できる。特に当初計画では左岸

地区のみを対象としているが、右岸地区においても十分広く潅漑可能地区が広がっている。

従って、AfDB による 620ha の開発の他に新規拡大可能面積についてもダム下流の左右岸地区

を対象とし、受益面積は 4,000ha 以上は可能性があると考えられる。この灌漑可能面積につ

いては、日本との協調融資による F/S 調査の時点で貯水池容量の正確な把握と共に、河川流

入量の算定を行い灌漑対象地区の範囲とその地区に適した作物の導入を考え灌漑用水量の算

定を行い水収支計算により、より精度の高い灌漑可能面積を算定することとする。この場合、

出来る限りコストを削減するために重力灌漑方式を導入し水田開発の可能性についても十分

検討することとする。

本事業の主要目的としては次のような項目が挙げられている。

・貯水池建設による安定的な潅漑用水の供給の達成

・小規模農民の農産物生産技術の向上

・農業生産の安定的確保

・小規模農家の収入向上による生活条件の向上

・農産物市場、地域経済の活性化への寄与

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受益地の農家

当初計画されている 620ha の潅漑地区に対する農家戸数は、483 戸となっている。この

数字から考えると農家一戸当たり平均 1.28ha となる。

受益面積は全体で 2,000ha~3,000ha 以上とみられることから、追加の農民移住が必要と考え

られる。上記一戸当たりの面積から考えると約 2,000 戸以上の農家の移住が必要となる。小規模

農家の潅漑農業への意欲は高く、首都圏に近いこともあり市場性も高くポテンシャルが極めて

高い地区であり、これに応募する農家も多く居ると考えられる。

ザンビア国においては、その広大な国土面積と農地の耕作に対する国家との長期契約により

比較的容易に農地の耕作権が入手できることから、小規模農家の土地所有面積は 1~5haとか

なり大きめに設定されている。しかし、小規模農家は天水灌漑の状況では十分な労働力も無く、

まして農業機械の導入なども無く、自分達で耕作できる 1ha 程度を利用しているに過ぎない。し

かし、潅漑事業が進められ灌漑用水の確保が補償されれば、これらの小規模農家の経営規

模の拡大はさほど困難とは考えられないため、この事業を実施するプライオリティは極めて

高いと考えられる。

現在、すでにダム建設がすすめられようとしており、2012 年 3 月には建設業者の入札選定を

終わり、7月頃にはダムの工事に着工する予定となっている。このため、早急に日本政府による

追加調査検討のための F/S を実施する必要がある。

4-2 カナカンタパダムの設計状況

(1) ダムの設計状況

カナカンタパダムの設計については、すでに設計及び地質調査を含めて発注されており、請け負

ったのは URS Scott Wilson(報告書の中では“URS Infrastructure & Environment UK Limited となっ

ている)と言う本社がイギリスにある会社で、支店がザンビアの Kitwe 市にある。2012 年 2 月に最終報

告書が提出されている。最終報告書のタイトルは、「KANAKANTAPA EARTHFILL DAM DESIGN

REPORT February 2012 Prepared for Ministry of Agriculture and Co-operatives」となっている。

この設計作業にかかわる契約の経緯として、報告書に記載されている内容は 2008 年 7 月に

MACO が本ダムの設計に対するプロポーサルを提出するよう公示が行われ、2008 年 10 月にネ

ゴを行い 2010 年 11 月 29 日に MACO は Scott Wilson と契約を締結した。この契約が 2011 年

4 月 4日に有効となった。契約後 2011 年 1 月 28 日に最初の現場調査が行われた。

主要な調査・設計内容としては、この報告書に付帯した添付資料として、以下の報告書が

作成されている。

1) Kanakantapa Earthfill Dam Design Report

2) Appendix A:Design Drawings

3) Appendix B:Topographical Survey

4) Appendix C:Ground Investigation

5) Appendix D:Geophysical Report

6) Appendix E:Reservoir Routing Calculations

7) Bidding Document Procurement of Construction of Kanakantapa Earthfill Dam

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(2) カナカンタパダムの設計上の問題点

上記報告書内容について概略検討を行った。この結果、次のような点で検討内容について

再検討を行う必要がある項目があった。

但し、現時点でザンビア政府は今年中にダムの工事に着工しようと考えているために、以下

の検討事項については、ダムの工事が進められた場合その対応が困難であることから、建設業

者を選定するための工事仕様に含めるように提案している。

1) ダムの基礎処理:

