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NTT技術ジャーナル 2016.2 65
特集
つくばフォーラム2015 ワークショップ
FTTHを牽引した技術
フレッツ光サービスの提供開始から10数年という短期間でNTTグループは 日 本 に お け るFTTH(Fiber To The Home)の展開を完遂してきました.これらはNTT東日本 ・ 西日本における設備構築〜販売までと一体となった取り組みを研究開発が支え,ブレークに導いた成果であるといえます.
ブレークするには,黎明期から普及拡大期,ある程度充足した現在では成熟期と,大きく 3 つに分類されますが,各フェーズに応じた研究開発を光アクセス網の技術分野ごとに取り組むことにより実現しています.
サービス開始当初の黎明期においては小規模散在需要への経済的な設備構築を実現する技術を,大量開通期が求められた普及拡大期においてはお客さまの申込から提供開始までの納期を大幅短縮するための技術,サービスの提供エリアを効率的に拡大できる技術やルーラルエリアにおいても少ない設備投資でサービスを提供可能にするための技術開発を進めてきました.
成熟期においてはFTTHの展開とともに通信のみならず社会を支えるインフラとしての色合いが濃くなっており,開通NG撲滅に向けて美観や即応性などお客さまの利用要望に応じてカスタマイズ可能な技術開発を進めてきました.
本稿においてはそれぞれの技術分野おける,ターニングポイントを紹介します.
1 点目は光ファイバケーブルの分野においてです.普及拡大期まではケーブルラインアップを増やすことでエリア拡大を支えてきましたが,エリア拡大の仕上げの段階で間欠接着型テープを投入し,この技術がターニングポイントとなり配線点から端末までの大幅なコスト削減につながり,最後のエリア拡大に大きく貢献しました.
2 点目は光クロージャの分野においてです.地下区間,架空区間それぞれについてありますが,地下についてはTN(Triple N:Non-gas, Non-water, Non-sealing tape)クロージャがターニングポイントとなり水密性の向上が図られ,従来匠の技を必要とし
た施工方法を改善し,均一な施工品質を実現しました.架空区間については現 場 作 成 コ ネ ク タ を 3 号SFAOクロージャに用いたことにより,メタルに近い心線運用が可能となり,開通はもちろん,サービスチェンジも簡易にでき開通件数の大幅アップと,設備の有効利用につなげることになりました.
3 点目は構内 ・ 宅内配線の分野においてです.この分野はデベロッパなどの先行配線が主流であり,後から開通をせざるを得ないNTTは苦戦を強いられてきましたが,細径低摩擦ケーブルがターニングポイントとなり,マンションなどへの光化が加速するとともに,NTTの得意な技術分野となりつつあります.また,従来はNTT東日本 ・ 西日本でまちまちの仕様であった一部のドロップケーブルも,VCドロップを契機に物品仕様が統一され,資材調達面と合わせた経済化を実現することができました.
最後は試験システムの分野においてです.従来はAURORA(Automatic Optical Fiber Operation Support System)のような大規模試験システ
FTTH 光ファイバ つくばフォーラム
FTTHを牽引した技術と今後の展開
NTTアクセスサービスシステム研究所光アクセス網プロジェクトでは,メディアネットワーク技術に関する研究開発に取り組んでいます.本稿では,FTTH(Fiber To The Home)を牽引した研究開発と最近の光アクセス網技術,および今後の展開について紹介します.
佐さ さ き
々木 清き よ は る
治NTTアクセスサービスシステム研究所 プロジェクトマネージャ
NTT技術ジャーナル 2016.266
つくばフォーラム2015 ワークショップ
ムについてでしたが,保守用心線に特化した試験システムであるOTM
(Optical Testing Module)がターニングポイントとなり,地下設備の保守コスト削減に貢献するとともに,東日本大震災においても被災状況把握で活用したことから,災害対策の面での活用も期待されています.
最近のアクセス網技術の紹介
■超多心高密度光ケーブル今回世界最高密度の2000心光ケー
ブルを開発しました.現行の1000心ケーブルと同じ外径で収容数を 2 倍にすることが,間欠接着型光ファイバテープの適用とケーブル構造の最適化により実現しました.ケーブル構造は光ファイバにかかる外力を保護するために外被厚を調整するなど最適化を図ったことで,スロットロッドを使用せず安定したケーブル特性を確保することができました.スロットロッドをなくしたケーブル構造は他の光ケーブルにも展開され,ハンドリングの良さから今後の光ファイバケーブルのスタンダードな構造となると思われます
(図 1 ).■透明光ファイバ
光回線サービスの提供にあたり,お客さまによっては配線など美観の問題により,露出配線ができない場合があります.開通NG削減に向けて,露出配線時に目立たず,建物の美観を損なわない配線が可能な透明色のインドア光ファイバを開発しました.
開発にあたっては,開通工事の施工やお客さまの要望等について,NTT東日本 ・ 西日本の関連部署と連携して課題解決を図りながら形状や性能を決定し,導入が進められています(図 2 ).
また,NTTグループでは何度か受賞しているグッドデザイン賞をアクセ
ス系物品として初めて受賞することができました.■無電柱化推進に向けた取り組み
無電柱化については, 国土技術政策総合研究所にて実施された社会実験①
(路面及びケーブルの機能に影響を与
えない埋設深さ確認試験),社会実験②(電力線と通信線の離隔距離確認実験),社会実験③(直接埋設,小型ボックス活用埋設の施工性確認実験)に参画しました.NTTとしては他企業に先駆けて新たな地中化方式に対応した
〈ケーブル実装時〉〈一括接続時〉
光ファイバが平面状に並び, 一括接続が可能
柔軟に変形し, 歪みなどの増加を抑制
■ テープ構造( 8心間欠接着型)
■ ケーブル構造
スロットロッド
現行(1000心) 新規(2000心)
標準外径 : 23 mm
同一外径で収容数 2倍
図 1 超多心高密度光ケーブル(2000心)
図 2 透明光ファイバ
透明光ファイバ 透明光ファイバ用コネクタ
透明光ファイバの配線イメージ従来の配線イメージ
ファイバ心線
被覆(0.9 mm)
NTT技術ジャーナル 2016.2 67
特集
直接埋設用ケーブルの技術開発を進め,平成28年度から予定されている社会実験への参画を予定しています.
