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HTLV-1 関連脊髄症(HAM)について 聖マリゕンナ医科大学 難病治療研究センター 山野嘉久 鹿児島大学 難治ウルス病態制御研究センター 出雲周二

HTLV-1 関連脊髄症(HAM - 宮城県産婦人科医会 関連脊髄症(HAM)について 聖マリゕンナ医科大学 難病治療研究センター 山野嘉久 鹿児島大学

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HTLV-1 関連脊髄症(HAM)について

聖マリゕンナ医科大学 難病治療研究センター 山野嘉久

鹿児島大学 難治ウルス病態制御研究センター 出雲周二

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はじめに

HTLV-1-associated myelopathy (HAM)は、成人T細胞性白血病(ATL)の原因ウルスであ

る human T lymphotropic virus type 1 (HTLV-1)の感染者(キャリゕ)の一部に発症する、慢

性進行性の痙性脊髄麻痺を特徴とする神経難病である。1986 年に、納らにより一つの疾患単位

として提唱され、2009 年度からは国の難治性疾患克服研究事業の対象疾患(いわゆる難病)に

認定されている。HAM の発見からこの 25 年の間に、臨床像の確立、発症病態の解析、様々な治

療の試みなどがすすめられ、これまでに蓄積された知見をふまえて、疫学、診断、臨床像、病理

像、病態、そして治療などについて概説する。

(1)HAM の疫学

日本では、HTLV-1 キャリゕの

生涯において約 0.3%の確率で発

症すると推定されている。1998

年の全国疫学調査では、1,422 名

の HAM 患者の存在が確認され、

患者の分布は西日本を中心に全国

に広がっており、特に九州・四国・

沖縄に多く、ATL の分布と一致し

ていた。最近の全国疫学調査では、

全国の患者数は約 3,000 名と推

定され、関東などの大都市圏で患者数が増加していることが明らかとなりつつある。また世界的

にみても、HTLV-1 キャリゕ・ATL 患者の分布と一致して、カリブ海沿岸諸国、南ゕメリカ、西

南ゕフリカ、南ンド、ラン内陸部などに患者の集積が確認されており、それらの地域からの

移民を介して、ヨーロッパ諸国、ゕメリカ合衆国など、世界的に患者の存在が報告されている。

HTLV-1 の感染経路として、主として母乳を介する母子感染と、輸血〃性交渉による水平感染

が知られているが、そのいずれでも発症することが知られている。輸血後数週間で発症した例も

あり、感染成立後長期のキャリゕ状態を経て発症する ATL とは異なっている。輸血後発症する

HAM の存在の指摘により、1986 年 11 月より献血時の抗 HTLV-1 抗体のスクリーニングが開始

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され、以後〃輸血後発症はなくなった。発症は中年以降の成人が多いが(平均発症年齢は 40 代)、

10 代、あるいはそれ以前の発症と考えられる例も存在する。男女比は 1:2 ないし 2:3 と女性に

多く、男性に多い ATL と対照的である。

(2)HAM の診断

対称性の錐体路障害を示唆す

る痙性対麻痺などの所見を認め

る場合は、HAM の可能性を考慮

し、血清中の抗 HTLV-1 抗体の有

無について確認する。抗体検査は、

まず PA 法、あるいは CLEIA 法で

スクリーニングし、陽性である場

合はウエスタンブロット(WB)