・ダムの基礎地盤部分は、地質図によると花崗岩や片麻岩から成り立っており風化しやすくまた

岩盤に亀裂が見られる。このため堤体の基礎部分に基礎処理としてグラウトが必要であると判

断している。ダムの設計報告書においては、基礎処理を行う内容となっているが透水試験など

は実施されていないため、基礎処理の内容と手法については現在進められようとしているダム

工事の中で対処する必要がある。

2) 工事中の仮排水の方法:

・数年に渡る工事期間中の洪水を安全に下流に流すため、仮排水路を先ず建設する必要があ

る。半川締め切り底樋による方法が小規模ダムの場合は一般的である。本ダムの設計書をみ

ると半川締め切り工法が採用されているようである。しかし、将来の重力灌漑を行うためには取

水用のパイプとして底樋を堤体の下部に埋設して洪水の時にはこの底樋を通して洪水を下流

に流下させる工法が望ましいと考えられる。工事完成後はこの底樋の中にパイプを埋設し下流

への河川の維持管理流量等を貯水池内から取水して下流に流すための取水管として利用す

ることが効果的である。

(3) カナカンタパダムサイトの地質状況について

1) 構成地質の一般論

花崗岩類:新鮮な場合は堅硬な岩盤の一つであり、割れ目や異方性は少ない。この種の岩

盤は、広域にわたって深層風化が見られることがあり、深度 30~40m の深さまでマサ状に風

化していることも多い。

新鮮な花崗岩の強度は高いが、マサ化すると強度が著しく低下する。風化部分の透水性は

10-2~10-3cm/s オーダーの透水係数(ルジオン値 Lu に換算して 100Lu 以上)を示し、その止

水処理に慎重な配慮が必要である。あわせて、高透水ゾーンの分布の把握が重要である。

片麻岩類:片麻岩は変成岩の一種であり、結晶片岩ほどではないが、鉱物の層状配列が認

められ、異方性を有している。岩質は花崗岩に近い珪長質で石英(シリカ分に富む)に富む

ものから、雲母などの有色鉱物の多い縞状の著しいものまで変化に富んでいる。前者は異方

性が少なく、堅硬な岩盤をなしているが、後者(縞状片麻岩)に漸移することがあり、そこ

に部分的に黒雲母が集中して風化しやすい軟質な層が形成されていることがある。風化する

と、花崗岩に類似したマサ状を呈することが多いため、風化部の透水性は高いと予想され、

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高透水ゾーンの分布の把握および止水処理に慎重な配慮が必要である。

ダムサイトの片麻岩は、石英分に富んだ珪岩である。珪岩は堆積岩(砂岩)起源のホルン

フェルス(接触変成岩)であり、岩盤自体は堅硬な場合が多い。

2) 地質図および写真から想定される事項

・広域地質図よりダムサイト付近は、比較的単純な地質構成(珪岩)と予想される。

・地質構造と沢すじ

特にダムサイト近傍の数 km 範囲は、東西方向と南北方向の沢すじが発達している。これら

の沢すじは地質構造を反映したものと予想される(転石の亀裂がほぼ直交方向に発達してい

たことと同様)。ダム軸と直交する南北方向の分離面(潜在亀裂)が発達している可能性が

ある。分離面沿いに高透水ゾーンが存在する可能性がある。

・褶曲軸

地質図からはダムサイト付近に褶曲軸が存在する可能性がある。褶曲軸付近の岩盤は、脆

弱になっていることが予想される。脆弱化に伴って開口亀裂が発達し、高透水ゾーンを形成

している可能性がある。

・片岩(Schists)の分布

地質図によると、サイト東側に F(Schists)が

図示されている。ダムサイトにも地質図に描きき

れない F(Schists)が分布する可能性がある。F

(Schists)は、異方性が強い岩盤であるため、下

流落ちの不良岩盤が出現する可能性がある(サイ

ト東側にほぼ東西走向で南落ち 19゜の亀裂面)。

(計画されているダムタイプはロックフィルダム

なので直接的に危険ではないと判断されるが)。

・転石から

岩片はコーツァイト・珪岩(quartzites)の風化岩。全般に粗粒で石英に富む。

潜在亀裂面沿いに割れ易

い。潜在亀裂は写真正面の向

き(亀裂面 A)、写真の奥向

き(亀裂面 B)、汚れた面(亀

裂面 C)の大きく 3 方向に発

達すると予想される。

亀裂沿いの風化が進行し

ている。

転石のサイズおよび潜在

亀裂の間隔から、岩盤の亀裂

間隔は数 cm~20cm 程度と思

われる。

亀裂面 A

亀裂面 B

亀裂面 C

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写真相当の転石が基礎地盤として出現した場合、CM級程度の強度を有すると推察されるが、

