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GNCJ NEWS LETTER グローバル・ネットワーク協議会 ニュースレター グローバル・コーディネーターからのメッセージ VOL.02 重点プロジェクトが動き出しました! 01. 02. 03. 04-05. 06. グローバル・コーディネーターからのメッセージ 重点プロジェクトの紹介 支援人材ネットワーク構築会議 講演録 事務局からのお知らせ 1 地域中核企業のグローバル展開等を支援し、地方からのイノベーションをサポート 2017.01 Vol.02 シリコンバレーでは、ベンチャー ビジネスが発展していく過程で、起 業家、大学、ベンチャーキャピタル (VC)などの間で強固な人的ネット ワークが形成され、有望な事業には人材と資金が集まるエコシ ステムができあがっていますが、米国と比べ日本は事情も異な る中、「日本にあった独自の仕組み」の構築が非常に重要かつ 有効であると考えています。 私が長年 VCあるいは経営者として関わっているバイオベン チャーの分野では、日本には優良技術や開発シーズが多数ある ものの、大きくビジネス化する前に海外に持っていかれるとい う傾向があるように感じています。日本では人の動きが流動化 しておらず表に出てこない面もありますが、いかにして対象とな る会社に優秀な人材を短期に集められるかという点がポイント になります。また、事業価値を最大化するためには、資金調達 を行うタイミングも非常に重要であるということを経営者は知っ ておいたほうがいいでしょう。支援者としても財務面まで立ち 入った支援を行わないと、単なる調整役で終わってしまいます が、そのような点もアドバイスすることができますので、気軽に 声をかけて頂けたらと思います。 グローバル・ネットワーク協議会 は官民アクセラレータープログラム (事業創造を加速するプログラム) と言えます。「投資」や「ビジネス」 の観点から、支援する側にも具体的なメリットが感じられるよ うになれば盛り上がっていくだろうと考えています。 グローバル競争時代のメーカーの海外展開は、中小企業で も単なる輸出型ではない、フルグローバル型の展開にならざる を得ません。世界で戦っていくためには、グローバル基準への アジャストメントが重要です。地域や国内で比較優位にあること と絶対的に優位であることは別ものです。どんなに小さな領域 でも構わないので、世界的な唯一無二性があるかをよく見極め、 そのままで難しい場合にはビジネスモデルを転換しなければな りません。支援者は企業側と摩擦を生じるかもしれませんが、 厳しいことは入口の段階ではっきり伝える必要があります。企 業側が商品開発プロセスの改善よりも海外販売支援を求めたと しても、そのような「接ぎ木」的なアプローチだと早晩壁にぶつ かる可能性が高いので注意が必要です。手を突っ込むことを警 戒される部分にこそ真の課題が横たわっていることを念頭に置 きながら、プロジェクトの支援を進めていきましょう。 Skyline Ventures, Managing Director 金子 恭規 株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山 和彦

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G N C J N E W S L E T T E Rグローバル・ネットワーク協議会 ニュースレター

グローバル・コーディネーターからのメッセージ

VOL.02 重点プロジェクトが動き出しました!

01.

02.

03.

04-05.

06.

グローバル・コーディネーターからのメッセージ重点プロジェクトの紹介支援人材ネットワーク構築会議

講演録事務局からのお知らせ

1

地域中核企業のグローバル展開等を支援し、地方からのイノベーションをサポート

2017.01Vol.02

 シリコンバレーでは、ベンチャー

ビジネスが発展していく過程で、起

業家、大学、ベンチャーキャピタル

(VC)などの間で強固な人的ネット

ワークが形成され、有望な事業には人材と資金が集まるエコシ

ステムができあがっていますが、米国と比べ日本は事情も異な

る中、「日本にあった独自の仕組み」の構築が非常に重要かつ

有効であると考えています。

 私が長年VCあるいは経営者として関わっているバイオベン

チャーの分野では、日本には優良技術や開発シーズが多数ある

ものの、大きくビジネス化する前に海外に持っていかれるとい

う傾向があるように感じています。日本では人の動きが流動化

しておらず表に出てこない面もありますが、いかにして対象とな

る会社に優秀な人材を短期に集められるかという点がポイント

になります。また、事業価値を最大化するためには、資金調達

を行うタイミングも非常に重要であるということを経営者は知っ

ておいたほうがいいでしょう。支援者としても財務面まで立ち

入った支援を行わないと、単なる調整役で終わってしまいます

が、そのような点もアドバイスすることができますので、気軽に

声をかけて頂けたらと思います。

 グローバル・ネットワーク協議会

は官民アクセラレータープログラム

(事業創造を加速するプログラム)