今後の展開
光アクセス網の技術開発については,地域IP網からスタートし,NGN
(Next Generation Network)サービスやNetroSphere構想などさまざまなサービス形態を支える基盤となっていますが,光コラボレーションモデルのスタートにより,開通工事やメンテナンスが商品となるターニングポイントになりました.例えば従来から研究を続けている無瞬断切替技術については,ネットワークサービスとして支障移転工事のツールとしての活用だけでなく,ネットワークの付加サービスとして提供するなど多様なシーンが想定されます.
ICTを取り巻く環境は,常に設備構築の中心であった光のマス需要が飽和傾 向 を 示 す 中,IoT(Internet of Things)やクラウド化,有線と無線の融合等さまざまな活用が進み,新たなサービス展開が期待されています.
NTTグループとしては,これらのビジネスチャンスを活かすため,構築してきた膨大な設備の品質を維持しつ
つも,エリアに応じた最適な人員で運用していくための設備 ・ サービス運用が課題となります.
そのためには,従来の運用プロセスを見直し,FTTH時代に合わせた運用のイノベーションと,設備(アーキテクチャ ・ 機能)そのもののリノベーションの両輪から研究開発を推進します(図 3 ).■運用のイノベーション
設備のライフサイクルに合わせて必要となるさまざまな運用業務は,サービスや事業者に対していくつかのサービスレベルを持ちつつも,最終的には人手のかからない運用を目指します.例えば①スキルの必要な現場作業を軽減し,センタ作業にシフトする機能分担,②調整 ・ 折衝稼働の事業化,③計画的 ・ 未然的な運用,④設備点検のフルノンオペレーションです.
これらの運用のイノベーションのキーとなるのは設備データベースの精度であり,データベースをクリーン化,汚れない仕組みを確立するために3D技術を用い設備情報と正確な位置情報を持つデータを自動的に取得 ・ 確認 ・更新し,FTTH時代の新たな設備管理方式に変革させる技術開発を進めていきます(図 4 ).
■設備のリノベーション光ファイバの特性を活かした新たな
ネットワークアーキテクチャを構築し,ユーザの広域収容,ビル統合等による業務効率化を,信頼性を維持したうえで実現し,高効率なネットワークに変革させます.
実現にあたっては①長距離化,②低損失,③高密度化,④信頼性の 4 つをキーワードに光の特性を最大限引き出す新たなアーキテクチャをベースに保守ポイントとなるアクティブなアクセス装置を集約,現場作業を極小化する装置開発,故障や災害を受けにくい設備など,運用のイノベーションにもつながる設備となることも視野に入れ研究開発を進めます(図 5 ).
お わ り に
今,ターニングポイントを迎えているFTTHは,変革により,NTTの将来ネットワークを方向付けることを求められています.
NTTアクセスサービスシステム研究所は将来のビジョンに “あらゆる人 ・ 物 ・ ビジネスに光を拡げ,時代を超えて安心なインフラとして社会を支え続けているアクセスネットワーク ・基盤設備「anywhere」 「anybusiness」
図 3 FTTH新たなビジョンの方向性
運用のイノベーション 設備のリノベーション
複雑にしない
機能の再配備
光のリーチ先を拡げ,あらゆるサービス,
事業者を共通に取り込む設備
サービス,事業者に対して共通かつ,自動・
能動的で人手のかからない運用
NTT技術ジャーナル 2016.268
つくばフォーラム2015 ワークショップ
「anyperiod」” を掲げ,皆様との協働 ・ 連携を深めていきながら,研究開発成果をタイムリに実現できるよう努めていきます.
日 月 火 水 木 金 土
工 事 中
工事中 歩行者通路
図 4 運用のイノベーション
■現場とセンタでの機能分担
■計画的・未然的な運用
共通の線路基盤設備運用
■調整・折衝稼働の事業化
■設備点検のフルノンオペレーション
移転・切替
自前都合での工事実施(支障移転・お客さま訪問など)
現場立会いが不要
車両巡回
監視・診断
設備管理
稼働の平準化
稼働の再配分
稼働
年
無人ロボット点検
センサ
不在昇柱・入溝 保留
派遣
修理
修理
他業務
他業務
他業務
修理
事業者A
フレッツ
事業者B
専用線
図 5 設備のリノベーション
光オリエンテッドな設備ビル統合や広域集約に向けた技術開発
(長距離・低損失・高密度)
超高度情報化社会を支える高信頼な設備
(多重,異局収容)
所外作業を極小化する高度所内機能
(遠隔管理・診断,省スペース)
あらゆるもの・場所にリーチする自由な光の引込み,配線
人口減少地に適した維持負担の少ない設備
故障や災害を受けにくい設備
M2M: Machine to Machine
コンパクトシティ
無居住地,スマートアグリ等
社会インフラ・M2M
観光地・イベント
マクロセルスモールセル
◆問い合わせ先NTTアクセスサービスシステム研究所 光アクセス網プロジェクトTEL 029-868-6302FAX 029-868-6400E-mail amoup-pmhosa lab.ntt.co.jp