割れ目沿いの高透水帯が存在する可能性があり、高透水ゾーンの分布を把握し、止水処理計

画に配慮する必要がある。

・アバット写真から

地形は比較的なだらかであると思われる。

転石は、このアバット斜面から殆ど移動していないと予想される。また、斜面に転石が点

在しており、土壌(土被り)は薄く、岩盤が浅所から出現すると予想され、地山掘削は小規

模に収まると予想される。

・写真全般から

ロック材は容易に入手可能な反面、遮水性材料の入手に手間取ると予想される。

3) ダムサイトとしての適性

現地写真および地質図等からは高透水ゾーンの存在が懸念されるが、資料の少ない現段階

では、ダムサイトとして大きな問題はないと判断される。

5. 現地調査内容

5-1 調査日程及び面談記録

実際の調査日程については、巻末の「Annex-2 現地調査要員及び調査日程」に示している。

本案件は 2010 年度に実施した「アフリカ地域灌漑案件形成調査」において発掘したもので、

AfDB/フィンランド政府の援助による小規模灌漑事業(SIP)の一環として実施されようとしている

案件で、フィンランド政府の無償によりカナカンタパダム(貯水量:2500 万トン)の建設が本年度から進

められようとしている。しかし、この事業には、受益地区の実施が含まれていない。従って、

この貯水量に見合う灌漑地区の策定を水収支で行い、下流に重力灌漑の導入による水田灌漑

の追加を図り、小規模農家を対象とした灌漑面積約 3,000~4,000ha の灌漑事業計画の F/S を

MoAL/フィンランド大使館に提案した。フィンランド政府との協調融資として、日本政府による本案件の

F/S を提案するものである。

面談者

農業畜産省(MoAL)

TSB:Mr. George W. Sichembe Deputy Director, TSB, Department of Agriculture

Mr. George Phiri Project Coordinator, SIP

Mr. Daniel C. Chamba Project Engineer, IDSP

フィンランド大使館: Ms.Nachili Kaira

日本大使館:江川明夫特命全権大使

加藤孝書記官

JICA 事務所:田中真美子企画調査員

MoAL の JICA 専門家アドバイサー:杉本亜歴

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5-2 現場調査

3 月 2 日(金)に大使館においてプロファイ状況を説明した後、12:30 に大使館を出発し、

カナカンタパ地区の現場調査を行った。参加者は、日本大使館から加藤孝書記官、JICA ザン

ビア事務所から田中真美子企画調査員、MoAL の JICA アドバイサーの杉本亜歴専門家、SIP か

ら Mr. George Phiri, Mr. Shadreck Phiri 及び ADCA 調査団の小林稔昌である。

現地調査については、先ずカナカンタパダムサイトへ向かう途中にある、JICA が 1991 年

~1992年に無償資金協力事業として実施したカナカンタパ地区農村開発事業の現状を把握す

るためと、可能であればこの施設を本事業の中で再生利用が可能であるかどうかについて、

判断するためにこの地区を調査した。この事業は大統領府との契約の下に政府を退職した職

員を対象に移住地においてカナカンタパ川からポンプにより灌漑農業を行うための事業であ

った。監督官庁が農業に経験が無いことと、入植者についても農業の経験が無く、指導訓練

も行われなかったため、このポンプ場は維持管理の欠如のため稼働できなくなり、建屋とポ

ンプはそのままの状態で残っている。Annex-4 現地の調査写真にこの状況を示している。

また、研修訓練センターとしてポンプ場から数キロメートル離れた所に、上記の現場写真

に示すような建造物が今も使われていることが確認できた。これらの建物は、多少の修復を

加えれば、カナカンタパダム灌漑事業においても研修訓練施設として利用することが可能で

あると考えられる。これらの施設は現在も大統領府の移住部局の管理下にあり、この施設を

MoAL において利用するためには、監督官庁からの了解と出来れば管理体制の変更が必要と考

えられる。今後、詳細な調査を実施して判断する必要がある。

この後、ダムサイトの地点を確認し、現地の地質状況を調査したと考えられるテストピッ

ト等も調査した。現地はほとんど結晶質の片麻岩と花崗岩の転石が見られた。しかし、表面

は転石が多く基礎岩盤としてはかなり風化が進んでいる可能性が見られた。

左岸側の受益地区は多少の波状地形を示しているが全体的に平坦でほとんど農地は見られ

ず、草原に雑木林が点在するような地形であった。右岸側については、調査時期が雨期に当

たりスコールに見舞われ今回は調査が出来なかった。しかし、前回の 2010 年 7 月に実施した

「アフリカ地域灌漑案件形成調査」の時の状況から、極めて平坦で水田灌漑に適した地形状

況であると判断出来た。これらの現場写真についても上記 Annex-4 を参照されたい。

6. 今後の事業の展開方向

6-1 F/S 調査内容

(1) 本地区の調査を行う優位な事項

最近我が国の外務省においてザンビア国における「国別援助方針」が策定されつつあり、

この中にも灌漑面積の拡大も念頭にザンビア政府に対する農業開発に対する援助方針が定め

られようとしている。本事業の F/S を実施するに当たり、下記に示すような国別援助方針に

沿った効果的な実施が考えられ、日本政府による F/S の実施が望まれると考えられる。

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1) 国別援助方針の中で小規模農家を対象にした灌漑面積の拡大が重要な援助方針となって

