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CARGO NOVEMBER 2008 77 リポート 中東欧で営業開始 同社のネットワークをみると、国内拠 点は山九の航空貨物事業から承継した 成田、横浜、中部、関西、福岡の5カ所 となる。 海外は基本的に山九の現地法人および 各国の中小規模のフォワーダーが加盟す る「IASA」(InternationalAir&Shipping Association)のネットワークを利用する。 山九の海外現地法人の拠点は16カ所 (北京、大連、青島、上海、広州、香港、 ハノイ、ホーチミンシティー、バンコク、クア ラルンプール、ペナン、シンガポール、ジャ カルタ、シカゴ、サンパウロ、マナウス)。 IASAの加盟社数は34カ国・38社。同社 独自の提携代理店数は80社(全代理店数 から山九およびIASA加盟社を差し引い た数)。 海外への同社独自の展開では基本的 に山九の拠点が少ない地域が候補とな る。最初のターゲットとなりそうなのが日 系メーカーの進出が著しい中東欧地域 だ。日本郵便および同社は、今月から中 東欧地域で国際物流の営業を開始した。 同社の首脳を含めた両社のスタッフがハ ンガリーを皮切りにチェコなど同地域の日 系メーカーなどをめぐり、市場調査などを 行った。 欧州では日本郵便が今年7月、フランス の郵政事業体ラ・ポストと国際物流、国際 スピード郵便(EMS)などでの協力を推進 することで合意した。国際物流では同社 とラ・ポスト傘下のフォワーダー、ジオポス トが担う。今回、日系メーカーの多くが進 出する同地域で日本郵便グループが営業 を開始することでさらなる協力推進につ なげる。 3社の連携が重要 同社が中計で掲げた方針を達成するた めには、日本郵便、山九との連携を強め、 協業体制を推進し、独自性をいかに発揮 していくかが重要となる。 営業面で中核を担うのが「企画開発部」 および「開発営業部」だ。両部署は山九の 航空貨物事業にはなかった組織だ。企画 開発部は案件ごとに商品を開発する部署 で、将来的にはTC1、TC2、TC3などエリ ア別に商品を開発していく。 開発営業部は荷主の開拓部門だ。大口 顧客については、日本郵便の法人営業部 署および山九の担当部署と連携し、営業 を展開する。法人営業部署は既に先月か ら本格的な営業活動を開始し、併せて EMSなどを取り扱う日本郵便の国際郵便 部署の営業スタッフもサービスの案内を 開始した。一方、開発営業部には日本郵 便の営業スタッフ対応用にヘルプデスク を設置するとともに、中小規模の顧客に 対する営業活動も開始。さらに、同部に 「SBY」のコールセンターを移管し、顧客 サービスの向上および需要開拓をさらに CARGO NOVEMBER 2008 76 画期的な第一歩 旧日本郵政公社は、国内郵便物の取扱 件数が頭打ちになる中で、新規事業分野 を国際物流に求めてきた。地域では中国 などアジアを中心に国際物流を展開する 計画を打ち出した。TNTとの提携交渉は 決裂したものの今年2月、日本郵便は山九 と共同会社設立に合意した。 記者会見で日本郵便の北村憲雄代表 取締役会長CEOは、「日本郵便がこれま で保有してこなかった国際物流事業に必 要な機能、航空フォワーディング機能を長 くパートナー関係にある山九と共同保有 する。郵便事業にとって画期的な第一歩 と考えている」と述べ、「共同出資会社を 通じて山九の物流機能と日本郵便のネッ トワークを効率的に融合させて日本全国 津々浦々のお客さまに世界各国を結ぶ国 際物流サービスを提供できるものと確信 している」と力強く語った。また、山九の 中村公一代表取締役社長は「共同出資会 社が国際物流の場において日本の産業界 の動脈としてしっかりとした働きができる ことを大変期待している。日本郵便と一 緒に汗をかきながら一歩一歩、着実に進 めていきたい」との意気込みを示した。 バリューロジス 国際物流の中核を担う両社の共同出資 会社「JPサンキュウグローバルロジスティ クス」(JPSGL)は今年7月、正式に発足し た。山九が今年4月に事業分割した航空 貨物事業部門が母体となり、日本郵便が 出資した。資本金は3億円。