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Green Biotechnology For The Future › botany › PlantScienceLeaflet.pdf · バラの品種改良 病気に強いバラの育種 バラには根頭がんしゅ病という病気が発生します。

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Green Biotechnology For The Future

Sustainable Crop Production

ー持続的な作物生産に向けてー

Agribusiness

ー農業ビジネスに挑むー

Plants

(植物)

Foods

(食料)

Peace

(安らぎ)

Materials

(素材)

Medicines

(医薬)

Environment

(環境)

Energy

(エネルギー)

植物は、人類が生存するために不可欠な食料や酸素を供給するだけでなく、大気や土壌、水を浄化する役割も担っています。また、安らぎや

感動を与えてくれる美しい花も豊かな生活を送る上では大切な存在でしょう。さらに、エネルギーや工業製品、医薬品などの原料・素材として

利用されている植物もたくさんあります。野山には多くの植物が生育していますが、それらがそのまま食料や原料になるわけではありません。

望ましい形質(美味しい、きれい、ストレスに強いなど)を植物に持たせなければなりませんし、私たちの生活に必要なだけの植物を得るため

には“栽培”しなくてはなりません。応用植物科学コースでは、人間生活の基盤となる「植物(作物)」の持続的・安定的な生産供給に向けて、

栽培、育種、流通にかかわる技術の開発や諸問題を解決するための農業バイオテクノロジー研究や農業ビジネス研究に取り組んでいます。

農作物を持続的・安定的に生産するには、栽培環境の

最適化、病害虫による被害の防止、優良形質を持つ作物

品種の作出、効率的な栽培方法、などさまざまな技術が

求められます。さらに、農業を原因とする環境負荷を低

減する技術も確立しなくてはなりません。そこで私たち

は、農作物の持続的・安定的生産と環境負荷低減の礎と

なる技術の開発に向け、遺伝子や微生物などのレベルか

ら田畑のレベルまでを対象とした基礎研究と応用研究を

行っています。

日本の農業を発展・持続させるためには、農業をビジネスとして捉えることが

大変重要です。私たちは、低投入型の農業経営が成り立つ条件、農業法人による

農業経営の展開、植物工場など新たな植物生産・流通のシステムについて、消

費・市場動向をふまえた研究を行っています。このような研究を通して、農業ビ

ジネスの現場で活躍できる人材を育成したいと考えています。

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Laboratory introduction

園芸学 (Horticultural Plant Production)

園芸植物栽培学 (Horticultural Science)

作物栽培学 (Crop Production Science)

植物遺伝育種学 (Plant Breeding and Genetics)

植物環境制御学 (Environmental Control in Plant Production)

植物細胞工学 (Plant Cell Technology)

植物分子生理学 (Plant Molecular Physiology)

植物病理学 (Plant Pathology)

食料生産管理学 (Food Production Management)

食料経済学 (Food Economics)

植物生産管理学 (Plant Production Control)

菌類生態学 (Microbe Ecology)

植物病原学 (Molecular Plant Pathology)

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Horticultural Plant Production

