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~5年理科「天気の変化」に防災の視点を取り入れる~ 平成25年10月9日(水)5校時 札幌市立真駒内公園小学校 教 諭 澁 谷 宣 和

~5年理科「天気の変化」に防災の視点を取り入れ …学校防災教育公開授業 小学5年理科「天気の変化」 日 時 平成25年10月9日(水)5校時

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Page 1: ~5年理科「天気の変化」に防災の視点を取り入れ …学校防災教育公開授業 小学5年理科「天気の変化」 日 時 平成25年10月9日(水)5校時

~5年理科「天気の変化」に防災の視点を取り入れる~

平成25年10月9日(水)5校時

札幌市立真駒内公園小学校

教 諭 澁 谷 宣 和

Page 2: ~5年理科「天気の変化」に防災の視点を取り入れ …学校防災教育公開授業 小学5年理科「天気の変化」 日 時 平成25年10月9日(水)5校時

学校防災教育公開授業

小学5年理科「天気の変化」 日 時 平成 25 年 10 月9日(水)5校時

児 童 5年1組 37名

指導者 澁谷 宣和

1 防災の視点を取り入れた学習の構成

視点1 天気の変化の規則性から災害を予測する行動につなげる教材化を図る

本単元は、毎年被害が起こっている集中的な豪雨

や降雪による災害と直結する内容を含むものである。

こうした災害から身を守るために、必要な情報を収

集して備えたり、適切な判断で避難行動をとったり

できるようにすることを目指す。

第1次では、集中豪雨による災害に遭わないため

に、天気の変わり方の規則性や雨を降らせる雲の種

類などについて調べる。単元の導入では、天気の変

化の仕方に目を向けるために、集中豪雨によって引

き起こされる災害が身近に起こり得るのを知ること

をきっかけに、巻き込まれる前に危険を察知し、自

分の身を守る手掛かりがないか調べる。また、集中

豪雨は、局地的に短時間で起こるものもあり、数時

間前の天気予報を知っているだけでは充分だとは言

えない。そこで、天気の変化の規則性を追究する過

程では、雲の様子や雷、温度変化、空気の湿り気の

体感など、自分の五感を働かせて変化をとらえるよ

うにしていく。

第2次では、早く危険を察知するために、より広

範囲での天気の変化を知る必要感から、人工衛星の

画像やアメダスなどの気象情報を活用して天気の変

化をとらえる。気象情報と実際の天気を結びつけな

がら変化の規則性に気付き、天気を予測したり、災

害に備えたりすることができるようにする。また、

降水量を実際に測定したり、風力、湿度などを体感

したりするなど、気象情報の背景にも目を向けるこ

とで、情報を数値ではなく具体的な体感としてとら

えられるようにしていきたい。

第3次では、急激で激しい天気の変化を引き起こ

す台風による災害に備えるために、台風が近付いて

きたときの天気の変わり方や自然災害に目を向け、

情報を活用しながら進路や規模を予測したり、災害

に備えたりできるようにする。

視点2 雲のでき方と積乱雲が引き起こす現象をつなげる学習展開を図る

子どもたちは、今年、2か月程前に集中豪雨が起

こり、強い雨や雷などの激しい気象現象を何度か体

験しており、災害の発生した地域があることを知っ

ている子どもも少なくない。そこで、その原因とな

る積乱雲のでき方や、雲が近付いたときの変化を知

ることで、危険を回避する行動ができるようにする。

5年生の子どもたちは、雲のでき方に関連した内

容として、「地面が太陽によって暖められる」(3年)、

「水は蒸発して空気中に含まれる」「水蒸気を冷やす

と結露して再び水になる」「温まった空気は上昇する」

(4年)などの内容を学習している。これらの既習

を手掛かりにしながら、雲のでき方に見通しをもっ

て雲を発生させる実験を行うことで、集中豪雨の要

因である積乱雲の発生を身近な現象としてとらえら

れるようにする。

積乱雲の発生の仕組みと地上で見られる現象は、

自然界の非常に大きなスケールで起こっており、実

験と結びつけて考えることは子どもたちにとって想

像しがたい面もあると考えられる。そこで、実験結

果の分析・考察に気象台の専門家による解説を取り

入れる。目の前の実験と積乱雲による集中豪雨の仕

組みが結びつくことで実感につなげていきたいと考

える。また、気象台の専門家との出会いから、防災

意識をもつとともに、気象への関心が一層高まるこ

とを期待している。