法で確認し、感染を確定する。感染が確認された場合は髄液検査を施行し、髄液中の抗 HTLV-1

抗体の有無をPA法あるいはCLEIA法で確認する。髄液中の抗HTLV-1抗体が陽性である場合は、

その他のミエロパチーを来す脊髄圧迫病変、脊髄腫瘍、多発性硬化症などの疾患を鑑別した上で、

HAM と確定診断する。

★HAM を見逃さない為に★

HAM は、自覚症状があれば少しで

も早く神経内科医師の診察を受ける

ことが必要である。症状や診察所見の

組み合わせは特徴的であるので、神経

内科医であれば診断は比較的容易で

あることが多い。症状により泌尿器科

や整形外科を受診することもあるの

で、右に示すような初期症状を訴える

場合は、HAM という疾患を思い浮かべることが重要である。また、キャリゕであることが判明し

ていたら、患者から主治医に伝えることも有益である。

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(3)HAM の臨床症状・徴候

臨床症状の中核は、緩徐進行性の両下肢痙性不全麻痺で、両下肢の筋力低下と痙性による歩行

障害を示す。自分で気づく症状の第一は徐々に進行する歩行障害で、まず両下肢のつっぱり感の

ために足がもつれて歩きにくく、歩幅が狭くなり内股で歩くようになる。走ると転びやすく、階

段の上り下りは、初めは下りにくさを感じる。病気が進行して両下肢の筋力低下が出現すると、

特に大腿や腰回りに力が入りにくく、つっぱり感も加わってすばやいスムーズな動きができなく

なる。大腿部が持ち上がらず、階段の上りも困難になる。また痙性が強い場合は筋肉の硬直やけ

いれんを伴い、自分では膝・股関節を曲げることが困難になることもある。歩行障害が進行する

と、片手杖、両手杖、さらに車椅子が必要になる。

感覚の異常は、下半身の触覚や温痛覚の低下がみられるが、運動障害に比べて軽度にとどまる

ことが多く、はっきりと感覚の低下を自覚している人は比較的少ない。しかし、持続するしびれ

感や痛みなど、自覚的な症状は発症の早期からよくおこり、特に痛みを伴う場合は ADL 低下の主

要な原因となる。

自律神経症状は高率にみられ、特に、排尿困難、頻尿、便秘などの膀胱直腸障害は病初期より

みられ、しばしば患者の主訴となる。突然の尿閉や頻尿、繰り返す膀胱炎で泌尿器科を受診し、

HAM と診断されることもある。尿意があってもなかなか出ない排尿困難、全部出し切れずに残っ

た感じがしてまたすぐにトレに行きたくなる残尿感と頻尿、尿意を感じたら我慢できないで漏

れてしまう尿失禁などがみられる。進行例では起立性低血圧や下半身の発汗障害なども認められ、

発汗低下による鬱熱のため、夏場に微熱、倦怠感が続き、適切な室温管理が必要となることもあ

る。そのほか男性ではンポテンツがしばしばみられる。

神経内科の診察では、HAM 患者はきわめて特徴的な所見が認められる。左右ほぼ対称性に異常

が見られ、膝蓋腱反射、ゕキレス腱反射は亢進し、腹壁反射が消失している。また、バビンスキ

ー徴候を初めとする病的反射が下肢で明瞭にみられる。通常、両上肢は筋力低下などの自覚症状

を欠いているが、深部腱反射は亢進していることが多い。感覚障害についてはレベルのはっきり

しない下半身の表在覚低下がみられるが、運動障害に比して軽度にとどまる例が多く、しびれ感

や痛みなど、自覚的なものが多い。自覚的に異常の無い例でも理学所見として外果部での振動覚

低下を指摘できることが多い。

これらの症状や診察所見はいずれも脊髄の傷害を示唆し、HAM の中核症状となる。手指の振戦、

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運動失調、眼球運動障害、軽度の認知障害、末梢神経の直接侵襲を伴う例など、病巣の広がりが