当研究室では、主に、バラ、堆肥、育種、培養な

どについて研究を行っています。

1. バラの品種改良 病気に強いバラの育種

バラには根頭がんしゅ病という病気が発生します。

この病気の防除は大変難しく、バラ生産者を非常に

悩ませています。そこで当研究室では、根頭がん

しゅ病に強く、かつ高品質のバラ品種を育種しまし

た。

2. 染色体操作による新しい鑑賞植物の育成

染色体操作によって、従来にはない新しい鑑賞植

物品種や付加価値の高い新品種を育成することに成

功しています。

スパティフィラムの小型品種の育成

青色ハイビスカス品種の育成

さらに、それら新品種の組織培養法で大量増殖す

る技術も確立しました。

Rose and Ornamental plants

Breeding & Tissue culture

研究室HP( http://www1.gifu-u.ac.jp/~hort/kennkyuusitu11.htm) ― 幸せを運ぶ新品種の育成―

根頭がんしゅ病バラの根や茎にコブができる病気 病気に強く、樹勢が強いバラ

品種を『品種登録』 台木として日本全国で栽培

切花品種“アンナ”は根頭がんしゅ病に強い抵抗性

ノイバラは根頭がんしゅ病に弱いが、樹勢が強い

交配

大型の観葉植物“スパティフィラムの染色体操作による新品種の育成

4倍体 「コルヒチン」処理により染色体を倍化させることで小型の4倍体の個体を育成

2012年にオランダで開催

された国際園芸博覧会で『金賞』受賞

組織培養技術を用いた苗の大量増殖技術を開発

2倍体 4倍体

アフリカ・ケニア自生の「ケナフ」を用いて、コルヒチン処理により染色体を倍化させ、鑑賞価値の高い『青いハイビスカス品種』を育成

染色体が倍加して4倍体になることで、花弁の大型化し、花弁の青色色素の含量が高まり、鑑賞価値が向上。

他のハイビスカス属植物との交雑によって新たな花色を持つ品種を育成

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Horticultural Science

当研究室では、園芸植物とAMFの相互作用解析及

び共生機能利用、園芸植物における環境ストレス耐性

の生理学的解析と応用に関する研究を行っています。

1. 園芸植物とAMFの相互作用解析

有用微生物であるarbuscular菌根菌(AMF)は生

物肥料・生物農薬的機能を有しています。当研究室では、園芸植物における環境ストレス耐性(耐塩性、 温

度ストレス耐性、耐病性、アレロパシー耐性等)のAMFによる生物的制御法の確立、耐性機構解明を行っています。

2. シソ科ハーブの抗酸化能・抗菌能利用

抗酸化・抗菌作用が期待されるシソ科ハーブを対象

とし、植物体抽出物及びコンパニオンプランツ・カバークロップ法による植物生育促進・耐病性誘導、組織培養等を行っています。

3.環境ストレス耐性と機能性成分制御

野菜の環境ストレス適応機能を利用し、機能性成分(抗酸化物質、遊離アミノ酸等)制御による高機能化を図ります。

Horticultural Plants, Antioxidants ,

AMF& Environmental Stress Tolerance

研究室HP( http://www1.gifu-u.ac.jp/~ymatsu/)

アスパラガス イチゴ 茶

AMF共生による植物体生長促進効果

忌地現象発生機構解明並びにAMF・NaClによる耐病性誘導及び抗酸化機能解析

忌地現象

PCR-SSCP解析

シソ科ハーブの

抗酸化・抗菌能利用と組織培養

シクラメンの

高温ストレス耐性・耐病性

AMFによる耐塩性誘導

AMF

NaCl処理

AMF AMF AMF

― 園芸植物における環境ストレス耐性制御―

抗酸化酵素SODの

アイソザイム解析

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― 温暖化条件でも持続的な食糧供給を ―

Crop Production Science

イネは、世界の人口の半分を支える重要な作物で

す。しかし、地球規模の気候変動=温暖化により、

その生産が脅かされています(図1)。すでに中国の

長江流域では、猛暑年にイネの稔(みのり)が極端

に悪くなる、「高温不稔」という現象が観察されて

います(図2)。温暖化時に安定して食糧を供給する

ためには、高温不稔に強いイネをつくることが必要

です。

しかし、これまでは「イネは高温に強い」と思い

こまれてきたために、イネの高温不稔の研究例は少

なく、分からないことがたくさんあります。私たち

は、実際に日本や外国の暑い水田へ出かけ、イネの

開花や高温不稔が発生する様子を観察し、発生の仕

組みや高温に強いイネの特徴を調べています(図3)。

また、品種の改良や栽培による温暖化への適応が

どこまで可能かを知るために、人工気象器を用いて、

人為的に高温不稔を発生させ、高温に強いイネの形

や遺伝子の力を評価する仕事にも取り組んでいます。

Rice Save The World

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~matsuit/)

図1.大気中CO2濃度倍増時に予測

される4つの気象条件でのイネの収量予測.