出資比率は 日本郵便60%、山九40%。従業員数は130 人(08年10月時点)。 社長には山九の航空 貨物事業部長の奥田 雅彦氏が就いた。航 空輸送を主体に海上 輸送、サード・パーティ ー・ロジスティクス(3PL) 事業を展開する。また、 同社は日本郵便と山九の提携サービス 「SBY」を引き継いだ。30㎏以下の国際小 口貨物サービスのターゲットは、「SBY」が B2B、日本郵便の国際スピード郵便(EMS) が主にB2C、C2Cとすみ分けた。 会社発足後、山九の航空貨物事業の承 継や新会社としての商品開発などに取り 組んできたが、先月、09~11年度を対象 とした第1次中期経営計画(案)をまとめ た。全体方針には「グローバル市場で“勝 つ”ための事業基盤の確立」を掲げた。ま た、経営理念には世界の郵便ネットワーク と世界の航空貨物ネットワークを統合し、 高付加価値の「バリューロジスティクス」を 提供する方針とともに、「成長」「感謝」「挑 戦」「創造」「信頼」をキーワードに挙げた。 会社発足後、初年度(08年7月~09年3月) の売上高は航空事業を主体に約60億円 の見込み。中計では航空事業の売上高倍 増を目指す。 郵便事業会社(日本郵便)グループが国際物流への第一歩を踏み出す。 国際物流を行う山九との共同出資会社、JPサンキュウグローバルロジス ティクス(JPSGL)は先月、2009~11年度の中期経営計画をまとめ「グロ ーバル市場で“勝つ”ための事業基盤の確立」を打ち出した。世界の郵便 ネットワークおよび航空貨物ネットワークを統合した高付加価値の「バリ ューロジスティクス」を提供することを経営方針に掲げ、独自性を発揮し ていく。荷主の物流費低減はもとより、特に環境、スピードを追求した商 品開発を進める。国内では羽田空港への進出も決定。荷主の信頼獲得と ともに、挑戦者の立場から国際航空貨物業界に新風を吹き込む。 便 Forwarder Forwarder 提携会見で握手する日本郵便の北村CEO(左)、 山九の中村社長(右) 奥田社長 図 主な海外ネットワーク(2008年3月現在) ニューヨーク フィラデルフィア ボルチモア ノーフォーク チャールストン サバンナ ジャクソンビル マイアミ カラカス パナマシティ ボゴタ キト リマ サンチアゴ 山九ブラジル 山九ユー・エス・エー ブエノスアイレス モンテビデオ サンパウロ ボルタレドンダ イパチンガ ブリスベーン 東京 山九インドネシア国際 山九ベトナム 上海山九設備安装工程 上海経貿山九物流 上海経貿山九儲運 南京山九長発物流 青島山九亜太物流 山九フィリピン 山九レムチャバン 山九タイ タイバージ コンテナサービス ホーチミン駐在事務所 台北駐在事務所 山九マレーシア 山九シンガポール(私人) ムンバイ コルカタ カトマンズ イスラマバード モスクワ ヘルシンキ ストックホルム ミンスク リガ ワルシャワ プラハ オスロ コペンハーゲン ハンブルク ブレーメン ダブリン ロンドン パリ チューリッヒ マドリード バルセロナ マルセイユ リスボン アントワープ フランクフルト キエフ ナイロビ リロングウェ ハラーレ ルサカ ケープタウン ルアンダ ポートルイス ヨハネスブルグ アブダビ バーレーン ダンマーム クウェート バグダッド テヘラン テルアビブ カブール カイロ チュニス アテネ イスタンブール ブダペスト ソフィア ルスカ ウィーン ローマ ミラノ カサブランカ ラゴス コロンボ ウランバートル ウエリントン オークランド シドニー メルボルン アデレード パース フリーマントル サンタクルーズ サントス メキシコシティ グアテマラ トロント デトロイト シカゴ ニューオリンズ ヒューストン アーバイン バンクーバー シアトル サンフランシスコ ロサンゼルス イェーテボリ ブリュッセル 太栄山九国際物流 大九国際物流 天津天山国際貨運 北京山九物流 深 深九国際物流 山九陸通(珠海保税区)儲運 サントドミンゴ 山九ヨーロッパ ロッテルダム駐在員事務所 広州山九物流 広州広重山九機械工程 山九東源国際(香港) 山九空運(香港) 鴻運住山(中国) JPSGLの海外提携企業・フォワーダー拠点 山九の海外現地法人 山九の海外駐在員事務所

