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特集 ダイヤモンドの加工 ダイヤモンドのイオンビ-ム・電子ビ-ム加工 Fine machining of diamond utilizing ion and electron beams 宮本岩男*谷口淳* Iwao MIYAMOTO and Jun TANIGUCHI Key words: diamond, ion beam, electron beam, diamond mold, electoronic device 1. まえがき ダイヤモンドは,地球に現存する物質の中では最高の硬度 と強度を持っているために超精密切削用バイトなどの精密加 工用工具として用いられてきた.また,最近の機器部品や光 学素子等の微細化に伴い微小な工具(先端の形状 μm オ- ダ)が必要とされてきているし,ナノインプリントリソグラフィ-の 出現により nm オ-ダ-の微細パタ-ンを有するダイヤモンド モ-ルドが必要になってきている. さらに, ダイヤモンドは,約 5.5eV という広いバンドギャップ,室温で物質中最高の熱伝導 率,高温でも半導体特性を保持するなどの半導体材料として 優れた性質を持っているほか,負性電子親和力を持たせるこ とにより電子放出源として利用できるため,ダイヤモンドは次 世代のエレクトロニクスの材料としても期待されている.このた め,ダイヤモンドの超精密・超微細加工の必要性が高まってき ている.しかし,従来の機械的な研磨のみでダイヤモンドの超 精密・超微細加工を行うのは不可能か困難になりつつある. それを解決する手段としては,レーザービーム,電子ビームや イオンビームを利用した超精密・微細加工技術が挙げられる. そこで,本稿では,イオンビ-ム加工法と電子ビ-ム加工法(実 際は電子ビーム援用化学加工法)の原理及びこれら加工法 のダイヤモンドの微細加工への応用について述べる. 2. イオンビ-ム加工法 1) 数十 eV から数十 keV の運動エネルギ-を持つ不活性ガス イオンを固体試料表面に照射したときに,試料原子が固体試 料表面より真空中に放出される,いわゆる Sputtering(スパッタ リング)現象を利用して固体表面を原子・分子の単位で除去 する加工法がイオンビ-ム加工(イオンビ-ムエッチング)であ る. 従来,口径の大きなイオンビ-ム加工装置 1) (ビ-ム径:数 cm~数十 cm)がパ-マロイやダイヤモンド等の色々な材料の 微細加工に使われてきたが,最近の半導体素子の高密度化 や量子素子の開発等に伴い,DRAM 作成時のレクチルやマ スクの修正あるいは量子細線等の作製のために 0.10.01μ m 径のビ-ムを発生できる集束イオンビ-ム(Focused ion beam : FIB)加工装置 2) が多く用いられるようになった.この装 置を用いると,イオンを任意の場所に照射し,物理的スパッタ リング現象を利用し,一筆書きで基板に微細パタ-ンを形成 できる. しかし,加工に用いるイオンビ-ムの径が細くても(太い場 合は無論であるが),物理的なスパッタリング現象によっての み加工を行おうとすると,エッチング速度が遅い点や再付着 (加工試料自身や加工台などからスパッタされた物質が加工 物表面に付着)が起こる点などが問題になる.そこで,試料表 面の原子と揮発性加工物を作る活性ガス(フッ素や塩素など を含むガス)試料表面に吹付けながら,同時にイオンビ-ムを 照射し,除去加工を行うイオンビ-ム援用化学加工(IBACE) が検討され始めている.また,活性ガス(フッ素や塩素などを 含むガス)を直接イオン化し,そこで生じた活性なイオンを加 工物に照射し,除去加工を行うリアクティブイオンビ-ム加工 (RIBE)も検討されている.これらの方法を用いると,物理的 作用によるスパッタリングのほかに活性イオンや励起種等と被 加工物との間の化学的作用も利用出来るので加工速度や選 択比(フイルムの加工速度/基板の加工速度)を高めることが できるし,イオンのエネルギ-を十分低くすれば損傷のほとん ど無い加工が実現できる. ここで,IBE の特長を列記すると次の通りである. 固体試料の種類を選ばず,硬脆材料の超微細な異方性 加工が可能である. 被加工物表面にほとんど歪が発生しない. 本質的に弾性衝突で被加工物をスパッタする非熱的加 工法である. さらに,RIBE IBACE ではこの他に次のような特長が加 わる. 加工速度が比較的速く,かつ選択比を大きくできる. 再付着やトレンチング等が起こり難い. イオンビ-ム加工(IBE)に比べて被加工物の照射損傷が 少ない. 2.1 イオンビ-ム加工等の加工特性について イオンビ-ムを利用した加工における加工特性のうち,最 も重要なものは加工速度 Vn ( µ m/h) である.これは,被加工 *東京理科大学基礎工学部:〒278-8510 千葉県野田市山崎 2641 <学会受日:2001年 日>