図3.炎天下でイネの花を採取する

日本と中国の大学生.さまざまな形のイネ(手前)を海外で育てて調査する.

図4.田んぼで働いた後は仲良くご飯

を食べます.世界には様々なお米、料理、食文化、ビールがあります.

図2.2007年に中国湖北省で発生し

たイネの高温不稔、緑色の籾(つまり8割ほどの籾)は稔っていない.

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― 遺伝資源を保全し、活用する―

Plant Breeding and Genetics

世界はいま、深刻な食料危機に直面しています。

2050年には90億人を突破するといわれている人

口をささえるには、約70%の食料増産が必要と算

出されています。このような増産を限られた資源

のもとで達成するには植物体そのものの生産能力

を大幅に向上させるより他なく、そのためには、

品種改良のスピードを高速化するための技術革新

が不可欠となります。

われわれの研究室では、植物の持てる力を知り、

その力を最大限に発揮する植物開発を目指してい

ます。育種の効率化に役立つDNAマーカーの開発

や(図1)、ワサビをはじめとしたさまざまな栽

培・野生種の系統を保存しており、植物遺伝資源

の保全にも取り組んでいます(図2)。

Genetic Resources

& Evolution

図1.塩基配列情報を用いたDNAマーカー開発

図2.野生種を含めたワサビ属植物の系統保存を行っている世界で唯一の施設です

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/)

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― 生育環境を最適に制御した植物生産 ―

Environmental Control

in Plant Production

農作物の栽培は、気候や土壌に適した季節や場所

を選ぶ必要があります。しかし、イチゴ、トマト、

ピーマン、キュウリ、一部の切り花類などは季節に

関係なく出荷されており、これらの多くは光強度、

温度、湿度、CO2濃度、などを制御した施設園芸

(温室)で生産されています。近年は栽培管理もコ

ンピュータで自働化されるようになってきました

(図1)。養液栽培システムも導入されています(図

2)。

太陽光を使用せずに植物の生育に必要な波長の光

を照射する照明(LEDや蛍光灯)を使用する人工光

利用型植物工場も近年増加しています(図3)。最

適な制御環境下ではレタス類は露地よりも6倍以上の

成長速度を示します。

日本の夏場は園芸施設内の高温により栽培が困難

であり、低コストで省エネルギーな温湿度制御法は

確立していません。私の研究室では、低コストでし

かも作物の収量・品質が向上する加湿冷房方法と栽

培方法の研究に取り組んでいます。

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~tanakai/energysys.htm)

栽培管理・環境制御

日射センサ

根圏水分センサ

温湿度・CO2センサ

植物体撮影カメラ

茎流センサ

灌水・養液供給

CO2施肥

換気

遮光カーテン

光合成・蒸散測定

冷房暖房

補光ランプ

生体情報

環境情報

日射

加湿

図1.コンピュータで自働化された環境制御・栽培管

理の例.コンピュータは温室内の環境・植物の生育状態をセンサで計測し、栽培管理の状態を評価する.そして栽培管理や環境の設定値の変更を命令する.

図3.人工光源を利用した植物工場.左)LED植物工場、中央)蛍光灯を利用し

た多段型植物工場.右)高圧ナトリウムランプを使用し、根域にミストの養液を噴霧する植物工場.

図2.土を使用しない養液栽培

の根.植物の生育に必要な無機イオンを溶かし、酸素濃度、温度を制御した養液を根域に循環する.