想定される場合もあるが、そのような例でも中核症状としての両下肢痙性不全麻痺は共通に認め

られる。

(4)HAM の経過

通常、HAM の臨床症状は年単位で緩

徐に慢性に進行するが(慢性進行例)、

時に急速に進行し、数週間から数カ月

で歩行不能になる例もみられる(急速

進行例)。高齢での発症者で進行度が早

い傾向があり、重症例では両下肢の完

全麻痺、躯幹の筋力低下による座位障

害で寝たきりとなる例もある。一方で、

運動障害が軽度のまま数十年以上の長

期にわたり症状の進行がみられない例も認められる(慢性軽症例)。このように、HAM の経過に

は個人差が大きいという特徴があり、その経過は疾患活動性の程度を反映している場合が多いの

で、治療方針を決定する上でこれらの特徴を考慮する必要がある。

(5)HAM の重症度評価

患者の臨床的な重症度を評価する指標

として、Osame の運動障害スコゕは病勢

の進行と平行しており、また、治療によ

る改善を良く反映し、治療効果の判定に

も有用である。また日常診療では、下肢

の筋力を定期的に評価することが有用で

あり、また痙性の強さや、排尿・排便障

害の状態も注意すべきである。

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(6)HAM の病態

① 病理

HAM の病態を理解する上で、病理所見を

理解することは重要である。HAM の剖検例で

は、肉眼的に頸髄下部から腰髄上部までびま

ん性の萎縮がみられる。脊髄の横断面では両

側索の萎縮と変性が肉眼的に観察されるが、

大脳・小脳・脳幹には肉眼的に明らかな病変

を指摘できる例はほとんど無い。

HAM の病理組織所見では、慢性炎症過程が

脊髄、特に胸髄中・下部に強調されて起こって

いる。病変はほぼ左右対称性で、小血管周囲か

ら脊髄実質にひろがる炎症細胞浸潤と、周囲の

脊髄実質、すなわち、髄鞘や軸索の変性脱落が

みられる。主として両側側索に強くみられ、灰

白質にも及んでいる。その他の詳細な解析も含

めて、HAM 患者脊髄では細胞性免疫反応が持

続的におこっていることを示す所見が得られ

ている。

さらに HAM の脊髄病変において、HTLV-1

の感染細胞について in situ PCR 法を用いて解

析されており、HTLV-1 の感染は浸潤した T 細

胞にのみ確認され、周辺の神経細胞やグリゕ細

胞には確認されていない。このことは、浸潤し

た HTLV-1 感染 T 細胞が、慢性炎症の要因と

して中心的な役割を果たしている事を示唆し

ている。

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② ウイルス免疫学的な特徴

HAM 患者では、末梢血単核球中のプ

ロウルス量、すなわち感染細胞数が健

常キャリゕに比較して明らかに多いこ

とが判明している。また、ウルス感染

細胞に反応する HTLV-1 特異的細胞傷

害性T細胞や抗体の量も異常に増加し

ており、ウルスに対する免疫応答が過

剰に亢進しているという免疫学的な特

徴を有している。さらに、髄液中や脊髄

病変局所で一部の炎症性サトカン

やケモカンの産生が非常に高まっていることが知られている。これらのウルス・免疫学的特

徴と病理学的な所見などを総合すると、HAM では、①増加した HTLV-1 感染細胞が脊髄病変に浸

潤し、②それを排除しようとする免疫応答が慢性的な炎症病変を成立させ、③周囲の神経組織の

破壊と変性を生じる、という 3 つの大きなポントが HAM の主要な病態と考えられる。

(7)HAM の検査

HAM 患者の検査は、診断

目的の検査と病態を把握す

る為の検査に大きく分けら

れる。抗 HTLV-I 抗体検査は

血清・髄液共に陽性であるこ

とが診断上重要である。抗体

価は健常キャリゕや ATL 患

者に比して高値のことが多

い。末梢血所見では、核の分

葉化を示すリンパ球が散見

される例があるが、ATL でみ

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られるフラワー細胞はまれで、むしろ典型的なフラワー細胞の出現は ATL の合併を考える必要が

