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(2)園路、広場他の設計
園路、広場他の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。
① 用途(目的)と対応時期(期間・時間)
災害時に必要となる避難や救援等、諸活動のスペースの用途(目的)は、時間の経過に伴っ
てその利用形態やニーズが異なる。
なお、各用途が考えられる主な時期(期間)は、一般的に表 4-4-1.のとおり。
表 4-4-1.災害時に必要となるスペースの機能と想定される使用期間
(防災ガイドP.113)
② 用途(目的)別の必要規模
ⅰ)必要避難スペース(㎡)
必要避難スペース(有効避難面積㎡)=対象避難人口(人)×有効避難単位面積(㎡/人)
・ 対象避難人口:当該防災公園の避難圏域人口を基準とする
・ 有効避難単位面積:2㎡/人以上(広域避難地としてのスペース)
現状に応じ1~2㎡/人を原則とする。
ⅱ)入口(園路)の避難有効幅員(m)
入口(園路)の避難有効幅員(m)=対象避難人口の内該当人員(人)
÷〔単位あたり計画流動係数(人/m・分)×計画避難時間(分)
・ 対象避難人口の内該当人員:算定対象の人口や園路へ流入することが予想される人員
・ 単位あたり計画流動係数:歩行路等のサービス水準の考え方における係数
園路、広場他の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 用途(目的)と対応時期(期間・時間)
② 用途(目的)別の必要規模
③ 対応する施設
④ 全体システム(アクセス・動線の検討)
⑤ 管理・運用方法
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30~60人/m・分(60人/m・分を標準)
・ 計画避難時間(分):避難(流入)に要する時間。実状に応じて、集中利用状況を考慮し
て30分~60分を標準とする。
ⅲ)園路の幅員(入口部を含む)
〈一般的な園路〉
・ ランク1:大型緊急車両2台(※1)と相当数の避難者とが同時に通行可能な園路
…概ね10~12m
・ ランク2:大型緊急車両2台(※1)又は相当数の避難者(※4)が通行可能な園路
:大型緊急車両1台(※2)又は小型緊急車両1台(※3)と、ある程度の避難者(※
5)がすれ違い可能な園路 …概ね5~6m
・ ランク3:大型緊急車両1台(※2)又は小型緊急車両1台(※3)と歩行者(※6)、又はある
程度の避難者(※5)が通行可能な園路 …概ね3~4m
〈平常時から駐車場への車両通行(車道として)が可能な通路〉
・ 大型緊急車両2台(※1)のすれ違いと待機(路肩駐車を含む)が通行可能な園路
…概ね9m
・ 大型緊急車両2台(小型車両も同様)のすれ違いが可能な園路 …概ね6m
※ 1.大型緊急車両2台=5.5m以上(2車線)
※ 2.大型緊急車両1台=3.0m以上(1車線)
※ 3.小型緊急車両1台=2.5m以上(1車線)
※ 4.相当数の避難者=幅員約4.5~5.5m(前記の避難有効幅員で 15,000人~20,000人、60人/m・
分、60分とした場合)
※ 5.ある程度の避難者=幅員約3.0m(前記の避難有効幅員で 10,000 人、60 人/m・分、60 分とし
た場合)
※ 6.歩行者(避難者他)=幅員1.5~2.0m
ⅳ)一時的避難生活スペース(㎡)
一時的避難生活スペース(㎡)=対象人員(人)×単位面積(㎡/人)
・ 対象人員:一時的避難生活を行うことが予想される人員。状況による異なり、また、公
園の敷地条件、収容力との関連もあり、具体的な設定は難しいことから、収
容力として一定の人員を必要に応じて設定する。
・ 単位面積:1人あたりの必要面積。通路や供用部分も含めた面積とする。
(参考)テント生活の空間単位あたり面積(50~60㎡/1張り(3~5人))から想
定すると、単位面積は10~20㎡/人となる。
ⅴ)仮設住宅設置スペース(㎡)
仮設住宅設置スペース(㎡)=設置戸数(戸)×単位面積(㎡/戸)
・ 設置戸数:設置可能戸数。仮設住宅の設置スペースとして使用が可能なスペースの収容力
から必要に応じて設定。
209
・ 単位面積:一戸あたりの必要面積。通路や供用部分も含めた面積とする。
(参考)応急仮設住宅の基準は、一戸あたり26.4㎡(8坪)となっている。