Plant Factory, Hydroponics,

Greenhouse Engineering

& Speaking Plant Approach

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― 植物のポテンシャルを引き出す ―

Plant Cell Technology

私達は食料となる作物だけでなく,バイオエタ

ノール・ディーゼルなどの燃料や,紙,ゴムなど

工業原料の多くも植物から生産しています。人口

の増加や経済発展により増え続ける需要に,食べ

物とそれ以外の作物の生産のバランスを保ちなが

ら応えるためには,植物を知りそのポテンシャル

を引き出すことが大切です。特に大切なのは,悪

い環境でも生育できることや,肥料や農薬などの

資源投入を少なくできる能力を知り,新しい品種

を作り出したり,画期的な栽培技術を開発するこ

とだと考えています。これを実現するために,私

達のグループは,「基礎科学の成果を実現する科

学」=「翻訳科学」に取り組んでいます。具体的

には,シロイヌナズナなどのモデル植物で,悪い

土壌環境や乏しい栄養環境に対する植物の耐性機

構や,品種・種間差機構に関する基礎研究を行う

とともに,国内外の共同研究を通じて,実用植物

への翻訳を目指しています。

Translational Plant

Research for Better

Future

DNA塩基配列を比較する

遺伝子の発現場所を知る

形質転換植物体を作出する

キマメ

テフ

ダイズ

トウモロコシ

カウピー

大量の石灰施肥がないと栽培できない(写真手前)

アフリカの酸性不良土壌

遺伝子の機能を解析する

遺伝子発現の動きを網羅的に調べる

品種・種間差を利用し 耐性機構を解明する

植物の仕組みを知り未来を拓く。

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~dohigifu/)

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― 植物の優れた環境適応能力を探る―

Plant Molecular Physiology

植物は芽生えた場所で一生を過ごさなくてはいけません。

そのため、温度変化や雨風・乾燥、栄養不良、さらに薄

暗かったり明るすぎたりする光環境など望ましくない外

部環境に対し、極めて高い適応能力を発達させています。

環境変化に対する遺伝子発現制御

植物の環境適応能力の中枢部は環境変化に対する遺伝子

発現制御のシステムです。この制御機構の全体像を解明

することを目標として研究を行っています。

環境変化に対する光合成制御

植物固有の反応である光合成は一歩間違えると電子漏

出・ラジカル生成により細胞死を引き起こす非常に危険

な反応です。変動する環境下においても安全に光合成反

応を行うことができるしくみについて研究しています。

進化、ゲノム多型と適応遷移

研究用の純系植物の解析だけでなく、世界各地で採集さ

れた同一種内の様々な系統(エコタイプ)も用いて、進

化と適応遷移の関係について先端的なゲノム解析技術を

用いて研究しています。

Photosynthesis, Adaptation

& Genome Variation

植物の活動は目に見えないものばかりです。そこで、発光や蛍光性の色素を活用し、

見えない現象を可視化すると、植物のアクティブな姿が見えてきます。

①目視像。②遺伝子発現の可視化。遺伝子発現調節を行うDNA領域(プロモーター)

の制御下にホタルの光る遺伝子を配置し植物に導入したもの。発光計測によりシグナ

ルを可視化し、遺伝子発現をリアルタイムでモニターできる。③タンパク質局在の可

視化。緑色蛍光タンパク質(GFP)と特定のタンパク質を融合し発現させたもの。④

光合成の状態の可視化。クロロフィル蛍光をイメージングしたもの。振動性の特殊な

光を用いると、クロロフィルの励起光と光合成装置の駆動状態を操作する光を同時に

与えながら、励起光だけに由来する蛍光を測定することができる。この技術と画像演

算を組み合わせると光合成反応中心の酸化還元状態やストレスによる損傷度、補足さ

れた光エネルギーの利用効率などが計測できる。⑤生体発光の自動計測装置。

① ② ③ ④

⑥ ⑤

⑥シロイヌナズナのエコ

タイプ各種。外観だけで

なく適応できる気候など

が異なっている。ノル

ウェーから北アフリカま

で、中央ヨーロッパ、東

アジア、北米など世界各

地に生息しているものを

研究に用いている。

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~yyy)

