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1.まえがき 近年,電子機器は高性能化に伴い制御が複雑化し,ロ ジック IC の組み合わせだけでは制御の設計が困難なため, ソフトウェアを用いた制御が行われるようになってきた. 開発サイクルが短い電化製品などは,専用 LSI の作成コス トや汎用性を考えて,プログラムミングを用いて書き換え が自由に行える LSI(Large-scale Integrated Circuit)に移 行しており,このような LSI として,FPGA(Field Pro- grammable Gate Array)が注目されている. FPGA はプログラムの書き換えが可能な LSI で,大量生 産が前提の専用 LSI より初期費用が少なく,特に小規模の 開発に適している.コンパイルなどの機能を持った統合ソ フトウェアに無料のものがあり,ダウンロードケーブルも 安価で購入や作成が可能なため,低コストで開発環境を整 えることができる.また,FPGA,水晶発振器,ダウンロー ド用のポート,LEDや操作用スイッチなどを搭載した FPGA評価ボードも低価格で販売されている.FPGA は,制御用 IC である PIC(Peripheral Interface Controller) より動作速度が速く,高機能化に向いている.FPGA の開 発言語として,主に VHDL(VHSIC Hardware Description Language)と Verilog HDL の2種類が対応している.本研 究では,Verilog HDL を用いて開発を行った. パルスパワー発生装置は,次世代半導体リソグラフィ用 極端紫外光幅射のための高エネルギー密度プラズマ生 成[1],車や煙突からの窒素酸化物の処理[2],誘電体を使 わない金属電極間の均一放電プラズマを用いたオゾン生成 [3],水中放電プラズマを用いた湖沼浄化や殺菌[4],医療 応用などのバイオエレクトリクス[5]など,多くの産業応 用の研究に使われている.これらの産業応用を実現するた めには,コンパクトで高性能,かつ高繰り返し動作の可能 な FPGA 制御方式パルスパワー発生装置の開発が必要であ る.これまでに,電磁加速器の各コンデンサをトリガする のに FPGA を使うことの提案[6],および IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールを動作させるために FPGA を用いた報告[7]はあるが,パルスパワー発生装置 としてのシステムを FPGA で制御した報告は見当たらな い. ここでは,通常行われているロジックICの組み合わせで はなく,FPGA をパルスパワー発生装置の制御に用いるこ とにより,プログラムの書き換えのみで各種のパルスパ ワー発生装置の制御を可能とした.また,コンパクト化お よび高性能化も実現した.産業応用に適したパルスパワー 発生方式として,全固体素子を用いたミニチュアマルクス 回路方式[8]および磁気パルス圧縮回路方式(Magnetic Pulse Compression Circuit: MPC) [9]を用いた. 2.FPGA の開発環境 本研究で使用している FPGA の開発環境は下記のようで ある.クロック周波数は水晶発振からの48 MHzを使用し, 電源と入出力信号の電圧は 3.3 V となっている. FPGA:Xilinx 社 Spartan‐3 XCM‐301‐200 開発言語:Verilog HDL 研究論文 FPGA を用いたコンパクトで高性能なパルスパワー発生装置の開発 秋 山 雅 裕,猪 口 誠,佐 久 川 貴 志,秋 山 秀 典, 上野崇寿 1) ,末 松 謙 一 2) ,甲 田 2) 熊本大学, 1) 大分工業高等専門学校 2) 株式会社末松電子製作所 (原稿受付:2009年6月4日/原稿受理:2009年7月22日) パルスパワーを用いた産業応用の研究が実用化に近づくにつれ,パルスパワー発生装置には小型軽量化や高 性能化が求められるようになってきた.それらのニーズに答えるため,プログラミングによって制御が可能な FPGA(FieldProgrammableGateArray)を用いて,コンパクトで高性能なパルスパワー発生装置を開発した.ミ ニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置では,トリガスイッチの信号作成にFPGA を用いることで,小 型軽量化とパルスパワーの出力タイミングの制御を可能とした.磁気パルス圧縮回路方式パルスパワー発生装置 では,トリガスイッチ,繰り返し周波数,異常診断などをロジックIC の代わりにFPGA で制御した.FPGA によ るパルスパワー発生装置の制御が,汎用性,小型軽量化および装置の信頼性につながり,オゾン生成,排ガス処 理,湖沼浄化,脱臭,医療など幅広い産業応用につながると期待される. Keywords: FPGA, Marx, MPC, pulsed power, verilog Compact and High Performance Pulsed Power Generation Using FPGA AKIYAMA Masahiro, INOKUCHI Makoto, SAKUGAWA Takashi, AKIYAMA Hidenori, UENO Takahisa, SUEMATSU Kenichi and KOUDA Atsushi corresponding author’s e-mail: [email protected] J.PlasmaFusionRes.Vol.85,No.9(2009)631‐635 !2009 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research 631