Fine machining of diamond utilizing ion and electron …...Fine machining of diamond utilizing ion and electron beams 宮本岩男*, 谷口淳* Iwao MIYAMOTO and Jun TANIGUCHI Key

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Page 1: Fine machining of diamond utilizing ion and electron …...Fine machining of diamond utilizing ion and electron beams 宮本岩男*, 谷口淳* Iwao MIYAMOTO and Jun TANIGUCHI Key

◇ 特集 ダイヤモンドの加工 ◇

ダイヤモンドのイオンビ-ム・電子ビ-ム加工

Fine machining of diamond utilizing ion and electron beams

宮本岩男*, 谷口淳*

Iwao MIYAMOTO and Jun TANIGUCHI

Key words: diamond, ion beam, electron beam, diamond mold, electoronic device

1. まえがき

ダイヤモンドは,地球に現存する物質の中では最高の硬度

と強度を持っているために超精密切削用バイトなどの精密加

工用工具として用いられてきた.また,最近の機器部品や光

学素子等の微細化に伴い微小な工具(先端の形状 µm オ-

ダ)が必要とされてきているし,ナノインプリントリソグラフィ-の

出現により nm オ-ダ-の微細パタ-ンを有するダイヤモンド

モ-ルドが必要になってきている.さらに,ダイヤモンドは,約

5.5eV という広いバンドギャップ,室温で物質中最高の熱伝導

率,高温でも半導体特性を保持するなどの半導体材料として

優れた性質を持っているほか,負性電子親和力を持たせるこ

とにより電子放出源として利用できるため,ダイヤモンドは次

世代のエレクトロニクスの材料としても期待されている.このた

め,ダイヤモンドの超精密・超微細加工の必要性が高まってき

ている.しかし,従来の機械的な研磨のみでダイヤモンドの超

精密・超微細加工を行うのは不可能か困難になりつつある.

それを解決する手段としては,レーザービーム,電子ビームや

イオンビームを利用した超精密・微細加工技術が挙げられる.

そこで,本稿では,イオンビ-ム加工法と電子ビ-ム加工法(実

際は電子ビーム援用化学加工法)の原理及びこれら加工法

のダイヤモンドの微細加工への応用について述べる.

2. イオンビ-ム加工法 1)

数十 eV から数十 keV の運動エネルギ-を持つ不活性ガス

イオンを固体試料表面に照射したときに,試料原子が固体試

料表面より真空中に放出される,いわゆる Sputtering(スパッタ

リング)現象を利用して固体表面を原子・分子の単位で除去

する加工法がイオンビ-ム加工(イオンビ-ムエッチング)であ

る.

従来,口径の大きなイオンビ-ム加工装置 1)(ビ-ム径:数

cm~数十 cm)がパ-マロイやダイヤモンド等の色々な材料の

微細加工に使われてきたが,最近の半導体素子の高密度化

や量子素子の開発等に伴い,DRAM 作成時のレクチルやマ

スクの修正あるいは量子細線等の作製のために 0.1~0.01μm 径のビ-ムを発生できる集束イオンビ-ム(Focused ion

beam : FIB)加工装置 2)が多く用いられるようになった.この装

置を用いると,イオンを任意の場所に照射し,物理的スパッタ

リング現象を利用し,一筆書きで基板に微細パタ-ンを形成

できる.

しかし,加工に用いるイオンビ-ムの径が細くても(太い場

合は無論であるが),物理的なスパッタリング現象によっての

み加工を行おうとすると,エッチング速度が遅い点や再付着

(加工試料自身や加工台などからスパッタされた物質が加工

物表面に付着)が起こる点などが問題になる.そこで,試料表

面の原子と揮発性加工物を作る活性ガス(フッ素や塩素など

を含むガス)試料表面に吹付けながら,同時にイオンビ-ムを

照射し,除去加工を行うイオンビ-ム援用化学加工(IBACE)

が検討され始めている.また,活性ガス(フッ素や塩素などを

含むガス)を直接イオン化し,そこで生じた活性なイオンを加

工物に照射し,除去加工を行うリアクティブイオンビ-ム加工

法(RIBE)も検討されている.これらの方法を用いると,物理的

作用によるスパッタリングのほかに活性イオンや励起種等と被

加工物との間の化学的作用も利用出来るので加工速度や選

択比(フイルムの加工速度/基板の加工速度)を高めることが

できるし,イオンのエネルギ-を十分低くすれば損傷のほとん

ど無い加工が実現できる.