Forwarder J P 郵 - 日刊CARGO | 物流総合専門紙 | 海事プ 貨物サービスのターゲットは、「SBY」が B2B、日本郵便の国際スピード郵便(EMS) が主にB2C、C2Cとすみ分けた。会社発足後、山九の航空貨物事業の承

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CARGO NOVEMBER 2008 77

リポート

中東欧で営業開始

同社のネットワークをみると、国内拠

点は山九の航空貨物事業から承継した

成田、横浜、中部、関西、福岡の5カ所

となる。

海外は基本的に山九の現地法人および

各国の中小規模のフォワーダーが加盟す

る「IASA」(International Air&Shipping

Association)のネットワークを利用する。

山九の海外現地法人の拠点は16カ所

(北京、大連、青島、上海、広州、香港、

ハノイ、ホーチミンシティー、バンコク、クア

ラルンプール、ペナン、シンガポール、ジャ

カルタ、シカゴ、サンパウロ、マナウス)。

IASAの加盟社数は34カ国・38社。同社

独自の提携代理店数は80社(全代理店数

から山九およびIASA加盟社を差し引い

た数)。

海外への同社独自の展開では基本的

に山九の拠点が少ない地域が候補とな

る。最初のターゲットとなりそうなのが日

系メーカーの進出が著しい中東欧地域

だ。日本郵便および同社は、今月から中

東欧地域で国際物流の営業を開始した。

同社の首脳を含めた両社のスタッフがハ

ンガリーを皮切りにチェコなど同地域の日

系メーカーなどをめぐり、市場調査などを

行った。

欧州では日本郵便が今年7月、フランス

の郵政事業体ラ・ポストと国際物流、国際

スピード郵便(EMS)などでの協力を推進

することで合意した。国際物流では同社

とラ・ポスト傘下のフォワーダー、ジオポス

トが担う。今回、日系メーカーの多くが進

出する同地域で日本郵便グループが営業

を開始することでさらなる協力推進につ

なげる。

3社の連携が重要

同社が中計で掲げた方針を達成するた

めには、日本郵便、山九との連携を強め、

協業体制を推進し、独自性をいかに発揮

していくかが重要となる。

営業面で中核を担うのが「企画開発部」

および「開発営業部」だ。両部署は山九の

航空貨物事業にはなかった組織だ。企画

開発部は案件ごとに商品を開発する部署

で、将来的にはTC1、TC2、TC3などエリ

ア別に商品を開発していく。

開発営業部は荷主の開拓部門だ。大口

顧客については、日本郵便の法人営業部

署および山九の担当部署と連携し、営業

を展開する。法人営業部署は既に先月か

ら本格的な営業活動を開始し、併せて

EMSなどを取り扱う日本郵便の国際郵便

部署の営業スタッフもサービスの案内を

開始した。一方、開発営業部には日本郵

便の営業スタッフ対応用にヘルプデスク

を設置するとともに、中小規模の顧客に

対する営業活動も開始。さらに、同部に

「SBY」のコールセンターを移管し、顧客

サービスの向上および需要開拓をさらに

CARGO NOVEMBER 200876

画期的な第一歩

旧日本郵政公社は、国内郵便物の取扱

件数が頭打ちになる中で、新規事業分野

を国際物流に求めてきた。地域では中国

などアジアを中心に国際物流を展開する

計画を打ち出した。TNTとの提携交渉は