ⅵ)救援等諸活動に必要なスペース
実状に応じて設定する。
③ 対応する施設
ⅰ)防災関連公園施設については、必要な規模を設定すること。
他の防災活用施設については、平常時のスペースを活用する考え方から、各施設の収容力
に則して、災害時の活用スペースの規模を設定すること。
ⅱ)各施設の詳細は、下記のことに留意し設計すること。
(イ)入口形態
・ 園内へスムーズに流入し滞留できるよう、また、園路線形との関係で火熱等の影響が軽減
されるよう留意すること。
・ 避難、消防・救護活動が妨げられないように留意すること。
・ 段差は基本的に設置しない。
・ 車止めを設置する場合は、脱着式又は収納式を設置すること。
・ 想定される避難者の進入経路や幹線道路からの大型緊急車両などの進入を考慮すること。
・ 舗装表層材質は、火災時に燃えやすいものや融解し易い材質を避け、滑りにくい材質とす
ること。
(ロ)外周形態
・ 避難者が公園入口以外からも進入出来るようにすることが望ましい。
・ 外周部の段差や構造物は、進入を妨げないように留意すること。
・ 公園外周部の石積みなどの構造物は出来るだけ低く、また、のり面は緩やかにすること。
(ハ)広場
・ 避難地として安全性が確保されていること。
・ 入口から広場へのアプローチが容易で、かつ火燃の流入しにくい位置とすること。
・ 防火樹林帯や開水面との位置関係に留意すること。
・ 降雤などを考慮し、排水性を確保すること。
(ニ)園路
・ 線形は、人の流動に支障のないよう、分かりやすく単純なものとすること。
・ 公園入口から避難地への直接的な線形は避けること。
・ 階段は出来るだけ設置しないこと。
・ 大型緊急車両が進入する箇所は、道路構造令を準用すること。
・ 舗装表層材質は、火災時に燃えやすいものや融解し易い材質を避け、滑りにくい材質とす
ること。
210
(ホ)ヘリポート
・ へリポートとは、緊急離陸着陸場(航空法第81条の2)を対象とする。
・ 植栽が支障とならないように留意すること。
・ 災害時は避難者の進入防止措置を講ずること。
・ 地盤の耐圧や地表面の状態も考慮し、芝生地などの堅固な地盤であること。
・ 広域防災拠点や広域避難地などは、大型機が離発着出来るようにすることが望ましい。
・ 配置は、資材の積み卸し車両への積み込みなどを考慮して位置関係に留意すること。
④ 全体システム(アクセス・動線の検討)
ⅰ)スムーズな避難動線の確保に配慮すること。
ⅱ)緊急車両のスムーズな進入・通行が可能な入口・動線の確保に配慮すること。
ⅲ)活動内容に配慮した施設の配置、動線を設定すること。
ⅳ)公園周辺の防災関連施設等との相互利用を考慮すること。
(3)植栽(防火樹林帯)の設計
防火樹林帯の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災公
園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
① 必要整備箇所
市街地火災等から避難広場などを保護し、また、市街地延焼火災の延焼防止などの為に設け
る防火樹林帯については、下記の事項に留意し整備が必要となる箇所を設定する。
ⅰ)周辺の街区や建物の防火・耐火性能
周辺部の不燃化などの状況によって、市街地延焼火災の危険性の度合いが異なる。
ⅱ)周辺のオープンスペース
建物等の延焼面からの距離、すなわち、道路等のオープンスペース(空間)の有無、規模
(幅)によって、延焼防止効果が異なる。
ⅲ)公園敷地条件
公園敷地の規模や地形条件などによって、公園の防火効果、または防火樹林帯の防火効果
が異なる。
ⅳ)立地条件
防火樹林帯の設計にあたっては、都市公園技術標準解説書の修景施設工・植栽における計
画設計留意事項をふまえ、下記の基本的事項を検討する。
① 必要整備箇所
② 規模(幅員など)
③ 補完施設
④ 管理方法
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風(風速・風向)や乾湿の特性によって、延焼の方向や危険な方向などが異なる。
②規模(幅員など)
ⅰ)輻射熱量で、樹木は 12,000kcal/㎡・h、人間は 2,050kcal/㎡・hが限界とされている。
また、樹木は保有する水分の蒸発による冷却・放熱の機能を有する。それらの効果の概念
図は図 4-4-1.のとおり。
ⅱ)防火樹林帯の詳細は、下記のことに留意し設計すること。
(イ)樹種