見えないものを見る植物分子生理学

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― 微生物の力で植物を伝染病から守る ―

Plant Pathology

植物も動物と同じように病原体に感染して病気に

なります(図1)。驚くことに、世界では農作物の約

15%(約8億人分の食料に相当)が伝染病により失

われているのです。

農業現場では、作物を脅かす伝染病を防ぐために

化学農薬による病原体の駆除が行われています。農

薬なしには作物を安定的に生産できないのですが、

一方で、農薬耐性をもつ病原体が次々に現れ農薬が

効かなくなるという問題が生じています。また、海

外では一部の有毒な農薬による環境汚染や健康被害

も未だ深刻な問題となっています。

植物は、環境中に存在する様々な微生物と複雑に

関わり合いながら生きています。それら微生物の中

には、植物の免疫を誘導したり、病原体の増殖を抑

制したりする有益なものが存在します。私たちは、

そのような微生物と植物との間の相互作用(図2、

3)を研究し、有用微生物(植物プロバイオティク

ス)の力を使って作物を伝染病から守るバイオコン

トロール技術の開発に取り組んでいます(図4)。

図1.作物の伝染病の例

A:イネいもち病、B:イチゴ炭そ病、C:根こぶ病

A B C

図3.植物の根で増殖する有用細菌

矢印:植物に免疫誘導する納豆菌の仲間(Bacillus subtilis)が根の表面で増殖し、バイオフィルムを形成

Plant Diseases

&

Plant Probiotics

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~hyakumac/)

図2.植物-プロバイオティクス-病原菌間の相互作用

図4.キュウリ炭そ病を抑制する有用放線菌

A:炭そ病菌を接種した葉

B:炭そ病菌と拮抗性放線菌(Streptomyces sp.、写真C)を一緒に接種した葉。ほとんど病斑が見られない

A B

C 植物ブロバイオティクス 植物病原菌

抗菌作用・寄生 etc.

免疫シグナル

防御反応

防御反応

植物病原菌

免疫シグナル

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-集落型農業生産法人の形成による地域農業振興-

Food Production Management

海外との経済連携が強化されるなか、国際化に対

応する農業生産システムの構築が急務になっていま

す。そのため農業経営の規模拡大が求められていま

すが、規模を拡大するほど農地が分散し、生産の効

率性がそれほど上がらないという課題を抱えていま

す。集落を基礎とした組織の形成により、農地の効

率的・高度利用を図る仕組み作りが求められていま

す。そのため、栽培作物を含めた各集落の地域特性

をふまえ、個々の経営の動態分析等を通じ、集落を

基礎とした農業生産法人の展開条件を定式化してい

ます。

他方で、いくら規模を拡大したとしても米・麦・

大豆・飼料など土地利用型農業においては、海外と

の安い農産物との価格競争に勝てる見込みはなく、

国境調整を含めて所得補償政策など適切な政策措置

が必要になってきます。そこで、市場規制が緩和さ

れるもとでも、これら集落型農業生産法人が展開し

うる政策的条件の研究に取り組んでいます。

Promotion of the agriculture by

the community-based farming

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~noukei/index.htm)

集落型農業生産法人による麦の栽培(岐阜市) 集落単位での農地の合理的・効率的な利用により麦栽培も可能になる

集落型農業生産法人による大豆の栽培(海津市) 大区画圃場を大豆栽培だけに利用できる

賑わいを見せる農産物直売所(大垣市) 農地の合理的利用により野菜栽培も容易となり、朝取

りの新鮮な野菜を提供できる。

乾田直播による低コスト稲作(大垣市) 集落ぐるみの取り組みにより低コスト生産が可能になる。

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― 菌類を指標とした環境評価 ―

Microbe Ecology

微生物は目に見えないほど小さいですが、膨大な

数が環境中に生息しています。例えば、土の中に

は1g当たり10億以上の微生物がいます。微生

物は、動物や植物より敏感に環境の変動に反応し、

種構成や菌量を変化させます。また、自分たちが

気が付かないところで良い面、悪い面、色々な面

から環境に影響を及ぼしています。私たちの研究

室では、微生物の中でも菌類に焦点を当てて、菌

類による環境評価について研究しています。

菌類の分子系統分類 (基礎)