いる。本地区の受益地区は、小規模農家を対象としている。また、灌漑対象地区は F/S に

より詳細を決定することとなっているが、約 3,000~4,000ha の規模であり、TICAD-VI

において日本が約束した 10 万 ha の灌漑面積の拡大に大きく寄与できる。

2) 首都であるルサカに約 30km 以内の距離に位置しており、大消費地を控えた極めて市場性

が高く栽培作物の多様性が期待できる。

3) この地区には小規模農家を対象としているが、事業完成後の施設の維持管理や、生産し

た農産物の市場流通を考えた官民連携(PPP)の導入を図り、より機能的な施設の維持管

理や付加価値を考えた市場流通への民間知識の導入を図ることを考えている。

4) 日本の援助は、種々の援助機関との連携、協調融資を念頭に事業の推進を図ることを考

えており、本案件は AfDB/フィンランドとの連携事業として推進することが出来る。

5) 今回の受益地区については、AfDB/フィンランドにより建設されるダムの貯水量を効果的

に利用するために、重力灌漑施設の整備による水田灌漑を進めることとしており、日本の

稲作推奨に合致した事業を進めることが出来る。

このように、本事業については日本政府が目指している内容に合致する項目が多く、

一日も早い F/S の実施が望まれる次第である。

(2) F/S を行うための必要な検討事項

F/S を行う調査内容については、次のような内容を主として含む必要があると考えられる。

カナカンタパ地区の灌漑計画の策定のために、必要な検討事項としては以下の内容が重要

な検討課題であると考えられる。また、本事業の中で水源の有効利用及び地域農民への蛋白

源の供給に配慮した養魚計画のコンポーネントを加えることが望ましいと考えられる。養魚計画

としては、貯水池内におけるケージカルチャーを考えた養魚計画とダムの下流で重力灌漑を導

入することから、水路の上流部において養魚池を設けその下流で落ち水を利用した水田への灌

漑が水源の有効利用から望ましいと考えられる。

1) 追加の測量内容:

・貯水池内の地形測量;添付の図のように貯水池の標高と貯水容量のグラフが SIP によって作成

されている。基となる平面測量図と通常使われている 1:5 万の地形図の標高 1120m の面積を

比べると 1:5 万の地形図による方が約 1.8 倍大きく測定された。この違いが本当であれば、貯

水池と標高の曲線が大きく変わることとなり、ダムの高さに影響を与えることになる。

・新規の農地の開発地区としてダム下流の右岸側の地区が左岸に比べ起伏がなだらかでより平

坦である。この地区を追加の新規開発地区とするために測量が必要である。特に重力灌漑を

導入し水田灌漑を対象とするには右岸側地区がより平坦で広い面積が灌漑可能と考えられ

る。

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2) 水文解析と水収支解析:

・現時点で計画されている総貯水容量 2500 万トンに対する水収支計算は行われていない。この

ため、貯水池容量の 2500 万トンに対する灌漑可能面積が算定されていない。河川流量が必

要であり、SIP に毎日の河川の水位観測を依頼した。

・この灌漑地区の計画を立案するに当たり、農家の営農状況、土地利用計画、作物の栽培計画

を検討し、重力灌漑を対象とする水田の作付計画及び左岸地区における畑灌計画を検討し

作付計画と営農規模を策定し、ダムの貯水量と河川の流入量を算定し、水収支を行い灌漑面

積の規模及び作物の作付計画を立案する必要がある。

・また、重力灌漑水路のレイアウトを考えて、上流部に養魚池を配置し養魚池からの落ち水を利

用した水田への灌漑用水の供給を検討する。このことにより限られた水源の有効利用が図られ

ると考えられる。

3) 滞砂量の算定:

・現在貯水池内に流入する滞砂量の算定は行われていないようである。滞砂量はダムの耐用年

数の 100 年間に流域内から流入する表土の流出で流域内の植生や地形勾配、土壌状況によ

り大きく影響される。このダム地点の流域面積は 471sq.km でかなり大きく、滞砂量は数 100 万

立方メートルにもなるので算定が必要である。このボリュームを基に死水位標高を決めて取水

位を決める。また、有効貯水量は総貯水量の 2500 万トンから滞砂量を差し引いたものが実際

に使える水の量である。

4) 農民組織及び維持管理体制に付いて PPP を導入した検討:

・工事完了後の施設の維持管理の方法を検討する必要がある。特に重要構造物であるダムの

操作運用に付いては高度な知識が必要とされ、地方自治体などへの管理移管等を考える必

要がある。また、灌漑施設の運用・維持管理に付いては、民間の管理企業を念頭に農民組織

を対象とした体制など官民連携(PPP)の導入が必要になる。

5) 市場流通方法や付加価値の検討:

・生産した農作物の市場への販売には、品質の向上による収穫後処理等による付加価値を与え

流通網における市場性の優位性を確保する必要がある。本地区は大消費地である首都ルサ

カに極めて近く位置的な優位性がある。これらの市場に対する優位性を考えると PPP 導入によ

る収穫後処理施設の共同利用や市場への共同出荷等の付加価値を付けた流通体制も考え

られる。

6) 全体事業による経済効果の算定:

・ダム建設や受益地区の灌漑施設整備開発事業による総事業費を算定し、灌漑可能面積によ

る作物生産便益からプロジェクトの経済効果を算定する。

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7) パイロット事業の検証:

・農民による灌漑施設の末端圃場部分に付いては農民による直接の管理が必要になる。このた

め、F/S 期間中もしくは工事期間中に小規模の圃場を造成して、実際の水管理や水路などの

維持管理方法を訓練研修することにより、より早い効果発現が期待できる。

6-2 調査工程案

(1) F/S の調査工程案

F/S の調査工程としては、現在ザンビア政府の農業畜産省の SIP 事務所は基本的にダムの設計

はほぼ完了していると考えており、出来れば2012年3月頃には建設業者の選定のために入札を行う

ことを考えているようである。この結果により 2012 年 7 月頃にはダム工事の着工を目指しているとのこ

とである。

従って、このダムの工事進捗及び灌漑地区の策定作業等の F/S については、出来るだけ早く始

める必要がある。現時点での準備作業等を検討し、下記に示すような F/S の調査工程について案を

提案する次第である。F/S の期間としては、灌漑計画の立案が主体であるが一部農民への水田の作

付技術及び水管理の研修訓練をパイロット事業として導入することが望ましく、これを含めて 1.5 年程

度は必要であると考えられる。

(2) 調査団の構成

調査団の構成要因としては、次の 8 名程度が考えられる。

(1) Team Leader/Irrigation Development, (2) Dam Engineer, (3) Hydrologist/Water balance

analyst, (4) Agronomist, (5) Agro-economist, (6) Management/Operation and Maintenance for PPP,

(7) Aquaculture Specialist, (8) Coordinator

(3) 期待される成果

調査期間中における成果品としては次のような内容が期待される。

1) Inception report

2) Progress report

3) Interim report

4) Draft final report, and

5) Final report

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 61 Additional Topo-survey2 Feasibility Study3 Submission of Final Report

Items2012 2013 2014

F/Sの調査工程案

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ANNEX

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1-1

Annex-1

平成 23 年度 ADCA P/F 実施案件概要

農業・農村開発協力案件(開発調査、無償、有償)

(申請区分:案件形成予備調査・プロジェクトファインディング調査・フォローアップ調査)

国名 (和) ザンビア共和国 案件

(和)カナカンタパ灌漑開発事業案件形成予備調査

(外) Republic of Zambia ( 外 ) Preparation of project formulation for

Kanakantapa Irrigation Development Project

地区名 (和)カナカンタパ灌漑開発事業 (外) Kanakantapa Irrigation Development Project

相手国担当機関 農業畜産省 Ministry of Agriculture and Livestock (MoAL)