・ 一般的に、防火樹木としては、遮蔽率の高いもの、着火しにくいもの、一部に着火しても
その背後の枝葉への引火がしにくいものが好ましい。
・ 常緑樹種には防火力の大きいものが多い。
・ 葉肉の厚い植物は、一般的に防火力が大きい。
・ 枝葉に樹脂を多く含み、針葉樹のスギやマツ枝は、防火力が小さく延焼の危険性が高い。
・ タケ類や笹類は、枝葉に着火しやすく、延焼の危険性が高い。
・ 樹種の防火ランクは表 4-4-2.のとおり。
図 4-4-1.防火樹林帯の概念図(防災ガイド P.131)
212
表4-4-2.樹木の防火力ランク
強度 常緑広葉樹 落葉広葉樹 針葉樹
A イヌツゲ、キズタ、ジンチ
ョウゲ、ヒイラギ、ヤツデ
イチョウ、オニグルミ、コナラ、
シンジュ、ユリノキ
アカマツ、イチイ、カラ
マツ、コウヤナギ、スギ
B
アオキ、マサキ イチジク、イヌエンジュ、ウメ、
クリ、クワ、ケヤキ、コナラ、シ
ナノキ、トチノキ、ナツヅタ、ナ
ナカマド、ニセアカシア、ハクウ
ンボク、ハクモクレン、ホオノキ、
ミズキ、シダレヤナギ
クロマツ、ヒマラヤシー
ダ、ヒムロ
C イタヤカエデ、カツラ、フジ カイヅカイブキ、トドマ
ツ、ヒョクヒバ
※北海道内での適応樹木のみを記載
(ロ)規格
・ 樹高は10m前後あるのが望まし
い。
(ハ)密度・配植
・ 配植は、複数配列とする。
・ 遮蔽率は、高木、中木、低木を組み
合わせた、多層な樹林構成が適して
おり、植栽帯のパターンと遮蔽率の
関係は図 4-4-2.を参考とすること。
ただし、避難の際に防火樹林帯内を
通ることや平常時、樹林帯による死
角が生じることを考慮すること。
・ 防火植栽帯の位置や規模について
は、FPS植栽(防災公園技術ハン
ドブックP.73)の算出方法を参考
とすること。
(ニ)植樹地形
・ 植栽地の地形は防災性能を高める
ため、マウンド地形を検討すること。
・ 外部から内部への見通しや避難時
の通行について十分配慮すること。
・ 階段は出来るだけ設置しないこと。
③補完施設
ⅰ)防火樹林帯の機能を補完するため、必要に応じて散水施設の導入を検討すること。
図 4-4-2.植栽帯のパターンと遮蔽率(参考・防災ガイド P.135)
213
(4)水関連施設の設計
水関連施設の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災公
園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
① 用途(目的)と対応時期(期間・時間)
用途や対応期間は都市や地域全体における水の備蓄や供給方法によって異なるため、地域防
災計画の考え方をふまえ、他の防災関連施設との役割分担、供給体制などを設定する。
ⅰ)考えられる用途と期間は、一般的に表 4-4-3.のとおり。
ⅱ)災害時にも基本的には、平常時も水質の水をそのままで使用することになる。
用途と水質レベルとの関係は、表 4-4-4.のとおり。
水関連施設の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 用途(目的)と対応時期(期間・時間)
② 用途(目的)別の必要水量
③ 備蓄・供給方法(対応する施設)
④ 全体システム
⑤ 管理・運営方法
表 4-4-3.災害時に必要となる水と想定される使用期間(防災ガイド P.139)
214
② 用途(目的)別の必要水量
ⅰ)飲料水(m3)
飲料水(m3)=対象人員(人)×1人当たり必要水量(㍑/人)×対応日数(日)
×1/1,000
・ 対象人員:公園へ実際に避難した人と避難しない周辺住民を含め対象避難圏域人口と考え
るが、周辺の水関連施設や供給体制によって、または、現実的には圏域人口全
てが同時に公園に避難する可能性は低いことから、それ以下として考えても良
い。
・ 1人当たり必要水量:3㍑/人・日を標準とする。なお、調理や衛生・医療用水の一部を
含むと考える。
・ 対応日数:直後及び緊急段階、緊急避難期、かつ公園として、自立的、自活的な対応を
行う期間として、被災後最低1日、状況によって2~3日とする。
ⅱ)生活用水1(m3):主として洗面、手洗、風呂・シャワー、洗濯など
生活用水1(m3)=対象人員(人)×1人あたり必要水量(㍑/人)×対応日数(日)
×1/1,000
・ 対象人員:一時避難生活の想定人数、あるいは一時的避難生活に対応する収容力とする。