菌類の定量法、類縁度解析法の開発(基礎)

指標菌による環境評価 (応用)

病気発生前の植物病原菌の検出に基づく病気

の予防と作物保護 (応用)

など、様々な環境分野の研究を行う

Environment

Assessment

研究室HP(http://www.green.gifu-u.ac.jp/~kageyamalab/)

リアルタイムPCRにより環境中の指標

菌類を定量検出

分子レベルで微生物やその行動を探求

分子生態

顕微鏡の世界から分子の世界へ

類縁性に基づく標的菌類

の個体群構造解析

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― 植物病原菌の寄生戦略と進化―

Molecular Plant Pathology

動物の病気は主にウイルスや細菌によって起きま

すが、植物の場合は主に糸状菌(カビ)で病気にな

ります。更に糸状菌で害を被るのは植物だけとは限

りません。菌がかび毒を作って食物を汚染すると、

それを食べたヒトや家畜が間接的な被害にあうこと

になります。

私の研究室では遺伝子組換え技術など分子生物学

的技術を利用してフザリウムと呼ばれる菌の寄生戦

略と進化を研究をしています。植物の側では感染を

防ごうとしますが、フザリウム菌はそれを巧みにく

ぐり抜けて病害を起こします。また、農薬を多用す

ると、菌は農薬の効かないものへと進化します。フ

ザリウム菌は様々なかび毒を作るため、単に病原菌

というだけでなく、食の安全上から特に警戒されて

いる菌です。フザリウム菌の生態はどのようなもの

で、どのような寄生戦略を進化させてきたのでしょ

うか?それらが分かれば、今、作物生産で起きてい

る病害、かび毒汚染、菌の農薬耐性化といった問題

が解決できるようになると考えています。

Evolution of Parasite

&

Strategies of Plant Pathogens

研究室HP(http://www1.gifu-u.ac.jp/~lsrc/dgr/suga-hp/MGRC_SUGA.htm)

作物生産 貯蔵 流通・加工

食卓

糸状菌による作物病害・かび毒汚染

●「ムギ類赤かび病菌の生態解明」

フザリウム・グラミネアラム(右上)はムギの穂に病害(左写真)を起こすだけでなく、デオキシニバレノール(右下)

などのかび毒汚染を起こします。

●「イネばか苗病菌のかび毒産生性解明」

フザリウム・フジクロイ(右上)にはイネに徒長病害(左写真の右側ポット)を起こすだけでなく、フモニシン(右下)と呼ばれるかび毒を作るものがいます。

●その他

「各種作物根腐病菌(左写真)が持つ病原性機構の解明」や

「遺伝子診断によるイチゴ萎黄病菌の検出法の開発」など

【作物生産から食卓までつながる糸状菌の問題】

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学 部

農林水産省、愛知県職員(農学)、岐阜県職員(農学)、市役所職員、農業高校

教員、JAぎふ、JAあいち、雪印メグミルク(株)、(財)岐阜県公衆衛生検査セ

ンター、(株)ハクサン、ヤンマー農機製造(株)など農業や食品に関連する分

野への就職が中心

大学院

(修士)

進学率40%前後

(株)科研製薬、(株)タキイ種苗、カネコ種苗(株)、(株)住友林業、

(株)林原、(株)王子製紙、(株)理研グリーン、(株)イシグログループ、

(株)東山フィルム、農業共同組合中央会など農業や製薬に関連する分野への

就職が中心

進学率20%前後

大学院

(博士) 第一線で活躍できる研究者を目指して日夜研究に励んでいます!