1.事業の背景

現在、アフリカ開発銀行とフィンランドの無償基金により、小規模灌漑事業(SIP)として 5 ヶ

所の灌漑地区を実施している。カナカンタパ地区はこの中の地区である。この地区は SIP で 620ha

を対象とした貯水池計画で 500 万 m3 の貯水容量の規模として計画であった。しかし、この地区の

ポテンシャル灌漑面積は 2000ha 以上あり、あと 1380ha 以上が拡大可能である。

ダム計画は地形的な状況を考えて、余水吐の掘削土を堤体の盛土に利用し嵩上げを行い、貯水

池規模は 2500 万 m3に拡大する計画に現在変更されている。この貯水池規模を利用すれば 1380ha

以上の拡大部分への水源は確保可能である。しかし、SIP としては予算の関係上当初の 620ha およ

びダムの建設(2500 万 m3のダム容量)のみを実施することとし、新規灌漑地区の計画策定、工事

は、予算の都合から実施できない状況である。従って、日本がこの灌漑拡張地区の F/S 及び灌漑

計画の技術協力を行い、ダム灌漑事業の全体計画を提示する意義は大きい。拡大地区については

まだどのドナーも支援の方向性を示していない。ダム容量が 2500 万 m3と大きく、拡大地区を実施

することにより、投資効果は大きく向上する。水源もダムであり必要な水源量は十分確保されて

おり、MoAL の実施体制もかなり整っており、我が国による技術支援は非常に有効な状況である。

灌漑地区の地形条件としては、ダムの建設を予定しているにも関わらず、ダムからのポンプア

ップにより調整池を設置して左岸側の畑地灌漑を行う計画となっている。しかし、下流の受益地

区の標高を考えると右岸側の地区も含めて十分重力灌漑を導入できる可能性があり、河川周辺の

左右岸の低地に水田を導入することも検討案に含まれる。現在この 2500 万 m3の貯水量に対する灌

漑可能面積は算定されていないため、下流における水田の導入も合わせ、貯水池容量と灌漑可能

面積の算定のための水収支も合わせて全体の灌漑計画の見直しを行い、日本が F/S を実施するこ

とにより、より効率的なダム運用についての検討も技術支援内容として提案される。

2.事業概要

カナカンタパダムの貯水量約2500万 m3の灌漑用水を利用し当初計画地区の左岸地区2000haの灌漑

受益地区の小規模受益農家約 1800 戸を対象に畑地灌漑を計画している。現在貯水池による水没地

域の移転農家が 98 戸あるが、この農家との受益地区への移転計画は既に合意に達しており、環境

社会配慮に対する EIA の調査も完了している。この他に、左岸側における受益地区が更に 3000ha

ほどあり、ダムからの重力灌漑を導入することによる灌漑面積の拡張、特に水田灌漑の導入は可能

と考えられる。また、この地区は首都圏に近く農産物の市場性も高く農民組織の樹立と共に市場開

拓の可能性も検討されている。既に、MoAL はこれらの小規模農家に対する営農に対する能力向上計

画を立案しており、農家による維持管理体制についても検討が行われている。この灌漑地区の拡大

により、事業効果の更なる向上が期待されている。

3.事業費概算:15 億円

4.特記事項

調査団の構成 小林 稔昌 P/F実施期間 2012 年 2 月 20 日~3月 6 日

連絡先会社名 NTC インターナショナル株式会社 関 連 企 業

担 当 部 課 担当者 定野光成 Tel.03-3357-6132 Fax.03-3359-9049

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1-2

様式 1-2

平成 23 年度の P/F 実施案件概要

国名:ザンビア国 案件名:カナカンタパ地区灌漑開発事業

計画図:

Kanakantapa Irrigation

Planned Irrigation Area. (2,000ha in which 620ha will be implemented.)

Proposed Additional Irrigation Area(3,000ha)

Proposed Dam site

Proposed Reservoir Area Storage V=25.0 million m3

Project Map of Kanakantapa Irrigation Development Project

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様式 1-3

平成 23 年度 ADCA・P/F 候補案件検討評価表

国名 ザンビア国 実施場所 ルサカ州チョングエ県カナカンタパ村

案件名 カナカンタパ地区灌漑開発事業

実施機関 農業畜産省(MoAL)

分 野 農業一般、農業生産、農業土木、農産加工、農産物流通、畜産、農村開発、総合地域

開発、市場経済化、組織、環境、社会配慮(一般、参加型開発、WID)、水資源開発、

林業、水産、その他( )