FPGAを用いたコンパクトで高性能なパルスパワー …...FPGAで作成したMPC制御のパルス列を図6に示す.こ れは,任意で設定した繰り返し周波数から,充電禁止時間,保護時間,トリガ信号を作成した箇所にあたる.

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Page 1: FPGAを用いたコンパクトで高性能なパルスパワー …...FPGAで作成したMPC制御のパルス列を図6に示す.こ れは,任意で設定した繰り返し周波数から,充電禁止時間,保護時間,トリガ信号を作成した箇所にあたる.

1.まえがき近年,電子機器は高性能化に伴い制御が複雑化し,ロ

ジック ICの組み合わせだけでは制御の設計が困難なため,

ソフトウェアを用いた制御が行われるようになってきた.

開発サイクルが短い電化製品などは,専用 LSI の作成コス

トや汎用性を考えて,プログラムミングを用いて書き換え

が自由に行える LSI(Large-scale Integrated Circuit)に移

行しており,このような LSI として,FPGA(Field Pro-

grammable Gate Array)が注目されている.

FPGAはプログラムの書き換えが可能な LSI で,大量生

産が前提の専用 LSI より初期費用が少なく,特に小規模の

開発に適している.コンパイルなどの機能を持った統合ソ

フトウェアに無料のものがあり,ダウンロードケーブルも

安価で購入や作成が可能なため,低コストで開発環境を整

えることができる.また,FPGA,水晶発振器,ダウンロー

ド用のポート,LEDや操作用スイッチなどを搭載した

FPGA評価ボードも低価格で販売されている.FPGA

は,制御用 ICであるPIC(Peripheral Interface Controller)

より動作速度が速く,高機能化に向いている.FPGAの開

発言語として,主にVHDL(VHSIC Hardware Description

Language)とVerilog HDLの2種類が対応している.本研

究では,Verilog HDL を用いて開発を行った.

パルスパワー発生装置は,次世代半導体リソグラフィ用

極端紫外光幅射のための高エネルギー密度プラズマ生

成[1],車や煙突からの窒素酸化物の処理[2],誘電体を使

わない金属電極間の均一放電プラズマを用いたオゾン生成

[3],水中放電プラズマを用いた湖沼浄化や殺菌[4],医療

応用などのバイオエレクトリクス[5]など,多くの産業応

用の研究に使われている.これらの産業応用を実現するた

めには,コンパクトで高性能,かつ高繰り返し動作の可能

なFPGA制御方式パルスパワー発生装置の開発が必要であ

る.これまでに,電磁加速器の各コンデンサをトリガする

のにFPGAを使うことの提案[6],およびIGBT(Insulated

Gate Bipolar Transistor)モジュールを動作させるために

FPGAを用いた報告[7]はあるが,パルスパワー発生装置

としてのシステムをFPGAで制御した報告は見当たらな

い.

ここでは,通常行われているロジックICの組み合わせで

はなく,FPGAをパルスパワー発生装置の制御に用いるこ

とにより,プログラムの書き換えのみで各種のパルスパ

ワー発生装置の制御を可能とした.また,コンパクト化お

よび高性能化も実現した.産業応用に適したパルスパワー

発生方式として,全固体素子を用いたミニチュアマルクス

回路方式[8]および磁気パルス圧縮回路方式(Magnetic

Pulse Compression Circuit: MPC)[9]を用いた.

2.FPGAの開発環境本研究で使用しているFPGAの開発環境は下記のようで

ある.クロック周波数は水晶発振からの48 MHzを使用し,

電源と入出力信号の電圧は 3.3 V となっている.

