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本丸会館・本館は高岡電燈本社ビルとして1934年に竣 工しました。日本の近代建築運動の先駆けとされる分離 派建築会の矢田茂(1896-1958)が清水建設にて設計を 担当しました。本会は解体にチョットマッタを主張する とともに、国内でもまれにみる近代建築遺産の代表例と して、建築的・歴史的な価値の保存を提案します。 本会は、建築的価値の保存をとおして、本丸会館を新 しいまちづくりの拠点とすることを提案します。本丸会 館は高岡の旧市街と新市街の中間地点に位置し、高岡市 のメインストリートである広小路に面し、背後には古城 公園があるなど今後のまちづくりを考える上で非常に重 要な立地にあります。そのため様々な活用の可能性が考 えられます。その一つとして、新館等の跡地を誰もが気 軽に利用できる都市公園として整備する案があります。 これにより、古城公園と連続する新しいパブリックス ペースが生まれ、広小路沿いに新しい高岡の中心地が生 まれます。このように、ただ建築的な価値を残すのでは なく、まちづくりの視点からの保存・活用を考えること 重要であると考えます。 現在の本丸会館は4つの建物から構成されています。 全棟保存した場合、当然多額の維持管理・修繕費用が生 じます。本会はその建築的価値を重視し、本館のみの保 存活用を行なうことで維持管理経費のコンパクト化を行 なうことを提案します。高岡市は本丸会館にたいし年 5,000万円の経費を要していると公表していますが、こ のおおよそ2/3は人件費など施設管理公社の運用に関わ る費用です。これらの無駄な費用を全て削減し、本丸会 館・本館に要する最低限の維持管理コスト(光熱水費) を試算した結果、年450万円程度で十分であることがわ 高岡市本丸会館 保存・活用にかんする一次提案書 (概要版) 2009年5月・本丸会館とまちづくりの会 (序章・建築的価値の保存) 1. 本丸会館をいきた建築遺産として保存することを提案します (1章・維持管理費の課題) 3. 諸制度の活用・受益者負担により、無駄のないコンパクトな運用を提案します (3章・本丸会館からはじまるまちづくり) 2. 本丸会館からはじまる、新しい高岡のまちづくりを提案します 4,550 450 施設管理公社の総支出にたいする本館の光熱水費の割合

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 本丸会館・本館は高岡電燈本社ビルとして1934年に竣

工しました。日本の近代建築運動の先駆けとされる分離

派建築会の矢田茂(1896-1958)が清水建設にて設計を

担当しました。本会は解体にチョットマッタを主張する

とともに、国内でもまれにみる近代建築遺産の代表例と

して、建築的・歴史的な価値の保存を提案します。

 本会は、建築的価値の保存をとおして、本丸会館を新

しいまちづくりの拠点とすることを提案します。本丸会

館は高岡の旧市街と新市街の中間地点に位置し、高岡市

のメインストリートである広小路に面し、背後には古城

公園があるなど今後のまちづくりを考える上で非常に重

要な立地にあります。そのため様々な活用の可能性が考

えられます。その一つとして、新館等の跡地を誰もが気

軽に利用できる都市公園として整備する案があります。

これにより、古城公園と連続する新しいパブリックス

ペースが生まれ、広小路沿いに新しい高岡の中心地が生

まれます。このように、ただ建築的な価値を残すのでは

なく、まちづくりの視点からの保存・活用を考えること

重要であると考えます。

 現在の本丸会館は4つの建物から構成されています。

全棟保存した場合、当然多額の維持管理・修繕費用が生

じます。本会はその建築的価値を重視し、本館のみの保

存活用を行なうことで維持管理経費のコンパクト化を行

なうことを提案します。高岡市は本丸会館にたいし年

5,000万円の経費を要していると公表していますが、こ

のおおよそ2/3は人件費など施設管理公社の運用に関わ

る費用です。これらの無駄な費用を全て削減し、本丸会

館・本館に要する最低限の維持管理コスト(光熱水費)

を試算した結果、年450万円程度で十分であることがわ

高 岡 市 本 丸 会 館   保 存 ・ 活 用 に か ん す る 一 次 提 案 書 (概要版)

2009年5月・本丸会館とまちづくりの会

(序章・建築的価値の保存)

1. 本丸会館をいきた建築遺産として保存することを提案します

(1章・維持管理費の課題)

3. 諸制度の活用・受益者負担により、無駄のないコンパクトな運用を提案します

(3章・本丸会館からはじまるまちづくり)

2. 本丸会館からはじまる、新しい高岡のまちづくりを提案します

4,550450

施設管理公社の総支出にたいする本館の光熱水費の割合

解 体 チ ョ ッ ト マ ッ タ

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かりました。また、今後の保存・活用により、修繕費や

耐震改修費などの発生も考えられますが、これは文化財

登録や歴まち法のコア事業とすることで、国からの補助

を受けることができます。以上をふまえ、利用者など受

益者負担とすることで無駄のないコンパクトな運用を行

ない、かつ文化財保護法等の制度を積極的に活用するこ

とを提案します。

 本丸会館は本館、別館、新館、保健センターの4棟か

らなる建築物群です。問題とされている耐震強度にかん

しては調査結果などが公表されているわけではなく、こ

れを検証するには資料が不足しています。そこで本会

は、2009年3月、市に対して情報公開請求を行ない本丸

会館本館、新館、別館の3館の竣工図面を入手しまし

た。今後は専門家の協力のもと、耐震診断等を行なうこ

とが求められます。

 本丸会館の保存/解体という問題について、現時点で

市民のコンセンサスは得られていません。そこで、本会

は3~4年程度の<保存協議期間>を設定し、積極的な

議論、および現状維持した上での積極的活用を行なうこ

とにより、市民で本丸会館の問題を考える期間を設ける

ことを提案します。またこれに併せ、積極的な議論を行

う「本丸会館保存協議会」(以下、「保存協議会」)、

積極的活用をおこなう市民団体「NPO本丸会館リノベー

ションプログラム」(以下「本丸会館RP」)という2つ

の組織の設立を提案します。

 <保存協議会>は市民、行政、有識者・専門家、地元

企業の代表者などから構成します。専門性のある議論を

行うことで、現実的な保存・活用案を策定すことが求め

られます。

 <NPO本丸会館リノベーションプログラム>は市民の

有志によるNPO団体です。本丸会館の「活用企画書」を

作成しこれを実行すること、活用方法についての調査・

研究を行なうこと、本丸会館の価値を市民にひろめるこ

となどが期待されます。

(1章・耐震強度の課題)

4. 今後、専門家による耐震診断の実施が求められます

(2章・保存活用へのプロセス)

5. 保存活用にむけ、<使いながら考える>シナリオを提案します

保 存 協 議 会

本丸 会館

本丸会館 RP

広報「活用企画書」の承認

「活用企画書」の提出

所有調査研究

管理積極的活用

市民地元企業 地元企業 教育機関市民

市民関係団体

専門家

高岡市

行政

受益者負担

補助金受給対象

ランニングコストのイメージ

[企画]本丸会館とまちづくりの会

http://hon-maru-kaikan.cocolog-nifty.com/

[編集]法澤龍宝/法澤建築設計事務所

http://homepage.mac.com/ryuho/rha_web/

人件費・管理費など

光熱水費約450万円

修繕費

保存

保存協議期間

3~4 年程度

コンセンサスの形成

「保存協議会」:保存案の議論

「本丸会館 RP」:本館の積極的活用

コンセンサス ×

現在

本会

専門家

市民

解体

広小路

新館

本館

保セ

別館