ある。また、HAM では血清中の可溶性 IL-2 受容体濃度が高いことが多く、末梢レベルでのウ

ルスに対する免疫応答の亢進を非特異的に反映しているものと考えられる。髄液所見は脊髄での

炎症の程度を把握する上で極めて重要である。軽度の細胞数、蛋白、IgG の増加がみられること

があり、急速進行例では高い値を示す傾向がある。また髄液のネオプテリンは多くの症例で高く、

その値は重症度と良く相関し脊髄炎症の活動性を反映していると考えられ、疾患活動性や治療効

果の把握に重要である。末梢血単核球中のプロウルス量の定量測定は、ウルス感染細胞の制

御の具合を把握することが可能となる。

画像診断では MRI で通常、胸髄を中心に瀰漫性に萎縮した像が得られ、局所性病変は一般的に

はみられないが、発症後間もない症例でびまん性の腫大や T2 強調画像での髄内の強信号像が報

告されている。一方、大脳の MRI T2 強調画像で深部白質の異常信号像がみられる例があり、病

変の広がりを反映している。他の画像診断を含め、脊髄圧迫病変や脊髄腫瘍などの鑑別に有用で

ある。

(8)HAM の治療

① 治療の考え方

HAM は、その経過や疾患活動性の個人

差が大きいという特徴があるので、それ

を踏まえた治療の考え方が必要である。

出来るだけ発症早期に、将来重症化する

可能性があるか疾患活動性を判定し、そ

の重症度に応じて治療の強さも検討する

ことが望ましい。急速に進行して髄液の

炎症所見が強い症例の場合は、比較的強

い治療が初期には必要となる場合が多く、一方で、ほとんど進行が認められず髄液の所見もおと

なしい症例の場合は、副作用の強い治療薬の必要性に乏しい。HAM に最も多い緩徐に進行する症

例の場合は、髄液の炎症所見や経過、治療の反応性などから治療内容を判断していく必要がある。

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② HAM の病態に則した治療

上述した HAM の発症メカニズムに従

えば、炎症、すなわち免疫反応の標的と

なっている HTLV-1、ないし感染T細胞

の増殖を抑制することが最も理にかなっ

た治療法といえる。すなわち抗ウルス

療法である。しかし、これまでにウル

スの体内での増殖を抑制する薬剤は開発

されていない。その他、治療の対象となるステップとして、ウルス感染細胞の脊髄組織への浸

潤を阻止、脊髄での慢性炎症を抑制、神経組織保護あるいは組織修復・再生を高める、などが治

療の戦略としてあげられる。しかしながら、現時点で HAM の治療薬として用いられているのは、

慢性炎症の抑制効果を持つステロドと、炎症抑制作用と抗ウルス作用を持つンターフェロ

ン・ゕルフゔ(IFN-α)が主である。

ステロド治療は、HAM に対する有効率、及び即効性に優れている。鹿児島大学第3内科の

HAM200 例のレトロスペクテゖブな解析では、131 名の患者にプレドニゾロンの内服が試みられ、

69.5%が Osame の運動機能スコゕ1ランク以上の改善を認めている。このことは HAM の病態

に細胞性・液性免疫が深くかかわっており、その適切な制御・調節が HAM に有効であることを

示している。しかしながら、長期にわたるステロド治療の継続は、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、

白内障、感染症の誘発などの副作用を出現させる恐れがあるので、脊髄の炎症所見や治療反応性

などを判断し、出来るだけ内服量を少なくする努力が必要である。

IFN-αは、その抗ウルス作用、免疫調整作用、さらに抗腫瘍作用が知られ、治療戦略の観点

からは望ましい治療法の一つであり、多施設無作為抽出二重盲検法での治験が行われ、その有効

性が確かめられた。現在 HAM に対する保険承認を得ている唯一の薬剤である。IFN-αの HAM へ

の治療効果のメカニズムは必ずしも明らかではないが、治療後ウルス量が減少していること、

HAM でみられる免疫異常が改善していることなどから、抗ウルス作用と免疫調整作用の両者が

関与していると推定される。欠点は、効果発現に週 3 回以上の注射施行を必要とする為、長期間

の治療継続が困難な場合が多い点である。また、主な副作用として、発熱・全身倦怠感・食欲不

振などのンフルエンザ様症状、脱毛、間質性肺炎、抑うつ、血球減少などがある。

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③ HAM の随伴症状に対する治療

HAM 患者は、排尿障害や便秘などの症状を伴っている場合が多く、その悩みは深刻である。排

尿障害に関しては、適切な治療薬の選択や、重度な場合は自己導尿を行うことにより ADL が大き

く改善するので、泌尿器科医と協力した対応が望まれる。HAM 患者は痙性に対する治療も必要で

あることが多い。痙性の強さに応じて、抗痙縮薬の量を調整することが求められる。また、一部

の HAM 患者は下肢の激しい疼痛を伴っていることがあり、深刻である。中枢神経性の疼痛であ

る為、NSAIDs は基本的に無効であることが多く、中枢神経性疼痛に用いられる薬剤の投与を考

慮すべきである。その他、HAM 患者で座位の状態が長い患者は、臀部に褥瘡が出来やすいが、患

者が訴えずに悪化する場合があり注意が必要である。ブドウ膜炎や肺胞炎などを伴うこともある

ので、全身の検索も忘れてはならない。医療ができることはたくさんある。痙性や痛み、排尿障

害、便秘などに対して、定期的な受診と診察に基づいたきめ細かい適切な対症療法、すなわち抗

痙縮剤、排尿調節剤、便秘薬などのさじ加減や、間歇的自己導尿の導入・指導、また継続的なリ

ハビリなどは患者の日常生活を維持する上できわめて重要である。

(9)HAM の社会医学的側面と患者会の紹介

HAM の病態、発症機序の解明が医学的観点から進むなかで、患者の生活実態調査が全国 HAM

患者友の会の HAM 患者へのゕンケート調査としておこなわれ、2005 年に報告された。そのなか

には日常生活上の様々な問題点が浮かび上がっている。診断確定までいくつもの医療機関を転々

とし、医療従事者の知識・認識不足で専門的な医療を受けることができないなど、医療面での体

制の不備や、疾患の予後に対する不安、家族や職場など周囲の無理解への不満苛立ち、介護負担、

経済的負担などの問題を抱えながら生活している実態が報告されている。すなわち HAM は他の

神経難病と同様、完治できる見込みのないまま長期療養を強いる病気であるといえる。さらに

HTLV-1 キャリゕとして ATL 発症の不安も抱えている。時に、同じ悩みを持つ仲間との交流や情

報交換を通して孤立しない工夫も必要である。以下に、患者会や関連の NPO 法人を紹介する。

HAM 患者会「ゕトムの会」:http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.atomu.htm

NPO 法人「日本から HTLV ウルスをなくす会」:http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/

NPO 法人「はむるの会」:http://www.hamuru.com/index.html