FPGA:Xilinx 社 Spartan‐3 XCM‐301‐200

開発言語:Verilog HDL

研究論文

FPGAを用いたコンパクトで高性能なパルスパワー発生装置の開発

秋山雅裕,猪口 誠,佐久川貴志,秋山秀典,上野崇寿1),末松謙一2),甲田 忠2)

熊本大学,1)大分工業高等専門学校 2)株式会社末松電子製作所

(原稿受付:2009年6月4日/原稿受理:2009年7月22日)

パルスパワーを用いた産業応用の研究が実用化に近づくにつれ,パルスパワー発生装置には小型軽量化や高性能化が求められるようになってきた.それらのニーズに答えるため,プログラミングによって制御が可能なFPGA(FieldProgrammableGateArray)を用いて,コンパクトで高性能なパルスパワー発生装置を開発した.ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置では,トリガスイッチの信号作成にFPGAを用いることで,小型軽量化とパルスパワーの出力タイミングの制御を可能とした.磁気パルス圧縮回路方式パルスパワー発生装置では,トリガスイッチ,繰り返し周波数,異常診断などをロジック ICの代わりにFPGAで制御した.FPGAによるパルスパワー発生装置の制御が,汎用性,小型軽量化および装置の信頼性につながり,オゾン生成,排ガス処理,湖沼浄化,脱臭,医療など幅広い産業応用につながると期待される.

Keywords:FPGA, Marx, MPC, pulsed power, verilog

Compact and High Performance Pulsed Power Generation Using FPGA

AKIYAMA Masahiro, INOKUCHI Makoto, SAKUGAWA Takashi, AKIYAMA Hidenori, UENO Takahisa,

SUEMATSU Kenichi and KOUDA Atsushi corresponding author’s e-mail: [email protected]

J. Plasma Fusion Res. Vol.85, No.9 (2009)631‐635

�2009 The Japan Society of PlasmaScience and Nuclear Fusion Research

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開発ツール:Xilinx 社 ISE WebPACK9.2i

ダウンロードケーブル:Xilinx 社 HW-USB-G

FPGAブレッドボード:ヒューマンデータ社 セミカー

ドサイズブレッドボード(54×53 mm)

3.FPGA組み込み型ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置の開発

ミニチュアマルクス回路は,スパークギャップをスイッ

チとした従来のマルクス回路と同じ動作原理であるが,ス

パークギャップの代わりにバイポーラトランジスタ(Bi-

polar junction transistor:BJT)を用いている.BJTは ZTX

415(ZETEX製)を使用した.出力は小さいが,すべて固

体素子で構成されているので,コンパクトで軽量かつ動作

が安定である.これまで,ファンクションジェネレータで

ミニチュアマルクス回路を動作させていたため,全体とし

ては容量が大きくなる欠点があった.そこで,FPGAを用

いて動作を制御することにより,小型軽量化を行った.

3.1 ハードウェア構成

ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置の

ハードウェア構成を図1に示す.パルスパワーを発生する

ミニチュアマルクス回路,ミニチュアマルクス回路のコン

デンサを充電するためのコッククロフト‐ウォルトン回路,

ミニチュアマルクス回路を制御するFPGAの3パーツで構

成している.

図2は,ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生

装置の回路図である.商用周波のAC100 V 電源を使用し,

コッククロフト‐ウォルトン回路で 300 Vまで電圧を上げ

てミニチュアマルクス回路の19個のコンデンサ(一つあた

り 10 nF)を並列充電する.AC-DC コンバータでAC100 V

をDC5 Vに変換し,フォトカプラのフォトトランジスタに

印加する.

FPGAで作成した信号をフォトカプラの発光ダイオード

に印加して,1段目のBJTを動作させる.BJTの降伏現象

(アバランシェブレイクダウン)の特性を使い,19個のBJT

を短絡させて,19個のコンデンサを直列に接続し,電圧増

幅を行う.負荷と並行に接続されている18個のBJTは,出

力パルス幅を短くするための短絡スイッチである.

3.2 FPGA組み込み型ミニチュアマルクス回路方式パル

スパワー発生装置の出力波形

FPGAを用いて開発したマルクス発生器の出力電圧をオ

シロスコープ(テクトロニクスDPO71604)と高圧プロー

ブ(テクトロニクス,TekP5100)で測定した結果を図3に

示す.