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2 単元の目標

総 雲の様子を観測したり、映像などの情報を活用したりして、雲の動きや地上の現象などを調べ、天気

の変化の仕方について興味・関心をもって追究する活動を通して、気象情報を正確に活用する能力を

育てるとともに、それらについての理解を図り、天気の変化について見方や考え方を養う。

関 雲の量や動きと天気の関係に興味をもち、意欲的に調べようとすることができる。

思 空の様子について観測した結果を気象衛星からの雲画像と関係付けて考え、表現することができる。

技 空の様子を観察したり、情報を活用したりして、天気の変化を調べることができる。

知 雲の量や動きが天気の変化に関係していることや、規則性について捉えることができる。

防 雲の様子を観察したり、気象情報を活用したりするなどして、天気の変化の仕方を予想し、災害や事

故に備える判断をすることができる。

3 単元構成(11時間扱い)

時 主 な 学 習 活 動 教師の意図とかかわり

第一次

空の様子と天気(3時間)

急な雨から身を守ることはできないのかな。

天気の変わり方を調べよう。

・集中豪雨が発生したときの地上

の変化に目を向け、天気の変化

への興味・関心を引き出すため

に、映像資料「急な大雨・雷・

竜巻から身を守ろう!(被害

編)」から変化の特徴を引き出

す。 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/

cb_saigai_dvd/higaihen_jp.html

・天気と雲の量の変化を関係付け

るために、雲の量や色、形など

の時間変化の様子を記録する。

・雲の観察によってその後の天気

の変化を大まかにとらえられこ

とに気付くように、雲の動きと

量などの変化から見通しをもた

せる。

・天気の変化について雲の動きや

量と変化を関係付けるために、

観測結果について考えを引き出

す。

防集中豪雨をもたらす積乱雲につ

いて、これまでの学習を手掛か

りにそのでき方を考える。また、

でき方の特徴や起こる現象か

ら、自分の身を守ろうとする意

識を高める。

灰色の雲の動きを見ていれば、急な雨に備えることができるはず。

雨が降る前には、灰

色の雲が増えてい

く。

天気が変わるという予報だ

ったよ。 雲の量が増えてくると、雨が

降ってくる。

冷たくて湿った空

気に変わった感じ

がするよ。

雲の量が増えて空

全体が雲でおおわ

れた。

雲は山の方から移

動してきた。

雲の変化を調べれば、その後の天気がわかるはず。

雨が降る前に、雲が移動してくる。 雲の種類や動き方を見て備えればいいんだ。

午前は晴れていた

けれど、午後にかけ

て曇ってきた。

風によって雲の動

きが変わるんじゃ

ないかな。

日によって違うけれ

ど、山の方から来る。

雲が動くと天気も

変わっていく。 雨が降る雲と降らな

い雲があるみたい。

雨雲は、いつもどの

方向から来るのか

な。

低くて黒い厚い雲

になると雨が降る

んじゃないかな。

短時間の変化なら大丈夫だけれど、も

っと先の天気の変化を知りたい。

雷が鳴ることもある

よ。

積乱雲ができると

どうなるのかな。 積乱雲はどんな時

にできるのかな。

台風が近付いたと

きできやすいみた

いだ。

強い雨が降るから

川の水が急に増え

ることもある。

雲が急にできてい

く。雷が落ちること

もあるよ。

積乱雲はどうやっ

てできるのかな。

天気の変化による災害に備

える必要があるよ。

〈本時〉

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第二次

天気の変化のきまり(4時間)

・子どもが実際に観測をした日

の人工衛星画像を提示し、

様々な気象の情報に興味や

関心をもつようにする。

・広島と東京の数日間の天気を

まとめた表を見て気付いた

ことを話し合う。

・簡易雨量計を制作して雨量を

測定する活動から、気象デー

タと実際の降水量を結びつ

けてとらえられるようにす

る。

防気象観測データからその後

の天気や降水量、風の強さな

どを読み取り、実際の状況を

予想することができるよう

にする

・天気の予想では、考えの根拠

を明らかにすることで、雲の

動きと天気の変化を意識で

きるようにする。

防気象観測データから天気の

変化を予想し、災害等に備え

る判断をすることができる

ようにする。

第三次

台風接近(4時間)

