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計算数理工学論文集Vb1.5(2005年6月),論文No.05-062414 JASCOME
格子ボルツマン法による水平二流体の界面成長シミュレーション
NUMERICALSIMULATIONOFINTERFACIALGRO1八rTHOFHORIZONTALInrSTRArIFIED
TWOIMMISCⅡBLEFLUIDSBYTHELA亜TICEBOI/rZMANNMETHOD
吉野正人'),増田剛士2)
MasatoYOSHINOandTsuyoshiMASUDA
1)信州大学工学部機械システムエ学科(〒3808553長野市若里4-17-1,Email:masato、shinshu-u,ac.』p)
2)信州大学大学院工学系研究科(〒380-8553長野市若里4-17-1)
Interfacialgrowthofhorizontallystratifiedtwoimmisciblefluidswithasmalldensity
differenceissimulatedusingthelatticeBoltzmannmethod(LBM)fbrtwo-phaseHows・
IntheKelvin-Helmholtzinstability,timevariationsoftheinterfacearenumericallyinves-
tigatedinseveralcases・AfteravelocitydifferenceisinitiallyappliedtotheHuidsatrest,
theinterfaceeithergrowsordecaysaccordingtothenon-dimensionalparameterrelated
tothegravitationalfbrceandthesurfacetension・AsthemagnitudeofthevelocitydifL
ferenceisincreased,theinterfacebecomesunstableand6nallyleadstoapeculiarshape,
whichisgenera」lycalled“acat'seye”inHuiddynamics・
Ke〃Wb71dS:LatticeBoltzmannMethod(LBM),Two-PhaseFlows,InterfacialGrowth,
Kelvin-Helmholtzlnstability
1.はじめに
流体力学や伝熱工学の分野において,流れの不安定問題
は古くから重要な問題である.その中でも特に,二相流体の
界面不安定問題は,理論的,実験的および数値計算の各アプ
ローチによってこれまでに数多くの研究が行われてきた.例
えば,ケルビン・ヘルムホルッ不安定問題では,Thorpe(1)
が,等密度の液・液二相流体における界面の不安定問題の実
験を行い,得られた成長率を線形安定性理論と比較した.ま
た,数値計算の分野では,海老原ら(2)が,成長速度の波数
による影響について計算結果と理論との比較を行っている.
これらの研究より,界面が線形的に成長する領域では詳細な
検討が行われているが,非線形領域における研究はまだ数多
く見られない.
ところで,これまでの混相流解析の代表的な数値計算法と
しては,VOF(VOlumeofFluid)法(3)やLevelSet法(4)な
どがあげられる.このような手法では,界面の形状を識別す
るための関数を導入する必要があり,また,界面の移動と同
時に格子も移動しなければならないため,例えば気液二相流
における気泡の合体や分裂を表現するのが難しい面も考えら
れる.これに対し,1995年頃から開発され始めた二相系格
子ボルツマン法(LatticeBoltzmannMethod,以下LBMと
呼ぶ)では,界面形状の時間変化を陽に追跡する必要がなく,
また,質量保存性に優れているため,気液,液液二相流の新
-79-
しい数値計算法として最近注目されている.
そこで,本研究では,流れの不安定性問題の一例としてケ
ルビン・ヘルムホルッ不安定を取り上げ,二相系LBMによ
る水平二流体の界面成長過程の数値計算を行った.なお,二
相系LBMにはこれまでにいくつかのモデルが提案されてい
るが,特に本問題では,二流体の密度比がそれほど大きくな
いケースを考えるため(具体的には,密度比が2~3程度を
対象とする),Swift-Osborn-Yeomansモデル(5)を基に稲
室らが改良を加えたモデル(6)を用いた.次節で計算のアル
ゴリズムについて説明を行うが,詳しい解説については文献
(6)を参照されたい.
2.数値計算法
使用する物理通はすべて,代表長さL,粒子の代表速さc,
代表時間to=L/U(U:流れの代表速さ),および基準密度
β0を用いて無次元化したものである(6).本計算に使用した
二相系LBMでは,二つの速度分布関数を導入する(7).つま
り,分布関数ハを用いて界面を識別するorderparameterの
を計算し,得られためから流体の密度βを計算する.一方,
分布関数94を用いて流速および圧力を計算する.以下の説
明では2次元9速度モデルに対して行うが,3次元15速度
モデルの場合にも同様である.