決裂したものの今年2月、日本郵便は山九

と共同会社設立に合意した。

記者会見で日本郵便の北村憲雄代表

取締役会長CEOは、「日本郵便がこれま

で保有してこなかった国際物流事業に必

要な機能、航空フォワーディング機能を長

くパートナー関係にある山九と共同保有

する。郵便事業にとって画期的な第一歩

と考えている」と述べ、「共同出資会社を

通じて山九の物流機能と日本郵便のネッ

トワークを効率的に融合させて日本全国

津々浦々のお客さまに世界各国を結ぶ国

際物流サービスを提供できるものと確信

している」と力強く語った。また、山九の

中村公一代表取締役社長は「共同出資会

社が国際物流の場において日本の産業界

の動脈としてしっかりとした働きができる

ことを大変期待している。日本郵便と一

緒に汗をかきながら一歩一歩、着実に進

めていきたい」との意気込みを示した。

バリューロジス

国際物流の中核を担う両社の共同出資

会社「JPサンキュウグローバルロジスティ

クス」(JPSGL)は今年7月、正式に発足し

た。山九が今年4月に事業分割した航空

貨物事業部門が母体となり、日本郵便が

出資した。資本金は3億円。出資比率は

日本郵便60%、山九40%。従業員数は130

人(08年10月時点)。

社長には山九の航空

貨物事業部長の奥田

雅彦氏が就いた。航

空輸送を主体に海上

輸送、サード・パーティ

ー・ロジスティクス(3PL)

事業を展開する。また、

同社は日本郵便と山九の提携サービス

「SBY」を引き継いだ。30㎏以下の国際小

口貨物サービスのターゲットは、「SBY」が

B2B、日本郵便の国際スピード郵便(EMS)

が主にB2C、C2Cとすみ分けた。

会社発足後、山九の航空貨物事業の承

継や新会社としての商品開発などに取り

組んできたが、先月、09~11年度を対象

とした第1次中期経営計画(案)をまとめ

た。全体方針には「グローバル市場で“勝

つ”ための事業基盤の確立」を掲げた。ま

た、経営理念には世界の郵便ネットワーク

と世界の航空貨物ネットワークを統合し、

高付加価値の「バリューロジスティクス」を

提供する方針とともに、「成長」「感謝」「挑

戦」「創造」「信頼」をキーワードに挙げた。

会社発足後、初年度(08年7月~09年3月)

の売上高は航空事業を主体に約60億円

の見込み。中計では航空事業の売上高倍

増を目指す。

郵便事業会社(日本郵便)グループが国際物流への第一歩を踏み出す。

国際物流を行う山九との共同出資会社、JPサンキュウグローバルロジス

ティクス(JPSGL)は先月、2009~11年度の中期経営計画をまとめ「グロ

ーバル市場で“勝つ”ための事業基盤の確立」を打ち出した。世界の郵便

ネットワークおよび航空貨物ネットワークを統合した高付加価値の「バリ

ューロジスティクス」を提供することを経営方針に掲げ、独自性を発揮し

ていく。荷主の物流費低減はもとより、特に環境、スピードを追求した商

品開発を進める。国内では羽田空港への進出も決定。荷主の信頼獲得と

ともに、挑戦者の立場から国際航空貨物業界に新風を吹き込む。

JPサンキュウグローバルロジスティクス

環境、羽田活用など独自性を発揮

日本郵便Gが国際物流へ踏み出す

ForwarderForwarder

提携会見で握手する日本郵便の北村CEO(左)、山九の中村社長(右)