調査目的 カナカンタパ地区の灌漑事業については、ダムについての工事が主にフィンランド政

府の財政支援により実施される計画である。一方で、ダムは十分な灌漑計画の調査も

なく、2500 万 m3のダム貯水容量で計画されていることから、日本側の技術支援によ

り適正なダム及び灌漑計画を策定する意義は大きい。事業の現時点での工事の進捗を

確認するとともに、財政支援を行っているアフリカ開発銀行およびフィンランド政府

との調整を図り、日本政府が実施すべき灌漑計画に関する F/S 調査の内容を確定す

る。また、ザンビア政府の小規模灌漑事業を担当する SIP 事務所と今後の日本政府が

行うべき調査内容の確認と、ザンビア政府からの開発調査による要請書の案を作成す

ることが本調査の目的である。

地域選定の

理由

現在アフリカ開発銀行とフィンランド政府とで灌漑事業が実施中であるが、資金的に

灌漑事業の計画策定ができなくなっている。このため、日本政府による灌漑計画に対

する支援が求められている。この灌漑計画の F/S(また詳細設計)の実施により、事

業の費用対効果が算定され、カナカンタパ地区灌漑開発事業全体の妥当性が確認され

る。計画地域は首都ルサカにも近く市場性も高く極めて有利な灌漑事業である

調査分類 農業開発の灌漑事業に対する F/S 調査

国家・地域計

画との整合性

ザンビア政府の第 6 次開発計画に挙げられている灌漑事業の推進方針に沿った事業

の推進である。

国別援助計

画との整合

平成 24 年 3 月策定の国別援助方針において、小規模農家による灌漑事業の面積拡大

が目標とされている。また、ザンビア国政府は日本が推進している TICAD-IV におい

て表明している灌漑地区の拡大の一環として、灌漑面積 2,000ha までの拡張に関わる

調査を我が国に要請する可能性が高い。ザンビアは CARD の第 2 グループに属してお

り、アフリカに対する援助および稲作振興との整合性があり、日本政府としても今後

とも援助に力を入れる必要がある。

治安状況 特に治安状況に問題は無い。

国際機関等

の関係

アフリカ開発銀行およびフィンランド政府との協調が必要である。

総合評価 計画地域は首都圏に近く市場性も高い。灌漑拡張地区の調査を行い、2,000ha までの

受益地拡大を実施することによる事業の更なる経済効果の向上が期待でき、ザンビア

政府からの期待も大きく、極めて有意義な事業である。

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2-1

Annex-2 調査日程実績及び調査員の経歴

調査名 ザンビア共和国 カナカンタパ地区潅漑開発事業準備調査日 程 表 ( 実  績 )

日順 年月日 曜日 出発地 到着地 宿泊地 備   考

1 平成24年2月20日 月 22:00成田 5:00ドバイ 機中 成田空港⇒ドバイ空港

2 平成24年2月21日 火 7:40ドバイ 12:40 アクラ アクラ ドバイ空港⇒アクラ空港

  2月22日~27日 アクラ

平成24年2月28日 火 20:50アクラ発 機中

3 平成24年2月29日 水 08:25ナイロビ発

(リロングエ経由)

05:30ナイロビ着

11:45ルサカ着ルサカ

午後:MoAL/JICA杉本専門家と打ち合わせ

4 平成24年3月1日 木 ルサカ

9:30 MoAL/TSB/SIPとカナカンタパ地区の進捗状況確認・F/Sに必要な調査内容確認および要請内容打ち合わせ。14:00 フィンランド大使館打合せ。

5 平成24年3月2日 金 ルサカ10:00 日本大使館/JICA調査結果報告午後 現地調査(大使館・JICA・SIP・杉本専門家及び調査団)

6 平成24年3月3日 土 ルサカSIP提供のダム設計報告書の検証、コメント作成

7 平成24年3月4日 日 21:50ルサカ発 機中SIP提供のダムサイト地質調査結果報告書検証、コメント作成

8 平成24年3月5日 月 7:10 ドバイ着 機中

9 平成24年3月6日 火 2:55ドバイ発 17:20 成田着

調査員名並びに経歴

ガーナにて別件業務

平成20年7月-現在(名称変更)NTCインターナショナル㈱ 技術本部 顧問

昭和17年9月27日生まれ 69歳昭和41年3月 九州大学農学部農業工学科農業土木専修卒

昭和45年7月 英国サザンプトン大学  工学部土木工学科大学院卒

昭和41年4月-平成13年 ㈱三祐コンサルタンツ

調査員名 経   歴

小林 稔昌 (こばやし としまさ)

(団長)

平成13年8月-平成20年7月 太陽コンサルタンツ㈱ 海外事業本部 顧問

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3-1

Annex-3 収集資料リスト

No. Name Procurement Format Size Page RemarksProjects

PROPOSED KANAKANTAPA IRRIGATION SCHEME-PHASE Ⅱ

FARMERS TRAINNING(KANAKANTAPA)

001 Brief Report on Nutrition Levels in Kanakantapa 11th July 08 Wordファイル A4 1

002 “Entrepreneurship Development” ModuleMinistry of

Agriculture andCooperative

Wordファイル A4 26

003 Final Evaluations Excelファイル

KANAKANTAPA DAM-RESSETLEMENT OF HOUSEHOLDS

004

ZAMBIA: SMALL SCALE IRRIGATION PROJECT (SIP)IMPACT ON HUMAN SETTLEMENTS OF THE PROPOSED

Ministry ofAgriculture and

CooperativeWordファイル A4 11

005

ZAMBIA: SMALL SCALE IRRIGATION PROJECT (SIP)LOCATION OF HOUSEHOLDS WITHIN INNUNDATIONZONE OF PROPOSED

Ministry ofAgriculture and

CooperativeWordファイル A4 8

006

ZAMBIA: SMALL SCALE IRRIGATION PROJECT(SIP)LOCATION OF HOUSEHOLDS IN THE FLOOD AREA OFTHE PROPOSED

Ministry ofAgriculture and

CooperativeWordファイル A4 12

007

ZAMBIA: SMALL SCALE IRRIGATION PROJECT (SIP)FIELDREPORT VERIFICATIN OF SETTLEMENTS WITHINRESEVOIR BASIN – KANAKATAMPA DAM