さて,時刻tで格子点⑩上の速度c、,すなわちCl=0,
c#=ICCS(汀('-2)/2),sin(汀(d-2)/2)1(i=2,3,4,5),お
-〃0
ノワ
よびci=、/百ICCS(穴(i-11/2)/2),sin(汀(f-11/2)/2)](1!=
6’7,8,9)をもつ粒子の分布関数ハおよび戯の時間発展を次式で計鏡する.
,!吾 唇
11
仁=>〃(】
〃jfi(錘十ci△z,↓+△j)=ハ(錘,t)
‐寺肌鰯叶伽肌戯(毎十ci△⑩,t+△t)=9t(処,t)
‐毒I"(露ル,:'("剛-3Efcf"(p-p2)9△、,
に(1)
ここで,重力はz/方向のみに側くものとする.上式において,
、jlWxlおよび9:qは局所平衡分布関数,T/およびT’は無次元
緩和時間,△zは格子間隔,△↓は時間刻み(仮想粒子が隣の
格子点まで移動する時間),9は重力加速度,βは流体の密
度である.また,Biは定数であり,それらの値は後述する.
各格子点上における界面を識別するorderpammeter‘,流
体の密度β,流速皿,および圧ノJpは,それぞれ.Aおよび9i
を用いて次式で定義される.
‘=Eハ,(3)
の-妙m、(β2-β,)+,。,,(4)β=‘max-妙mi皿
”=:茎鮮蜂⑤,‐:(妻鱗-,)⑥
ここに,‘m経xおよびの、inはそれぞれorderparameter妙の
岐大値および鐙小値であり,β,およびp2はそれぞれ低帯皮
相および高密度相の流体栴皮である.式中の局所平衡分布関
数は,次式で定義される.
鷹.=必'÷職(,。-感,‘窯)+3Ei伽acfα+曇偏ノG:βciaciβ,(7)
’:。=必,+昼{"+,(….-:鯉""喫十:勉.…卿)1‐卜2岬。農十鰯。:…偶,(8)
ここで,
E1=4/9,E2=E3=E4=E5=1/9,、
E6=E7=E8=E9=1/36,》(9)
H1=1,Hi=0(j=2,3,...,9),
届=-5/3,厩=3Ei(i=2,3,...,9),,
また,
。‘,=裟畿-%幾発‘"‘('0)
。:‘=;隙患+",(""農+池。制一:(縄箪発器ト2",辿紛‘、衝,側
↓jノ
.r
Fig.1Computationaldomain‘
(2)ここで,“,=;(耐一昔)△mはガリレイ不変性を保証するためのパラメータ(8)であり,デカルト座標系α,β,γ=nWは
総和規約に従う.6αβはクロネッカーのデルタ,町および凡9はそれぞれ,界而の厚さおよび界面張力を決めるパラメータ
である.また,pOは次式で与えられる.
,。=‘T命-。‘雪,(12)ここに,α,6,Tはjmaxおよびの、inを決める定数である.な
お,式中に現れる変数入(=妙,β)の-階微分および勾配の発
散は,それぞれ次式で近似した.
応一志堂…+"△鰯ハ('3)3入
i=1
釜一志二M…)-恩川(叫一~
また,流体の動粘性係数Iノおよび界面張力ぴは,それぞれ次
式で与えられる(8).
-80-
〃-;(爾一;沖
,-,鋤ノ(二(麦)貿蝿ここに,Eは界而に垂世な鹿標である.