・ 1人当たり必要水量:10~20㍑/人・日を標準とする。
表 4-4-4.考えられる用途と水質(標準・防災ガイド P.138)
215
・ 対応日数:緊急段階、必要に応じて応急段階の必要最小期間を主体とする。
ⅲ)生活用水2(m3):主としてトイレ洗浄水
生活用水2(m3)=トイレ総穴数(穴)×単位水量(㍑/穴・日)×対応日数(日)
×1/1,000×余裕率
・ トイレ総穴数:基本的には平常時の水洗トイレを災害時も引き続き水洗として使用する総
穴数。
・ 単位水量:1日・1穴あたり24㍑を標準とする。
・ 対応日数:生活用水1と同様、緊急段階、必要に応じて応急段階の必要最小期間を主体
とする。
・ 余裕率:トイレ使用頻度により使用水量が増加することや、他の用途に使用することも
考えられるため、必要に応じ1.0~2,0程度の余裕率を見込む。
ⅳ)1箇所当たり防火・消火用水(m3)
1箇所当たり防火・消火用水(m3)=40m3以上(1m3以上/分、連続40分以上取水可
能)
ⅴ)散水用水は、市街地の火災想定、防火機能、使用可能な水源や貯水量など、総合的に判断し
設定する。
③ 備蓄・供給方法(対応する施設)
ⅰ)備蓄方法(備蓄施設他)と水の用途(目的)および水源との関係は表 4-4-5.が考えられる。
ⅱ)具体的な供給方法として、可搬式の動力ポンプ、手動ポンプ、ホース類やバケツ類も必要で
あり、各対応施設に適した機材、器具なども用意すること。
表 4-4-5.備蓄方法と水の用途及び水源(防災ガイド P.142)
216
ⅲ)各施設の詳細は、下記のことに留意し設計すること。
(イ)耐震性貯水槽
・ 耐震性貯水槽のタイプ別の用途及び概要は、表 4-4-6.による。
・ 配置は多目的な活用や広場その他の関係施設との関係、及び管理運用も考慮し、分散配置
も含めた検討を行うこと。
・ 防火用の貯水槽は、公園外周部に配置することを標準とする。
表 4-4-6.耐震性貯水槽のタイプ別の用途及び概要(防災ガイド P.146)
(ロ)非常用井戸
・井戸の深さや揚水量等は、法規制やその条件に応じて設定すること。
・初期消火等における周辺住民による利用が容易であり、多目的な利用も可能であることか
ら、配置については十分配慮すること。
(ハ)水施設(池・水流など)
・ 基本的には、平常時の利用や修景、親水性を前提としたタイプとする。
・ 水際線については、水に接しやすい形態とする。
・ 水深は、水に入ることを想定して安全性を配慮すること。
・ 雤水の利用を積極的に検討すること。
・ 消防等による取水に備えて、取水ピットなどを必要に応じて設置すること。
(ニ)散水施設(防火樹林帯・避難広場内・入口部等)
・ 防火樹林帯散水施設
防火樹林帯散水施設は、外周部沿いに設置し公園の外から水幕を作るタイプと、樹林帯
の中で樹木の上から散水するタイプがある。防火樹林帯外周部と同樹林帯内部に配置する。
・ 避難広場内散水施設
避難広場内散水施設は、芝生などに埋設して下方から散水するタイプ、広場内や広場外
217
縁の地上部に設置し、横方向から散水するタイプなどがある。
・ 入口部等散水施設
入口部等散水施設は、入口脇の上方から散水するタイプ、入口上から下に散水するタイ
プ、入口両側横から散水するタイプ、及び手まき散水タイプがある。主として公園入口に
配置する。
④全体システム
ⅰ)平常時の水関連システムを活用、または平常時のシステムの一部に災害時のシステムを組み込
み、効率的な運用を図ること。
ⅱ)非常用電源設備を検討するとともに、エネルギー供給システム全体の耐震性に配慮すること。
ⅲ)自動と手動の両方による使用が可能なものとすること。
ⅳ)全体数量に余裕を持たせるとともに、各施設のシステム面でのバックアップや施設間での補完
を考慮すること。
(5)非常用便所の設計
非常用便所の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災公
園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
① 対応時期とサービス水準
ⅰ)常設便所(平常時用)の活用を含め、さまざまなニーズに対応できる多様な非常用便所を確保
すること。
ⅱ)非常用便所の利用形態やニーズ、求められるサービス水準は、時間経過に伴い変化する。直後
及び緊急段階の被災後1~3日間程度は避難者や周辺住民などによる集中・大量使用や交通の
