Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
ボルダの振り子による重力加速度の測定
/221
多くの学生にとってこれまでの人生で最も精密な測定(相対精度10-4)
目次
1.重⼒加速度 g とは2.振り⼦の周期3.実験⽅法に関する注意点
/222
1.重力加速度 とは
/223
g
重力加速度 とは
例えば、りんごを⾃由落下させると、1秒で
/224
🍎物理の教科書で出てくる
g = 9.8 m/s2
はどういう意味?
距離 h = 9.8 m 落ちる。
🍎g
❌� = gt = 9.8 m/s速さが に加速される。
h =1
2gt2 =
⭕( 4.9 m 落ちる。)
/22 5
重力加速度 とは
どうしてりんごは⽊から落ちるのか?
/165
🌳🍎
🌏g
地球がりんごを引っ張っているから! ニュートン
重力加速度 とは
万有引⼒
/226
質量を持った全ての物体はお互いに引っ張り合う
F = Gm1m2
r2
m1
m2
r
F = GmME
R2E
= m
�G
ME
R2E
�地球が地表の物体を引っ張る⼒は
m2 = ME = 5.9724� 1024kgr = RE = 6378 km
🍎
🌏RE
ME
m
g
G = 6.67408� 10�11 kg�1m3s�2万有引⼒定数:
g= m
= 9.7988 · · · m/s2
/227
重力加速度 とはg
g = 9.7988 · · · m/s2
となる。しかし、実際には場所によって
少しずつ値が異なる。
地球の質量 MEと半径REを代⼊すると、
物理学実験指針 p. 212 表7.1 を参照。
標⾼hが⾼いほど
重⼒加速度g は
緯度が⼤きいほど
(1)⼤きい(2)⼩さい
(1)⼤きい(2)⼩さい
g = GME
(RE )2+h地球の中⼼から遠くなるため
主に2つあるので各⾃考えてみること[指針の課題(2)]。
ヒント:地球の運動と形
{理由は
(代⼊値)
/228
重力加速度 とはg
そこで、今⽇は
での重⼒加速度を実際に精度良く測定して、
表7.1の中で最も距離が近い⽻⽥の⽂献値
(⽻⽥)g = 9.79760 m/s2
東京都世⽥⾕区⽟堤1−28−1 東京都市⼤学世⽥⾕キャンパス新6号館2階
と実験値を⽐較する。
🌏←9.832 m/s2
(極付近)
9.780 m/s2→(⾚道付近)
天体 重⼒加速度[m/s2]
⼩惑星(りゅうぐう) 0.0001⽉ 1.622⽕星 3.71太陽 274中性⼦星 108-9
c.f.戦闘機の9Gとは重⼒加速度の9倍という意味。
表: 天体の重⼒加速度
/229
重力加速度 とはg
🌏※ 1⽬盛りが 相対精度 1×10-4
実験値が⽇本国内の値であることを確認するために精度が低くともΔg =±0.005 m/s2
つまり、相対不確かさ の精度は達成しよう。�g
g=
0.005
9.8= 5� 10�4
9.780 m/s2→(⾚道付近)
←9.832 m/s2
(極付近)
(⽻⽥の⽂献値から±0.005 m/s2 よりずれてはいけないという意味では決してない)
2.振り子の周期
/2210
/2211
重力加速度 の測定方法の例g(1) ⾓度θの摩擦のない斜⾯上での
滑⾛体の加速度を測定する。
(2) 質量 m の物体をばね定数 k のバネに吊し、
バネの伸び d を測定する。
(3) ⻑さℓの振り⼦の周期を測定する。
a = g sin � � g =a
sin �
mg = kd� g =kd
m
k
md
11⾼精度
第1回⽬のエアートラックの実験
ばね秤
/2212
単振り子の周期
単振り⼦: ⼤きさの無視できる質点の
おもりによる振り⼦
ℓθ
周期 T とひもの⻑さℓ を測定すれば、
重⼒加速度 g が得られる。
微⼩振幅(θ≪ 1)での単振り⼦の周期 T は
しかし、⾼精度では①の近似が⼗分ではない。
①
T = 2�
��
g
sin � � �
md2(��)dt2
= �mg sin �
d2�(t)dt2
= �g
��(t)
� =�
g
�
T =2�
�
質点の運動⽅程式の接線⽅向は
となる。θ が⼩さければと近似できるので、
となる。これは2階微分⽅程式で2階微分するとマイナスと係数が出る関数は三⾓関数 sin xや cos x なので、
が⼀般解となる。このωは式(2)(3)より
なので、周期T とωの関係より
… (1)
… (2)
… (3)
= 2�
��
gが得られる。
… (4)
… (5)
�(t) = A sin(�t) + B cos(�t)
12
/2213
実体(物理)振り⼦: ⼤きさのある剛体の
おもりによる振り⼦
sin � � �
md2(��)dt2
= �mg sin �
d2�(t)dt2
= �g
��(t)
� =�
g
�
T =2�
�
剛体の回転の運動⽅程式は
となる。θ が⼩さければと近似できるので、
となる。これは2階微分⽅程式で2階微分するとマイナスと係数が出る関数は三⾓関数 sin xや cos x なので、
が⼀般解となる。このωは式(2)(3)より
なので、周期T とωの関係より
周期 T と慣性モーメントI、重⼼までの⻑さh を測定すれば、
重⼒加速度 g が得られる。
… (1)
… (2)
… (3)
= 2�
��
gが得られる。
… (4)
… (5)
微⼩振幅(θ ≪ 1) での実体振り⼦の周期 T は
慣性モーメントを知るには? 形のよく分かった重りを使う!