(15)
(16)
3.計算対象および計算条件
Fig.1に示すように,一辺がH=128△、の二次元正方形
領域内に水平層状の静止二相流体を考える.密度β1,粘性係
数山の流体Iを!/方Ii1jの上半分に,密度β2,粘性係数〃2の
流体'1(β,<β2)を下半分に置き,t≧0において,各流体に
それぞれ鯵方向の流速士140を与えたときの流れ場の計算を
行った.領域の左右には周期境界条件を用い,上下のすべり
なし壁にはbounce-back境界条件を用いた。なお,流体Iと
11の密度比はβ2/β,=2(β2=2,β1=1),粘性係数の比は
ノ"2/ノ",=2とした.式('2)におけるパラメータの値は,α=’,
6=6.7,T=3.5×lO-2とした.よって,orderParameter《16
の岐大値および妓小値はそれぞれ,妙max=9.714×10-2およ
び‘min=1.134×10~2になる。その他のパラメータの値は’
汀=1,巧=0.8377,代ノー0.5(△")2,脇9=1.0×10-6(△紗)2
9△⑩=3.914×10-6とした。以下では,次式で定猫する無
次元パラメータ』(')を導入する.
2β1+p2I9ぴ(β2-β,)]も, (17)J=広万Fp,p2ここで,△U=2u・は二流体に与えられた速度差である.
一宇一室誌一 =呼璽専司一
(a)t率=C (b)t*=0.125(c)t癖=0.625
ロ毒寅患守一 一客扉マーーー 一 再 寒 寮 可 一一
(d)t簾=0.875 (e)t*=1.13 (f)t*=1.38
Fig.2Timeevolutionofinterfacialgrowthoftwoimmisci‐
blefluidsfbrJ=1.35.Thewhiteandblackareasrepresent
thedensitiesoftheauidsl(lighter)andll(heavier),respec‐
tively.t*=t△U/Histhedimensionlesstime.
4.結果および考察
本研究では,異なる速度差△Uを与えることにより,種々
の無次元パラメータ』(8.57×10-3≦J≦3.05)に対する
界而の時間変化を計算した.結果の一例として,(i)J=1.35
{△U=1.59×10~31および(ii)J=8.57×lO-3I△U=
2×10-21の2ケースにおける密度分布の時間変化をそれぞ
れFig.2およびFig.3に示す.両図において,t*=t△U/〃
は無次元時間を表している.まず,J=1.35(Fig.2)では,
速度差を与え始めた後,界面が徐々に変化しながら先端が伸
びていくが,t*=0.6251(c)]以降は界面形状にほとんど変化
は見られず,肢終的にはその状態のまま落ち着く結果となっ
た.一方,J=8.57×10-3(Fig.3)では,界面が肢初はわ
ずかに変形するだけであるが{(b)1,時刻が進むにつれて境
界の峰や谷が内側に巻き込みながら渦が発生し[(c),(d)],
やがては猫目(Cat'seye)と呼ばれる形[(e),(f)]にまで変形
した.また,Fig.3の各時刻における速度ベクトルおよび等
密度線図をFig.4に示す.この図から,界面が変形し始める
時点から大きな循環流が発生し,徐々に成長していく様子が
よくわかる.なお,it*>1.38では,(f)とほぼ同様な状態が
続き,流れ場は準定常状態となる結果が得られた.
次に,上記のケース(i)および(ii)に対して,領域の1.1.1心
(z/H,Z//H)=(0.5,0.5)における!/方向の流速uyの時間変
化をFig.5に示す.J=1.35の時には,過渡状態後t*=1付
近でほぼ一定値に収束しているが,J=8.57×10-3の場合で
は,ほぼ周期的に変動する非定常な結果が得られた.その他
のケースに対しても同様の解析を行い,局所流速の時間変動
を調べたところ,与えた速度差△Uの大きさがある値を超え
ると,過渡状態が終わった後に流速が時間的に変動し,流れ場
が不安定となると考えられる.実際に,相対速度変化率を調べ
ることにより,(iii)J=1.17[△U=1.71×10-31のケースで
は,局所の流速が一定値に収束したが,(iv)J=6.71×10-1
-81-
==垣塞毒、一 r ワ
(a)t議=0 (b)t窯=0.125(c)ず=0.625
起動 匡勤(d)t*=0.875 (e)t*=1.13 (f)#.=1.38
Fig.3Timeevolutionofinterfacialgrowthoftwoimmisci-
blGHuidsfbrJ=8.57×10-3.Thewhiteandblackareas
representthedensitiesofthefluidsl(lighter)andll(heav‐
icr),respectively.t*=t△U/Histhedimensionlesstime
I△U=226×10-31のケースでは,時間変動する結果が得ら
れた.したがって,不安定を引き起こす臨界速度差△Ut:は,
1.71×10-3<△Ub<2.26×,0-3の範囲にあると考えられ
る.ところで,Kelvin(9)の理論的研究によると,妓初に不
安定が起こる臨界速度差△唾は,次式で与えられる.