と言えます。「投資」や「ビジネス」

の観点から、支援する側にも具体的なメリットが感じられるよ

うになれば盛り上がっていくだろうと考えています。

 グローバル競争時代のメーカーの海外展開は、中小企業で

も単なる輸出型ではない、フルグローバル型の展開にならざる

を得ません。世界で戦っていくためには、グローバル基準への

アジャストメントが重要です。地域や国内で比較優位にあること

と絶対的に優位であることは別ものです。どんなに小さな領域

でも構わないので、世界的な唯一無二性があるかをよく見極め、

そのままで難しい場合にはビジネスモデルを転換しなければな

りません。支援者は企業側と摩擦を生じるかもしれませんが、

厳しいことは入口の段階ではっきり伝える必要があります。企

業側が商品開発プロセスの改善よりも海外販売支援を求めたと

しても、そのような「接ぎ木」的なアプローチだと早晩壁にぶつ

かる可能性が高いので注意が必要です。手を突っ込むことを警

戒される部分にこそ真の課題が横たわっていることを念頭に置

きながら、プロジェクトの支援を進めていきましょう。

Skyline Ventures, Managing Director

金子 恭規 氏

株式会社経営共創基盤代表取締役CEO

冨山 和彦 氏

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重点プロジェクトの紹介

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重点プロジェクトが動き出しました!

 地域中核企業の事業を加速化し、競合に先立って早期に市場に進出することで、地域中核企業はより大きな市場シェアを確保することができます。このため、約200プロジェクトのうち協議会による支援が有効だと思われるプロジェクトについては、地域の支援人材の皆様、経済産業局、対象となる企業の方 と々相談の上、重点プロジェクトとして集中的な支援を行っています。

 既に幾つかのプロジェクトにおいては、地域中核企業をグローバル・コーディネーター(以下GCD)が訪問したり、Web会議でGCDとの面談を行うなどして、GCDからの具体的なアドバイスにより課題が整理されたり、事業の方向性が明確になるなど、支援の成果が出始めています。 現在進行中の幾つかのプロジェクトをご紹介します。

[快適でハイクオリティーな超高域・高精細ワイドレンジスピーカーの事業展開(中国)]オオアサ電子㈱の新製品視聴会にGCD阿部康行氏が参加し、ディスカッションを行いました(11月)

 オオアサ電子㈱(広島県北広島

町)が東京で行った新製品視聴会

に、住友商事㈱顧問である阿部康

行GCDに参加頂き、同社の新製品

(固有技術の粋を集めたハイレゾスピーカー)の試聴と、長田社

長、岩城PMとの面談が行われました。長田社長からMade in

Japanにこだわっているモノづくりの歴史についてお話があり、

歴史を踏まえどのような事業展開があるかについての活発な

ディスカッションが行われました。同日は、阿部GCDから音響

メーカーの方もご紹介頂き、一緒に視聴すると共に協業の可能

性についての協議の場にもなりました。本件については、その後

も、小林いずみGCDご紹介先との面談や、販売戦略の構築等の

話が進んでいます。

 新潟市が将来のコア事業として

位置付ける航空機部品製造関連の

クラスター2か所を浅倉眞司GCD

が訪問され、それぞれにて活発な

議論が行われました。1か所目の共同受注グループ「NSCA(ナス

カ)」が入居する共同工場では、クラスターの中核企業であり特殊

工程を担う新潟メタリコン工業㈱の井筒社長、杉本PMと意見交

換を行い、2か所目のYSEC(㈱山之内製作所巻工場)では、山内

社長が進めるITを活用した工場の自動化に関連して、GE社の産

業用プラットフォームPREDIXを紹介頂くなど、今後の発展に向け

示唆に富んだアドバイスを受けました。両クラスターとも浅倉

GCDとの議論を踏まえながらプロジェクトの深化を目指します。

[新潟地域における航空機産業基盤強化支援事業(関東)]