ピーク電圧は-5.2 kV が出力されており,コンデンサの

充電電圧と段数から計算される出力電圧-5.7 kVの約91%

である.パルス幅はFWHMで約 7 ns である.最大繰り返

し周波数はコッククロフト‐ウォルトン回路の充電時間で

決まり,約 10 pps(pulses per second)である.FPGAで

制御したことにより,パルスパワーの時間間隔をショット

毎に可変にできた.

4.FPGA組み込み型MPC方式パルスパワー発生装置の開発

既存のMPCコントローラでは,図4に示されているロ

ジックICが基板上に必要であり,仕様変更を行う時は基板

図1 ミニチュアマルクス回路方式のハードウェア構成.

図2 ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置の回路図.

Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.9 September 2009

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を新たに作成する必要があった.そのため,設計時間やコ

ストを考えると容易に変更することはできない.FPGA

を組み込むことで,ロジックICで行っていた制御がソフト

ウェアに置き換わり,周波数などの制御をプログラミング

によって容易に変更することが可能となった.また,既存

のコントローラより部品数が減り,装置の軽量小型化,信

頼性向上につながった.

4.1 ハードウェア構成

FPGA組み込み型MPCの構成を図5に示す.FPGAは,

操作部からの操作命令と充電器とMPCから異常信号を受

け取り,MPCへトリガ信号と異常制御,充電器へ異常制御

と充電制御,表示部へ表示命令を送っている.コントロー

ラの操作部は,周波数設定用スイッチ,電圧設定用メー

ター,電源スイッチ,トリガスイッチ,リセットスイッチ

を持っており,表示部は,パルスカウンタ,異常個所の表

示等を行っている.

4.2 ソフトウェア構成

ソフトウェアによる制御では,トリガ信号の作成以外

に,任意の繰り返し周波数の作成,パルスパワー発生回数

のカウント,異常発生時のフェールセーフ制御を行ってい

る.任意の繰り返し周波数の作成では,FPGAのクロック

信号を 1 μs に分周させ,プログラム内部でカウントして 0~500 pps を作成している.パルスパワー発生回数のカウ

ントでは,パルスパワーのトリガ信号をプログラム内部で

カウントし,その値を表示部で表示させている.異常発生

時のフェールセーフ制御では,充電器やMPCからの状態

をFPGAへフィードバックさせ,異常があればパルスパ

ワーの出力を止めて,異常個所を点灯表示させる制御を

行っている.

FPGAで作成したMPC制御のパルス列を図6に示す.こ

れは,任意で設定した繰り返し周波数から,充電禁止時間,

保護時間,トリガ信号を作成した箇所にあたる.

設定した繰り返し周波数(図6では 500 Hz 設定時)にお

いて,波形の立ち上がりから充電禁止信号にOFFを与え,

1.5 ms の間充電を可能とする.その後,充電を禁止にした

のち,50 μs の保護時間を設け,パルスパワーのトリガ信号を作成している.図7に制御のフローチャートを示す.

ユーザーが任意に設定した周波数を取り込み,周波数を

決める信号波形の立ち上がりを検出し,検出された場合は

充電禁止信号をOFFにする.充電禁止信号OFFが 1.5 ms

以上継続後はONにして,保護時間信号をONさせる.保

護時間信号がOFFになった時,トリガ信号を作成する.

図5 FPGA組み込み型MPCの構成図.

図3 ミニチュアマルクス回路方式パルスパワー発生装置からの出力電圧波形.

図6 FPGAで作成したMPC制御のパルス列.

図4 既存のMPCコントローラ.

Contributed Paper Compact and High Performance Pulsed Power Generation Using FPGA M. Akiyama et al.

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5.FPGA組み込み型MPC方式パルスパワー発生装置による水中放電プラズマの生成FPGA組み込み型MPC方式パルスパワー発生装置を

水中に置かれた銅の棒電極(直径 0.8 mm)に印加し,水中

放電プラズマの生成を確認した.棒電極は先端を除いてプ

ラスチックで絶縁されている.アース電極として,アルミ

の板が容器の底に置かれている.図8(a)は容器を含んだ

写真であり,(b)は水中放電プラズマの拡大図である.水

の導電率は 0.36 mS/cmとした.ストリーマ状の水中放電

プラズマが確認される.印加パルスパワーの繰返し周波数

は 10 Hz であり,カメラのシャッタースピードは 1 s とし

た.