Ministry ofAgriculture and

CooperativeWordファイル A4 5

008 20100821 Time Finnish support in SIP PDFファイル 2 Newspaper

009ADB SMALL –SCALE IRRIGATION PROJECT Farmer Training(Partial) Report "Entrepreneurship Development” Module

Ministry ofAgriculture andCooperatives

Wordファイル A4 20

010

ENVIRONMENTAL IMPACT ASSESSMENTKANAKANTAPAIRRIGATION SCHEME SUBMITTED TO THE SMALL-SCALEIRRIGATION PROJECT(SIP)(F/ZMB/IRG/’01/l31)MA/SI/AD/05/02

Ministry ofAgriculture andCooperatives

Wordファイル A4 180

011Strategic Environmental Assessment Report for Irrigation Schemes inZambia

JICA Wordファイル A4 162

012 Kanakantapa Small Scale Irrigation Scheme (map 1:1000)Ministry of

Agriculture andCooperatives

PDFファイル 1

013 Proposed dam site in Kanakantapa(map 1:20000)Ministry of

Agriculture andCooperatives

PDFファイル 1

014Report on Land Surveying and Mapping of the Small Scale IrrigationProject (SIP) for Ministry of Agriculture and Cooperatives

University ofZambia School of

EngineeringDepartment of

GeomaticEngineering

Wordファイル A4 13

015APPRAISAL REPORT SMALL – SCALE IRRIGATIONPROJECT (SIP) REPUBLIC OF ZAMBIA

Wordファイル A4 53

016Annex 1 Technical Proposal (Terms of Reference) for Grant Supportto the Small Scale Irrigation Project (SIP)

AfDB/ FinnishTrust Fund

Wordファイル A4 8

017

Zambia: ADB-Small Scale Irrigation Project (SIP)F/ZMB/IRG/’01/31Farmers' Training Plan

Ministry ofAgriculture andCooperatives

Wordファイル A4 25

018 Kanakantapa Earthfill Dam Design Report(Feb. 2012) pdf ファイル

019 Bidding Document Procurement of Construction of Kanakantapa Earthfill Dam

020 Kanakantapa Earth Dam Site Investigation Report (Nov. 2011)

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4-1

Annex-4 現地調査の写真

JICA の無償資金協力:カナカンタパ地区農村開発プロジェクト(1991 年~1992 年に実施)

小規模灌漑用のポンプ場(機能していない) 同左ポンプ場の取水工地点

ポンプ場の吸水槽 事業の銘板(1993 年 9 月となっている)

ポンプ場内の使われなくなったポンプ機器 建屋外側に取り付けられている電気メーター

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4-2

JICA のカナカンタパ農村開発センターの写真(1992 年に実施)

修復して今後のプロジェクトに利用することが可能と考えられる。

センターの事務所建屋 事務所建屋及び故障している建設機器

建設機器用の機材庫 機材庫の中に置いてある、播種機

建設機器のワークショップ 放置されている建設機械(ブルドーザー)

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カナカンタパ 受益地区の写真

チョンウエ地点のカナカンタパ川 左岸受益地区からダム地点の山を臨む

ダムサイト右岸アバットから右岸受益地区を臨む 左岸受益地区

右岸受益地区 右岸受益地区(電柱・電線が設置されている)

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カナカンタパ 受益地区の写真

右岸地区受益地区 右岸地区受益地区

貯水池予定地域にある部落(移転に同意してい

る。)

貯水池予定地域にある部落(移転に同意している。)

道端で農産物を売っている 貯水池予定地域にある農地

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カナカンタパ ダムサイトの写真

ダム上流の貯水池予定地点からダムサイトを望む(なだらかな地形形状である)

ダム軸地点の右岸アバットを望む ダム軸地点の左岸アバットを望む

ダムサイト地点の河川状況 貯水池上流部分の河川状況

左岸アバット 右岸アバット

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ダムサイトにおける地表面の地質状況

ダムサイト右岸アバットの転石状況(1) ダムサイト右岸アバットの転石状況:花崗岩

転石の片麻岩 ダム軸最下部における地下水状況

ダム軸左岸の転石状況 ダム軸最下部のテストピット(片麻岩)