新潟市の航空機産業振興プロジェクト(NIIGATA SKY PROJECT)をGCD浅倉眞司氏が訪問し、アドバイスを頂きました(9月)

[部素材産業を核としたCNF(セルロースナノファイバー)の実用化支援事業(新規高機能増粘剤普及事業)(近畿)]

第一工業製薬㈱をGCD森健氏が訪問し、ディスカッションを行いました(12月)

 京都で創業し107年の歴史があ

る地域中核企業の第一工業製薬㈱

東京本社を森健GCDが訪問され、

坂本会長始め経営幹部の方 と々面

談が行われました。同社は今般、CNF(セルロースナノファイバー)

を活用した新しい増粘剤「レオクリスタ」を柱となる商品に育て上

げるために取り組んでいます(既に、三菱鉛筆㈱のゲルインクボー

ルペンに採用されています)。同社の強みやCNF事業を拡大する

上での課題と今後の展開可能性等についてディスカッションが行

われましたが、議論が白熱し予定を上回る長時間の会議となりま

した。坂本会長からは、今がチャンスととらえているので外部から

の発想も大変有難く、継続した支援をお願いしたいというご要望

を頂き、今度は森健GCDが2月に京都の本社へ訪問し、討議の続

きを行うこととなりました。

[3D内視鏡下手術支援カメラ助手代行ロボットの早期事業化とソロサージェリーの普及促進事業(関東)]

㈱金子製作所が出展した展示会にシリコンバレーから来日中のGCD上田学氏が訪問し、アドバイスを頂きました(12月)

 ㈱金子製作所(埼玉県さいたま

市)は産学連携で開発した裸眼多

視点3D方式による画像処理技術

を用いた3D内視鏡下手術支援カ

メラ助手代行ロボットの早期事業化に向けて、シリコンバレーの

金子恭規GCDとWeb会議で面談を行い、北米での事業展開の加

速に向けたアドバイスを受けました。また、非医療系分野での展開

に関して、後述の会議にて来日されていたシリコンバレーの上田学

GCDからもアドバイスを受けました。同社は2月の米国アナハイム

での展示会に向けて準備しています。

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支援人材ネットワーク構築会議

これまでの開催状況

 プロジェクトの推進をより一層加速化させていくため、①分野固有の課題及び国内外の最新技術・市場動向等についての情報共有、参加者相互のコミュニケーションを通した課題や事例の共有、支援対象企業に対するアドバイス・指導等の各種支援を行う「分野別支援人材ネットワーク構築会議」、②地域ブロック内での異分野連携強化を目的に開催する「ブロック別支援人材ネットワーク構築会議」を順次開催しています。プロジェクト間の連携の促進を図るとともに、個別相談会なども行っています。

開催日/場所/分野・地域ブロック

10月14日(金)名古屋市中部ブロック

11月29日(火)都内食の海外展開分野

12月1日(木)大阪市ロボット分野(IoT、AI、ビッグデータ等)12月5日(月)広島市エレクトロニクス分野

12月13日(火)福島県郡山市医療機器分野

12月16日(金)広島市中国ブロック

12月20日(火)さいたま市関東ブロック1月11日(水)神戸市再生医療分野

1月19日(木)都内製造技術(精密加工等)分野

1月27日(金)都内水素エネルギー分野

1月30日(月)福岡市環境ビジネスのアジア展開分野

〈「第12回 中部地域産学官連携コーディネータ連絡会議(東海分科会)」との共催〉・基調講演:GCD梶川裕矢氏「ビジネスモデルを見据えた産学官連携のあり方」*  ・ディスカッション・研究開発における各種支援施策の紹介