Id2�
dt2= �mg sin � · h
d2�(t)
dt2= �mgh
I�(t)
� =
�mgh
I
= 2�
�I
mgh
h
I
実体振り子の周期
T = 2�
�I
mgh �(t) = A sin(�t) + B cos(�t)
θ
/2214
ボルダの振り⼦: 剛体球の
おもりによる振り⼦
微⼩振幅(θ ≪ 1) でのボルダの振り⼦の周期 T
h1
r
ボルダの振り子の周期半径r の剛体球のO軸周りの慣性モーメントI :
T = 2�
�I
mgh1
I =2
5mr2 + mh2
1
= 2�
����h1
g
�1 +
2
5
�r
h1
�2�
θ
周期 T と球の半径 r、重⼼までの⻑さh1 を測定すれば、
重⼒加速度 g が得られる(質量 m の測定は不要になる)。これを g について解くと
g =4�2
T 2
�h1 +
2
5
r2
h1
��1 +
�2
8
�
が得られる。
②⾼精度では②の近似が⼗分ではない。
/2215
ボルダの振り⼦: 剛体球の
おもりによる振り⼦
微⼩振幅(θ ≪ 1) でのボルダの振り⼦の周期 T
h1
r
ボルダの振り子の周期半径r の剛体球のO軸周りの慣性モーメントI :
T = 2�
�I
mgh1
I =2
5mr2 + mh2
1
= 2�
����h1
g
�1 +
2
5
�r
h1
�2�
θ
周期 T と球の半径 r、重⼼までの⻑さh1 を測定すれば、
重⼒加速度 g が得られる(質量 m の測定は不要になる)。これを g について解くと
g =4�2
T 2
�h1 +
2
5
r2
h1
��1 +
�2
8
�
が得られる。
任意の最⼤振幅⾓度θ �1 +
�2
16+ · · ·
�
(⾓度補正有り)
sin � � �と近似せず、真⾯⽬に楕円積分する
、最⼤振幅⾓度θ
/2216
重力加速度 とはg
🌏※ 1⽬盛りが 相対精度 1×10-4
実験値が⽇本国内の値であることを確認するために精度が低くともΔg =±0.005 m/s2
つまり、相対不確かさ の精度は達成しよう。�g
g=
0.005
9.8= 5� 10�4
9.780 m/s2→(⾚道付近)
←9.832 m/s2
(極付近)
(⽻⽥の⽂献値から±0.005 m/s2 よりずれてはいけないという意味では決してない)
⾓度補正を無視したら
ボルダ振⼦補正を無視したら
/2217
演習問題の解答
(⽻⽥)
θ=5.4°において⾓度の補正を無視すると1×10-3 も⼩さい値になってしまう!
ボルダの振り⼦(剛体球であること)の補正を無視すると 1.7×10-4 だけ⼩さい値になる。rad (ラジアン)を使うことに注意!
3.実験方法に関する注意点
/2218
/2219
実験装置
⽔準器
ストップウォッチ
スリッパ
ラジオペンチ
ノギス2丁吊り具
座⾦(ざがね) マイナスドライバー
⾦属球
ほとんどの装置を 2018年後期に新調しました。⼤切に扱ってください。
/2220
実験装置
針⾦
⾓度⽬盛紙⻑尺デジタルノギス
/2221
実験方法(指針・HPからの変更点)
針⾦の⻑さl0は時間短縮のため測らない!
約2秒 (1.9 s 〜 2.1 s になるように5周期で9.5 s 〜 10.5 sなど)にh1が約 1 m になるように
/2222
実験方法(工夫)
・⽬盛板の⾓度測定では⽬線を最⼤⾓度の正⾯に移動させて斜めから読まないようにする。
・周期の測定では、ストップウォッチを押すタイミングは「振幅の端(最⼤⾓度)」ではなく、速度が最⼤となっている「最下点(⾓度 0°)」で⾏うこと。(その⽅が精度が上がる理由は各⾃考えてみること)
・周期の測定では、測定者は振り⼦から 1 m程度離れて、正⾯から頭の位置を動かさずに同じ⽬線で測定すること。
・l, s, r の測定では、 0.1 mmのずれが 重⼒加速度の 1x10-4の相対的なずれを引き起こすので、慎重に⾏うこと。