畑={2帯i‘。(,2-,川欝}運('81よって’各パラメータの値を代入して求めると,この場合の
理論値は1.85×10-3となり,本研究で得られた結果ならび
に上記の考察は妥当であると言える.
妓後に,同様の問題を3次元15速度モデルを用いて計算
を行った.計算領域は,一辺がH=80△麺の立方体とし,上
下の壁(これを鉛直Z方向とする)にはすべりなし境界条件,
領域の側面には周期境界条件を用いた.使用したパラメー
タの値は,二次元問題の場合と同じである.計算結果の一例
として,J=1.08×10-’[△U=5.63×10-3}のときの界面
形状をFig.6(左側)に示す.ここでも同様に,臨界値より
大きな速度差を与えると,時間とともに界面が不安定にな
り,股終的には界面形状が猫目になるまで成腿する結果が得
られた.また,奥行き方向(!/方向)の中央y/〃=0.5の断
、($~Z平面)における速度ベクトルならびに等密度線図を
Fig.6(右側)に示す.この結果を同じ物理条件下での二次元
計算による結果と比較したところ,速度ベクトル,密度分布
のいずれに関しても両者の間にほとんど差異はみられなかっ
た。したがって,本計算で用いたパラメータの範囲内では,
三次元性については特に考慮しなくてもよいと砦えられる.
5.おわりに
二相系LBMを用いて,ケルビン・ヘルムホルッ不安定問
題の数値シミュレーションを行い,二流体に速度差を与えた
後の界面の成長過程を調べた.また,流れの不安定性を引き
一軍宮房戸
-82-
(c)t*=2.50
・---.--二二三塞望〒----‐
蕊一
伊一一一一一一●●一一一ユロー一一一一一一
‐●の一一●
一二匹
(4)MSussman、P・SmerekaandS、Osher:ALcvelSetAp‐
proachfbrComputingSolutionstolncompressibleTwo‐
PhaseFlow,J、OomPut.PノルZ/s,,114(1994),pp,146-
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phaseFluidFlowsusingnyee-EnergyApproach,Com‐
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P”ers,1V(1910),pp69-85.
斗一一
蕊(a)11*=0 (b)t*=0.125(c)/*=0.625 彦一
Fig.5TimevariationsofvelocityinthcZノーdirectionat
(z/H,〃/H)=(0.5,0.5);(i)J=1.35:(ii)J=8.57×10-;’
(6*=t△U/H).
024681Il
r宍Ii,i9.61nterfacialgrowthoftwoimmiscil)le(luids(left)and
vGlocityvectorsanddensitycontoulsonl1//〃=0.5(right)
IorJ=1.08×10-1inthethree-dimensionalproblem(t*=
t△U/〃).
難(a)t率=0.125
-0.3
一
10
一 ‘ー ---.-一一一一二一~一一・一、や、‐-マ-1°こ----テ窄詫〒=言
■
今,_▲_~、手亘理語”ヨー
蕊
起こす臨界速度差について,本計算結果は理論値と良く対応
することがわかった.なお,本研究では,流れの不安定性に
与える波数の影響は考慮に入れなかった.これについては今
後の課迩である.
謝辞
本研究の一部は,平成16年度文部科学省科学研究盤補助
金(浩手研究(B)No.16760122)によっている.ここに記し
て謝意を表します.
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一
(d)t*=0.875(e)t*=1.13 (f)↓*=1.38
Fig.4Velocityvectorsanddensitycontoursoftwoimmis-
ciblefluidsfbrJ=8.57×10-3.t寒=t△U/Histhedimen-sionlesgtime.
■一一
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(b)t*=1.00
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