防最近、実際に起こった気象現

象と被害を観測データと結

びつけることで、台風の激し

さを実感するとともに、危機

意識が高まるようにする。

天気の変化には、どのようなきまりがあるのだろうか。

天気予報の雲画像な

ら、広い範囲で雲の様

子が分かるよ。

雨雲が移動して、雨が降って

いる場所がずれたと思う。雨雲が移動して、雨の日がず

れたんじゃないかな

人工衛星の雲画

像で移動が分か

った。

アメダスの降水

量の図で雨の地

域が分かった。

気象情報を集めれば、これからの天気がわかるんじゃないかな。

雲はおおよそ西から東の方へ移動する。天気も雲の動きにつ

れて、おおよそ西から東に変わっていく。

雲画像とアメダス

で、雲と降水量の

関係が分かった。

雲画像とアメダス

の降水量の図があ

れば予想できる。

西の方の情報を

手掛かりにすれ

ばいいんだ。

複雑な変わり方

をすることもあ

るみたいだ。

晴れと曇りでは人工

衛星の雲画像にも違

いがあるのかな。

天気が晴れ→曇り

→雨と順に変わっ

ている。

東京と広島では、天

気が1日ずれてい

る。

東京は、広島の後か

ら雨が降っている。

台風が近付くと大雨が降っ

たり強風が吹いたりする。 台風が来ると、事故や災害

も起こっているよ。

気象情報を集めれば、台風に備えることができるはず。

台風は沖縄の南の海上で発生して西に進む。短時間にたくさ

んの雨が降ったり、風が非常に強くなったりする。

南の方からやっ

てくる。

北海道に来る前に

台風が弱まる。

普通の天気の変

化と違う。

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4 本時の目標

既習を手掛かりに雲ができる要因を考える活動から、温度変化により水蒸気が水(雨)に変わる現象が上空で起こって

いることに気付き、積乱雲による著しい変化をとらえることができる。

防 積乱雲が短時間で発達して大雨を降らせる様子や気象台の方の解説から、積乱雲が近付いたときの状況の変化を

とらえ、素早く安全な場所に避難したり、情報を集めたりしなければならないことに気付く。

5 本時の展開(4/11)

主 な 学 習 活 動 教師の意図とかかわり

・札幌市で積乱雲ができる連

続写真から、急激に発達し

ていくことをとらえ、その

仕組みに目を向けるよう

にする。

・積乱雲が大雨の原因になっ

ていることから、雲の成因

に関わる既習を引き出す。

また、上空が低温であるこ

とは教師から伝える。

・温度と水の姿の変化につい

て関係付けるために、水蒸

気が冷やされて水(雨)に

なることを引き出す。

・実験と自然現象をつなぐた

めに、実験前に空気の冷た

さや湿った感覚を体感す

る。

・専門家による解説により、

実験で確かめた雲のでき

方について、実際に空で起

こっている事象と重ね合

わせながら考えられるよ

うにする。

・最初の積乱雲が発達して大

雨を降らせる写真に再び

戻ることで、要因と現象を

結びつける。

・積乱雲によって引き起こさ

れる災害に巻き込まれな

いという視点から、どのよ

うな行動を取るべきか引

き出す。

雲が同じ方向から来ることや雨を降らせる雲と降らせない雲があることなどに気

付いている。また、強い雨を降らせる積乱雲に早く気付くにはどうしたらよいか考え

ている。

<前時まで>

積乱雲が近付いたことに気付けば、災害に遭わないはずだ。

冷たい

積乱雲はいつ、どこででき

るのかな。

積乱雲はどのようにで

きているのかな。

青空が1時間で急

激に暗くなった。

湿った空気が冷やされて、

雲が大きくなるんじゃないかな。

日光で地面が

温められる。 温かい 湿った空気

雲(水)

積乱雲を発見したら、動きを見たり、情報を集めたりして 身を守らなければならないんだ。

積乱雲が近付いて来たら・・・

雷や雹から身を守るた

めに安全な建物に入る。

増水するから川に

近付かない。

雲の動きを見たり、気象

情報を集めたりする。

気象台 榎本先生

(ゲストティーチャー)

による解説

湿った空気が上空に行って冷やされるから積乱雲になるんだ。

短時間で強い雨に

なった。

冷えると結露

する。 暖 か い 空 気

は、上昇する。

水が自然に

蒸発する。

黒い雲がもくもく どんどん大きく

真っ黒い雲が

近付いて来た。