ここで,IBE の特長を列記すると次の通りである. ● 固体試料の種類を選ばず,硬脆材料の超微細な異方性

加工が可能である.

● 被加工物表面にほとんど歪が発生しない.

● 本質的に弾性衝突で被加工物をスパッタする非熱的加

工法である.

● さらに,RIBEや IBACEではこの他に次のような特長が加

わる.

● 加工速度が比較的速く,かつ選択比を大きくできる. ● 再付着やトレンチング等が起こり難い.

● イオンビ-ム加工(IBE)に比べて被加工物の照射損傷が

少ない.

2.1 イオンビ-ム加工等の加工特性について

イオンビ-ムを利用した加工における加工特性のうち,最

も重要なものは加工速度Vn ( µ m/h) である.これは,被加工

*東京理科大学基礎工学部:〒278-8510 千葉県野田市山崎 2641 <学会受日:2001 年 月 日>

Page 2: Fine machining of diamond utilizing ion and electron …...Fine machining of diamond utilizing ion and electron beams 宮本岩男*, 谷口淳* Iwao MIYAMOTO and Jun TANIGUCHI Key

(a) Ar イオンを照射した場合

図図図図 1 ダイヤモンドの加工速度のイオン入射角依存性

物質と入射イオンとの組合せ,イオンのエネルギ- E (eV),イオン入射角(被加工物の表面に立てた法線と入射イ

オンとのなす角)θ (°),被加工物の結晶方位,加工時の被

加工物の温度,さらには残留ガス中の酸素濃度などにより大

きくことなる.ここでは,固体電子素子や精密機器部品などの

イオンビ-ム加工において最も重要な因子である加工速度

Vn ( µ m/h) のイオン入射角依存性について述べる.

その実験結果の一例を図 13)に示す.また,実験装置は図

2 に示す,ECR(electron cyclotron resonance) 型イオン源を

備えた加工装置で行った.Ar イオンでダイヤモンドを加工す

る場合,イオン入射角θ = 0 oの時,加工速度 Vn は低く,

イオン入射角θが増加するにつれて次第にそれは増加する.

しかし,イオン入射角θ = 5 0 o前後を過ぎると加工速度 Vn

は急激に減少する.これは,イオンが加工物の表面に垂直に

入射するより斜めに入射する方が加工物の表面付近でのイオ

ンから固体原子へのエネルギ-の転移が多くなり,加工物表

層の原子がスパッタされ易くなるためである.無論,イオンが

加工物の表面に平行に近く入射するようになればなるほど,

入射イオンのうち加工物の表面で反射されるものが多くなり,

そのため加工速度 Vn は減少する.これに対して,酸素イオン

ビ-ム(O+または O2+)をダイヤモンドに照射した場合,イオン

のエネルギ-が 500 eV 以下になると,加工速度 Vn はイオン

入射角の増加とともに徐々に減少する.これは,この場合の加

工が主に化学スパッタリングによることと,実質的なイオン電流

がイオン入射角の増加とともに減少することによる.なお,集

束イオンビ-ムを用いて加工する場合も同様な加工特性が得

られる.しかし,集束イオンビ-ムを用いて IBACE を行う場合,

イオンビ-ムを走査しながら加工するので,加工速度がその

走査速度に依存することもある.無論,IBACE の場合,加工

速度Vnは,吹付けるガスの量にも依存存する.

(b) 酸素イオンを照射した場合

図図図図 1 ダイヤモンドの加工速度のイオン入射角依存性

図2図2図2図2 ECR 型イオン源

2.2 ダイヤモンドのイオンビ-ム

イオンビ-ムを利用した加工法

ンや形状の超微細加工あるいは

の加工に適し,研磨・加工や微細

分野で用いられている.以下では

加工例について述べる.