遮断などによる汚物の回収困難などが予想されるが、その後は周辺の復旧状況に伴い利用時の
安全性や快適性の向上が求められるようになる。
② 必要量の算定
ⅰ)必要穴数(穴)
必要穴数(穴)=対象人員(同時滞在者)(人)×同時使用率
・対象人員:基本的には避難人口(対象避難圏域人口)の内同時に避難する(滞在する)人
員を対象とする。同時滞在者を想定することは非常に難しいため、避難人員か
非常用便所の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 対応時期とサービス水準
② 必要量の算定
③ 整備・備蓄方法
④ 全体システム
⑤ 管理・運営方法
218
らその割合を仮定することや、被災率によって想定することも考えられる。な
お、状況によっては、被災者のみではなく、周辺住民等の利用も考えられる。
・同時使用率:1穴/60~100人を標準とする。
ⅱ)必要便槽容量(非手洗)(m3)
必要便槽容量(非手洗)(m3)=対象人員(人)×1人当たりし尿量(㍑/人・日)
・対象人員:公園として自活的な対応をする。直後および緊急段階の被災後1~3日間の避難
者数。基本的には、避難人員(対象避難圏域人口)とする。
・1人当たりし尿量:1.5~2.0㍑/人・日を標準とする。
③ 整備・備蓄方法
ⅰ)非常用便所は、主として以下のタイプが考えられる。
(イ)設置タイプ
・ 常設タイプ…平常時から設置しておくタイプ。災害時に使用するための操作や備品等の
設置は災害時に必要となる。
・ 仮設タイプ…災害時に設置するタイプ。
・ 半常設(仮設)タイプ…常設と仮設の中間タイプ。便槽等一部を平常時から設置しておき、
災害時に便器部分他やパーテーション等を仮設的に設置する。
(ロ)兼用(平常時施設との兼用)タイプ
・ 兼用タイプ…平常時に必要な施設を災害時に非常用タイプに転用できるタイプ。
・ 非兼用タイプ…災害時の災害時用トイレとして単独に設ける。
(ハ)機能(災害時の機能)タイプ
・ 複合タイプ…貯水槽など災害時の他の機能も持つタイプ。使用時期は異なる。
・ 単独タイプ…災害時用トイレ機能のみの単独のタイプ。
ⅱ)各整備・備蓄方法の選定や備蓄量の設定にあたっては、ニーズの変化や多機能との関連、平常
時の施設計画など、総合的な観点から検討を行う。
ⅲ)非常用便所設計の詳細は、下記のことに留意し設計すること。
(イ)非常用便所の種類
・ 非常用便槽付き常設トイレ
常設トイレに汲み取り式の便槽を付帯させ、非水洗トイレとしても使用できるようにし
たトイレ。建物廻りに非水洗トイレを増設することもある。状況によっては、常設の水洗
トイレをそのまま使用することが可能である。
・ 貯水槽兼用トイレ
消火用水や多目的水の貯水槽(耐震性貯水槽)を汲み取り式の便槽としても使用するト
イレ。使用時には便器部やパーテーションなどを設置する。
貯留水の使用後、または一部排水後に使用するか、槽の内部を水槽部と便槽部にあらか
じめ分けておく。
219
・ 汚水管兼用トイレ
汚水本管の一部、あるいはバイパス部にマンホールや専用の桝を接続しておくことによ
り、汚水管を災害時用トイレとして活用する。使用時には便器部やパーテーションなどを
設置する。
・ 地下埋設式トイレ
平常時から地下にブース形態で埋設し、使用時に引き上げて使用するトイレ。備品類な
ど軽量のものを備蓄しておくこともできる。
・ 仮設組立式トイレ
使用時に組み立てて使用するトイレ。一式セットになっている。平常時は備蓄。
・ 仮設ユニット式トイレ
使用時に搬入して使用するトイレ。災害時に公園の外部から搬入、設置して使用。
・ 組立簡易式トイレ
ポータブル式の組立式トイレ。常設トイレのブースや建物内の他、何処でも使用できる。
常設トイレのブース以外では囲いなどが必要。平常時は備蓄をしておく。
(ロ)トイレの種類毎の特徴は、表 4-4-7.を参考とする。
なお、貯水槽の規模やトイレの形式・仕様によっては、下記どおりの目的に対応できな
い場合があるため、汚水の処理方法や形状などを含め十分検討すること。
表 4-4-7.トイレの種類と特徴(防災ガイド P.161)
220
(ハ)トイレの種類とし尿処理方法は、表 4-4-8.による。
(ニ)トイレの種類毎の配置については、主として下記のことに留意する。
・常設トイレ兼用(常設トイレ廻り兼用も含む)
平常時の配置計画に則ったものとする。仮設間仕切り等の資材の保管場所との位置関係に