・基調講演:㈱グローバルニュートリショングループ 武田猛氏「機能性食品の海外展開とASEANの関連法規」・経済産業省(地域産業基盤整備課)、ジェトロ、クールジャパン機構から、農水産品・食品分野の海外展開に関する施策紹介・課題抽出・解決ワークショップ

・基調講演:GCD上田学氏「シリコンバレーのIoT分野における最新動向と今後の指針」*・経済産業省から、ロボット分野に関する施策紹介・グループディスカッション(テーマ:①FA(ファクトリーオートメーション)、②ロボット要素技術)・大阪市のATCエイジレスセンター、おおさかATCグリーンエコプラザの視察・基調講演:GCD川西哲也氏「グローバル商品開発によるグローバル競争力の獲得」・経済産業省(情報通信機器課)から、情報通信関連の施策紹介・グループディスカッション(テーマ:これからのものづくりプロセスのグローバル化)

・基調講演:アクセンチュア㈱ 榎原洋氏「グローバル市場を見据えた医療機器開発・事業化推進」・経済産業省(ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室)、医療機器開発支援ネットワークによる施策紹介・グループディスカッション(テーマ:①海外展開、②マーケティング) ・ふくしま医療機器開発支援センターの視察(翌日)

・基調講演:GCD森健氏「日本の産業が今、考えなければならないこと」*・プロジェクト代表事例の紹介・ディスカッション(テーマ:プロジェクトマネージャー/コーディネーターとしてこれまで以上の価値を提供するには)

・基調講演:GCD國井秀子氏「地域でのイノベーションエコシステムをどう作るか」・プロジェクト代表事例の紹介・重点支援プロジェクト事例紹介、意見交換会・理化学研究所 多細胞システム形成研究センターの視察・基調講演:フロンティア・マネジメント㈱ 小林創氏「再生医療産業化と日本企業の役割」・経済産業省(生物化学産業課)による施策紹介 ・各プロジェクトの取組事例紹介 ・起業事例紹介とディスカッション

・基調講演:GCD森雅彦氏「日本のものづくり産業の競争力はどこにあるのか」・経済産業省(素形材産業室)による施策紹介   ・グループワーク(テーマ:どこで稼ぐか?)・「精密計測・微細加工プラットフォーム」、「J-GoodTechを活用した大企業・海外企業とのマッチング」の紹介・東京都立産業技術研究センターの視察(翌日)・基調講演:㈱ローランド・ベルガー 遠山浩二氏「水素・燃料電池市場の動向、及び求められる取り組み」・経済産業省(資源エネルギー庁)による施策紹介  ・視察報告 北米における水素・燃料電池ビジネスの状況・ディスカッション(テーマ:水素社会実現のためにプロジェクト間連携をどう進めるか)

・基調講演:GCD角南篤氏「環境ビジネスのアジア展開に向けての課題」・JICA、ジェトロから施策紹介・事例紹介とディスカッション(テーマ:途上国・新興国へのビジネス展開の課題)

内 容

* 講演録を 4ー5ページに掲載

今後の開催予定開催日/場所/分野・地域ブロック

2月7日(火)~8日(水)滋賀県高島市 他近畿ブロック(合宿形式)

2月14日(火)福岡市九州ブロック

・基調講演:GCD西澤民夫氏・グループ別ワークショップ・㈱堀場製作所びわこ工場の視察

・基調講演:GCD西澤民夫氏・グループワーク

内 容

2月17日(金)都内航空機分野

2月(調整中)都内素材(CNF、CFRP)分野

・基調講演:(公財)神戸市産業振興財団 茨木久徳氏、㈱日本政策投資銀行 島裕氏・経済産業省(航空機部品・素材産業室)、支援機関からの施策紹介 ・グループワーク

・基調講演:調整中

開催日/場所/分野・地域ブロック 内 容

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イノベーションとコーディネーション

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講演録「ビジネスモデルを見据えた産学官連携のあり方」    梶川 裕矢 氏東京工業大学大学院環境・社会理工学院准教授、名古屋大学イノベーション戦略室客員教授