(1) ダイヤモンドの圧子の加工 4

先端が摩耗したマイクロビッカ

ンを入射させることによって,図 3

研磨し,再び鋭くすることができる

ではイオン入射角が 0 度であり,

45 度くらいであり,側面の加工速

ファラデ-カップ

真空ポンプ 試料ホルダ

電磁石

加工台

を備えた加工装置

加工例

は,特にμm 以下

ダイヤモンドなどの

パタ-ンの形成な

ダイヤモンドのイオ

)~6)

-ス圧子に上方より

に示すようにその

.これは,圧子先

圧子側面のイオン

度が頂点のそれよ

マイクロ波同軸

イオン化ガス 導入部

ビ-ム引出し

電極

プラズマ

生 成

のパタ-

硬脆材料

ど色々な

ンビ-ム

Ar イオ

先端を再

端の頂上

入射角が

り十分速

ケ-ブル

電源

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いため,側面が速く加工され先端が鋭くなるからである.なお,

最近イオンビ-ムアシスティド加工によるダイヤモンドの微細

パタ-ンの加工が行われている 7)~8).

(2) 微細パタ-ンの形成 N. N. Efremow ら 7)は,Xe イオンと NO2ガス(ダイヤモンドに

対する活性ガス)を用いたイオンビ-ム援用化学加工

(IBACE)法によりダイヤモンド単結晶に微細パタ-ン(線幅 18

μm で深さ 17μm)を形成した.また,著者らも SOG(スピンオ

ンガラス)や Al(リフトオフ法により形成)でマスクを形成したダ

イヤモンドの微細加工を酸素イオンビ-ム等を用いて行って

いる.

図図図図 3 ダイヤモンド圧子の再研磨

3. 電子ビ-ム援用化学加工法

電子ビ-ム誘起表面反応を利用した電子ビ-ム援用化学

加工法は,基板表面に活性ガス(分子ビ-ム)を吹き付けなが

ら同時に電子ビ-ムを照射し,基板の表面原子と吸着した分

子との化学反応を電子ビ-ム照射で促進することにより,①エ

ッチング,②デポジション並びに③ド-ピングを行うことができ

る.この方法は,ブロ-ドビ-ム,集束ビ-ムのどちらを用いて

も可能であるが,集束ビ-ムを用いると,次のような利点が生

まれる.

● ナノメ-トルの高分解能が得られる.

● マスクレスプロセスである.

● 計算機制御で任意のパタ-ンが描ける. ● 低温プロセスである.

● 損傷が生じない. このプロセスは,イオンビ-ム誘起表面反応と比較すると,

そのエッチング速度やデポジション速度は後者のそれらに比

べて 1 桁以上遅い.しかし,電子ビ-ムの場合,基板表面に

損傷を残さない,ビ-ムを nm レベルまで細くできるなど,イオ

ンビ-ムを用いる場合に比べて利点も多い.

3.1 電子ビ-ム援用化学加工特性

電子ビーム援用化学加工において最も重要な加工特性は

加工速度である.加工速度は,ダイヤモンド試料の種類(面方

位や合成方法等),吹付けるガスの種類とその量,電子ビーム

の照射条件(ビームエネルギ,ビーム径や電流密度等),電子

ビームの走査方法や走査速度あるいは加工時の被加工物の

温度等によって大きく異なる.また,加工部位の加工形状と加

工表面特性(表面粗さと損傷等)等も非常に重要な加工特性

である.ここでは,これらの加工特性の一部について述べる.

なお,ダイヤモンドは絶縁物であるので,これに電子ビームを

照射するとダイヤモンドの表面に負電荷が蓄積する帯電が起

こる.この帯電が起こると,ダイヤモンド試料を観察することは

不可能になるので,この帯電防止法も重要である.

酸素ガス(流束: 4.16×1017 分子/s・cm2)をホウ素無添加

ダイヤモンド(110)面に吹付けながら,10 keV の電子ビ-ム

(照射電流: 80 nA,ビーム径: 0.8μm,走査速度: 20

s/frame)をダイヤモンドに照射(8μm (横) ×6μm(縦)の矩形

状で)して,20 分加工(エッチング)した場合,ノズル先端から

加工点までの距離と加工深さとの関係は図 4 に示すようにな

った.ここで,ノズルからの距離とは,ノズルの中心から加工さ

れた場所の中央までの直線距離をいう.この図よりノズルから

の距離を 100μm 以内の実験を行った範囲では加工深さはノ

ズルからの距離によらずほぼ一定(1.95μm)になることが分か

った.なお,加工形状(横幅と縦幅)にもほとんど変化が見られ

なかった.