奥田社長

図 主な海外ネットワーク(2008年3月現在)

ニューヨーク フィラデルフィア ボルチモア ノーフォーク チャールストン サバンナ ジャクソンビル マイアミ

カラカス パナマシティ ボゴタ キト

リマ

サンチアゴ

山九ブラジル

山九ユー・エス・エー

ブエノスアイレス モンテビデオ

サンパウロ ボルタレドンダ

イパチンガ

ブリスベーン

東京

山九インドネシア国際

山九ベトナム

上海山九設備安装工程 上海経貿山九物流 上海経貿山九儲運

南京山九長発物流

青島山九亜太物流

山九フィリピン

山九レムチャバン

山九タイ

タイバージ コンテナサービス

ホーチミン駐在事務所

台北駐在事務所

山九マレーシア 山九シンガポール(私人)

ムンバイ コルカタ

カトマンズ

イスラマバード

モスクワ

ヘルシンキ

ストックホルム

ミンスク

リガ ワルシャワ

プラハ

オスロ

コペンハーゲン ハンブルク

ブレーメン

ダブリン ロンドン

パリ チューリッヒ

マドリード

バルセロナ マルセイユ

リスボン

アントワープ

フランクフルト

キエフ

ナイロビ

リロングウェ

ハラーレ ルサカ

ケープタウン

ルアンダ

ポートルイス

ヨハネスブルグ

アブダビ

バーレーン

ダンマーム クウェート

バグダッド テヘラン

テルアビブ

カブール

カイロ チュニス アテネ

イスタンブール

ブダペスト

ソフィア ルスカ

ウィーン

ローマ ミラノ

カサブランカ

ラゴス コロンボ

ウランバートル

ウエリントン オークランド

シドニー

メルボルン

アデレード パース フリーマントル

サンタクルーズ

サントス

メキシコシティ グアテマラ

トロント デトロイト

シカゴ

ニューオリンズ

ヒューストン

アーバイン

バンクーバー シアトル

サンフランシスコ ロサンゼルス

イェーテボリ

ブリュッセル

太栄山九国際物流

大九国際物流

天津天山国際貨運

北京山九物流

深 深九国際物流 山九陸通(珠海保税区)儲運 均 訓

サントドミンゴ

山九ヨーロッパ ロッテルダム駐在員事務所

広州山九物流 広州広重山九機械工程

山九東源国際(香港) 山九空運(香港) 鴻運住山(中国)