留意する。
・貯水槽兼用トイレ
基本的には防火用の貯水槽と同様の考え方とする。ただし、特に避難広場等からの利用や
火災等の影響に配慮する。また、仮設間仕切り等の資材の保管場所との位置関係に留意する。
・汚水管兼用トイレ
平常時の排水施設配置計画、排水設備系統の考え方にもとづくが、避難広場等からの利用
に支障ないような配慮をする。また、仮設間仕切り等の資材の保管場所との位置関係に留意
する。
・地下埋設式トイレ
平常時の上部利用やトイレ本体への荷重・負担が小さくなること等に十分留意して配置す
る。
・仮設組立・仮設ユニット式トイレ
避難広場との関係や風雤等の気象状況を考慮した設置スペースを設定しておく。
④ 全体システム
ⅰ)水洗式を検討する場合は、水の供給システムや排水システムなどとの関係に留意するとともに、
表 4-4-8.トイレの種類別のし尿処理方法(防災ガイド P.162)
221
平常時のそれらのシステムとの整合を図ること。
ⅱ)給水施設や夜間照明に対応して、非常用エネルギーやその供給システムも同時に検討すること。
ⅲ)汚物などの処理や仮置き方法の検討の他、仮設便所の回収や大型車やバキュームカーなどによ
る汚物回収などに支障のないようにすること。
(6)情報関連施設の設計
情報関連施設の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災
公園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
① 目的と対応時期(期間・時間)
災害時に必要となる情報は、その時期や期間が異なるだけでなく、時期によって緊急度も異
なる。なお、災害時の必要となる情報は下記の事項であり、その情報と時間経過の関係は表 4-4-9.
を参考とすること。
・ 災害情報…災害発生場所(震源地)、規模、余震の予想などに関する情報
・ 緊急救助方法…人命救助、消火・消防、医療などに関する情報
・ 二次災害情報…地震による火災・津波などに関する情報
・ 緊急避難情報…避難場所、避難ルート、誘導などに関する情報
・ 安否情報…家族、親類、勤務先などとの間の安否情報
・ 施設利用情報…災害における防災関連公園施設など、その他必要となる施設の利用、便に関
する情報
・ 救援情報…関係諸機関・ボランティアなどの救援に関する情報
・ 被害状況に関する情報…道路・建物など被害状況、インフラの被害状況など
・ 救援物資などの状況…救援物資の配布方法、場所、内容、量などに関する情報
・ 生活情報…応急生活場所、交通、金融、補償などに関する情報
・ 復旧情報…上下水道・電気・通信、道路・鉄道、住宅、公共施設などの復旧情報
情報関連施設の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 目的と対応時期
② 全体システムの考え方
③ 情報提供方法
④ 管理・運営方法
222
② 全体システム
情報関連施設の全体システムは、下記の事項に留意した検討を行うこと。
ⅰ)災害時には何らかのトラブルが発生する可能性があるため、情報通信回線の多重化と多様化に
よるバックアップ体制の強化が必要である。また、非常用電源の整備等による情報通信回線の
確保が必要である。
ⅱ)周辺地域や市町村、または都道府県などの広域において、構築、あるいは計画されている情
報ネットワークシステムを整理し、それらの一部として位置付ける。
ⅲ)平常時のシステムを最大限活用すること。
ⅳ)個人情報関連機器(携帯電話など)の利用動向やパソコンなどの活用を考慮すること。
③ 情報提供方法(対応する施設)
公園において考えられる情報提供のための施設は、主に下記のとおり。
ⅰ)非常用放送設備
(イ)スピーカーなどは、公園全体に情報が行き届くよう機器の性能などを考慮して配置する。
(ロ)園内放送は平常時のシステムを使用し、非常用エネルギーのバックアップを確保すること。
ⅱ)非常用通信設備
(イ)種類としては、防災行政無線及び電話による非常又は緊急通信などがあげられる。
(ロ)公園の利用と管理にかかわる情報ネットワークの構築が必要であり、それらを活用した災害
時の情報システムを整備する必要がある。特に、公園管理者と本庁舎、又は災害対策本部と
の間で緊急的に情報通信が可能なように無線通信設備を整理しておくことが重要である。
(ハ)情報交換及び情報収集のため、効果的な情報提供と収集が可能となるような機器などの設置