図図図図 4444 加工特性の一例

3.2 電子ビ-ム援用化学加工の応用 9)

酸素・水素ガスを用いた電子ビーム援用化学加工にお

いて,電子ビームを点,線,および矩形状に走査することによ

加工パタ-ン:8μm×6μm 加工時間:20 分

電子ビ-ムエネルギ-: 10 keV 電子ビ-ム電流: 80 nA

電子ビ-ム径: 0.8 μm 電子ビ-ム走査速度: 20s/frame

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り,ダイヤモンドの表面に穴,線,矩形の 3 パターンが加工で

きる.そのうちの線状パターン加工の例を示す.実験は,水素

ガス流束 4.16×1017 分子/s cm2,単結晶ダイヤモンド(110)

面,照射電流 80 nA,ビーム径 0.8 μm,および加工時間

20分,加速電圧 10 kV,走査時間 20 s/line および走査長さ

8 μm で線状パターン加工を行った.図 5(a) に線状パター

ン加工の AFM 像を,図 5(b)に線幅方向の断面図を,図 5(c)

に線の長さ方向の断面図を示す.図 5(b) には点状にビーム

を照射したときのビーム形状(ガウス分布と仮定)を描いている.

図 5(c)には,ガウス分布のビームを走査長さ方向に積分したも

のをビーム形状として加工形状に描いている.

(a)(a)(a)(a) 線状パターン加工の AFM 像

(b(b(b(b

(c(c(c(c

これらの図より加工形状はビーム形状を反映しているものの,

加工形状の最大値は広がり,加工残しがあることがわかる.加

工形状の最大値がビーム形状の最大値よりも広がる理由は帯

電によるビームのふらつきが起きているためと考えられる.加

工深さは 480nm であった.

さらに多様なパターン加工を行うために,リソグラフィ技術と

リフトオフ法でダイヤモンド表面に作製した Pt-Pd マスクを電

子ビーム援用化学加工によりダイヤモンドへ転写した例を図 6

に示す.マスクを用いた加工はプラズマエッチングやリアクティ

ブイオンエッチング等が主流であるが,これらの加工法ではア

ンダーカットや照射損傷層が生じるのに対して,本手法を用い

れば,ビーム形状(ガウス分布形状)によらないで切り立った

側面を持つパターンをダイヤモンドに形成することができる.

図図図図 6666 電子ビーム援用化学加工による微細パタ-ンの形成例

加工形状

ビ-ム形状

)))) 線状パターン加工の断面図(線幅方向)

)))) 線状パタ

図図図図 5555 線状

4. あとがき

ダイヤモンドの超精密加工や超微細加工にはイオンビ-ム

を利用した加工法や電子ビ-ム援用化学加工法が特に適し

ているとは思うが,実用例はまだほとんど無い.しかし,今後の

ダイヤモンド製電子デバイスの進展に伴い,イオンを利用した

RIBEや IBACEあるいは電子ビ-ム援用化学加工法のダイヤ

モンドの微細加工への適用も増えていくものと思われる.なお,

FIB や集束電子ビ-ムを用いた CVD 堆積法による極微細デ

バイスの作製が盛んに行われている.

参考文献

半値幅 0.8 μm

ビ-ム形状

半値幅 8μm

加工形状

ーン加工の断

パターン加工

5μm

面図

5μm

(長さ方向)

1) 宮本岩男:加工技術デ-タファイル 第7巻「特殊加工

興協会技術研究所 (1983)1/15-15/15.

2) 古室昌徳:表面科学,16161616, 12 (1995) 729.

3) 清原修二,宮本岩男:精密工学会誌, 62626262, 10 (1996) 1

4) 宮本岩男,谷口紀男:精密機械,46464646, 8 (1980) 1021.

5) 宮本岩男,谷口紀男:同上,48484848, 9 (1982) 1226.

6) I. Miyamoto: Prec. Eng., 9999, 1 (1987) 71.

7) N. N. Efremow et al.: J. Vac. Sci. Technol., B3B3B3B3, 1 (1

8) P. E. Russel et al.: J. Vac. Sci. Technol., B1B1B1B16666, 4 (19

9) 谷口 淳,宮本 岩男:精密工学会,62626262, 3 (1996) 361

5μm

5μm

」編,(財)機械技術振

459.

985) 416.

98) 2494.

.