グローバル・コーディネーター

 イノベーションとは、何か新しいことで価値を作ることです。新しい何かには技術のみならず、ビジネスモデル、組織、政策や制度等が含まれます。価値は経済的価値だけでなく、社会的、公共的、文化的価値等の多様な価値を含みます。コーディネーターがコーディネートする対象は人や組織かもしれませんが、本質的にはイノベーションのコーディネーションであり、研究開発~事業化~事業展開に至る過程の中で様々に生じる課題に対し事前的・事後的に対処していく、イノベーションのためには何でもやるということに尽きるでしょう。 イノベーションに科学技術は必要条件ですが、十分条件ではありません。研究開発を積み重ねても、その技術が市場に投入できる段階にないと社会に実装されません。技術が社会に実装されるかどうかは技術のみならず、市場、産業構造、インフラ、政策・制度等の多様な要素に影響されます。また、社会実装の時宜・機会を捉え事業化するビジネスモデル・ビジネスエコシステムの設計が重要となります。コーディネーターの役割の1つは、観察者としてそのような機会を捉えるべく観察すること、行動者としてそのような機会を作りに行くことがあると思います。市場化のコーディネーターとしての役割です。 もう1つの役割は科学技術のコーディネーションです。科学技術は研究者・技術者に任せておけばよいということではありません。知識の爆発と変化のスピードの向上により、専門家個人で把握できる範囲には既に限界が生じています。学問がその深化とともに細分化される一方、社会課題は複雑化し、多数の異なる価値観やインセンティブ、認識の構造を持つ多様なステークホルダーが関係します。また、専門家はややもすると競合技術を軽視したり、重要な関連技術を見落とすことがあります。その中で、どのように世の中の情報を収集・分析し、プロジェクトを適切にコーディネーションしていくか。コーディネーター自身がコーディネーターとしての専門性とネットワークを備え、主体的にプロジェクトに関わっていく、企業に対しても大学に対しても提案型の活動をしていくことが必要となっています。コーディネーターの役割の再定義に向けて 上記の観点でコーディネーターの役割を整理すると、次の3つの役割が大きいのではないでしょうか?1つ目は技術やシー

IoT導入の3つのパターン 近年急速に拡大したIoTの導入パターンを見てみると、大きく3つに分類することができます。1つ目は、オペレーションコストの削減です。機械化によって業務を効率化し、コストを下げるというものです。2つ目は、ユーザーの動向を追跡することによってユーザーの理解を深め、囲い込みや継続利用に結びつけるという目的の技術利用がよく見られます。3つ目は、様々な機器をソフトウェアの技術と組み合わせることによってスマート機能を実現していくことです。IoTのトレンドの推移 IoT(Internet of Things)の概念が初めて世に出たのは2011年です。当初は、ソフトウェアからハードウェア、クラウドサービスも全て自社開発ができる企業だけが取り組んでいました。その後2012~2014年にかけて、新しいアイディアを公開して出資を募るクラウドファンディングを活用したスマート家電などのDIYブームが起こり、盛り上がってきましたが、ここ2年ほどは家庭用から、ビジネスモデルを構築しやすい業務用にシフトしつつあります。今後はSaaS(Software as a Service)型のパッケージソリューションが増えていくでしょう。IoT技術を利用して何を実現するのか 現在、新たにIoTに取り組む際には、既存のIoTプラットフォームを利用し、その上にカスタムソリューションを開発するのが一

「シリコンバレーのIoT分野における最新動向と今後の指針」    上田 学 氏米国 Mode, Inc. CEO

グローバル・コーディネーター

ズをビジネスモデルとセットで企業に提案する「イノベーションプランナー」。これが企画だとすると2つ目は営業で、新しい企画を実現させるためにリソースをとってくる「リソースモビライザー」。資金や人材だけでなく、協力や組織的コミットメント等も含めて動員する役回りです。そして3つ目は「イノベーションオーケストレイター」。卓越した論理を構築し、信頼できる論拠を提示し、説得力のあるストーリーを展開することで、多様なアクターやネットワークを活用し、巻き込みながら、イノベーションの実現に繋げる役割です。 コーディネーターの立場には限界があり、非常に難しい仕事ですが、組織間で生じている問題を拾うことができるのはコーディネーターしかいません。個人の力で限界があるものはネットワークを使って動かすことができるように、リーダーシップや影響力を持っておくことも重要です。コーディネーター自身が強い個人となり、互いに連携することによってイノベーションの実現を目指しましょう。