表 4-4-9.情報と時間経過の関係(防災ガイド P.167)
223
を検討すること。
(ニ)無線系の通信を整えることが必要である。
ⅲ)標識及び情報提供設備
(イ)施設のタイプには、案内板や方向指示板などの一般的なサインタイプ、照明や発光体を使用
した誘導灯タイプ、掲示板タイプ、電子掲示板のタイプがある。
(ロ)災害時は、夜間や停電時にも使用できること。
(ハ)夜間の視認性を高める工夫をすること。
(ニ)主として避難路や公園内の避難動線上及び避難広場、防災関連施設などの周辺に配置する。
(ホ)夜間や停電時に必要となる電源には、非常用エネルギーによるバックアップや平常時から太
陽光を使用するなどの方法を検討する。
(7)エネルギー、照明関連施設の設計
エネルギー、照明関連施設の設計あたっては、下記の基本事項を検討する。なお詳細について
は「防災公園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
① 目的と対応時期(期間・時間)
ⅰ)停電時などの際に必要となる照明施設や電力供給に必要な施設のための非常用エネルギーを
確保する。
ⅱ)災害時に必要なエネルギーの期間は、直後段階の概ね3時間から緊急段階の概ね3日間での
期間が考えられる。
ⅲ)エネルギー及び照明関連施設の用途は以下を参考とする。
(イ)非常用エネルギー供給対象施設
・ 水関連施設(水施設、非常用井戸、散水施設など)の動力
・ 情報関連施設の電源
・ 照明施設の電源
・ 標識類の電源(必要な場合)
エネルギー、照明関連施設の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 目的と対応時期
② 供給対象施設の容量
③ 備蓄、供給方法
④ 全体システム
⑤ 管理・運営方法
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・ 消火、救助、救援及び避難生活など関連資機材の電源
・ 管理事務所、詰め所、備蓄倉庫などの設備電源
(ロ)照明関連施設で考えられる用途
・ 一般照明(屋外)
・ 建物用照明
・ 標識類等照明
・ 誘導照明
② 供給対象施設の容量
ⅰ)必要量(容量)の算定においては、隣接する防火関連施設との分担・連携や救援体制などをふ
まえ、用途ごとの供給対象施設の容量、対応時期から、供給するエネルギーの必要量とそれら
に必要な燃料や蓄電池などの備蓄量を算出する。
③ 備蓄・供給方法
各設備のタイプや形態などについては、その設備の性能、規模・形態、使用方法や設置場所、
また、維持管理やコストなどを考慮し、目的にあったものを選定する。なお、公園において考え
られる備蓄・供給のための施設は、主に下記のとおり。
ⅰ)非常用電源設備
(イ)種類としては、自家発電設備や蓄電池設備、太陽光や風力などを利用する自然エネルギー活
用型発電施設が考えられる。
なお、各種類と概要は表 4-4-10.を参照すること。
表 4-4-10.非常用電源設備の一般的な種類(防災ガイドP.178)
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(ロ)非常用エネルギーの供給対象(熱源を除く)となるのは、概ね表 4-4-11.のとおり。
(ハ)非常用電源は、管理事務所や電気室などの建築物内や隣接させた位置に設置し、全体のシス
テムや各々の施設内容に応じて配置する。
(ニ)非常用エネルギーのバックアップを確保すること。
なお、バックアップは、エネルギー供給システムのみではなく、施設の設置数や規模、自
動と手動などの使用方法などにおけるバックアップの考え方も含めて検討すること。
ⅱ)非常用照明設備
(イ)種類としては、一般屋外照明、屋内照明及び投光器がある。
(ロ)光源及び配光は、平常時の考え方による。
ただし、火災の煙や気象条件等により視界が悪くなることも考慮し、避難やその他のため
に重要な箇所(公園入口、避難路、避難広場、防災関連施設など)は特に配慮すること。
(ハ)太陽光など自然エネルギーを十分活用することも検討すること。
④全体システム
表 4-4-11.非常用エネルギーの供給対象と対応するタイプとの関係(参考・防災ガイド P.179)
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エネルギー、照明関連施設の全体システムは、下記の事項に留意した検討を行うこと。