JPSGLの海外提携企業・フォワーダー拠点 山九の海外現地法人 山九の海外駐在員事務所

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図る計画だ。

荷主のターゲットはまず、自動車部品メ

ーカーに据えた。新規顧客開拓のため既

に日本郵便のスタッフが一次営業として全

国で活動を開始。成約の可能性が高い場

合、同社の専門スタッフが案件を引き継

ぐ。一方で山九が既に海上輸送や構内物

流などで取り引きがある顧客に対し、航

空輸送などの提案を進めている。

リターナブル梱包箱

航空貨物業界では近年、燃油高騰を背

景に海上シフトなどが進み、既存のフォワ

ーディング・サービスのみでは事業の拡大

が難しい。各社とも商品の独自性が求め

られる中、「当社は輸送費低減とともに環

境を全面に打ち出したサービスを提供し

ていく」(奥田社長)と語る。

環境関連の商品の第一弾が、古紙が主

な原料の梱包こんぽう

箱(写真参照)を活用した

「JEP」(JPサンキュウ エコパック)だ。環

境に配慮したリターナルブル梱包箱として

さまざまなメリットがあるが、それは主に

①再使用による資材廃棄コストの削減②

梱包箱および緩衝材の購入コストの抑制

③通常の段ボール・木箱梱包箱の製造、

使用に比べCO2削減効果が大きい④容易

な組立工程のため作業工数の削減が可

能⑤RFID(無線自動識別)タグの貼付に

よって貨物追跡、在庫管理が可能―な

どとなる。

強度の調整も可能だ。国内の利用実績

では往復の輸送回数が100回から場合に

よって200回まで可能という。内容物は、

特殊ウレタン素材を利用した透明の緩衝

材「サンドウィッチフィルム」で挟み込む。

すき間なく固定されるため、輸送時のダ

メージ防止にもつながる。

梱包箱の利用は今年7月に開催された

洞爺湖サミットで日本郵便がメディアに提

供したことで始まった。その後、同社が梱

包箱のメーカーと契約し、輸送と梱包箱

を組み合わせた新商品「JEP」を開発し

た。メーカーから今後、同社を主要顧客

として展開していきたいとの意向を受けて

いるという。

同社は先月から成田~上海間の航空輸

送で梱包箱を利用するサービスの販売を

開始しており、利用方法としては現時点で

①日本と上海の工場間で生産用部品など

の社内物流②同区間での修理部品、精密

機械などメンテナンス輸送―などが想

定されるという。「環境への関心は非常に

高く、多数のお客さまから“待ってました”

との反応もあったほどだ。国際輸送のみ

ではなく、日本国内、中国国内での物流

でも利用が見込まれる」(同)と語る。

首都圏を強化

一方、航空事業の特性をさらに生かす

ための商品、拠点展開も進める。

商品では、山九が従来から提供してい

た「SP@CFS」(ストックポイント・アット・コ

ンテナフレートステーション)を航空輸送

サービスの中に取り込む。同商品は港

湾、空港周辺のCFSを製品、部品などの

SPとして活用し、在庫圧縮、リードタイム

(L/T)の短縮、固定費の削減につなげ

るものだ。これまで海上輸送の利用が中

心だったが、航空輸送を利用した「SBY」

との連携も進め、航空輸送の事業拡大に

つなげる。

拠点展開での注目は、10年10月の国際

化を控えた羽田空港への進出を決めた

ことだ。今夏、貨物地区上屋への入居企

業の第1次募集があり、大手フォワーダー

とともに同社が応募した。中小規模のフ

ォワーダーでは同社のみと見られる。「物

流コストの低減、環境を配慮したサービ

スに加え、航空貨物事業ではやはりL/T

の短縮が大きなテーマだ。L/T短縮は

荷主の在庫圧縮につながる」(同)と、羽

田を活用し、スピードを追求していく方針

を示す。

同空港周辺では東京・大田区の平和島

に山九の倉庫があり、現在は主に海上輸

送で活用している。ただ、山九は現在、

神奈川・川崎市の東扇島で来年11月

竣工しゅんこう

に向け「山九首都圏物流センター」

(仮称)の整備を進めている。同センター

は山九にとり最大規模の施設。竣工後に

平和島の海上輸送の倉庫機能を移管す

ることが見込まれるため、同社が航空貨

物を主体に利用することも可能だ。羽田

発の輸出航空貨物を平和島に集約し、空

港に搬入する物流フローも想定される。

「山九の航空貨物事業は関西地域に比べ

首都圏での存在感が低かった。羽田の機

能を強化し、首都圏でのサービス、利便

性を向上させることが重要となる」(同)。

商品面で「SP@CFS」との連携も可能と

なる。

一方、航空輸送事業拡大のさらなる手

段として他のフォワーダーとのコ・ロード

(共同混載)も視野に入れている。日本郵

便グループは国際物流に第一歩を踏み出

したばかりだ。営業戦略、環境対応、羽

田活用などJPSGLが打ち出す独自性がい

かに結実していくのか。国際航空貨物業

界に新たな風が吹き込まれる。

CARGO NOVEMBER 200878

リポート

「JEP」で使用するリターナブル梱包箱