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 今求められているのは「ことづくり」だと思います。製造者やサービス提供者側の観点ではなく、マーケット側の観点で真に求められている顧客価値の提供を考え、価値創造型の競争力を強化するということです。そのためには、顧客に対する見方、接し方、提供する価値を見直す必要があります。顧客が何に対価を払おうとしているのか、周辺の仕組みまで提供できるか、顧客がどんな情報を発しているか。それらを考えてみると、ブレークスルーが生まれる可能性があるのではないかと思います。BtoBビジネスにおけるマーケティング 地域中核企業にはBtoBビジネスが多いと思いますが、BtoBにおいてマーケティングは企業の全部門が関わるべきです。また、顧客の特質と自社に対する位置づけをはっきりさせ、顧客ごとにつきあい方を考えることが後々の利益に繋がります。そして、BtoBビジネスであっても最終顧客を意識することが不可欠です。 商品、顧客ごとに収益性を分析すると、多くの企業で2割の商品や顧客が8割の利益を生んでいます。この事実を客観的に理解し、収益を上げていないものは、その理由を突き詰めて分類する必要があります。新たな商品や事業を始める際には、何かをやめないと経営資源を十分に投入できないケースが多いため、行き詰まる前に、既存の商品の終売も検討するべきです。それぞれの商品の持つ戦略的意味合いを熟考した上で、客観的に判断して頂きたいと思います。地域中核企業育成における支援者の役割 経営者は経験豊かで有能ですが、それゆえに陥る罠があるので、そこに気づいてもらい、助言をすることが支援者の大きな役目です。常に客観的な視点を持ち、経営者と異なる考え(目標、道程、リスク等)を見出すのが支援者としての価値を提供する第一歩です。意見が異なる場合は、客観的に論理的に徹底的に話し合います。例えば、当該企業の商品はなぜ売れるのか、経営者は「良いものだから売れる」と思っていないか。別の売り方をすればもっと良いビジネスになるのではないか。顧客の情報を的確に早く入手し、活用できないか。商品や顧客の収益性を理解しているか、終売すべき商品はないか。これらの視点を提供することが支援者の重要な役割です。情報の収集と分析の支援 検討に当たっては情報の収集と分析が必要です。当該企業はプロとして相当の情報を持っていますが、その価値に気が付いていない場合は引き出すのを助けてください。必要な情報がないときは代替する情報で仮説を立てます。企業の全部門で考え、従来とは異なる顧客情報の収集方法を試すのも良いでしょう。BtoBビジネスでは最終消費者を理解する重要性を説き、行動に移すよう支援してください。これができると、数年間で企業は変わってくるはずです。また、全ての情報収集において「仮説志向」が必須です。仮説、情報収集、検証を繰り返すことによって有益な分析に繋がり、結論もおのずと正しい方向、実行可能な方向に向いていくと考えています。

般的です。ただ、目的を明確にしないと、せっかく投資をしてビッグデータ解析をしても、結果が利益に繋がらない場合もあります。IoTの技術を利用して実現したいことは、①コスト削減、②ユーザーの深い理解、③スマート機能の実現、という3つの目的のうちどれなのか、それに対していくら投資するのかを考える必要があります。2020年を見据えた一歩先の取り組み まず、カスタム開発を最小限にしてソリューションをパッケージ化し、一度作ったものを多くの拠点に展開することができれば、コストを大幅に下げることができます。 次に、既存のハードウェアをクラウドに接続することを重視するべきです。スマート機器の普及を待つのではなく、既存のハードウェアに後付センサーや低価格の組み込みコンピュータなどのデバイスを接続することで、より早く求めることが実現できるのではないかと思います。 また、難しいのはハードウェアとソフトウェアを絡ませる部分で、様々な専門分野の知見が必要になります。組み込みソフト、業務用アプリケーション、クラウドサービスの開発はそれぞれ別ものであり、1社で全て開発できる企業はほとんどありません。そのため、開発パートナーを見つけるなど、オープンイノベーションが重要です。 そしてスピード感。ベンチャー投資の規模が桁違いに大きくなっている現在、かなり時間に対して意識して進めていかないと、気が付いたときには遅かったということになりかねません。残された時間は数年だと認識し、何のために(目的)、誰のために(横展開は可能か)、いつまでに・いくらでIoTの導入をするのかを考えて頂ければ、一歩踏み出して頂く決断ができるのではないかと思います。