図9に典型的な電圧と電流波形を示す.パルスパワーの

電極への最大印加電圧は約 25 kV,その時の最大電流は約

15 Aであり,パルス幅は約 2.3 μs であった.これらは既存コントローラを使った時と同等の値であり,FPGAコント

ローラを使ったMPCの開発は成功したと言える.

FPGAコントローラを用いることにより,繰り返し周波

数,トリガ信号,充電時間等の設定値を容易に変更できる

だけでなく,パルスパワーの負荷への印加回数の自由な設

定,パルスパワーのショット間の時間変化の自由な設定等

の高機能化が達成された.

6.まとめFPGA組み込み型パルスパワー発生装置の開発を行

い,ミニチュアマルクス回路方式およびMPC回路方式で,

パルスパワーを発生した.ミニチュアマルクス回路方式で

は,ファンクションジェネレータの機能をFPGAに持たせ

ることで小型軽量化が可能になった.また,プログラミン

グにより任意のタイミングでのパルス制御信号の作成が可

能となった.MPC回路方式では,FPGAを用いることによ

り,装置の汎用性が増し,小型軽量化や装置の信頼性につ

ながることが実機開発で分かった.既存のMPCコント

ローラは,ロジック ICを多く使用した複雑な回路であり,

パルスパワーのタイミングを変更するだけでも新たに基板

設計が必要であった.FPGAを用いることにより,プログ

ラムの値を変更するだけで各種制御パラメータを可変にで

(a)

図7 制御のフローチャートとソースコード.

(b)

図8 水中放電プラズマの写真.

図9 典型的な電圧と電流波形.

Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.9 September 2009

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き,汎用性が増した.また,部品数が減る事で回路が簡略

化され,小型軽量化と装置の高信頼性につながった.

FPGAを用いたパルスパワー発生装置の研究開発が,パ

ルスパワー発生装置の高信頼性と汎用性を高め,パルスパ

ワーの産業応用に寄与されると期待される.

謝 辞この研究の一部は,グローバルCOEプログラム「衝撃エネ

ルギー工学グローバル先導拠点」,および科学研究費補助

金(基盤研究(A))によってサポートされた.

参 考 文 献[1]勝木 淳,秋山秀典:応用物理 7, 375 (2008).[2]R. Hackam and H. Akiyama, IEEE Electrical Insulation

Magazine 17, 8 (2001).[3]W.J.M. Samaranayake, Y. Miyahara, T. Namihira, S. Kat-

suki, R. Hackam and H. Akiyama, IEEE Trans. Diel. Ele.Ins. 8, 826 (2001).

[4]Z. Li, T. Ohno, H. Sato, T. Sakugawa, H. Akiyama, S. Kuni-tomo,K. Sasaki,M.Ayukawa andH.Fujiwara, J. Environ.Sci. Health-PartAToxic/Hazardous Substances andEn-vironmental Engineering 43, 1209 (2008).

[5]K. Schoenbach, S. Katsuki, R. Stark, E.S. Buescher andS.J. Beebe, IEEE Trans. Plasma Sci. 30, 293 (2002).

[6]S.M. Huenefeldt, T.G. Engel and W.C. Nunnally, IEEE

Pulsed Power Conference, 237 (2005).[7]D. Bortis, J. Biela and J.W. Kolar, 2007 IEEE Pulsed Power

Conference, 1323 (2007).[8]T.Heeren, T. Ueno, D.Wang, T. Namihira, S. Katsuki and

H. Akiyama, IEEE Trans. Plasma Sci. 33, 1205 (2005).[9]T. Sakugawa, T. Yamaguchi, K. Yamamoto, T. Kiyan, T.

Namihira, S. Katsuki and H. Akiyama, 2005 IEEE Pulsed

Power Conference, 1057 (2005).

Contributed Paper Compact and High Performance Pulsed Power Generation Using FPGA M. Akiyama et al.

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