ⅰ)平常時のシステムを最大限活用すること。
ⅱ)太陽光、風力などを利用した非常用エネルギーの確保を図るとともに、平常時のエネルギー供
給や照明施設に組み込み、省エネルギーや効率的な施設整備を図ること。
ⅲ)様々な利用者を考慮して、簡易な操作方法とすること。
ⅳ)平常時のシステムとの整合を図ること。
ⅴ)蓄電池は、定期点検及び定期更新が必要なため、維持管理方法に留意すること。
(8)備蓄倉庫の設計
備蓄倉庫の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災公
園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
①備蓄品目の種類と備蓄量
ⅰ)地域防災計画に基づいて、他の防災関連施設との分担を明確にしたうえでの品目の把握や備蓄
品を設定すること。
ⅱ)備蓄する資機材や物品としては、救助・救援用資機材、避難生活用品、仮設用トイレ、ボラン
ティアなどの救援隊のための生活用品などが考えられ、公園毎の機能に応じた備蓄が必要とな
る。
ⅲ)備蓄品目は下記を参考とする。
(イ)救助、救援用
・ 初期消火救助用機材、資材等(住民用)
・ 医療、救護用機材、資材、電源
・ 防疫、清掃資材
(ロ)避難および一時的避難生活用
・ 耐震性貯水槽関係機材
・ 減菌装置、ろ過器
・ 非常用便所資材
・ 非常用電源
・ 非常用照明
備蓄倉庫の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 備蓄品目の種類と備蓄量
② 備蓄分担
③ 必要なスペースと備蓄方法
④ 管理・運用方法
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・ 非常用通信設備機器
・ 避難生活資材(テント)
・ 炊き出し用機材
・ 医療、衛生用品(「都市公園に設置する備蓄倉庫に備蓄される医療品、医療用具、衛生用
品について(平成5年6月30日通達)」を参照のこと)
・ 衣料・毛布用品
・ 防寒、防水用品
・ 飲料水
・ 食糧
②備蓄分担
ⅰ)公園内の防災関連公園施設の備品的なものは、公園で備蓄するが、その他の品目については地
域防災計画に沿って、防災部局が整備することとなる。
③必要なスペースと備蓄方法
ⅰ)スペースは、備蓄する品目と備蓄量(対象人数、日数、1人あたり必要量)により算出す
ること。
ⅱ)搬入、搬出の作業に必要なスペースを確保すること。
ⅲ)備蓄倉庫の整備は、管理事務所などの建物と一体的な整備が望ましい。
ⅳ)備蓄倉庫の配置は、防火樹林帯がある場合は、防火樹林帯の内側に、また、物資や資機材の搬
出や搬入に支障とならないよう、車両のアクセスや野外部のスペースの確保も考慮すること。
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(9)管理事務所の設計
管理事務所の設計にあたっては、下記の基本事項を検討する。なお、詳細については「防災
公園計画・設計ガイドライン:建設省都市局公園緑地課(監修)」を参照すること。
①用途と対応時期
ⅰ)災害時の公園における避難や様々な活動、情報伝達等の支援拠点となる建築物として活用する。
また、想定される用途は下記による。
(イ)考えられる用途
・ 公園管理、運営拠点…災害時の公園全体や公園施設の管理、運営、運用などの統合、調整を
図る拠点や情報収集、伝達の拠点、あるいは現地対策本部的な活用
・ 避難者支援スペース…避難時の救援や医療等の活動のための屋内スペース
・ 避難生活支援スペース…一時的な避難生活に係わる救護等の諸活動支援の屋内スペース
ⅱ)規模は、平常時の施設の機能をもとに、付加される防火機能を考慮し、規模、形態の算定・設
定を行う。
管理事務所の設計にあたっては、下記の基本的事項を検討する。
① 用途と対応時期
② 活用可能な施設
③ 管理・運用方法
都市公園事業設計要領(平成25年度版)
平成 25 年度 8月発行
編集・発行 北海道 建設部 まちづくり局 都市環境課 公園緑地グループ
〒060-8588 北海道 札幌市 中央区 北 3条 西 6丁目
電話:011-231-4111(内線 29-615)FAX:011-232-0612
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