ものやサービスを売るためには これまでの日本企業の戦い方をみると、製品やサービスの高度化、絶え間ない改善と高品質化、基礎研究の強さに基づくシーズ開発をテコに生まれるイノベーション等により競争力を持っていました。国内市場の縮小、グローバル競争の激化などによってものが売りづらくなったと言われますが、企業側にも理由があります。過去の成功体験や、情報の氾濫によって、現場を実際に見て理解する努力を怠っているのではないかということです。

「日本の産業が今、考えなければならないこと」    森 健 氏株式会社ローランド・ベルガー エグゼクティブアドバイザー

グローバル・コーディネーター

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グローバル・ネットワーク協議会事務局〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 1-8-11 東京 YWCA会館 8F一般財団法人日本立地センター 地域イノベーション部内TEL: 03-3518-8977 FAX: 03-3518-8970 E-mail: [email protected] URL: http://www.gncj.jp

グローバル・ネットワーク協議会とは

事務局からのお知らせ

グローバル・ネットワーク協議会事務局は、経済産業省の委託を受けて一般財団法人日本立地センターが運営しています。

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第2回全国支援ネットワーク会議(仮)を開催します

平成29年度地域中核企業創出・支援事業

 3月1日(水)午後に、「グローバル・ネットワーク協議会 第2回全国支援ネットワーク会議(仮)」を東京・秋葉原で開催します。昨年6月の協議会発足以降、GCD、地域、関係府省が一体となり、グローバルな視点でプロジェクトを推進し、地域の未来に繋がる多くの成果を創出してきました。その中心的な役割を担ったGCDを交え、代表的な成果事例をもとに「プロジェクト成功の鍵」について議論します。当日は、浅倉眞司氏、金子恭規氏、森健氏、森雅彦氏が参加を予定され、また、4件程度のプロジェクトの報告があります。交流会も行います。地域中核企業創出・支援事業を推進する上で大変有益なプログラムです。詳細は後日GNCJウェブサイト(URL: http://www.gncj.jp/)に掲載いたします。

 経済産業省では、平成29年度も地域中核企業支援の取り組みを進めていきます。 公募等の詳しい状況については、決まり次第、各経済産業局ウェブサイト等に掲載されますのでご確認ください。

GLOBAL NETWORK COUNCIL JAPAN

 我が国には優れた技術を持つ地域企業が数多くありますが、その技術力をイノベーションに繋げ、世界の市場をリードする新しい流れを作り出すまでには至っていない事例が少なくありません。このため、政府としては、ローカルイノベーションによって地方に良質な「しごと」を創出するために、経済産業省、内閣官房、文部科学省等が連携して地域企業のグローバル展開等を支援し、地域からイノベーションを起こして地域経済を活性化させる新しい「日本型イノベーション・エコシステム」の構築を目指すこととなりました。

 「グローバル・ネットワーク協議会(GNCJ)」は、こうした「日本型イノベーション・エコシステム」の核となる推進組織として平成28年6月9日に設立され、平成28年度は経済産業省、文部科学省事業において、採択した多様な分野(機械、IT、素材、バイオ、農業、環境・エネルギー等)にわたる約200の中核企業支援プロジェクトについて、世界レベルで活躍する「グローバル・コーディネーター(GCD)」25名を結集し、プロジェクトの各フェーズに応じた支援を実施しています。